変わりつつあるカンボジアの住まい (特集 世界の
住まい・今)
著者
初鹿野 直美
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
191
ページ
19-20
発行年
2011-08
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00004176
長く内戦の続いたカンボジアで は、和平後の高い経済成長のなか で、住宅事情も大きく変化してき た。今日のプノンペン市内は日々 新しい建物が建ち、高層ビルが現 れ、目覚しい勢いで風景が変わり つ つ あ る( 写 真 1)。 新 聞 や ウ ェ ブサイトの売買広告の欄には、お しゃれな一戸建てやマンションの 広告が並ぶ。本稿では、まずカン ボ ジ ア の 伝 統 的 な 住 ま い に つ い て、農村部および都市部の典型的 な居住形態と主に都市部での変化 に つ い て 説 明 す る。 そ の う え で、 一九九八年と二〇〇八年に実施さ れた人口センサスの結果(参考文 献①)にもとづき、住まいの実態 と近年の変化を紹介する。
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カ
ン
ボ
ジ
ア
の
伝
統
的
住
ま
い
と変化
カ ン ボ ジ ア の 農 村 部 の 伝 統 的 な 住 ま い は 、 木 造 の 高 床 式 住 居 で あ る ( 写 真 2)。 こ れ は 、 洪 水 を 避 け たり 、 熱 帯 の暑 さ や 虫 に よ る 病 気 を 避 け た り す る た め で あ る と い わ れ る 。 屋 根 は 赤 み が か っ た 瓦 や 藁 葺 き で あ る 。 階 下 に は 、 農 機 具 や 機 織 機 な ど に 加 え 、 夕 涼 み 用 の 台 が あ り 、 ど こ か ら と も な く 人 々 が そ こ に 集 い 、 茶 飲 み 話 に 花 を 咲 か せ る の が 、 農 村 部 の 典 型 的 な 風 景 で あ る 。 ほ か に は 、 椰 子 の 葉 や バ ナ ナ の 葉 を 編 ん で 作 っ た 簡 易 な 家 に 住 む 人 た ち が い た り 、ま た 、河 川 ・ 湖 に は 、 ボ ー ト の 上 に 家 を 建 て る 水 上 集 落 を 形 成 す る 人 々 も あ る 。 都市部では、石造りの長屋・プ テ ア ロ ヴ ェ ー ン が 一 般 的 で あ る。 通り沿いに三~四階建ての長屋が 数軒連なる。一階は頑丈な門扉に 覆われており、車やバイクが駐車 されている家も多い。一軒全体を 一 族 で シ ェ ア す る 人 た ち も い れ ば、フロアの一部を借家とするこ ともある。プノンペンの富裕層の なかには、おとぎ話の宮殿と見ま がうばかりの大豪邸に住む人たち もおり、たとえばトゥールコーク 地区の一部の地域には、そのよう な豪邸が集積している。その目と 鼻の先にはトタンでつくられた仮 住 ま い に 住 む 人 た ち も 相 当 数 お り、再開発で立ち退き問題が生じ たり、乾季の大火事で一〇〇軒超 の家々が焼失することもある。 二〇〇〇年代半ばから、プノン ペン近郊では、衛星都市プロジェ クトとして、住宅開発が進んでい る。プノンペン北部に位置するカ ムコ・シティ、グランド・プノン ペンなどは、高級マンション・住 宅とあわせて、 公共施設、 エンター テ イ ン メ ン ト 施 設 な ど が 併 設 さ れ、販売開始直後に半数以上が売 れるという人気ぶりであった。中 心部でも、デカッスル、ゴールド タワー四二といった高層マンショ ン が 売 り 出 さ れ た。 二 〇 一 〇 年、 政府は外国人に建物に対する不動 産所有を認める法令を制定し、不 動産投資に外資を呼び込もうとし 写真1 建築中の建物が多くみられたプノンペン中心部・ ボンケンコン地区(2008年4月)。 写真2 建設中の伝統的家屋。オッドーミアンチェイ州の 農村にて(2009年5月)。初
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アジ研ワールド・トレンドNo.191 (2011. 8)た。もちろん外国人からの投資も 多く見られるが、一方でカンボジ ア人自身による購入・投資も多く 見られる。投資目的での購入も多 く、二〇〇八年夏以降の不動産価 格の急落に辛酸をなめている人た ちもいるようだが、 実際に「住む」 ことを目的としてこれらの物件を 購入している人たちもいる。一部 の富裕層のみにとどまらず、内戦 時 代 に 海 外 に 避 難 し て い た 人 々、 留学等で欧米のライフスタイルに 触れた若い世代など、勃興しつつ ある中間層が新しい種類の住まい を求めつつあるようである。 従来、 ローンを組んで住宅を買うという ような習慣がなかったカンボジア でも、銀行が住宅ローンの提供を 始めており、まだ規模は小さいな がらも利用実績は増えている。