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比較家族史学会監修 加藤彰彦・戸石七生・林研三編著『家と共同性』

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比較家族史学会監修 加藤彰彦・戸石七生・林研三編

著『家と共同性』

著者

重冨 真一

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジア経済

58

3

ページ

76-76

発行年

2017-09

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00049477

(2)

76 『アジア経済』LⅧ-3(2017.9) 紹   介

『家と共同性』

(家族研究の最前線①)

本書は,比較家族史学会シンポジウムでの報告討 論をもとに書き下ろされた 14 本の論文からなる。 その序章で,編者は以下のように問題意識を述べる。 すなわち,家についての研究は蓄積されてきたが, 議論はむしろ拡散してしまった。家についての研究 者は,自身の研究対象について詳しい知見を得ても, 他の時代,他の地域,他の階層について手薄になる。 家に関わる諸現象を理解するためには,時間,空間, 階層の三次元を方法論的に自覚する必要がある。 編者は序章で「家」なるものをあらかじめ定義せ ず,その意味内容を執筆者に委ね,終章で学問分野 を超えて利用可能な理論的定義を探るとしている。 分析対象が何かを定義せずに比較するということが いかにして可能なのか。興味深いところであるが, ともかく各章の内容紹介に進もう。 第 1 部「家社会の成立史」では 4 論文が日本で 「家」が成立した時期を論じている。第 1 章では, 百姓の家を「家産・家業・家名などを,運営主体た る家長の家族内において,基本的には父系直系のラ インで代々継承することによって,超世代的な永続 を希求する社会組織」(26 ページ)と定義する。そ して家産の成立時期から百姓の家の成立期を特定す る。第 2 章では宮座に注目し,家が格をもって成立 する時期から家の成立を論じる。第 3 章は百姓株式 という一種の身分が家の分類に使われる時期から, 家の成立をみている。第 4 章では宗門人別改帳の データから,長子相続という家の継続をもたらす制 度の成立期を検討している。 第 2 部は「近現代における家社会の展開」で,4 つの章が含まれる。第 5 章は「先祖代々の墓」とい うものが普及してきた時期などから,「家意識」の 成立をみる。第 6 章は商家である三井家をとりあげ て,近代でも同族的なものを残す家の形が描かれる。 第 7 章は明治民法制定と改正過程を検討し,近世の 重 しげ 冨 とみ 真 しん 一 いち

比較家族史学会監修,

加藤彰彦・戸石七生・林研三編著

日本経済評論社 2016 年 x+369 ページ 家が近代的な法体系の中にどう取り込まれ,どう改 変されたかを示す。第 8 章では,東北地方の同族団 が高度経済成長以後にも姿を変えて再生産されてい ることが述べられる。 ここまでの 8 章は,いずれも第 1 章の定義を構成 する要素の成立や変化を歴史的に確認するものであ る。日本の歴史研究者の中では,「家」についての 定義が共有されているといえよう。 第 3 部は「国際比較の視点から」と題して,4 つ の論文が収められている。台湾漢民族の家では(第 9 章),婚出した女性が実家から経済的,社会的支 援を受け続けており,家族を超えた関係は父系親族 に限られないという。韓国の場合(第 10 章),祭祀 権は長男が,物的財産は次男以下も相続するから, 日本の家の継続とは異なった形をとっている。植民 地以前の西インドでは(第 11 章),百姓株をもつ農 民は土地を処分する際に,同じ父祖から生まれた男 系の子孫とその妻達からなる合同家族の合意を必要 としたという。スウェーデンでは(第 12 章),親族 家族内で代々継承される農民農場(世襲農場)が 18 世紀から 20 世紀にかけて成立したとされる。 本書のまとめとなる終章では,家が「家族によっ て所有され世帯間で継承される社会組織」と定義さ れる。また全国的な村落サーベイデータに基づき, 家と村の属性の地理的分布が示される。しかしこの 定義は,12 本の論考が捉えた「家」の特色から帰 納的に導かれたものではなく,著者が自らの研究に 基づいて定めた定義というべきものである。たしか に,家族を超えて血縁や姻戚関係(擬似的なものも 含む)で繋がる何ものかを「家」とすることによっ て,日本以外の「家」的なものとの比較が可能とな るかもしれない。はじめからこういう定義が頭にあ るのであれば,定義を先に示してから,それを基準 として比較研究がなされるべきであった。 編者の意欲的な課題設定にもかかわらず,上記の ような共同研究プランのために本書は論文集の印象 をぬぐいきれない。しかし本書は,全体としてより も個々の論文で評価されるべきであろう。家族研究 の「最前線」を論じるためには,本書所収各論文の ように深く掘り下げた議論が必要であり,相互の調 整が難しくなるのはやむを得ないように思われる。 (明治学院大学国際学部教授)

参照

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