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<論説>フランスにおける「同一労働同一賃金原則」の展開--法原則と労使自治の関係

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Academic year: 2021

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(1)法科大学 院論集. 第7号. フ ラ ンス に お け る 「同 一 労 働 同 一・ 賃 金 原 則 」 の展 開 法原則 と労使自治の関係. 奥. 一. 田. 香. 子. は じめ に. 2009年7月1日. に破 殿 院 で下 さ れ た あ る判 決 は,労 使 自治 に対 す る司法 コ ン. トロ ー ル の射 程 を め ぐる新 た な 問題 を投 げ か け た。 す な わ ち,労 使 の 団体 交 渉 の結 果 と して締 結 され た労 働 協 約 に よ る職 業 カ テ ゴ リー別 の利 益(異 い)も,職. な る取 扱. 業 カ テ ゴ リー以 外 の客 観 的理 由 に基 づ く もの で な け れ ば,同 一 労 働. 同一 賃 金 原 則 な い し平 等 取 扱 原 則 に反 し うる とい う考 え方 が破 殿 院 に よ って示 され た の で あ る。 そ こ に は,法 原 則 とい う場 合 の立 法 と判 例 の 関係,労 使 自治 と司法 コ ン トロ ール の関 係 な ど,複 雑 な 問題 が交 錯 して い る。 本 稿 は,フ ラ ンス に お い て 「同一 労 働 同一 賃 金 原 則 」 を め ぐる判 例 で展 開 さ れ る こ とに な った,法 原 則 が労 使 自治 に い か に適 用 さ れ るべ き か,そ れ を具 体 的 に コ ン トロ ール す る 司法 の介 入 は ど うあ るべ き か とい う問題 につ い て,検 討 す る こ と を課 題 と して い る。 具 体 的 に は,ま ず,同 一 労 働 同一 賃 金 原 則 が破 殿 院 判 例 に よ って ど の よ うに形 成 さ れ て き た か を整 理 した上 で,同 原 則 の解 釈 を あ ぐる具 体 的 問 題 を破 殿 院 判 例 か ら検 討 す る。 そ の上 で,異 な る取 扱 い を正 当 化 し うる客 観 的 理 由 を め ぐ って 問題 とな った労 働 協 約 と同一 労 働 同一 賃 金 原 則 との関 係,す なわ ち,労 働 協 約 に 由来 す る利 益 につ いて の 異 な る取 扱 い に対 し, 一31一.

(2) フラ ンス に お け る 「同 一労 働 同 一 賃 金 原 則 」 の 展 開. 同 一 労 働 同 一 賃 金 原 則 を 適 用 し う る の か,裁. 判 所 は これ を ど こ まで コ ン トロー. ル す べ き か と い う 問 題 に 関 す る 議 論 状 況 を 検 討 す る こ と と す る。 な お,用. 語 の 問 題 と し て,あ. る。 第1に,本. ら か じ め 次 の3つ. の 点 を 確 認 し て お く必 要 が あ. 稿 で 検 討 す る 問 題 を め ぐ っ て は,〈atravailegal,salaireegal>. と い う 表 現 で 平 等 原 則 が 論 じ ら れ る。 こ れ が ど の よ う な 内 容 の 原 則 と し て 定 式 化 さ れ て い る か は 後 述 す る と こ ろ で あ る が,文 り,必. 献 に お い て も表現 が混 在 して お. ず し も 明 確 に 区 別 さ れ た 概 念 と して 用 い ら れ て い な い 。 「同 一 労 働 同 一. 賃 金 原 則 」 と し て 論 じ ら れ る 場 合 も あ れ ば,「 同 一 価 値 労 働(untravailde valeuregale)」. も含 め て 表 現 さ れ る場 合 も あ る1。 ま た,判. 例 の 展 開 を 受 け て,. よ り広 く 「平 等 取 扱 原 則(principed'egalitedetraitement)」 合 も あ る。 さ ら に,平. と 表 現 さ れ る場. 等 取 扱 原 則 は 差 別 禁 止 原 則 と 「同 一 労 働 同 一 賃 金 」 原 則. の 中 聞 に 位 置 す る 原 則 で あ る と 説 明 す る 説 も あ る が2,必 し て 定 着 し て い る わ け で は な い 。 し た が っ て,本. ず しも一 般 的 理 解 と. 稿 で は,最. 初 の判 例 で用 い ら. れ た 「同 一 労 働 同 一 賃 金 原 則 」 と い う 用 語 に 統 一 して 記 述 して お く こ と と した 。 第2に,同. 一 労 働 同 一 賃 金 原 則 は 文 字 ど お り 「原 則(principe)」. あ る い は 「ル ー ル(regle)」 こ の 点 に は 立 ち 入 らず,い. で あ る の か と い う 問 題 が あ る3が,本. で あ る の か, 稿 で は特 に. ず れ の 表 現 も文 献 に し た が っ て 適 宜 用 い る こ と に し. た。 第3に,賃. 金(salaire)と. 報 酬(remuneration)は,概. 念 上 は 区 別 さ れ る。. す な わ ち,「 賃 金 」 は 労 働 契 約 上 の 義 務 履 行 の 直 接 的 対 価 で あ る の に 対 し,「 報. 1破. 殿 院 が. 〈atravailegal,salaireegal>の1つ. る よ う に,「 同 一 労 働(unmemetravail)あ. の 適 用 形 態 と す る 男 女 同 一 賃 金 原 則 で は,後. 述 す. る い は 同 一 価 値 労 働(untravaildevaleuregale)」. が 含 ま れ て い る(L.3221-2条)。 20bservationssur1'arretdu1"juillet2009(ChristopheRade),Dr.soc.2009,p.1004. 3本. 稿 で 取. salaireegal)」 (principe)と. り 上 げ た1996年10月29日. のPonsolle判. 決 は,「. 同 一 労 働 同 一 賃 金(atravailegal,. と 称 す る 平 等 ル ー ル に つ い て 述 べ て い た の で あ る が,そ 称 し た(Jean-Pelissier,AntoineLyon-Caen,AntoineJeammaudetEmmanuel. Dockes,LesBrandsarretsdudroitdutravail3eed.,Dalloz2004,p.258)0. 一32一. の 後 の 判 例 は これ を. 「原 則.

(3) 法科大学院論集. 第7号. 酬」 は よ り広 く,基 本 賃 金 の ほか,使 用 者 が 労 働 者 の 雇 用 に関 連 して 支 払 う現 物 も含 め た あ らゆ る付 帯 的 給 与 も含 まれ る(L.3221-3条)。. しか し,本 稿 に関. 連 す る文 献 で は必 ず し も賃 金 と報 酬 とが 区 別 して 論 じられ て いな い こ と,本 稿 で の検 討 に お い て と りあ え ず は 区 別 す る必 要 が な い こ とか ら,本 稿 で は,原 則 と して報 酬 に い う広 い意 味 で 「賃 金」 と記 述 す る こ と に し,法 文 な ど は原 文 ど お りの訳 語 を用 い る こ と と した。. 二. 同一 労働 同一賃 金原 則 の確立. 1差. 別 禁 止 や 平 等 取 扱 い に関 す る諸 規 定. フ ラ ンス労 働 法 典 には,差 別 禁 止(non-discrimination)に. 関 す る一 般 的規. 定 を は じめ,パ ー トタ イ ム労 働 や有 期 労 働 契 約 に関 す る平 等 取 扱 い,男 女 間 で の 同一 労 働 同一 賃 金 原 則 が 明 文 で 定 あ られ て い る。 第1に,労. 働 法 典L.1132-1条. は,差 別 禁 止 の一 般 的規 定 で,「何 人 も,出 自,. 性 別,習 俗,性 的 指 向,年 齢,家 族 状 況 ま た は妊 娠,遺 伝 的 特 徴,民 族 ・国 籍 また は人 種 へ の 真 の あ る い は推 定 に よ る帰 属 あ る い は非 帰 属,政 治 的 意 見,組 合 活 動 また は共 済 活 動,宗 教 的 信 条,身 体 的 外 見,姓,健. 康 状 態 ま た は障 害 を. 理 由 と して 」,募 集 手 続 か ら労 働 関 係 の 諸 場 面 に お いて(特. に 報 酬 に 関 して). 差 別 的 取 扱 い 等 を 受 けて は な らな い こ とを 定 あ て い る。 第2に,パ. ー トタ イ ム労 働者 に つ い て は,労 働 法 典L。3123-10条. で,パ ー ト. タ イ ム 労 働者 の報 酬 は,企 業 ま た は 事 業 所 にお い て フル タイ ム で 同 等 の 職 務 に 就 く同 じ格 付 の労 働者 の報 酬 と比 例 的 で あ る こ とが 定 あ られ,同L.3123-11条 で,「パ ー トタイ ム 労 働 者 は,法 律 お よ び 労 働協 約 に よ って フル タイ ム 労 働 者 に 認 め られ て い る権 利 を享 受 す る。 但 し,協 約 上 の権 利 に つ い て は 労 働 協約 が 定 め る特 別 の適 用 方 法 に よ る こ とが認 め られ る」 と定 め られ て い る。 ま た,有 期 契 約 労 働 者 につ い て は,労 働 法 典L.1242-14条 一33一. で,期 間 の定 め の.

(4) フ ラ ンス に お け る 「同一 労 働 同一 賃 金 原 則」 の 展 開. な い 労 働契 約 を締 結 して い る労 働者 に適 用 され る法 律,労. 働協 約 の諸 規定 お よ. び慣 行上 の措 置 は,労 働契 約 の 解 消 に 関 す る もの を 除 き,有 期 契 約 労 働 者 に も 適 用 され る こ とが,同L.1242-15条. で,有 期 契約 労 働者 の 報 酬 は,同 等 の格 付. で 同 じ職 務 に就 く期 聞 の定 め の な い契 約 の労 働 者 が 当該 企 業 で試 用 期 間後 に受 け取 る報 酬 の額 を下 回 って は な らな い こ とが定 め られ て い る。 さ らに,派 遣 労 働 者 につ い て も,労 働 法 典L.1251-18条. で,派 遣 労 働 者 の報. 酬 は,派 遣 先企 業 で 同 じ職 務 に就 く同等 の格 付 の労 働 者 が試 用 期 間後 に受 け取 る報 酬 の額 を下 回 って は な らな い こ とが定 あ られ て い る。 第3に,男. 女労 働者 間 の賃 金平 等 に つ い て は,労 働 法 典L.3221-2条. べ て の 使 用 者 は,同 一 労 働(unmemetravail)あ travaildevaleuregale)に. で,「 す. る い は 同 一 価 値 労 働(Un. つ い て,男 女 労 働 者 間 の報 酬 の平 等 を 保 障 す る。」. と規 定 さ れ て い る。 ま た,同L.3221-4条. で,同 一 価 値 労 働 の 判 断 基 準 と して,. ① 資 格,免 状 あ る い は職 業 実 務 に よ っ て認 あ られ る職 業 上 の知 識,② 経 験 に 由 来 す る能 九. 2破. ③ 責 任,④. 肉体 的 あ る い は精 神 的 負 担 が あ げ られ て い る。. 殿 院 社 会 部1996年10月29日. 判 決4. こ の よ う な 明 文 規 定 が あ る な か で,一 egalsalaireegal)」 1996年. 般 的 な 「同 一 労 働 同 一 賃 金(atravail. 原 則 は 明 文 で 規 定 さ れ て い る わ け で は な い 。 同 原 則 は,. の 破 殿 院 社 会 部 判 決 を 契 機 と して,そ. の 後 の 裁 判 例 の 積 み 重 ね に よ って. 確 立 され て き た も ので あ る。 1996年10月29日 は,同. じ性 別(女. に 破 殿 院 社 会 部 で 下 さ れ た 判 決(以 下,Ponsolle判 性)の. 原 告Xは,1990年11月6日. 決 とす る). 労 働 者 間 で の 賃 金 格 差 が 問 題 にな った 事 例 で あ った。 に 被 告Yに. 日 に 部 長 秘 書 に 配 置 さ れ た 。Xの. 総 務 秘 書 と して 採 用 さ れ,翌. 税 込 月 給 は8,000フ. 4Cass.soc.290ctobre1996,Bull.civ.V,n°359.. 一34一. 年3月6. ラ ン で あ っ た 。Xは,自.

(5) 法科大学院論集. 分 の賃 金 が 比 較 可 能 な労 働 を行 う他 の秘 書 ら(女 性)の. 第7号. それ よ り も低 い こ とな. どに異 議 を 唱 え,差 額 賃 金 等 の 支 払 い を求 め て提 訴 した。 労 働 審 判 所 はXの 請 求 を認 容 した。 これ に対 しYは,労. 働 法 典L.140-2条(現L.3221-2条)に. 定. め られ た賃 金 平 等 の 原 則 は,男 女 聞 で の賃 金 格 差 に適 用 され る もの で あ る と主 張 した。 破 殿 院 社 会 部 は,Xが. 別 の女 性 労 働 者 と 同一 労 働 を行 って い た の に賃 金 が 低. か っ た こ とを 認 め た上 で,使 用 者 が 正 当化 理 由 と して 主 張 す る勤 続 年 数 の違 い はす で に年 功 手 当で 考 慮 され て い る ので,基 本 給 で 区 別 す る正 当化 理 由 に は な らな い と判 断 した。 そ して そ の 際 に,次 の よ うな 一 般 論 を 示 した。 す な わ ち, 「男 女 間 の賃 金平 等 の ル ー ル は,労 働 法 典L.133-5条4号. お よびL.136-2条8. 号 に述 べ られ た 『同 一 労 働 同 一 賃 金 』とい うよ り一 般 的 な ル ー ル の 適 用 で あ る。 使 用 者 は,当 該 労 働 者 らが 同 じ状 況 に置 か れ て い る以 上,い ず れ か の性 別 のす べ て の 労 働 者 間 の 賃 金 の平 等 を 保 障 しな けれ ば な らな い」。. 3同. 一 労 働 同 一 賃 金 原 則 の 評 価 とそ の 内 容. 本 判 決 は非 常 に注 目 され た 重 要 判 例 とな り,使 用 者 の 指 揮 命 令 権 を平 等 取 扱 いの 要 請 に従 わ せ る傾 向 が 見 られ る 中で,重 要 な 一 時 期 を 画 す る判 決 で あ る と 評 価 さ れ て い る5。 す な わ ち,破 殿 院 は従 来 か ら,前 掲 の差 別 禁 止 規 定 に抵 触 しな い限 り使 用 者 が 異 な る取 扱 いを す る こ とを 認 め て きた 。 これ に対 し,本 判 決 は,賃 金 に関 して 使 用 者 はそ の 決 定 を 明 らか に しな けれ ばな らず,そ. の決 定. が 許 容 され るた め に は,そ こか ら生 じた 取 扱 いの 違 いが 平 等 取 扱 いの ル ー ル に 反 して いて はな らな い と い う要 請 を 示 した の で あ る。 Ponsolle判 決 を契 機 と して,同 一 労 働 同 一 賃 金 原 則 は 今 日す で に判 例 上 の ル ー ル と して 確 立 され て い る と いえ るが,法. シ ステ ム にお け るそ の 位 置 づ け は. 5Jean-Pelissier,AntoineLyon-Caen,AntoineJeammaudetEmmanuelDockes,op.cit.pp.258 -259 .. 一35一.

(6) フ ラ ン スに お け る 「同 一 労 働 同 一 賃 金 原 則 」 の 展 開. 必 ず しも明 らか で はな い。 ま た,Ponsolle判 働 法 典L.133-5条4号. 決 にお いて は,原 告 側 弁 護 士 が 労. とL.136-2条8号(い. ず れ も当 時)を 根 拠 に 「同 一 労. 働 同 一 賃 金 原 則 」 を 援 用 した と言 わ れ て い るが,こ れ らの 規 定 は いず れ も労 働 協 約 に関 す る規 定 で あ り,同 一 労 働 同一 賃 金 と称 して は い る も の の,そ のル ー ル を 言 明 した 規 定 で はな か った6。 しか し,そ の 後 の 破 殿 院 判 例 の 積 み 重 ね に よ って 判 例 上 の 「原 則 的 」 ル ール と して 承 認 され て きた 「同 一 労 働 同 一 賃 金 」 原 則 は,今 日お よそ 次 の よ う に理 解 され て い る7。 す な わ ち,「 使 用者 は,同. じ状 況 に置 か れ て い るす べ て の労 働. 者 聞 の 賃 金 の 平 等 を 保 障 しな けれ ばな らな い。 但 し,同 一(価 値)労 働 を 行 う 労 働者 間 の 賃 金格 差 が,客 観 的 か つ 正 当 で 検 証 可 能 な 理 由 に よ り正 当 化 され る 場 合 に は,同 原 則 に反 す る こ と に は な らな い。」 とい う も の で あ る。 な お,同 一 労 働 同一 賃 金 原 則 に違 反 す る こ とを 示 す 「 事 実 上 の 要 素 」 は労 働 者 が 主 張 立 証 し,賃 金格 差 を正 当 化 し う る 「客 観 的 要 素」 は使 用者 が 主 張 立 証 す る と い う 点 も確 認 され て き て い る。. 4ル. ー ル形 成 の背 景. と こ ろ で,破. 殿 院 が 「同 一 労 働 同 一 賃 金 原 則 」 を 一 般 的 な 法 ル ー ル と し て 導. 入 した の に は どの よ うな背 景 が あ った の だ ろ うか。 こ れ に つ い て は,破. 殿 院 名 誉 部 長 で あ るPhilippeWaquetの. い8。PhilippeWaquetに. 6L.133-5条4号. は,全. よ る と,Ponsolle判. 分析 が興味 深. 決 が 下 さ れ た1996年. 当 時 は,賃. 国 レ ベ ル で 締 結 さ れ た 部 門 協 約 が 拡 張 さ れ る た め に 含 む べ き 内 容 の1つ. し て 規 定 さ れ て い る も の で,「 職 業 カ テ ゴ リ ー ご と に 適 用 さ れ る 以 下 に 列 挙 さ れ た 賃 金 要 素,改 手 続 お よ び周 期 」 と い う項 目 の. 「列 挙 」 のd)に,「. 及 が あ る に す ぎ な い 。 ま た,L136-2条8号 し て,同. は,団. と 定 の. 「同 一 労 働 同 一 賃 金 』 原 則 の 適 用 形 態 」 へ の 言 体 交 渉 全 国 委 員 会 の 責 務 に 関 す る 規 定 の1つ. と. 一 労 働 同一 賃 金 原 則 に言 及 す る に と ど ま る。. 7JeanPelissier,GillesAuzeroetEmmanuelDockes,Droitdutravail25eed.,Dalloz2010,p.891. 8PhilippeWaquet,Retoursur1'arretPonsolle,RDT2008.1,pp.22-26.AntoineMazeaud, Droitdutravail6"ed.,Montchrestien2008,p.640も,個. 別 化 現 象 が 背 景 に あ る と分 析 して い る。. 一36一.

(7) 法科大学院論集. 第7号. 金 決 定 に平 等 原 則 を適 用 す る こ と に疑 問 を 呈 す る見 解 と,事 業 主 の 決 定 を司 法 が コ ン トロー ル す べ き とす る見 解 とが 見 られ た が,同 時 に,次 の2つ の 意 味 に お いて 転 換 期 で も あ っ た。 す な わ ち,1つ 個 別化 傾 向 が,も. は労 働 法 の(と. りわ け 賃 金 決 定 の). う1つ は使 用者 の 決 定 に対 す る裁 判 所 の コ ン トロー ル の 増 加. とい う傾 向 が 見 られ た 時期 で あ った とい う こ とで あ る。 労 働 法 の個 別 化 傾 向 は,ま ず 判 例 にお い て 見 られ た 「契 約 の 再生 」 と い う現 象 で あ り,労 働 者 の個 人 的利 益 は契 約 の遵 守 を求 あ る こ と にあ る とい う観 点 か ら,労 働 条 件 変 更 法 理 に お いて 契 約 の 強 制 力 を 重 視 す る傾 向 と して 現 れ た9。 さ らに,労 働 法 の個 別 化 は,1980年. 代 初 頭 のオ ル ー法(lesloisAuroux)が. 労. 働 者 の権 利 や 自由 を促 進 した こ と(就 業 規 則 の範 囲 の 限定 な ど)に も見 られ た。 さ らに,賃 金 に関 して は,前 述 した個 々 の法 規 定 に よ って厳 格 な平 等 原 則 が 定 め られ て い る一 方 で,賃 金 個 別 化 の実 務 は法 が 明確 に禁 止 す るケ ー ス を 除 い て広 く認 あ られ て い る とい うパ ラ ドクス が存 在 した。 つ ま り,男 女 間 の賃 金 平 等 や 不 安 定 雇 用 労 働 者(有 期 契 約 労 働 者 な ど)に 関 す る賃 金 平 等 とい った ケ ー ス に お いて は賃 金 の平 等 を保 障 す る こ とが 義 務 づ け られ て い る の に対 し,そ の 他 の ケー ス. 賃 金 の個 別 化 が 広 く拡 大 して い る分 野 に属 す る労 働 者 も含 め て. につ いて は,一 般 的 な 平 等 ル ール は規 定 され て い なか った た め,1996年. 当. 時 に は賃 金 の 個 別 化 につ いて 広 い 自 由が 存 在 して い た ので あ る。 そ の よ うな 状 況 の 一 方 で,使 用 者 は 自 らの選 択 や 決 定 を 客 観 的 事 実 に よ って 正 当 化 す る こ とを 求 め られ る よ う にな って い る と い う意 味 で の 「労 働 法 の客 観 化 」,さ らに は 労 働 者 の基 本 権 を重 視 す る こ と に よ って 労 働 者 の権 利 や 自 由 を 向 上 させ る とい う現 象 に,一 般 的 な 平 等 原 則 が 登 場 して くる兆 候 が 見 られ た, とPhilippeWaquetは. 分 析 す る。. この よ うな 労 働 法 全 体 の傾 向 の 中 で,破 殿 院 は,EUレ 9こ. の 問題 に つ い て は,奥. ベルでの男女賃金平. 田香 子 「労 働 条 件 変 更 に お け る 集 団 的 規 制 と労 働 契 約 」 福 祉 社 会 研 究3. 号(2003年)pp.41-52. 一37一.

(8) フ ラ ンス に お け る 「同一 労 働 同一 賃 金 原 則 」 の 展 開. 等 に 関 す る指 令 に つ い て,新 た な 解 釈,す な わ ち,男 女 聞 で の 賃 金 平 等 とい う の は,よ. り広 い一 般 的 な 賃 金 平 等 原 則 の,「 今 日特 に必 要 と され る」 適 用 場 面. に 過 ぎ な い とい う解釈 を 発 見 す る こ と にな った の だ と され る。. 三. 同一 労働 同一賃 金 原則 の展 開. Ponsolle判 決 が提 示 した ル ー ル か ら,具 体 的 な解 釈 上 の 問題 は,① 労 働 者 が 「同 じ状 況 」 に 置 か れ て い るか 否 か,② 異 な る取 扱 い を許 容 しう る 「客 観 的 か つ 正 当 で 検 証 可 能 な 理 由」 が 存 在 す るか 否 か,と. い う点 に現 れ る こ と にな る。. も っ と も,① と② は 明確 な 区 別 の上 に 判 断 され て い る わ け で は な く,正 当 化理 由 が あ るの で あれ ば 同 じ状 況 に は な い と い う結 論 に至 る こ と に な るlo。以 下 で は,具 体 的 な解 釈 を め ぐる い くつ か の事 案 を み る こ とに よ り,同 一 労 働 同 一 賃 金原 則 の展 開 を検 討 す る。. 1評. 価 の レベ ル と事 業 所 協 定 の適 用. 同一 労 働 同一 賃 金 原 則 の評 価 は,企 業 レベ ル で行 うの か,あ る い は 同一 企 業 内 で も事 業 所 レベ ル で行 う こ とが可 能 な の か。 破 殿 院 社 会 部2006年1月18日. 判 決11で は,Zグ. ル ー プ の 各 社 に 適 用 され る. 1969年10月15日 企 業 協 約 の付 属 文 書 に あ た る協 定 が1985年7月11日 た。 同協 定 で は,1985年7月11日. に締 結 さ れ. 以 降 に 開店 す る店 舗 で採 用 さ れ た従 業 員 に つ. い て は,賃 金 に関 す る集 団 的 諸 規 定 は 適 用 され な い と定 あ られ て い た 。 また, 同協 定5条. は,店 舗 の営 業 成 績 に応 じた賃 金 は各 店 舗 の年 次 交 渉 の対 象 とす る. と定 め て い た。1999年1月25日,A店. 舗 の原 告Xと52名. の従 業 員 はB店 舗 で 同. じ仕 事 を行 う 同僚 と の 間 で の不 平 等 な取 扱 い が あ る と主 張 し,差 額 賃 金 の支 払. 10JeanPelissier,GillesAuzeroetEmmanuelDockes,op.cit.,p.895. 11Cass.soc.18janvier2006,Bull.civ.V,n°17.. 一38一.

(9) 法科大学院論集. い を求 あ て提 訴 した。 控 訴 院(ボ 年7月11日. ル ドー控 訴 院2003年6月2日. 第7号. 判 決)は,1985. の協 定 は賃 金 に関 して違 法 な差 別 を 同一 企 業 の労 働 者 問 に設 け る も. ので あ る と判 断 し,Xら. の請 求 を認 容 した。. こ れ に対 し,破 殿 院 は,同 一 企 業 の 労 働 者 間 で の 異 な る取 扱 い は労 働 法 典 L.122-45条(現L.1132-1条)に. い う違 法 な差 別 に は 当 た らな い こ と,企 業 協. 定 は,各 事 業 所 の 特 徴(事 情)を 考 慮 して,い. くつ か の事 業 所 にお け る特 別 の. 賃 金 形 態 を 事 業 所 協 定 に よ り決 定 す る 旨 を定 め る こ とが で き る と判 断 した。 こ の よ う に判 断 す る とす れ ば,た とえ ば,B事 に よ りあ る手 当を 享 受 す る場 合 で も,B事 れ な いA事 業 所 の 労 働 者 は,B事. 業 所 の 労 働 者 が 事 業 所 協 定 の適 用 業 所 の 事 業 所 協 定 の 適 用 範 囲 に含 ま. 業 所 の 労 働 者 と 「同 じ状 況 」 にあ る と いえ な. いの で,同 一 労 働 同 一 賃 金 原 則 を 根 拠 に手 当 を 請 求 す る こ と はで きな い と い う こ と にな る。 しか し最 近 で は,事 業 所 レベ ル で の 異 な る取 扱 い に はそ れ を 正 当 化 す る客 観 的 理 由が 必 要 で あ る との 判 決 も見 られ る よ う にな って い る。 破 殿 院 社 会 部2009年1月21日 所 の 従 業 員 で あ った が,Yの. 判 決12で は,原 告Xほ. か12名 は 被 告YのA事. 業. 他 の 事 業 所 の 労 働 者 に適 用 され て い な い 控 除 が 税. 込 賃 金 に適 用 され て い る こ と に異 議 を 唱 え,差 額 賃 金 の 支 払 い を 求 め て 提 訴 し た 。 原 審(モ. ンペ リエ 控 訴 院2007年6月6日. 判 決)は,A事. 業所の従業員の税. 込 賃 金 に対 す る控 除 は 「同 一 労 働 同 一 賃 金 」 原 則 に 反 す る と判 断 した た あ,Y が 上 訴 した。 破殿 院 は,同 一 企 業 の 異 な る事 業 所 で 同一 労 働 あ るい は 同一 価 値 労 働 を 行 っ て い る労 働者 間 に お い て は,客 観 的理 由(裁 判 官 が そ れ の実 在 と正 当性 を 具体 的 に コ ン トロー ル す る)に 基 づ く場 合 で な け れ ば,異 な る取 扱 い を行 う こ とが で き な い と判 断 した。 した が って,労 働者 が 同 じ状 況 に置 か れ て い る場 合,当. 12Cass.soc.21janvier2009,Bull.civ.V,n°15.. 一39一.

(10) フ ラ ン ス に お け る 「同一 労 働 同一 賃 金 原 則 」 の展 開. 該 労 働 者 間 で賃 金 に対 す る控 除 に つ い て地 理 的範 囲 が異 な る こ とか ら取 扱 い の 相 違 が生 じて い る以 上,そ れ がYに. れ を正 当化 す る た め の客 観 的説 明 が必 要 で あ り,そ. よ っ て証 明 さ れ て い な い と して差 額 賃 金 支 払 い を認 容 した原 審 判 決 を. 支 持 した。 こ の よ う に,破 殿 院 は,同 一 労 働 同一 賃 金 原 則 は 同 じ使 用 者 のす べ て の労 働 者(企 業 レベ ル)で 評 価 され る と判 断 して い る13。 した が って,賃 金 政 策 が企 業 レベ ル で 決 定 され る以 上,同 一 労 働 あ る い は 同一 価 値 労 働 を行 う複 数 事 業 所 の 労 働 者 間 で の 取 扱 い の相 違 は,事 業 所 が 異 な る こ と以 外 の客 観 的理 由 に よ り 正 当化 しう る場 合 に しか 認 め られ な い。 な お,事 業 所 協 定 に ど こ まで の労 使 自治 を認 め るか,言. い換 え れ ば事 業 所 協. 定 に よ る異 な る 利 益 付 与 に ど こ まで 同一 労 働 同 一 賃 金 原 則 が 適 用 さ れ るの か は,後 述 す る新 た な 問 題 に も関 連 す る点 で あ る。. 2「. 正 当 化 理 由 」(客 観 的 か つ 正 当 で検 証 可 能 な理 由)を め ぐ る解 釈. 正 当化 理 由 の存 在 は も っ と も解 釈 の 難 しい問 題 で もあ るが,以 下 で み る よ う に,い. くつ か の事 項 に つ い て 判 断 が 示 され て きて い る14。. (1)勤. 続 年 数(anciennete). 破 殿 院 社 会 部2001年6月20日. 判 決 で は,原. 告Xは1990年12月1日. よ り医 療 薬 品 指 導 員(conseillermedico-pharmaceutique)と 1993年1月1日 年9月14日. 13こ. か ら 営 業 部 長(directeurcommercial)に. に 被 告Yに し て 採 用 さ れ,. 就 い た 。Yは,1994. の 書 面 に よ り経 済 的 理 由 に よ る 企 業 再 構 築 を 理 由 に,Xに. れ に よ り,同. 対 し,営. じ 労 働 協 約 が 適 用 さ れ る 場 合 で も 他 企 業 の 労 働 者 は 比 較 対 照 と な ら な い た め,外. 部 労 働 者 に は 関 係 し な い 。 但 し,外. 部 労 働 者 の 中で も派 遣 労 働 者 の 場 合 は平 等 取 扱 いの 明文 規 定 が. あ る の で そ れ が 適 用 さ れ る(L1251-18条)。 14ChristopheRade,VariationsautourdelajustificationdesatteintesauprincipeCatravail egal,salaireegal),Dr.soc.2009,p.399.. 一40一.

(11) 法科大学院論集. 業 部 長 ポ ス トの廃 止 を通 知 し,プ ロパ ー(visiteurmedical)の た。Xが. 第7号. ポ ス トを提 案 し. こ の労 働 契 約 変 更 を拒 否 した の で,Yは1994年11月23日. の書 面 で経 済. 的理 由 に よ りXを 解 雇 した。 破 殿 院 は,こ の判 決 に お け る判 断 の1つ. と して,2人. の労 働 者 が 同 じ活動 を. して い た がXの 賃 金 が 明 らか に低 か った こ とを認 定 した上 で,勤 続 年 数 は そ れ が基 本 給 に組 み込 ま れ て い る場 合 に は賃 金 の相 違 を正 当化 し うる客 観 的要 素 で あ る が,そ れ が賃 金 の相 違 を正 当化 す る か否 か を検 証 す る権 限 は裁 判 官 に あ る の で,こ の検 証 が行 わ れ て い な い控 訴 院判 決 は法 的基 礎 を欠 く と判 断 した。. (2)労 働 の成 果 や質 破 殿 院 社 会 部2005年11月8日. 判 決15で は,原 告Xは1983年3月1日. 書 と して フ ル タ イ ム で被 告Y(弁. 護 士 事 務 所)に 雇 用 さ れ た。Xは,パ. に法 律 秘 ー トタ. イ ム で 同 じ職 に従 事 す る 同僚 のAと の 聞 で 「賃 金 差 別 」 が あ る と主 張 し,差 額 賃 金 の支 払 い等 を求 め て提 訴 した。 原 審(パ. リ控 訴 院2003年1月7日. 職 も格 付 け も同一 で,Xは で あ った。Xの. 判 決)の 認 定 した事 実 に よ る と,XとAは. 月169時 間 働 い て い た が 賃 金 はAよ. 勤 続 期 間 は約2年. でAよ. り も長 い。 一 方,証. り も約30%低. 額. 拠 書 類 に よ る と,. 労 働 の質 は,迅 速 さ ・手 続 に 関す る知 識 ・自発 性 な どに お い て,Xよ. り もAの. 方 が 明 らか に高 か っ た。 原 審 は,こ の よ うなAの 労 働 の質 や職 業 意 識 の高 さ は 両 者(XとA)を. 区別 しう る客 観 的 な相 違 で あ り,賃 金 格 差 は正 当化 さ れ る と. 判 断 した。 破 殿 院 は,ま ず,使 用 者 は一 定 の労 働 者 に高 い賃 金 を与 え る こ とが可 能 で あ るが,そ. の場 合,同. じ状 況 に あ るす べ て の労 働 者 が そ れ を享 受 し うる こ と,か. か る 利 益 の付 与 を 決 定 す る ル ー ル を 予 あ 定 め る こ とが 必 要 で あ る と述 べ て い. 15Cass.soc.8novembre2005,Inedit. 一41一.

(12) フ ラ ンス に お け る 「同一 労 働 同 一 賃 金 原 則」 の 展 開. る。 そ して,同. じ格 付 けのXと 同 じ職 にパ ー トタイ ム で従 事 す るAの 労 働 の 質. が よ り高 い こ とを証 明 し う る客 観 的 基 準 が な い場 合,使 用 者 は 両者 の 賃 金 の相 違 を正 当化 し う る客 観 的要 素 を 示 す必 要 が あ る と した(結 論 的 に は原 審 の判 断 を肯 定 し,Yの. (3)免. 上 告 を棄 却)。. 状. 破 殿 院社 会 部2010年3月17日 る免 状(dipl6me)を. 判 決16で は,原 告Xは2年. 取 得 して いた 。 一 方,Xが. 間 の 教 育 の 後 に取 得 した 免 状(マ を有 して い た。 原 審(ト. 間 の教 育 を必 要 とす. 比 較 対 象 と した 労 働 者 は5年. ル チ メ デ ィ ア技 術 の特 別 な 高 等 教 育 の 免 状). ゥー ル ー ズ控 訴 院2008年4月30日. 判 決)は,従. 事す る. 職 の遂 行 に有 益 な免 状 は レベ ル や期 間 が異 な る職 業 教 育 の取 得 を証 明 す る もの で,賃 金 格 差 を正 当化 す る客 観 的 かつ 正 当 な理 由 で あ る と判 断 し,破 殿 院 も同 様 に判 断 した。 同判 決 に よ る と,使 用 者 は,格 付 け と勤 続 期 聞 が 同 じで 同一 労 働 に従 事 す る 労 働 者 間 の 賃 金 につ いて,と. りわ け免 状 が 従 事 す る職 務 と関 連 して レベ ル や 期. 間 が 異 な る教 育 の 取 得 を 証 明 す る場 合,免 状 が 異 な る こ とを 理 由 と して 違 い を 設 け る こ とが で き る。 この よ うな免 状 は,「同一 労 働 同一 賃 金 」原 則 に照 ら して 賃 金 格 差 を 正 当化 す る客 観 的 か つ 正 当な 理 由 とな る17。 また,同 様 の 例 と して,破 殿 院 社 会 部2008年12月16日. 判 決18も,免. 状 は賃 金. 格 差 の 基 準 と して 認 め られ る と判 断 した 。 免 状 の 種 類 が 異 な って いて も レベ ル が 同 等 で あ る場 合 〔同 じ年 数 の 教 育 を 証 明 す る免状 を 同 等 の 免状 と判 断 〕,免状 の 相 違 だ けで は同 じ職 に就 く労 働 者 間 の 賃 金 格 差 を 根 拠 づ け る こ と はで きな い が,特 別 な 免 状 を 有 して い る こ とが 特 別 な 知 識 を 証 明 す る こ と,そ. 16. Cass.soc.17mars2010,Bull.civ.V,n°70.. 17. SandraLaporte,Droitdutravail,lesarretsdecisifs2009/2010,2010Ed.Liaisons,pp.65-66.. 18. Cass.soc.16decembre2008,Bull.civ.V,ri250.. 一42一. して そ の 知.

(13) 法科大学院論集. 第7号. 識 が 従 事 す る職 務 の 遂 行 に有 益 で あ る こ とを 証 明 しう る場 合 に は,そ れ が 正 当 化 理 由 とな りう る。. (4)職 業 カテ ゴ リー 破 殿 院 社 会 部2008年2月20日. 判 決19で は,幹 部 職 員 と非 幹 部 職 員 の 取 扱 いの. 相 違 が 問 題 とな った 。 原 告Xは2000年7月3日 護 士 と して 採 用 され た 。Yで はi2003年12月29日. に被 告Y(弁. 護 士 事 務 所)に 弁. は,非 幹 部 職 員 にだ け食 券 が 配 布 され て いた 。X. に労 働 契 約 の 裁 判 上 の 解 消 と契 約 の 解 消 に係 る金 銭 の 支 払. い を 求 あ て 提 訴 した が,そ の 請 求 の1つ. に関 連 して 上 記 取 扱 い の 相 違 が 問 題 と. な った。 Yは,非. 幹 部 職 員 カ テ ゴ リー の 労 働 者 にだ け食 券 を 配 布 す る こ と は,あ らゆ. る差 別 とは 異 な る客 観 的 理 由 に 基 づ く取 扱 い で あ るの で,か か る取 扱 い の 相 違 に は根 拠 が あ る と主 張 して い た。 しか し原 審(パ リ控 訴 院2005年5月10日. 判 決). は,企 業 内 の レス トラ ンを 利 用 す るす べ て の 労 働 者 が 同 等 の 利 益 を 享 受 す べ き と判 断 し,食 券 分 に相 当 す る一 定 の 金 銭 支 払 い をYに 命 じる判 決 を 下 した 。 破 殿 院 も,「職 業 カ テ ゴ リー の違 い だ けで は,利 益 の付 与 につ い て,そ の 利 益 に 関 して 同 じ状 況 に 置 か れ た 労 働者 間 の取 扱 い の 相違 を正 当 化 す る こ とは で き な い。 この相 違 は,客 観 的理 由 に 基 づ か な け れ ば な らず,そ の現 実 性 と正 当性 は裁 判 官 が コ ン トロー ル す べ き で あ る。」との 判 断 を 示 し,Yは 取 扱 い の 相違 を 正 当化 し うる客 観 的理 由 を証 明 して い な い と して,原 審 の判 断 を 支持 した。 破 殿 院社 会 部2010年4月7日. 判 決20で は,職 業 カ テ ゴ リー は異 な る が 仕事 上. の 負担 が 同 じで あ る労 働 者 に対 す る取 扱 い の相 違 が 問題 とな った。 原 告Xは,「. 部 門 責 任 者 」 の カテ ゴ リー に属 す る 営 業 外務 員(commerciaux. itinerants)と して 被 告Yに 雇 用 され て い た。Yで. 19Cass.soc.20fevrier2008,Bull.civ.V,ri39. 20Cass.soc.7avril2010,Bull.civ.V,n°86.. 一43一. は,地 方 長(Chefsderegion).

(14) フ ラ ン ス に お け る 「同一 労 働 同一 賃 金 原 則 」 の展 開. の カ テ ゴ リー に 属 す る労 働 者 の 労 働 契 約 に は,自 宅 で の 管 理 業 務(taches administratives)を. 余 儀 な くさ れ る こ との代 償 措 置 と して一 括 手 当 を支 払 う こ. とが 定 め られ て い た。 これ に対 し,原 告Xは,営. 業 外 務 員 の労 働 契 約 に は 同手. 当 の支 払 いが 明 記 され て い な い もの の,そ の職 務 に は,使 用 者 か ら提 供 され た 情 報 機 器 を使 って 自宅 で 行 う管 理 業 務 の一 部 が 含 まれ て お り,市 場 調 査 業 務 に 必 要 な機 器 の 一 部 分 を 自宅 に入 れ る こ とが含 まれ て い る,と い う理 由 で,同 様 の 一 括 手 当の 支 払 いを 求 め た。 破 殿 院 は,ま ず,労 働 者 の 自宅 と い う私 生 活 上 の空 聞 を使 用 者 の求 め に よ っ て 職 業 上 の 目的 で 利 用 す る こ と につ き,労 働 者 に は それ を受 け入 れ る義 務 は な く,労 働 者 が 受 け入 れ る場 合 に は そ の特 別 の 負 担 に よ って 生 じる費 用 を使 用 者 は労 働 者 に補 償 す べ きで あ り,Xも. 金 銭 的 代 償 を主 張 す る権 利 が あ る と判 断 し. た 。 そ の 上 で,部 門 責 任 者 で あ るXも 地 方 長 と 同様 に 自宅 の 一 部 を仕 事 に利 用 して いた とい う点 で 負 担 に関 して は同 じ状 況 に置 か れ て いた と し,使 用 者 が 一 括 手 当 に関 す る との 取 扱 い の 相 違 を 正 当化 しう る客 観 的 理 由を 証 明 して いな い 以 上,Xに. も同 手 当 を 支 払 うべ き と判 断 した 。. 本 判 決 は,前 掲 の2008年2月20日. 判 決 で 示 され た 原 則,す な わ ち,職 業 カ テ. ゴ リー の 違 い だ けで は 同 じ状 況 に置 か れ た 労 働 者 間 の 取 扱 いの 差 異 を 正 当 化 す るの に 十 分 で は な く,使 用 者 は(幹 部 職 員 に対 す る)こ の 差 異 を 正 当 化 しう る 客 観 的 か つ 正 当 な理 由 を 証 明 しな けれ ば な らな い,と い うル ー ル を 確 認 した も の で あ る と評 価 され て い る21。した が って,使 用 者 は,問 題 と な る利 益 ご と に, 労 働者 の カ テ ゴ リー 間 の 差 異 が 正 当 で あ るか ど うか を 検 討 しな けれ ば な らな い こ とに な る(な お,2008年2月20日. 判 決 で 示 され た 原 則 は,後 述 す る労 使 自治. との 関係 で 改 め て 注 目 され る こ とに な る)。 も っ と も,負 担 の程 度 に よ って 付与 す る利益 の 程度 を調 整 す る こ とは 可 能 で. 21SandraLaporte,op.cit.,pp.67-G8.. 一44一.

(15) 法科大学院論集. あ る。 本 件 に お い て も,控 訴 院 は,Xが. 第7号. 一 括 手 当 を受 け る権 利 を 有 す る こ とを. 認 めっ つ,自 宅 で の時 間 的 な い し空 間 的 な 占領 の程 度 の違 い は手 当額 の差 を正 当化 す る客 観 的理 由 に あ た る と して,地 方 長 よ り低 額 で あ る こ とを許 容 して い た。 破 殿 院 もそ の手 法 を有 効 と認 め て い る。. (5)雇 用 市 場 破 殿 院 社 会 部2005年6月21日 緊 急 性)が. 判 決22で は,い わ ゆ る雇 用 市 場 の事 情(採 用 の. 問題 と な っ た。 こ の事 件 で,Yは1994年. 契 約 で 保 育 園 長 と し て 採 用 した が,Xの 10,500フ ラ ンで あ った 。Xが1998年1月13日 同年1月19日. に,Xを. 期 間 の定 め の な い. 月 額 賃 金 は1995年1月1日. 時点で. か ら病 気 休 暇 に入 っ た た あ,Yは. にXの 代 替 と してAを 有 期 労 働 契 約 で採 用 した。Aの 採 用 時 の月. 額 賃 金 は11,000フ ラ ンで,後. に14,500フ ラ ンに 引 き上 げ られ た。Xは. Yに 対 し,同 一 労 働 同一 賃 金 原 則 の適 用 に よ り,Xの. 復 職 後,. 賃 金 をAと 同 じ額 に 引 き. 上 げ る と と も に差 額 賃 金 を 支 払 う こ と を求 あ た が,Yが. 拒 否 した の で 提 訴 し. た。 原 審(モ. 請 求 を棄 却 した。. ンペ リエ控 訴 院2002年2月12日. 破 殿 院 は,Yに. 判 決)はXの. は,保 育 園 の 閉鎖 を避 け る た め に病 気 休 暇 中 の 園長 の代 替 と. して 有 資 格 の園 長 を緊 急 に採 用 す る必 要 性 が あ っ た こ と か ら,同 一 労 働 を行 う XとAの. 間 で の賃 金 の相 違 は客 観 的 理 由 に よ り正 当化 さ れ,同 一 労 働 同一 賃 金. 原 則 に反 しな い と判 断 し,原 審 判 決 を支 持 した。. (6)そ. の他. 破 殿 院 判 例 で 判 断 され て き た以 上 の よ う な事 項 の ほか に,労 働 者 が負 う責 任 の相 違 につ き企 業 グル ー プ レベ ル で の特 別 な管 理 責 任 を負 っ て い る幹 部 職 員 の カ テ ゴ リー に対 して 与 え られ る個 別 的 利 益 につ いて,他. 22Cass.soc.21juin2005,Bull.civ.V,n°206.. 一45一. の執 行 幹 部 職 員 と 同 じ.

(16) フ ラ ン スに お け る 「同 一 労 働 同 一 賃 金 原 則 」 の 展 開. 状 況 に あ る とは言 え な い と判 断 さ れ た 例23,労 働 協 約 の 効 力 発 生 の前 な い し後 に労 働 者 が 雇 用 され た と い う状 況 だ け で は賃 金 格 差 を正 当 化 す る に は不 十 分 で,た. とえ ば,効 力 発 生 時 に在 籍 す る労 働 者 が 被 る不 利 益 を補 填 す る た め に あ. る利 益 が 付 与 され て い るな ど,客 観 的 か つ 正 当な 理 由の 存 在 を証 明 す る こ とが 必 要 と され た 例24な どが み られ る25。. 四. 労 使 自治 と 同 一 労 働 同 一 賃 金 原 則. 以 上 に検 討 して きた よ う に,異 な る取 扱 いを 正 当化 しう る 「客 観 的 理 由」 を め ぐる破 殿 院 判 例 の 展 開 が 見 られ るな か で,2009年. に,冒 頭 で 述 べ た よ うな 新. た な 争 点 が 浮 上 す る こ と にな る。 す な わ ち,労 使 が 団 体 交 渉 の末 に労 働 協 約 を 締 結 す る場 合 に は職 業 カテ ゴ リー ご との 扱 いが な され る場 合 が あ るが,同 一 労 働 同 一 賃 金 原 則 に照 ら して,か か る相 違 に正 当化 理 由が 求 あ られ る のか 否 か と い う問 題 で あ る。. 1破. 殿 院 社 会 部2009年7月1日. 原 告X(男 と してAに Yで. 性)は1991年12月1日. の 吸 収 合 併 に よ り被 告Yと. の 労 働 協 定 に よ り,幹. の 追 加 的 休 暇 を 含 む)が. 決)26. に 訪 問 販 売 ・配 達 員(demarcheurlivreur). 採 用 さ れ た(Aは2004年12月31日. は,1988年4月25日. 暇(5日. 判 決(Pain判. 部 職 員 に は 年 聞30日 分 の 有 給 休. 付 与 さ れ て い た の に 対 し,非. 者 に は 年 間25日 分 が 付 与 さ れ て い た 。 こ の こ と か ら,Xは て,有. な る)。. 幹 部 職 員 の労 働. 請 求 内 容 の1つ. と し. 給休暇手当の差額支払を求めた。. 原 審(パ. リ控 訴 院2007年3月28日. 判 決)は,1988年. 23Cass.soc.11janvier2005,Inedit. 24Cass.soc.21fevrier2007,Bull.civ.V,n°27. 25Memosocial2010,EditionsLiaisons2010,pp.887-891. 26Cass.soc.ljuillet2009,Bull.civ.V,n°168.. 一46一. の 労 働 協 定 に よ って 有 給.

(17) 法科大 学院論 集. 第7号. 休 暇 付与 日数 に幹 部 職 員 との 差 が あ る こ とが事 実 だ と して も,労 使 が職 業 カ テ ゴ リー に よ って異 な る休 暇 日数 を 定 め る こ とは 禁 じ られ て お らず,幹 部職 員 の 特 別 の 負 担 と りわ け責 任 の 重 さ はか か る取 扱 い の相 違 を正 当 化 す る と して,原 告 の請 求 を棄 却 した。 この 点 につ い て破 殿 院 は,以 下 の よ う に判 示 した。 す な わ ち,平 等 取 扱 原 則 (leprinciped'egalitedetraitement)(意. 味 内容 と して,Ponsolle判. 決 によ り. 示 され た"同 一 労 働 同 一 賃 金 原 則"と 同 様 で,そ れ が拡 充 され た もの と理 解 さ れ て い る。)に よ り,「職 業 カテ ゴ リー の違 い だ けで は あ る利益 の 付 与 につ い て 同 じ状 況 に置 か れ た 労 働者 間 の 取 扱 い の 相違 を 正 当 化 す る こ と はで きず,こ の 相 違 は客 観 的理 由 に基 づ くもの で な けれ ば な らな い。 そ して 裁 判 官 は客 観 的 理 由の 現 実 性 と正 当 性 を 具 体 的 に コ ン トロ ー ル しな けれ ば な らな い。 控 訴 院 は, 幹 部 職 員 へ の 利 益 の 付 与 が 客 観 的 理 由 に よ って 正 当 化 され るか 否 か を 検 討 して いな い の で,そ の 判 決 は法 的 根 拠 を 欠 く。」 とい う判 断 で あ る。. 2本. 判 決 の 分 析 と評 価. 職 業 カテ ゴ リー が 異 な る と い う こ と 自体 で は正 当 化理 由 にな りえ な い と い う 判 断 は,す で にそ れ 以 前 の 判 決 で 示 され て い た。 た とえ ば,前 掲 の2008年2月 20日 判 決 で あ る。 同 判 決 で す で に,破 殿 院 社 会部 は,「職 業 カテ ゴ リー が 異 な る と い う こ とだ けで は,あ る利 益 に関 して 同 じ状 況 に置 か れ て い る労 働 者 間 で の 取 扱 いの 相 違 を 正 当 化 す る こ と はで きな い。 この 相違 は客 観 的 理 由 に基 づ いて いな けれ ばな らず,裁 判 官 が そ の 真 実 性 と正 当 性 を 具 体 的 に コ ン トロー ル す べ きで あ る。」 と述 べ て い た。 これ に よ り,破 殿 院 で は,「 幹 部 職 員 の 地 位 そ れ 自 体 で は取 扱 いの 相 違 は正 当化 され な い」 こ とが 肯 定 され て きた と言 え る。 問 題 は,2008年. 判 決 が 事 業 主 の 一 方 的 決 定 の 適 用 につ いて 上 記 の ル ー ル を 示. して いた の に対 し,2009年7月1日. 判 決(以 下,Pain判. 決 とす る)が,労. 使の. 交 渉 妥 結 の結 果 で あ る労 働 協 約 の 適 用 に よ る利 益 につ いて も同 じル ー ル が 妥 当 一47一.

(18) フ ラ ンス に お け る 「同一 労 働 同一 賃 金原 則 」 の 展 開. す る と判 断 した点 で あ る。 と りわ け部 門 レベ ル協 約 の場 合,カ. テ ゴ リー 別 の 付. 属 書 を伴 うの が実 務 上 定 着 して い るの で,理 論 上 は も とよ り実 務 上 も影 響 が 大 き い と考 え られ た27。ま た,多. くの労 働 協 約 が と くに理 由 を 正 当 化 す る こ とな. く職 業 カ テ ゴ リー に応 じた異 な る取 扱 い を設 け て い るの で,幹 部 職 員 に 関 す る 諸 制 度 の特 殊 性 に及 ぶ 影 響 が懸 念 され た28。 学 説 に は,本 判 決 に疑 問 を呈 し,取 扱 い の相 違 が労 働 協 約 に 由来 す る もの で あ る場 合 に は そ の正 当化 理 由 に対 す る 「司法 コ ン トロー ル」 を抑 制 的 に考 え る べ き と の見 解 が 多 い。 そ の理 由 の多 くは,労 使 の交 渉 妥 結 の結 果 と して締 結 さ れ る労 働協 約 は全 体 的 な バ ラ ンス を形 成 して い る こ とが 多 い こ と な どに あ り, 労 使 間 で 達 した合 意 を 裁 判 官 が 突 然 否 定 す る こ とへ の疑 念 が あ る29。 た とえ ば,ChristopheRadeは,本. 判 決 の論 理 に2つ の解 釈 の可 能 性 が あ る. こ と を指 摘 す る30。1つ は,破 殿 院 が,幹 部 職 員 が 他 の労 働 者 よ りも多 くの休 暇 を 必 要 とす る労 働 条 件 に あ っ た と い う こ と を確 認 しう る よ うな要 素 が 存 在 し な い と して,原 審 判 決 の 誘 因 が 不 十 分 で あ る と い う観 点 か ら判 断 を下 した と い う解 釈 で あ る。 も う1つ は,問 題 とな って い る利 益 の 性 質 か ら,幹 部 職 員 の職 務 に伴 う責 任 や 拘 束 と い う論 理 が 本 質 的 に適 切 で な い と い う観 点(本 判 決 で 言 え ば,年 次 有 給 休 暇 は職 業 活 動 に よ る疲 労 か ら休 息 す る た め の 制 度 で は な く, 生 活 時 間 の 均 衡 な 配 分 の 機 会 で あ る と同 時 に,人 と して の 成 熟 の 機 会 を 見 いだ す 手 段 で あ るの で,そ れ は す べ て の 労 働 者 につ いて 同 じで あ る と い う観 点)で あ る。 そ の 上 で,労 働 協 約 の 適 用 が 問 題 にな るケ ー ス にお い て は,司 法 コ ン ト ロー ル は最 低 限 の コ ン トロー ル の み 行 い,取 扱 い の 相 違 を 正 当 化 す る理 由の 評 27Paul-HenriAntonmattei,Avantagecategorield'origineconventionnelleetprinciped'egalite detraitement:evitonslatempete!,Dr.soc.2009,pp.1169-1170. 28JeanPelissier,GillesAuzeroetEmmanuelDockes,op.cit.,p.897. 29例. え ば,年. 休 日 数 の 問 題 は,法. 律 上 は 週78時. 間働 くこ と が可 能 に な る特 別 な 制度 に よ る幹 部 職 員. の 長 時 間 労 働 に 対 す る 代 償 と も 考 え ら れ る(Observationssur1'arretdu1"`juillet2009(ChristopheRade),Dr.soc.2009,p.1004.)0 300bservationssur1'arretdu1町juillet2009(ChristopheRade),Dr.soc.2009,p。1004.. 一48一.

(19) 法科大学院論集. 価 が 明 らか に誤 っ て い る場 合(前 掲 の後 者 の解 釈)だ. 第7号. け に と ど め るべ き だ と指. 摘 す る。 Paul-HenriAntonmatteiは,Pain判. 決 が カ テ ゴ リー別 の付 属 書 を作 成 して. き た労 働 協 約 実 務 を 終 了 させ る こ と にな る ので はな いか,こ の 判 決 は あ ま りに も乱 暴 に労 使 の 規 範 的 自治 を 退 けて い る の で はな いか,と. い う疑 問 を 呈 す る。. そ して,こ う した疑 問 に対 す る破 殿 院判 事 の見 解,す な わ ち,「労 使 自治 も無 制 限 で はな く,労 使 も平 等 取 扱 原 則 を 遵 守 しな けれ ば な らな い。 した が って,客 観 的 理 由 に よ って 正 当 化 され な い取 扱 い の 相違 を設 けな い よ う に しな けれ ば な らな い」 とい う見 解31に 対 し,そ の 「正 当化 」 の基 準 の評 価 が 中心 的 問題 にな る こ とを指 摘 す る。 す な わ ち,団 体 交 渉 の過 程 で,カ テ ゴ リー別 の取 扱 い の相 違 は利 益 ご との相 互 譲 歩 か ら生 じる こ と もあ り,そ の場 合,諸 規 定 の不 可 分 性 か ら,相 違 を正 当 化 す る客 観 的理 由 につ い て は これ を全 体 的 に評 価 す べ き と主 張 す る。 こ う した (相 互 譲 歩 の よ うな)協 約 実 務 を 考 慮 に入 れ な け れ ば,カ テ ゴ リー 別 の交 渉, ひ い て は カ テ ゴ リー別 の組 合 活 動 自体 が 再 検 討 され る こ と に な る と懸 念 す る。 そ の上 で,「 カ テ ゴ リー 別 交 渉 の尊 重 と平 等 取 扱 原 則 適 用 に よ る 司 法 的 コ ン トロ ール の 必 要 性 との 間 で,妥 協 の道 」=行 政 法 上 の 越 権 に対 す る裁 判 官 の 制 限 的 コ ン トロー ル を モ デ ル と した コ ン トロー ル の 制 限 と い う道 を と るべ きだ と す る。 そ の 場 合,取 扱 い の 相違 の 「正 当性 」は団 体 交 渉 の メ カニ ズ ム 自体 に よ っ て 獲 得 され て い る と推 定 され,司 法 コ ン トロー ル は理 由 の 「客 観 性 」 だ けを 対 象 とす べ きだ と主 張 す る。 Jean-EmmanuelRayも. 本 判 決 を 批 判 的 に評 して い る32。そ の 最 大 の批 判 点. は,労 働 協 約 と使 用者 の一 方 的 決 定 との 根 本 的 な 相違 を無 視 して い る とい う こ. 31Paul-HenriAntonmattei,op.cit.,p.1169. 32Jean-EmmanuelRay,DroitdutravailDroitvivant19eed.,EditionsLiaisons2010,pp.203‐ 204.. 一49一.

(20) フ ラ ンス に お け る 「同一 労 働 同一 賃 金原 則」 の 展 開. とで あ る。 労 使 の合 意 に よ る協 約 上 の 利益 に つ い て は,通 常,単. な る力 関 係 や. 駆 け 引 き に よ る場 合 が 多 い。 した が って,労 使 が 署 名 し た労 働 協 約 につ い て は,差 別 の ケ ー ス で な い 限 り,交 渉 に よ る 当該 利 益 に つ い て の合 意 が1つ の客 観 的 理 由 で あ り,取 扱 い の相 違 の正 当性 が推 定 さ れ るべ き だ と主 張 す る。 言 い 換 え る と,取 扱 い の相 違 は,労 働 協 約 に 由来 す る場 合 に は ア プ リオ リに客 観 的 か つ 正 当 な理 由 に基 づ くの で あ り,司 法 コ ン トロ ー ル が介 入 し うる の は真 の差 別 ケー スの み で あ る と主 張 す る。. 3本. 判決の射程. Pain判 決 で示 さ れ た よ うな 考 え 方 が一 般 論 に含 ま れ る こ と に な る と,職 業 カテ ゴ リー の み な らず,前 述 した よ うな 同 一 企 業 にお け る事 業 所 の相 違,事 業 所 別 の 労 働 協 定 が ど う評 価 され る こ と にな るの か と い う問 題 も生 じう る。 た とえ ば,Pain判 EDF判. 決 の 意 義 と射 程 に 関 して,1999年10月27日. のい わ ゆ る. 決33に お いて 提 示 され た ル ー ル,す な わ ち,異 な る事 業 所 の 事 業 所 協 定. に よ り同 一 企 業 内 の 労 働 者 間 で の 異 な る 取 扱 い を設 け る こ とが で き る とす る ル ー ル は見 直 さ れ た こ と にな る の か,と い う問 いが 発 せ られ て い る34。1999年 10月27日 判 決 に お い て,破 殿 院 は,同. じ企業 の労 働 者 間 で の取 扱 い の 相違 は 労. 働 法 典L.122-45条(現L.1132-1条)に. い う違 法 な 差 別 に は当 た らな い こ と,異. な る事 業 所 内 で の 団体 交 渉 は 同一 企 業 の労 働 者 間 の取 扱 い の相 違 を設 け る こ と が で き る こ と,し たが って あ る事 業 所 協 定 の適 用 範 囲 に入 らな い労 働 者 は 同協 定 に よ る利 益 を享 受 で き な い こ とを理 由 と して差 別 で あ る と主 張 す る こ とが で き な い,と 判 断 して い たか らで あ る。 結 論 的 に は,少 な くと も今 日の判 例 状 況 か らす れ ば,事 業 所 が異 な る とい う 理 由の み で な く,そ れ に よ って あ る利 益 の付 与 につ いて 異 な る取 扱 い をす る客 33Cass.soc.270ctobre1999,Bull.civ.V,n°422. 34JeanPelissier,GillesAuzeroetEmmanuelDockes,op.cit.,p.897.. 一50一.

(21) 法科大学院論集. 第7号. 観 的 理 由 が 求 め られ る こ と にな る と考 え られ る。. お わ りに. 法 原 則 と集 団 的 な労 使 自治 に よ る労 働 条 件 決 定 との 関係,さ 合 意 と の 関 係 と い う問 題 は,よ. ら には個 別 的 な. り広 い 射 程 を もつ 労 働 法 上 の 重 要 な 論 点 で あ. る。 言 い換 えれ ば,集 団的 な い しは個 別 的 な合 意 に よ って法 規 定 を ど こま で適 用 除 外 し うるか,労 使 自治 や契 約 の 自由 は ど こま で尊 重 さ れ るべ き か とい う一 般 的 問 題 に関 連 す る。 また,フ. ラ ンスで は,労 使 自治 を重 視 す る近 年 の傾 向 が あ る一 方 で,労 働 者. 個 人 の 基 本 権 を 保 障 す る と い う観 点 も考 慮 され て きた 。 判 例 上 の 同一 労 働 同一・ 賃 金 原 則 が 労 働 条 件 の 個 別 化 現 象 や 労 働 法 の 客 観 化 を 背 景 と して 登 場 して き た こ とを 考 え れ ば,Pain判. 決 に現 れ た 方 向 性 は,基 本 権 保 障 の 観 点 が よ り強 く現. れ た もの と見 る こ と もで き る。 2009年7月1日. 判 決 が,労 働 協 約 に由 来 す る利 益 に つ い て 生 じる取 扱 い の 相. 違 を め ぐ って い か な る影 響 を与 え る こ とに な るの か は,今 後 の さ らな る判 例 の 展 開 に委 ね られ て い る。 今 後 の動 向 や さ らな る 問題 に つ い て は,改 め て検 討 す る こ とと した い。. 一51一.

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