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電力需要家エネルギーサービスシステムに関する研究

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Academic year: 2021

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Title

電力需要家エネルギーサービスシステムに関する研究( 本文

(Fulltext) )

Author(s)

山田, 倫久

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(工学) 工博甲第580号

Issue Date

2020-03-25

Type

博士論文

Version

ETD

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/79347

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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岐阜大学

博士論文

電力需要家エネルギー

サービスシステム

に関する研究

2020 年 3 月

山田倫久

(3)

目次

第1章 序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.1 本研究の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1.2 課題と従来の研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.3 目的と実施事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 第2章 電力需要の計量 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 2.1 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 2.2 次世代電力計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2.2.1 無線伝送方式による次世代電力計 ・・・・・・・・・・ 9 2.3 次世代電力計の配置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 2.3.1 無線伝送方式ネットワーク ・・・・・・・・・・・・・ 10 2.3.2 無線伝送方式スマートメータの導入 ・・・・・・・・・ 11 2.4 次世代電力計の通信シミュレーション ・・・・・・・・・・・・ 12 2.4.1 通信トラフィックシミュレーション方法 ・・・・・・・ 12 2.4.2 シミュレーション結果 ・・・・・・・・・・・・・・・ 12 2.5 配置分布モデルの空間解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 2.5.1 配置分布モデルの空間解析方法 ・・・・・・・・・・・ 15 2.5.2 配置分布モデルの空間解析の考察 ・・・・・・・・・・ 17 2.6 結言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 第3章 電力需要の監視 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 3.1 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 3.2 遠隔監視通信 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 3.2.1 インターネット通信方式による監視 ・・・・・・・・・ 21 3.2.2 BACnet/WS 遠隔監視通信 ・・・・・・・・・・・・・・ 21 3.3 通信データ欠損 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 3.3.1 インターネット通信パケット欠損モデル ・・・・・・・ 25 3.3.2 バーストパケット欠損モデル ・・・・・・・・・・・・ 25 3.3.3 バーストパケット欠損の実験方法 ・・・・・・・・・・ 27 3.3.4 データ伝送時間ばらつき ・・・・・・・・・・・・・・ 28 3.4 通信データ情報量シミュレーション ・・・・・・・・・・・・・ 31 3.5 データ伝送時間への影響評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 3.5.1 評価パラメータの選定 ・・・・・・・・・・・・・・・ 32 3.5.2 実験およびシミュレーション結果 ・・・・・・・・・・ 32 3.5.3 データ伝送時間への影響評価の考察 ・・・・・・・・・ 33 3.6 結言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 第4章 電力需要の制御 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 4.1 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39

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4.2 ビル施設制御 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 4.3 ビル施設フィールドバス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 4.3.1 CSMA 型フィールドバス ・・・・・・・・・・・・・・ 41 4.3.2 ゲートウェイのパケットバッファリング ・・・・・・・ 42 4.4 待ち行列モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 4.4.1 バッファリングパケットのための待ち行列モデル・・・・ 43 4.4.2 単独バーストパケット到着モデル ・・・・・・・・・・ 43 4.5 過渡解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 4.5.1 過渡特性の式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 4.5.2 時変統計値 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 4.6 過渡特性の解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 4.6.1 待ち行列モデルのパラメータ ・・・・・・・・・・・・ 48 4.6.2 過渡特性計算の結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 4.7 過渡特性解析の検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.7.1 最大予想パケット数 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.7.2 予想パケット数の半減期 ・・・・・・・・・・・・・・ 53 4.8 ビル施設制御ネットワークの考察 ・・・・・・・・・・・・・・ 56 4.8.1 サービスプロセスの統計的適合度検定 ・・・・・・・・ 56 4.8.2 M/M/1 待ち行列システムの許容量 ・・・・・・・・・・ 57 4.8.3 標準偏差の推定誤差 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 4.9 結言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 第5章 電力需要のサービス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 5.1 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 5.2 電力需要家エネルギーサービス ・・・・・・・・・・・・・・・ 62 5.3 FastADR アグリゲーション ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 5.3.1 Web サービスの制約条件 ・・・・・・・・・・・・・・ 64 5.3.2 Web サービス遅延目標値 ・・・・・・・・・・・・・・ 64 5.4 待ち行列モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 5.4.1 FastADR アグリゲーションと待ち行列 ・・・・・・・・ 66 5.4.2 M/M/1 待ち行列過渡解析 ・・・・・・・・・・・・・・ 67 5.4.3 FastADR アグリゲーション性能理論解析 ・・・・・・・ 69 5.5 エネルギーサービスシミュレーション ・・・・・・・・・・・・ 70 5.5.1 シミュレーション方法 ・・・・・・・・・・・・・・・ 70 5.5.2 Web サービスシミュレーション ・・・・・・・・・・・ 70 5.5.3 シミュレーション結果 ・・・・・・・・・・・・・・・ 71 5.6 広域分散需要家に対する拡張性 ・・・・・・・・・・・・・・・ 74 5.6.1 理論解析誤差の評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 74 5.6.2 拡張性の検討例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74

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5.6.3 全体時間への考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 5.7 結言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 第6章 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 78 6.1 本研究の成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 6.2 今後の展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82 主要発表論文 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 付録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 付録A 時変確率の閉形式の導出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93 付録B TCP/IP 解析モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106 付録C 無線伝送方式スマートメータ配置モデル ・・・・・・・・・・・ 122 付録D BACnet/WS バーストパケットモデル ・・・・・・・・・・・・・ 132

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第1章

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2 1.1 本研究の背景 現在,我が国は従来の電力システムを変革する大きな転換点に立っている。2012 年の 東日本大震災以来の原子力発電の再稼働問題,化石燃料や原子力から再生可能エネルギ ーへの転換,大型発電所による集中型から多数の発電システムによる分散型への変化な どが起こっている。 こうした従来の電力システムを変えざるを得ない問題に直面して,政府は電力小売り 事業の発足,発送電事業の分離などによって我が国の電力システムの改革を推進してい る。しかし電力システムを変革するにあたって,電力の供給側だけではなく,需要側に も変化が求められる。 従来は,需要家は使いたいときに使いたいだけ電力を使用することができた。しかし, 発電方法の転換によって発電量の調整は難しくなり,需給バランスを保つことが困難に なってきた。そこで,需要家側も需給バランスの調整に貢献するエネルギーサービスが 注目されている。 この需要家側のエネルギーサービスは,スマートメータによる電力使用量の見える化 や IoT の登場による分散型の電力監視制御システムの通信が可能になるなど,さまざま な要件が整い成立に近づいている。 しかしながら,需給バランスに寄与するにはメガワットの規模が必要,つまりは数百, 数千規模の電力機器の制御が必要となる。たとえば,スマートメータの大量導入におけ る配置数が膨大になったときの通信トラフィック,大量の電力機器の制御におけるサー バのシステム計画など,どちらもスケーラビリティの検討が要である。 商用電力システムは人類が構築した最も巨大なシステムのひとつである。これらに需 要家側の電力制御によるエネルギーサービスを実現していくためには,大規模になって いく過程に伴って発生する問題,すなわちスケーラビリティの研究が不可欠である。 このように電力システム改革における需要家側エネルギーサービスを導入する時代に なり,ここで学術的に求められているのは,分散型の大量需要家機器群によるエネルギ ーサービスを実現する要となるスケーラビリティである。電力の計量,監視,制御につ いて大規模化したときの特性の解明が期待されている。

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3 1.2 課題と従来の研究 来るべき我が国の電力システム改革における,需要家側のエネルギーサービスに関す る従来の研究は広範囲に行われている。本論文では前節で述べたように,需要家側の広 域大規模分散型エネルギーサービスシステムのスケーラビリティ研究を行う。この分野 に絞って従来の研究実績を以下に述べる。 (1) 需要家エネルギーサービスにおける電力計量に関する従来研究 まず,電力需要の計量,すなわちスマートメータシステムの大規模化に関わる研究と しては,無線マルチホップ型の研究が主に実施されていた。これまで,無線伝送方式の ス マ ー ト メ ー タ の 性 能 に 関 す る 多 く の 研 究 が 行 わ れ て き た 。 い く つ か の 研 究 [1-1]-[1-3]は規則的に配置された分布を持つモデルの形態を使っている。それを本研 究では正規モデルと呼んでいる。多くの研究[1-4]-[1-6]では,一様乱数分布を持つモ デルを使っておりそれを本論文ではランダムモデルと呼んでいる。また,実際の街の位 置に合わせた分布を持つモデルを使用する研究[1-7]-[1-11]があり,これを本論文では 実際モデルと呼んでいる。 無線伝送方式の通信性能は,スマートメータの配置モデルの種類によって大きく異な る。これらの研究が異なる配置モデルの形態を使用した場合,研究の結果は異なること になる。配置モデルの形態ごとの通信性能の相対比較は興味深い問題である。無線セン サーネットワークに関するいくつかの研究は,空間解析理論を用いたこの配置モデルの 問題に焦点を当てている[1-12]-[1-15]。 しかしながら,これら従来のスマートメータの研究では,実験にしてもシミュレーシ ョンしても,対象台数規模が電力系統規模に適用されるであろう実システムに比べて小 さすぎる。東電管内で 2,900 万台といわれている実運用システムの総メータ台数,配置・ 密度などのスケーラビリティという視点に欠けていた。 (2) 需要家エネルギーサービスにおける電力監視に関する従来研究 次に,需要家側の電力機器を需要調整エネルギーサービスとして利用する際の,消費 電力監視は,広大大量な分散型電力機器群に対する遠隔から広域ネットワークを通じて 監視データを大量に収集する際のスケーラビリティに関する従来研究が必要であり,次 のようなものが行われてきた。 従来から Web サービスによる遠隔監視システムのデータ伝送性能に関して実験やシミ ュレーションによる研究が報告されてきた[1-16]-[1-18]。BACnet(ビル設備のための 通信プロトコル規格)のインターネット Web サービス版である BACnet/WS についても大 量の監視ポイントデータのインターネット伝送時間に関してフィールド試験と理論解 析による研究が報告されている[1-19]-[1-21]。しかし,それらの研究はいずれもイン ターネットのパケット欠損率とデータ遅延時間は定常状態と仮定したものである。 しかしながら,インターネットのパケット欠損率やデータ遅延時間は,過渡的ではあ るが急激に悪化する場合があり,それが遠隔監視システムの大きな問題となる場合があ

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4 る。その代表的な現象として過渡的にパケット欠損が急増するバーストパケット欠損と いう現象があるが,遠隔監視システムがバーストパケット欠損など外乱の影響を許容し, 増大する監視データに対応するというスケーラビリティの視点では研究がなされてい ない。 (3) 需要家エネルギーサービスにおける電力制御に関する従来研究 また,需要家の電力需給を調整するデマンドレスポンスが行われるようになると,ビ ルマルチ空調機などビル設備群がインターネットに接続され,電力需給調整の制御対象 となる。従来のデマンドレスポンスでは 30 分~数時間の粗い時間粒度だったが,今後 の需給調整エネルギーサービスでは数分という時間粒度で高速な通信制御が求められ る。高速なインターネットと低速なビル設備制御ネットワークの接続には速度調整役の ゲートウェイを介して接続される。ネットワークの速度差を緩和するパケットバッファ リング特性に関して,以下の研究が行われてきた。 これまでゲートウェイ全般におけるパケットバッファリング特性に関する多くの研究 がなされてきた。その中でも待ち行列理論を用いた解析がこの問題に対して有効であっ た[1-23][1-24]。しかし,これまでのすべての研究は単に定常状態に関するものであっ た。定常状態の場合,ランダムアクセス型のフィールドバスは定常状態の通信量が非常 に少なるように設計されているため,パケットのバッファリングは重要な問題ではなか った[1-22]。ランダムアクセス型のフィールドバスのパケットバッファリングにおける 重要な問題は,バースト時の一時的な特性である[1-25]。 一時的なバッファリング特性は,ゲートウェイのキャリアセンスマルチプルアクセス (Carrier Sense Multiple Access: CSMA)のようなランダムアクセスプロトコルを実 施することによってコンピュータシミュレーションを使用して研究することが出来る。 しかしながら,CSMA プロトコルの確率論的特性のために,平均過渡特性を得るために膨 大な回数のシミュレーションを必要とする。また平均に加え,分散も重要である[1-22]。 通信量特性の分散を得るためにはさらに多くのシミュレーションを実行する必要があ る。このような膨大な回数のシミュレーションは,スケーラビリティの観点から実用的 な手法とはいえなかった。 (4) 需要家エネルギーサービスにおける電力需要サービスに関する従来研究 そして,電力供給を電力の供給者と需要家が自動的に調整する自動需給応答が行われ るようになると,アグリゲータ(電力抑制量を大規模広域大量に集約するサービスプロ バイダ)が多数の需要家に対し電力抑制のアグリゲーションを行うようになる。広域に 分散する何百,何千という需要家に対して大規模なアグリゲーションを 1 分以内で行う ためには,アグリゲーションのスケーラビリティに関する研究が必要である。 従来の高速アグリゲーションに関する研究では,各需要家負荷の電力制御特性に関わ る検討が中心である[1-26][1-27]。需要家負荷の応答遅延の原因や改善方法に関しては 文献[1-28][1-29],また電力抑制サンプリングに起因するアグリゲーション誤差に関し

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ては文献[1-30]において検討されている。このように電力需要抑制制御そのものはよく 検討されているが,多くの研究では需要家とアグリゲータ間の広域ネットワーク(Wide Area Network: WAN)におけるアグリゲーションの要求/回答 Web サービス遅延につい てあまり検討が進んでいない。 Web サービス遅延が大きくなると単に需要抑制開始が遅れるというだけでは済まない 場合もある。広域高速アグリゲーションにフィードバック制御を採用した場合,離散制 御ループ状に大きな無駄時間が意図せず入ることになる。その結果,電力抑制が振動的 になり深刻な問題となるとの問題提議もある[1-31][1-32]。 この広域高速アグリゲーションを大規模化しても遅延特性を望ましい範囲に維持でき るか,すなわち,スケーラビリティ問題が重要であることがあまり知られていない。そ の数少ない研究として,文献[1-28][1-29]では電力会社サーバと Web サービスする OpenADR 2.0[1-30]によるスケーラビリティの検討が報告されているだけである。アグ リゲータと需要家群の間の高速アグリゲーション広域 Web サービスについて解析的なス ケーラビリティの研究は見当たらない。

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6 1.3 目的と実施事項 本論文では,上記(1)~(4)の課題に共通する従来研究に不足していた大規模に 伴うスケーラビリティに注目してその解析および解析方法を構築するものである。以下, 本論文の目的と実施事項を論文に沿って示す。 第2章では,無線伝送方式スマートメータシステムを大規模に展開していく過程の通 信性能を評価するため,無線伝送方式スマートメータの通信情報量シミュレーションに て 3 種類の配置分布モデルを比較する。3 種類のモデル間のパケット配信率とデータ伝 送時間の傾向の類似性について述べる。次に,通信性能特性と比較してこれらの 3 種類 のモデルの空間分析指数を用いて議論を提示する。 第3章では,需給調整エネルギーサービスとして需要家の電力量を収集する際の広域 ネットワークのバーストパケットの影響を評価するため,BACnet/WS により 1000 点の監 視ポイント値を読み出す場合を想定して,バーストパケットに対する通信性能を実験評 価する。また,バーストパケットモデルによる通信データトラフィックシミュレーショ ンを実施して実験と比較する。インターネット通信方式のシステム設計,開発手法とし てバーストパケット欠損の性能評価シミュレーションを利用することを提案する。 第4章では,ゲートウェイのバッファリング特性を評価するため従来研究では必要だ った膨大なシミュレーション回数を減らすため,M/M/1 待ち行列システムと非定常ポア ソン過程を用いてフィールドバスゲートウェイの過渡挙動をモデル化する。M/M/1 待ち 行列システムに関する微分方程式は,ゲートウェイ内にバッファリングされたパケット 数の時変予想数および標準偏差を推定するために解析的に解かれる。この分析モデルは, フィールドバスゲートウェイにおけるバッファリングされたパケット数のピーク平均 と半減期の現実的な見積もりを提案する。 第5章では,大規模なアグリゲーションに対する電力抑制の振動的な応答を回避する 高速アグリゲーション広域 Web サービスを検討するため,広域に分布するオフィスビル 群を対象にして,アグリゲータ需要家間広域 Web サービスのスケーラビリティについて, この分野では初めて,待ち行列により理論解析を行う。ただし,今回はビル設備が実際 に電力抑制開始してから完了までの時間は待ち行列に含めない。本研究では通信部分だ けをモデル化し,実際の広域 Web サービスを順次伝送する実験し評価する。その結果か らアグリゲータの行うサービスにおけるスケーラビリティについて検討する。 広域に分布した電力需要家のエネルギーサービスシステムの構築には,その分布およ び時間的集中度の粗密をバーストとしてモデル化したうえで,スケーラビリティの解析 が重要であることを明らかにする。

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第2章

電力需要の計量

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8 2.1 緒言 本章では,現在から近い将来の電力網において,電力計が次世代電力計に置き換えら れる過程の電力需要の計量に関する,次世代電力計の配置とスケーラビリティについて 明らかにする。従来の電力計では人手による検針が必要であったのに対し,次世代電力 計では無線伝送方式通信による自動的かつ定期的に検針データの収集がなされようと している。次世代電力計が街中に配置されていく過程では,その次世代電力計の配置の 分布や密度が無線伝送方式の性能に大きく影響をする。 本章では,次世代電力計の配置について,3 種類の分布パターンを定義し,それらの 配置分布モデルについて通信情報量シミュレーションを行った。そのシミュレーション の結果は,全国で数千万台にも及ぶ次世代電力計の置き換え,配置計画の指標となるこ とを提案するものである。

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9 2.2 次世代電力計 2.2.1 無線伝送方式による次世代電力計 世の中にある電力計が次世代電力計に置き換えられようとしている。次世代電力計は スマートメータと呼ばれ,スマートグリッドの主要な構成要素の1つである。スマート メータの設置コストと配置の柔軟性のために,無線伝送方式は,他のスマートメータを 経由することでより広い範囲にあるアクセスポイントに通信できることから採用が期 待されている。ただし,無線伝送方式の性能は実際の配置に大きく依存するため,実際 の配置前に通信性能を評価することが重要である。評価方法としては現地に取り付けて 実験することが望ましいが,特定の場所に依存しないスマートメータシステムの設計指 針を提供するものではない。したがって,適切な参考配置モデルを選択することは無線 伝送方式のスマートメータシステムにおいて最も重要な問題の 1 つである。

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10 図2.1 アクセスポイントを備えた無線伝送方式スマートメータ ネットワーク WAN Electric Company's Metering Data Management System AP AP Multi-hop Wireless Network Smart Meters Access

Point AccessPoint

Smart Meters Multi-hop Wireless Network 2.3 次世代電力計の配置 2.3.1 無線伝送方式ネットワーク 図 2.1 は,アクセスポイント(AP)を有する無線伝送方式のスマートメータネットワ ークの概念図である。単一のアクセスポイントの領域は通常数百メートルの範囲になり, その領域内に数百台のスマートメータが設置される。 一般的に,すべてのスマートメータが同時に,例えば日本標準時で 00:00,00:10,00:20 に検針データを送信し始める。検針データ管理システム(Metering Data Management System: MDMS)はすべてのデータを同じ時刻に合計する必要があるため,すべてのスマ ートメータが検針データを同時に送信することが重要である。この要件により,検針デ ータ送信の通信情報量が急増する可能性がある。このため,パケット配信速度やデータ 送信時間などの通信性能の検討が,無線伝送方式のスマートメータのシステム設計にと って重要な理由である。 本研究では IEEE802.11 無線伝送技術を想定した。典型的な IEEE802.11 スマートメー タの実用通信範囲は 100 [m]未満であるため,アクセスポイントから遠く離れているス マートメータは無線伝送の経路制御技術を使用する必要がある。例えば,図 2.1 に示さ れるようにスマートメータから検針データはアクセスポイントに配信されるために他 のスマートメータによって中継される。 現実のスマートメータの配置の場合,スマートメータは実際の建物の幾何学的位置に よって配置される。それぞれの配置は場所によって異なるので,通信システム設計の本

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11 (a) 正規モデル (b) ランダムモデル (c) 実際モデル 図2.2 3 種類のスマートメータの配置モデル y x L L AP AP AP AP 質的な性能を評価することは困難である。特定の場所と結びついていない不規則性の特 性を持っている一般的なモデルによってこの配置の問題を解決することができる。 2.3.2 無線伝送方式スマートメータの導入 この通信情報量シミュレーションでは,図 2.2 に示すように,1.2 節で述べた 3 種類 のスマートメータ配置モデルを比較のために使用した。それは図 2.2(a)の「正規モデル」, 図 2.2(b)の「ランダムモデル」,図 2.2(c)の「実際モデル」である。 正規モデルは,全てのスマートメータがアクセスポイントの周囲に正方形の格子パタ ーンで配置されている抽象モデルである。一般に,実態でのスマートメータ間の距離は 数十メートルになる。したがって、正規モデルの場合、メータ間の一定距離、つまり正 方形の格子間隔は信号到達距離を 110%で割った距離に設定した。配置を正方形にする ために,スマートメータ数を52, 72, 92, 112, 132の場合について通信情報量シミュレ ーションを行った。 ランラムモデルは,図 2.2(b)に示すように,乱数を使ってスマートメータの配置分布 を与える抽象モデルである。各 スマート メータの座標(x, y)は,x = 𝐿 × 𝑅1 [m], y = 𝐿 × 𝑅2 [m]に設定した。ここで,𝐿は正方形領域の縁の長さ,𝑅1と𝑅2は 0.01 の分解 能を持つ 0.00 から 1.00 までの一様乱数である。スマートメータの分布の平均密度を一 定とするために,総スマートメータ数に応じて縁の長さを𝐿 = 150, 450, 550, 650 [m]と した。 実際モデルでは,スマートメータを建物や家屋の位置に調整するために,都市部の中 心など比較的混雑した地域の航空写真を使用した。図 2.2(c)に示すように,アクセスポ イントの位置は,𝐿 × 𝐿領域の中心にある。ただし,これは必ずしもスマートメータがア クセスポイントの周囲に均等に分散されていることを意味しない。これは,ランダムモ デルと実際モデルの間のスマートメータ分布の重要な違いである。

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12

表2.1 通信情報量シミュレーションのパラメータ

Simulation Parameters Values

Data bit rate 11 [Mbps]

Routing protocol DSDV

Wireless signal coverage 50 [m]

Transport layer UDP

MAC layer IEEE802.11

PHY layer IEEE802.11

Propagation model Two Ray Ground

Wireless radio frequency 2.4 [GHz]

Metering data length 1000 [bytes]

2.4 次世代電力計の通信シミュレーション 2.4.1 通信トラフィックシミュレーション方法 NS-2[2-1]は,スマートメータのデータ伝送のシミュレーション環境である。シミュ レーションのパラメータを表 2.1 に示す。経路探索プロトコル DSDV(Decision-Sequenced Distance Vector)は,送信を開始する前に経路を計画する。したがって,スマートメ ータまたはアクセスポイントが移動しない限り,経路状態は維持される。高速に電力検 針データを収集するために,トランスポート層に UDP プロトコルが採用されている。1 秒間にデータを送受信するビットレートと無線周波数は,IEEE802.11 規格に基づいてい るものとした。スマートメータの配置は前節で説明したように,正規モデル,ランダム モデル,実際モデルとして決定した。 検針データ伝送のシミュレーション計画を作成し,100 回繰り返して平均および変動 を調べた。最初に各スマートメータで送信要求が発生し,次にスマートメータは DSDV 経路探索プロトコルを使用してアクセスポイントへの経路を探索する。その後,検針デ ータはアクセスポイント宛ての伝送のために次のスマートメータに送信されるものと した。 まれに,送信されたパケットが経路上で失われ,アクセスポイントに到達しないこと がある。全スマートメータからのパケット送信施行の総数に対する成功パケット到着数 の割合を,パケット配信率としてシミュレーション結果から計算した。 2.4.2 シミュレーション結果 図 2.3 は,1 つのアクセスポイントあたりのスマートメータの数(Number of smart Meters: 𝑁𝑀)と,正規モデル,ランダムモデル,実際モデルのパケット配信率(Packet

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13 図2.3 各スマートメータ配置モデルのデータ配信率 90 92 94 96 98 100 0 50 100 150 200 P a cke t Deliv e ry Rat e P DR [%]

Number of Smart Meters NM

Regular Model Random Model Actual Model Delivery Rate: 𝑃𝐷𝑅)をシミュレーション結果で示す。縦軸は𝑃𝐷𝑅を%単位で示し,横 軸は𝑁𝑀を示す。 図 2.3 で示すように,3 種類のモデルすべての𝑃𝐷𝑅は𝑁𝑀と共に減少する。正規モデル の場合,150 を超える大規模な𝑁𝑀の場合でも𝑃𝐷𝑅の全ての結果は 94 %を超えている。 ただし,ランダムモデルおよび実際モデルの場合,一部の𝑃𝐷𝑅は大規模な𝑁𝑀の場合 90 % 未満に極端に低下した。図 2.3 は,90 %を超える𝑃𝐷𝑅の通常の結果に焦点を当てる。グ ラフで𝑃𝐷𝑅の最大拡散範囲として定義されている𝑃𝐷𝑅の変動については,正規モデルで は 1.6 %であった。対照的に,ランダムモデルと実際モデルの𝑃𝐷𝑅の変動はどちらも 4.5 %であった。これは 1.6 %に対して 3 倍である。

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14 図2.4 各スマートメータ配置モデルの最長データ送信時間

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1

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図 2.4 に,3 種類のモデルについて各スマートメータからアクセスポイントへの最長 データ送信時間(longest Data Transmission Time: 𝐷𝑇𝑇)のシミュレーション結果を

示す。各データ送信時間は確率変数であるため,𝐷𝑇𝑇は 100 回のシミュレーションを実 行した結果から各最長成功データ送信時間の平均として定義される。 正規モデルの場合,𝑁𝑀が 150 を超えても𝐷𝑇𝑇は 1.8 [s]未満であった。ただし,ランラ ムモデルと実際モデルの場合,𝐷𝑇𝑇は常に正規モデルの場合よりも長くなった。ランダ ムモデルの場合,理由は判らないが極端に長い𝐷𝑇𝑇がいくつかあった。図 2.4 では,4 [s] 未満の通常の𝐷𝑇𝑇に注目した。𝐷𝑇𝑇の変動は,グラフ中の𝐷𝑇𝑇の最大拡散範囲としても 定義した。正規モデルの𝐷𝑇𝑇の変動はほぼゼロであった。一方,ランダムモデルの𝐷𝑇𝑇の 変動は,正規モデルのそれよりも有意に大きかった。ランダムモデルと実際モデルの 場合,𝐷𝑇𝑇の拡散範囲はそれぞれ約 1.2 [s]と 0.7 [s]であった。

(20)

15 図2.5 インデックス𝐼𝐷の比較:各スマートメータの配置モデルの 1 段伝送無線範囲内のメータ数の標準偏差 0 1

2

3 4 5 0 50 100 150 200

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Number of Smart Meters N

M

Regular Model Random Model Actual Model 2.5 配置分布モデルの空間解析 2.5.1 配置分布モデルの空間解析方法 モデルの種類に対する𝑃𝐷𝑅と𝐷𝑇𝑇の依存性を調べるために,空間分析法論の 2 つの指標 を導入した。2 つのうち 1 つは,スマートメータの各配置モデルの配布インデックス𝐼𝐷で ある。インデックス𝐼𝐷は次のように定義する。 ここで,𝑁𝑅は各スマートメータの到達可能範囲内のメータ数,Var[𝑁𝑅]は確率変数𝑁𝑅の 統計的分散である。これは,𝐼𝐷が各メータの到達可能な次のメータの数の標準偏差であ ることを意味する。直感的には,この指標はメートルの不均一分布の程度を表す。イン デックス𝐼𝐷が増加すると,配置モデルのメータ分布の不均一性が増加する。 図 2.5 は,各到達可能範囲内のメートル数の標準偏差を示す。通常モデルの場合,全 ての𝐼𝐷は小さい,つまり 1 未満であるように見える。ランダムモデルと実際モデルの場 合,𝐼𝐷は 1.3 から 4.6 であり,ランダムモデルと実際モデルの間で𝐼𝐷に大きな違いは見 つからなかった。 空間分析方法論の別の指標として,我々は各メートルについて平均最近隣距離𝐴𝑁𝑁を 用いた。𝐴𝑁𝑁は空間統計のよく知られた分布特性である[2-2]。 𝐼𝐷= ( Var[ 𝑁𝑅 ])1 2⁄ (2.1)

(21)

16 図2.6 各スマートメータ配置モデルの最近隣距離𝐴𝑁𝑁の比較: 𝐴𝑁𝑁 = 1 はランダム,𝐴𝑁𝑁< 1 は集中,𝐴𝑁𝑁 > 1 は分散を示す 0 1 2 3 4 0 50 100 150 200

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NN

Number of Smart Meters NM

Regular Model Random Model Town Model ここで,𝐴𝐷𝑂は各スマートメータとその最も近いスマートメータとの間で観測された 平均距離であり,𝐴𝐷𝐸は一様なランダムパターンの理想的な平均距離である。𝐴𝐷𝐸は以 下の式で与えられる[2-2]。 ここで,𝑁𝑀はエリア内のスマートメータの総数,Sはスマートメータのグループを囲 む最少の四角形の面積である。𝐴𝑁𝑁が 1 未満の場合,これは分布が比較的不均一な濃度 であることを意味する。𝐴𝑁𝑁が 1 より大きい場合,これは分布が比較的均等に分散して いることを意味する。𝐴𝑁𝑁が 1 に近い場合,それはランダム分布であることを意味する。 図 2.6 に示すように,正規モデルの𝐴𝑁𝑁は 2.1 から 2.5 であった。ランダムモデルと 実際モデルのそれらは,それぞれ 0.7 から 1.2 と 0.8 から 1.1 であった。ランダムモデ ルと実際モデルの𝐴𝑁𝑁の分布は,1.0 付近で同様であった。これは,配置が定義上比較 的ランダムであることを意味する。その結果,我々の 14 例数の実際モデルのスマート メータの濃度/分散特性,すなわち𝐴𝑁𝑁はランダムモデルとよく適合した。 𝐴𝑁𝑁 = 𝐴𝐷𝑂 𝐴⁄ 𝐷𝐸 (2.2) 𝐴𝐷𝐸 = 1 [ 2 (𝑁⁄ 𝑀 𝑆)⁄ 1 2⁄ ] (2.3)

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17 2.5.2 配置分布モデルの空間解析の考察 前項で述べたように,正規モデルとランダムモデルの両方のパケット配信率𝑃𝐷𝑅は,𝑁𝑀 とともに徐々に減少する。この結果は,スマートメータの分布と経路の総数の不均一な 密度とともに無線伝送の輻輳の可能性が高まると予想したものである。 興味深い結果は,ランダムモデルと実際モデルの𝑃𝐷𝑅の変動は互いに類似しており, 正規モデルとは異なる様態であった。正規モデルに対する𝑃𝐷𝑅の最大拡散範囲として定 義された𝑃𝐷𝑅の変動は 1.6 %であった。対照的にランダムモデルと実際モデルの𝑃𝐷𝑅の変 動はどちらも 4.5 %であった。我々のシミュレーションではランダムモデルと実際モデ ルの変動は,どちらも通常モデルの変動よりも約 3 倍大きかった。 この現象の考えられる理由は次のとおりである。まず,ランダム配置の各スマートメ ータで伝送数が増えた。次に,比較的高いメートル密度の地点が発生した。これらの理 由により,ランダムモデルと実際モデルの場合,確率的に𝑃𝐷𝑅と𝐷𝑇𝑇の変動が比較的大き くなった。 通信遅延時間性能に関しては,正規モデルの𝐷𝑇𝑇はランダムモデルと実際モデルの𝐷𝑇𝑇 よりも優れていた。𝐼𝐷が小さければ,つまり次のスマートメータの数の変動が少なく, それぞれの次の伝送が安定しており,送信の競合がそれほど激しくない。これはランダ ムモデルと実際モデルよりも優れた性能を示したためである。 実際モデルの配置状況では,ランダムモデルは性能特性に関してより現実的な配置状 況を表す。したがって,実際の配置の前に,次の事前評価が可能である。まず,システ ム計画者は,特定の場所のスマートメータ分布について𝐼𝐷と𝐴𝑁𝑁の空間分析インデック スを確認できる。次に,システム計画者は,その場所での実際の配置の前に,どの形態 のモデルが性能の事前評価に適用可能であるかを判断する。

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18 2.6 結言 本章では,大規模かつリアルタイムな電力需要の計量に関するスマートメータの配置 とスケーラビリティについて論じた。配置モデルの形態の違いを比較するために,無線 伝送方式スマートメータネットワークの通信情報量シミュレーションを行った。通信性 能の評価のために,3 種類のスマートメータ配置モデル,すなわち,正規モデル,ラン ラムモデル,実際モデルを調べた。 シミュレーションは,正規モデルとランダムモデル,実際モデルとの間のパケット配 信率𝑃𝐷𝑅およびデータ伝送時間𝐷𝑇𝑇の差が,スマートメータの数の増加と共に大きくなる ことを示した。信頼性に関しては,実際モデルの𝑃𝐷𝑅の変動はランダムモデルと類似し ていた。ランダムモデルと実際モデルのそれぞれの𝑃𝐷𝑅の変動は,正規モデルのそれよ り約 3 倍大きかった。待ち時間に関しては,ランダムモデルと実際モデルの𝐷𝑇𝑇は,正 規モデルの𝐷𝑇𝑇よりも常に悪かった。 配置モデルに 2 つの空間分析インデックスを導入した。この𝐼𝐷と𝐴𝑁𝑁は,実際モデル の分布特性が,正規モデルの分布特性よりもランダムモデルの分布特性に近いことを示 している。この類似性は,実際モデルの𝑃𝐷𝑅と𝐷𝑇𝑇の変動が正規モデルの変動よりもラン ダムモデルの変動に類似していたというシミュレーション結果に対応している。その結 果,パケット配信の信頼性とデータ伝送遅延の変動に関する事前評価は,我々の空間分 析インデックスを使用することにより改善できる。

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19

第3章

電力需要の監視

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20 3.1 緒言 本章では,需要家電力の監視に関する過渡的な通信状態とスケーラビリティについて 明らかにする。近年,オフィスビルなど需要家の設備を遠隔地から監視するサービスが 盛んになり,これらの監視サービスは電力量を計測し,デマンド監視・制御を行うなど, 省エネ対策に役立つだろう。データ収集による可視化なども行われている。具体的な例 としては,空調機や入退室セキュリティ装置,エレベータなどを対象に遠隔監視が行わ れている。 遠隔監視に使われる通信環境にはインターネットが使用されることが多いが,需要家 側のセキュリティ装置であるファイアウォールを通過できるプロトコルでなければな らないことから,インターネットの Web で利用されているプロトコル HTTP またはその 暗号化プロトコルの HTTPS が選択される。 本章では,インターネットを利用したビル設備遠隔監視システムのデータ伝送性能に ついて検討する。HTTP(S)プロトコルの下位層プロトコルである TCP プロトコルの特徴 や通信データの欠損や遅延に大きく影響する回線に流れる通信量が急激に増えるバー スト現象について取り上げ,シミュレーションと実験と性能評価した。インターネット 通信方式のシステム設計において,性能評価シミュレーションを利用することを提案す るものである。

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21 3.2 遠隔監視通信 3.2.1 インターネット通信方式による監視 近年,モノのインターネットと盛んにいわれ,IoT によりインターネットに様々な通 信機能を持つセンサーが接続されている。遠隔監視においても Web サービスと呼ばれる インターネット通信方式によるビル設備遠隔監視システムが採用され始めている。中で もビル設備用の通信規格 BACnet のインターネット Web サービス版である BACnet/WS は 代表的なものである[3-1]-[3-4]。

BACnet/WS は XML ベースによる HTTP/TCP/IP 通信プロトコルを使用した Web サービ スである。BACnet/WS は通常の BACnet とは異なり下層の通信プロトコルが規定されてお らず,IP ネットワークさらにはインターネット上で利用される。したがって,遠隔間シ ステムを運用してみて,伝送速度が遅すぎることが発覚して問題となる場合がある。 Web サービス通信方式の基礎となる TCP 通信プロトコルは,パケット欠損が続けて発 生すると指数関数的に再送信間隔を長くしていくという複雑な動作をする。したがって, バーストパケット欠損状態になった場合は何回かの再送リカバリが重なって極端にデ ータ伝送時間が長くなる。その結果,監視画面の取得においてタイムアウトエラーが発 生してしまうことになる。人間が Web 画面を閲覧している場合は画面取得を再度施行す ればよいが,Web 遠隔監視システムのような M2M システムにおいては自動リカバリが必 要になる。その場合,システム設計時に再送リカバリやタイムアウト時間を検討するに あたり,一挙に何百,何千のビル設備監視データを送信するバーストパケットの通信状 態におけるスケーラビリティの定量的評価が重要になってくる。 3.2.2 BACnet/WS 遠隔監視通信 BACnet/WS の遠隔監視システムの IP 通信パケットのトラフィックを図 3.1 に示す。 遠隔監視側からビル設備側に複数の監視ポイント値をまとめて要求するのが getValues という Web サービスである。この getValues サービスでは,BACnet/WS 通信 規約によって定められたメッセージ構造に従って,監視ポイントを XML データ形式で指 定して設備側 Server に要求する。その際,図 3.1 に示すように,リクエスト XML メッ セージは多数の IP パケットに分割されて Server に伝送される。BACnet/WS Server はリ クエストを処理して要求されたポイントデータを XML データ形式にしてレスポンスを複 数の IP パケットとして Client に返送する。 Client と Server の間のネットワーク状態によっては,送出した IP パケットのうち途 中で消失して相手側に届かない場合がある。インターネットではこのような通信パケッ ト欠損が時折発生することを前提としている。TCP/IP プロトコルでは,IP パケット単 位で相手の受領確認の ACK を待つ。必要とあれば当該 IP パケットを再度送信する巧緻 な仕組みにより信頼性が確保されている。

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22 図3.1 BACnet/WS の IP 通信パケットのトラフィック TCP/IP プロトコルによるデータ伝送速度の解析式は種々提案されてきた。TCP は複雑 なアルゴリズムのプロトコルであり,また,パケット往復時間やパケット欠損は確率現 象であるため,数学的なモデル化が難しい。本研究では実用性を重視して比較的短い数 式で表現できる Padhye のモデルを用いる[3-10]。 これは Reno とい TCP プロトコルのバージョンをモデル化したものであり,この分野で は多くの研究者が引用している。このモデルによると,平均パケット伝送スループット 𝑆𝑎 [packet/s]は,伝送路上の平均パケット欠損率𝑝と平均パケット往復時間𝑇𝑅𝑇 [s]の関数 として以下の式で表される。ここで,𝑊(𝑝)はパケット欠損率𝑝における TCP 受信ウィン ドウサイズ,𝑊𝑚は設定された TCP 最大受信ウィンドウサイズ,𝑇𝑂はパケット欠損時の TCP タイムアウト値である。 𝑆𝑎(𝑝, 𝑇𝑅𝑇) = { (1 − 𝑝) 𝑝⁄ + 𝑊(𝑝) 2⁄ + 𝑄(𝑝, 𝑊(𝑝)) 𝑇𝑅𝑇(𝑊(𝑝) + 1) + 𝑄(𝑝, 𝑊(𝑝)) ⋅ 𝐺(𝑝) ⋅ 𝑇𝑂⁄(1 − 𝑝) ; if 𝑊(𝑝) < 𝑊𝑚 (1 − 𝑝) 𝑝⁄ + 𝑊𝑚⁄ + 𝑄(𝑝, 𝑊2 𝑚) 𝑇𝑅𝑇(𝑊𝑚⁄ + (1 − 𝑝) (𝑝 ⋅ 𝑊4 ⁄ 𝑚)+ 2) + 𝑄(𝑝, 𝑊𝑚) ⋅ 𝐺(𝑝) ⋅ 𝑇𝑜⁄(1 − 𝑝) ; Otherwise (3.1) 𝑄(𝑝, 𝑊) = min (1,(1 − (1 − 𝑝) 3)(1 + (1 − 𝑝)3)(1 − (1 − 𝑝)𝑊−3) 1 − (1 − 𝑝)𝑊 ) (3.2)

(28)

23 𝑊(𝑝) = 2 3⁄ + (4(1 − 𝑝) (3𝑝)⁄ + 4 9⁄ )1 2⁄ (3.3) 𝐺(𝑝) = 1 + 𝑝 + 2𝑝2+ 4𝑝3+ 8𝑝4+ 16𝑝5+ 32𝑝6 (3.4) 上記 Padhye の TCP スループット解析式の導出は,Padhye の TCP アルゴリズムモデル から単位時間当たりのエンドツーエンドで送受信される IP パケット数の期待値として 導出する。図 3.2 は,種々のパケット往復時間 𝑇𝑅𝑇とパケット欠損率𝑝で(3.1)式により 計算した TCP/IP データ伝送スループット𝑆𝑎(𝑝, 𝑇𝑅𝑇)の特性を示したものである。この式 が計算する𝑆𝑎(𝑝, 𝑇𝑅𝑇)は単位時間当たりの平均伝送パケット数としてスループットを表 している。

データ長をバイト数で表した場合は,Maximum Segment Size(MSS)で除して TCP サー バデータ長をパケット数に換算して計算結果を使う必要がある。ここでは,インターネ ットのエンドツーエンドで見た MSS を 1.46 kB としてパケット数を計算する。 TCP プロトコルは伝送するデータを単純なバイト列として扱うので,スループットは データ種類・構造に依存せず,単純に全バイト数にのみ影響する。したがって,ここで 計算する伝送スループット計算式は TCP サーバのデザインや内容に関係なく,TCP サー バから伝送するデータバイト数だけに依存する。したがって,本理論計算は,BACnet/WS のように,TCP サーバからデータを IP パケットに分解して取得する方式の TCP データ伝 送通信システム一般に適用できる。 ここで重要なことは,この計算式(3.1)のスループットで決まるのはデータ伝送時間だ けでということである。データ伝送時間が他の要因に比べて支配的な場合にこの解析式 を使う意味がある。他の要因とは,クライアントの送信前処理時間やサーバの応答デー タ構成時間などである。本研究はインターネット経由の TCP サーバデータ伝送を前提と しているのでデータ伝送時間が支配的である。

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24 図3.2 TCP データ伝送性能理論計算 0 20 40 60 80 100 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 T C P ス ルー プ ット S a [p ac ke t/ s] PINGパケット往復時間 (RTT)TRT [s]

Padhye's TCP Throughput Calculation New Reno TCP, Rec. Window:10, Timeout:3s

IPパケットロス率 p = 0.001 IPパケットロス率 p = 0.01 IPパケットロス率 p = 0.02 IPパケットロス率 p = 0.05 1 10 100 1000 0.0001 0.001 0.01 0.1 Av . T h ro u gh pu t S a [p ac ke t/ s] Loss Rate p TRT=0.1[s], Wm=10[pkt], To=3.0[s] TRT=0.2[s], Wm=10[pkt], To=3.0[s] TRT=0.3[s], Wm=10[pkt], To=3.0[s] TRT=0.4[s], Wm=10[pkt], To=3.0[s]

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表3.1 BACnet/WS getValues TCP メッセージ長

No. of objects NV Request message Response message

1 2 kbytes 1 kbytes 100 47 kbytes 24 kbytes 1000 449 kbytes 230 kbytes 3.3 通信データ欠損 3.3.1 インターネット通信パケット欠損モデル エンドツーエンドの TCP/IP 伝送性能を評価するためのモデルは,TCP 動作を決定する 要素である IP パケットの単位でモデルを考える必要がある。 IP パケットがエンドツーエンドで欠損となる主なものは,データリンク層以下の伝送 エラーやクライアント/ルータ/サーバなどのバッファ溢れなどが考えられる。近年の 有線伝送路は信頼性が向上しているので,無線伝送路における伝送エラーやバッファ溢 れが主なものと考えた。これらはいずれもある短い期間だけバースト的にエラーが発生 しやすくなる。したがって,通常,エンドツーエンドで Ping 通信などを計測してもバ ースト状態を補足できる可能性は低く,平均パケット欠損率としては良い値しか観測さ れない場合が多い。

BACnet/WS のような Web サービス通信はインターネット上で TCP/IP によりエンドツー エンドで伝送される前提である。この TCP/IP は長時間平均としてパケット欠損率が低 くても,続けてパケット欠損がバースト的に発生する場合急激に実効伝送量が下がる。 それは,ACK 返信によるパケット単位の受領確認型のプロトコルの本質的性質による。 連続して発生するパケット欠損により ACK が連続して返送されないと,再送,再々送と なるためタイムアウトが指数関数的に増加するためである。つまり,長時間平均として はパケット欠損率が低くても,バースト的に続けて発生すると TCP 伝送時間は指数関数 的に遅くなる。 これまでの研究では,インターネットのエンドツーエンド伝送解析やシミュレーショ ンにおけるパケット欠損モデルはパケット欠損率𝑝が均一なパケット欠損確率を仮定し ているものがほとんどであった。これらモデルをここでは均一パケット欠損モデルとい う。 3.3.2 バーストパケット欠損モデル 前項のように Web サービスにおいては,通常はパケット欠損率が無視できる程小さい が過渡的バースト状態で欠損率が大きくなるモデルで評価することが重要である。本研 究では,Gilbert Elliot の通信チャンネルモデル[3-8][3-9]を基礎にして本問題に特化 するようにした。バーストパケット欠損の概念図を図 3.3 に示す。このバーストパケッ ト欠損モデルでは,通常状態(Normal State)とシビア状態(Severe State)の二つの

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26 図3.3 バーストパケット欠損モデルの状態遷移図 状態があるものとする。一つのパケットを処理する毎にある確率で状態遷移するものと し,シビア状態への遷移確立をα,通常状態へ戻る遷移確立をβとし,その差を大きくし てα ≪ βとすることにより短時間だけ過渡的にシビア状態となるモデルである。 本研究では,通常状態ではパケット欠損が全く発生せず𝑃𝑁= 0,シビア状態ではパケ ット欠損率𝑃𝑆= 0.5として,バーストパケット欠損状態を近似するモデルを考案した。 これは意図的に𝑃𝑁と𝑃𝑆の差を大きくして,バースト的に稀に以上に大きなパケット欠損 がごく短時間だけ発生するようにした。 長時間にわたる平均パケット欠損率としては同じでも,定常的ランダムと過渡的バー ストの違いに注目する。そのため,全体平均パケット欠損率𝑃𝐴はランダムモデルでもバ ーストモデルでも同じ値として相対比較する。 全体平均パケット欠損率𝑃𝐴と𝑃𝑁および𝑃𝑆を与えたとき,状態遷移確立αとβは一方を与 えれば他方が決まる。ここでは通常状態への遷移確立をβ=0.25と固定とすると,シビ ア状態への遷移確立をαは次の式で与えられる[3-8][3-9]。 一般にはパケット欠損率𝑃𝑆= 0.5は異常に大きな値であるが,過渡的にごく短時間で あるため,シビア状態への遷移確立αを小さくすることで全体平均パケット欠損率𝑃𝐴は 現実的な値となる。 𝛼 = (𝑃𝐴× 𝛽) (1 − 𝑃⁄ 𝑆− 𝑃𝐴) (3.5)

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27 図3.4 バーストパケット欠損・遅延エミュレータ 3.3.3 バーストパケット欠損の実験方法 図 3.4 に本研究のバーストパケット欠損エミュレータ装置の概念図を示す。本研究は インターネット経由の遠隔監視を想定しているが,実インターネットは時事刻々状況が 変化する。そのため,バースト的にパケット欠損を意図して発生できず定量的な解析が できない。そこで,本研究では実験室においてバーストパケット欠損のエミュレータを 用いて実験する。エミュレータは実際のデータ伝送遅延とパケット欠損発生確率を実時 間で発生させる。つまり,バーストパケット欠損エミュレータとは,それと接続される 装置からはあたかもインターネットで接続されているように振る舞う装置である。 図 3.4 で示すように,バーストパケット欠損エミュレータでは,ネットワークインタ ーフェイスカード(NIC)をペアで用いてその間で欠損率設定値に合うよう,乱数を内 部発生させて図 3.3 で示したバーストパケット欠損モデルの状態遷移を用いて確率的に 遅延と欠損を発生させ,他方の NIC に渡す設計とした Dummynet は FreeBSD に付属するパケット伝送制御ソフトウェアの一機能であり,帯域 幅やキューのスケジュール管理機能によりパケットの遅延や欠損をエミュレートする ことができる。FreeBSD のカーネル設定により Dummynet のタイマー制度を 1 [ms]とした。

BACnet/WS Client から上記バーストパケット欠損エミュレータを介して BACnet/WS Server に対して TCP 接続を開始したのち,getValues サービスリクエストの TCP/IP パ ケット伝送を開始する。BACnet/WS はこのリクエストの XML メッセージを分解してそれ に対するレスポンス XML メッセージを Client に対して返送する。

(33)

28

表3.1 バーストパケット欠損エミュレータの環境

CPU Intel Celeron 500MHz

Memory 64MB

NIC 100Base-TX × 2 枚増設

OS FreeBSD 6.1-RELEASE

Packet Loss SW ipfw + Dummynet

監視画面側の BACnet/WS Client 用の供試体としては通常の Windows OS ベースの PC を用いた。一方,ビル設備側の BACnet/WS Service は,実際にビルで稼働している組み 込み型の製品を用いた。ビル設備側の BACnet/WS Server は,ビル設置条件や信頼性の 点から組込み用の CPU やメモリーを使うので TCP/IP 通信や XML パーサなどの処理能力 が限定される。したがって,実際に使用される組込み型の装置を用いて実験することが 重要である。しかし,製品によって getValues サービス処理時間𝑇𝑆𝑃の違いを分離し評価 することも必要である。ここでは,サービス処理時間𝑇𝑆𝑃については,図 3.5 に示すよう な製品実測例[3-6]から,データ取得ポイント数𝑁𝑉の関数として以下の式で示される値 を用いた。 ここで,𝑁𝑉は BACnet/WS getValues が要求する設備監視ポイント点数である。評価 によっては,実験データからサービス処理時間𝑇𝑆𝑃を取り除いて評価すれば製品への依存 性が排除できる。また,getValues サービスでのメッセージ長さが性能評価に影響する ので,一括読出しポイント点数𝑁𝑉の場合も分離して評価する必要がある。本研究では, 例として𝑁𝑉 = 100と𝑁𝑉= 1000のケースを実行した。 3.3.4 データ伝送時間ばらつき 図 3.6 は BACnet/WS の getValues サービスの一往復ごとの伝送時間を 1000 回繰り返し 測定してグラフにしたものである。図中の Delay 0.1 [s]は,過去の実測[3-5][3-7]から 長距離悪環境の片道伝送時間の例として仮定した。これは,後述の図 3.10,図 3.11 に おける往復伝送時間𝑅𝑇𝑇 = 200 [ms]に相当する。図 3.6(a)は均一パケット損失の場合で, 図 3.6(b)はバーストパケット欠損の場合である。どちらも全体平均パケット欠損率𝑃𝐴は 同じ 2 %であるが,バーストパケット欠損の場合は一回毎の伝送時間のばらつきが大き く,時折一桁以上長い測定値が現れた。 遠距離監視システムの実運用上,Client が Server から画面データ取得する時間が時 折極端に長くなると,データ取得タイムアウトのエラーになってしまう。図 3.6(a)のよ うに極めてばらつきが大きい場合は,その状況の発生分布を定量的に現場稼働前に予測 𝑇𝑆𝑃 = 0.03 + 0.00027 × 𝑁𝑉 [s] (3.6)

(34)

29 図3.5 BACnet/WS Server の処理時間 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0 200 400 600 800 1000 S er ve r P ro ce ss T im e T SP [s ]

Number of Data Points NV Number of Objects vs Server Process Time

BACnet/WS getValues

できることが望ましい。

本研究では,全体平均パケット欠損率は同じとし,均一ランダムパケット欠損の場合 と,バーストパケット欠損の場合のデータ伝送時間の平均のみならず,標準偏差を実測 集計することにした。

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30 (a) 均一パケット欠損の場合 0 10 20 30 40 50 60 1 3: 0 0: 00 1 3: 1 2: 13 1 3: 2 0: 30 1 3: 2 8: 39 1 3: 3 6: 55 1 3: 4 5: 10 1 3: 5 3: 16 1 4: 0 1: 38 1 4: 0 9: 54 1 4: 1 8: 07 1 4: 2 6: 14 1 4: 3 4: 27 1 4: 4 2: 33 1 4: 5 0: 45 1 4: 5 9: 19 T A [ s] Clock Time

Web Services 1000 objects, UR 2%, Delay 0.1s

UR Loss 2.0%, Delay 0.1s (b) バーストパケット欠損の場合 図3.6 BACnet/WS データ伝送時間のばらつき 0 10 20 30 40 50 60 1 1: 0 0 :1 2 1 1: 0 9 :4 2 1 1: 1 7 :2 0 1 1: 2 4 :4 9 1 1: 3 2 :0 4 1 1: 3 9 :5 4 1 1: 4 7 :0 1 1 1: 5 5 :3 4 1 2: 0 7 :5 1 1 2: 1 5 :5 6 1 2: 2 5 :2 3 1 2: 3 2 :4 0 1 2: 4 1 :2 6 1 2: 5 0 :5 6 1 2: 5 8 :3 3 T A [ s] Clock Time

Web Services 1000 objects, GE 2%, Delay 0.1s

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31 図3.7 BACnet/WS トラフィックシミュレーション 3.4 通信データ情報量シミュレーション バーストパケット欠損の場合は一回毎のばらつきが極めて大きいことが分かったので, 少なくとも 5000 回という大量の実験回数による統計的評価が必要である。システムパ ラメータスタディを実験で行う場合は膨大な作業となるので,通信データ情報量シミュ レーションによる計算機実験が有効である。 そこで,先行研究で開発済みの BACnet/WS 通信データ情報量シミュレーションをベー スに,今回はバーストパケット損失モデルを付加した。シミュレーション環境 NS-2 に は均一パケット損失モデルは標準装備されているが,バーストパケット損失モデルはな いので,前章で述べたモデル仕様により新規開発して組み込んだ。図 3.7 に示すように インターネットに相当するルータ間リンクを今回開発したバーストパケット損失モデ ルと接続した。

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32 3.5 データ伝送時間への影響評価 3.5.1 評価パラメータの選定 図 3.8 から図 3.13 に,パケット損失エミュレータにより BACnet/WS getValues サービ スのデータ伝送時間を実測したものを示す。各図の横軸は全体平均パケット損失率𝑃𝐴で あり,縦軸は平均データ伝送時間𝑇𝐴およびその標準偏差である。各点は,実験では 5000 回,シミュレーションでは 1000 回(一部 5000 回)の繰り返しの平均および標準偏差で ある。 パラメータについては,一括ポイント取得数𝑁𝑉が 1000 点と 100 点の場合,データ伝 送往復時間𝑅𝑇𝑇が 20 [ms]と 200 [ms]の場合を例として実施した。𝑁𝑉が 1000 点は停電か ら復電時などにありうる全点データ再取得を,𝑁𝑉が 100 点は通常画面取得時を想定した。 本研究に先立ちインターネット環境を実測した例[3-5][3-7]では,1 分毎の 2 日間平均 のデータ伝送往復時間𝑅𝑇𝑇は,名古屋-東京約 20 [ms],名古屋-バンコク約 170 [ms], 名古屋-ロンドン約 300 [ms]であったので,今回はほぼ平均状態および最悪状態として, 𝑅𝑇𝑇が 20 [ms]と 200 [ms]と設定した。 3.5.2 実験およびシミュレーション結果 図 3.8 と図 3.9 は通常のインターネット経由の全点データ取得を想定して,𝑅𝑇𝑇 = 20 [ms],𝑁𝑉 = 1000 点の場合である。データ伝送時間の平均値𝑇𝐴,標準偏差𝑆𝐷ともに実験 値とシミュレーションがほぼ一致した。 図 3.8 のデータ伝送時間の平均値𝑇𝐴については,均一パケット欠損でもバーストパケ ット欠損でも平均パケット欠損率𝑃𝐴によらず 10 秒以内であった。図 3.9 の標準偏差𝑆𝐷に ついては,均一パケット欠損モデルではほとんどゼロに近いが,バーストパケット欠損 では平均パケット欠損率𝑃𝐴にほぼ比例して増大し,実験値で最大𝑆𝐷 = 18.5 [s]となった。 図 3.10 と図 3.11 は遅延が大きいインターネット経由で全点データ取得という最悪条 件を想定して,𝑅𝑇𝑇 = 200 [ms],𝑁𝑉 = 1000 点の場合である。図 3.10 の平均値𝑇𝐴では 実験値とシミュレーションが一致したが,標準偏差𝑆𝐷についてはバーストパケット欠損 の場合はシミュレーションと大きな差が出た。図 3.10 の平均値𝑇𝐴については,均一パ ケット欠損もバーストパケット欠損もほぼ同様な傾向であり,平均パケット欠損率とと もにデータ伝送時間が長くなった。図 3.11 に示す標準偏差𝑆𝐷では,バーストパケット 欠損では平均パケット欠損率にほぼ比例して増大した。バーストパケット欠損の場合, 最悪では実験値で𝑆𝐷 = 27.7 [s]となった。 図 3.12 と図 3.13 では遅延が大きいインターネット経由で少ないポイント数のデータ 取得を想定して,𝑅𝑇𝑇= 200 [ms],𝑁𝑉 = 100 点の場合である。図 3.12 の平均値𝑇𝐴につ いては均一パケット欠損もバーストパケット欠損もほとんど変わらず最悪でも𝑇𝐴= 3.7 [s]であった。図 3.13 の標準偏差𝑆𝐷についてはバーストパケット欠損の場合は均一パケ ット欠損に比べて大きいものの,全点データ取得𝑁𝑉 = 1000 点の場合に比べて差が小さ

(38)

33 かった。平均パケット欠損率𝑃𝐴の増大に対しても𝑆𝐷は飽和が見られて最大でも実験値で 𝑆𝐷 = 9.5 [s]と 10 秒以下であった。 3.5.3 データ伝送時間への影響評価の考察 実験およびシミュレーション結果により,BACnet/WS 遠隔監視システムの設計上に関 する留意点を検討した。均一パケット欠損状態の時は,図 3.8 と図 3.9 に示すように伝 送時間は平均 5 秒未満で標準偏差も 1 秒以下であり,問題なしと判断されてしまう。し かし,バーストパケット欠損状態が発生すると,伝送時間ばらつきが途端に大きくなり, 最大で 20 秒近くになる。開発段階で良好な環境の試験だけでデータ取得タイムアウト を設定してしまうと,市場でバーストパケット欠損状態になった場合,予期せぬ画面取 得エラーが起こる可能性が大きい。 一方,遅延が大きい経路でも,データ点数を少なくして回数を分けてデータ取得する 場合が図 3.12,図 3.13 である。この場合は,遅延が大きくパケット欠損が多くても一 度に取得するデータ点数を 100 点程度に少なくすれば,最悪でも平均値もばらつきも 10 秒以下にすることができる。全点を取得する合計時間は長くなるが,実用的観点からは ロバストであり好ましいことがわかる。 この通信データ情報量シミュレーションは,均一パケット欠損の場合は実験値とシミ ュレーションが完全に一致した。図 3.10 や図 3.11 のような遅延が極端に大きくかつ激 しいバーストパケット欠損の場合は,シミュレーションの精度が低下した。このような 極端な場合はシミュレーションにおける TCP パケット欠損のリカバリ処理の詳細モデル が厳密に再現できていないためである。 本研究では平均パケット欠損率を 1〜4 %,往復データ伝送遅延時間を𝑅𝑇𝑇= 20 [ms] および𝑅𝑇𝑇= 200 [ms]で検討したが,これはインターネット環境でも厳しすぎるように みえる。しかし,停電復帰通信ラッシュや無線ネットワークの場合の一時的電波不安定 といった過渡的過酷状態でも安心のためには想定の範囲内とする必要がある。

表 2.1  通信情報量シミュレーションのパラメータ
表 3.1  BACnet/WS getValues TCP メッセージ長  No. of objects N V Request message  Response message
表 3.1  バーストパケット欠損エミュレータの環境
表 4.1  ビル設備用フィールバスのパラメータ例
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参照

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