06302023
外部資源、活用が生徒の意識変容に及ぼす影響に関する研究
- r
荒れj
の克服過程を中心に一
学 校 教 育 専 攻
学校改善コ}ス
荒 木 博 文
1. 研究の目的
今日の学校において,児童生徒が引き起こす :
問題行動は年々増加傾向にある。その原因は
様々あるが,一因として教師の多忙化による生
徒との信頼関係の希、薄が考えられる。こうした
問題状況を打開するには,もはや学校だけの力
では困難である。
そこで本研究では,生徒の「荒れjに対する
打開策として,外部に存在する人的・物的資源
を学校の教育活動に活用することが生徒の意識
変容にどのような影響を与えていくのかを解明
したいと考えた。
2.研究の課題と方法
本研究では,生徒が起こす問題行動を学校内
だけで抑制しようとしていた従来の運営体制か
ら,
r
地域を巻き込んだ学校運営に転換し,生徒
の意識を自主的に変容させることjをねらいに
した体制に転換した研究協力校の(戦略〉を分
析し,その成果から,生徒の意識がどのように
変容したのかを明らかにしてし、く。
研究の課題として,①学校が抱える課題を確
認し,そこから教育活動に外部資源を導入する
ことに至った背景を確認する,②外部資源活用
時の生徒の様子や教員の様子から,活用の有効
性を明らかにする,③{図1]に示した「荒れj
の克服段階の指標と活用後の生徒の状況とを対
応させ,生徒における外部資源活用の成果を明
らかにする,
指 導 教 員 岩 永 定
段階 学校の状況
まE
L
E
V
E
L
4
生徒が授業に積極的に参加している状態。
L
E
V
E
L
3
授 業 が 成 立 し て い る 状 態 。
L
E
V
E
L
2
校内での署鞠破損や暴力が少し治まった状餓。
L
E
V
E
L
1
校内での署鞠破損や暴カが頒売している状館。
{図1]
r
荒れjの克服過程の段階指標
④外部資源活用の課題を明らかにする,の4点
を設定し,下図のような研究の枠組みを想定し
た。
J
程
h
M
の
脳
﹃
克 《~
釘国策
│
援面 ー
.生徒の荒れ
・教師の多忙
~J~からの信事
」 課 題①:
4 学技における課題を
把復する
【図2】研究の枠組み
本研究では,外部資源活用によって「荒れJ
を克服してきた事例を持つR県N市立A中学
校を研究協力校に設定し,そこで7名の教員に
インタビュー調査を行った。インタビューで得
られた各教員の発話データから f子どもにおけ
る変化jと「教師における変化Jを抽出し,それら
の成果として外部資源活用がもたらした生徒の
意識変容を明らかにしてし、く。
氏
u
q u
3.研究の結果と考察
認められることが少なかった生徒が,外部資
源活用により(新たな一面〉を呈したことで,
認められる機会を得ることができた。その結果,
充実感や達成感,それまで、無かった居場所を得
ることにつながり,
r
自分たちで、作った物を大切
にするJ という意識変革から問題行動の減少に
至ったことが明らかになった。
また,授業において「ゲストティーチャーJ
として外部資源を活用した結果,生徒の授業に
対する姿勢に変化を見出すことができた。
その一方で,外部資源活用の成果は日常の授
業においては反映されなかったことが明らかに
なった。背景として,教師は問題行動を抑える
ために授業を犠牲にして外部資源活用の準備に
追われ,生徒も外部資源活用プロジェクトと部
活動で、多忙になった。これらのことから,教師
において,生徒の低学力をフォローする補習の
時間を逃す状況になってしまっている。
以上の結果,
r
攻撃色が無くなり,物にあたら
なくなったJ といった問題行動の減少傾向や授
業以外での教育活動における意欲向上などの成
果仁課題として残っている f低学力jの問題
から抜け出せていない状況とを総合して勘案す
ると,生徒の「荒れJからの克服段階は以下の
ようになった。外部資源の活用前を
W
LEVEL
1~
とすると,活用後は WLEVEL2~ ~
W
LEVEL
3~ の閉までに回復したものと考えられる。
段階 学校の状況
LEVEL4 生徒が授業に積極的に参加している状態。
同 A
LEVEL3 授業が成立している状態。
』
LEVEL2 校内での器物破損や暴力が少し治まった状餓。
トー
LEVEL1 校内での告糊破損や暴力が頻発している状館。
出していることが明らかになった。 このことが
契機となり,生徒を肯定的に見る視点が芽生え,
教師と生徒の信頼関係を構築することにつなが
っていた。
また,外部資源を「ゲストティーチャー」と
して活用した後の教師の意識としては,自分自
身がこれまで知らなかったことを知る機会にな
り,それを授業に活用して生徒に還元するとい
う(新しい指導観〉に結び、つく契機にもなって
いた。
次に,外部資源活用を「生徒の自主性を尊重
する形態jにした結果,教師側の生徒指導にお
いて「生徒の意見は必ず聞くJスタンスに転換
する契機となっていたことも明らかになった。
成果の反面,外部資源、活用によって「生徒の
荒れを抑えることJを強く意識した結果,
r
授業
の準備が疎かになるJ という状況を生み出すこ
ととなり,
r
創意工夫のある授業づくり」や「低
学力の生徒をフォローする機会Jを損失させる
状況になっていることも明らかになった。
4
.
今後の課題
①低学力をフォローしていく体制の整備
学校として,授業研究会や小中連携といった
取り組みを行い,
r
低学力」の課題解消を図って
いくことが必要になってくる。低学力の課題を
クリアできなければ,外部資源活用プロジェク
トが一時的な成果を生み出しただけの〈鎮痛剤〉
的役割のものにしかなり得ないと言えよう。
②外部資源を活用する体制の整備
教師の負担軽減へ向けて,Wティーチャーズパ
ンク』を利用した体制づくりや平成20年度から
実施されている『学校支援地域本部事業』のカ
を活用しながら学校と一体となった課題の解消
教師に関しては外部資源活用によって,これ を目指していくことが今後重要になってくる。
まで見られなかった生徒の〈新しい一面〉を見