小学校低学年の体育授業におけるデジタルコンテンツ導入の試み
ーシュートゲーム学習支援ソフトの作成と評価-教科・領域教育専攻
生活・健康系(保健体育)コース
佐 藤 由 典
I緒 言
人間の基礎的運動能力の一つで、ある投運動は,
豊かなスポーツライフを送るためには重要で、あ
る考える.しかし,子どもたちの投能力は長期的
に低い水準にあり,憂慮されている.
投運動の発達は運動経験の影響が大きい.近年
子どもたちの生活は,外で遊ぶなどの日常的な身
体運動が減少する方向に変化した.それにともな
い投運動の発達が停滞しがちなのが現状である.
その中で,学校の体育学習の果たす役割は大きい.
普段運動しない子どもにも効率的に運動量を確
保させることができる.特に低学年の時期に投運
動を経験することが投能力の向上につながると
考える.また,学校の体育学習は技術習得だけで
なく,態度や学び方などを総合的に身につけるこ
とのできる学習である.しかし,小学校の教育現
場では発達段階に応じた体育の指導に困難を感
じる教員がいる状況が見られる.
そこで本研究では,体育授業を構成し実践する
指導者と授業を通して運動の楽しさを学んだり
多くの運動を経験したりする学習者を支援する
学習支援ソフトを作成することにした.内容とし
て,低学年の運動領域から投運動を含んだ単元で
あるトンュートゲームjを取り上げた.授業を通し
て投運動を経験させるためである.そして,ソフ
トを導入した授業を実践し,学習者の投能力や体
育授業の評価,指導者のソフトに対する感想等を
分析し,その有効性を検証することを目的とした.
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-指導教員 賀 川 昌 明
E 方 法
1 .シュートゲーム学習支援ソフトの作成
2.学習支援ソフトを導入した実践研究
(1)対象 :B小学校 2年生(介入群)
1組 30名 2組29名,計59名
H小学校2年生(非介入群) 26名
M小学校2年生(非介入群)17名
ω
期間 :B小学校 2007年5月---6月
H小学校 2007年5月---6月
M
小学校2007年 10月...11月
(3)内容
支援ソフトを導入する群を介入群,導入しな
い群を非介入群として表1に示すような調査・
測定計画を作成し,実践を行った.
表 1 調査・測定計画
介入群(B小) 非介入群(H小)(M小)
支援ソフトの使用方法の説
明 (教師対象)
支援ソフトを活用した授業
計画
。受業担当教師)
ソフトボール投げ測定 1
事前アンケート
パソコンを使った授業につ
いての事前アンケ}ト
支援ソフトを使ったシュー シユートボール授業実践 l
トボール授業実践
ソフトボール投げ測定 2
事後アンケ}ト
パソコンを使った授業につ
いての事後アンケート
支 援 ソ フ ト に 対 す る 評 価
C尼童) (教師)
直 結果と考察 (3)態度測定による体育授業評価
1 .学習支援ソフトの概要 「楽しむJ
r
できるJ因子の平均値が授業後有意
今回作成した学習支援ソフトのコースレイア に伸びた.ソフトを授業に導入することにより,
ウトを図 1に示した. 授業を楽しみ 有能感を得たと考えられる.
トップフレーム
教・ネッ師トシ用ュートポーjレ
こどもよフ
-ネットシュートホ守ール
-ヒットトゲ?ト -ヒァトクーケeトッ
-シュートポ】Jレ -シュートポーlレ
-技術ポイント -上手な投げ方とり方動き方
.jJ(-jレを使った準備運動 1 ホ-eールでじゅんびうんどう 1
.jJ(サを使った準備運動2 .if(-Jレでじゅんびうんどう2
教師用
サイトゃフレーム1
(ネットシrホトeール)
指導案・場の設定
など5項目
サイトゃ7レ』ム2
(ヒットタ』ゲット)
指導案・場の設定
など5項目
サイトキ7レーム3
(シュ】トポ-Jレ)
指導案・場の設定
など5項目
サイト ~7レ』ム 4
(技術ポイント)
投げ方・とり方な
ど4項目
サイト'7レ】ム5
(準備運動1)
投げあげて手でキ
fッチなど12項目
サイトマフレーム6
(準備運動2)
両 手 下 か ら 投 げ
るなど10項目
こどもょう
サイトeフレーム7
(ネットシュ}トポーJV)
学習のしかた・
ゲームのげなど5項目
サイトeフレーム8(t,トタサマット)
学習のしかた・
ゲ}ムのげなど5項目
サイト守7レ】ム9シ(rトホ。ーJV)
学習のしかた・
ゲームのげなど5項目
サイト守フレーム10
(じようずななげかた)
投げ方・とり方
など4項目
サイトゃフレ}ム11
(じゅんびうんどう1)
投げあげて手でキャ ッチな
ど12項目
サイドフレ}ム12
(じゅんびうんどう 2)
両手下から投げるなど
10項目
メインフレーム
すイト守7レー
ムの内容
を
文 章
静 止 画
像
動 画
で提示
図1
r
わくわくシュートゲームjコースレイアウト
2. 学習支援ソフト導入の評価
(1)投能力の比較
二元配置の分散分析を行った結果,投距離にお
いて測定時期に有意な主効果が認められた.介入
群で授業後に投距離の記録が有意に伸びていた.
投動作においては測定時期×群の有意な交互作
用が認められた.したがって,ソフトの導入が投
能力向上に影響したと考えられる.
(2)遠投距離と投動作の関係
遠投距離と投動作には有意な相関関係があり,
投動作の向上が遠投距離の伸び、につながること
がわかったこれは,先行研究と類似する.
(4)集団的・協力的活動の形成的評価
今回の実践では,集団的・協力的活動の形成的
評価の向上が認められなかった.
(5)投運動に関する調査
「投運動の好き嫌いJ
r
投能力向上への意欲J
r
投
技術の理解jにおいてソフトを導入した方がソフ
トを導入しない場合に比べ肯定的回答が有意に
多く,学習に好意的だったと推察された.
(6)ソフトを使った授業と投運動との関係
シュートゲーム学習支援ソフトの使用に好意
的な児童は投運動にも好意的だと考えられる.
(7)ソフトを使った授業と態度測定との関係
シュートゲーム学習支援ソフト使用に好意的
な児童は非好意的な児童に比べ態度得点が有意
に高いことから,シュートゲーム学習支援ソフ
トの使用は授業の評価を上げる可能性がある.
3.学習支援ソフトに対する評価
パソコンを使った体育授業についての調査(介
入群のみ)から,学習支援ソフトが概ね肯定的に
受け止められたことがわかる.
w
.
結論と今後の課題
今回の実践で,シュートゲーム学習支援ソフト
は,児童・教師から肯定的な評価を得た.ソフト
を導入することにより学習を楽しみながら投能
力を向上させる効果があると考えられる.
しかし,課題も残された.ソフトの内容に低学
年の児童ではわかりにくい部分があり,そのため
学級の雰囲気が盛り上がらず,友だちとの集団
的・協力的な活動が十分にできなかった.
今後は,ソフトを改善し,体育学習の支援を
教員と児童の両面からしていきたい.