<論文>マネジメント史方法論序説
著者
幸田 浩文
著者別名
Kohda Hirofumi
雑誌名
経営論集
巻
49
ページ
183-204
発行年
1999-03-31
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005598/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 )
マネ ジ メント史方 法論序 説
幸 田 浩 文 はじ めにI. マ ネジ メント 史 研究 の必 要性 Ⅱ. マ ネジ メソト 史に みる研 究 アプ ロ ーチ Ⅲ.知 識 形態 とし ての マネ ジメント史 Ⅳ. マネ ジ メツ ト の歴史 的方 法論の重 要性 むす びに かえ て 183 は じ め に 「1 つ の学 問 の歴史 は学 問 そ のも ので あ る」(DieGershichteeinerWissenschaftistWissenschaftselbst )とい うゲ ーテ(Goethe,J.W. )の言 葉に あ る よ うに )、学問 と して の経 営学 を理 解 す る ために は、 まず も ってそ の史 的展 開 を知 る必 要 が あ る。 経営 学 の史的 側面 を対 象 と す る代 表的 な研 究 分野 に 経営 学 史2)があ る。経 営学 史 は、経 営 学 の歴 史的 発 展過 程 の科学 的 分析 を通 じ て 、経 営 学 の発 展法 則を 解 明 す るこ とを 目的 とし てい る。 し か し、 や や もする と経 営学 史 がた んな る 経 営 学説 ・理論 研 究に と ど まっ てい る場 合 が多 く見受 け ら れ る。 言 い換 えれ ば、 経営 学 の史的 展 開 過 程 で 生 まれた学 説 ・理 論 の解説 ・ 解釈学 を も って 経営 学 史 とし てい る ので あ る。 もちろ ん、 わ れ わ れぱ 、 経 営学 の 文 献 考証 史 的方 法論 の側面 を否 定 す る もの では ない が、 こ うし た傾 向 も経営 学 史 の 方法 論 あ るい は 経 営学 の歴 史的 方法 論 の欠 如に 起 因し て い るの で はない だろ うか。 わ が国 の経営 学史 の方 法 論につ い て は、田中 照純 氏(立 命 館大 学)に よれば 、諸 外 国で は ほ と んど 無 視 さ れてい るのに 比べ て、不十 分 と はい え 散見 で きる とい う3)。彼 は 、こ れ まで の経 営学 史 研究 の 学 問的 意 義 と ともに方 法論 研究 の立 ち 遅 れを 指 摘七、 新 た な方法 論を 提起 し てい る。 経 営 学史 には、 現 在 の経 営学 の姿 を 正確に 把 握 し、 未 来 の経 営学 を 構築 す るとい う重 要 な役 割 が課 せ ら れ てい る。 そ のた めに は 、 た んに 現実 の社会 ・ 経 済的 コン テ クスト だけ でな く、「上 部 構造 内 部 で の 相 互 作 用 や 経 営 学そ の他 の内部 矛盾 に よる自 己発 展 性 な どを考 慮」 し た 「総合 把握 の 方法 」 が必 要 と考 えら れ る4)。し か し、彼 は、こ の方 法は 従来 の も の よ りも全 面的 かつ 科学 的に 優 れて い ると 評価 す る も、 客 観 的 要因 だけ し か言 及し て おら ず 、経 営 学史 を 形成 す るあ るい は経 営学 説を 生 み出 す 主 体的要 因 の影 響 を見逃 して い ると、そ の具 体 的 内容 と し て主 体 の階級 性、 生い立 ち、知識 水 準を 挙げ る5)。さ ら に は、この主 体的要 因 の影 響に 関 連 して 、研 究者 の 思想 の影 響を 重 視す る 「思想 史 的 アプ ロ ーチ」184 経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 ) (裴 富吉 氏) を はじ め、 企業 経 営 の発 展 段階 と経 営学 説 の生成 発 展 との を密 接 に 関 連づ け ようとす る 「科学 史的 研究 方法 」(森 哲 彦 氏)とい った 最近 のわ が国 の経 営 学史 研 究 の新 たな 展 開を 紹介す る。 だ が本稿 は、 上 記 の よ うな わ が 国 の経営 学 史 の方法 論研 究を 目的 と し てい な い。 こ こでは 、そ う し た テ ーマ がほと ん ど無 視さ れ て きた とい っ て も過言 では ない アメ リカ経 営 学 研 究 分野 で のマ ネジ メン ト史 (historyofmanagement;managementhistory ) 研 究 の 必 要 性 な ら び に 歴 史 的 方 法 論 (historicalmethodology) の重 要 性を 取 り上 げ、そ の研 究 分野 の現 状 と課 題に つ い て 考察 す るこ と に し た い。 すな わち、I. マ ネ ジ メン ト史 は研 究に 値す る テ ーマな の か、L こ の テ ーマへ どの よ うに アプ ロ ーチ した ら よい の か、ID. 歴 史的 デ ータを どの よ うに 集 め る のか、 Ⅳ. 適 切 な歴 史的 方 法 論 に は どの ような も のが あ るの か とい っ たテ ーマを 取 り上 げ るこ とに す る。 I. マ ネ ジ メ ン ト 史 研 究 の 必 要 性 マ ネ ジ メツ ト 思 想 家 と し て 著 名 な レ ソ(Wren,D.A. ) は 、 マ ネ ジ メ ン ト 史 研 究 は 、 第1 に 、変 化 を 認 知 す る た め の 理 論 的 な 基 準 線 を 設 定 す る こ と 、 第2 に 、 研 究 お よ び 実 践 の 課 題 を 組 み立 て る こ と 、 そ し て 第3 に 、 知 識 の 構 築 と 統 合 に 理 論 的 枠 組 みを 提 供 す る の に 役 立 つ こ と と 、 そ の 必 要 性 を 強 調 す る6)。 ま た 、 ス コ ッ ト(Scott,W.G. ) も 、 マ ネ ジ メ ソ ト 研 究 分 野 に お け る 歴 史 研 究 の 重 要 性 に つ い て 次 の よ う に 述 べ る≒ 「哲 学者 ジa ージ・ サソ タ ヤナ(GeorgeSantayana ) が書い てい るよ うに、『歴史 を 忘 れる 者た ちは 、そ れを 追 体験す る運 命にあ る。』 歴史 を忘 れ るこ とは 、す でに知 られ てい るこ とを 今一 度 発見す る という浪費 的 な努力 をす るこ とであ る。現代 の マネ ジメ ント 理論家 は、と きとして この 罠に落 ち る。・……過去 は、現在 を 明ら かにす る」 と。 さら に ス コット は、 マ ネ ジ メン ト理 論 の歴 史を 研究 す る際 の指 針 とし て、 次 の4 つ の方 法を挙げ てい る。1 )主 題 に関 連 する 可能 性 のあ る印 刷 さ れた、 記述 さ れた、 あ るい は 口述 さ れ た文 献 の 収集。 そ れら に は、 実際 の事件 や 当 該人 物 自 身が、 直 接書い た 印 刷物や 述 べ たこ と を 記録 し た テ ープや フ ィル ムな ど の一 次 的資 料 と 、後 世 の人 びとに よって作 成 さ れた証 拠 から な る 二 次的 資 料 がある。 ほ と ん どの マネ ジ メント 史 は、 二 次 的資 料 に基づ い て作 ら れて お り、 伝統 的 な 解 釈が 簡略 化 され、 繰 り返 し 用い ら れてい る 場 合 が少 な くな い。2 ) 出 所不 明な 文 献 の除外 。 マ ネジ メ ント 史 研 究は も と よ り、歴 史 研 究にお い ては、 用 い る文 献 ・資 料・ 史 料 の 真 偽を 確認す る こと が重 要 であ る。 と くに 出 典 が 明ら か でない 文 献 の取 り扱い に は注 意 すべ きで あ る。 信 頼性 の 問題 は、 新 たに 発 見さ れ たあ る い は評 価 さ れなか っ た原資 料を 採 用 する 時に 起 こるノ
マネジ^ ソト 史方 法論序 説 185 3 ) 信 頼 で き る 正 真 の 物 的 根 拠 や 証 拠 か ら の 引 用 。 例 え ば 、 文 献 な ど が 本 物 と 確 認 さ れ た 後 も 、 著 者 が 信 用 で き る か ど うか を 判 断 し な け れ ば な ら な い 。 こ う し た 判 断 に は 、 技 術 ・ 知 識 と も か な り の 能 力 を 必 要 と す る 。4) 意 義 あ る 説 話 で の 信 用 で き る 情 報 の 提 示 。 ス コ ッ ト は 、 こ の 最 後 の 方 法 論 が 、 歴 史 研 究 に お い て 最 も 重 要 な レ ベ ル で あ る と い う。 そ れ は 、 収 集 し た 情 報 が 読 者 に と っ て 有 意 義 と な る よ う に 、 納 得 の い く 説 話 あ る い は 物 語 を 描 く こ と で あ る 。 た ん に 事 実 を 報 告 す る だけ で は 不 十 分 で あ る 。 彼 は 、 こ の 歴 史 研 究 の4 ) の レ ベ ル に つ い て 、 以 下 の よ う に 詳 述 し て い る。 歴 史 研 究 に お け る 事 実 に は 、 準 拠 枠 や 時 代 背 景 や 発 生 原 因 ・ 事 情 が 説 明 さ れ て い な け れ ば な ら な い 。す な わ ち 、歴 史 的 事 実 に 状 況 説 明 が 加 わ っ て 、は じ め て 納 得 の い く 、そ し て 意 味 あ る 歴 史 的 説 話 が で き あ が る 。し た が っ て √ 提 供 す る こ と で あ る 。と は い え 、ど の マ ネ ジ メ ン ト 理 論 や 人 物 に 歴 史 的 重 要 性 を 置 く か は 、そ の 状 況 に 応 じ て 幅 広 い 選 択 の余 地 が 残 さ れ て い る 。 ス コ ッ ト は 、 こ の 状 況 と し て 次 の4 つ を 挙 げ て い る8)。1 ) 技 術 的 状 況 一 有 効 な 組 織 シ ス テ ムぱ 、 そ の 技 術 的 状 況 に 依 存 し て い る と 考 え ら れ る 。 す な わ ち 、 技 術 の 程 度 に よ っ て 組 織 シ ス テ ム は 変 化 す る。 し た が っ て 、 マ ネ ジ メ ン ト 史 に お い て 、 個 々 の 組 織 理 論 を 生 み 出 し た 技 術 的 状 況 を 理 解 す る こ と が 、 新 し い マ ネ ジ メ ン ト 理 論 を 構 築 す る 際 に 役 立 つ 。2 ) 経 済 的 状 況 マ ネ ジ メ ン ト 理 論 の 選 択 原 理 ( 目 的 ) が 、 収 益 性 、 経 済 性 そ し て 生 産 性 と 変 化 し て も 、 出 力 (O ;Output ) を 入 力 ( 工;Input ) で 除 し た 効 率 (E ;Efficiency ) の 概 念 で あ ら わ さ れ る 経 済 的 状 況 は 、 工 業 国 に お い て 産 業 革 命 以 来 変 わ っ て い な い 。 こ の 効 率 の 探 求 が 、 文 化 ・ 国 ・ 企 業 形 態 を 問 わ ず 、 先 進 社 会 に お け る 管 理 者 の 目 的 と な っ て い る。3 ) 政 治 的 状 況 現 代 の ア メ リ カ の マ ネ ジ メ ント は 、19 世 紀 末 の 進 歩 主 義 運 動 か ら 始 ま っ た 。 こ れ は 、 合 理 性 ・ 科 学 ・ 道 徳 に 基 づ く 進 歩 主 義 の 原 則 を 用 い て 企 業 や 政 府 を 改 良 し よ う と す る 極 め て 政 治 的 な 運 動 で あ っ た 。 い わ ゆ る 科 学 的 管 理 は 、こ う し た 進 歩 主 義 的 な 時 代 の 産 物 で あ る。 し か し 、進 歩 主 義 は 、科 学 的 管 理 技 法 を 超 え て 浸 透 し て い っ た 。 こ の よ う に 、 ア メ リ カ に お い て マ ネ ジ メ ン ト は 、 政 治 的 環 境 の 一 部 と な っ て い る。 し た が っ て 、 マ ネ ジ メ ン ト 史 研 究 で は 、 政 治 的 状 況 を 考 慮 す る 必 要 が あ る。4 ) 文 化 的 状 況 マ ネ ジ メ ン ト に おけ る 最 も顕 著 な 文 化 的 状 況 の 変 化 は 、 産 業 界 へ の 人 道 主 義 の 導 入 で あ っ た 。 す な わ ち 、1930 年 代 以 降 の マ ネ ジ メ ン ト 思 想 と 実 践 へ の 人 間 関 係 論 ・ 行 動 科 学 の 導 入 で あ る 。 そ の 結
186 経営論 集 第49号(1999年3 月) 果 、組 織 観 が機 械的見 解 から 有機 的見 解 へ、 また 人間 観 が労 働力 商品 ・賃 金 労働 者 か ら社 会 人 ・管 理 人へ と転 換し た9)。 マ ネジ メント史 の最 大 の 目的 は、 上 の4 つ の状況 を 考 慮に 入れ 、 ①マネ ジ メ ント 理論 を 統 合し 、 ② マ ネジ メ ントに おけ る 著名人を 正 確 に評 価 し 、そ し て ③過 去 のマ ネジ メント 事 象 につ い て 信頼 で き る説 明を 提示 す るこ とに ある。 n . マ ネ ジ メ ン ト 史 に み る 研 究 ア プ ロ ー チ ニブ ソ ズ(Nevins,A. )は、歴史 を「批 判 的 な研 究 精 神で 書 かれ た過去 の 事象 につ い て の 何ら か の 記 述 や 分析」 と定義 す る10)。 歴史 は 、 学問 の基 礎的 研究 にお い て重 要 な 役割 を 果 たし てい る。 とい うのは、 そ の学 問 の歴 史に つい て の知識 は、 研 究者 各人 の業 績 の相 対 的 重要 性を 理 解 し、 全体 的に そ れを 位置 づけ る ことに 非 常に 役 立つ から であ る。つ まり、歴 史 研 究 は、 学 問 の方 法 論 一研究 アプ ロ ーチ とし て 不 可欠 な機 能 を もっ て い るとい え る。実 際、 こ うし た 知識 がなけ れば 、 古い 事実や 見 解を新 し い そ れ ら と見 間違 う恐 れ が あ るし、 新し い理 論や 技術 の意 味を 評 価 す るた め の基 準線 がな い ことに な る11)。 学 問 分 野 の系 統 的 な根 源つ ま り歴史 を理 解す るこ とに よっ て のみ 、現 代 の多 榛 既を 明ら か に す る こと がで き る。 す な わち、こ過 去に よって現 在を 説 明 す る こと がで きる ので あ 乱 ア メリ カ経 営学 が、 学問 とし て成 立 し て わず か 百数 十年 し か経 過し てい ない 。 し か し、 そ の発 展 は めざ まし く、 そ の史的 展 開を 体系 的 かつ 科 学的 に 概 観 し理 解す るに は、 い くつ か の研 究 アプ ロ ー チ が あ る。1 つ 目は、研 究者 の著作 や 論文 を中 心 とす る「文 献 考証 史 的方 法」、次に 、そ の 理論 が生 じた歴 史 的、 社 会 的、 経 済的 背 景と の関 連あ るい は 生成 の必 然 的要 請を 解 明す る [因果 関 連史 的 方法 ] があ る12)3 つ 目に は 、 これ までに あら わ れ た主 要 な マ ネジ メ ント学 説 の研究 方法 に 関す る 内 面 的 発 展 の 関 連を 把握 す る 「方法 史的 方法 」13)、4 つ 目 は、ヒ ッ クス(Hicks,H.G. )や レ ソ(Wren,D.A.) ら に みら れ る よ うに 、①科学 的 管理以 前 の 時代( 初期 の 管理 思 想 の時代)、②科学 的管 理 の時 代、③人 間 関係 論 の時 代 (社会 人 の時 代)、 ④ 精緻 化 ・ 拡 大・ 統 合 の時 代( 現代)、 とい った マ ネ ジ メント 思 想を 基 準 とし た 「時期 ・時 代区 分 的方 法」 で あ る14)。5 つ 目は、4 つ 目とほぼ 同 じだ が、 ク ー ソ ツ(Koontz,H. ) の学 派分類 に みら れ る よ うに 、 学 派 の発 展 過程 を年 代記 的に と らえ る 「時 系 列 的 方 法 」 であ る15)。 そ のな かで も、も っと も 言及 さ れ 引用 さ れ てい る ものに ク ーソ ツの 学 派分 類 かお る。 そ れ は、 フ ァヨ ール(Fayol,H.) を 始祖 とす る管 理 原 則論 が管 理 過程 論を 経て 、隣 接 諸科 学 の知識 を 取 り入 れ た オペ レ ーシ ョナ ル・ アプ ロ ーチ(operationalapproach )を 中心 に、そ の 他 の アプ ロ ― チ の 分化 の 過程 を時 系 列的に 整 理した も ので あ る16)。 そ の 進展 の様 を マネ ジ メント 理 論 の ジ ャン ク
マ ネ ジ メ ン ト 史 方 法 論 序 説 187 ル化 と クー ソ ツが 呼 んだ ことはあ ま りに も有名 であ るIT)。 バ- リ ー= カ ンダ(Barley,S.R.,andKunda,G. ) は 、1870年 代 から 現在 まで の デ ー タに 基 づ い て、ア メ リカ の管 理 思想 が、規範 的(normative)な 統制 と合 理的(rational)な統 制 とい っ た対 照的 なイ デ オ ロギ ーに よっ て、 交互に 支配 され てき たこ とを 論 証 し よ うとし た18)。彼 ら は、 す べ て の 理 論に イデ オ ロギ ーが 反 映す るのは 致し 方ない こ とだ と述 べ て い る19)。 した がっ て、 す べ て の理 論 に は複 数 の歴 史 が存 在 す るこ とにな る20)。 マ ネ ジメ ント の テ キス トを もって して、 そ れ が学 問 分 野 の 現 状に つ い て の純 粋 な表 現で あるな ど と決し て仮 定す べ き で はな い。 む しろ、 マ ネ ジメ ント 思想 は、 歴 史的 に 、年 代 学 や 年代 記を 超えて 存 在して い る21)。 現代 の多 様な マ ネ ジタン ト思 想を 理 解 す る た めに は、 マ ネ ジ メン ト研 究分 野の歴 史 とイデ オ ロギ ーの展 開を 理 解 ・評 価す るこ と が重 要で あ る。 そ うす るこ と で、 連 綿 と続 く認識論的 基 盤や 理論 パ ラ ダイ ムだけ で な く、 現 代 の実務 家 の 内在的 価 値 と志 向 性を 理 解 す るこ と ができ る22)。 こ うし た理 由 で、 歴 史研 究 は、 自己 認識 を 獲得 す る の に 有 用 であ る とい え る23)。 また、ある世代 の誤 りを 、次 世 代 の真 実 に よっ て訂 正す る こ とがで き る。ハ ミ ル ト ン(Hamilton,E. )がい う ように 、あ る世代 の 異説 は 、次 の世代 に は正 統 な説 にな りう るので あ る24)。 この よ うな 世 代間 の見解の 相違 は、歴 史的 時 間 の設 定 を変 化 させ た結 果 と考 えら れ る2S)。 イ ギ リ ス のマ ネ ジ メン ト思想家 とし て 著名な チ ャイ ル ド(Child,J.)は、マ ネジ メ ントに 関 わ る概 念や 観念 が、 ① 「科 学 的な 観察」、 ②「間違 っ た観察 」(erroneousobservation)、 ③「歪 めら れた 観 察」(distortedobservation)、そ して ④「純粋 な価 値 観 の表 明」 とい った4 つ の局 面を 通 じて、マ ネ ジ メント 思 想に 取 り入 れら れ ると考え 、そ の形 成過 程 を描 い た26)(図J を 参照 の こ と)。 まず、マ ネ ジ メン ト の仮説 や 価 値 の もとにな るに 利用 可能 な 観念 が、 マネ ジ メ ントに 無関 係 な観 念 の源泉 や 以 前の マネ ジメ ント 思 想に 起 源を もつ 観 念 の源泉 から 蓄 積 さ れる。 次 に、 そ れを も とに して 仮説 が立 てら れた り、 あ るい は 価値 観やイ デ オロ ギ ーが 生 まれ る。 仮説 は、 科学 的 な調 査結 果 を もとに 実証 され て、 マ ネ ジ メン ト 思想に 取 り入れ ら れてい く。 し か し、 中に は 調 査 の際に 本質 的 な過失 を 犯し た り、 資 料を 間 違 っ て 解釈 してし ま う場合、 実 証的 に 観察 を 行 うが そ の結 果に 対す る 評価 があ る価 値 観に よっ て歪 め ら れて し ま う場合 、そ し て純 粋な 価値 観に も とづ い て仮説 や 命題 を立 て てし ま う 場 合 が考 えら れ る。 こ れら がある時 点 で のマネ ジ メン ト 思想 とし て 記録 さ れ、そ の 後 のマ ネジ メ ン ト 実践 に影 響 を 与 え る。 そ れ では 、 後 の世 代 で の社 会科学 的 な調査 や 分析に よ って、 科 学 的な 要素 と 間違 っ た要素 、 さら に は多 少 と も価値 観に よって 歪めら れ た要素 とを 識 別 す るこ とは で き るのだ ろ うか。 ② の間 違 った 要素 と③ の歪 めら れた 要 素を 明確に 区別 す るこ とは 難し い か もし れ ない。 し か し、 当時 の知識 水準 一限 界 技術 で は致 し方 な かっ たもの と、 最初 か ら価 値 観に よって 歪 めら れた り、 解 釈 が間違 っ てい る もの とで は、 そ の差 が判 別 でき ると考 えら れ る。
・・正 当 化 188 観念の 源泉 マ ネ ジ メ ント 思 想 の 形 成 マ ネジメ ント 思 想の下 部構 造的機 能 経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 ) 図1 チ ャ イ ル ドに み る マ ネ ジ メ ン ト 思 想 の 形 成 過 程 観 念 の 独 自 の 源 泉( す な わ ち、 は じ め は マ ネ ジ メ ン ト に 関 す る事 柄 と無 関 係 な 観 念 の 源 泉) ↓ 以 前に も記 録さ れた マネジメ ント思 想に 起 源を をもつ観念 仮 説や価 値 のもとに なる 利用 可 能な観 念の蓄積 (a ) 仮 説 観察に よる 調査の 結果 科学的 マ ネ ジ メ ント に 関 係 す る “ 科 学 的 ” 調 査 を 続 行 し よう と す る よ り 大 き な 圧力 “ 科 学 的 ” な 調 査 不 十 分 な 調 査 、 観 察 に お け る 誤 り な ど 価値 観 によって 歪 めら れた観察 (b ) 価 値 純 粋 な価 値 T 申 あ る時点 で記 録さ れる イギリ スの マ ネジメ ント思 想の集 まり マ ネジメ ント思 想はそ の後 のマネ ジメ ント運動 の欲 求の知 覚に 影響 を与 えるか もし れない 価 値観 に もとづ く仮定 や命題 非 合理的 価 値一 要素を促 進しよう とする 大 きな圧力 マネジ メント 運動 の欲求 は、広 範 囲に わたる社 会一 産業 環境 を考 慮 して知覚 さ れる 備 考: 観念 の 流入を 下方 への 流れ とし て表示 し、 下 部構 造的 な要 件を 図の底 部に 配置す るのは 、全 く図示 す る 際 の便宜 上 の問題 にす ぎない。 それは 、利 用 可能な 観 念と 下部 構造と の間 の時 間的 経過を 示 すも のでは ない。 資 料出所:Child,J.,BritishManagementThought,GeorgeAllen&UnwinLtd 。1969,p.236. ( 斎 藤毅 憲・高洋 十 四久 ・岡田和 秀 『経営 管理 思 想』文 具堂 、1982年 、244頁 。)
マ ネ ジ メ ン ト 史 方 法 論 序 説 189 価 値 観 や ア イ デ ア が 時 代 に よ っ て 変 わ る と か 、 あ る 時 点 で 正 当 と 認 め ら れ た 倫 理 的 ・ 道 徳 的 基 準 が 別 の 時 点 で は 不 当 と み な さ れ る と か 、 知 識 の 枠 組 み が 時 代 に よ っ て 異 な る と い っ た 見 解 を 、 歴 史 的 相 対 主 義 (historicalrelativism) あ る い は 歴 史 法 則 主 義 (historicism) と 呼 ぶ27)。 こ う し た 考 え 方 は 、 歴 史 の 絶 対 的 原 則 の 妥 当 性 を 否 定 す る も の で あ る 。 例 え ば 、 歴 史 法 則 主 義 は 、 組 織 の 構 造 や 行 動 が 文 化 に 依 存 す る こ と を 前 提 と し て い る 。 し た が っ て 、 異 な る 文 化 に お け る 組 織 の 違 い ぱ 、 比 較 の 際 に 歴 史 と い う次 元 を 含 め る こ と に よ っ て 説 明 で き る。 例 え ば 、 科 学 的 管 理 法 や 人 間 関 係 論 と い っ た 古 典 的 管 理 論 へ の 批 判 が 、20 年 か ら25 年 の 周 期 で な さ れ る28)。 こ う し た こ と は 、 す べ て の 知 識 の 進 歩 が 歴 史 に 基 づ い て お り、 出 来 事 や 考 え 方 が 生 じ る 場 所 や 時 間 が 、 そ れ ら の 特 徴 に 影 響 を 及 ぼ す と い う点 を 考 慮 し て い な い こ と に 起 因 し て い る こ の点 で 、 過 去 と 現 在 の 理 解 に は 、 コ ソ テ ク ス ト す な ち わ 時 代 背 景 や 状 況 に つ い て の 研 究 が 必 要 で あ る と い え る。 出 来 事 や 考 え 方 を 解 釈 す る に は 、 生 ま れ て き た 原 因 や 状 況 ( つ ま り 時 間 や 場 所 ) が 必 要 不 可 欠 な 要 素 で あ る 。 ま た 、 特 定 の 時 点 で 個 々 の 事 象 を 理 解 し よ う と す る と 、 特 殊 性 と一 般 性 を 取 り 違 え る危 険 が あ る 。 状 況 や 時 間 の コ ン テ ク ス ト に ど れ だ け 敏 感 か と い う こ と が 、 事 象 (what ) ・ 方 法 (how ) ・ 理 由 くwhy ) を 理 解 す る の に 不 可 欠 で あ る ば か り で な く 、 出 来 事 や 考 え 方 の 流 れを 見 抜 く の に 不 可 欠 で も あ る29)。 上 で 例 に 挙 げ た よ う に 、テ イ ラ ー(Taylor,F.W. )は 、現 代 の マ ネ ジ メ ント 思 想 家 の う ち で 最 も 著 名 な 人 物 の1 人 で あ る が 、彼 の 動 作 研 究 (motionstudy ) や 時 間 研 究 (timestudy ) が 経 済 人 仮 説 や 人 間 機 械 視 観 を 連 想 さ せ る た め 、 時 代 遅 れ の 管 理 手 法 の 典 型 と み な さ れ て き た 。 テ イ ラ ー リ ズ ム(Taylorism ) の 主 た る 目 的 は 、 最 高 の 管 理 手 法 を 求 め て 、 経 験 則 を 科 学 的 研 究 成 果 に 置 き 換 え る こ と に あ っ た 。 こ れ が 、 今 日 の 経 営 管 理 者 の 目的 と ど こ が 違 うの で あ ろ う か 。 テ イ ラ ー ・ シ ス テ ム の 精 神 を 取 り入 れ て い な い 製 造 企 業 な ど な い の で は な い だ ろ う か 。1930 年 代 の 人 間 関 係 論 運 動(humanrelationsmovement ) が 流 行 す る 前 に 、 テ イ ラ ー主 義 に 対 し て 批 判 の 声 が 高 ま っ た30) し か し 、 こ の こ と は 、 当 時 の ア メ リ カ の 労 働 者 の平 均 的 教 育 水 準 が3 年 で あ っ た と い う コ ン テ ク ス ト で 考 え れ ば 当 然 の こ と で あ ろ う31)。 テ イ ラ ー の 研 究 成 果 に よ っ て 、 ア タ リ カ ぱ も と よ り 、 当 時 の 低 開 発 国 と か 最 貧 国 の 多 く の 労 働 者 が 、 中 産 階 級 の 賃 金 と 地 位 を 獲 得 し た こ と も ま た 事 実 で あ る32)。 テ イ ラ ー に 対 し て は 、 上 述 し た よ う に 、 経 済 人 仮 説 や 人 間 機 械 視 観 を は じ め 、 人 的 要 素 を 無 視 し て い ろ と の 理 由 で 、 こ れ ま で 厳 し い 批 判 が 加 え ら れ て き た こ と は 周 知 の 通 り で あ る 。 し か し 、 彼 が 、 人 的 要 素 す な わ ち 人 間 的 な 課 題 を 理 解 し て い な か っ た 訳 で は な い ≒ 当 時 の 知 識 の 程 度 や 範 囲 あ る い は 仮 説 を 参 照 に し 、 歴 史 的 文 脈 を 考 慮 に し て 判 断 す れ ば 、 テ イ ラ ー の 思 想 は 、 い ま で も 現 代 に お い て 妥 当 性 を も っ て い る と い え よ う。 テ キ ス ト に み ら れ る 時 代 遅 れ の 神 話 に 惑 わ さ れ な い た め に は 、 当 時 の 社 会 的 な 現 実 に 基 づ く 文 脈 上 の 解 釈 が 必 要 で あ る34)。
190 経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 ) Ⅲ 。 知 識 形 態 と し て の マ ネ ジ メ ン ト 史 教 育 哲 学 者 で あ る ハ ー ス ト(Hirst,P. )は 、1965 年 に 、特 定 の 学 問 分 野 の 適 切 性 と そ の 価 値 の 正 当 性 を 評 価 す る た め の 基 準 を 開 発 し た 。 彼 は 、 知 識 形 態 (formsofknowledge ) と し て の 必 須 条 件 を 提 示 し 、 こ れ に 一 致 し な い も の は 、 テ ーマ と し て 研 究 ・調 査 あ る い は 教 育 に ふ さ わ し くな い と い う。 そ の 基 準 に は 、(1 )中 心 概 念 と 専 門 用 語 、(2 )概 念 を 詳 述 し 関 連づ け る 明 確 な 方 法 、(3 )証 拠 を 検 査 す る 独 自 な 方 法 、(4 )独 自 な 技 術 と 方 法 論 の4 つ が あ る (m2 を 参 照 の こ と )。 カ ー ソ ン = カ ー ソ ン (Carson,P.P.,andCarson,K.D. ) は 、 ア ネ ジ メ ソ ト 史 の テ ー マ が 上 記 の4 つ の 基 準 を 満 た し 、知 識 形 態 の 条 件 を 満 た し て い る と し て 、 こ の 理 論 的 枠 組 み の範 囲 内 で 、 知 識 形 態 と し て の マ ネ ジ メ ン ト 史 の 理 論 、 方 法 、 お よ び 展 望 を 概 説 し て い る35)。 (1) ハー スト の基 準1 :中 心 概 念と 専門 用語 ハ ーストに よれば 、知 識 形 態 に は、一 定 の中 心的 概念 と、 固 有 の専 門 用語 が 含 ま れてい なけ れば な ら ない。 意味 の誤 解を 避け る た めに、 通常 用い ら れる用 語 や 慣用 句を 標準 化 す る こと は重要 であ る。 とはい え 、 自然 科学 に 比較 し て 、歴 史 研究 では 明確 な言 語様 式を 必要 と し てい な い。 例え ば、 図2 知識形 態の4 つの 必須条 件 基 準1 知識形 態とし ての マ ネジメ ント 史 基 準2 中心 概 念と専門用 語 基 準3 証 拠を検査 す る独 自 の方 法 概 念を詳 述し 関連づ け る明確 な方 法 基 準4 独 自 の技 術と 方法 資料 出所:Carson,P.P 。andCarson,K.D.,"TheoreticallyGroundingManagementHistoryasaRelevantandValuableFormofKnowledge,"JournalofManagementHistory,vol.4,no.l,1998,p.3O レ
マネジ メント史方 法論序 説 191 論理 実 証 主義 では、多 変量 解 析に 必 要 な経 験的 デ ータか ら 結論を 導 き出 す とい う手 続 き が とら れる のに 対 し て 、歴史 研 究で は、多 くの 場 合印 象 に基 づ く分 析 が行 わ れてい る。 言い 換 え れ ば、 雰 囲気 、 感覚 、 思 想、 あ るいは 動機 を含む 説 話か ら 結論 が 引 き出 さ れてい る。 と ぐに、 歴 史 研 究 では 、 人間 行動を 説 明 す るために 、 出来事に 関 係す る 行為 者 の動 機 の理 解 が重 視さ れる。 ト ン プ ソ ン(Thompson,C.J. ) ら に よれば 、 こ うし た 動機に は、 次 の3 つ の 水 準が あ る38)。1 ) 承認 と認識を 必要 とし ない ほ ど 明確 な動 機。2) 行 為 者に 気づ か れる ことな く影 響を 与 え る 社会 的 諸力。3 ) 行 為 者 自ら が意識 し たり、気 づ い てい る 動 機。 論 理 実 証主 義 で は、 もっぱら3 ) の 行為 者 の 意識 的 な動 機に 焦点を 合 わ せる が、 歴 史 研究 で は、 出来 事 に 関 係す る人 びと の感 覚を 心 に 浮か べ 、つ ま りそ れに共 感 する ことに よって 、 彼 ら の感 覚を 再 構 築 し、 錯 綜 した動 機を 究 明し よ うとす る。 こ の共 感 の再構 築(empatheticreconstruction) と い っ た 技術 に よって歴史 研究者 は、 出来 事 を追 体 験す るこ とが で きる のであ る。 ハ ースト は 、 例えば、 歴 史的に 有名 な 場 所 へ の訪問 、 歴史 的 人物 の子 孫 の話 、 一 次的 資 料 の精 査 ・ 精 読 な どを 通 じて、 過去 の 出来 事に 感 情 移 入し 、共 感 を再 構 築す るこ とが、 歴 史 研究 者 の能力を 向上 さ せる こ とに役 立つ とい う。 なぜ なら は 、 そ うし た歴 史的 テ ーマへ の傾注 は、 ①微 妙 な ニ ュア ン スを 感 知 し、 ②文 化的 偏 向・価 値に 陥い るこ とを 防 ぎ、 ③当該 行為 者 と同一 の 思 考・ 感 情を 抱 く こ とが で き るか ら である。 (2) ハ ー ス トの基 準2: 概 念を詳 述 し関 連 づけ る明 確な 方 法 ハ ース トに よれば 、知 識形態 には 、 概念 を 明 瞭に 説 明 でき る方 法 とか、詳 述 で き る独 自 の方 法 が なけ れ ばな ら な い。19世紀 のドイ ツの歴 史 学者 で あ る ラ ソ クス(Ranks )は、歴史 的 方 法論 の過 程に は 、1 ) 調 査 、2 )統 合、 そし て3 ) 解 釈 と い った3 つ の段階 があ る とい う37)。1 ) 調 査 (investigation) 調 査 とは 、 年代 順に 、一 貫し た方 法で 因 果 関 係の 説 明を 関連 づけ 、そ の因 果関 係 を 全 体的 に 説 明 で き る歴 史的 事実(historicalfacts) の発見 を 意 味 す る。そ の 際、この行 為者 の 明白 な動 機 水 準に 関 係 す る歴 史的 事実 と、そ れ とは無 関係 な単 な る 事実(merefacts )を 区別 しなけ れば な ら ない。歴 史 研 究 で は、 歴 史 的証 拠を 収 集し、組 み 立 て る過 程に お い て、 各 々 の事実 は、そ の信 頼性 を 検証 され る とと もに 、 別 の証 拠 と比較 さ れる必 要 が あ る。 歴 史 研 究 とは、 異 な る見解 の源 泉 に 由来 す る、 非 常 に多 く の多 様 で矛 盾し た 不完全 で複 雑 な事 実 を、 内部 ・外 部 批判に さ らし、 証 拠を 一 致 さ せな が ら 、 出 来事 を 復 元す る こと であ る。
192 経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 ) 2 ) 統 合 (sythesis) 統 合 とは 、説 明に役 立つ 論 理的 な 事 実 と、 信 頼で き る証拠 とを 全体 的に まと め る こ とを 意味 す る。 確 実 な根 拠 のあ る歴史 的説 話は 、 歴史 的 出来 事 と無 関 係な単 な る事実を 含 まず 、 関 連し た歴 史 的事 実 を含 み、歴 史的 事実 間 の相 互関 係を 十 分 に 説 明で きる も のでな くて はな らな い 。 当 然 、歴 史 的事 実 と単 な る事 実 との区 別に 際し て は、 そ こ に偏 向 や 主観性 が 介在 する可 能 性が あ る。 こ れに 対し て、 一 部 の歴史 研 究者 は、 そ の区別 に 際し て 偏 向や 主 観 性の恐 れを 認 めな がら も、 た とえ 主 観的 な 情報 であ っ て も、 蓄積 され た知識 ・ 経 験・ 理 解 ・想 像力 に よっ て、 合理 的で 客 観的 な 結 論を 導 き出す こ と もで き るとし てい る。 図3 知 識 形 態 の 各 種 情 報 源 一記 録 と 遺 物 記 録 一 意 図 し て 伝 達 さ れ た 証 拠 文 書 記 録 : 年 代 記 伝 記 家 系 供 述 書 お よ び 法 廷 筆 記 録 回 顧 録 日 記 。 碑 銘 お よ び 献 呈 の 辞 口 述 記 録 : 民 謡 伝 説 武 勇 伝 芸 術 記 録 : 肖 像 画 彫 刻 硬 貨 映 画 写 真 遺 物 一 意 図 さ れ ず に 伝 達 さ れ た 証 拠 遺 体 手 紙 公 文 書 言 語 儀 式 お よ び 慣 習 道 具 領 収 書
資 料 出 所:Barzun,J 。andGraff,H.F 、,TheModernResearcher,4thed.,HarcourtBraceJovanovich,1985;Vincent,J.M 。HistoricalResearch,NewYork,1911;Carsonetal.,op.cit 。,p.35. よ り 転 載 。
マ ネ ジ メ ント 史 方 法 論 序 説 193 3 ) 解釈(interpretation) 歴 史研 究は 、 事実 と因果 関 係に つい て の説話を 統 合す る ばか りでな く 、説 話を 解 釈・説 明 するこ とを 目的 とし てい る。 す な わち、 歴史 は、 出来 事の 順序 や関 連 の説 明 な しに は、 た んな る事実 の カ タロ グや 記録づ く りに な って しま う。そ れを 避け るに は、 そ の出来 事 があ る出来 事 より も先行 して い る か どうかを 検証 す る必 要 があ る。 とい うの は、あ る 出来 事 の発 生 が、 そ の後 の 出来事 の ①構造 上 の原 因、 ②文 脈上 の 原因 、 ③誘 発の原 因 とな る可能 性 があ る から で あ る。 (3) ハ ース トの 基 準3 : 証 拠を 検査 する独 自な 方 法 知 識 形態 には 、 自ら の主 張を 証 明する 証拠を 挙げ る独 自 の方 法が なけ れば なら ない 。 例 えば、反 復 実験 は科 学 の特 色で あ る が、 歴史 研究 では 上述 した 共感 の 再 構築 が 特徴 であ る。 歴史 研 究では、 自 然科 学の よ うに、 調 査 や 操作 に よって デ ータを 創作 ・考 察 ・構 築 で きない とい う点 て制 限か おる。 す なわ ち、該 当 す る原 資 料 の位 置づけ が 制約 さ れてい る。 論 理実 証主 義 で ぱ、 例 え ば、 アン ケ ート に みら れる よ うに、 テ ーマ がデ ータの収 集に先 行 して 公式 化 さ れる が、 歴 史研 究 で は、 デ ータ収 集 が疑 問 よ り先 行 して い る こ とは よ くあ る こと であ る。 もち ろ ん一 般 的に は 、疑 問 す なわ ち テ ーマに 応 じ た利用 可 能 な事 実 が 情報 源 とな る。 事実 は、直 接 収集 し た証 拠 から な る一 次 的 情報 源 と、前者 に 基づし て作 成 さ れた 証 拠か ら なる二 次的 情報 源 から 集め ら れ る。 一 次的資 料 に は、 口述 記 録、原 文 、 写真、 雑 誌、 日記 、手 紙 、 自叙伝 な どがあ る。 た しかに 、 マ ネジ メ ント 史 研究 の方 法論 上、一 次 的情 報 源 の発 見 が重 要 だが 、そ の取 り扱い には 慎 重を 要す る。 とい うのは 、 当該 情報 が、 必ず し も歴史 的 事実 を正 確に 伝え て い る とぱい え ないか ら であ る。 一 次的 情 報 源は 、対 立 する制 度や 権 力あ るい は 個 人 の 記 憶 違 い や 誤 解 な ど に よ って 、 偏 っ た り、 矛盾 し た 結 論に な ってい る か もし れない。 歴 史的 事 実を 知 る 上で 潜 在的 に 役立 つ 情報は 、 とくに 宗教 や政 治 から の抑 圧を 受げ やす い も のであ る場 合 が多 い。 ハ ースト は 、歴 史 的事 実を 伝え る 情報 源を 、図3 に 示 した よ うに 、記録(records) と遺 物(relics)の2 つ に分 類 し、前者 は上 述し た ような偏 向 ・矛 盾 ・抑 圧 に よっ てそ の内 容が 歪め られ てい る 可 能性 が 高い の に比 べ て、 後者 は意 図的 にそ の 内容 が 歪 めら れ てい る可 能性 が 少ない とい う。 (4) ハー スト の基 準4 − 独 自の技 術と 方 法論 知 識形 態 は、調 査 を 実 施 する 上で 、独 自 の技術 と方 法 論を もっ てい なけ れば なら ない 。 マ ネジ メ ント 史分 野で の 独 自 の情報 源に は、1 ) 伝 記、2 ) 口述 記録 、3 ) 会 社史 な ど があ る38)。1 ) 伝 記 伝 記は 、 例えば 、 マ ネ ジ メ ント 分 野の 創設 者や パ イ オユ ア の貢 献 を 保存 し て お く有効 な 手段 の1
194 経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 ) つ であ る。 し かし 、著 者 の意向 に よって 、彼 らの 行動 が過度 に 批 判 され た り理想 化 さ れた りす る危 険性 を はら ん でい る。 伝 記 は、彼 ら の貢 献を含 め 個人 の生 涯を 題 材 とし てい る ため 、歴 史研 究者 に と って魅 力 的 な情 報源 で あ る。 しか し、 研究 者は 、登 場 人物 の説話 を 、 彼ら の 思考 過程 に影 響を 与 え る社会 的 諸力 と 統合 し て解 釈 しなけ れ ばな らな い。 とい う のは、 彼 ら の貢献 は 、彼 ら が 生きた 時 代背 景を 考 慮し て のみ 評 価 でき るから で ある39)。 伝記 作 家 が個 人( 登場 人 物)を 理 解す るた めに は、 そ の性 格 につ い て次 の4 点 を 明ら かに す る必要 が あ る40)。 ①登 場 人物 の外 観お よび癖 ②登 場人 物 の特徴 的 な 態度 ③近 親者 や 仲 間だけ が知 っ てい る登場 人物 の要 素 ④登 場人 物 の心 理 の 核心 あ るい は実 体し ④に みら れ る よ うに、 最終 的 に は伝記 作家 は、 登 場人 物 の 心 の奥 の動 機や 感 情を 解 釈す る時、 ① ② ③の ような 情報 を 踏 まえ あ るいは そ れを超 えて 、 登場 人 物 の心 理 の核 心や 実 体を 推 し量 ろ うとす る41)。 また、 マ ネ ジ メン ト思 想 へ の貢献 者 の知 的 発展 に 影響 を 与 えた で あろ う事 柄 を理 解す る ため の情 報 源に 自叙 伝 があ る42)。2 ) 口述 記録 口述 記 録 (oralhistory) は、 マネ ジ メント 思想 へ の貢 献 者に つ い て研 究す る ため の手 段 の1 つ で ある。 と い う のは、 マ ネジ メン ト思 想へ の貢献 者 が かな ら ずし も自ら の思想 を 文字 で記 述し てい る とは限 ら ない か らで あ る。 彼 ら の感 情、性 格お よび 思想 を 理 解す るた め には、 イ ンタビ ュ ーが有 効 であ る。 口述 記録 は 、 重 要な マ ネジ メン トの事 象 やそ の関 係に つい て の理由 と か方 法を 説 明する た めの豊 富 な材 料を 提 供 し て くれ る43)。 ミッチ ェ ル(Mitchell,R.K. )に よれ ば、企業 家 とそ の企業 家 精神 に 関 す る心 理学や 社 会学 の先行 研 究で は、 十 分に 彼 ら の 性格 と コンテ クスト との 因果 関 係や 企業 家 との成 功 の因 果 関係 を明 らかに す るこ と がで き なか っ た とい う44)。そ こで彼 は、 企業 家 の 行動 を 解 釈し 、彼 ら の知 識構 造 を 理 解 す るため の新 し い 可能 性を 追 究 す る手 法 と し て 、 エ キ ス パ ート 情 報 処 理 理 論 (ExpertInformationProcessTheory ;EIPT ) の適用を 提 唱し た。 彼 は、特 定 分 野で の 高度 に 開発 さ れ秩序 立 てら れ た知識 を 「専 門家 ス クリプ ト」(expertscript)と 呼 び、そ の基 盤 の 形成 過 程 の分析 を通 じ て、内部 者固 有 の展望 に つ い て、 正 しい 認識 を 得 ようと し た。1993 年 、 企業 家23人 に 対 して 企業 の成 功 と失 敗を 含 む事 業 活動 歴 につ い て のイ ン タビ ュ ーが行 わ れ、そ こで得 ら れ た 口述 記 録を 用い て、 企業家 の成 功 と失 敗 の基 準 が 明ら かに さ れた。 そ の結果 、 企 業家 精神 は 、 人 間行 動 の 基本 原則に 則 っ た もので 、理 想 化 さ れた 言葉 で も実 践 で もない こ とがわ
マ ネ ジ ノ ソト 史 方 法 論 序 説 195 か っ た。 企業家 的 な 成 功 は、 神秘 的な ものでは な く、 企 業家 精神 は身 近な 平凡 な 方法 で 獲得す る こ とが でき る もので あ る。 口述 記録 は、 部 内者に は共 感を 呼び 起 こし 、 共通 の 経 験 を語 りかけ るも の で 、深 い 洞察を 提 供 し て くれ る もので あ ること が分 かっ た。3) 会 社史 マ ネジ メン ト史 の 方法 論 の範 躊に 会 社史を 含 め るに は、 研 究 の 焦 点 を 、 管 理 的 意 思 決 定 、 リ ー ダ ーシ ップ お よび 株主 と の相 互作用 に 絞ら なけ れば なら ない。 中 小 企業 の よ うに 最 高 経営 責任 者が 個人 的 に運 営し て い る場 合 に は、会 社 史で上 述 の ような 内容 が記 述 さ れて い る 可能 性 が 高い。一 方、 大企 業 の会 社史 は 、 マネ ジ メ ント史 研 究に とって 次 の ような点 で 重 要 な手 段 とな り得 る。 ① 制度 ・ 組織 につ い て の 記録を 保 存 した数 少な い資 料 であ る。 ② 管理 者に 、 過 去 の事 象 お よび行 動に 関す る情 報 と、将 来 の意 思 決定 に 際 して の堅 実な基 盤を 提 供す る こと が で きる。 ③新 し い管 理 者 の訓 練に 利 用 で き、真 の組 織文 化を 知 るこ とが で き る。 もち ろ ん、 会 社史 は 、過 去 のビ ジ ネ ス実践を 記述 し た もので あ る。 し か し、 一 般 は もと より研 究 者 を対 象 にし た も ので はな い 場合 に は、 入手や 利用 が 困難 であ っ た り、反 対 に 一 般 向け の場 合に は、 もっ と もらし い皮 相的 な歴 史 や説 話 で飾 られ てい る可 能性 が高 い。 ハ ー ストは、 上 述 の4 つ の基準 の 他に、 歴史 の効 用、 つ ま り知識 形 態 の実 用 的 価値 につ い て も言 及 して い る。個 人 の 記憶 が 、 個人 の正 体 の意味 を 確立 す る基 盤 の役 目を果 たす の と 同様 に、 す べて の歴 史 的記 憶は 、 学問 分 野 の独自 性を 確立 す るた めの 基盤 の役 目を 果 た す とい う意 見 があ る。 これ に対 し て、 歴史 は役 に 立 た ず注 目に 値 しな い とい う意 見もあ る。 また 、歴 史 と は、 説 明す るも ので あ って、 かなら ず し も予 測 す るも ので はな いし45)、 歴 史的 方法 論 は、 普 遍的 な 妥当 性を 望 ん で は な い とす る意 見 もあ る46)。し かし 、歴 史 は、指 針、モデ ルの 検索、意 思決 定 へ のイ ン プ ットとし て利 用 で きる。 過 去か ら学 ぶ こ と は、難 し く危険 であ る が不 可欠な も ので あ る。 N. マ ネ ジ メ ン ト の 歴 史 的 方 法 論 の 重 要 性 カ ーソン= カ ーソンに よ れば、 マ ネ ジ メント史 の 専門 誌であ るジ ャ ーナル ・ オブ ・ マ ネジ メント ・ ヒ スト リ ー誌(JournalofManagementHistory )や アカデ ミー・ オブ ・ マ ネ ジ メン ト ・レビ ュー 誌(AcademyofManagementReview) でさえ 、一 部 の研究 を除 い て 、そ の歴 史 的 方 法論 につ いて 理 論的 に 言及 した ものは ほ どん どない とい う47)。 とくに 歴史 研 究で は、 他 の社 会科 学 に 比 べ て 、 そ の方 法 論に 言 及し た文 献 が多 い とはい え ない48)。 マ ネジ メ ント は もち ろ ん のこ と、 あ ら ゆ る学 問 分 野に おけ る歴史 研 究 は、 そ の方 法 論に おい て 基本 的問 題に 直面 し てい るの が現 状 で あ る。 ベ ント リ ー(Hendry,J. ) に よれば 、 マ ネジ メント史 家 は、 歴 史学 の方 法論 を 学 習 し た 経 験 が な
196 経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 ) く 、テ キ ストや 古 典的 名 著 で提 起 さ れた時 代を超 え た疑 問に つ い て の批 判的 討 議 と、 自著 につい て の 批判的 フ ィ ード バ ッ クを 通 じて 、 自ら の技 能を 磨い て い る とい う49) 研 究に 際 して は 、 上 述 し た 討議 とフ ィ ードバ ックを 通 じて 、歴 史的 説 明と理 論的 説 明を 分け て考 え るこ と が有 用 で あ る50)。 歴 史 の解釈 で は、 作用 、 特 殊性 、 蓋然 性 の説 明を 中 心に 、特 定 の興味 を そそ る 現 象を 生 んだ 出来事 の コ ンテ クスト と 因果 関 係に 焦 点 が 絞ら れる。 理論 的説 明 では 、 抽象 的 で、 コン テ クスト と は無 関 係 で、蓋 然性 を 認 めな い とい う観 点で の説 明が 求め ら れる。 歴 史 研究 で は、 特定 の展 開を 引 き起こし た先行 的な コン テ クス トや 出来 事 ・事件を 明ら かに し ようと す る。一 方 で 、 理論 的説 明に よって、 特 定 の歴 史 的 事 例を 超 えて 適 用 で きる理論 的原 則 の検証 と考 察 が試 みら れる。 歴 史的 説 明は、 理論 的 説明 と補 完的 関 係 にあ るた め、 前者 は、 理論 的 関係を 描 写 す る構 造的 ま たは 因 果関 係的 な モデル を 開発す る のに 有 益 であ る。 これ まで の マ ネジ メ ント 研 究で は、 因果 関 係を 仮定 す る のに 定 性 分析 的 な アプ ロ ―チが多 く用 い ら れてき た。 そ れに は、 事 象や そ の コンテ クスト が はっ き り と理 論づけ ら れ、 事 実に基 づ いた資 料 が抽 象化 ・一 般化 さ れ、 そし て 説話 の順 序 の中 の因果 関 係 が 明確に 確 立 さ れて い るこ とが 前提で あ る≒ こ の 因果 関 係 の証 拠 の 抽 出や整 理 の仕方 に対 し て、 と りわけ 統 計 学的 手 法を 用 い る 研 究 者 か ら 疑問 が投げ かけ ら れ て きた52)レ 彼ら は、 自然科 学 的 な実証 主 義 で裏 付け ら れた よ うな 科 学 的 推 論 は、客 観的 であ り個 人的 偏 見 が ない とい う信じ てい る が、そ の よ うな こ と は神 話で あ る53レ 数 量(定 量) 化 する とい う手 続 きは 、 た しかに 精緻 化 する ご とに違 い ない が 、定 性 化 よ り も優れ てい るとは 必 ずし もい え ない 。 関 係す る 研 究者 が、事 実分 析 するに 際 し て、 客 観的 な 第三 者とな りえない。 な ぜ なら、 彼 は、 研 究 過程 に おけ る行為 者 ・当事 者そ の も のな ので あ る。 歴史 研 究とそ うでない も の と の基本 的 な違 い は、 デ ータ (証 拠) が生 じ る方法 にあ る。 統計 学的 処 理を な さ れた デ ータを もた らす イン タ ビ ュ ー調 査 も、一 般に、 質 問者 のあ らか じ め選 択 され た 行動 カ テ ゴ リ ーや オ リエ ンテ ー シa ンに 適合 し た デ ー タを 創 造す る手 続き とい え る。 また そ れは 、 回答 者 の主 観的 な 解釈を 再度 解 釈す る手 続 きと もい え る。 す なわち 、一 見、 客 観的 かつ 科 学的 デ ータと みら れ る も のも、予 測や イ デ オロギ ー的 な 偏 向に 満ち てい る ともい え るの であ る。 他方 、歴 史研 究で は、 一 次 的資 料 に基づ く推論 が 導 き出 さ れる だけ であ る 。 した が って、 歴史研 究 で必 要 とさ れる 想 像力 は 、 事 実 の再 形成 に 向け ら れる の であ っ て、 事実 の創 造 のため であ って は なら ない54)。 す なわ ち 、そ れは 、 過去を 説 明す る論 理的 な 議論 と証 拠資 料に 裏 打 ちさ れ た 創 造 力 で なけ れば なら な い の であ る 。 い ま1 つ 重要 な こ とは、 歴史 研 究 であ ろ うとな か ろ うと情 報 の質 であ る。 マ ネジ メ ント 史研 究 で は 、つ ねに 一次的 資 料 の 入手 可能 性 と保 存 が重 要 であ り、 現 代マ ネジ メ ント研 究 では 、 自 ら が創 造 し たデ ータの完 全性 、 信頼 性、 妥 当性 が 重要 で あ る。 歴史 は、 自ら の業 績 の相対 的重 要性を 把握 し 、 次世 代 との 関 連で そ れを 全 体的 に位 置づけ るため
マネ ジメント史 方法 論序説 197 に 欠 く こ と の で き な い も の で あ る 。 歴 史 研 究 は 、 過 去 と 現 在 そ し て 未 来 と を 時 間 と 空 間 を 超 え て 、 わ れ わ れ の 時 間 と 空 間 を 正 当 に 評 価 す る こ と を 可 能 に し て く れ る 。 ノ 歴 史 家 の ホ ワイ ト(White,H. ) は 、歴 史 的 事 実 に よ っ て 歴 史 自 体 を 証 明 す る こ と が で き る だ ろ う か と い う 疑 問 に つ い て 、 次 の よ う に 述 べ て い る55)。 「歴 史的 事実を もっ て、歴史そ のも のを 説 明しえ ない … …。 歴史 家は、 事実を 代弁 し 、 …… 過去 の 部分 から 全 体を 形作 る。 そ の全体の完全 性 は、 そ の表現 にお い て、 まったく 散漫的な も ので あ る」 と。 マ ネ ジメ ン トに関 して は、 非常に 多 く の歴 史 的 事実 が あ る。 マ ネ ジメン ト史 の研 究者 は 、 当 然 の こ とな が ら、 そ うし た事 実を 頼りに 歴 史を 語 る。 例え ば、1895年 に アメ リカ機 械技 師協 会 の 会 報で テイ ラ ーの 「出 来高 給制 度」 なる論 文 ("APiece-RateSystem,"Transaction,A.S.M.F.,Vol.16,1895,pp.856-883. ) が発表 さ れ、 ア メリ カで の科 学 的管 理運 動 の 先駆け と なっ た。 こ のこ とは 、た んに2 つ の歴 史的 事 実 の因果 関係を 述 べ た も のにす ぎ な い。 こ うした歴 史 的事 実 を 説 明す るた めの 証 拠 は 、多 くの 文献 ・資 料 の中に 見 い だ す こ とが でき る。 し かし 、た んに足 し 算 だけ では 、歴 史は 語 れな い。 歴 史的 事 実を 組 み合わ せ るこ とで 、 異 なっ た結 果を 出 す こと もで きる。 し た がっ て、 史 実 に つ い ては 、 いくつ もの解 釈が存 在 す る。 歴 史的 事 件 や 出来 事は 、客 観的な 方 法だ け で は決 し て完 全に 再 現で きな い。 マ ネ ジ メ ント 史研 究 で は 、 可能 な 限 り数多 く の一 次的資 料を 用 い て、 過去 に接 近 す るこ とで満足 し なけ れ ばな ら ない。 最 終 的に 、 歴 史 の解 釈は 、主 観に 頼 ら なけ れ ば な らな い か もしれ ない。 言 い換 え れ ば、 過 去を 再 現 す る た めに は 、 研究者 の 想像力(imagination ) がぜ ひ と も不 可欠 で あ る 。 こ れに よっ て 、 読 者 に とっ て 有益 な 説話 を 書く こ とがで きる ので あ る。 歴 史 研 究で は、 合理的 に 起 こる は ず であ る、 あ る い は 起 こ るは ずで あ った 事象 を想像 力に よっ て再 現 す る。 この歴 史的 想像 力 とで も い う もの が、 マ ネ ジメ ント 理 論 とマ ネ ジメ ント史を 結 びつ け るも ので あ る。 歴 史的 考 察 では 、 複雑 な事 件に 関 連す る実 証 可能 な 事実 で、 実証 不 可能 な事 実 の ギ ャ ップを 埋 め なけ れば な ら ない。 ス コット (Scott,W.G. ) に よれ ば、そ れに は想像 力 と直観 (intuition) が必 要 で あ る とい う56)。想像 力 は、直 観の 属性 で あ る が、直 観は 、推 論や 動 機を用 い る こと な しに 物 事を 知 るた め の独 特 の方 法で あ る。 直観に よって 得 ら れ た知 識に 対 す る信頼性 につ い ては 不確 か な も のが あ る が、 そ れ は歴 史的 考 察 の中で よ く用 い ら れ る も ので あ る。 バ ーナ ード (Barnard,C.I.)は、 経 営 管 理者 の 意 思決 定過 程を 直 観 とい う方 法 で 説 明 し よ う と し た57)。 こ の点 で、 サ イ モン (Simon,H.A. ) と 激し く 意 見が 対立 した。 バ ーナ ード は 、独 占的 な 価格 決 定に つ い て の彼 の娘 の 疑問 に答え る 手紙 の中 で、 直 観に 関 す る自ら の見 解を 述 べ て い る58)。 彼 に よれ ば、 価 格形 成政 策 は 経済 学者 が指摘 す る よ うな 合 理的 な 理論 の 観点で は、 完全 に記 述 ・説 明す
198 経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 ) る こと はで き ない とい う。 そ うで は な く、 価 格決定 は 、あ る程 度、管 理 者 の知 識 、 経 験、 組 織・ 業 界に 対す る 理解 から 生 じる直 観 に 基づ い てい る。 バ ーナ ードは、 こ の過 程を 記 述 す る こ とは 自ら の 知 識 の範 囲を 超 えてい ると感 じ た。 こ れ は、 彼 がそ れを 理 解で きなか ったか ら で は な く、 そ れを 簡 単 な 言葉 に 翻訳 する こ とがで き なか っ たか ら であ る。 ス コ ット に よ れば、 わ れわ れ が直 観的 な 結 論に どの ように 達し たか の説 明を 求 めら れた と き、 ど うしてそ うし た結 論に 至っ た のか は 説 明で き ない が、 なぜ だ かそ の よ うな 気 が し た とい う経験 があ る ので はな いか とい う59)。 も ちろ ん、 サイ モン は、 マ ネジ メント 理論 と 意思 決 定 へ の実 証 科 学 の 適 用 を 訴え た 以上 、こ うし た考 え 方 には こ と ご とく反 対 であ っ た60)。 マ ネジ メ ント の知 識は、 過 去 から 現 在 へ と直 線 的に 続tヽてい ると 仮定 し ては な ら ない 。 むし ろ、 過 去 の制 度、 役割 、文 化 様式 とい った も のは 、 現 在のそ れら に取 っ て代 わら れ 、変 形 さ れ 、再 結合 さ れる。 過去 は、 現 在と の相 互 関 係に おい て 存在 す る。し か し、 マ ネジ メン ト 分 野 では 、 こ れまで 過 去を 無 視し、 現 在 の理 論 や 実践 方 法 が過 去 と の相 互作用 の結果 から もた ら さ れ た とい う認 識が な い まま研 究 が進 めら れ てき た。 ベ ジ ア ン(Bedeian,A.G. )は 、こ うし た状況 を 改 善 す るに は、次 の3 点に 留 意 すべ き であ る とい う61)。1 ) 現 在 のマ ネ ジメ ント の性 格を 分 析 す るに は、 コンテ ダ ストを 説 明で き る論 理 を採 用 す るこ と。2 )m 史 分 析は 、 マネ ジ メン ト の研 究方 法 と し てはな く ては なら ない 機能 を 提 供 し て くれ るこ と。3 )m 史 面を 考 慮し ない 研 究方 法 は 、歴 史 的 研究方 法 よ りも問 題 も多 く、 な ん ら 優位 性を もって い ない こ と。 マ ネ ジ メント 研 究分野 の 基礎 を な し てい る歴 史 的構 造に つい て の理 解こ そ が 、 現代 の マ ネジ メン トを 十 分 に 理解 する上 で 欠 かせ ない 。 む す び に か え て 本 稿 で は、経 営 学 の歴 史 的 発展 過 程を 科 学 的 に分 析す るこ と で、 経営 学 の発 展 法 則を 解 明し よ う とす る わが 国 の 「経営学 史」 と、 ア メリ カの マ ネジ メン ト の歴史 的発 展 過程 で 生 ま れ た学 説・理 論、 さ らに は 説 話を 調査 ・統 合 ・解 釈 す る研 究 分 野で あ る 「マネ ジ メント史 」 を あ え て別 のも のとし て 取 り扱 っ た。 す なわ ち、 両者 を 歴史 的 方 法 論あ るい は アプ ロ ―チ が 異なる もの と みな し て論を 進 め た。 ア メリ カの マ ネジ メント 史研 究 で は 、 ①研 究 の必 要 性・重 要 性、 ② アプp ―チの 方 法、 ③歴 史的 デ ータ の収 集方 法、 ④方 法 論 の構 築 とい った テ ーマが これ まで あ まり取 り上 げ ら れ て こな か った。 そ の かわ りに 、 ①研 究者 の業 績 を 文 献考 証 史 的に 説 明 ・解釈 す る方 法、 ② マネ ジ メ ント の歴史 に支 配 的な 影 響を 与 えた マ ネジ メ ント 思 想す な わ ち パラ ダイ ムを中 心 に時 期 や時 代 で 区 分す る方 法、 さ
マ ネ ジ メ ン ト 史 方 法 論 序 説 199 らに は ③マ ネ ジメト の学説 ・理論 の系譜 を た どる こと で学 問的 発展 過程を 年 代記 的 に とら え る方法 な どが多 く用 いら れて き た。 し か し、 カ ーソン= カ ーソンは 、 マ ネジ メ ント 史 が学 問研 究 分野 のテ ーマ とし て の 基 準を 満 たし てい る か、 との疑 問を投げ かけ た。 そ こ か ら は、 マ ネ ジ メント史 研究 では 、 自然 科 学 と 異な り、 明 確 な 言 語様 式を かな らず し も必要 とし て お らず 、 マ ネジ メ ント行 為者 の動 機 の理 解 つ ま り彼 ら との 共 感を 再 構 築で きる こと が重要 であ る こ とが 分 か った 。そ のために は、 歴史 的 出来 事 の因果 関 係を 論理 的 に 説 明で きる 信頼性 の高い 証 拠を 発 見 ・ 収集 し なけ れば なら ない。 歴 史的 事実 を 証 明 す る証 拠に は 、 意図 的に 事実 を伝 達す る記 録 と、 意 図 せず に 事実を 伝 達す る遺 物があ る。 ただ し、 歴 史研 究は 、 自然 科 学 と比較 して そ の証 拠 の客 観 性 とい う点 て限 界が ある。 こ れに対 し て 、 ホ ワイト は、 歴 史 が 客観 的 事実あ るい は証 拠に よって の み説 明 さ れ る もので はな く、 また でき る もの では ない と い う。 歴 史的 事実 の間隙を 埋 める のは 、知 識 と経 験 に基 づ く想 像力 と直観 であ る と もい う。 た しか に、 時 とし て定 性的 な手法 を と る マ ネジ メ ント史 研 究は 、主 観的 であ る よ うに み え る。 し かし 、 自然科 学的 な実 証主 義に 裏付け ら れ た推 論 が、 客 観的 かつ 偏向 がない とい うのは 神 話 であ る。 分 析者 であ る 研 究者 が、 客観的 な第 三者 とな り うこ とは でき ない。 な ぜなら 、 研究 者 は 、 意識 的あ るい は 無 意識 的にし ろ 技術 ・経 済・ 政治 ・文化 的 状 況 から 影響 を受け てい る から で あ る。 し たが っ て 、 客 観的 かつ 科学 的 なデ ータですら 、 分 析 者 の予 測や イ デ オロ ギ ー的 な偏向 に さ ら さ れ てい る と い え る。 と はい え、 歴史 を 解釈す る のは 、 コンテ クストを 説 明で きる論理 、証 拠 に 裏 打ち され た想 像力 、質 の 高い 情報 が重 要で あるこ と は当 然 で あ る。こ の点 につ いて ス コ ット は、「卓越 し た 歴史 的 想 像力 は、 そ れが以 前考 慮 されて こな か っ た探 求 に 解釈 の道を 開く とい うこ とで、 現代 理 論 の構 築 に貢 献 す る」 と62)、 マ ネジ メ ント 史研 究 の 学 問的 意義 を 述 べて いる。 結 局 、 マ ネジ メント 史研 究 では、 マ ネ ジ メン ト の歴 史的 発 展過 程で 発生し た 学説 ・理 論 や、 特定 の展 開を 引 き 起こし た先行 的 なコン テ ク スト 、 出来 事 、事 件、 説話 をそ の作 用 ・特 殊 性 ・ 蓋然 性 の 説 明を 中 心 に 解明 する こ とを 目的 とし てい る。 一 方 、 マネ ジ メント 理論 研究 は、 抽 象 的 で コンテ ク スト とは 無 関 係で、 蓋然 性を 認 めない とい う観点 で 、特 定 の歴史 的 事例を 超 え て適 用 で き る理 論的 原 則を 検 証 する こ とを 目的 としてい る 。 マ ネ ジ メン ト史 研 究は、 理 論的 関係を 描 写 す る 構造 的あ る いは 因 果 関 係的 モデ ルを 開発 する のに 役 立つ とい う点 て 、 マ ネジ メント理 論研 究 と 補完 関 係にあ る とい え よう。 マ ネジ メン ト史 は、現 在 の マ ネジ メ ント 理論 を 補強 し、 未来 の マ ネジ メ ント 理 論を 構 築 す る のに 不 可欠 な もの であ る。 こ うし た点 て 、 わが 国 の経 営学史 とマ ネジ メント 史 は 、 そ の方 法 論 の 深化 の程度 に差 は あ る ものの、 経営 学 の 発 展法 則を 解 明 する とい う 目的 で は軌 を 一 に す る もの で あ る。 最 後 に 、 カ ーソ ンらが 挙げ るマネ ジ メ ント史 研 究 分 野 のテ ーマを み るこ とで論を 閉 じ る こ とにし
200 経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 ) た い83)。 ① 現代 の管 理者 の概念 、 技術 、 実践 の発 展を 年 代 順に湖 る こと。 ② 過去 の失敗 から何 か学 べ るか 、 過去 の 失敗 を ど うした ら繰 り返 さ ない よ うに で き る かを 論評 す るこ と。 ③以 前に 発見 され た ものを 再 発 見す る た めに 、 現 在の研究 努力 の方 向 を示 し 、 新 しい 方 向を 提 案 す るこ と。 ④現 在 の知 識に 基づ い て過 去 の マ ネジ メ ント 史研 究を 再評 価 する こ と。 ⑤散在 し てい る現存 の文 献 を マ ネ ジメ ント 史 の視 点から 整 理・ 統一 す る こと 。 ⑥マ ネジ メント 研 究にお い て 間違 っ た方 向 に 導い てし ま う恐 れのあ る主 張を 明 ら かに す る こと。 ⑦現在 信 じら れてい る マネ ジ メ ント 「神 話」 を 論 破す るこ と。 ⑧ マネ ジ メント 思想 に影 響を 与 え る過 去 と現 在の 著作を 比較 す るこ と。 ⑨ マネ ジ メント史 の教授 法 とマ ネ ジ メ ント 史研 究 の応用 範 囲を調 査 す るこ と。 注 1 ) こ の ゲ ー テ の 言 葉 は 、 学 問 に お け る 歴 史 の 重 要 性 を 語 る折 りに よ く引 用 さ れ る 。 し か し 、 そ の原 典 に つ い て 知 る も の は 少 な い 。 こ れ に つ い て は 、 山 本 安 次 郎 『経 営 学 研 究 方 法 論 』 丸 善 、1975 年 、226 頁 の 注(1 )に お い て 詳 し い 。「 こ の 言 葉 は 、J.W.Goethe,Farbenlehre に 見 ら れ る と い う 。 こ れ は 増 地 庸 治 郎 著 、『経 営 経 済 学 序 論 』、 同 文 舘 、 大 正 十 五 年 、 池 内 信 行 著 、『経 営 経 済 学 史 ム 理 想 社 、 昭 和 二 四 年 、 拙 著 、『 経 営 学 本 質 論 』、 森 山 書 店 、 昭 和 三 六 年 、 な ど に 援 用 さ れ て い る。」2 ) 経 営 学 史 は 、 経 営 学 説 史 と と も に は 、 わ が 国 の 大 学 の 経 済 ・ 経 営 ・ 商 学 部 等 に お い て 同 一 の 科 目 名 称 で 設 置 さ れ てい る 場 合 が 多 い 。 斎 藤 毅 憲 『 現 代 日 本 の 経 営 学 教 育 』 成 文 堂 、1978 年 。3 ) 田 中 照 純 『 経 営 学 の方 法 と 歴 史 』 ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 、1998 年 、143 頁 。 な お 、 田 中 氏 は 、 同 上 書 (157 頁 ) の 中 で 、 わ が 国 の 経 営 学 史 研 究 で 方 法 論 を 検 討 し て い る 文 献 と し て 次 の も の を 挙 げ て い る 。 ① 池 内 信 行 『 経 営 経 済 学 史 』 理 想 社 、1949 年 。 ② 古 林 喜 楽 『 経 営 学 方 法 論 序 説 』 三 和 書 房 、1967 年 。 ③ 雲 嶋 良 雄 『 経 営 管 理 学 の 生 成 』 同 文 舘 、1964 年 。 ④ 三 戸 公 他 著 『 経 営 学 史 』 世 界 書 院 、1965 年 。 ⑤ 海 道 ノ ブ チ カ 『 西 ド イ ツ経 営 学 の 展 開 』 千 倉 書 房 、1988 年 。 ⑥ 裴 富 吉 『経 営 学 の原 理 と 思 想 一学 史 的 考 察 一 』 学 文 社 、1988 年レ ⑦ 片 岡 信 之 『 日 本 経 営 学 史 序 説 』 文 員 堂 、1990 年 。 ⑧ 森 哲 彦 『 経 営 学 史 序 説 』 千 倉 書 房 、1993 年 。4 ) 同 上 書 、172 頁 。5 ) 同 上 書 、173-175 頁 。6 )Wren,D.A.,"ManagementHistory:IssuesandIdeasforTeachingandResearch,"Journalof
マ ネジ メント史方 法論序説 201 Management,Vol.13,No.2,1987,pp.339 −350.7 )Learner,E.E.,"Let'sTaketheConoutofEconometrics,"AmericanEconomicReview,Vol.73,1983,p.36.8 )Gottschalk,L.R.,"TheHistorianandtheHistoricalDocument,"inGottschalk,L.R. ,Kluckhohn,C,andAngell,R.C. (eds.),TheUse0/PersonalDocumentsinHistory,Anthropology,andSociology,SocialScienceResearchCouncil,1945 ,p.l9.9 )Scott,W.G 。「ThePurposeandSignificanceoftheHistoryofManagementTheory 」『 経 営 学 史 学 会 第6 [亘]大 会 一 予 稿 集 − 』 青 森 公 立 大 学 経 営 経 済学 部 開 催 ,1998 年5 月22 日 ∼24 日 ,91 ∼96 頁 。!0
)Nevins.A ゾTheGate 切aytoHistory, (rev.ed.),Doub!eday,1962,p.39.11 )Boring,E.A.,AHistoryofExperimentalPsychology,Appleton-Century,1929,p.x.44
・12 ) 工 藤 達 雄 『 経 営 管 理 論 の 史 的 展 開 』 学 文 社 ,1981 年 ,6 頁 。13
) 雲 嶋 良 雄 『 経 営 管 理 学 の 生 成 』 同 文 舘 ,1964 年 ,1: 頁。14
)Hicks,H.G ・,TheManagementofOrganization,McGraw −Hill,1967,pp.336 −340;Wren,D.A. ,TheEvolutionoftheManagementThoughts,2nd.ed 。John&Wiley&Sons,Inc.,1979. (D.A. レ ソ『 現 代 経 営 管 理 思 想 − そ の 進 化 の 系 譜 − ( 上 )( 下 )』( 車 戸 賞 監 訳 ) マ グ ロ ウ ヒ ル 社 ,1984 年 。)15)Koontz,H. /TheManagementTheoryJungle ≒JournaloftheAcademy0/Management,Vol.4,No.3 ,1961,pp.174 −188;“TheManagementTheoryJungleRevisited",TheAcademyofManagementReview.Vol.5,No.2,1980,pp.175 一185.16 ) 管 理 過 程 学 派 の発 展 を ク ーソ ツ の 一 連 の 学 派 分類 に 照 ら し て み る と , 管 理 過 程 論 は , オ ベ レ ー シ ョ ナ ル ・ ア プ ロ ー チ (operationalapproach) と , そ れ と 経 験 ま た は ヶ − ス ・ ア プ ロ ー 手 (empiricalorcaseapproach ) か ら の 分 派 が 結 び つい た マ ネ ジ リ ア ル ・ ロ ー ル ・ アプ ロ ー チ (managerialroleappoach ) の 二 派 に 分 か れ 現 在 に 至 っ て い る17 ) こ れ に つ い て は , 次 の 文 献 が 詳 し い 。 島弘 「H. ク ー ン ツ の 経 営 学 の 学 派 分類 と 現 代 経 営 学 」『 企 業 会 計 』Vol.81,No.L ,1981 年 ,121-128 頁 ; 岩 永 宏 治 「 ア メ リ カ 経 営 学 の 『 学 派 』 分類 に つ い て 」『 経 営 論 集 』 明 治 大 学 経 営 研 究 所 ,28 巻 ,2 号,198〔〕年 ,177-197 頁 。 ク ー ソ ツは ,1961 年 に 経 営 理 論 の 各 学 派 や ア プ ロ ー チ が 混 乱 状 態 に あ る と し て ジ ャ ン グ ル 論 を 展 開 し た 。 彼 は ,1976 年 に は そ れ 以 前 の6 学 派 に3 学 派 を 加 え 一 学 派 の枝 分 か れ が起 こ っ た −9 学 派 , さ ら に ,1980 年 に は さ ら に ジ ャ ン グ ル 状 態 が 続 い て い る と し て , 経 営 管 理 論 を11 学 派 に 区 分 し て い る。 彼 に よ る 経 営 管 理 論 に 対 す る学 派 ・ ア プa ―チ の 分 類 法 の 主 た る 変 化 を 時 系 列 的 に ま と め た も の と し て は , 斎 藤 毅 憲 『経 営 管 理 論 の 基 礎 』 同 文 舘 ,1983 年 ,37 頁 の 図 を 参 照 の こ と 。 そ の 他 , 経 営 管 理 論 に つ い て の学 派 分 類 は , 多 く の 研 究 者 に よっ て 行 わ れ て い る が , ク ー ツ ツ 以 外 の 代 表 的 な 者 と し て は , ヒ ッ ク ス の12 分 類 が あ る 。 ① 伝 統 的 学 派 , ② 経 験 的 学 派 , ③ 人 間 関 係 学 派 , ④ 決 定 理 論 学 派 , ⑤ 数 理 学 派 , ⑥形 式 主 義 学 派 , ⑦ 自 発 性 学 派 , ⑧ 参 加 学 派 , ⑨ 挑 戦 反 応 学 派 , ⑩ 指 令 学 派 ,
③ 抑 制 均 衡 学 派 , ⑩ そ の 他 の 学 派 。Hicks,H.G ・,TheManagementofOrganizations,McGraw −Hill,1967,pp.336 −340.18
)Barley,S.R.,andKunda,G.,"DesignandDevotion:SurgesofRationalandNormativeIdeologiesofControlinManagerialDiscourse,"AdministrativeScienceQuarterly,Vol.37 バ992,p.364.19
202 経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 )
20)Jowett,G.S.,"PropagandaCritique:theForgottenHistoryofAmericanCommunicationStudies,"CommunicationYearbook.Vol.14,1991,p.24O.21
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