放送通信融合環境におけるデータ配信システムの評価
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(2) Vol.2015-DPS-165 No.9 2015/12/10. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 図 1. オンデマンド型配信. 図 2. 図 3. 図 4. 放送型配信. 端末間通信. ハイブリッド型配信. イアントは,データの受信を要求してから再生を開始する. 端末はデータを幾つかの部分 (以下,セグメント) に分割し. までの間に待ち時間が発生する.. て,要求端末に配信する.また,データを受信した要求端 末は,他の要求端末から同じデータの受信要求を受け取る. 2.2 端末間通信. と,供給端末としてセグメントを送信する.. 端末間通信におけるネットワーク構成を図 3 に示す.端. ハイブリッド型配信では,サーバはネットワークに接続. 末間通信では,サービスを提供する特定のサーバを含め. しているすべての端末を管理し,放送チャネルを用いてす. ず,データの送受信が可能な複数のクライアント端末のみ. べての端末にデータを繰り返し配信する.また,要求端末. でネットワークを構成する.クライアント端末は二種類で. が供給端末にデータを要求すると,供給端末はデータを複. 構成され,データの受信を要求する端末を要求端末,デー. 数のセグメントに分割した上で,通信チャネルを用いて要. タを要求端末に送信する端末を供給端末と呼ぶ.クライア. 求端末に送信する.このとき,要求端末は,サーバと供給. ント端末は,要求に応じて要求端末や供給端末になる.端. 端末からセグメントをそれぞれ受信してバッファに保存. 末間通信では,すべてのデータの送受信を端末間で行うた. し,データの最初のセグメントを受信すると,再生を開始. め,ネットワーク全体の負荷を分散できる.一方で,デー. できる.. タを管理するサーバが存在しないため,ネットワーク内に 存在するデータを一元的に管理することは難しくなる.. 2.4 データ配信方式の比較. 2.3 ハイブリッド型配信. に示す.オンデマンド型配信では,サーバはクライアント. 2.1, 2.2, および 2.3 節で説明した配信方式の特徴を表 1 放送通信融合環境において,放送チャネルと通信チャネ. からの受信要求に応じて直ちにクライアントにデータを送. ルを同時に利用してクライアント端末にデータを配信する. 信できるが,クライアント数に比例してサーバの処理負荷. ハイブリッド型配信について説明する.図 4 に,ハイブ. や使用する帯域幅は増加する.次に,放送型配信では,サー. リッド型配信のネットワーク構成を示す.ハイブリッド型. バの処理負荷や使用する帯域幅の増加を抑制できるが,ク. 配信のネットワークは,サーバ,要求端末,および供給端. ライアントのデータ受信時に待ち時間が発生する.端末間. 末で構成される.ハイブリッド型配信では,サーバと供給. 通信では,ネットワーク全体の処理負荷を分散できるが,. c 2015 Information Processing Society of Japan ⃝. 2.
(3) Vol.2015-DPS-165 No.9 2015/12/10. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 表 1 配信手法 オンデマンド型配信 放送型配信 端末間通信 ハイブリッド型配信. 各配信方式の特徴. 長所 クライアントの受信要求に応じて. 短所 クライアント数に比例して処理負. 直ちに送信可能 サーバの処理負荷や使用する帯域. 荷や使用する帯域幅が増加 クライアントのデータ受信時に待. 幅の増加を抑制 ネットワーク全体の処理負荷を分. ち時間が発生 ネットワーク内におけるデータの. 散可能 オンデマンド型配信および放送型. 一元管理が困難 データの配信処理が複雑. 配信の長所をもつ.. . ネットワーク内におけるデータを一元的に管理することは 困難である.最後に,ハイブリッド型配信では,供給端末 がオンデマンド型で送信しながらサーバが放送型で配信す ることで,オンデマンド型配信と放送型配信の長所をもつ. 一方で,データの配信処理は複雑になるため,サーバが使. 図 5 分割放送型配信のスケジューリング例 (BE-AHB 法). 用できる帯域幅や再生レートといったネットワーク条件を 考慮したスケジューリング手法が必要となる.. 3. 関連研究 3.1 概要 サーバがスケジューリング手法を用いて動画データを配. の受信時間は 26.2 秒であるため,途切れは発生しない.. 3.2.2 端末間通信 端末間通信におけるスケジューリング手法として,Wait-. ing time Reduction for P2P Streaming (WRPS) 法 [3],お よび Waiting time reduction considering Peer bandwidth. 信すると,クライアントは受信時の待ち時間を短縮して. for P2P Streaming (WPPS) 法 [4] がある.WRPS 法では,. 途切れの発生を抑制できる.放送型配信,端末間通信,お. セグメントの送信終了時刻がもっとも早い供給端末を選択. よびハイブリッド型配信では,使用できる帯域幅や再生. してセグメントをスケジューリングすることで,再生開始. レートを考慮してデータ受信時の待ち時間を短縮するスケ. までの待ち時間を短縮する.. ジューリング手法が数多く提案されている.以下で,それ. WPPS 法では,再生レートを上回る帯域幅をもつ送信中. ぞれの配信方式におけるスケジューリング手法について説. の供給端末から帯域幅の一部を割り当てた上で,セグメン. 明する.. トの配信終了時刻がもっとも早い供給端末を選択してセグ メントをスケジューリングすることで,再生開始までの待. 3.2 スケジューリング手法. ち時間を短縮する.例えば,他の端末に 10 Mbps の帯域幅. 3.2.1 放送型配信. で再生レートが 5.0 Mbps の動画をセグメントに分割して. 動画データをセグメントに分割せず放送型で配信する場. 送信する供給端末を要求端末が選択した場合,要求端末は. 合,クライアントはサーバから配信される動画データをす. 再生レート分の帯域幅を差し引いた 5.0 Mbps の帯域幅を. べて受信するまで再生開始を待つ必要がある.そこで,動. 確保してデータを要求する.要求端末は,この供給端末か. 画データを複数のセグメントに分割して複数のチャネルで. らセグメントを受信することで,最後まで途切れなくデー. 繰り返し配信する分割放送型配信を用いることで,クライ. タを再生できる.. アントはデータの配信要求から再生開始までの待ち時間を. 3.2.3 ハイブリッド型配信. 短縮できる.. 放送通信融合環境では,要求端末がデータの受信をサー. 分割放送型配信のスケジューリング手法である Band-. バや供給端末に要求してから再生を開始するまでの間に待. width Equivalent- Asynchronous Harmonic Broadcasting. ち時間が発生する.放送通信融合環境における待ち時間の. (BE-AHB) 法 [2] を用いて,クライアントがデータの受信. 発生について,Neighbors-Buffering Broadcasting Consid-. をサーバに要求してからデータの再生を開始するまでの様. ering Bandwidth (NBB-CB) 法 [5] のスケジューリング例. 子を図 5 に示す.BE-AHB 法は,帯域幅が等しい複数の. を図 6 に示す.NBB-CB 法では,要求端末はサーバから. チャネルを用いて,受信時間と再生時間をもとにセグメン. 放送型配信でセグメントを受信しながら,端末間の帯域幅. トのデータサイズを決定するスケジューリング手法である.. を考慮して選択された複数の供給端末に対してどのセグメ. 動画データの再生レートを 0.9 Mbps,チャネルの帯域幅. ントを要求するかを決定し,オンデマンド型配信でセグメ. を 1.5 Mbps,および分割数を 2 とし,サーバは再生時間が. ントを受信する.図 6 の場合,要求端末が Sk−1 を放送中. 60 秒の動画データを二つのセグメント S1 , S2 に分割して. のサーバにデータを要求すると,要求端末はサーバから放. 配信する.BE-AHB 法では,S1 の受信時間と再生時間の. 送型配信で Sk , · · · , Sn のセグメントを受信する.同時. 合計に比べて S2 の受信時間が長い場合,S1 の再生終了か. に,要求端末は選択した三つの供給端末から端末間通信で. ら S2 の再生開始までの間に途切れが発生する.図 5 の例. S1 , · · · , Sk−1 のセグメントを受信する.要求端末は,S1. では,S1 の受信時間が 9.8 秒,再生時間が 16.4 秒で,S2. の再生を開始すると最後まで途切れずに再生できるため,. c 2015 Information Processing Society of Japan ⃝. 3.
(4) Vol.2015-DPS-165 No.9 2015/12/10. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 待ち時間は S1 の受信時間のみとなる. 放送通信融合環境のデータ配信技術として,Peer-to-Peer. (P2P) 技術を用いたストリーミング配信に関する研究が行 われている.Neighbors-Buffering Based video-on-demand. (NBB-VoD) 法 [6] では,NBB-CB 法と同様に,要求端末 は供給端末から同時にセグメントを受信する.しかし,端 末間の通信で使用できる供給端末は一つのみであるため, 要求端末は使用できる帯域幅に応じて複数の端末から同時 にデータを受信できない.. 3.3 データ配信システム 3.3.1 放送型配信 動画データの放送型配信システムとして,T eleCaS [7] が挙げられる.T eleCaS では,付加情報を考慮してデー タの配信契機を同期する方式,クライアントがセグメント を途中から受信できる方式,および逐次再生に対応する方 式を実現することで,データの配信時に発生する待ち時間. 図 6. NBB-CB 法のスケジューリング例. や途切れ時間を短縮できる. また,選択型コンテンツの放送型配信システムとして,. Corne [8] が挙げられる.選択型コンテンツでは,コンテ. 4.2 提案システムの特徴 4.2.1 逐次再生方式. ンツの視聴順序が複数に分岐しており,ユーザの嗜好に合. サーバおよび供給端末がスケジューリング手法を用いて. わせてコンテンツを選択し,視聴することを想定してい. データを配信するためには,要求端末が逐次再生方式を実. る.選択型コンテンツの例として,ユーザ選択に応じて正. 現する必要がある.逐次再生方式では,データの再生に必. 解のコンテンツと不正解のコンテンツに分岐する択一式の. 要となるデータ量をバッファに格納できれば,すべての. クイズ番組が挙げられる.Corne は,制御情報が配信ス. データの受信が完了していなくても再生を開始できる.従. ケジュールに影響を与える問題に対処したデータの配信契. 来のデータ配信システムでは,データの受信が完了しなけ. 機を同期する方式,および逐次再生に対応する方式を実現. れば再生を開始できず,待ち時間が長大化していた.逐次. することで,実際のネットワーク環境を考慮して選択型コ. 再生方式を実現することで,要求端末はバッファサイズに. ンテンツを配信できる.また,Corne は選択型コンテン. 応じた配信スケジュールを作成でき,受信時の待ち時間を. ツの放送型配信において多くのスケジューリング手法 [9],. 短縮できる.. [10] を適用可能である. 3.3.2 端末間通信. 提案システムにおける逐次再生の様子を図 7 に示す.実 現方式では,要求端末は放送型配信でサーバからセグメン. 端末間通信を用いたデータ配信システムとして,Content. トを受信しながら,端末間通信で複数の供給端末からセグ. Delivery System for P2P Streaming (DeSPerS) [11] が挙. メントを受信してバッファに保存する.また,提案システ. げられる.DeSPerS では,独自の通信プロトコルにもとづ. ムでは,要求端末がバッファに格納したデータ量を管理す. いて,各端末は端末間で動画データを送受信する.また,. るバッファ管理部をもつ.バッファ管理部は,バッファに. 要求端末が選択した各供給端末が使用できる帯域幅を考慮. 格納されているデータの残りを常に監視する.保存したセ. したスケジューリング手法を用いて,端末間通信の性能評. グメントのデータサイズがデータの再生に最低限必要と. 価を行う.. なる基準値を上回ると,バッファ管理部はブラウザの再生. 4. 提案システム 4.1 概要. プレーヤに動画の再生を要求でき,要求端末は逐次再生が 可能となる.要求端末が受信したセグメントは先頭から順 にブラウザへ送信され,ブラウザは受信したセグメントの. 筆者らの研究グループでは,これまでに放送通信融合. 再生を開始する.一方で,バッファに保存したセグメント. 環境におけるデータ配信システムを提案し,実装してき. のデータサイズが基準値を下回ると,バッファ管理部はブ. た [1].本章では,提案システムで使用するスケジューリ. ラウザの再生プレーヤに動画の一時停止要求を行う.この. ング方式,動画再生方式,および評価データについて説明. 後,バッファ内のデータサイズが基準値を再び上回ると,. する.. バッファ管理部はブラウザの再生プレーヤに動画の再生開 始を要求し,要求端末は動画の逐次再生を再開する.. c 2015 Information Processing Society of Japan ⃝. 4.
(5) Vol.2015-DPS-165 No.9 2015/12/10. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 表 2 種類 サーバ. 供給端末. 要求端末. Dummynet. 計算機の性能. CPU Intel(R) Core(TM)2 Duo CPU (2.93GHz) Intel(R) Pentium(R) M (1.20GHz) Intel(R) Core(TM)2 Duo CPU (2.93GHz) Intel(R) Core(TM)2 Duo CPU (2.93GHz). メモリ. 2.0 GBytes. 1.49 GBytes. 2.0 GBytes 2.0 GBytes. OS Windows 7 Home Premium Service Pack 1 Windows XP Home Edition Service Pack 3 Windows 7 Home Premium Service Pack 1 FreeBSD 8.2-RELEASE. るかをスケジューリングするため,放送と通信の二つの配 信スケジュールを同期する必要がある. 図 7. 逐次再生の実現方式. 実際のネットワーク環境を想定したデータ配信の流れを 図 8 に示す.図 8 より,実際のネットワーク環境における サーバ,要求端末,および供給端末との間で,データの流 れはシミュレーション環境と異なることが分かる.シミュ レーション環境では,要求端末のデータ受信要求は,サー バおよび供給端末に対して同時に行われる.一方,図 8 に 示す実際のネットワーク環境では,要求端末は, Sk−1 を 放送しているサーバに放送型配信でデータの受信を要求 し,Sk , · · · , Sn の受信を開始する.要求端末が時刻 t0 に サーバからデータの受信を開始すると,最初に受信したセ グメントである Sk の情報をもとに,要求端末が選択した 複数の供給端末に対して,端末間通信で S1 , · · · , Sk−1 の 受信を要求する.複数の供給端末は,S1 , · · · , Sk−1 を要 求端末に送信し,要求端末は時刻 t1 に受信を開始する.. 図 8. 放送通信融合環境におけるデータの流れ. NBB-CB 法を用いて,放送と通信の二つの配信スケジュー ルを同期したスケジューリング例を図 9 に示す.シミュ レーション環境では,要求端末は,サーバに対する配信要 求と供給端末に対する送信要求を同時に行う.一方,実際 のネットワーク環境では,サーバからのセグメント配信情 報をもとに端末間通信の配信スケジュールを決定する必要 がある.まず,要求端末はサーバに放送型配信を要求し, セグメントの受信を開始する.次に,要求端末は,図 8 で 示した放送型配信の受信時刻 t0 と端末間通信の受信開始 時刻 t1 の差を考慮して,供給端末から受信するセグメン トを決定する.このとき,要求端末は,サーバから最初に 受信したセグメントの情報をもとに配信スケジュールを作 成し,各供給端末に端末間通信で所望のセグメントを要求 し,受信を開始する.. 4.3 動画再生方式 図9. 放送と通信を同期した場合のスケジューリング例 (NBB-CB 法). 4.2.2 スケジューリングの同期配信 放送通信融合環境では,要求端末はサーバに放送型配信. 本システムでは,動画データの再生時に逐次再生方式を 用いることで,すべてのデータの受信が完了していなくて も動画を再生できる.要求端末は,動画データのデータサ イズに関係なく,一定時間分のデータの受信が完了すれば. を要求するとともに,複数の供給端末に端末間通信を要求. 再生を開始できるため,再生時の待ち時間を短縮できる.. する.このとき,要求端末は,サーバからの配信スケジュー. 本システムでは,再生時間が 10 秒分のデータを受信する. ルを考慮して,どの供給端末からどのセグメントを配信す. と再生を開始できる.. c 2015 Information Processing Society of Japan ⃝. 5.
(6) Vol.2015-DPS-165 No.9 2015/12/10. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 図 10. 総帯域幅と再生中断時間 (再生レート 768 kbps). 4.4 評価データ. 図 11. 総帯域幅と再生中断時間 (再生レート 1000 kbps). と通信でそれぞれ使用する帯域幅の比率 α を 0, 0.25, 0.5,. 評価に用いる動画データは,セグメント単位で配信され. 0.75, および 1.0 の 5 種類設定した.α = 0 の場合は放送型. る.セグメントには,動画データを特定するタグと,分割. 配信,α = 1.0 の場合はオンデマンド型配信で総帯域幅を. したセグメントがデータの何番目であるかを示すセグメン. すべて使用する.. ト番号が付加される.要求端末は,付加情報をもとに,受 信したセグメントから元の動画データを復元する.. 5. 評価 5.1 評価環境 評価に用いる計算機の性能を表 2 に示す.各計算機の 性能に違いはあるが,動画を再生する処理能力は十分にあ り,評価結果には影響を及ぼさないと考える. また,端末間の帯域幅を制御するため,人工的な帯域制. 図 10 より,総帯域幅が 384 kbps の場合,α = 0 におけ る再生中断時間が一番短い.オンデマンド型配信は放送型 配信に比べて処理負荷が大きく,通信で必要となる処理時 間が長くなるためと考えられる.一方で,放送型配信では, 要求端末がデータの受信を要求するタイミングによって再 生開始までの待ち時間が変化するため,再生中断時間の偏 差はオンデマンド型配信に比べて大きくなる. 次に,総帯域幅が再生レートと同じ 768kbps の場合,. α = 1.0 に お け る 再 生 中 断 時 間 が 最 短 と な る 一 方 で ,. 御装置である FreeBSD Dummynet [12] を用いた.ハブで. α = 0.25 における再生中断時間は最長になることが分. 接続された端末は,Dummynet を経由して通信すること. かる.これは,α = 0.25 ではオンデマンド型配信に使用で. で,計算機端末の帯域幅をネットワークの構成に応じて制. きる帯域幅が小さいため,オンデマンド型配信で受信する. 御できる.Dummynet で模擬的に構築している環境は端. データの受信時間が長大化し,再生時に途切れとして発生. 末同士が直接接続されているネットワークであり,端末間. したためと考えられる.また,使用できる総帯域幅が再生. の帯域を制御する.実際に端末の帯域を設定する場合,パ. レートの 2 倍以上の場合において,α が大きいほど再生中. ケットの応答時間を計測することで算出できるが,実環境. 断時間は短くなることが分かった.. における端末間のネットワーク構成はさまざまであり,こ. 次に,図 11 より,総帯域幅がどの場合でも,α = 1.0 に. れらをすべて網羅した評価を行うことは困難である.この. おける再生中断時間が一番短い.しかし,要求端末の増加. ため,本研究では,帯域を制御することで擬似的にネット. にともないサーバが必要となる帯域幅が増加し,通信処理. ワーク構成を変化させる.. の負荷が増大する問題がある.. 5.2 帯域幅と再生中断時間. における再生中断時間は,α = 0 の場合に比べて短くなる.. また,総帯域幅が 2000 kbps 以上の場合について,α = 0.5 本節では,放送と通信で使用できる帯域幅の合計値(以. これは,オンデマンド型配信で受信するデータの前半部と. 下,総帯域幅)に応じた再生中断時間の変化について評価. 放送型配信で受信するデータの後半部の比率が変化して再. する.データの再生時間は 60 秒とし,総帯域幅は再生レー. 生中の途切れ時間が短縮されたためであり,放送通信融合. トの 0.5, 1.0, 2.0, 3.0, および 4.0 倍の各場合について再生. 環境において,放送型配信とオンデマンド型配信を効率的. 中断時間を評価する.再生中断時間とは,動画再生時に発. に利用できていることが分かる.. 生する再生待ち時間と動画再生中に発生する途切れ時間の 合計である.. 5.3 比率 α ごとの再生結果. 再生レートが 768 kbps および 1000 kbps の場合におけ. α を変化させた場合の再生結果について考察する.再生. る評価結果を図 10, 図 11 にそれぞれ示す.横軸は総帯. レートが 768 kbps で総帯域幅が 386 kbps, 1536 kbps の. 域幅,縦軸は再生中断時間とする.評価項目として,放送. 場合の結果を 図 12, 図 13 に,再生レートが 1000 kbps. c 2015 Information Processing Society of Japan ⃝. 6.
(7) Vol.2015-DPS-165 No.9 2015/12/10. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 図 12. 総帯域幅 384 kbps における再生結果. 図 14. 図 13. 総帯域幅 1536 kbps における再生結果. 図 15. で総帯域幅が 500 kbps, 2000 kbps の場合の結果を 図 14,. 総帯域幅 2000 kbps における再生結果. (再生レート 1000 kbps). (再生レート 768 kbps). 図 15 にそれぞれ示す.. 総帯域幅 500 kbps における再生結果. (再生レート 1000 kbps). (再生レート 768 kbps). な比率を算出できることが分かる. 次に,図 14 について,α の値が大きいほど再生待ち時間. 横軸は再生時間,縦軸は放送と通信でそれぞれ使用する. は短縮することが分かる.このため,α = 0 によるデータ配. 帯域幅の比率 α を 0, 0.25, 0.5, 0.75, および 1.0 の 5 つの. 信では,再生待ち時間はもっとも長くなる.また,α = 0.75. 場合について示している.グラフ中の凡例の意味は以下の. の場合,放送型配信で使用できる帯域幅が小さいため,途. 通りである.. 切れが発生している.一方で,α = 0.25 の場合は,オンデ. • 再生待ち:要求を開始してから再生を開始するまでの. マンド型配信で使用できる帯域幅が小さくなり,通信によ. 待ち時間.セグメントを受信しているが,再生を開始. る途切れが発生している.α = 0 の場合,再生待ち時間は. できるデータ量がバッファに十分蓄えられていない. 長大化しているが,受信開始から再生開始までに多くのセ. 状態.. グメントを受信しているため,再生中の途切れはほとんど. • 再生と受信:動画を再生しながらセグメントを受信し ている状態.. 発生しない. 図 15 では,α = 0.25, 0.75 の場合に途切れは発生するが,. • 途切れ:途切れ状態.再生に必要なセグメントの受信. α = 0.5 の場合に途切れは発生しない.以上より,放送と. が間に合わず,バッファが空の状態になったため,再. 通信のチャネルで使用できる帯域幅がどちらも再生レート. 生を中断してセグメントの受信のみを行っている状態.. 以上であれば,途切れは発生しないことが分かる.. • 再生:必要なセグメントの受信がすべて完了し,動画 の再生のみを行っている状態.. 5.4 比率 α と再生中断時間. 図 12 より,α = 0.25, 0.75 の場合で,途切れが長大化す. 5.3 節で述べたように,放送通信融合環境において,放. るため,再生終了時刻は長大化している.また,図 13 よ. 送と通信それぞれに割り当てる帯域幅の最適な比率を算出. り,α = 0.25, 0.75 の場合で途切れが発生している.一方. できることが分かった.そこで,本節では,再生中断時間. で,図 12, 図 13 より,α = 0.5 の場合は α = 0, 1.0 の場合. を短縮する比率 α について考察する.再生レートが 1000. とほぼ変わらない再生時間となっており,放送通信融合環. kbps ,総帯域幅が 2000 kbps の場合について,α を 0 か. 境において放送と通信それぞれに割り当てる帯域幅の最適. ら 1.0 まで 0.1 ずつ変化させたときの再生中断時間の評価. c 2015 Information Processing Society of Japan ⃝. 7.
(8) Vol.2015-DPS-165 No.9 2015/12/10. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. [2]. [3]. [4]. 図 16. 総帯域幅 2000 kbps における比率 α と再生中断時間の関係. [5]. (再生レート 1000 kbps). 結果を図 16 に示す.横軸は比率 α,縦軸は再生中断時間 とする. 図 16 より,α = 0.1, および α = 0.9 のとき,再生中断時. [6]. 間が一番長くなる.放送通信融合環境では,放送型配信が 使用できる帯域幅とオンデマンド型配信が使用できる帯域 幅の比率に大きな隔たりがある場合,再生待ちや途切れが. [7]. 大きく発生することが分かる.一方で,α = 0.6 のときに 再生中断時間はもっとも短くなり,α = 0 のときに比べて. [8]. 46.2 % 短い.また,α = 0.6 のときの再生中断時間は,放 送型配信とオンデマンド型配信でそれぞれ使用できる帯域 幅がともに再生レートと等しくなる α = 0.5 のときよりも. [9]. 短いことが分かった.以上より,放送通信融合環境で実際 にデータ配信を行う場合,最適な比率 α を事前に算出する. [10]. ことで,要求端末で発生する再生中断時間を短縮できる.. 6. おわりに [11]. 本研究では,放送通信融合環境において,これまでに実 現したデータ配信システムの評価を行った.総帯域幅と再 生中断時間の評価では,放送と通信でそれぞれ使用する帯 域幅の比率を変化させることで,再生中断時間に影響を与 えることが分かった.また,データ再生時に発生する途切. [12]. Vol.2015-DPS-164, No.3, pp.1-8 (2015). 義久智樹,塚本昌彦,西尾章治郎:再生単位を考慮したス ケジューリング手法における使用チャネル数について,日 本データベース学会 Letters,Vol.4,No.3,pp.5-8 (2005). Gotoh, Y., Yoshihisa, T. and Kanazawa, M.: Method to Select Peers to Reduce Waiting Time in P2P Streaming Broadcast, P roc. IADIS International Conf erence T elecommunications, N etworks and Systems 2008, pp.120-124 (2008). Gotoh, Y., Yoshihisa, T. and Kanazawa, M.: A Method to Reduce Waiting Time for P2P Streaming Systems, P roc. 6th International Conf erence on Advances in M obile Computing and M ultimedia (M oM M 2008), pp.15-20 (2008). Gotoh, Y., Yoshihisa, T., Taniguchi, H. and Kanazawa, M.: A Scheduling Method to Reduce Waiting Time for Node Relay-based Webcast Considering Available Bandwidth, P roc. 1st International W orkshop on Streaming M edia Delivery and M anagement Systems (SM DM S2010),pp.489-494 (2010). Taleb, T., Kato, N. and Nemoto, Y.: Neighborsbuffering-based video-on-demand architecture, Signal P rocessing, Image Communication, Vol.18, No.7, pp.515-526 (2003). 木村明寛,後藤佑介,谷口秀夫:動画データを分割配信 するシステムの実現と評価,電子情報通信学会論文誌 B, Vol.J96-B,No.10,pp.1217-1225 (2013). 後藤佑介,山本泰平,谷口秀夫:選択型コンテンツの放送 型配信システムの実現,情報処理学会研究報告 (マルチメ ディア通信と分散処理研究会 2014-DPS-161),Vol.2014DPS-161,No.6, pp.1-8 (2014). 義久智樹,金澤正憲:選択型コンテンツの放送型配信にお けるスケジューリング手法,情報処理学会論文誌,Vol.47, No.12,pp.3296-3307 (2006). Gotoh, Y., Yoshihisa, T., Kanazawa, M. and Takahashi, Y.: A Broadcasting Scheme for Selective Contents Considering Available Bandwidth, IEEE T rans. Broadcasting, Vol.55, Issue 2, pp.460-467 (2009). 後藤佑介, 鈴木健太郎,義久智樹,谷口秀夫,金澤正憲: 再生中断時間短縮のための端末伝送型インターネット放 送システムの設計と実装,電子情報通信学会論文誌 D, Vol.J93-D,No.7,pp.1102-1113 (2010). Rizzo, L.: dummynet (online), available from < http://info.iet.unipi.it/˜luigi/ip dummynet/ > (accessed 2015-11-11).. れについて評価し,放送通信融合環境において放送と通信 それぞれに割り当てる帯域幅の最適な比率を算出できるこ とが分かった. 今後の予定として,提案システムに既存のスケジューリ ング手法である NBB-CB 法 [5] 法を適用して,計算機シ ミュレーションとの比較評価を行う. 謝辞. 本 研 究 の 一 部 は ,JSPS 科 研 費 26730059,. 15H02702,(公財)ウエスコ学術振興財団,ならびに総 務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)による 成果である.ここに記して謝意を表す. 参考文献 [1]. 尾崎健志, 後藤佑介:放送通信融合環境におけるデー タ配信システムの設計と実装,情報処理学会研究報告 (マルチメディア通信と分散処理研究会 2015-DPS-164),. c 2015 Information Processing Society of Japan ⃝. 8.
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