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「総合的な学習の時間」が変えたもの(2) : カリキュラム構造のダイナミズム

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「総合的な学習の時間」が変えたもの (2)

―― カリキュラム構造のダイナミズム ――

紅 林 伸 幸 *・越 智 康 詞 **・川 村

光 ***

What the Period for Integrated Studies has reformed (2)

Nobuyuki KUREBAYASHI, Yasushi OCHI and Akira KAWAMURA

1.問 題 の 所 在 「総合的な学習の時間」が新設されて、ほぼ 10 年がたった。戦後はじめての学校教育の構造変革と も言える前期の学習指導要領改訂のコアをなす「総合的な学習の時間」は、その新規性故に、1998 年の公示直後から学校内外の教育の当事者や関係者からの様々な危惧や批判の声に晒されてきた。 1951 年以降ほぼ 10 年ごとの学習指導要領の改訂を節目に改革が行われてきた我が国の戦後学校教育 の歴史を考えれば、完全実施となった翌年の 2003 年に一部改正が行われたことは、ただ異例とも言 うだけでなく、「総合的な学習の時間」が構想していた教育の新しさ、斬新さを端的に示していると 言うことができるだろう。 それからさらに 5 年がたった 2008 年、「総合的な学習の時間」の新設以来はじめての学習指導要領 の改訂が行われた。新しい学習指導要領では、「総合的な学習の時間」について、学校教育法施行規 則第 50 条の「小学校の教育課程は、国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭及び体 育の各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする。」 (中学校は第 72 条) にもとづいて、「これまでは総則において、総合的な学習の時間の趣旨やねらい などについて定めてきた。しかし、今回の改訂では、総合的な学習の時間の教育課程における位置付 けを明確にし、各学校における指導の充実を図るため、総則から取り出し新たに第 5 章として位置付 けることとした。」との修正が行われている。 この修正がもつ象徴的な含意は小さくない。「総合的な学習の時間」は、1998 年改定 (完全実施は 2002 年度 − 高校は 2003 年度) の学習指導要領においては、総則の中で特にその趣旨とねらいを述 べるという特別な位置づけがなされ、また教科、道徳、特別活動という従来からの教育課程の 3 領域 にただ単に新しい学習領域を一つ加えたという横並びの関係ではなく、3 領域のすべてを横断し、統 括する上位の学習過程として、教育課程の全体構造の変更を図るものとして構造化されていた。この 教育課程の立体的な構造化は、その是非はともかくとして、1998 年の学習指導要領の改訂ならびに 21 世紀の新しい教育の実現に向けての教育改革の並々ならぬ覚悟の表れを示している。それに対し て、今回の改訂において明確化された「総合的な学習の時間」の位置は、3 領域と横に並べられるこ * 滋賀大学 ** 信州大学 *** 関西国際大学

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とになったのである。 もちろん、私たちは、こうした変更が、学校現場における実践上の問題を解決するため、という実 際的なねらいを持ったものであることを知っている。その内容は学習指導要領の解説編に詳細に述べ られているので、ここでは改めて詳述しないが、各教科、道徳、特別活動と等しく独立した教育領域 として明確に位置づけることによって、その実践を曖昧化させないこと、すなわちその取り組みにお ける学校の責任を明確化することにねらいがある。したがって、時間数の削減があったとはいえ、今 回の改訂において、教育課程における「総合的な学習の時間」の重要性・必要性が低下したわけでは ない。学習指導要領解説編に述べられているように、今回の改訂は「総合的な学習の時間」の実践を より充実するためのものと言うこともできるだろう。しかし、明確化された「総合的な学習の時間」 の位置が示す意味は小さくはない。「総合的な学習の時間」は我が国の既存の教育の構造の中に再編 されたのである。だからこそ、いま私たちはこう問う必要があるのである。「総合的な学習の時間」 は日本の教育を変えるのか、と。 「総合的な学習の時間」の新設は、戦後はじめての、教育課程の構造改革だった。そのことの社会 的な意味合いとその是非は、改めて問わなければならない重要問題と考えるが、その議論のためにも、 この 10 年間の「総合的な学習の時間」の実践が、学校現場に何をもたらしたのか、とりわけ学校に おける教育実践や教師の実践活動にどのような作用を及ぼしたのかを十分に確認する必要があるだろ う。 筆者らは、「総合的な学習の時間」が新設された時点から、こうした問題意識の下、「総合的な学習 の時間」の学校教育全体への影響を確認することを課題として、「総合的な学習の時間」の構造的な 特性や機能特性についての研究を行ってきた。その一つとして、「総合的な学習の時間」の実施に比 較的抵抗が少ないと思われる地方の 2 つの県を選定し、2004 年度に管理職を対象とした「総合的な 学習の時間」の実施状況に関する質問紙調査を、そして 2005 年度に教員を対象とした「総合的な学 習の時間」の実践に関わる取り組みの実際とその評価に関わる質問紙調査 (以下、教員調査) を実施 した。また、2009 年度には基本的に同じ質問項目を用いた質問紙調査を同じ 2 県の管理職と教員に、 さらに近年の教育改革との関連性を確認するために、文部科学省の研究指定校から無作為抽出した改 革先進校の管理職を対象として同種の調査を実施した。本稿では、このうち、筆者らがこの間特に、 本研究のフィールドとしてきた 2 つの県の調査データに基づいて、「総合的な学習の時間」の教育へ のインパクトを確認していくことにする。 2.調 査 の 概 要 本稿で使用する地方の 2 県の調査データとは、2004 年度と 2009 年度に実施した全公立小・中学校 の管理職を対象とした質問紙調査 (以下、学校調査) のものである。調査方法は郵送法を用いた。ま た、管理職には、回答後は調査者に個別に郵送するように依頼した。サンプル等の概要は下記の通り である (図表 2-1)。 学校調査 66.3% 46.4% 193 校 135 校 291 校 291 校 2004 年調査 2009 年調査 中学校 送付サンプル数 回収サンプル数 回収率 図表 2-1 サンプル数等の概要 58.1% 41.5% 361 校 257 校 621 校 620 校 2004 年調査 2009 年調査 小学校

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3.「総合的な学習の時間」のコードがもたらすもの ―― 2004 年調査と 2009 年調査の比較 ―― 3-1.「総合的な学習の時間」における総合化 本稿では、学校教育に対する「総合的な学習の時間」のインパクトを確認するにあたって、総合化 という観点から検討していく。「総合的な学習の時間」の特徴として、分節化された多様な教授 − 学 習方法、学習活動形態、教育内容、評価、空間などを総合化することがあげられ、総合化は「総合的 な学習の時間」の主要な機能となっている。2004 年の学校調査の結果に基づいた研究では、学校に 対する「総合的な学習の時間」の総合化のインパクトについて検討し、① 総合化は学校と外部の境 界線を緩やかにすること、② 総合化は学校内に個別化をももたらすこと、③ 中学校より小学校の方 が「総合的な学習の時間」のインパクトを受けていることなどを明らかにした (川村他 2005)。そこ で、本稿では、前回調査時から約 5 年が経過した現在において、「総合的な学習の時間」の総合化が、 学校にどのようなインパクトを与えているのかを明らかにし、2004 年調査の結果と比較することを 通して、その総合化がどのようなかたちで定着してきたのかを考察する。 3-2.方法と内容の総合化の変容 まず、「総合的な学習の時間」の総合化の変容について確認した (図表 3-1)。「総合的な学習の時 間」における内容の総合化に関する項目 (図表の下 3 項目) を、2004 年調査と 2009 年調査で比較し た結果、割合に変化はなかった。だが、方法の総合化 (図表の上 6 項目) については、小学校では 「教育体制・指導体制の多様化」「様々な評価法・観点を用いた評価の実施」、中学校では「校内の 総合的なテーマを学習課題にすること 56.8 55.5 51.0 53.9 小学校 中学校 特別活動や道徳との相互乗り入れ 79.7 76.9 40.4 39.1 小学校 中学校 教科との連続性 80.3 79.4 58.6 63.3 小学校 中学校 教科を横断した内容の設定 2004 年調査 2009 年調査 (注 1) 数値は「かなりしている」と「ある程度している」の合計 (%)。なお、2009 年 調査データには「担任に任せている」という項目が加えられているので、分析 にあたっては除外した。 (注 2) 不等号はカイ二乗検定の結果 5 % 水準で有意差があった部分につけた。 図表 3-1 「総合的な学習の時間」における総合化 小学校 中学校 教育、教授、指導、支援の具体的な方法 の多様化 93.6 92.0 94.8 > 87.7 小学校 中学校 校内の様々な場所、地域や公共施設な ど、教室にとらわれない学習の場の提供 64.6 > 55.4 74.1 66.7 小学校 中学校 教育体制・指導体制の多様化 61.2 > 44.3 59.7 > 47.2 小学校 中学校 様々な評価法・観点を用いた評価の実施 47.6 48.1 43.2 43.8 小学校 中学校 教育内容の決定に、地域など外部の人の 声を反映させること 66.6 61.5 69.8 64.8 小学校 中学校 95.5 93.3 97.4 94.6 小学校 中学校 情報収集、体験、対話、表現など多様な 学習方法の取り入れ 65.7 67.1 68.4 66.1 小学校 中学校 学習の単位や形態の多様化 74.6 68.0 71.4 68.8

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様々な場所、地域や公共施設など、教室にとらわれない学習の場の提供」「様々な評価法・観点を用 いた評価の実施」を行っている学校の割合が減少していた。このことから、小・中学校ともに、「総 合的な学習の時間」における総合化の度合いが若干弱まっていることが窺える。 3-3.方法の総合化と内容の総合化 次に、2004 年時と 2009 年時の「総合的な学習の時間」における総合化のインパクトをさらに詳し く比較検討していくにあたって、2004 年の学校調査時の分析方法を踏襲した。 すなわち、まず 2004 年調査の「総合的な学習の時間」における総合化の項目を因子分析した (図 表 3-2)。その結果、第一因子は「教育、教授、指導、支援の具体的な方法の多様化」「学習の単位や 形態の多様化」「情報収集、体験、対話、表現など多様な学習方法の取り入れ」「校内の多様な場所、 地域や公共施設など、教室にとらわれない学習の場の提供」「様々な評価法・観点を用いた評価の実 施」という構成になった。これらは、教授方法、学習形態、学習の場、学習方法、評価方法といった 教育実践に関わるものであるので、「教育方法の総合化」(以下、「方法の総合化」) 因子とした。第二 因子は、「教科との連続性」「教科を横断した内容の設定」「特別活動や道徳との相互乗り入れ」に よって成り立っている。これはカリキュラムを総合的に捉えることに関するものであり、教科等の内 容を横断し、既存の教育内容の枠を緩やかにするものである。そこで、それを「教育内容の総合化」 (以下、「内容の総合化」) 因子と名付けた。個々の学校ごとに各々の総合化因子内の各項目を得点化 し、合計点を算出し、それらをもとに「方法の総合化」と「内容の総合化」の平均点を出した。その 後それらの平均点を基準にして、学校種ごとに「方法・高総合化」校群と「方法・低総合化」校群、 「内容・高総合化」校群と「内容・低総合化」校群に分類した(1) 2009 年調査においても、2004 年調査の因子分析結果をもとに作成された平均点を基準にして、校 種ごとに「高総合化」校群と「低総合化」校群に分類した。 2004 年調査と 2009 年調査の総合化校のサンプル数は図表 3-3 の通りである。なお、2004 年調査と 2009 年調査のサンプル数の割合に有意差はなかった。 3-4.「総合的な学習の時間」の成功と総合化の関連 「総合的な学習の時間」の成功と総合化との関連を検討するために、「総合的な学習の時間」をうま く実施できている学校とそうでない学校のうちの、「高総合化」校の割合を確認した。その結果、小 学校では 2004 年調査、2009 年調査ともに、「総合的な学習の時間」をうまく実施できている学校の 中で、「高総合化」校の占める割合が、うまく実施できていない学校の中で占める割合より高くなっ 特別活動や道徳との相互乗り入れ .581 .124 .066 教育内容の決定に、地域など外部の人の声を反映させること .451 .151 .305 総合的なテーマを学習課題にすること 教育方法 教育内容 テーマ 因子抽出法:主因子法 回転法:Kaiser の正規化を伴わないバリマックス法 回転後の因子行列 図表 3-2 2004 年調査の「総合的な学習の時間」の総合化に関する因子分析結果 校内の多様な場所、地域や公共施設など、教室にとらわれない学習の場の提供 .375 .202 .435 様々な評価法・観点を用いた評価の実施 .180 .710 .048 教科との連続性 .049 .645 .192 教科を横断した内容の設定 .072 .335 .070 教育、教授、指導、支援の具体的な方法の多様化 .106 .164 .590 学習の単位や形態の多様化 .380 .050 .528 教育体制・指導体制の多様化 −.022 .175 .514 情報収集、体験、対話、表現など多様な学習方法の取り入れ .145 −.021 .501 第三因子 第二因子 第一因子 .238 .177 .644

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ている。中学校においても同様のことが言える。つまり、2004 年時から 5 年が経過した時点におい ても、「総合的な学習の時間」の成功は総合化と関連していることがわかる (図表 3-4)。 3-5.2 つの総合化と「総合的な学習の時間」の実施状況 2004 年時、2009 年時ともに「総合的な学習の時間」の成功と関連のあることが明らかになった総 合化の効果を経年比較するために、総合化を積極的に進めている「高総合化」校と、そうでない「低 総合化」校では「総合的な学習の時間」の実施状況にどのような違いがあるのかを確認した。 3-5-1.「総合的な学習の時間」のテーマ決定 第一に、「総合的な学習の時間」のテーマ決定にあたって考慮したことを確認する (図表 3-5)。小 学校においては、2004 年調査時点では、「方法・高総合化」校群が、学校の伝統やこれまでの教育活 動を重視していた。ところが、2009 年調査時点では、「方法・低総合化」校群もそれを重視するよう になったため、学校が培ってきたものについては、総合化との関連がなくなった。「総合的な学習の 時間」のテーマ決定にあたって、学校の伝統や教育実践の蓄積を重視することが、総合化に関係なく なされるようになったことがわかる。 だが、方法・内容の総合化ともに、社会の課題や教科内容を取り入れたテーマ設定に関しては、 2004 年、2009 年の両方で「高総合化」校の割合が高くなっている。また、文部科学省の答申等で求 められていることも、「高総合化」校では考慮に入れている学校が多いことがわかる。さらに、テー マの発展性についても同様のことが言える。つまり、総合化は、「総合的な学習の時間」における経 験を単なる体験に終わらせるのではなく、教科の知識と関連させ、子どもを教科学習の領域へと導い たり、テーマ決定にあたって学校外の要素を学校内部に持ち込ませることによって、社会における知 と学校知との境界線を緩め、子どもが学習する世界を現代社会に誘ったりする効果があることが窺え る。 他方、中学校でも「学校の校風・伝統や教育理念」の 2004 年調査と 2009 年調査の結果を確認する と、小学校と同様に、学校の伝統を重視することが総合化に関係なくなされるようになったことがわ かる。 また、社会の課題や教科内容の取り入れ、それにテーマの発展性については、2004 年、2009 年の 49.1 50.9 (106) (110) 48.9 51.1 (173) (181) 小学校 内容 54.0 46.0 (68) (58) 50.0 50.0 (95) (95) 中学校 2004 年調査 2009 年調査 (注) セル内の上の数値の単位は「%」、下の数値の単位は「校」である。 図表 3-3 方法・内容の総合化校のサンプル数 「高総合化」校 「低総合化」校 「高総合化」校 「低総合化」校 47.1 52.9 (99) (111) 54.1 45.9 (193) (164) 小学校 方法 35.0 65.0 (43) (80) 40.3 59.7 (77) (114) 中学校 39.8 > 10.0 46.6 > 23.2 中学校 方 法 内 容 (注) 不等号はカイ二乗検定の結果 5 % 水準で有意差があった部分につけた。 図表 3-4 「総合的な学習の時間」の成功と「高総合化」校との関連 2004 年調査 2009 年調査 2004 年調査 うまく実施できて いる学校 うまく実施できていない学校 うまく実施できて いる学校 うまく実施できていない学校 うまく実施できて いる学校 うまく実施できていない学校 うまく実施できて いる学校 うまく実施できていない学校 53.3 > 35.3 49.3 50.0 30.4 > 51.8 58.0 > 34.9 小学校 53.8 54.5 54.3 42.1 2009 年調査

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両方で「高総合化」校の割合が高くなっている。また、2009 年調査のみであるが、「高総合化」校の 方が文部科学省の答申等もよく取り入れている。 小学校の場合と同じく、中学校においても総合化は、テーマ決定にあたって体験と学校知、あるい は学校知と社会における知とを結びつける効果があるようである。 3-5-2.「総合的な学習の時間」の実施にあたっての力点 第二に「総合的な学習の時間」の実施にあたって力点を置いていることを確認すると (図表 3-6)、 テーマ決定と同様に、「高総合化」校の割合にほとんど変化がないものの、「低総合化」校の割合が増 加し、有意差のある項目が減少していた。 しかし、「個々の子どもの興味や関心」といった個別化に関する項目では、小・中学校のいずれに おいても「高総合化」校の割合が高くなっている。また、小学校においては「生きる力や問題解決力 95.3 86.1 学校の校風・伝統や教 育理念 中学校 教科などの基礎学習と の関連性 86.8 > 61.7 86.2 81.0 87.9 > 59.6 テーマの発展性 内 容 2004 年調査 (注) 数値は「かなり重視した」と「少し重視した」の合計 (%)。なお、不等号はカイ二乗検定の結果 5 % 水準で有意差があっ た部分につけた。 図表 3-5 「総合的な学習の時間」のテーマ決定にあたって考慮したこと 2004 年調査 2009 年調査 81.0 > 65.9 「高総合化」校 「低総合化」校 「高総合化」校 「低総合化」校 「高総合化」校 「低総合化」校 84.8 > 68.8 92.3 87.0 89.3 85.8 90.9 88.8 学校の校風・伝統や教 育理念 小学校 94.0 86.2 83.9 79.8 75.3 > 61.2 62.6 > 46.8 現在、社会が直面して いる課題 49.5 41.1 63.2 58.4 50.0 43.5 教職員の資質や得意分 野 73.6 61.1 82.1 > 65.4 78.8 > 56.9 文部科学省の答申等で 求められている内容 82.1 > 67.6 2009 年調査 85.7 > 74.5 89.0 84.4 84.7 77.5 所在県や市町村の地域 特性 86.0 > 61.3 95.3 93.6 95.4 96.1 94.9 94.5 所在校区の地域性 テーマの発展性 97.1 95.4 96.6 97.2 97.9 93.6 子どもの実態 「高総合化」校 「低総合化」校 63.2 > 46.4 79.4 > 50.0 68.4 66.3 88.4 > 55.0 文部科学省の答申等で 求められている内容 97.4 > 92.7 79.4 > 31.0 74.7 > 41.5 69.8 > 50.0 教科などの基礎学習と の関連性 92.0 > 81.9 82.4 > 58.6 98.1 96.3 98.3 > 92.7 99.0 96.4 これまで取り組んでき た教育活動との関連 81.1 75.8 74.9 > 59.8 94.1 91.4 97.9 93.6 95.3 92.5 子どもの実態 96.9 97.0 80.6 > 51.7 80.0 > 64.2 79.1 > 59.5 現在、社会が直面して いる課題 95.8 95.7 45.6 29.3 54.8 > 38.9 60.5 > 27.5 教職員の資質や得意分 野 90.1 > 82.3 90.1 > 76.2 77.6 > 67.1 97.1 96.6 97.9 96.8 97.7 97.5 これまで取り組んでき た教育活動との関連 79.6 > 66.5 82.4 75.9 85.3 84.2 86.0 76.3 所在県や市町村の地域 特性 63.4 55.5 91.2 84.5 93.7 92.5 95.3 83.8 所在校区の地域性 方 法 85.7 > 73.7 69.7 > 51.8 72.7 63.2 53.9 42.5 84.4 > 62.3 98.7 93.8 94.8 92.0 88.3 82.5 96.1 98.2 92.1 > 74.8

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の育成」が、2004 年調査と 2009 年調査ともに「高総合化」校の割合が高い。これらのことから、総 合化による学習の個別化の定着が窺える。 さらに、注目したいことは、「協力・協働する力の育成」「人としての心の育成」といった項目では、 2004 年調査や 2009 年調査において「高総合化」校の方が、それらに力を入れて取り組んでいる学校 が多いことがわかる。総合化を積極的に行っている学校では、学校と社会との境界線だけでなく、子 ども同士の境界線を緩める取り組みもなされていることがわかる。 また、「子どもたちに同じ力がつくこと」でも、「高総合化」校の方が力を入れて取り組んでいる。 「総合的な学習の時間」では、個別的な学習が多くなることによって子どもの学びの質に大きな差が 出る可能性が指摘されているのだが、総合化を積極的に行っている学校では、そういったことに対す る配慮もなされている。 もう一点注目したいことは、小学校の「高総合化」校において「社会的課題や現代的な課題への取 り組み」の割合が減少し、「高総合化」校と「低総合化」校との間に有意差がなくなったことである。 例えば、方法の総合化の項目を確認すると、2004 年調査では「高総合化」校 83.3%「低総合化」校 100.0 93.7 子どもの主体的な学習 への取り組み 中学校 人としての心の育成 52.0 41.5 60.3 > 34.1 59.8 > 36.7 子どもたちに同じ力が 身につくこと 内 容 2004 年調査 (注) 数値は「かなり力を入れている」と「ある程度力を入れている」の合計 (%)。なお、不等号はカイ二乗検定の結果5%水準 で有意差があった部分につけた。 図表 3-6 「総合的な学習の時間」の実施にあたって力を入れていること 2004 年調査 2009 年調査 93.1 > 82.7 「高総合化」校 「低総合化」校 「高総合化」校 「低総合化」校 「高総合化」校 「低総合化」校 94.9 > 74.5 100.0 99.1 98.3 98.9 100.0 99.1 子どもの主体的な学習 への取り組み 小学校 97.1 94.7 97.9 98.9 98.3 96.1 99.0 95.5 充実した体験を得られ ること 91.4 > 75.9 96.6 > 88.3 91.7 > 77.3 個々の子どもの興味や 関心 99.0 > 89.0 98.3 > 87.2 98.0 > 91.0 協力・協働する力の育 成 97.1 > 70.4 2009 年調査 65.0 56.9 81.0 > 63.1 67.3 54.1 社会的課題や現代的な 課題への取り組み 62.8 > 33.8 子どもたちに同じ力が 身につくこと 98.1 > 86.1 97.1 97.8 97.0 > 89.1 生きる力や問題解決力 の育成 「高総合化」校 「低総合化」校 98.1 96.4 91.2 89.7 91.5 88.4 95.3 86.3 協力・協働する力の育 成 96.4 > 86.0 94.1 > 77.6 89.5 83.2 95.3 83.8 人としての心の育成 100.0 > 97.6 57.4 > 31.0 95.1 91.8 96.0 > 86.6 94.9 91.0 子ども自身の生活と密 着した学習内容 42.6 37.9 99.5 > 93.9 99.5 > 95.7 100.0 98.2 94.7 96.8 100.0 98.7 充実した体験を得られ ること 89.7 > 73.7 84.0 84.2 97.7 > 74.7 個々の子どもの興味や 関心 83.3 > 58.5 60.4 > 31.1 93.3 > 81.0 86.8 75.9 82.1 76.8 88.4 76.3 子ども自身の生活と密 着した学習内容 95.9 > 89.0 80.9 65.5 81.9 75.5 86.0 > 66.3 社会的課題や現代的な 課題への取り組み 96.4 > 87.7 94.0 94.8 96.8 91.6 97.7 91.1 生きる力や問題解決力 の育成 方 法 48.7 > 34.2 90.9 82.5 96.1 > 86.0 90.8 > 79.8 98.7 93.9 98.7 > 91.2 86.8 > 71.7 87.0 > 73.7 98.7 98.2

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58.5% であったのだが、2009 年調査では「高総合化」校 67.3%「低総合化」校 54.1% となっている。 「高総合化」校はテーマ決定において現代社会の課題を考慮に入れているという特徴があるものの、 「総合的な学習の時間」の実施にあたっては、「低総合化」校よりもその課題に関わる取り組みに力を 入れているとは言えない。 それに対して、中学校の場合は方法の総合化において、2004 年調査、2009 年調査ともに「高総合 化」校の方が力を入れて取り組んでおり、総合化は、教育内容レベルだけでなく実践レベルでも学校 と社会の境界線を緩める効果があることがわかる。 3-6.学校に対する「総合的な学習の時間」のコードのインパクト 最後に、「方法の総合化」と「内容の総合化」 の両方を積極的に行っている学校と、両方とも積 極的に行っていない学校を比較検討することによ り、総合化を行うことが、近年の学校の変化とど のような関連があるのかを検討していこう。その 検討にあたっては、学校、学校組織、教師、子ど もといった側面から確認していく。なお、サンプ ルは図表 3-7 の通りである。 3-6-1.小学校におけるインパクト まず、小学校に対する総合化のインパクトについて確認する (図表 3-8)。2004 年調査、2009 年調 査において、「高総合化」校の方が「低総合化」校より、学校の特色がうまれてきていることがわか る。このことから、総合化を積極的に行うことが、学校の独自性を出すことにつながっていることが わかる。 また、2009 年調査においては、総合化を積極的に行っている小学校の方が、学校全体の雰囲気が よくなってきており、総合化が小学校にポジティブな影響を与えていることが窺える。 次に学校組織に関する項目で注目したいことは、「校内研修の回数が増えた」「教師同士で授業を見 せ合う機会が増えた」といった項目において、有意差が 2004 年調査においてはあったのに対して 2009 年調査ではなくなったことである。総合化を積極的に行っているか否かということが、実際の 教育実践を通した教師間の交流とは関連がなくなった。また、2004 年調査では「高総合化」校の方 が、保護者が授業や学校行事に参加する機会が増えたり、地域との距離が縮まったりしていた。とこ ろが、2009 年調査では、総合化の程度と、保護者や地域と学校との距離の縮まり具合とは関係がな い。2004 年調査と 2009 年調査とでは項目が異なるため正確な比較はできないものの、総合化が小学 校と地域との境界線を緩やかにする機能があるとは言えなくなったと推察することができる。 それに対して、「授業内容や子どもに関する教師間のコミュニケーションが増えた」の項目を確認 すると、2004 年調査、2009 年調査ともに「高総合化」校の方が教師間のコミュニケーションが増え ていることがわかる。総合化は、実際の教育実践を介したものではないものの、会話を通して教師間 の境界線を緩める効果はこの 5 年間保たれているようである。 次に、教師の教育実践に関する項目を確認すると、「教師の仕事量が増えた」「精神的に疲れている 教師が増えた」では、2004 年調査、2009 年調査ともに「高総合化」校と「低総合化」校の数値に違 いは見られない。総合化を積極的に行うことが、教師に対してネガティブな影響を及ぼしているとは 言えないことがわかる。 また、「個々の教師の授業実践の力量が高まった」「教育サービスの質に対する教師の責任意識が高 まった」では、2004 年調査、2009 年調査ともに「高総合化」校の方が、教師の力量や、教育サービ スの質に対する教師の責任意識がより高まっていることがわかる。さらに、2009 年調査においては、 「高総合化」校 「低総合化」校 「高総合化」校 「低総合化」校 62 校 70 校 117 校 106 校 小学校 29 校 45 校 46 校 65 校 中学校 2004 年調査 2009 年調査 (注) 「高総合化」校とは、「方法・高総合化」校であり、か つ「内容・高総合化」校のこと。また、「低総合化」校 とは、「方法・低総合化」校であり、かつ「内容・低総 合化」校のこと。 図表 3-7 総合化校のサンプル数

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教師と子どもの関係が親密になる傾向が強くなっている。 次に子どもに関わる項目では、2004 年調査では「子どもが生き生きした」「子どもが落ち着いてき た」「これまで注目されてこなかった子どもが活躍するケースが出てきた」「不登校の子どもの数が 減った」において、「高総合化」校の方がそれらの傾向が強かった。だが、2009 年調査では「これま で注目されてこなかった子どもが活躍するケースが出てきた」のみとなった。子どもに対する総合化 の影響は小さくなっていることが窺えるものの、「総合的な学習の時間」が教科学習時には注目され ない子ども個人が脚光を浴びる効果は維持されている。 以上述べてきたことから、小学校における総合化のインパクトは、2004 年時よりも 2009 年時の方 が弱くなっていることが示唆される結果であるのだが、総合化は学校、教師集団、子どもに対して副 次的効果をもたらしていることがわかる。 1.83 > 1.61 1.79 > 1.33 これまで注目されてこなかった子 どもが活躍するケースが出てきた 1.59 1.24 1.35 1.31 1.87 1.64 1.93 > 1.44 不登校の子どもの数が減った 小 学 校 中 学 校 注) 数値は、「あてはまる」を 3 点、「少しあてはまる」を 2 点、「あまりあてはまらない」を 1 点、「あてはまらない」と「むし ろ逆である」を 0 点としたときの各学校群の平均点。なお、t 検定の結果 5 % 水準で有意差があった箇所に不等号をつけた。 図表 3-8 「総合的な学習の時間」の総合化と近年の学校の変化との関係 1.64 1.58 1.79 1.59 1.73 1.53 教師の仕事ぶりに活気が出てきた 1.76 1.64 1.75 1.57 2.00 1.83 1.94 > 1.65 子どもが生き生きとしてきた 2.03 1.82 1.89 1.89 1.85 1.71 1.85 > 1.52 子どもが落ち着いてきた 1.93 > 1.44 1.41 1.25 2.03 1.82 1.78 1.69 2.05 > 1.72 1.91 1.72 教師と子どもの関係が親密になっ た 1.90 > 1.62 1.82 > 1.41 1.92 > 1.62 1.83 > 1.47 個々の教師の授業実践の力量が高 まった 1.79 1.62 1.82 1.57 1.80 > 1.51 1.98 > 1.58 教育サービスの質に対する教師の 責任意識が高まった 1.76 1.56 保護者が授業や学校行事に参加す る機会が増えた ― 1.87 1.65 ― 2.09 > 1.69 地域と学校の距離が縮まった 2.34 2.09 2.37 2.26 2.07 2.16 2.32 2.16 教師の仕事量が増えた 1.72 1.80 1.85 1.71 1.44 1.57 1.77 1.53 精神的に疲れている教師が増えた 2.15 > 1.86 校長がリーダーシップを発揮する 機会が増えた 1.76 1.64 1.76 1.60 1.44 1.46 1.62 1.59 教育委員会とのやりとりが増えた 1.86 1.67 ― 2.08 1.88 ― 保護者や地域と学校の距離が縮 まった ― 1.63 1.62 ― 2.12 > 1.73 1.80 1.70 1.91 > 1.47 校内研修の回数が増えた 1.97 1.76 1.76 1.50 1.82 1.81 1.91 > 1.59 教師同士で授業を見せ合う機会が 増えた 2.00 1.91 2.15 > 1.74 2.22 > 1.99 2.09 > 1.82 授業内容や子どもに関する教師間 のコミュニケーションが増えた 2.14 1.78 2.07 1.86 1.95 1.75 2004 年 「高総合化」校 「低総合化」校 2009 年 「高総合化」校 「低総合化」校 2004 年 「高総合化」校 「低総合化」校 2.10 1.96 2.30 2.15 2.30 > 1.96 2.12 1.90 学校全体の雰囲気がよくなってき た 2.24 > 1.78 2.20 > 1.84 2.33 > 1.91 2.31 > 1.88 学校の特色がうまれてきた 1.62 1.40 1.74 1.42 2009 年 「高総合化」校 「低総合化」校

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3-6-2.中学校におけるインパクト 一方、中学校の学校に関する項目を確認すると、小学校と同様に、総合化を積極的に行っている方 が学校の特色を生み出しやすいことがわかる (図表 3-8)。 だが、学校組織に関する項目では、2004 年調査で「授業内容や子どもに関する教師間のコミュニ ケーションが増えた」において有意差があった。だが、2009 年調査では有意差がなくなり、すべて の項目において有意差がない。中学校においては、総合化は教師間や学校 − 地域間の境界線を緩め る効果はないようである。 次に、教師の教育実践に関する項目では、2004 年調査、2009 年調査ともに総合化を積極的に行っ ている学校の方が、個々の教師の授業実践の力量が高まっている。それ以外の項目においては、総合 化との関連はなかった。つまり、総合化は教師に対してネガティブなインパクトを与えるものでなく、 また、教師の教育サービス意識や子どもとの親密さとも関連がなかった。 次に、子どもに関する項目においては、2004 年調査では有意差のある項目がなかったのだが、 2009 年調査では、「高総合化」校の方が、これまで注目されてこなかった子どもが活躍するケースが 出てきている。総合化を積極的に行っている中学校において、教師たちは注目されていなかった子ど もたちの新たな一面を発見していることが推察される。 以上のように、中学校においては、2004 年調査と同様に 2009 年調査においても、総合化のインパ クトが薄いことがわかった。 3-7.総合化の定着 1998 年の教育課程審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学 校の教育課程の基準の改善について」では、「『総合的な学習の時間』を創設する趣旨は、各学校が地 域や学校の実態等に応じて創意工夫を生かして特色ある教育活動を展開できるような時間を確保する ことである。」と述べられている。その点では、総合化を積極的に行っている学校は、「総合的な学習 の時間」の創設の趣旨を現実のものとしている。総合化は学校に特色を出させることに成功している と考えられる。 しかし、その内実を検討していくと、総合化は十分に機能を発揮し、副次的効果をもたらしている とは必ずしも言えない側面がある。小学校においては、2004 年調査時では総合化は教育実践を通し た教師間の交流を促進したり、学校と地域の壁を越えさせたりするものであったのに対し、2009 年 調査時においてはそれらの効果があるとはいえなくなった。この 5 年間に、「総合的な学習の時間」 の総合化の意味合いが変容してきていることが推察される。 このことから、小学校においては 5 年間に総合化のインパクトが弱まっていることが考えられる。 それは他の分析結果からも窺えた。例えば、「総合的な学習の時間」のテーマ決定にあたって、総合 化は、社会的課題、教科との関連性などとともに、学校の校風・伝統や過去に蓄積した教育実践をも 考慮に入れさせる効果があった。だが、2009 年調査時では、その効果があるとは言えなくなった。 学校 − 社会間、教育内容間などの境界線を緩やかにする総合化の脱分節化の機能を必要としない、 学校の校風・伝統やこれまで取り組んできた教育活動といった、現在の教育実践と連続性のあるもの が、テーマ決定にあたって総合化の程度を問わず考慮に入れられている。総合化を伴わない内容を取 り入れることが、小学校において普及してきていることがわかる。 一方、中学校においては、教師間や学校と地域との間にある境界線を緩める脱分節化の効果は、 2004 年調査、2009 年調査ともに確認できなかった。 「総合的な学習の時間」が導入された初期の 2004 年調査時では、総合化の効果は、中学校よりもむ しろ小学校において顕著であったことが明らかにされている。しかし、2009 年調査の結果と比較す ると、小学校での総合化の効果はやや弱まることによって、小・中学校でのその効果のあり方が類似 してきているのである。

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だが、このことは、脱分節化と個別化という総合化が持つ機能が失われつつあることを意味するわ けではない。小・中学校に対して脱分節化と個別化を促進させるという機能は、脈々と維持されてい ると考えられる。テーマ決定にあたっては体験と学校知、学校知と社会における知との境界線を緩め たり、子ども間の壁を低くしたりするという脱分節化の効果は存在している。また、総合化は、学校 に特色を出させると同時に、個々の教師の力量を高め、さらに、個々の子どもの興味や関心に焦点を あてた「総合的な学習の時間」の取り組みを促進し、これまで注目されなかった子どもに活躍の場を 提供するというように、学校、教育実践、個々の教師に個別化をもたらしている。 近年、信頼される学校づくり、確かな学力や豊かな心の育成に関わる様々の政策が打ち出されてい る中で、「総合的な学習の時間」への関心は下火になっている。しかし、これまでの分析と考察から、 小学校と中学校に対する「総合的な学習の時間」のインパクトは現在においても持続していることが 明らかになった。「総合的な学習の時間」によって生み出されることが期待され、そして実際に生み 出された独自の効果は、紛れもなく学校に定着しているのである。 4.カリキュラム改革としての「総合的な学習の時間」 我が国のカリキュラムは極めて巧妙な、興味深い構造を持っている。それは、特別活動という曖昧 な領域を持ってきたことである。 社会に有用な人材を育成するという役割を担う学校教育は、常にその時々の社会の現代的課題に対 応した教育を行う必要がある。それ故に我が国の学校教育は、ほぼ 10 年毎に学習指導要領の改訂を 行ってきた。しかし、戦後 50 年を超える戦後学校教育の歴史の中で、1989 年に小学校低学年におい て理科と社会が廃止され、生活科が新設されるまで、教科領域の改訂は各教科における知識量の増減 と教育進度の加減に限定され、その基本構造はほとんど変更されてこなかった。それでも我が国の学 校教育が社会の変化に対応しえたのは、特別活動という曖昧で、それ故に柔軟に形を変えることが可 能な教育領域を持ってきたからである。すなわち、特別活動が当該する社会的ニーズや現代的課題に 対応する教育を担当し、ときには教科領域の強化のためにその一部を提供することで、教科の普遍的 で系統的な知識体系を壊すことなく、一貫した教育の形態を継続することができたのである。 2002 年の改訂において教科領域に跨る「総合的な学習の時間」が新設されたことは、この従来の 教育課程の構造では社会のニーズや現代的課題に対応できなくなったことを意味していると言える。 とりわけそれが教科領域に跨る形で設定されたことは、近年の社会的ニーズと現代的課題が教科領域 を脅かすものであったと理解される。すなわち、「総合的な学習の時間」は一面では従来の教科に変 わる新しい教科学習の形態を具現するものであるが、それは同時に、従来の教科学習では対応できな い側面を一手に引き受けることで、普遍的で系統的な教科領域を守るものでもあったのである。 本稿では、この「総合的な学習の時間」が具現し、請け負ってきた新しい学習の様相を、新設に至 る議論と学習指導要領における解説に基づいて《総合化 (= 自由度を高めること)》にあると見なし、 《総合化》の 2 つの主要な要素である脱分節化と個別化がどのように図られ、総合化がどれだけ定着 したのかを見てきた。分析の結果明らかになったことは、以下のことである。 1.2004 年と同様 2009 年も、小・中学校ともに、総合化を積極的に行っている学校は、「総合的な学 習の時間」の創設の趣旨を現実のものとしている。 2.2004 年と比べて 2009 年は、小・中学校ともに、「総合的な学習の時間」における総合化の度合い が若干弱まり、総合化とは異なる特徴を学校の特色として採用する学校が増えている。 3.総合化は、学校、教育実践、個々の教師に個別化をもたらしている。 以上のように、「総合的な学習の時間」は、「総合的な学習の時間」内の成果に止まらず、学校教育 の諸側面に一定の成果をもたらしている。中でも重要なことは、各学校が、自分たちの学校に合った 特色ある総合化を図っていることである。これは、各学校が自己裁量に基づいた「総合的な学習の時

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間」の実施を行い、主体的・自律的な学校づくりを開始していることを意味する。このことは現在学 校が置かれている状況、突きつけられている課題を考えた時、極めて重要である。 現在、「総合的な学習の時間」が後退する一方で、参加型学習や対話型学習が注目を集めている。 それは、教科の授業において行われるべきものとしてである。 しかし、教科領域は、参加型学習や対話型学習を採用することが義務づけられているわけではなく、 それを採用するかどうかは学校 (または個々の教師) の判断に委ねられることになる。とりわけ、知 識の量と正確性が問われる受験が現実の目標となっている中学校が、教科の授業をどれだけ変えるこ とができるのかは疑問である。 けれども学校・教師が、「総合的な学習の時間」の中で実感として得た子どもや教師自身の変化や、 子どもや自分自身に現れた効果が真に価値のあるものならば、学校・教師がそれらのエッセンスを教 科の授業に取り込み、活用することは、十分に期待できるだろう。それは、本稿が確認したように、 受験が障害となって「総合的な学習の時間」の実施にネガティブな反応を示していた中学校で、この 10 年間の実施の中で「総合的な学習の時間」を効果が期待できる教育として認め、その実践に積極 的に取り組む学校が増えた事実が示していることでもある。もちろん、それが可能だったのは、「総 合的な学習の時間」を充実させることが、教科の授業を変えないことを前提とし、子どもたちに必要 なもう一つの学習をそれが請け負うことを意味していたからであり、そのように考えると、教科領域 の教育が変わることはやはり容易ではないと言わざるを得ないようにも思われる。しかし、学校・教 師には「総合的な学習の時間」と格闘したこの 10 年間の経験があり、学校教育の構造は自由度を高 め、学校・教師の自己裁量の余地が拡大した。そしてなによりも学校・教師は自律的にカリキュラム を編成する主体性を手に入れた。新たに突きつけられた課題は 10 年前のものをはるかに上回る大き な課題であるが、何も持たずにその課題に取り組んだ 10 年前と比べれば、取り組むために必要なも のを学校・教師は既に手に入れている。「総合的な学習の時間」の本当の成果が測られるのは、子ど もの学力ばかりではなく、新しいスタイルの教科の授業を作り上げていく学校と教師の力としてなの かもしれない。 〈注〉 (1) 各項目には,「かなりしている」「ある程度している」「あまりしていない」「ほとんどしていない」という 4 段階の回答が用意されており,順に 3 点,2 点,1 点,0 点を与え,各学校の各因子の合計得点を出した。 小学校の「方法の総合化」因子の平均点は 11.7 点であったので,12〜18 点の小学校を方法・高総合化校群, 0〜11 点の小学校を方法・低総合化校群とした。また,「内容の総合化」因子の平均点は 5.4 点であったの で,6〜9 点の小学校を内容・高総合化校群,0〜5 点の小学校を内容・低総合化校群とした。一方,中学校 の「方法の総合化」因子の平均点は 12.1 点であったので,13〜18 点の中学校を方法・高総合化校群, 0〜12 点の中学校を方法・低総合化校群とした。また,「内容の総合化」因子の平均点は 4.4 点であったの で,5〜9 点の中学校を内容・高総合化校群,0〜4 点の中学校を内容・低総合化校群とした。 ※本研究は,平成 20 年度〜平成 22 年度科学研究費補助金 (基盤研究 (C))「『総合的な学習の時間』のカリ キュラム特性とその機能に関する研究」(課題番号 20530772 研究代表者:紅林伸幸) の交付を受けた。 【参 考 文 献】 川村光・紅林伸幸・越智康詞「『総合的な学習の時間』における二つの総合化と学校の変容 ――『総合的な学習 の時間』の導入と学校文化・教師文化の変容に関する調査研究 (Ⅱ)――」『信州大学教育学部紀要』第 114 号 169-180 頁 2005 年

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