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Hermite対称な定値一般固有値問題のフィルタ対角化法について

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(1)情報処理学会研究報告. Vol.2012-HPC-134 No.1 2012/6/1. IPSJ SIG Technical Report. Hermite 対称な定値一般固有値問題の フィルタ対角化法について 村上 弘1,a). 概要:係数行列 A と B が Hermite 対称で B が正定値である一般固有値問題 Av=λBv では固有値 λ は すべて実数である.この種類の問題に対して,指定した実区間に固有値がある固有対の近似だけを求める フィルタ対角化法を示す.. キーワード:フィルタ対角化法,固有値問題, Hermite 対称定値. Filter Diagonalization for Complex Hermitian Definite Generalized Eigenproblems Hiroshi Murakami1,a). Abstract: Eigenvalues λ are all reals for a generalized eigenproblem Av=λBv whose coefficient matrices A and B are complex Hermitian and B is positive definite. For this kind of problems, a filter diagonalization method is presented which solves only those approximations of eigenpairs whose eigenvalues are in the specified real interval. Keywords: filter diagonalization, eigenproblem, complex Hermitian definite. 1. はじめに. し,固有ベクトルは実対称の問題の場合には B を計量とす る正規直交条件 V T BV =I を,Hermite 対称の問題の場合. 係数行列 A と B が Hermite 対称で B が正定値の定値一. には V H BV =I を満たすようにできる.ここで右肩に H. 般固有値問題(GEVP)Av=λBv は,係数行列が実対称の. をつけたものは通常の Hermite 転置を表す.そうして問. 場合の問題を Hermite 対称の場合に拡張したものになって. 題の線形空間に付随するベクトル同士の自然な内積 hu, vi. いる.実対称の場合と同じく,この問題の固有値 λ はすべ. は,実対称の場合は uT Bv であり,Hermite 対称の場合は. て実数である.そのことから,求めたい固有対の固有値の. uH Bv である.. 存在範囲を実数の区間で指定できる.但し,固有ベクトル. これらのことから,実対称の場合の解法に現れる転置操. は実対称の場合はすべて実ベクトルにとれたが,Hermite. 作の箇所を Hermite 転置に置き換えることで,Hermite 対. 対称の場合には一般には実ベクトルにはできない.. 称の場合の問題が同様に扱えると期待できる.そこで本研. どちらの場合にも固有ベクトルの全体は固有値に重複が. 究では,既に構築済みの実対称の定値一般固有値問題に対. あっても必ず全空間を張る.そこで固有ベクトルの全体を. するフィルタ対角化の方法の構造をなるべく保ちながら拡. 順番に並べた行列を V ,それに対応して固有値を並べた対. 張し,Hermite 対称の場合を扱える定式化を得ることを試. 角行列を Λ とすれば,一般固有値問題は AV =BV Λ に帰. みた.. 1. a). 首都大学東京・数理情報科学専攻 Department of Mathematics and Information Sciences, Tokyo Metropolitan University [email protected]. ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 2. フィルタとその伝達関数 大規模な N 次の Hermite 対称な定値一般固有値問題. 1.

(2) 情報処理学会研究報告. Vol.2012-HPC-134 No.1 2012/6/1. IPSJ SIG Technical Report. (GEVP) :Av=λBv の「区間 [a, b] に固有値がある固有対」 だけを,通過域 [a, b] のフィルタを利用してフィルタ対角 化法により求めるとする. シフトが複素数 τ のレゾルベントを R(τ )=(A − τ B). γp は,伝達関数の形状に対して課す制約条件を満たすよう に決める. 実対称の問題の場合における通過域 [a, b] のフィルタの. −1. B. と定義する.フィルタ作用素 F として,シフトが相異なる ∑ レゾルベントの線形結合 F=c∞ I + p γp R(τp ) を採用す. 設計と構成の方法(フィルタの特性に対して課された条件 を満たすための伝達関数の極の個数と極の配置,極の留数 の値を決める方法)は,Hermite 対称の問題の場合にもそ. る.そのとき,元の固有値問題の固有値 λ の固有ベクトル. のまま利用できる.. v に対しては Fv=f (λ)v が成立する.ここで λ の有理関 ∑ 数 f (λ)=c∞ + p=1 γp /(λ − τp ) は,フィルタによる固有. 2.1 フィルタの設計. 値が λ の固有ベクトルの伝達率を与えるので伝達関数と呼. まず λ の正規化座標 t を λ ∈ [a, b] から t ∈ [−1, 1] へ. ばれる.Hermite 対称な定値一般固有値問題の固有値は実. の線形変換で定義する.そのとき t ∈ [−1, 1] は通過域. 数であるので,フィルタの設計の際には伝達関数 f (λ) の. (passband)に,µ ≤ |t| は阻止域(stopbands)に,中間の. 振る舞いは λ が実軸の上だけで調べれば良い.このことか. 1 < |t| < µ は遷移域(transitionbands)に,それぞれ対応. ら,フィルタの伝達関数 f (λ) が実対称の場合と同一のも. する.但し,µ は 1 より(少し)大きい値を持つパラメタ. のを Hermite 対称の問題においても使用できる.固有値は. である.フィルタの種類とは伝達関数 f (λ) = g(t) の関数. 実数だけなので,すべてのシフトを虚数にとれば F の有界. 族の違いである.. 性は保証され,伝達関数 f (λ) も実軸上の有界な関数にな る.さらに後でみるように,伝達関数 f (λ) を実関数にす ると,シフトが互いに複素共役なレゾルベント間の対称性. に対して実数値を与える関数)に限定する. ∑ 伝達関数 f (λ)=c∞ + p γp /(λ − τp ) (但し τp. の値は全て相異なるとする)が実関数となるには,. gstop. 係数 c∞ は実数で,実数の極はその留数は実数で,. 0. 虚数の極は複素共役の対として含まれ,複素共役 な極に対する留数もまた複素共役であることが必. 要十分である.つまり実数の極の場合も含めて,. STOP. PASS −µ. −1. t. STOP 1. STOP. そこで本論文では,伝達関数 f (λ) は実関数(実数の引数. gpass |g(t)|. を利用することで計算量が削減できて有利である(後述) .. PASS. 1. µ. 図 1 フィルタの伝達関数の絶対値 |g(t)| の概形図.. 任意の添字 p に対してある添字 q が唯一決まり,. τp =τq ,γp =γq となる.(伝達関数 f (λ) の有界性. 伝達関数 g(t) の値の分布に制約条件: i) 通過域における. を仮定する場合には,極は虚数のみであり,添字. g(t) の tight な最小値は gpass で,逆に g(t) が gpass 以上に. の個数は偶数 2n で,添字 1 から n までの極は例え. なるのは通過域に限る; ii) 阻止域における |g(t)| の上限値. ば虚部が正のものとし,それらの複素共役が添字. n + 1 から 2n までの極となるように並べられる.) 伝達関数 f (λ) が実関数の場合は,BF は Hermite 対称に なる.実際,c∞ は実数で,任意の極の添字 p にはそれに. は gstop である;を課す(図 1 参照) .条件 i) は g(t) ≥ gpass と通過域 [−1, 1] に t があることが同値であることを意味し ている. 典型的な 4 種類のフィルタ Butterworth,Chebyshev,. 対応する添字 q が唯一存在して,τp =τq ,γp =γq となるこ. inverse-Chebyshev,elliptic に対しては,制約条件の 3 つ. とを用いると, ∑ (BF)H = B c∞ I + p { γp B (A − τp B)−1 B }H ∑ = B c∞ I + p γp B H (A − τp B)−H B H ∑ = B c∞ I + p γp B(A − τp B)−1 B ∑ = B c∞ I + q γq B(A − τq B)−1 B ∑ = B{ c∞ I + q γq (A − τq B)−1 B }. 組(µ,gpass ,gstop )を指定すると,その条件を満たせる次. = BF として示せる.. 数 n の最小値が決まり,n をその値以上に設定すると g(t) が完全に決まる.(同様に制約条件の 3 つ組を(µ,gpass ,. n)で与える場合は,条件を満たせる gstop の最小値が決ま り,gstop をその値以上に設定すれば g(t) が完全に決まる. あるいはまた制約条件の 3 つ組を(gpass ,gstop ,n)で与 える場合には,条件を満たせる µ の最小値が決まり,µ を その値以上に設定すれば g(t) が完全に決まる.) 関数 g(t) が決まると,有理関数である伝達関数 f (λ)=g(t). フィルタ F あるいは伝達関数 f (λ) を定義するパラメタ. のすべての極の位置と各極の持つ留数が決まり,それによ. である次数 2n,実係数 c∞ ,複素シフト τp ,複素結合係数. り通過域が λ ∈ [a, b] であるフィルタ F のパラメタが完全. ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 2.

(3) 情報処理学会研究報告. Vol.2012-HPC-134 No.1 2012/6/1. IPSJ SIG Technical Report. に決まる. フィルタの設計法と構成法の詳細は文献 [6] に記述した (但し,そこで用いた記号や定義は本論文のものと多少異 なる).. 3. レゾルベントの作用の計算法について. 3.1 シフトが複素共役なレゾルベントの間の LU 分解の 共用. 実対称の問題の場合には,任意の実ベクトルの組 X に (伝達関数 f (λ) が実関数の)フィルタ F を作用させる計算 の中で,複素共役なシフトの添字を p,q とするとき,複素共 役性から関係 { γp R(τp ) + γq R(τq ) }X = 2Re {γp R(τp )X}. フィルタの作用を実現するには,N 次(列)ベクトルの. が成り立つので複素共役対のシフトを持つ 2 個のレゾルベ. m 個の組である X に対して,複素数のシフト τp のレゾル. ントの項の作用の和は,片方の項の作用だけの計算で済ま. ベント R(τp )=(A − τp B)−1 B を各 p について作用させる. せることで,計算量と記憶参照量が半分にできていた.. 計算が必要である.それには C=A − τp B とおいて,連立. Hermite 対称の問題では実対称の場合に比べて複素共役. 1 次方程式の組 CZ=BX をベクトルの組 Z について解く. 性の利用は多少複雑になる.いま A,B が Hermite 対称で. ことに帰着する(右辺 BX はシフト τp によらないので,. あるとして,任意の複素ベクトルの組 X に(伝達関数 f (λ). X 0 := BX を計算して作っておくのが便利である).行列. が実関数の)フィルタ F を作用させた結果を求めることに. A,B が Hermite 対称のとき,τp の値が実数でなければ行. する.互いに複素共役なシフトの添字を p,q とするとき,. 列 C は Hermite 対称にはならないことに注意する.. τp =τq で γp =γq である.いま C(τp ) ≡ A − τp B と定義す. ここでは A,B が帯行列でその半帯幅を h とすると,C. れば,添字 p のレゾルベントは R(τp )=C(τp )−1 B である. も半帯幅が h となり,連立 1 次方程式は帯行列専用の行ピ. から,レゾルベントの作用 V := R(τp )X の計算は,まず. ボット交換付きの LU 分解法を用いて安定に解ける.その. X 0 := BX とおいて,連立 1 次方程式の組 C(τp )V =X 0 を. 場合の LU 分解の L の下半帯幅は h で,U の上半帯幅は. 解けばよい.これを LU 分解で解く場合について以下で考. 2h 以下となる.. 察する.. 固有値は実数しかないので,シフト τ が実数でなければ. いま C(τp ) の LU 分解が C(τp ) =: LU と構成できたと. 行列 C は必ず正則であることから,行ピボット交換を省い. する.すると分解された連立 1 次方程式の組 LU V =X 0 を. て計算を行う(その場合の LU 分解の L の下帯幅と U の. 前進消去と後退代入で解いて V が得られる.同様にシフト. 上帯幅は共に h となる)と計算量と記憶量を節約できる可. が複素共役である τq のレゾルベントの作用 W := R(τq )X. 能性があるが,数値的な精度が悪化する可能性がある.. の計算には連立 1 次方程式 C(τq )W =X 0 を解けばよいが,. 固有ベクトルを逆反復法で改良する計算を行う場合に. C(τq ) = A − τp B = C(τp )H なのでその係数行列の LU. は,近似固有値である λ は実数であるので,それに対応し. 分解は先ほど構成した C(τp ) の LU 分解の因子を用いて. て Hermite 対称行列 C=A − λB を係数とする連立 1 次方. C(τq )H =: U H LH と表せる(実際 U H は下三角行列で,LH. 程式を解くことになるが,これもむしろ C の Hermite 対称. は上三角行列である) .すると U H LH W =X 0 を前進消去と. 性を用いて修正コレスキ分解 C=LDLH を用いるよりも,. 後退代入で解いて W が得られる(あるいは U H LH W =X 0. 行ピボット交換付きの帯行列用の LU 分解を用いて解いた. のかわりに,それの複素共役 U T LT W =X 0 を前進消去と. 方が計算量と記憶量は多くなるが数値精度を保つ為には望. 交代代入で解いて W を得た後で,その複素共役として W. ましいであろう.. を求める方が,多少効率的であろう).結局,フィルタ F. 係数の Hermite 対称行列 A,B が帯行列ではなくて一般. の複素ベクトル X への作用の計算の中で,添字 p,q の互. 的な疎行列の場合にも,複素数 τ のシフトを持つレゾルベ. いに複素共役なシフトを持つ 2 つのレゾルベントの項の和. ント R(τ ) をベクトルの組 X に作用させる計算は,同様に. の寄与は,{γp R(τp ) + γq R(τq )}X = γp V + γq W となる. C=A − τ B とおいて,疎行列 C を係数とする連立 1 次方. (注:実対称の場合とは異なり,Hermite 対称の場合には,. 程式の組 CZ=BX をベクトルの組 Z について解くことに. 一般的にはたとえ X が実ベクトルの組でも,フィルタを. 帰着できる.行列 C の疎性を利用できる連立 1 次方程式の. 作用した結果は実ベクトルの組にはならない).. 組に対する標準的解法としては,たとえば複数個のベクト. 以上のことから,互いに複素共役であるシフトを持つ 2. ルの組に対する(ブロック)クリロフ部分空間法の系統の. 個のレゾルベントの作用の計算には,片方の LU 分解の結. 反復解法,あるいはそれに不完全 LU 分解などの前処理を. 果を共有してもう片方で再利用することで,LU 分解にか. 加えたものなどが考えられる.また行列 A,B が偏微分方. かる計算量と記憶参照を半分に減らせることがわかる.. 程式の離散化近似に由来するものであれば,問題の構造に. 付記:シフト τ が実数の場合には C(τ )=A − τ B も Her-. 密着したマルチグリッド法などの高速解法が適用できる可. mite 対称である.B は正定値だから,「もしも」シフト τ. 能性がある.. が最小固有値よりも小さい実数であれば,Hermite 対称行 列用の修正コレスキ分解 C(τ ) =: LDLH の計算はピボッ ト交換なしでも安定に行える.. ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 3.

(4) 情報処理学会研究報告. Vol.2012-HPC-134 No.1 2012/6/1. IPSJ SIG Technical Report. る.すなわち Z は B-Hermite 正規直交(Z H BZ = I )で あるから,小さい次数の Hermite 対称行列 f A = Z H AZ. 4. フィルタへの入力とその出力 いま整数 m を,フィルタの通過域または遷移域に固有 値がある固有対全部の個数よりもいくらか大きい数にと る.そうしてまず m 個以上の乱数ベクトルの組に対して. B-Hermite 正規直交化を行い,B-Hermite 正規直交系であ る m 個のベクトルの組 X を作成する(つまり X BX=Im H. を作り,そのユニタリ変換による対角化(固有値分解) をf A = U DU H とするとき,Ritz 対は ZU の列ベクトル (Ritz ベクトル)とそれに対応する D の対角要素(Ritz 値) の対として得られる.この方法による近似固有値(Ritz 値) は Hermite 対称行列 f A の固有値であるから実数である.. である).この X をフィルタへの入力ベクトルの組として 用いる. こ の よ う に し て 得 ら れ た 組 X の 各 ベ ク ト ル x(k) ,. 5.1 不変部分空間 I の近似基底 Z の構成 フィルタ作用素 F がレゾルベントの線形結合の場合には,. k=1, 2, . . ., m のそれぞれに対してフィルタ F を適用し,得. 元の GEVP:Av=λBv の固有対を (λ, v) とすると,ベクト. られた結果 y. ル v は同時にまた F の固有ベクトルにもなり,Fv=f (λ)v. (k). (k). =Fx. ,k=1, 2, . . ., m を対応順に並べて,. m 個のベクトルの組 Y (= FX )を作る.この Y がフィ ルタからの出力ベクトルの組になる. 数値丸め誤差と比べて阻止域でのフィルタの伝達率の大 きさが無視できる程度に小さければ,各出力ベクトルは. も満たす.ただし,f (λ) は伝達関数である.逆の命題「F の任意の固有ベクトルは元の GEVP の固有ベクトルであ る」は成り立たないが, 「F の(任意の)不変部分空間は元 の GEVP の不変部分空間である」は成り立つ.. y(k) は固有値がフィルタの通過域と遷移域にある固有ベク. この性質をうまく利用すると,「[a, b] のある近傍」に固. トルの線形結合とみなせるから,Span(Y ) はそのような固. 有値がある元の GEVP の不変部分空間を I とするとき,. 有ベクトルで張られた部分空間である. 計算効率の観点からは,X に F を作用させる操作の内側 で行われる行列ベクトル積や連立 1 次方程式を解く際に,. 以下の性質を満たすベクトルの組 Z を構成できる:. ( 1 ) Z は Y の張る空間内にある. ( 2 ) Z の張る空間は不変部分空間 I をよく近似する.. 組 X に含まれる各列ベクトルを 1 つずつ独立に F を適用. ( 3 ) Z は B-Hermite 正規直交系である.. するよりも,ある程度の個数をまとめてブロック化して処. そのように構成された組 Z に対して Rayleigh-Ritz 法を適. 理するとトータルの記憶参照回数が減らせるなどの利点が. 用すると,元の GEVP の指定区間 [a, b] のある近傍に固有. ある.但し,作業用の記憶の量をそれだけ多く確保する必. 値があるすべての固有対の近似を一斉に求めることがで. 要がある.. きる.. 5. Rayleigh-Ritz 法に与える基底の組の構成. Z の構成法は,まず次節の方法(節 5.2)を用いて組 Y の張る空間内で作用素 F の近似固有対 (φ, v) で(伝達関数. フィルタの出力ベクトルの組 Y が張る空間は,「通過域. f の [a, b] の値域である)[gpass , 1] の「適切な近傍」に固有. [a, b] の近傍に固有値がある固有ベクトル」で張られてい. 値 φ の値があるものだけをすべて求める.そのようなベク. る.そこで,Y の張る空間の内で元の GEVP の近似固有対. トル v は B-Hermite 正規直交系にとれ,それらを集めて. を Rayleigh-Ritz 法を用いて求めようとする.しかしフィ. 並べたものを組 Z にすればよい.. ルタの阻止域での性質により,固有値が阻止域の近傍にあ. ここで [gpass , 1] の「適切な近傍」とは,固有値. る固有ベクトルは非常に強く減衰をうけるので,Y は通常. φ の分布を(誤差の影響を考慮した上で)はっき. は数値的階数が多数落ちている行列である(しかも入力ベ. りと分離するような近傍のことである.数値計算. クトルの個数 m を増せばそれだけ,より多くの階数が落. で求めた固有値 φ の値は近似の誤差や数値演算の. ちる).そのような数値的条件の悪い基底 Y に対して直接. 丸め誤差,連立 1 次方程式の解計算の不完全性な. に Rayleigh-Ritz 法を適用すると,得られる結果もまた数. どにより誤差を含んでずれる.たとえば gpass と. 値的に非常に不安定になる.. 比べて小さい φ の値でも,それが gpass に非常に. そこで一種の正則化として,Y の張る空間の内から数値. 近い値であれば安全のためには含めておく必要が. 的線形独立性の高い基底 Z をあらかじめ選び出す処理を. ある.また,固有ベクトルの組が不変部分空間に. 行う.いま固有値が [a, b](のある近傍)にある不変部分. なるためには,縮退している固有値を持つ固有ベ. 空間を I とする.そのとき,Span(Y ) の中に制限された. クトルがあればそれらの全てを含むか全く含まな. B-Hermite 正規直交基底 Z を,Span(Z) が I を良く近似. いかのどちらかであって部分的に含まれることが. するように構成できる.. ないようにしなければならないが,数値計算では. そのような基底 Z を用いて Rayleigh-Ritz 法により元の. 摂動によって本来は縮退していたはずの固有値の. GEVP の Ritz 対をすべて求めて,それを近似固有対とす. 縮退がほどけて分散してしまっている可能性があ. ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 4.

(5) 情報処理学会研究報告. Vol.2012-HPC-134 No.1 2012/6/1. IPSJ SIG Technical Report. る.もちろん数値的には縮退であったかどうかを. え理論上は正定値や半正定値であっても絶対値の小さい負. 知ることは難しいので,摂動の限界を可能なら見. の固有値を持つ固有対が混入しうる.そこで後で見るよう. 積り,値が近接している固有値は縮退している可. に固有値の絶対値が非常に小さい固有ベクトルについての. 能性があるとして扱う必要がある.結局実用的に. 関係は切断操作により捨てる.それで最終的な計算結果が. は数値で求めた固有値 φ の値を gpass 未満のもの. 大きく影響を受けない定式化になっていればそれで良い.). から(あるいはマージンをとるために gpass より. たとえば典型的な 4 種類のフィルタ Butterworth,Cheby-. も少しだけ小さい値,例えば 0.95gpass などから開. shev,inverse-Chebyshev,elliptic では f (λ) が非負の実関. 始して)減少順に探索してゆき,φ の分布の中に. 数なので,β は半正定値 Hermite 対称行列になる.ただし,. 比較的大きな空隙(すきま)のある場所を見つけ. フィルタの係数 c∞ はフィルタの種類が inverse-Chebyshev. たならば,それよりも上側にある φ はすべて近傍. あるいは elliptic の場合でさらに n が偶数のときだけは零. として含めるとするのが安全であろう.上側の上. ではない正の値を持ち,普通はその大きさが微小なので零. 限 1 についても誤差の影響を考慮して 1 を越えた. として省く近似が有利で,そのような近似を入れた場合に. φ の値も近傍に含めるようにする.近傍に取り入. は β は大きさが微小な負の固有値を持つ可能性がある.. れた最小の φ が,取り入れなかった最大の φ との. フィルタの性質から自然に導かれることであるが,通常. 間に十分距離があり,かつ 1 に比べてあまり小さ. は Y の特異値には(入力ベクトルの個数を十分大きくとれ. い値でなければ,条件の良い近傍の設定に成功し. ばそれだけ)微小な値が多く,係数 α,β は共に悪条件に. たことになる.もしも近傍に微小な φ の値が含ま. なる.そのことを考慮して,固有値方程式 α u = φ β u は. れてしまうと,あたかも gpass が最初から微小で. 以下(節 5.3)の方法を用いて特別丁寧に解く.. あったのと同じことになり,その後の計算で精度 低下の原因になるから,近傍に取り入れる φ の値. 5.3. 「縮小された F の固有値方程式」α u=φ βu の解法. には下限も設けておくのが良いであろう.例えば. Y が積の形で α の表式中には 2 回,β には 1 回,それぞ. (1/2)gpass よりも小さい φ は近傍には含めないな. れ入っているので,α よりも β の方が行列の数値的な条件. ど.(ここでは gpass は,用いたフィルタの通過域. が良い.そこで Hermite 対称な行列 β を Hermite 対称行. に於ける伝達関数の「実際の」下限値である.た. 列用の Jacobi 法を用いてユニタリ変換で固有値分解する.. とえば典型的なフィルタの場合で c∞ を零に置き. これにより得られる固有値は実数であり,固有値の減少順. 換えた近似を採用している場合には,その分を減. に(負のものは後に)固有ベクトルを並べた β の固有値分. じた値を用いるものとする.). 解を β=QH DQ とする(ここで固有値分解用いる Jacobi 法は Hermite 対称行列に 2 次のユニタリ変換を作用させて. 5.2 F の近似固有対の解法. 対角行列に収束させることで固有分解を求める方法で,実. 組 Y が張る部分空間内における F の近似固有対 (φ, v). 対称行列の場合の 2 次の直交変換(Jacobi 回転)を繰り返 して対角行列に収束させる方法の拡張になっている [1]).. は以下の方法で求めている. 固有値方程式 Fv = φ v に対して,v が組 Y の張る部. ユニタリ行列 Q による変換 u ≡ Qw により G ≡ Q α QH. 分空間内にあると言う条件の式 v=Y u を課し,さらに. とおくと,方程式は Gw = φ Dw となる(行列 G は Hermite. 両辺に左側から X H B を乗じると,次数 m の小規模な. 対称である).. GEVP:α u = φ β u が得られる.ここで α=X (BF)Y , H. β=X BY である.いま,F がレゾルベントの線形結合で, H. 伝達関数 f (λ) は実関数としたので,BF は Hermite 対称であ. きわめて小さい閾値(たとえば 100 εMAC )を  と置き, 値が  未満の D の対角要素に対応する行と列を G,D,w b w=φ bw b b から省くことにより,切断された固有値方程式 G D. X F BY = (FX) BY = Y BY により行列 α は半正. b は Hermite 対称である).さらに,対角 を得る(行列 G bD b −1/2 と b 1/2 z により H ≡ D b −1/2 G b ≡D スケール変換 w. 定値 Hermite 対称で,つぎに β = X H BY = X H BFX =. おいて得られる Hermite 対称行列 H の標準固有値問題:. X H (BF)H X = X H F H BX = Y H BX = β H により行列 β が Hermite 対称であることがわかる.さらに,f (λ) が正. Hz = φz を Hermite 行列用の Jacobi 法を用いて解く. b 1/2 z b := D その固有対 (φ, z) のベクトル z から逆変換 w. 値関数ならば β は正定値であること,f (λ) が非負値関数な. b を得て,切断された行の自由度に零を により対応する w. らば β は半正定値であること,f (λ) の負の値の下限値の絶. 補って w を得て,さらに u := Qw を得て,v := Y u を得. 対値が微小ならば β に負の固有値が存在すればその絶対値. る.この v を集めたものが不変部分空間の近似空間の基底. は微小であること,を示すこともできる.(ただし実際に. となる.但しこのままでは,まだ B-Hermite 正規直交系に. は,β の固有対を数値計算で求めると,誤差の影響により. はなっていない.. る.このことから,まず α = X H (BF)Y = X H (BF)H Y = H. H. H. H. 固有値の絶対値が小さい固有対は精度が出ないので,たと ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 注:H に Hermite 対称行列用の Jacobi 法を適. 5.

(6) 情報処理学会研究報告. Vol.2012-HPC-134 No.1 2012/6/1. IPSJ SIG Technical Report. 用して求めた場合には固有ベクトル z は自然に. トの作用の計算を完全に省略できて,計算量を半分に減ら. Hermite 正規直交系となるから,u が β-Hermite 正. せたが,Hermite 対称の問題の場合に於いてフィルタ F を. 規直交系になる.そのときには上の v. 複素ベクトル x に作用させる計算では,複素共役なシフト τ. (i). (i). := Y u. のかわりに単にスカラ倍による規格化を付け加え √ た v(i) := (1/ φ(i) )·Y u(i) を作るだけでこの新し. と τ を持つ 2 つのレゾルベントの作用を与える連立 1 次方 程式を解く際に LU 分解を用いるのであれば,連立 1 次方程. い v(i) は B-Hermite 正規直交系になることが示せ √ る.但し,規格化因子 (1/ φ(i) ) が現れることか. 式の係数行列の間の関係 (A − τ B) = (A − τ B)H を利用す. ら容易に想像されるように,もしも通過域にある. れるならば,共役のシフト τ の係数は (A − τ B) =: U H LH. 固有ベクトルの伝達率に相当する φ. という LU 分解を持つので分解の計算を片方だけ行って共. (i). に小さい値. があると数値計算では誤差の拡大から B-Hermite 正規直交性が(規格化だけではなくて直交性も). ることで,シフト τ で係数が (A − τ B) =: LU と LU 分解さ. 有することで計算と記憶場所が節約できる.. Hermite 対称の問題に場合にも実対称の問題の場合と. 崩れうる.フィルタの伝達関数の gpass の値が 1. まったく同様に,フィルタの入力ベクトルの組 X と出力. の付近にある(例えば典型的な 4 種類のフィルタ. ベクトルの組 Y をフィルタの伝達関数の特性パラメタに照. で gpass = 0.5 にとるなど)のであれば,そのよう. らして分析することで,B-Hermite 正規直交基底 Z を,Y. な困難は生じないが,もしもそうではなくて gpass. が張る空間の中で構成して,Z の張る空間が不変部分空間. が微小な値であるような特性の悪いフィルタを用. I の良い近似となるようにできる.ただし不変部分空間 I. いたならば,B-Hermite 正規直交性が数値丸め誤. は元の GEVP の指定した区間 [a, b](の適切な近傍)にあ. 差の拡大により崩れるので,せめてそれを補正す. る固有値を持つ固有ベクトルを含むものである.そうして. るための B-Hermite 正規直交化を行う必要が生. 構成された基底 Z を Rayleigh-Ritz 法に適用することで,. じうる.. 指定された固有値を持つ固有対の近似が一斉に得られる.. 「Span(Y ) 内の. Av=λBv,v=Y u;. (λ, v). 一般固有値問題」. ↓. ↓. 「Span(Y ) 内の. F v=φv,v=Y u,φ=f (λ);. (φ, v). F の固有値問題」. l. l. 「縮小された F の. α u=φ β u;. (φ, u). 固有値問題」. α ≡ Y H BY ,β ≡ X H BY. 参考文献 [1]. [2]. 図 2 対応関係の図. [3]. 6. まとめ 行列 A,B が実対称で B が正定値の場合の一般固有値. [4]. 問題に対するフィルタ対角化法の計算手順をほぼ忠実に模 倣して拡張することにより,行列 A,B が Hermite 対称で. [5]. B が正定値の場合の一般固有値問題に対するフィルタ対角 化法の計算手順を導いた. 実対称と Hermite 対称の両方の問題で共通する,固有値. [6]. がすべて実数であることを用いると,フィルタの伝達関数. f (λ) を実関数(実数の引数に対して関数値が実数である. [7]. 関数)となるように選ぶならば,実対称の問題の場合に用 いたフィルタの設計と構成の方法は Hermite 対称の問題に もそのまま利用できる.そのように構成されたフィルタ F. [8]. は実対称の問題では BF が実対称で,Hermite 対称の問題 では BF が Hermite 対称となる. 伝達関数として実関数を用いる場合には,実対称の問題 の場合にはフィルタ F を実ベクトル x に作用させる計算で. [9]. Tibor Fiala: Unitary Jacobi-Method for the Eigenvalue Problem of an Arbitrary Normal Matrix, Ann. Univ. Sci. Budapest. Sect. Comput. Vol.3 (1982), pp.119-125 (1983), MathSciNet. Toledo, S. and Rabani, E.: Very Large Electronic Structure Calculations Using an Out-of-Core FilterDiagonalization Method, J. Comput. Phys., Vol.180, No.1 (2002), pp.256–269. Sakurai, T. and Sugiura, H: A Projection Method for Generalized Eigenvalue Problems Using Numerical Integration, J. Comp. Appl. Math., Vol.159 (2003), pp.119– 128. 村上 弘: レゾルベントの線形結合によるフィルタ対角化 法, 情報処理学会論文誌:コンピューティングシステム, Vol.49, No.SIG2 (ACS21) (2008), pp.66–87. Polizzi, E.: Density-Matrix-Based Algorithm for Solving Eigenvalue Problems, Phys. Rev. B, Vol.79, No.11 (2009), p.115112[6pages]. 村上 弘: 固有値が指定された区間内にある固有対を解く ための対称固有値問題用のフィルタの設計, 情報処理学 会論文誌:コンピューティングシステム (ACS31), Vol.3, No.3 (2010), pp.1–21. 村上 弘: フィルタで濾過されたベクトルの組から不変部 分空間の直交基底の組を近似構成するフィルタ対角化法, 情報処理学会研究報告, Vol.2011-HPC-129, No.1 (2011), pp.1–8. 村上 弘: 対称一般固有値問題のフィルタ作用素を用いた不 変部分空間の近似構成, 先進的計算基盤システムシンポジ ウム SACSIS2011 論文集 (電子版), (2011), pp.332–339. 村上 弘: 対称一般固有値問題のフィルタ作用素を用いた不 変部分空間の近似構成, 情報処理学会論文誌:コンピュー ティングシステム (ACS35), Vol.4, No.4 (2011), pp.1–14.. は複素共役なシフト τ と τ を持つ 2 つのレゾルベントの項. γR(τ ) と γ R(τ ) の間の複素対称性から片方のレゾルベン ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 6.

(7) 情報処理学会研究報告. Vol.2012-HPC-134 No.1 2012/6/1. IPSJ SIG Technical Report. 付. 録. の減少順に並べたときに,第 m + 1 番目の伝達率が(伝達. A.1 入力ベクトルの個数 m の決め方の考察 入力ベクトルの個数 m の決め方について,多少詳しく 考察をしてみる. フィルタの通過域 [a, b] に両側の遷移域を加えて広げた 区間を [a0 , b0 ] とする.これは阻止域以外の区間である.以 下では,固有値が [a, b] にある固有対の個数を N とし,固 有値が [a , b ] にある固有対の個数を N とする. 0. 0. 0. m 個の B-Hermite 正規直交ベクトルを入力ベクトルの 組 X とし,X にフィルタを作用させて得られる出力ベク トルの組を Y とする.いま阻止域に於けるフィルタの伝 達率の大きさの上限 gstop が数値的に微小で零とみなせる 近似が十分良く成り立つとすれば,Y の計量 B での数値 的な階数は N を超えない. 0. フィルタの伝達率の最大値は 1 となるように規格 化しているので(注:恒等演算子の項を省く近似 を入れた場合には 1 より少し小さい) ,阻止域にお ける伝達率の大きさの上限値 gstop が浮動小数点 数のマシンイプシロン(IEEE 754 の倍精度 64bit 浮動小数点数では 2.22×10−16 )の程度の 10−15 や. 10. −14. などであれば丸め誤差と同程度でほぼ零と. 見なせる.またマシンイプシロンよりもある程度 大きな値 10−12 や 10−8 などであっても,最初か らその程度の演算精度を用いて計算をしていると 思うならば,ほぼ零と見なせる値であると思うこ とができよう. もしも m < N 0 であれば,N 0 個ある「固有値が [a0 , b0 ] にある固有ベクトル」のすべては,Y の m 個のベクトル の線形結合で表すことはできない.するといま必要として いる「固有値が [a, b] にある固有ベクトル」も,うまく近 似できないかまたは近似の精度が十分にできない可能性が ある. 乱数ベクトルから計量 B の正規直交化で作った X は, ふつうは一般的(generic)な状況にあるので,N 0 ≤ m で あれば Y の計量 B での数値的階数はちょうど N になる. 0. 実際には m の値をちょうど N にせずに,いくらか大き 0. い値とするのがよい.その理由は,乱数を用いることで一 般的(generic)な状況を作り出してはいるが,その数値的 な generic の程度(一種の条件数)があまり良くない状況 が生じる確率をできるだけ低くするためである. 「固有値がフィルタの遷移域にある固有対」が多く存在 している場合で(伝達関数の振る舞いが急峻であっても遷 移域に固有値が密集して分布していればそのような状況が 生じうる),N ≤ m とはならずに N ≤ m < N となっ 0. 0. た場合には,区間 [a0 , b0 ] にある固有値 λ を重複を込めて考 え,それらの固有値に対応する伝達率 f (λ) をその絶対値. ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 関数の最大値 1 に比べて) 「数値的に微小で零と見なせる」 かどうかによって,近似対の精度が左右されるであろう. 以上の考察に従えば,フィルタにより「阻止域に固有値 がある固有ベクトル」がほぼ完全に除去されているとみな せるならば,m として「阻止域ではない区間 [a0 , b0 ] に固有 値がある固有対」の個数 N 0 よりも少し大きい値を採用す ればよいことになる. 実際の入力ベクトルの個数 m の決め方としては,たと えば以下のような方法が考えられる.. ( 1 ) 何らかの根拠か経験に基づいて,N 0 の値かその上限 値が既知の場合には,それに基づいて N 0 < m を満た す少し大きめの m を設定する.そうしてこの m の値 を用いても以降の計算で必要な記憶量や演算量が過大 にはならないと判断したら計算を進める(過大である 場合には,元の区間 [a, b] を分割して扱うことを検討 する).. ( 2 ) N 0 の値について予備知識が無いか,推定値に誤差が 伴う場合には,入力ベクトルの個数 m の値を(それに 伴い必要となる記憶量や演算量が過大にはならない範 囲で)様子を見ながら少しずつ段階的に増やして計算 を行うことができる(増やす場合には計算を最初から 完全にやり直すのではなくて,m を増やす前の部分の. X の列は保ちながら,X に新たな列を追加して,追 加後の X 全体が B-Hermite 正規直交性を保つように できる.そうして X の追加した列にあらたにフィル タ F を作用させて Y の対応して追加する部分の列を 作る.このように追加的に処理を行うことが可能であ る).一般的な状況にある X にフィルタを作用させて 作った Y の数値的な階数が十分に落ちていない場合 や,得られた近似固有対の残差が十分に小さくない場 合には,m を増やす(m を増やし続けてついにある限 界を超えたら,区間 [a, b] の再分割を検討する).. ( 3 ) Hermite 対称な定値一般固有値問題 Av=λBv では, 指定した区間に固有値がある固有対の個数は Sylvester の慣性律を用いて求められるこれは固有値を 2 分法 などの区間縮小法で求めるのに用いられてきた方法で ある.いま実数のシフト σ を与えて Hermite 対称行 列 C := A − σB を作り,Hermite 対称行列用の修正. Cholesky 法で C =: LDLH と分解できたとすると,σ よりも小さい固有値の個数は実対角行列 D の負の対角 要素の個数に等しい.このことを用いると区間 [a0 , b0 ) に固有値がある固有対の個数 N 0 は σ が b0 と a0 の場 合の分解で得られた対角行列 D の負の符号数の差と して求められる.ただし,区間の両端のシフトにおい て分解が破綻せずにできたと仮定する(破綻が生じる 可能性もあるが,区間内の固有対の個数の「上限」が 求まれば良いだけの用途であれば,破綻が起きたシフ. 7.

(8) 情報処理学会研究報告. Vol.2012-HPC-134 No.1 2012/6/1. IPSJ SIG Technical Report. トの値を区間を広げる方向に少し移動して計算をやり 直してみて破綻が起きなければそれを代替に用いると それで求めた符号数の差は上限を与える.但し数値安 定性については検討を要する).この方法はたとえば. A,B が幅の狭い帯行列であれば高速に実行しうる. A.2 「縮小された F の固有値問題」α u=φ βu の固有ベクトル展開を用いた分析 以下では,縮小された固有値方程式 αu=φβu の解法に ついてより良く理解するため,固有ベクトル展開を用いた 分析を行う. いま f (λ) は実数値をとると仮定している.あらかじめ 伝達率 φ=f (λ) が(広義)減少順となるように,元の固有 値問題の固有対には番号が付けられているとする.そうし て第 j 列に第 j 番目の固有ベクトルを並べた N 次の正方 行列を V とする.固有ベクトルは B-Hermite 正規直交条 件で規格化されている,つまり V H BV =IN であるとする, ここで IN は N 次単位行列である.そうして固有ベクトル に対応するように元の固有値問題の固有値を並べた N 次 実対角行列を Λ とすると AV =BV Λ である.さらに第 j 番目の固有ベクトルの伝達率 φ. (j). を第 j 番目の対角要素と. する N 次実対角行列を Φ とおくと FV =V Φ である.フィ ルタへの m 個の入力ベクトルの組 X は N ×m 行列で,X は B-Hermite 正規直交化されているので X BX=Im で H. ある.いま X の固有ベクトルによる展開係数を表す N ×m 行列 C が存在して X=V C と書けて,X の B-Hermite 正 規直交性から C H C=Im であるから C はフルランクであ る.そうして Y = FX = FV C = V ΦC とかける. すると, 「縮小された F の固有値問題」の係数である m 次の Hermite 対称行列はそれぞれ α = Y H BY = C H Φ2 C ,. β = X H BY = C H ΦC と書けることがわかる.いま,m が 十分に大きくて,フィルタの伝達特性の性質から第 m + 1 番目以降の伝達率 φ. (j). の大きさは無視できるほど十分に小. さいと仮定する(たとえば阻止域に於ける伝達関数の大き さの上限値 gstop が無視しうるほど小さいと見なせるなら. b の第 j 対角要素の値 φ(j) になることが分 目の固有値は Φ b は既知の量ではないから,固有値方 かる.ただし,C や C 程式 α u=φ β u をなんらかの数値的手段で直接解いて近似 解を求めることになる.その際には固有値 φ が微小な値を 持つ近似解については丸め誤差の影響を受けて良い精度で は求められないであろう.しかし今の場合には固有値 φ が. [gpass , 1](の近傍)である固有対 (φ, u) だけを解くのであ るから,フィルタの設計の際に gpass として(たとえば 0.5 程度の)微小ではない値が設定できていれば,数値計算上 の困難の程度は少ない.(もしもそうではなくて,gpass の 大きさが 1 に比べて微小な値であるような特性の良くない フィルタを用いると,丸め誤差の影響で困難が生じる可能 性がある.) 付記: いま比較のために,上記と同様にして,元の固 有値問題 Av=λBv を v ∈ Span(Y ) に制限する近似で得ら れる方程式 AY u=λBY u の残差と X とで標準の Hermite 内積で方程式を作ってみる.するとそれは小さい次数 m の行列 γ=X H AY ,β=X H BY を係数とする Hermite 対 称な一般固有値問題 γ u=λ β u になる(行列 β は前と同 様に Hermite 対称であり,また γ=C H Λ Φ C が示せるの で,行列 γ も Hermite 対称である) .Φ の切断近似の下で, b u=w とおくと,対角行列を係数とする一般固有値問題 C. bΦ b w=λ Φ b w になり,その第 j 番目の固有値は一応「数学 Λ 的には」元の固有値問題の固有値 λ(j) に等しいことが分か b は既知の量ではないので,Hermite 対 る.ただし,C や C 称な一般固有値問題 γ u=λ β u は実際には何らかの数値的 手段により直接解くことになるが,その場合に φ(j) の値が 微小であればそれだけ丸め誤差の影響により対応する λ(j) の近似値の精度が失われる可能性がある(しかも実際には,. γ u=λ β u だけを単独で解いても,得られた各近似対 (λ, u) がどの番号 j と対応するか,また対応する φ(j) の値が何で あるかはこの場合にはわからないのである).極端な状況 に於いては,この近似固有値 λ は元の固有値問題の固有値 から大きく離れた(無縁な)値になる可能性もある.. ば,m の値を固有値が通過域あるいは遷移域にある固有対 の個数よりも大きくすればよい).そのとき,行列 Φ をそ b までで切断する近似を行う.それに の m 次の首位行列 Φ 対応して C をその最初の m 行目までで切断した m 次正方 bC b と近似で b ,β ≈ C bH Φ b2 C b を用いると,α ≈ C bH Φ 行列 C. b があまり悪条件ではないと仮定する きる.さらに行列 C (X が乱数を元にして(B-Hermite 正規直交化を施して) b はあまり悪条件に 作ったベクトルの組であれば,通常は C はならないはずである.もしもそうでなければ乱数をとり 直すかもしくは個数 m を増やせば改善することが期待でき る) .すると「縮小された F の固有値問題」α u=φ β u は, b u=w とおくと,対角行列を係 この Φ の切断近似の下で C. b 2 w=φ Φ b w となり,その第 j 番 数とする一般固有値問題 Φ ⓒ2012 Information Processing Society of Japan. 8.

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参照

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