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WSNにおける効率的なエージェント位置管理機構

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Academic year: 2021

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(1)組込みシステムシンポジウム 2014 Embedded Systems Symposium 2014. ESS2014 2014/10/24. WSN における効率的なエージェント位置管理機構 並木 勁汰†1,a). 福田 浩章†1,b). 概要:無線センサネットワーク(WSN:Wireless Sensor Networks)は,センサデータを取得できる複数の ノードによって構成される無線ネットワークである. WSN を構成するノードは電源が有限であり,省電 力を実現するためにノードの計算資源が極小に抑えられている.したがって,複数のアプリケーションを 運用する際,必要なノードに対してのみプログラムを配備する必要がある.また,アプリケーションの稼 働場所を変更する場合,プログラムの配備場所を変更する必要がある.WSN ではアプリケーションの開 発者がプログラムの配備場所を把握した上でプログラムを記述しなければならない.特に,プログラムの 移動を考慮しなければならないモバイルエージェントアプローチではそれが困難である. 本研究では,WSN におけるプログラム間通信に起因する煩雑さを改善するため,分散ハッシュテーブルによ るエージェントの位置管理を行い,エージェントが移動しても確実に位置を探索できる機構(CMSN:Chord. for Mobile Agent on Wireless Sensor Networks)の提案と実装を行う.そして,CMSN によるエージェン トの検索シミュレーションを行い,検索に要する消費電力,時間,検索成功率を測定し,アドホックな検 索手法と比べて効率よく探索できることを示す. キーワード:無線センサーネットワーク,モバイルエージェントミドルウェア,エージェント検索,Agilla, CSN. An Efficient Agent Location Management on WSN Namiki Keita†1,a). Fukuda Hiroaki†1,b). Abstract: A Wireless Sensor Network (WSN) is typically deployed on a place in which no electric source is provided, meaning that its battery consumption is crucial. WSN applications require to execute many operations whose implementations are complex and consume a significant amount of battery (e.g., lookup). To simplify the development of these applications, several mobile agent middlewares have been proposed (e.g., Agilla). In an efficient manner, these proposals admin network hardware and react to the changes in the physical environment of a WSN. Applications for these middlewares are executed by communications among agents; thereby, a common operation is to look up agents. As existing agent lookup proposals do not support an efficient approach to look up agents, every lookup consumes a significant amount of energy and time. In addition, current approaches can fail their lookups if the target agent is able to migrate during a lookup operation. This paper proposes CMSN, an efficient and effective lookup for mobile agent middlewares. Our proposal is inspired by CSN, a distributed hash table algorithm for WSNs. We evaluate and compare CMSN in terms of performance time, effective lookups, and battery consumption. Keywords: Wireless sensor networks, mobile agent middleware, agent lookup, Agilla, CSN. 1. はじめに 無線センサネットワーク(WSN:Wireless Sensor Net-. ケーションとして,環境や構造物のモニタリング,対象物 の検知と追跡,ヘルスモニタリング等がある.これらのア プリケーションは長期間運用することが一般的だが,WSN. works)は,センサを搭載した複数のノードによって構成. を構成するノードは電池で稼働することを想定しており,. される無線ネットワークである.敷設の容易さから,幅広. 電力の節約が最重要課題となる.ゆえに,複数のアプリ. い分野で WSN の応用が期待されている.代表的なアプリ. ケーションを運用する際,必要なノードに対してのみプロ. †1 a) b). 現在,芝浦工業大学 Presently with Shibaura Institute of Technology [email protected] [email protected]. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. グラムを配備することが重要になる.. WSN におけるミドルウェアの研究は数多く存在する が [1][2][3],モバイルエージェントアプローチ [3] は,WSN. 63.

(2) 組込みシステムシンポジウム 2014 Embedded Systems Symposium 2014. ESS2014 2014/10/24. に配備するプログラムをエージェントとみなし,個々の ノードを渡り歩いて実行する処理を記述することで状況に 応じた WSN の利用を可能にする.複数のアプリケーショ ンを運用する際,資源の限られた一つの WSN において複 数のエージェントを実行できるモバイルエージェントアプ ローチが適している.しかし,これを実現するミドルウェ アには,効率的なエージェントの検索は実現されていな い.その結果,あるエージェントが他のエージェントの場 所(ノード)を検索するとき,フラッティングを行ってす べてのノードに検索をかけざるを得ない. 本研究では,WSN におけるモバイルエージェントミ. 図 1 Agilla のアプリケーション例.1) 火災検知エージェント,. 2) 火災の通知,3) 火災追跡エージェント Fig. 1 A WSN to detect and react to a fire. 1) An agent A. ドルウェアに対し効率的なエージェント検索を行うエー. detects a fire. 2) This agent notifies to an agent B.. ジェント位置管理機構(CMSN:Chord for Mobile Agent on. 3) The agent B travels and clones itself around the fire.. Wireless Sensor Networks)を提案する.これは,CSN[4] を基にした分散ハッシュテーブル(DHT:Distributed Hash. 最初に通知先のエージェントを見つけなければならない.. Table)[5] を利用し,短時間かつ少ない電力消費でのエー. しかし,Agilla のような既存のミドルウェアでは効率的な. ジェント検索を可能にする.また,検索対象のエージェン. エージェント検索は提供されていない.フラッディングを. トが移動中であっても,確実に検索できることを保証する.. 行ってすべてのノードに検索要求を転送することもでき. 2. モバイルエージェントミドルウェア におけるエージェントの検索 ここでは,Agilla を例にモバイルエージェントミドル ウェアについて概説し,検索の必要性について述べる.. るが,エージェントは移動できるため検索結果のノードに エージェントが存在するとは限らない.そのため,基本的 にはすべてのノードを移動し,アドホックに探さなければ ならない.これには,実行時間の増大,エージェント移動 時の検索失敗,消費電力増大という 3 つの問題点が存在す る.特に,電力に制約がある WSN において,消費電力の. 2.1 Agilla Agilla を 利 用 し た プ ロ グ ラ ム は ,VM で 解 釈 可 能 な 1byte∼2byte の命令セットで記述され,プログラムのコー. 増加は重大な問題である.. 3. エージェント検索のための DHT. ド容量を削減できる.また,メモリの制約が許す範囲で複. 本研究で提案する CMSN では DHT を利用する.ここ. 数エージェントの同時稼働,タプルスペース [6] を用いた. では,分散管理の必要性と DHT アルゴリズムを利用した. エージェント間通信,エージェントの配備場所指定,ノード. エージェント検索について述べる.. 間でのエージェント移動を実現している.その結果,プロ グラマは必要なノードだけにエージェントを配備し,エー ジェント間通信を行ってアプリケーションを実現できる.. 3.1 エージェント位置情報の保管場所 WSN の情報を収集する PC をベースステーションと呼 ぶ.このベースステーションで一括管理する場合,その構. 2.2 エージェント検索. 造ゆえにベースステーション周辺のノードにトラフィッ. モバイルエージェントを用いた WSN のアプリケーショ. クが集中し,電力消費増大によるノード稼働時間の低下,. ンには様々な例 [3][7] があるが,以下に示す防火アプリケー. WSN 全体の稼働時間低下という重大な問題を引き起こす.. ションを例にエージェント検索の必要性を述べる. 図 1 に Agilla を用いた火災検知・追跡を行うアプリケー ションの概略を示す.火災が発生すると火災検知エージェ. そこで,CMSN では WSN 内のノード上に分散して保管 する手法を採る.この手法は,個々のノードに対する負荷 の分散が期待できる.WSN におけるノード間の通信は,. ント(1)が検知し,追跡エージェントを見つけて通知を行. 自身と同性能なノード同士の通信であり,P2P 通信と考え. う(2) .通知を受けた追跡エージェント(3)が,自身のク. ることができる.CMSN では P2P での分散管理手法とし. ローンを火災発生場所周辺のノードへ配備する.そして,. て,高い探索成功率と探索効率を有する DHT を用いる.. 図中 3 のエージェントの存在によって火災を囲み,追跡を 行うことができる.. 3.2 Chord / CSN DHT は中央サーバを必要としない純粋な P2P 型のネッ. 2.3 検索における問題点 前述したように,エージェントが通知を行うには,まず. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. トワーク型分散ファイルシステムを実現することができ る技術である.識別子は,ファイル名やファイル自体から 64.

(3) 組込みシステムシンポジウム 2014 Embedded Systems Symposium 2014. ESS2014 2014/10/24. ハッシュ関数を用いて生成される数値で表現される.ま. N7!. N7!. N6!. N6!. ACK!. た,多くの DHT アルゴリズムでは O(logN ) で探索可能で. ACK!. あり,探索時の負荷が偏らないように工夫されている.. (5)!. (2)!. ACK!. (4)!. Completion!. (2)!. ACK!. (4)!. ACK!. DHT には複数のアルゴリズム [8], [9] が存在するが,. (2)!. N8!. N5!. N8!. N5! ACK!. Chord アルゴリズム [5] を利用する.Chord は DHT を代. (4)! Creation!. 表するアルゴリズムのひとつであり,時計回りに識別子の (1)!. N1!. 値が増加していくリング状の識別子空間を導入している. リングを時計回りで測定した長さが距離となり,この距離. N1! LINK:!. ACK!. (2)!. (3)!. Creation!. ACK!. N2!. N4! (4)!. (2)!. LINK:!. の定義からノードの遠近が定まる(ネットワーク的な近さ. N4!. N3!. N2!. LINK:!. とは無関係) .識別子は値が 160bit である SHA1 ハッシュ 関数の値を用いるため,識別子空間の大きさは 160bit とな. (i)!. N3!. (ii)!. る.探索対象(エージェント)の識別子も同じ識別子空間. 図 2 リング構築手順. にマップする.そして,探索対象の情報(エージェントの. Fig. 2 Procesures of a ring creation.. 位置)は最も近いノードが管理する.また,各ノードは自 身の次に大きい識別子を持つノード(Successor)への経路. 208!. とノード自身の識別子から 2 の k 乗先のノードへの経路を 管理する FingerTable を用いることで,ノード総数 N に対 して O(logN ) での探索が可能である.. 14! N2!. N6!. N7!. N1!. 255! 42!. 166!. 28!. N11!. N10!. CSN(Chord for Sensor Networks)[4] は,Chord にお Middle Layer!. けるノード間の物理的距離を考慮し,リング状識別子空間. N2!. N5!. を階層化することでセンサネットワークに適応させたアル. 124!. ゴリズムである.最上層リングの参加ノード数 N ,最大階. 7!. 42! N2!. N3! 82! Top Layer!. 層数 M に対し,O(M logN ) での探索を可能にする.. 14! N20!. Bottom Layer!. 一方,CSN ではリング作成時にベースステーションを必 図 3 識別子割り当て. 要とし,自律的なリング生成という性質からリングに参加. Fig. 3 Assign Identifiers.. できないノードが存在する可能性がある.また,最上位層 のリングからでなければ探索を行うことができず,探索対. 4.1 DHT 構築手順. 象が移動することを考慮していないため,エージェントの 位置管理にそのまま適用することはできない.. 4. Chord for Mobile Agent on WSN. CSN ではクラスタヘッドの選出まで自律的に行い各階 層のリングを生成する.一方 CMSN ではクラスタヘッド の選出は予め行い,実際のリング生成は自律的に行う.こ れは,1)本研究の想定としてベースステーションを必要と. CMSN では CSN で導入された階層型リング生成をベー スに,任意のノードからの検索や検索対象の移動に対応す る.また,CMSN の実装には代表的な WSN 用 OS である. TinyOS[10],および実装言語である nesC[11] を利用する.. しない,2)ノードは一度設置したら動かないため,トポロ ジーは変化しない *1 ,3)敷設した全てのノードをいずれか のリングに参加させる,という点を考慮したためである.. 4.1.1 リングの構築. CMSN は主に PacketManager,Neighbors,DHT の 3 つ のコンポーネントにより構成される.. • PacketManager: 受信コンポーネント(Receiver),送 信コンポーネント(Sender)を内包するコンポーネン ト.Sender はレスポンス送信の際,パケットの衝突を 避けるため,乱数による送信時間の調整を行う.. • Neighbors: Successor ノードの選定のため,隣接ノー ドの情報収集を行うコンポーネント.ブロードキャス トを用いて最近隣ノード,隣接リストの構築を行う.. • DHT: DHT を構築するため,リングの情報を管理する. 図 2 にリング構築手順を示す.ノード N1 がクラスタ ヘッド,N2,N3,N5,N6,N7 はひとつ下の階層でのクラ スタヘッド候補である.図 2(i)のように,リング構築は クラスタヘッドがリング構築メッセージ(Creation)をブ ロードキャストすることで開始される(1) .Creation を受 け取ったノードのうち,Predecessor が決まっていない *2 ノードが Ack を返す(2).返ってきた Ack の中で最も近 いノード. テーブルに関わる情報を扱う.. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. を Successor に選び,その旨を N2 に対. して通知する(3) .このメッセージには現在リングに参加 *1. コンポーネント.Successor,自身の次に小さい識別子 を持つノード(Predecessor) ,FingerTable,ハッシュ. *3 ,N2. *2 *3. 電池切れによるトポロジーの変化は起こる可能性があるが,本論 文では対象外としている. Predecessor が決まっていないということは,別のノードの Successor になっていないことを意味する. 現在の実装では,電波強度を示す RSSI を利用している.. 65.

(4) 組込みシステムシンポジウム 2014 Embedded Systems Symposium 2014. ESS2014 2014/10/24 表 1. しているノード数およびクラスタヘッドのノード ID の情. CMSN の設定. Table 1 Ring configuration.. 報が含まれる.次に,図 2(ii) に示すように,Predecessor が決まった N2 は,同様の方法で Successor を選択するが,. 対象. 階層. クラスタヘッドだけは Creation に対して Ack を返さない クラスタ数. (4).こうすることで,他に候補があるにも関わらずリン グ構築が終了してしまうことを防いでいる. *4. 個数. Top Layer. .リング参加. ノード数が限度数に到達するか Creation に対して Ack が. リング参加ノード最大数. 帰ってこなかったときはリング構築完了メッセージを示す. 1. Middle Layer. 9. Bottom Layer. 36. Top Layer. 9. Middle Layer. 4. Bottom Layer. 2. Completion をクラスタヘッドに送信する (5).この操作を Top Layer から順に Bottom Layer まで繰り返し行う.. 表 2. 4.1.2 識別子割り当て 各 Layer のリング構築後,リング参加ノードの識別子割. 検索に要する時間 [ms] の比較. Table 2 A comparison of the lookup time [ms] 手法. り当てを行う.図 3 に 8bit 識別子空間の例を示す.Top. CMSN. Layer では識別子空間をリング参加ノード数で割り,識別子. ランダムウォーク. DHT 構築. 検索1回当たり. 標準偏差. 96,789. 192. 196. —. 2,046. 1,861. を割り当てる(N2 の担当範囲は 0 から 42) .Middle Layer 以下では,一つ上の層の担当範囲をリング参加ノード数で 割って割り当てる.図 3 で,N2 は Top Layer で 42 が割り 当てられているが下位 Layer ではクラスタヘッド(N2)の. Predecessor(N11)がその値を引き継いでいる.(Middle Layer における N2 の担当範囲は 0 から 14 となる).これ は,どの層のリングでも時計回りで検索を行うためである.. 4.2 検索実行手順 図 3 において,N10 がエージェント A50 の検索リクエ ストを受信した場合を例に説明する.N10 は A50 のハッ シュ値(50)と自身のハッシュ値(28)を比較する.50 は. 28 よりも大きいため,Successor である N11 にリクエスト. 図 4. 検索時間の度数分布. Fig. 4 Frequency distribution graph of lookup time.. を転送する.N11 も同様の手順を踏み,リクエストを N2 に転送する.N2 は Middle Layer のクラスタヘッドである. 後に N15 が管理する A1 の位置情報を更新する.また,現. が,Top Layer のリング参加ノードでもあるため,4.1.1 で. 在の実装では仮に A1 の移動中に検索要求を受け取った場. 述べた手順によって上位リングと同一リングの Successor. 合は,A1 の移動終了を待ってから結果を返す.なお,A1. を両方を保持する.ここで,N2 は上位レイヤーとしての. は自身の位置情報が N15 で管理されていることを,検索手. 自身のハッシュ値(42)と 50 を比較し,上位レイヤーの. 順と同じ方法で知ることができる.. Successor(N3)にリクエストを転送する.N3 のハッシュ 値は 82 であるため,A50 の位置情報は N3 をクラスタヘッ. 5. 評価. ドとする Middle Layer 以下にあることが確定する.N3 は. CMSN の有効性を確認するため,WSN 上をランダムに移. 同様に値の比較,転送を繰り返すことで最終的に対象の. 動を繰り返すエージェントを検索する実験を行い,CMSN. ノードにたどり着く.. とランダムウォークそれぞれに要する, (1)検索時間, (2) 検索成功率,(3)消費電力を比較する.実験には TinyOS. 4.3 エージェントの移動 エージェントの移動中に検索が行われた場合検索は失敗 してしまう.したがって,エージェント移動前にエージェ. での消費電力測定を可能にした PowerTOSSIMZ[12] を利 用する.シミュレーションは 12 × 12 のグリッド状ネット ワークを想定する.リングの構築設定を表 1 に示す.. ントの位置管理を行っているノードに対し,移動中である ことを通知する.例えば,N15 で位置管理をされている A1. 5.1 検索時間. が N10 から N20 に移動行う場合を考える.A1 は移動前に. 表 2 にエージェント検索に要する時間の比較,図 4 に. N15 へ UnderMigration メッセージを送り,A1 の移動完了. 検索時間の度数分布を示す.CMSN による検索は多くが. *4. 100ms 以内,遅くとも 800ms 以内で完了する.一方,ラン. N5 より N1 の方が N3 に近いため,N3 の Successor に N1 が 選ばれてリングが完成してしまうという事態を防ぐ.. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. ダムウォークは CMSN より遅い場合も多く,7s を超える 66.

(5) 組込みシステムシンポジウム 2014 Embedded Systems Symposium 2014 表 3. ESS2014 2014/10/24. 検索成功率の比較. がわかる.CMSN は DHT 構築に電力を消費するが,検索. Table 3 A comparison of the successful lookup rate. が数回行われた時点で CMSN の方が全体的な消費電力は. 検索回数. 成功回数. 成功率. 低いことが分かる.また,7 回目の検索時には CMSN の. CMSN. 500. 500. 100%. バッテリ消費約 0.0728%に対し,ランダムウォークはその. ランダムウォーク. 500. 469. 93.8%. 2 倍以上の 0.1464%消費することがわかる.. 手法. WSN は数年にわたる長期間での運用となるため,エー 表 4. バッテリー消費比較. Table 4 A comparison of the battery consumption バッテリー容量: 21,600 [J] 手法. CMSN ランダムウォーク. DHT 構築. 検索1回当たり. 5.75 (0.027%). 1.62 (0.008%). —. 6.13 (0.028%). ジェントの移動による通信先変更が多くなると想定され る.つまり,CMSN とランダムウォークの検索時におけ る消費電力の差は,非常に大きくなると考えられる.した がって,CMSN におけるエージェント検索は消費電力を抑 えることができるため有効であると考える.. 5.4 関連研究 WSN では細かい転送制御が難しいため,フラッディン グを行って目的の情報を保持するノードに対して検索要求 を届けることが一般的である.その結果,膨大な経路制御 パケットやデータパケットによる無駄な電力消費,複数の 隣接ノードから同じデータを何度も受け取る improsion や, 地理的に近い場所で動作するノードが同じ情報を送信する. overlap の問題が存在する.これらの問題に対し,SPIN[13] 図 5. 消費電力の比較. Fig. 5 A comparison of battery consumption. ではメタデータを利用し,周辺ノードがデータを要求して いるか否かを事前に判定することで無駄なデータ送信を 削除し省電力を実現している.また,Direct Diffusion[14]. 場合も確認できた.また,CMSN では DHT 構築に約 97s. ではフラッディングによる検索要求/結果の転送履歴から. 要するが,これは運用開始時に一度だけの処理であり,数. ノード間のリンク強度を調整することで徐々に特定のノー. 年間の運用を想定している WSN では実用上問題ない.. ドにだけ限定して転送を行い,冗長性を排除している.. LEACH[15] やそれを改良した PEGASIS[16] では WSN に 5.2 検索成功率. クラスタの概念を導入し,クラスタヘッドだけが情報を集. 2.3 および 4.3 で述べたようにエージェントは移動するた. 約してベースステーションにデータを転送することによ. め,ランダムウォークによる検索が常に成功するわけでは. り上記の問題に対応している.これらの手法では省電力は. ない.これを確認するため検索の成功率を比較する.ラン. 実現できているものの,検索効率や速度に関しては考慮し. ダムウォークでは対象が見つかるまで隣接ノードにリクエ. ておらず検索対象が移動することも考慮されていない.ま. ストを転送し続ける.ただし,無限に転送することを避け. た,検索はベースステーションで行うことを想定しており,. るため,リクエストに TTL(Time To Live)導入し,残り. WSN 上のエージェントが任意の場所で検索することはで. 転送数が 0 になった時点で検索を終了し検索失敗とする.. きない.CMSN では,SPIN の 3-Stage Handshake を応用. 表 3 に検索成功率の比較を示す.TTL はノード数 144. してリング構築を行い,DHT を利用することで送信先を. に対して十分だと考えられる 1,000 とする.CMSN が成功 率 100%,ランダムウォークは 93.8%となった.つまり,ラ. 限定し,消費電力を抑えている.. CSN [4] は WSN に DHT を導入した最初の研究であり,. ンダムウォークによる検索失敗はエージェントが存在しな. CMSN は CSN の影響を強く受けている.3.2 でも述べた. いことを意味しないが,CMSN での検索失敗はエージェン. ように,CSN はリングの構築やデータ収集にベースステー. トが存在しないこと意味する.これは,エージェントの協. ションを利用することを前提にしているため,エージェン. 調で実現するアプリケーションにとって重要な性質である.. トベースのミドルウェアには適していない.また,検索は 常に最上位層のリングから行われるため,無駄な検索の転. 5.3 消費電力. 送が行われる可能性がある.CMSN は CSN を拡張し,任. 表 4 および図 5 に消費電力の比較を示す.センサノー. 意のノードから検索や,エージェントの移動時の検索にも. ドのバッテリ容量が 21,600J[12] であるため,CMSN は構. 対応できる機構になっている.一方,モバイルエージェン. 築に約 0.027%,検索に約 0.008%バッテリを消費し,ラン. トベースのミドルウェアにおいて,エージェントの位置を. ダムウォークは検索に約 0.028%バッテリを消費すること. 管理する機構として MLDS[17] が存在する.MLDS では. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. 67.

(6) 組込みシステムシンポジウム 2014 Embedded Systems Symposium 2014. 予め決められた数のノードがクラスタを形成し,クラスタ. ESS2014 2014/10/24. [5]. ヘッドがその配下に存在するエージェントの位置情報を管 理する.そして,各ノードに存在するエージェントを確認 するため,t 秒間隔で確認メッセージを交換しあうことで エージェントの移動に対応している.そのため,クラスタ. [6]. ヘッドとノード間で常にメッセージをやりとりする必要が ある.また,エージェントが移動してから,このメッセー. [7]. ジが交換されるまでの間は古い位置情報を返信してしまう 可能性がある.CMSN では,一度リングを形成した後は エージェント移動時にしか移動のためのメッセージ交換は. [8]. 行われない.また,移動中の検索要求はブロックするため, 常に正しい位置情報を返すことができる.. 6. まとめ. [9]. WSN では環境の変化,ネットワーク接続,分散運用など の問題に取り組む必要がある.また,ノードは電池で稼働 するため,これらのアプリケーションは効率的な運用を行. [10]. うことが求められる.これらの問題を隠蔽し,簡潔にアプ リケーションを記述するためにミドルウェアが提案され, その中でモバイルエージェントベースのミドルウェアには. [11]. 効果的に通信相手の位置を検索する手段が必要になるが, 既存のシステムでは実現されていない. 本研究では CSN を拡張し,WSN において効果的にエー. [12]. ジェントを検索する機構を実現し.検索時間,検索成功率, 消費電力を比較することで有効性を示した.今後の課題と して,現在はクラスタヘッドを固定しているため,そのノー ドだけ多くの電力を消費してしまう.そこで,LEACH な. [13]. どで導入されているクラスタヘッドのローテーションや, 定期的にノードをスリープさせることによって,システム 全体としての消費電力削減を実現する必要がある. 参考文献 [1]. [2]. [3]. [4]. Madden, S. R., Franklin, M. J., Hellerstein, J. M. and Hong, W.: TinyDB: An acquisitional query processing system for sensor networks, ACM Transactions on Database Systems, Vol. 30, No. 1, pp. 122–173 (2005). Abdelzaher, T. F., Blum, B. M., Cao, Q., Chen, Y., Evans, D., George, J., George, S., Gu, L., He, T., Krishnamurthy, S., Luo, L., Son, S. H., Stankovic, J. A., Stoleru, R. and Wood, A. D.: EnviroTrack: Towards an Environmental Computing Paradigm for Distributed Sensor Networks, Proceedings of the 24th International Conference on Distributed Computing System, pp. 582– 589 (2004). Chien-Liang, F., Roman, G.-C. and Lu, C.: Agilla: A Mobile Agent Midleware for Self-Adaptive Wireless Sensor Networks, ACM Transactions on Autonomous and Adaptive System, Vol. 4, No. 3, pp. 1–26 (2009). Ali, M. and Uzmi, Z. A.: CSN: A network protocol for serving dynamic queries in large-scale wireless sensor networks, Proceeding of the Second Annual Conference on Communication Networks and Services Research, pp. 165–174 (2004).. ⓒ 2014 Information Processing Society of Japan. [14]. [15]. [16]. [17]. Stoica, I., Morris, R., Karger, D., Kaashoek, M. F. and Balakrishnan, H.: Chord: A scalable peer-to-peer lookup service for internet applications, ACM SIGCOMM Computer Communication Review, Vol. 31, No. 4, pp. 149–160 (2001). Gelernter, D.: Generative Communication in Linda, ACM Transactions on Programming Languages and Systems, Vol. 7, No. 1, pp. 80–112 (1985). Butun, I., Morgera, S. D. and Sankar, R.: A Survey of Intrusion Detection Systems in Wireless Sensor Networks, IEEE Communications Surveys and Tutorials, Vol. 16, No. 1, pp. 266–282 (online), DOI: 10.1109/SURV.2013.050113.00191 (2014). Ratnasamy, S., Francis, P., Handley, M., Karp, R. and Shenker, S.: A Scalable Content-addressable Network, SIGCOMM Comput. Commun. Rev., Vol. 31, No. 4, pp. 161–172 (online), DOI: 10.1145/964723.383072 (2001). Zhao, B. Y., Huang, L., Stribling, J., Rhea, S. C., Joseph, A. D. and Kubiatowicz, J. D.: Tapestry: A Resilient Global-scale Overlay for Service Deployment, IEEE Journal on Selected Areas in Communications, Vol. 22, pp. 41–53 (2004). Hill, J., Szewczyk, R., Woo, A., Hollar, S. and Culler, David andr Pister, K.: System architecture directions for networked sensors, ACM SIGARCH Computer Architecture News, Vol. 28, No. 5, pp. 93–104 (2000). Gay, D., Levis, P., Behren, R., Welsh, M., Brewer, E. and Culler, D.: The nesC language: A holistic approach to networked embedded systems, ACM SIGPLAN Notices, Vol. 38, No. 5, pp. 1–11 (2003). Perla, E., Cath´ain, A., Carbajo, R. S., Huggard, M. and Goldrick, C. M.: PowerTOSSIM z: realistic energy modelling for wireless sensor network environments, Proceedings of the 3nd ACM workshop on Performance monitoring and measurement of heterogeneous wireless and networks, pp. 35–42 (2008). Heinzelman, W. R., Kulik, J. and Balakrishnan, H.: Adaptive Protocols for Information Dissemination in Wireless Sensor Networks, Proceedings of the 5th Annual ACM/IEEE International Conference on Mobile Computing and Networking, MobiCom ’99, New York, NY, USA, ACM, pp. 174–185 (online), DOI: 10.1145/313451.313529 (1999). Intanagonwiwat, C., Govindan, R., Estrin, D., Heidemann, J. and Silva, F.: Directed Diffusion for Wireless Sensor Networking, IEEE/ACM Trans. Netw., Vol. 11, No. 1, pp. 2–16 (online), DOI: 10.1109/TNET.2002.808417 (2003). Heinzelman, W. B., Chandrakasan, A. P. and Balakrishnan, H.: An Application-specific Protocol Architecture for Wireless Microsensor Networks, Trans. Wireless. Comm., Vol. 1, No. 4, pp. 660–670 (online), DOI: 10.1109/TWC.2002.804190 (2002). Lindsey, S., Raghavendra, C. and Sivalingam, K. M.: Data Gathering Algorithms in Sensor Networks Using Energy Metrics, IEEE Trans. Parallel Distrib. Syst., Vol. 13, No. 9, pp. 924–935 (online), DOI: 10.1109/TPDS.2002.1036066 (2002). Bhattacharya, S., Fok, C.-L., Lu, C. and Roman, G.-C.: MLDS: A flexible location directory service for tiered sensor networks, Computer Communications, Vol. 31, No. 6, pp. 1160–1172 (2008).. 68.

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Fig. 1 A WSN to detect and react to a fire. 1) An agent A detects a fire. 2) This agent notifies to an agent B.
Fig. 4 Frequency distribution graph of lookup time.
Table 3 A comparison of the successful lookup rate

参照

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