自己株 式 の取 得 にお け る開 示 制 度
李 秀 宕
目 次
1.は じ め に
2.ア メ リ カ に お け る 自 己 株 式 取 得 2‑1rl己 株 式 取 得 の 状 況 及 び 取 得 方 法 2‑2経 営 者 の 動 機
2‑3情 報 の 非 対 称 性 に よ り 生 じ う る 問 題 (1)割 安 な 価 格 に よ る 自 己 株 式 取 得 の 問 題 (2)虚 偽 の シ グ ナ リ ン グ の 問 題
2‑4白 己 株 式 取 得 の メ リ ッ ト
(1)一 時 的 な キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー の 効 率 的 な 分 配 (2)流 動 性
3.白 己 株 式 取 得 の 開 示 規 則 が 公 表 さ れ る ま で の 道 の り 3‑1規 則13e‑2不 採 択 の 経 緯
(1)SECv.Georgia‑PacificCorp.(1966) (2)規 則13e‑2の 当 初 試 案 (3)規 則13e‑2中 間 試 案 (4)規 則13e‑2最 終 試 案 3‑2規 則10b‑18の 内 容
3‑3SECに よ る 情 報 開,】槻 制 試 案 (1)試 案 の 主 旨 及 び 内 容
(2)コ メ ン トの 内 容 4.1用 ノ」竃規 貝ll(最 糸冬規Hり)
4‑1検 討 4‑2改 善 策 5.お わ り に
1.は じ め に
白 己 株 式 の 取 得 と は,株 式 会 社 が 剰 余 金 で 発 行 済 株 式 を 既 存 株 主か ら買 い 戻 す こ と で あ り,配 当 と と も に 会 社 の ペ イ ア ウ ト政 策 の 一 環 と さ れ る 。 日 本 で は2001年 にrl己 株 式 取 得 が 完 全 にri山 化 さ れ て か ら,rl己 株 式 の 取 得 が 非 常 に 増 え て き た 。 リー マ ン シ ョ ッ ク の 後,日 本 企 業 の 多 く は 将 来 の 成 長 投 資 に 備 え 手 元 資 金 の 確 保 を 優 先 課 題 と し て い る た め 白 己 株 式 の 取 得 額 は 減 っ た も の のIII,リ ー マ ン シ ョ ッ ク 前 の た と え ば2006年 に は,自 己 株 式 取 得 額 は 前 年 度 の1.5倍 の 約7兆7000億 「ljに達 し た 。 集 計 期 間 な
ど の 問 題 も あ る が,2006年 度 にL場 会 社 が 行 っ た 自 己 株 式 取 得 の 総 額 は 配 当 の 総 額 を 上 回 っ た よ う で あ る12'。ま た2007年 度 にL場 会 祉 の 自 己 株 式 取 得 の 総 額 は 過 去 最 高 だ っ た と い う 集 計 結 果 も あ る 「㌔ 外 国 に 眼 を 転 じ れ ば,ア メ リ カ の 主 要500社 に 対 す る 調 査 に よ る と,2006年 の1.半 期 の
自 己 株 式 取 得 の 総 額 は 配 当 総 額 の2倍 以 ヒに も 達 した と い う 中。 こ の よ う な 白 己 株 式 取 得 ブ ー ム は 一 体 何 を 物 語 っ て い る の だ ろ う か 。
Jensenの 「エ イ ジ ェ ン シ ー ・ コ ス ト理 論 」 に よ れ ば,経 営 者 は 必 要 以 i:に 会 社 の 規 模 を 拡 大 し た が る。 会 社 規 模 の 拡 大 は 経 営 者 の 権 限 を 大 き く し,収 入 の 増 加 に も つ な が る 。 会 社 に 余 剰 資 金15が 生 じ る と,こ の 余 剰 資
q〕2009年 度1二 期(4‑9月)のL場 企 業 のrl己 株 式 取 得 実 施 額 は3580億 円 で あ り, 前 年 同 期 比83%減 少 した 。 日 本 経 済 新 聞2009年10月14日 朝 刊16面 。
(21砂 川 伸 幸=北 川 英 隆=杉 浦 秀 徳 『日 本 企 業 の コ ー ポ レ ー トフ ァ イ ナ ン ス 』(II 本 経 済 新 聞 社,2009年)275頁 。
(3)日 本 経 済 新 聞2008年5月26rl朝HIl面 。
(4)花 枝 英 樹=榊 原 茂 樹 編 著 『資 本 調 達 ・ペ イ ア ウ ト政 策 』(中 央 経 済 社,2009年) 254頁 。
〔5)余 剰 資 金 と は,株1三 に と っ て 有 利 な 投 資 を した 後,株isの 期 待 利 益 率 を 上 回 る
一2一
自己 株 式 の 取 得 に お け る開 示 制 度
金 の 使 途 に つ い て 株 主 と経 営 者 との 問 で 利 害 が 対 、アし,経 営 者 は余 剰 資金 を 利 己 的 に 使 う イ ンセ ンテ ィブ を もつ['1。そ うで あ る な らば,白 己 株 式 の 取 得 は会 社 か ら財産 を 支払 い,会 社 の 資 産 や 規 模 を 縮 小 す る こ とに な るた め,経 営 者 は こ の 手法 を 好 ま な い の で は な い か,と い う疑 問 が 生 じ る。 し か し,こ の 疑 問 に反 し,経 営 者 は こ れ ま で 自 己株 式 の取 得 を 熱心 に実 施 し て きた が,こ れ は 一体 な ぜ な の だ ろ うか 中。 建 前 と して は,株 一1三のT視 , 経 営 環 境 に 対 応 した 機動 的 な 資 本 政 策 の 実 行 や,一 株 あ た りの 資 本効 率 の
向一L等が理 山 と して 挙 げ られ るが,し か し本 当の と こ ろ は果 た して そ の 通 りな の だ ろ うか。 会 社 の経 営 者 は 自己 株 式 の取 得 の ど こ に魅 力 を 感 じるの か 。 会 社 内部 の情 報 に精 通 し,か つ 会社 の株 式 を保 有 す る経 営 者 は,ペ イ ア ウ ト政 策 の 一 環 の はず の 仕 組 み を一 般 株 ・1三の利 益 に な らな い と ころ で使 わ な い だ ろ うか 。
株 主 は 会 社 か ら持 株 比 率 に応 じ平等 に配 当を 受 け取 る。 しか し,自 己株 式 の取 得 は,取 得 価 格 が 割 安 な 場 合,残 存 株 一kが売 却 株i三の 犠 牲 にお い て 利 益 を得 る こ と に な り,割 高 な場 合 は そ の逆 とな る。 加 え て 会 社 の 内 部 情 報 に精 通 す る経 営 者が 同時 に株i三で もあ り,し か も比 較 的 高 い 割 合 の 株 式 を 所 有 す る場 合,前 述 した よ う な株L間 の不 平等 な取 り扱 い の 問題 だ け で
よ う な 有 利 な 投 資 機 会 が な い 状 況 ドで 残 っ た 資 金 の こ と で あ り,フ リ ー ・キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー と も い う 。
16)MichaelC.Jensen,AgencyCostsofFreeCashFlow ,CorporateFinance,and Takeovers,76Amer.Econ.Rev.323(1986)(http://papers .ssrn.com/abstract=
99.580)(Dec.10,2009).
(7)も っ と も,エ イ ジ ェ ン シ ー ・ コ ス ト理 論 に 基 づ け ば,会 社 がrl己 株 式 取 得 を 通 じ て 余 剰 資 金 を 株 主 に 還 元 す る こ と は,余 剰 資 金 に つ い て の エ イ ジ ェ ン シ ー ・コ ス トを 減 少 さ せ る 。 そ れ に よ り,非 効 率 な 過 剰 投 資 を 抑 制 で き,企 業 価 値 を 高 め る こ と が で き る の で,会 社 や 株 主 に と っ て は 望 ま し い 。 た だ こ れ は,あ く ま で も 結 果 に 対 す る 説 明 で あ り,経 営 者 の 動 機 の 説 明 と は い え な い 。
な く,経 営 者 が 利 己的 に な りかね な い とい う問 題 も内 在 して い るの で あ る。
会 社 の株 主や 投 資者 は,金 融 商 品 取 引法 及 び東 京 証 券 取 引所 な ど金 融 商 品取 引所(以 ド 「取 引所 」 と略 す)の 自 主規 制 に お け る情 報 開 示 の 規 制 を 通 じて,会 社 側 が 開 示 した 自 己株 式 取 得 に 関す る一 定 の情 報 しか 知 る こ と が で き な い。 彼 ら と,情 報 を 発 信 す る側 に 立 ち,し か も会 社 経 営 に関 し独 自の情 報 も有 す る経 営 者 との 間 に は,情 報 の非 対 称性 とい う問題 が存 在 す る。 この情 報 の非 対 称性 ゆ え に,経 営 者 は 自己株 式 の取 得 を通 じて利 益 を 得 よ う とす る イ ンセ ンテ ィブを持 つ。 また現 在 の情 報 開 示 制 度 の もとで は, 得 られ る情 報 が 限 られて い るため,経 営 者 に よ る自 己株式 取 得 の 判断 が誤 っ て い るか ど うか に つ い は 判 断 しに くい。 そ もそ も 自己株 式 の取 得 に 関す る 開 示 規 制 は 一 体 ど うい った 内 容 な の だ ろ うか。 こ こで,金 融 商 品取 引法 と 取 引 所 の 自 主規 制 に お け る開 示 規 制 の 内 容 を 明 か に して お く必 要 が あ る。
1994年 に 自 己株 式 取 得 の 一 部緩 和 の 改iT三を 受 け て,当 時 の 証 券 取 引法 は 初 め て,自 己 株 券 買 付 状 況 報 告 書 の 開 示 規 制 を 定 め た 。 他 方,「 会社 が い か な る 自 己株 式 の 取 得 ・消 却 等 を 行 って い るか とい う こ とは,当 該 会 社 の 株 ヒの み な らず,一 般 の 投 資 者の 投 資 判 断 に 与 え る 影響 が 人 きい̀"'Jと い う証 券 取 引 法 審 議 会 の 報 告書 の 記 述 か ら,開 示 規 制 の 趣 旨が,投 資 者 の 投 資 判 断 に資 す る と い う点 に あ る こ とが 窺 い知 れ る。 ま た,2001年 の 白 己株 式 取 得 の 完 全rl由 化 と い う商 法 改iEを 受 けて,当 時 の 証 券 取 引 法 は, 自 己株 式 取 得 制 度 の 利 用 が さ らに増 え る こ とを 予想 し,そ れ に関 す る情 報 開 示 の規 制 内容 を一 層 充実 させ た。 具 体 的 に は,i三 た る開 示 内 容 と され る 自 己株 券 買付 状 況 報 告 書 が あ る ほか,有 価 証 券 報 告 書及 び有 価 証 券 届 出 書 に ま で 開 示 規 制 が 及 ん だ(田 証 券 取 引 法(現 在 の 金 融 商 品 取 引法,以 下
「金 取 法 」 と略 す)24条 ノ6)。 と くにrl己 株 式 買 付 状 況 報 告 書の 提 出 は,
(8}証 券 取 引法 審 議 会 ・公 正取 引特 別 部 会 報 告 「自己 株 式取 得 等 の 規 制緩 和 に 伴 う 証 券 取 引 制 度 の 整 備 につ いて 」(1994年2月7日)。
一4一
自 己 株 式 の取 得 に お け る開 示 制 度
従 来 の11W'1'期ご とか ら月 ご と に改 正 され た 。 これ はrl己 株 式 取 得 の解 禁 に 伴 い,ri己 株 式 取 得 の実 施 が よ り頻 繁 に行 わ れ る こ とか ら,適 時 開 示 の 要 請 を 重視 して 開 示 時 期 を 短 く した もの で あ る。 つ ま りrl己 株 式 の 取 得 に関 す る株1三総 会 の 決議 また は取 締 役 会 の決 議 が あ った場 合 に,'11該 決 議 が あ っ た 株1三総 会 ま た は 取 締 役 会 の終 結 した 日の 属 す る 月 か ら取 得 期 間(1年 を 超 え る こ とが で き な い,会 社 法156条1項)の 満 了 す る 日が 属 す る月 まで の 各 月 ご と に,ri己 の 株 式 に係 るr.場 株 券 等 の 買 付 状 況 を 各 報 告 の 翌 月 1511ま で に 内 閣 総 理 大 臣 に提 出 しな けれ ば な らな い と さ れ る(金 取 法24 条 ノ6)。rl己 株 券 買 付 け状 況 報 告 書の 記 載 項 目 は,「 財 務 諸 表 等 の 用 語, 様 式 及 び 作 成 方 法 に 関 す る 規 則,企 業 内容 等 の 開 示 に 関 す る 内 閣 府 令」
(以 ド 「開 示 府 令 」 と略 す)に よ る と,① 株 主総 会 ま た は 取 締 役 会 で の 決 議状 況,② 報 告 期 間 内 に お け る取 得L̀1己株 式 数 及 び価 額 の総 額,③ 報ifi 末現 在 の 累 積 取 得 自 己株 式 及 び価 額 の総 額,④ 取 得 白 己株 式 の進 捗 状 況, で あ る 巳"。また,公 開 買 付 け に よ り自 己株 式 を取 得 して い る場 合,そ の 概 要 等 を欄 外 に 記 載 す る こ と も求 め て い る。
金 融 商 品取 引 法Lの 規 制 の み な らず,取 引所 の 白is規 制 に お け る適 時 開 示 制度 で は,L場 会 社 は 自 己株 式 の 取 得 の 決 定,個 々 の 白 己株 式 取 得 や取 得 の終r等 を速 や か に 開 示 す る こ とが 義 務 づ け られ て い る1"。
以iの よ うに,白 己 株 式 の 取 得 を 実 施 す る会 社 は,取 締 役 会 等 の 機 関 が 決 定 した 白 己株 式 取 得 計 画 の 内 容 や,実 際 に 自 己株 式 を 取 得 して いな くて もそ の 取 得 状 況 ・進 捗 状 況 を 毎 月 報 告 しな け れ ば な らな い 。 また 取 引 所 の ri主 規 制 に お け る適 時 開 示 も行 わ な け れ ば な らな い こ と にな る。 会 社 の 株
1三や 投 資 者 は,金 融 庁 のEDINET(ElectronicDisclosureforInvestors'
(91開 示 府 令19条 ノ3及 び 開 示 府 令 第17号 様 式 。
qO)東 京 証 券 取 引 所 『会 社 情 報 適 時 開 示 ガ イ ド ブ ッ ク2009年 版 』(東 京 証 券 取 引 所, 2009{群)129‑145」 ∫工o
NETwork)及 び取 引所 の ホ ー ム ・ペ ー ジに ア クセ スす れ ば,会 社 のrl己 株 式 の 取 得 状 況 等 を 知 る こ とが で き る。 しか し,こ うい った 情 報 は 取 得 後 の 情 報,つ ま り事後 開 示 を 中心 とす る もの で あ る。 事前 の開 示 につ い て は, 実 行 され るか ど うか が 分 か らな い,い わ ゆ る取 得 計 画 だ けで あ る。
これ らの 開 示 規 制 が,前 述 した 株iモや 投 資 者 と経 営 者 の 問 の 情 報 の 非 対 称 性 に よ り生 じう る問 題 に対 処 す るた め に ト分 で あ るの か とい う点 に つ い て は,こ れ まで あ ま り検 討 され て こな か った よ う に思 う。 実 は,ri己 株 券 買 付 状 況 報 告 蒔を 中 心 と した 情 報 開 示 の 規 制 が 定 め られ た'11初,自 己 株 式 取 得 の 解 禁 に 多人 な 影 響 を 及 ぼ した ア メ リカ にお い て,ま だ 自己 株 式 の 取 得 に 関 す る開 示 規 制 が 定 め られ て い な か った た め,ア メ リカに 比 べ て か な り踏 み込 ん だ 規 制 が な され た と思 わ れ る一 面 さえ あ る。 た だ,自 己 株 式 取 得 をrl山 化 した 当初,自 己株 式 の 取 得 が 株 価 に 影 響 を 与え う るか に つ い て は 疑 問 視 す る見 解 が 有 力 で あ った ほか,白 己 株 式 の 取 得 そ れ1̀1体歴 史 が 浅 い こ と もあ って,開 示 規 制 の 必 要 性 や 効 果 に つ い て は ト分 議 論 が 尽 く され た とは い え ず,開 示 規 制 の あ り方 に つ い て も必 ず しも一 定 の コ ンセ ンサ ス が 得 られ て い た とは い い 難 い0
他 方,従 来 か ら 自 己株 式 取 得 が と くに 禁 止 され て い な い ア メ リカ で は,
(11)白 己 株 券 買 付 状 況 報 告 酵 に よ る情 報 開 示 は,「1己 株 式 の 買 付 け が イ ンサ イ ダー 取 引 や 相 場 操 縦 等 の 不 公d諏 引 に 用 い られ る の を 未然 に 防 止 す る 効 果 が 期 待 され て い る と い う 見解 が あ る(近 藤 光 男 二,畳源 和 志=黒 沼悦 良区『金融 商 品 取 引 法 人 門』
(商'挽 去務,2009)254頁)。 他 方,1'1己 株 式 の取 得 が 投 資 判 断 に 亟 要 な 影響 を 与 え る とは 必 ず しもい い難 く,rl己 株 券 買 付状 況 報 告,韮}によ る 開 示 の必 要性 及 び 効 果 は 低 い の で は な い か と い うSL解 が あ る(川lI恭 弘 「金 庫株 と証 券取 引 法 改IE。
デ ィ ス ク ロ ジ ャー 規 制 」 証 券 取 引法 研 究 会r金 庫 株 解 禁 に伴 う商 法 ・証 券取 引法 (別 冊商 事法 務251}}』(商 喋蓼法 務,2002)45頁 一46頁,49頁 一50頁(川 口発ii))。
ま た 中 村聡=鈴 木 克 昌=峯 岸 健 太 郎=根 本 敏 光;齋 藤 尚 雄 『金 融 商 品 取 引法 資 本ll∫場 と 開示 編 』(商 事 法務,2008年)325頁 の 注87も 参照 され た い。
一6
白己 株 式 の 取 得 にお け る開 示 制 度
SEC(SecuritiesandExchangeCommission証 券 及 び 取 引 所 委 員 会,以 ド 「SEC」 と 称 す)が2003年12月 に,1934年 証 券 取 引 所 法(Securities ExchangeActof1934,以 ド 「取 引 所 法 」 と 略 す)の 下,規 則10b‑18
(い わ ゆ る セ ー フ ・ハ ー バ ーil2り の 改itとrl己 株 式 取 得 の 情 報 開 示 の 規 制 に 関 す る 最 終 規 則(finalrule)q'̀1を 公 表 す る ま で,白 己 株 式 取 得 に 関 す る 特 別 な 情 報 開 示 規 制 は 存 在 し な か っ た 。2002年 に,SECが 自 己 株 式 取 得 に 関 す る 情 報 開 示 の 規 制 を 提 案 した の は,2001年 の9・11テ ロ 事 件 が 大 き な き っ か け だ っ た 。 当 時SECが,証 券rl∫場 を 震 憾 さ せ た こ の 緊 急 事 態 に 対 応 す る た め に,一 時 的 に 規 則IOb‑18に お け る 自 己 株 式 取 得 の 時 間 や 数 量 の 制 限 を 外 す と い う 緊 急 措 置 を 採 っ た 。 し か し な が ら,規 則IOb‑
18は 情 報 開 示 の 義 務 に つ い て 定 め て い な い た め,こ の 緊 急 措 置 の 効 力 が 発 生 す る 間 に,SECは 会 社 自身 に よ る 白 己 株 式 の 売 買 高 と 会 社 以 外 の 者 に よ る 売 買 高 を 正 確 に 把 握 す る こ と が で き な か っ た 。 会 社 に 定 期 的 にrl己 株 式 取 得 に 関 す る 情 報 を 開 示 す る 義 務 を 求 め る こ と は,投 資 者 に 投 資 に 関 す る 重 要 な 情 報 を 提 供 す る こ と に な る こ と は も ち ろ ん だ が,SEc自 身 に と っ て も,会 社 に よ る 自 己 株 式 取 得 の 規 模 や そ の 取 得 が 市 場 に 及 ぼ す 影 響 を 評 価 す る 際,ま た 将 来 に お い て 緊 急 事 態 に 対 す る 措 置 を 探 る の に 有 益 だ と 考 え ら れ る か ら で あ る 川〕。
と こ ろ で,開 示 制 度 は 連 邦 証 券 取 引 法 の 根 幹 で あ る と い え る に も か か わ らず,な ぜrl己 株 式 取 得 に 関 す る 情 報 開 示 制 度 の 整 備 が2003年 ま で な さ れ て い な か っ た の か 。SECが 最 初 に 情 報 開 示 制 度 を 提 案 し た 際,何 を 考
(12)セ ー フ ・ ハ ー バ ー に お け る 制 限 を 守 れ ば,取 引 所 法 の 相 場 操 縦 違 反 の"∫ 能 性 は か な り の 程 度 減 縮 さ れ る こ と に な る 。
(131FinalRule:PurchasesofCertainEquitySecuritiesbytheIssuer‑andOthers , htしp://www.sec.gov/rules/fillal/33‑8335.htm(Dec.10,2009).
(141ProposedRule:RuleIOb‑18andPur°chasesofCertainEquitybytheIssuer・
andOthers,http://www.sec.gov/rules/proposed/33‑8160.htm(Dec.10,2009).
慮 した の か。 規 則 に よ りカ バ ー され る 開 示情 報 は 市場 に と って 有 益 な情 報 で あ るか。 投 資 者 に と って 意 味 の あ る タ イム リー な情 報 な の か。 ま た規 制 内 容 は 十 分 な の か 。 そ して 最 終 規 則 に 至 るま で に 寄 せ られ た パ ブ リ ッ ク ・ コ メ ン トにSECは ど う対 応 した の か。 これ らの,規 則 制 定 過 程 に か か わ る一 連 の 疑 問 を解 くこ と に よ って,日 本 の 白 己株 式 取 得 にお け る情 報 開 示 規 制 の位 置付 け を検 討す る た め の 重 要 な ヒ ン トを得 る こ とが で き るの で は な いか と思 わ れ る。
さ ら に,2003年 に 公 表 され た 開 示 規 則 の 内 容 につ い て は,自 己 株 式 取 得 に お け る株1三や投 資 者 と経 営 者 との情 報 の非 対称 性 に よ り生 じ うる問 題 に 対 処 す るの に な お 不 一卜分 だ と して,よ り確 実 な情 報 を提 示 で き る よ うな 事 前開 示 と い うア プ ロー チ も提 言 され て い る嚇。 こ う して み て み る と,ア メ リカで は 臼 己株 式 取 得 の 歴 史が 非 常 に長 い に もか か わ らず,こ れ に 関す る情 報開 示 規 制 の整 備 は長 年 されて こな か った こと,規 則 が で き るま で様 々 な試 みが あ り,そ して近 時 の 自 己株 式 取 得 ブ ー ム に対 し警 鐘 を 鳴 らす た め さ らな る開 示 規 制 が必 要 だ と唱 え られ て い る こ とが分 か る。 つ ま り,過 去 ・ 現 在 ・将 来 とい う軸 で 開 示 制 度 を 考察 す る こ との 重 要性 が明 らか と な る。
この 考 察 は,短 期 間 で 立 法 に よ り問 題 解 決 を 図 ろ う と した1」本 に と って, ̀Ll過 程 で 欠 けた 部 分 を 補 い,そ して 将 来 的 にil本 に 合 う開 示 制度 の あ り 方 を 探 るた め に不 可欠 で あ る。
な お,本 稿 の 考 察 対 象 は取 引所 を 利 川 す る 自 己株 式 取 得 に 限 定 す る。 構 成 は以 ドの 通 りで あ る。 まず ア メ リカ に お け る 白 己株 式 の 取 得 状 況 を 明 ら か に した ヒで,情 報 非 対称 性 に かか わ る問 題 及 びn己 株 式 取 得 に よ る メ リ ッ トを 検 討 す る。 そ の 次 に,SECに よ る 開 示 規 則 が 公 表 され る ま で の 道 の りを探 ったtで,開 示 規則 の 内容 につ い て,日 本法 と比 較 しなが ら,開 示
(15)JesseNZ.Fried,Informer!TradingandFalseSignalingwithOpenMarket Repurchases,93Cal.L.Rev.1323,1330‑1331(2005).
一g一
rl己 株 式 の 取 得 に お け る開 示 制 度
の 有効 性 と い う視点 か ら検 討 を 行 う。 最 後 に, る 日本 法 に と って の 教 訓 を 指摘 した い。
ア メ リカの 経験 か ら得 られ
2.ア メ リ カ に お け る 自 己 株 式 取 得
2‑1自 己 株 式 取 得 の 状 況 及 び 取 得 方 法
ア メ リ カ で は,会 社 に よ るri己 株 式 の 取 得 が と く に 禁 止 さ れ て い な い に もか か わ ら ず,1980年 代 初 期 ま で,ri己 株 式 の 取 得 は あ ま りみ ら れ な か っ た 。80年 代 後 半 か ら じ わ じ わ 増 え 始 め,そ して90年 代 中 頃 か ら そ の 勢 い が さ ら に 増 し,つ い に1998年 に は,ア メ リ カ の 史L初 め て,rl己 株 式 取 得 で 投 資 者 に 分 配 し た 現 金 総 額 が 配 当 総 額 をL回 っ た の で あ るIfi1。21世 紀 に 入 っ て か ら も,白 己 株 式 の 取 得 は 株1三 に 対 す る 利 益 還 元 策 と し て,現 金 配'liよ り ウ ェ イ トが 高 ま っ て い る。 た と え ば1三 要500祉 が2006年1月 か ら6月 ま で に 行 っ た1'1己 株 式 取 得 の 総 額 は,前 年 同 期 比33%の2268億
ドル で,配 当 総 額1077億 ドル の2倍 以 ヒで あ っ た[F1。
ア メ リ カ に お い て は,会 社 が 自 己 株 式 を 取 得 す る に は 主 に 三つ の ノ∫法 が あ る 。(D公 開 買 付 に よ る1̀1株 式 取 得(Tender‑OfferRepul℃hase,以
ドTORと 略 す),(2)ダ ッ チ ・オ ー ク シ ョ ン に よ る 自 己 株 式 取 得(Dutch AuctionRepurchase,以 ドDARと 略 す)18卜,(3)公 開 市 場 に お け るri己
(16)GustavoGrullon=DavidL.Ikenberry,WhatDoWeKnowAhoutStockRe‑
purchases,13J.AppliedCorp.Fin.31,31(2000).
(17)日 本 経 済 新 聞2006年9月7日 朝 刊7面 。
1181ダ ッ チ ・オ ー ク シ ョ ン で は,会 社 は 事 前 に 買 い た い 価 格 を 一 定 の 幅 と し て 設 定 し て お く。 こ の 幅 の 最 低 人 札 価 格 は 通 常 市 場 価 格 よ り は 少 し高 く 設 定 さ れ る 。 会 社 は 人 札 価 格 の 低 い 株i三 か ら 順 次 受 け 入 れ,募 集r定 株 式 数 に 達 し た 時 点 で の 価 格 で,受 け 入 れ た す べ て の 株1:を 対 象 に 買 い 取 る と い う 方 式 で あ る 。 こ の ノ∫式 に よ り,売 却 株 主 に 支 払 う プ レ ミア は 価 格 を 固 定 し た 公 開 買 付 に よ るr1己 株 式 取 得
株 式 取 得(Open‑MarketRepurchase,以 ドOMRと 略 す)で あ る 。(3) のOMRに よ っ てrl己 株 式 を 取 得 す る 会 社 は,ま ず 壁ド 前 に 取 得 計 画 を 公 表 す る。 そ の 内 容 は ① 取 得 期 間,② 取 得 数 量,③ 証 券 市 場 の 動 向 等 に よ っ て は 取 得 計ptfjの通 り に 行 わ な い こ と が あ る こ と の 予 告 等 で あ る。 こ の よ う に 取 得 計 画 を 公 表 して も,そ れ を 会 祉 が 必 ず 計 画 通 り実 行 しな け れ ば な ら な い,と い う わ け で は な い 。 こ れ に 対 し(1)のTORは,会 社 が 公 開 買 付 の 公 告 を 行 っ た ら,そ の 内 容 の 実 行 を 義 務 づ け ら れ る ヒ,第 三者 に よ る 公 開 買 付 と実 質 的 に 同 一 の 情 報 開 示(規 則13e‑4及 び レ ギ ュ レ ー シ ョ ン14E) や プ レ ミ ア ム の 支 払 い を 求 め ら れ る 。 そ の た め 多 く の 会 社 はTORを 避 け て き た 。 実 際 の 利 川 率 を 見 比 べ る と,TORよ り はOMRの 方 が 圧 倒 的 に 多 く 利 用 さ れ て い る こ と が 分 か る 。1980年 か ら1999年 ま で に 公 表 さ れ た 自 己 株 式 取 得 計 画 の 全 体 に お い て,OMRに よ る も の は92%をIliめ て い る 。TORの 多 くは1980年 代 初 期 に 行 わ れ,敵 対 的 企 業 買 収 に 対 す る 防 衛 策 と し て 利 川 さ れ て い た 。OMRはTORよ り コ ス トが 低 い こ と,さ ら に 実 施 時 期 や 実 施 規 模 を 自 山 に 選 択 で き る と い う 柔 軟 性 が あ る た め,現 在, 株i三 に 現 金 を 分 配 す る 方 法 と して は 最 も利 川 しや す い と さ れ て い る 曲 。
2‑2経 営 者 の 動 機
経 営 者 が な ぜ 配 当 よ りr1己 株 式 の 取 得 を,し か もOMRを 通 じ た 取 得 を 好 む の か に つ い て,ア メ リ カ で は 多 くの 実 証 研 究 が 行 わ れ,い くつ か の 仮 説 が 確 /.され つ つ あ るzn。 本 稿 は 情 報 非 対 称 性 と い う 問 題 に 着 眼 し,諸
の そ れ よ り'F均 し て 約15〜20%低 い 。JesseNT.Fried,Insides°Signalingan〔iIn‑
siderTradingwithRepurchaseTenderOffers,F7U.Chi.L.Rev .421,429
(2000).
1191WilliamW.B ・atton,TheNewDividendPuzzle,93Geo.L..J.845 ,850‑851 (?005).
⑳ 経 営 者 の 動 機 を 合 理 的 に 説 明 し よ う と す る た め に,シ グ ナ リ ン グ 仮 説,フ リ ー ・
一10一
自己 株 式 の 取 得 に お け る開 示 制 度
仮 説 の う ち,「 シ グ ナ リ ン グ 仮 説 」 の み を 取 りLげ る。 こ の 仮 説 は,効 率 的 市 場 仮 説 に 基 づ い て 発 展 して き た 伝 統 的 な フ ァ イ ナ ン ス 理 論 と 異 な り, 市 場 が 非 効 率 で あ る こ と を 前 提 と す る も の で あ る 。 会 社 と 市 場 と の 間 に 情 報 の 格 差 が あ る 場 合,会 祉 は 信 悪 性 の あ る 情 報 を 提 供 す る こ と に よ っ て, 情 報 の 格 差 を 是il三す る こ と が で き る 。 た と え ば,会 社 の 株 価 が 市 場 に 過 小
評 価 さ れ て い る場 合,会 社 は こ の 情 報 格 差 をtlす た め,自 己 株 式 の 取 得 を 公 表 す る こ と に よ り,信Z性 の あ る シ グ ナ リ ン グ を 市 場 に 送 る こ と が で き る 脚21'。こ の シ グ ナ リ ン グ に は 一通 り の 説 明 が あ る 。 一 つ1‑iは,自 己 株 式 の 取 得 は,将 来 利 益 や キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー が 増 加 す る と い う経 営 者 の 期 待 を ll∫場 に 伝 え る た め に 行 わ れ る,と い う も の で あ る 。 も う 一 つ は,経 営 者 は 情 報 を 市 場 に 伝 達 す る こ と が で き な い の で,自 己 株 式 の 取 得 を 利 川 し て, 株 価 に よ る 市 場 評 価 に 同 意 し な い こ と を 表 す た め にri己 株 式 を 取 得 す る, と い う も の で あ る 燃 。 い ず れ に し て も,結 果 と し て 株 価 が 過 小 評 価 さ れ て い る と い う シ グ ナ リ ン グ を 市 場 に 送 る こ と に 変 わ り は な い 。 も っ と も シ グ ナ リ ン グ の 強 度 に つ い て は,TORとDARよ り はOMRの 方 が 弱 い と い う こ と も 指 摘 して お き た い12:い。 な お,白 己 株 式 の 取 得 を 実 施 した 後,会 社 の 収 益 が 本 当 に 経 営 者 の 期 待 した 通 り に1が る か と い う 点 に つ い て は,そ
キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー ・エ イ ジ ェ ン シ ー ・ コ ス ト仮 説,税 金 関 係,資 本 市 場 分 配 仮 説,配 当 とrl己 株 式 取 得 の 代 替 仮 説 等 が あ る 。 諸 仮 説 は お 圧 い に 排 斥 す る も の で は な い 。 白 己 株 式 を 取 得 す る 決 定 に は 複 数 の 要 素 が 絡 み 合 う こ と が あ る か ら で あ るQ詳 し く は,Grullonニlkengerry,suprariOtB16,at35‑41.花 枝=榊 原,前 掲 注(4)258‑274頁,太 山 浩 司 「ペ イ ア ウ ト政 策 と 資 本ll∫場 」 証 券 ア ナ リ ス トジ ャ ー ナ ル,2009年8月}},5‑6頁 。
@1)砂 川 伸 行 「白 社 株 買 人 れ 消 却 と 株 価 動 向 の 理 論 」(デ ィ ス カ ッ シ ョ ン ・ペ ー パ ー, 2002向 三)7‑131㌦ 〔Q
1221Grullon=Lkenberry,supranote16,at35.
⑬Ok‑RialSong,IliddenSocialCostsofOpenMarketShareRepurchases,27 10wa.J.Corp.L.925,996‑447(2002).
れ を 肯 定 す る 報 告 も,否 定 す る 報 告 も あ る 。 た だ し,OMRの 計 画 が 公 表 さ れ た 後,多 く の 場 合 に 株 価 が1.昇 す る こ と は 多 く の 実 証 研 究 に よ り 肯 定 さ れ て い る 。 具 体 的 な 数 値 と し て は,た と え ばOMRの 場 合 は 株 価 の ヒ 昇 率 が 約4%で あ る の に 対 し,TORの 場 合 は 約15%で あ る,と い う 報il:it が あ る12㌔
シ グ ナ リ ン グ 仮 説 に よ れ ば,自 己 株 式 の 取 得 に よ っ て 市場 と 会 社 の 情 報 格 差 を 是 正 す る こ と が で き る と い う こ と で あ る が,こ の 情 報 格 差 と い う 問 題 は や は り 過 小 評 価 す べ き で は な い 。 と い う の は,会 社 と 市 場 の 問 の 情 報 格 差 は,結 局 の と こ ろ,経 営 者 と 株1三 ・投 資 者 の 問 の 情 報 格 差 を 意 味 し, 会 社 の 内 部 情 報 に 精 通 して い る 経 営 者 が 逆 に こ の 情 報 非 対 称 性 を 利 己 的 に 利 川 す る,と い う 可 能 性 を 否 定 で き な い か ら で あ る 。 以 下 で は,こ の 情 報 非 対 称 性 が も た ら す 問 題 を 明 ら か に したLで,ri己 株 式 取 得 の 株}:・ 投 資 者 に と っ て の メ リ ッ トに つ い て 考 え た い 。
2‑3情 報 の 非 対 称 性 によ り生 じう る問 題 (1)割 安 な 価 格 に よ る 自 己株 式 取 得 の 問 題
1̀1己株 式 の 取 得 は,外ILI.,会 社 が 売 却 株 主か ら現 金 で 株 式 を 買 い戻 す こ とで あ るが,実 際 に は:つ の 取 引か ら構 成 され る もの とみ る こ とが で き る。 つ ま り① 残 存 株 主が 取 得 価 格 で 売 却 株1三か ら株 式 を買 い取 る。 ② 会 社 が 残 存 株 ヒに対 して配 当 を行 い,そ れ に よ り① で生 じた,既 存株1三が 負 担 した と み な され る 費用 を埋 め 合 わせ る。 ② の配,i.1の対 象 は残 存 株 主 のみ で あ り,株 主 間 の 不'ド等 の 問題 は生 じな い。 問題 な の は① の 部分 で あ る。 取 得 価 格 が株 式 の 真 の価 値 よ り割安 の場 合,両 者 間 の 差額 に該 当す る富 は売 却 株i三か ら残 存 株kへ 移 転 す る こ とに な る1251。ぼい換 え れ ば,残 存 株i三は
(2tiUrullon=lkenbei‑ry,supranote16,at37.
125)Fried,supranote15,at1345‑1346.
一12
自 己株 式 の取 得 に お け る 開示 制度
売却 株1三か ら割 安 な 価 格 で 株 式 を 買 い 取 る とい う こ と にな る。 また 株i三間 の富 の 移 転 に つ い て は,会 社 の 経 営 者 が 比 較 的 高 い 持 株 比 率 でr1社 株 を 所 有 す る場 合,こ の よ う な割 安 な 臼 己株 式 取 得 は 売 却 株 主rl己 株 式 の 取 得 につ い て,取 得 価 格 が 公 正 で あ るか を 判 断 で き る ほ どの 情 報 を も って い な い の 犠 牲 に お い て,経 営 者 を 含 め た 残 存 株 主 が 富 を得 る こ と に な る。 実 際 に 自己 株 式 取 得 を 公 表 す る会 社 で は,経 営 者 の 自社 株 の 持 株 割 合 は'r均 して 約15%〜20%で あ る と い う報 告 が あ る蜘 。 この こ と を 考 え る と,経 営 者 自身 が 会 社 内 部 の 情 報 に 精 通 して い る こ とを 利 用 し,イ ンサ イ ダー取 引 の 規 制 に 反 しな い 範 囲 で 割 安 な 価 格 で 自 己株 式 取 得 を す れ ば, か な りの 利 益 を 得 られ る こ とが 分 か るだ ろ う。rl社 株 が 割 安 だ と分 か って い て も,経 営 者 が 自己 資 金 で 自社 株 を 買 い 増 せ ば い い の で は な い か と い う 反 論 もあ り うる が,イ ンサ イ ダー 取 引 規 制 の 一 環 と され る短 期 売 買 差 益 規 制(取 引所 法16条(b)12Tト)に ふ れ る11∫能 性 が あ る。 こ れ に 対 し,経 営 者 が そ れ ほ ど 自己 資 金 を 持 って い な い 場 合,rl己 株 式 の 取 得 を 通 じて,間 接 的 に1'1社株 を 買 い 増 す こ とが で き るば か りで は な く,ヒ 記 の16条(b) に違 反 す る リス クに 晒 され ず に す む の で あ る。
(2)虚 偽 の シ グ ナ リ ン グ の 問 題
シ グ ナ リ ン グ 仮 説 に よ る と,株 価 が 下 落 す る リ ス ク は 低 い(会 社 が 長 期 に 得 る だ ろ う 利 益 が 市 場 の 期 待 よ り も大 き い,将 来 に わ た っ て キ ャ ッ シ ュ ・
12611d.at1358.
にわ 取 引 所 法16条(a)(b)は,取 締 役,役 員 ま た は10%以Lを 直 接 も し くは 間 接 に 保 有 す る株 ・1三は,自 己の 計 算 で 当該 会 社 の特 定 有 価 証 券 を 購 入 して6カ 月 に 満 た な い 期 間 内 に 売 却 す る こ と に よ り,ま た は売 却 して6カ 月 以 内 に 購 入 す る こ とに よ り生 じた 利 益 を 当該 会社 に返 還 しな け れ ば な らな い と定 め て い る。 日本 経 済 研 究 所 編 『外 国 証 券 関 連 関 係 法 令 集 ア メ リカ1』(日 本 証 券 経 済 研 究 所, 1990年)126‑127頁 。
フ ロー が よ り安 定 す るで あ ろ う,と い った 推 測 か ら)と い う こ とを経 営 者 が 知 って い るが,会 社 の 競 争 力 等 の 考 慮 か ら,こ の 類 の よ い情 報 を 直接 に 開 示 で きな い 場 合,白 己 株 式 の 取 得 を通 じて 株 価 が過 小 に 評価 さ れ て い る こ とを ア ナ ウ ン スす る こ とが で き る。 また,こ の シ グナ リン グは経 営 者 に 実 質 的 な 負 担 や コ ミ ッ トメ ン ト(た とえ ば,自 社株 を売 却 しな い と い う約 束)を 課 さな け れ ば 信 用 され な い の で,多 くの 会社 は過 小 評 価 と い う シ グ ナ リン グを 信頼 で き る もの に す る た め,自 己株 式 取 得 の 計 画 を公 表す る際 に,経 営 者 が 自社株 を売 却 しな い こ と も約 束す る。 と こ ろで,こ の 取 得 計 IIIIiは経 営 者 を拘 束 す る もの で は な い。 自 己株 式 の取 得 計 画を 公 表 して お き な が ら,実 際 に 一 株 も取 得 して い な い よ うな 会 社 は,と くに2003年 に SECの 開 示 規 制 が 公 表 さ れ る ま で は 多 か っ た K,。さ らにrl社 株 を 売 却 し な い と い う経 営 者 の コ ミッ トメ ン トも絶 対 的 な もの で はな く,自 己 株 式取 得 の 計 画 を 公表 して か ら,rl社 株 を 売却 す る経 営 者 も見受 け られ る。 この, 実 施 す る意 図 の な い 自 己株 式 取 得 計 画 を 公 表 す る とい う虚 偽 の シ グナ リ ン グ に対 して,あ る い は株 価 が 実 際 には 過 小 評 価 され て い な い の に過 小 評価 され て い る と して1'1己株 式 の 取 得 を 行 う とい う虚 偽 の シ グナ リン グに 対 し て ど う対 処 す べ きで あ ろ うか。 虚 偽 の シ グナ リン グの背 後 に は,経 営 者 の 意 図,つ ま り株 価 を 釣 りiげ よ う とす る意 図 が 見 え 隠 れ して い る。 ま た株 価 が実 際 には 過 小 評 価 され て い な い な らば,結 局,会 社 は株 式 の真 の価 値 よ り高 い 値 段 で 自 己株 式 を 取 得 す る こ と に な る。 そ うす る と,(1》 の 場 合 (割 安 な 価 格 に よ る 白 己 株 式 の 取 得)と は逆 に,自 社 株 を売 却 した 経 営 者
も含 め た 売却 株1三は 残 存 株 主の犠 牲 に お い て 利 益 を得 る こ と に な る。
以 上 に よ り,経 営 者 と株1三・投 資 者 との 間 の情 報 の非 対称 性 は,取 得 価 格 が割 安 ま た は割 高 で あ る場 合,売 却 株 一1三と残 存 株1三との 問 に不 平等 な 取 り扱 いが 生 じる と い う問 題 を 孕 ん で い る こ とが 明 らか に な った。 さ らに,
(281Fried,supranote15,at1353.
一]4一
白己 株 式 の 取 得 にお け る開 示 制 度
ア メ リカで は 白 己株 式 の 取 得 を行 うか ど うか を決 め る権 限 は取 締 役 会 に あ る。 会 社 に 生 じた 余 剰 資 金 を 株1三に利 益 還 元 と して 分 配 す べ きか を 判断 す る 決 め 手 と して は,株 守三の 期 待 利 益 率 を ヒrnlる投 資 機 会 が 見 当 た らな い と い うこ とが あ る。 た とえ ば,ま だ そ の よ うな 投 資 機 会 が あ る こ とや 配 当を 行 った ノ∫が株kの 利 益 に か な うの に,そ の 財 源 を 自 己株 式 取 得 に使 って し ま う こ と も考 え られ る。 この よ うな 不 当な 経 営 判 断 をIEす こ とが で き る ほ ど,株1三 側 は ト分 な情 報 を も って い な い とい う こ と も指 摘 して お きた い。
2‑4自 己 株 式 取 得 の メ リ ッ ト
会 社 が 株1三 に 現 金 を 分 配 す る 方 法 と して は,配 当 と 自 己 株 式 取 得 が あ る 。 両 者 に か か る 税 率 は 異 な る 。 前 者 は 配 当 税 率(通 常 の 所 得 税 率 の 対 象 と な る)で あ り,後 者 は 譲 渡 益 税 率 で あ る 。2003年 の 税 制 改t(Jobsand GrowthTaxReliefReconciliationActof2003'""')前 は,前 者 が 最 高 税
率38%に 対 し 後 者 が20%で あ っ た 。 そ の た め,自 己 株 式 取 得 の ノ∫が 株}:
に と っ て 税 金 面 で 有 利 で あ る と い う こ と が,経 営 者 が 自 己 株 式 取 得 を 選 択 す る こ と を 亘1:'1化 し て き た 。 し か し,2003年 の 税 制 改lf:は 両 者 の 最 高 税 率 を1司 じ15%に した の で,株1三 に と っ てrl己 株 式 取 得 の 方 が 配 当 よ り 有 利 で あ る と い う 説 明 が で き な く な っ た 。 も っ と も,株 主 の 属 性 に よ り 異 な る 点 も あ る 。 多 くの 機 関 投 資 家,た と え ば 年 金 基 金 は 原 則 と し て 非 課 税 で あ る。 個 人 株1三は 個 人 所 得 に 応 じて 配 当 の 課 税 率 が 違 っ て く る1"1。 た だ, 配.i.1は株1三に 否 応 な く課 税 さ れ る の に 対 し,自 己 株 式 取 得 は,売 却 を 選 択
し な け れ ば 譲 渡 益 が 生 じな い の で,株kがrl分 の 税 金 プ ラ ン に 応 じ て 柔 軟 に 対 応 で き る 点 で は 有 利 と い え よ う 。 しか し こ の よ う な 有 利 さ は 限 定 的 と 考 え る べ き で あ る 。 両 者 の 税 率 に 差 が な い 以L,自 己 株 式 取 得 の 税 金 面 で
129)Pub.L.No.108‑27,117Stat.752(2003).
0301花 枝=榊 原,前 掲 注(4)259頁 。
の メ リ ッ トは そ れ ほ ど 大 き い もの で は な くな っ た か らで あ る 。 税 金 面 以 外 で 考 え られ る メ リ ッ トは 次 の 通 りで あ る 。
(1)一 時 的 な キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー の 効 率 的 な 分 配
一 時 的 な 利 益(non ‑recurring)に よ り余 分 の キ ャ ッ シ ュ ・フ ロ ー が 生 じ た 場 合,し か も そ れ が 少 額 な 場 合 は,配 当 よ り("1己株 式 取 得 に よ る 方 が, 株1三 に 効 率 よ く現 金 を 分 配 す る こ と が で き る1川。 配 当 の 場 合 は 特 別 配 当 や 普 通 増 配 と い う 方 法 も 考 え ら れ る が,次 の 理 山 で 人 気 が な い と さ れ る 。 第 一 に,小 規 模 な 特 別 配 当 の 場 合 は,企 業 側 が 投 資 者 に 伝 達 す る メ ッ セ ー ジ
が 明 確 で な い1'1㌔ 第 二 に,株 益へ の 郵 送 費 等 の 費 用 が,と く に 株 主 の 数 が 多 い 会 社 で は 高 く つ く。 第 三に,,tccri通増 配 の 場 合,そ の 増 配 の 部 分 は 経 営 者 が 次 期 に 簡 単 に カ ッ トす る こ と は で き な い の で,経 営 者 に と っ て 高 度 な
「拘 東 力 」 が あ る 。 そ れ に 対 し 自 己 株 式 取 得 の 場 合,そ れ を 当 期 に 実 施 し た か ら と い っ て,次 期 も 自 己 株 式 取 得 を 行 う必 要 性 は ま っ た く な く,経 営 者 に と っ て 非 常 に 柔 軟 性 が あ る1"】。
(2)流 動 性
r1,場で の 株 式 取 引 の しや す さ の 指 標 と して は,ビ ッ ト ・ア ス ク ・ス プ レ ッ ド(bidandaskspread)が あ る 。 ビ ッ トは 買 い 注 文 の 指 し値 の 値 段 で あ り,ア ス ク は 売 り注 文 の 指 し値 の 値 段 で あ る 。 最 大 の ビ ッ トと 最 小 の ア ス ク と の 差 は ス プ レ ッ ドと い う 。 ス プ レ ッ ドが 小 さ い ほ ど,取 引 が 成 立 しや す く,株 式 の 流 動 性 が 高 ま る 。 内 部 情 報 を 有 す る 者 と そ う で は な い 者 と が 併 存 す る 市 場 で 株 式 取 引 が さ れ た 場 合 に,一 種 の 逆 選 択 が 生 じ る 。 逆 選 択
1311Fried,sups°anote15,at1338.
(3カ イf川 博 行 『配 当 政 策 の 実 証 分 析 』(中 央 経 済 社,2009年)258頁 。 (33》i司 前1,348f{。
一16一
自 己株 式 の取 得 に お け る開 示制 度
の ドで の 株 式 取 引 で は,情 報 を 持 た な い 投 資 者 か ら情 報 を も つ 投 資 者 へ 富 の 移 転(wealthtransfer)が 発 生 す る 可 能 性 が あ る 。 そ の た め,情 報 を 持 た な い 投 資 者 は 株 式 取 引 に 対 し て 消 極 的 に な り,ス プ レ ッ ドが 広 が っ て
し ま う こ と と な り,結 果 と し て 株 式 の 流 動 性 に 悪 影 響 が 生 じ る 噂 。 こ れ に 対 して,取 引 所 を 通 じ て,か つ 割 安 で は な い 自 己 株 式 取 得 が 行 わ れ れ ば,株 主 や 投 資 者 は 経 営 者 が 伝 達 した シ グ ナ リ ン グ を 信 頼 し,ス プ レ ッ ドが 縮 小 す る こ と に な る 。 ス プ レ ッ ドが 縮 小 す れ ば,株 式 の 取 引 に か か る 売 却 株 主 の 費 川 が 安 く な り,ま た 取 引 が 成 立 しや く な る の で,株 式 の 流 動 性 が 高 ま る こ と に な る1;{;}i。
3.自 己 株 式 取 得 の 開 示 規 則 が 公 表 され る ま で の道 の り
3‑1規 則13e‑2不 採 択 の 経 緯 (1)SECv.Georgia‑PacificCorp.(1966ン361
連 邦 レ ベ ル に お け るC1己 株 式 取 得 規 制 の 歴 史 はSECv.Georgia‑
PacificCorp.(以 ド 「GP社 」 と 称 す)と い う 判 例 に さ か の ぼ る 。 判 例 の 概 要 は 次 の 通 り で あ る 。
GP社 は1961年 か ら,企 業 買 収 や 合 併 を,自 社 の 株 式 を 代 価 と し て 行 っ て い た。GP社 は,新 た に発 行 す る株 式 数 を 低 く押 さえ る た め
139)弥 永 真 生 「な ぜ 法 は デ ィ ス ク ロ ジ ャ ー を 規 制 す る の か 」 柴 健 次=須III幸=薄
井 彰 編 著 『現 代 の デ ィ ス ク ロ ジ ャ ー 』(中 央 経 済 社,2008年)101‑102頁,花 枝=
榊 原,前 掲 注(4)267‑268頁 。
(3励Fried,Supranote15,atl340,DouglasO.Cook=LaurieKrigman=J.Chris Leach,OntheTimingantiExecutionofopenMarketRepurchases,17Rev.
Fin.Stud.463,485‑486(2004).
(361]9G6U.S.Dist.LEXIS10065,Fed.Sec.L.Rep.(CCH)P91692.
に,株 式 市 場 に お け る 株 式 の 価 格 を,GP社 や そ の 関 係 者(GP株 式 賞'∫ 信 託(StockBonusTrust)の 受 託 者 等)に よ るGP社 株 式 の 取 得 を 通 じ て 釣 り ヒげ よ う と し た 。1963年 に,S社 と 株 式 交 換 の 期 間 中 に,GP社 は 株 価 を 高 く釣 り1げ る た め,GP社 と そ の 関 係 者 ら は, 111複 数 以 ヒの デ ィ ー ラ ー を 通 じ て,買 付 の 値 段 を 指 定 せ ず,か つ 取 引 時 間 の 終r直 前 に 買 付 注 文 を 集 中 さ せ た 。 そ の た め,GP祉 の 株flHi がL昇 し,S社 の 株 主 に 交 付 す る 株 式 数 が 当 初r定 して い た よ り 少 な
く な っ た 。SECは,GP社 が 公 開ilia;を 通 じ た1'1己 株 式 の 取 得 に よ っ て 株 価 を 不IEに 操 縦 した と1三張 し,裁 判 所 にGP社 に よ るr1己 株 式 の 取 得 差 止 め を 巾 し 疏 て た 。 裁 判 所 はSECの 主 張 を 受 け 人 れ,GP社 に 対 し,対 象 会 社 と 企 業 買 収 を 交 渉 す る 期 間 中,「1己 株 式 の 取 得 を し て は な ら な い と い う 差 止 め 命 令 を 出 し た 。 ま た,そ れ 以 外 の 時 間 内 に お い てGP社 がri己 株 式 取 得 を 行 う場 合,次 の 制 限 を 守 ら な け れ ば な ら な い こ と も 指 示 し た 。 ①11‑1に 一 つ の ブ ロ ー カ ー や デ ィー ラ ー し か 利 川 し な い,② 買 付 は 取 引 口 に お け る 最 初 の 取 引 に な っ て は な ら な い, ま た,取 引 の 終r前1時 間 以 内 に 行 っ て は な ら な い,③ 買 付 は 取 引 日 に お け る最 高 の 取 引 値 段 ま た はi1豊揃 の 取 引 値 段 の い ず れ か 高 い 値 段 で 行 っ て は な ら な い,④1週 間 の 買 付 株 式 の 数 量 はU'1̲前の4週 間 の1週 間'1̀一均 売(Fn̲131高の10%をL回 っ て は な ら な い 。1f1の 買 付 株 式 数 量 は 直 前4週 間 の1N'1'均 売 買 高 の15%をUII1っ て は な ら な い 。
1967年 に,SECは こ の 判 決 を 受 け て,相 場 操 縦 に あ た ら な い 自 己 株 式 取 得 の 基 準 を 明 確 に し よ う と し,rl己 株 式 の 取 得 数 量 や 取 得 価 格 に 一 定 の 制 限(GP社 の 判 決 に 示 さ れ た 制 限)を 定 め る と い う 規 則(1934年 の 取 引 所 法10(b)の ドで)の 提 案 を 試 み,非 公 式 の コ メ ン トを 求 め た 。 しか し, こ の よ う な 制 限 は,相 場 操 縦 や 詐 欺 の 意 図 が な い 会 社 も 含 め,す べ て の 会 社 が 適 用 対 象 と な る の で,1934年 の 取 引 所 法10(b)ド のSECの 規 則 制
一18
白 己株 式 の 取 得 に お け る開 示 制 度
定 の 権 限 を 逸 脱 す る と い う 反 対 意 見 が 多 数 寄 せ ら れ,こ の 試 み は 頓 挫 し た1㌔
他 方,同 年 に ア メ リ カ の1.院 で は,自 己 株 式 取 得 を 規 制 す る 法 案 が 検 討 さ れ て い た 。 法 案 で は 次 の 理 山 で,自 己 株 式 取 得 を 規 制 す る 必 要 性 が あ る と1三張 さ れ た 。 「rl己 株 式 取 得 の 動 機 が 何 で あ れ,そ の 取 得 は 規 模 が 大 き け れ ば,当 該 証 券 の 市 場 価 格 に 重 大 な 影 響 を 与 え る で あ ろ う 。 従 っ て,会 社 の 株1三や'i1該 株 式 の 価 格 に 興 味 を 持 っ て い る 者 は,白 己 株 式 取 得 に お け る 会 社 の 意 図 や 活 動 に 関 す る 完1.な 情 報 を 有 す る べ き だ 。」1『̀81議会 は,1968 年William法 の 一 部 分 と し て,取 引 所 法13(e)(1)を 次 の よ う に 制 定 し た 。
1934年 取 引所 法 の12条 に も と つ い て 登 録 され た 持 分 証 券 ま た は 1940年 投 資 会 社 法 に も とつ い て 登 録 さ れ た ク ロー ズ ド ・エ ン ド型投 資 会 社 で あ る 発 行 者 が,SECが 公 益 また は投 資 家 のIL地 か ら,(A)詐 欺 的,欺 隔 的 また は相 場 操 縦 的 な 行 為 の定 義 を 行 うた め に,ま た(B)
それ らの 行 為 及 び慣 行 を防 止す る うえ で適 当 と考 え る ノ∫法 を 規定 す る た め に制 定 す る規 則 に違 反 して,ri己 の発 行 した持 分 証 券 を 買 い付 け る こ と は違 法 で あ る。 この 規 則 の ド,当 該 買 付 を行 う理 山,資 金 の 出 所,買 い 付 け るべ き証 券 の 数 量,当 該 証 券 の 買 付 価 格,買 付 の 方法 に 関 す る情 報,お よ びSECが 公 益 も し くは投 資 者 保 護 の た あ に必iliも し くは 適 当 と認 あ,ま た は 当該 証 券 を 発 行 者 に売 却 す るべ きか 否 か を 決 め る うえ でSECが 重要 とIIC'る そ の 他 の 情 報 を,'11該 種 類 の 持 分
13711ThomasLeeI‑lazen&DavidL.Ratner,SecuritiesRegulation6th(Jdtion, at925(ThomsonWest,2003).
1381DouglasO.Cook=Law・ieKrigman=」.ChrisLeach,AnAnalysisofSEC GuidelinesforExecutingOpenMarketRepurchases,76J.Bus.289,290 (2003).
証 券 の 保 有 者 に提 供 す る よ う 当該 発 行 者 に 要求 す る こ とが で き る卿 。
取 引所 法13(e)(1)ド,SECは 白己 株 式 取 得 に お け る 詐欺 的,欺 隔 的 また は相 場 操 縦 的 な行 為 の定 義 を 行 い,さ らに そ れ らの 行為 を 防 止す る た めの 手 立 て を 考案 す る権 限 を 与え られ た。 ま た,自 己 株 式取 得 に 関 す る情 報 の 開示 が,こ の 防iL手 段 に お い て 中 核 的 な 部 分 を 占め て い る こ と も文 言
か ら読 み取 れ る。
(2)規 則13e‑2の 当 初 試 案
1970年 に,SECは 取 引 所 法13(e)(1)の ドで,規 則13e‑2を 提 案 し, 社 会 一 般 に 対 し コ メ ン トを 求 め た 。 提 案 内 容 は,SECが 定 め た 一 定 の 条 件 の 下 で,会 社 は 公 開 市 場 や 個 別 の 交 渉 で 臼 己 株 式 を 取 得 で き る と さ れ る。
一 定 の 条 件 と は,1flに 利 用 で き る ブ ロ ー カ ー の 数 や 注 文 価 格,取 得 数 量 等 の 制 限 の こ と で あ る 。 こ れ ら の 制 限 に 反 し て 白 己 株 式 取 得 を 行 っ た 場 合 は 違 法 と さ れ るq°1。
(3)規 則13e‑2中 間 試 案
1973年 にSECは 中 間 試 案 を 公 表 し た 。 中 間 試 案 で は 情 報 開 示 規 制 の 必 要 性 に つ い て は と く に 明 確 に 記 さ れ な か っ た が,そ の 必 要 性 に つ い て も コ
メ ン トが 求 め られ た 。
SECに 寄 せ ら れ た コ メ ン トの な か に は,SECの 提 案 は 自 己 株 式 取 得 に 対 して 広 範 に わ た る 制 限 を 定 め て い る の で,そ の ヒ,さ ら に 情 報 開 示 の 必 要 性 が あ る の か と い う も の が あ っ た 。 こ の,禁 止 的 な 規 定 と情 報 開 示 は1司
(39)SecuritiesExchangeActof1934,Sec.13(e)(1).日 本 証 券 経 済 研 究 所 編
『外 国 証 券 関 係 法 令 集 ア メ リ カ1』(「1本 証 券 経 済 研 究 所,1990)88頁 。
101SecuritiesExchangeActReleaseNo.34‑8930,at1(July13,1970).
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自 己株 式 の取 得 に お け る開 示 制 度
時 に必 要 と さ れ な い とい う議 論 は 注 目に 値 す る。 この 議 論 は,SECの 規 制 ア プ ロ ー チ に 着 眼 した も の で あ る。SECは,自 己 株 式 取 得 の 妥 当性 を 確 保 す る た め に,一 定 の取 得 制 限 を 定 あ る とい うア プ ロー チ を 採 用 しよ う と した。 こ の ア プ ロ ー チ の意 図 は 自己 株 式取 得 が 株 価 の 形 成 に もた らす 影 響 力 を軽 減 す る こ と に あ る。 株 価 の 形 成 に 及 ぼ す 影 響 が 少 な け れ ば,自 己 株 式 取 得 に関 す る開 示 の必 要性 も縮 減 す る の で,禁il:規 定 と情 報 開 示 義 務 は両 、γしな い。 結 局,議 論 は任 意 的 な セ ー フ ・ハ ー バ ー の ドで情 報 開 示 を 求 め るか,そ れ と も,禁 止 規 定 の も とで 程 度 の 低 い情 報 開 示 を 求 め る か と い う こ と とな っ たqD。
(4)規 則13e‑2最 終 試 案
1980年 に,SECは 規 則13e‑2の 最 終 試 案 を 公 表 し,次 の よ う にrl己 株 式 取 得 を 規 制 す る 必 要 性 が あ る と 訴 え た 。
自己株 式取 得 を通 じて 株 価 を コ ン トロ ー ル しよ う とす る 発行 者や そ の 関 係 者 の 意 図 は 否 定 で きな い。 また 既 存 の 相 場 操 縦 や 反 詐 欺 規 制 と い った一 般 的 な 規 制 文 言は 自 己株 式 取 得 の 文 脈 で は ト分 な 手 引 き に な らな い。 これ に対 して,規lliJ13e‑2の よ うな 規 則 は,rl己 株 式 取 得 制 度 の濫 川 を防 ぐ と同 時 に,許 容 され た 取 得 計 画 の 明 確 な 指 針 を'1一え る こ と によ り,合 法 的 な 自 己株式 取 得 の 実 施 を 促進 す る こ とが で きる121。
ど う い った取 得 計 画 が 許容 され るか を 明確 に す る指 針 と して,取 得 ノ∫法 や 取 得 数 量 ・価 格 等 に つ い て 一定 の 制 限 を 定 め る こ とが必 要で あ る。 しか し,こ の よ うな 制 限 の 規 制 が あ るか ら とい って,取 得 開 示 義 務 が 必 要で な い とい う こ とで は な い。 開 示 規 制 は,発 行 者 に よ る人 疑
1911Gook=Krigman=Leach,supranote38,at293.
(piaSecuritiesExchangeActReleaseNo.6̀198,at1‑2(October17,1980).
の 自己株 式取 得 とい う事実 に 反応 す る機 会 を 市場 にr‑1一え る こ とが で き る。 他 方,こ の よ うな情 報 開 示 規 制 は 詐 欺 的,欺li繭的 ま た は相 場 操 縦 的 な 行 為 を 防 ぐた め に は必 要,ま た は適 切 で あ る が,情 報 開 示 だ けで は 前述 の 相場 操縦 等 の 行 為 を 防 げ な いIl'"。つ ま り 白己株 式 取 得 を規 制 す るに は,取 得 方 法 等 の 一 定 の 制 限 と情 報 開 示 規 制 の 両 方 が必 要 と さ れ るqい。
次 に,情 報 開 示 規 制 に 関 して,SECは 次 の よ う に 提 案 し た 。
12ヶ 月 以 内 に発 行 者が 社 外 株 式 総 数 の2%を 超 え て 自 己株 式 を取 得 す る とい う計 画 が あ る場 合,発 行 者 は そ の 計 画 を実 施 す る 前 に次 の 情 報 を 開 示 しな け れ ば な らな い。 す な わ ち,① 取 得 期 間,② 取 得 数 量 ・ 資 金(最 高額),③ 取 得 口的,④ 取 得 した 株 式 の 消 却 計 画,で あ る。
ま た,発 行 者 の 証 券 が 証 券取 引所 に ヒ場 され て い る場 合 は,'11該 取 引 所 に も 事前 開 示 しな け れ ば な らな い幽"1。
規 則13e‑2の 最 終 試 案 は,1973年 の 中 間 試 案 に 対 す る コ メ ン トや 議 論 よ り も厳 し い 内 容 で あ る。 つ ま り取 得 方 法 等 に つ い て 一 定 の 制 限 を 決 め, 制 限 に 反 す る 自 己 株 式 取 得 が 違 法 と さ れ る と い う 禁IL規 制 と,̀1蓼 前 の 情 報 開 示 規 制 と い う 両 側 面 か ら の 規 制 で あ る。 し か し,こ の 最 終 試 案 はi瞳に 問 わ れ る こ と が な か っ た 。
1982年11月17Uに,SECは 規 則13e‑2の 提 案 を 撤 回 し,セ ー フ ・ハ ー バ ー と して 規 則10b‑18を 採 択 し た 。 規 則13e‑2の 最 終 試 案 で 示 さ れ た 禁
W3)Id.at4.
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1411d.at14‑1i.
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