平成20年庶
≡重光学東学院教蘭学研究科 修士諌壁教科教育専攻
田 畑 常 務
2008年度 修士論文
伊勢湾沿岸域における海底地下水流出特性
三重大学大学院教育学研究科 教科教育専攻・社会科教育専修
田畑青海
提出日 2009年2月13日
目次
1.はじめに‥‥‥‥‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥ 1 2.研究対象地域の概要‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥.‥.‥‥ 3 2‑1.地形・地質‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3 2‑2.地下構造‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥. 3 2‑3.土地利用.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥ 3 2‑4.潮汐‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥8
3.研究方法.‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥.‥‥‥‥.‥ 9
4.現地調査の結果
4‑1.陸の地下水量.‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥.‥‥ 13 4‑2.陸の電気伝導度‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥..‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥. 13 4‑3.比抵抗探査と海底地下水湧出量‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥...‥‥‥. 13
4‑4. CTDセンサー..‥‥‥‥‥‥‥‥..‥‥..‥...‥‥‥‥..‥‥‥ 17 4‑5.リン酸イオンと湧出量‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥‥‥ 22 4‑6. CTDセンサーの水位と海水位の変化‥.‥‥.‥‥.‥‥‥‥‥‥‥ 22
5.考察
5‑1.陸域の地下水量‥‥‥‥‥..‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥. 28
5‑2. CTDセンサーの水温と電気伝導度 3月21日‑22日‥‥‥.‥.‥ 28 5‑3. CTDセンサーの水温と電気伝導度・
湧出量とリン酸イオン濃度の関係 8月2日‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.28
5‑4.海底地下水湧出量と淡水含有率 8月2日‥‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥ 29 5‑5.調査地域における海底地下水湧出量の推定.‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥ 30
6.まとめ‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥ 35
参考文献‥‥‥‥.‥‥‥.‥‥。…‥.‥‥‥‥.‥‥‥.‥.‥‥.‥‥‥ 36
謝辞 ‥.‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥.‥‥‥. 37
図一覧
第1図 水の循環システムの模式図‥‥‥.‥‥‥.‥‥.‥‥‥‥‥‥‥…. 2 第2図 研究対象地域‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4
第3図 地形分類図 沿岸域土地利用条件・
地下水面標高分布・沖積層基部等深度分布‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5 第4図 沖積層・洪積層層厚‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥ 6
第5図 土地利用図‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥. 7 第6図 調査地点における比抵抗探査とCTDセンサー・
シーページメーター設置位置‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥. 10 第7図 調査地点における比抵抗探査とCTDセンサー・
シーページメーター設置位置.‖‥‥.‥‥‥.‥‥‥‥‥‥.‥‥‥ ll 第8図 マニュアルシーページメーター‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 12 第9図 冬季・夏季地下水面等値線断面図.‖‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥. 14 第10図 冬季・夏季電気伝導度等値線断面図‥‥‥‥‥‥‥‥.‥.‥‥‥. 15
第11図 冬季比抵抗断面と湧出量図‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥ 16
第12図 夏季比抵抗断面と湧出量図‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 18
第13図 夏季比抵抗断面と湧出量図‥‥‥‥‥‥‥‥.‥.‥‥.‖‥‥.‥. 19
第14図 伊勢湾沖合270mまでの比抵抗分布‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥20
第15図 CTDセンサーの水温と電気伝導度の変化(3月).‥‥‥‥‥‥‥. 21 第16図 CTDセンサーの水温と電気伝導度の変化(8月)‥‥‥‥‥‥‥‥ 23 第17図 リン酸イオンと湧出量の変化(8月)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 24 第18図 CTDセンサーの各地点の水位と海の水位‥.‥‥‥‥‥.‥‥‥‥ 25 第19図 海水位一各地点での水位‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥.‥‥27 第20図 今井観測所位置・湧出量推定範囲‥‥.‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥… 31
第21図 淡水湧出量の推定‥‥‥.‥.‥‥.‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.‥.33
表一覧
第1表 ピェゾメーターのリン酸イオン濃度‥.‥‥.‥‥‥‥.‥.‖‥‥.29 第2表 湧水中の淡水含有量‥‥….‥‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥‥‥‥‥.‥30 第3表 淡水湧出量の推定‥‥‥…‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥32 第4表 陸井戸ST調査結果2007年夏‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.38 第5表 陸井戸ST調査結果2008年冬‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.39 第6表 陸井戸ST調査結果2008年夏.‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥‥‥‥.40 第7表 陸井戸ST陽イオン分析結果2007年夏‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥.41
第8表 陸井戸ST陰イオン分析結果2007年夏‥‥.‥‥‥‥‥‥….…. 42 第9表 陸井戸ST陽イオン分析結果当量2007年夏‥‥‥‥‥‥‥‥.‥‥ 43
第10表 陸井戸ST陰イオン分析結果当量2007年夏‥‥‥.‥‥‥‥‥‥.44 第11表 陸井戸ST陽イオン分析結果2008年夏‥‥‥‥‥‥‥.‥‥‥‥.45 第12表 陸井戸ST陰イオン分析結果2008年夏‥.‥‥‥‥.‥.‥‥‥‥.46 第13表 陸井戸ST陽イオン分析結果当量2008年夏‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥47 第14表 陸井戸ST陰イオン分析結果当量2008年夏.‥‥‥‥‥‥‥‥.‥48
1.はじめに
近年、海岸域において海底からの地下水流出が注目されている。熊本大学で 行われた国際シンポジウム『陸水一海水インターラクション領域の実態と地下 水を経由した海域‑の環境負荷』 (2007/12/22)フロリダ州立大学のW. Burnett
(2007)は、小規模な地下水流動系からのSGDが沿岸域に与える影響が非常に 重要である可能性を述べているし、ラドンをトレーサーとして用いてSGDの湧 水現象の評価を行っている。また、 Tanigu血i (2007)は、高密度電気探査ケー ブルでの比抵抗電気探査による海底の塩水・淡水境界の評価やシーページメー
ターを用いたSGDの量的評価と潮汐変化による影響、また、 SGDの淡水と海 水(再循環水)との混合率についても述べている。
水の循環システムの模式図を第1図に示す。海域‑侵入する水分量うち河川 からの流出量は全体の6%である。河川からの成分の流出量は全体の50%である。
(Zektser and Loaiciga, 1993)。また、地下水流出量は河川水の流出量の6%
であるのに対し塩類の量は河川水のもたらす量の約50%である。 (谷口, 2001) 以上のことから、海域‑の地下水流出がもたらす影響は軽視できるものでは
ないと考えられる。
河川水による海域‑の環境負荷と共に、海底地下水による海域‑の環境負荷 が考えられる。 Tanigu血ietal. (2006)では,河川水の流出量35,000‑40,000
km3/yに対して、地下水の流出量が2,600‑6,300km3/yというような地域の 存在も報告されているが、その傾向はさまざまであり,地域によって海底地下 水流出特性は異なっているのが実情である。将来,健全な流域規模での水資源 管理や地下水利用を考えた場合,海底地下水湧出量の解明をはじめとした地下 水一海水相互作用については,地域に密着した形での調査・研究が不可欠であ
るといえる。
このような背景から,本研究では、伊勢湾沿岸域における海底地下水湧水の 湧出量の推定や水質の季節変化や流出特性の季節変化から流出量の推定を行っ た。
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1. 研究対象地域の概要
2‑1.地形・地質
研究対象地域を第2図、地形分類図自塚海岸における沿岸域土地利用条件・
地下水面標高分布・沖積層基部等深度分布を第3図に示す。本研究地域は三重 県津市の、河芸丘陵と見当山丘陵に囲まれた志登茂川が伊勢湾に注ぐ海岸部の 北側に位置する。志登茂川は、北側を中ノ川、南西側を安濃川、また東部を伊
勢湾に囲まれた細い三角形状の流域をもつ。 (杉浦, 2005)志登茂川の東部には 数列の砂州・砂堆が形成され、周囲と1‑2mの比高をもつ。また、砂州・砂堆
の間には後背湿地が発達している。さらに砂州・砂堆の東縁には自然堤防と海 浜堆積物からなる砂浜がある。自然堤防は,周囲と1m以内の比高をもち、砂 浜が50 m2 oomの幅で連続する.もっとも海岸寄りに発達する浜堤は局地流動 系の酒養域となっていることがMiyaoka(2007)によって示されている.海岸線 はやや西に湾曲しているが、直線的である(Nakayama, 2004)0
2‑2.地下構造
第4図に洪積層層厚・沖積層層厚を示す。志登茂川が北西一南東方向から北 北西一南南東方向に流路を変更する周辺で、海岸と垂直方向に地形の谷が教本 認められること、地下水の流動方向が谷状部分にそっていると考えられること から,谷状部分は志登茂川の旧流路であったことが推測されている。この地点
に観測井(ISl)があり、研究対象の海岸となっている。 ISlの深度10m付近 に地下水が流れやすい部分があることがわかっている(田畑, 2006)0
2‑3.土地利用
第5図に土地利用図を示す。対象地域周辺は水田が多く見られる。水田は、
各河川・谷沿いに分布し、河川水・ため池などからの導水の他、一部地域では 地下水を用水として使用している。本地域では、水田面積の占める割合が大き いため、潅概期と非潅耽期では、水田からの浸透水の浸透量の変化が地下水に 与える影響は大き̀くなると考えられる.
志登茂川と中ノ川の間に存在する扇状地地域の地形には、広範囲にわたって 畑地が広がっている。この地域の大部分は苗木栽培のために使われている。苗 木の栽培には、その後花をつけるために窒素、リン酸、カリを中心とする化成 肥料や油かす、骨粉、液体肥料などの肥料を多く使用しているため、この地域 において、多くの施肥が行われていると考えられる。また、河成・海岸低地に は市街地・集落や畑地が分布している。地下水が海岸にたどりつくまでに水田・
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畑地・市街地を通過するため、潅概水・施肥・家庭排水などの影響が考えられ る。近年では,水田や湿地から商業地や宅地‑と変化していることから,地下 水‑の酒養量の変化が考えられる。
2‑4.潮汐
3月・8月ともに大潮時に調査を行った。 3月21日には、干潮(ll:46 水 位48.3cm 海釣り総合サイト 釣りの窓口)から満潮(17:49 水位226.1cm)、
22日干潮(0:02 水位29.6cm)、満潮(6: 10 水位223.5cm)、そして干潮 (12: 15 水位32.1cm)までの時間に合わせて24時間の調査を行った。 8月1 日には、干潮(ll:54 水位4.9cm)から満潮(18:38 水位218.Ocm)、 2日 干潮(0:18 水位90.5cm)、満潮(5:53 水位215.2cm)、そして干潮(12.29 水位2.Ocm)までの時間に合わせて24時間の調査を行った。 8月15日には、
干潮(ll:28 水位13.6cm)から満潮(18: 10 水位214.6cm)、干潮(23:
53 水位88.Ocm)16日満潮(5:31水位212.9cm)、干潮(12:04 水位8.3cm) までの時間に合わせて24時間の調査を行った。
これまでの調査から、潮汐変化の大きい大潮時において、比抵抗断面での塩 淡境界が鮮明で、海底地下水湧出の様子がより見られることがわかっている(田 畑、 2006)0
8
3.研究方法
調査地点における比抵抗探査とCTDセンサー・シーページメーター設置位置 を第6図、第7図に示す。
対象地域における現地調査は、 2008年3月21日と同年8月1日、 8月15日 に測水調査及び比抵抗探査を実施した。 3月21日と8月4日は干潮から24時 間、 8月15日には満潮から24時間の調査を行った。
測水調査については三重県津市自塚海岸で、 3月21日は12:00から22日の 12:00まで、 8月1日は12:00から2日の12:00まで、現地において砂浜の 観測井20m・ 10m・5mと海、波打ち際からの湧き出し(湧き出し)、海岸近く
の民家の井戸(干場)、の計5地点について、気温・水温・ pH・電気伝導度・
地下水位を測定するとともに化学分析用に100mlと 250mlのポリ瓶にそれ ぞれ1本の採水を3時間毎に行ったo比抵抗探査はSuperSting R8 IP 8 channel Memory Earth Resistivity and IP Meter (Advanced Geosciences,Inc.製)を用
いて、 3時間毎に測定を行った。 3月21日と8月1日には、電極間隔を2mと し、8月15日には電極間隔を10mとした。また3月21日はA・B・C・Dに、
8月1日はNol ・No8・No17・No26の各地点にマニュアルシーページメータ ー(第8図 マニュアルシーページメーター参照)を設置しSGDの湧出量を測 定、採水し、同地点に深度60cmのピエゾメーターからの採水、深度30cmに CTDセンサーを設置し、その地点での水位・水温・電気伝導度を測定した。ま
た同時期に、志登茂川流域に掘削した観測井(上流からST4、ST3、ST2、STl・3、
STl・2)で、水位水温センサーを設置し、測水調査を実施、その際に水位・電気 伝導度を測定している。
採水したサンプルは、実験室において溶存イオン分析を行い、 Li+,Na+、
K+,Ca2+,Mg2+,PO42 ,F ,Cl 、 NO2 ,NO3 .SO42 (cワo‑20A 島津製作所製)と HCO3一波度(pH4.8アルカリ度法)をそれぞれ分析した。
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4.現地調査の結果
4‑1.陸の地下水量
冬季・夏季地下水面等値線断面図を第9図に示す。冬季と夏季の地下水面を
比較すると、 ST4では冬季は4.53m、夏季は4.50mであった。 ST3では冬季は 深度5mで1.27m、深度10mで1.22m、深度18mで0.81m、夏季はそれぞれ
の深度で1.21m、 1.17m、 0.80mであった。 ST2では冬季は深度5mで1.03m、
深度10mで0.63m、深度20mで0.18m、夏季はそれぞれの深度で1.03m、0.95m、
0.23mであった。 sワl‑3では冬季は深度5mで0.74m、深度10mで0.74m、深
度20mで‑0.08m、夏季はそれぞれの深度で0.55m、 0.56m、 0.04mであった。
sワl‑2では冬季は深度5mで0.61m、深度10mで0.69m、深度20mで0.18m、
深度30mで0.26m、夏季はそれぞれの深度で‑0.08m、 ‑0.12m、 ‑0.27m、
‑0.66mであった。冬季・夏季ともに内陸では地下水面はあまり変わらないが、
海岸に近づくと(sワl‑3,sワl‑2)、冬季の方が地下水面は高くなっている。 STl・2 については、潮汐変化の影響があり、地下水面が時間変化する。
4‑2.陸の電気伝導度
冬季・夏季電気伝導度等値線断面図を第10図に示す。冬季と夏季の電気伝導
度を比較すると、ST4では冬季は210〟S/cm、夏季は240〃S/cmであった。 ST3 では冬季は深度5mで250pS/cm、深度10mで410JIS/cm、深度18mで290
〃S/cm、夏季はそれぞれの深度で310〃S/cm、 490〃S/cm、 310〃S/cmであっ た。 ST2では冬季は深度5mで190〟S/cm、深度10mで490〃S/cm、深度20m
で720pS/cm、夏季はそれぞれの深度で220pS/cm, 550FLS/cm、 830FLS/cm であった。 STl・3では冬季は深度5mで570〃S/cm、深度10mで670〃S/cm、
深度20mで790FL S/cm、夏季はそれぞれの深度で360JI S/cm、 670FL S/cm、 990
〃S/cmであった。全体的に電気伝導度は冬季の方が低い。とくに海岸に近づく と深い深度(ST2,STl・3)で冬季の方が高い値を示している。
4‑3.比抵抗探査と海底地下水湧出量(SGD)
比抵抗探査による二次元断面は潮汐変化の大きい大潮時が、塩淡境界が鮮明 になることがわかっている(田畑, 2006)0
ここでのSGD量は30分あたりに採水できた量となっている。
4‑3‑1. 3月21日
冬季比抵抗断面と湧出量図を第11図に示す。干潮から満潮に向かうにつれて,
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海水がより陸側の地下に入り込む。海底下の地下水は満潮に向かうにつれて地 下から湧き上がっている様子が所々見られる。 15時ではAとB・C付近に海底 地下水湧出の様子が見られる。 15時・ 18時には汽水域は全体的に上昇している
ようである。
SGD量は干潮時、 A・B・C・Dとも98ml・ 105ml・335ml・455mlと少量 であった。 15時にはAで3040ml取れたが満潮時には減少し1180mlであった。
B ・ C ・Dでは、 15時の湧出量は2735ml・ 1110ml・ 590mlであった。
4‑3‑2. 8月2日
夏季比抵抗断面と湧出量図を第12図、 13図に示す。干潮時と満潮時を比べ ると、干潮のほうが、淡水が地下から湧き上がっているように見える。満潮に は全体的に海水によって淡水は地下に押し込まれているようだが、海水が薄ま っている部分もあるようである。
SGD量は地点によってさまざまである。 No.1では満潮時には840mlの湧出 量である。その他の時間では水没していない。 No.8では、干潮時にシーページ メーターが水没していない12時以外の時間で、湧出量は0時から300ml・
1190ml・ 740ml・630mlとなっている。 No.17では, 0時から790ml・ 630ml ・
870ml・ 930ml ・ 530mlと比較的安定した値で湧出している。 No.26では0時か
ら70ml ・ 390ml ・ 940ml ・ 220ml ・ 570mlと湧出量はそのつど異なる。
4‑3‑3. 8月15日
夏季伊勢湾沖合270mまでの比抵抗断面図を第14図に示す。両満潮時に、陸 側で地下‑の海水の浸入が見られ、淡水が押し上げられている様子が見られる。
また、同時に沖合250m付近で淡水の湧出が見られる。
4‑4. CTDセンサー
電気伝導度・水温・水位を計測した。センサー部分にガーゼを巻いて深度30cm に直接埋め込んだ。
4‑4‑1. 3月22日
CTDセンサーの水温と電気伝導度の変化(3月)を第15図に示す。 Aでは満 潮に向かうにつれて電気伝導度が上昇し、干潮に向かうにつれて下降している
値は4‑9mS/cmである。水温の変化は気温変化のようである。データは滑らか に変化しておらず、乱れながら変化している。 Bでは電気伝導度、水温ともにA
とよく似た変化を見せているがAと比べると変化が滑らかである。電気伝導度 の値は4‑7mS/cmである。 CはAやBと比べると、電気伝導度は段階的に変 化している。また、水温は比較的安定している。 Dでは電気伝導度が33‑
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080815 24:00 Lowtide
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34mS/cmと高い値を示している。水温は比較的安定した値を示している。電気 伝導度、水温ともに乱れながら変化している。
4‑4‑2. 8月2日
CTDセンサーの水温と電気伝導度の変化(8月)を第16図に示す。 No.1は 満潮に近い時間帯しか海水に沈まない地点である。満潮時前後の電気伝導度は
非常に低くなっている。 No.8では電気伝導度は満潮に向かうにつれて上がって いくようであるが、 3時から4時前後にはOmS/cmである。 0‑4mS/cmと低い 電気伝導度を示している。 No.17では電気伝導度の変化に潮汐の影響は見られ
るが、大きな変化はなく安定した水温、電気伝導度を示している。 No.26では 水温、電気伝導度ともに乱れながら変化している。
4‑5.リン酸イオンと湧出量
リン酸イオンと湧出量の変化(8月)を第17図に示す.湧出量の単位はum2 瓜とした。海水のリン酸イオン濃度は0.5‑0.8ppmであった。
満潮時のNo.1のリン酸イオン値は0.8ppmである。 No.8では0.8‑1.5ppm で変化し、湧出量とおおよそ比例している。No.17では1.5‑2.5ppmで変化し、
湧出量とおおよそ比例している。 No.26では1.5‑4.5ppmで変化し、時間とと もに上昇していて、湧出量には起因していないようである。
4‑6. CTDセンサーの水位と海水位の変化
CTDセンサーの各地点の水位と海の水位を第18図に示す。 CTDセンサーは センサーの位置での圧力を水位に変換して値を示している。湧出地点では、上
向きの流れができるため、実際の水位変化よりも値が小さくなることが考えら れる。また、海水が海底下に浸入する地点では、下向きの流れができるため、
実際の水位よりも値が大きくなることが考えられる。そこで両調査日とも21:
00をセンサーの水位と海水位をOcmとし、変化の差異を考える。海水位は釣り の窓口で計測された水位である。
海水位一各地点での水位を第19図に示す。この値が+ならば、その地点にお ける地下水は上向きの流れが考えられ、 ‑ならば下向きの流れが考えられる。
3月では、各地点で満潮時に向かうにつれて上向きの流れが見られるようであ る。対して8月では干潮時に向かうにつれて上向きの流れが見られるようであ る。季節によって湧出する時間が違うことが示唆される。
22
水温御宝No.8
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時間(CL80BO2) 27.8
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5.考察
5‑1.陸域の地下水量
陸域の地下水位は3月調査時の方が8月調査時より高く、電気伝導度は低く なっており,その傾向は海岸に近づくほど顕著だった。このことは渇水期に相 当する3月の方が豊水期である8月よりも海底地下水湧出量が多いことを示し ており,比抵抗探査による塩淡水分布状況の結果からも裏付けられた。
5‑2. CTDセンサーの水温と電気伝導度 3月21日‑22日
A・Bは潮位変化に影響を受けた変化をしているが、 C ・Dは傾向が異なる。
Cは段階的に電気伝導度が変化しているが、その変化後6時間ほど値は一定の 値を呈している。また、水温は比較的安定している。このことから湧出口であ
ることが考えられるが、その湧水の水質は時間により異なっていると考えられ る。これは塩淡境界の移動を示唆している。 Dは潮汐変化の影響は見られず安 定した電気伝導度を示している。このことからDも湧出口であると考えられる。
C I Dは電気伝導度の値が高いので再循環水であると考えられる。
5‑3. CTDセンサーの水温と電気伝導度・
湧出量とリン酸イオン濃度の関係 8月2日
ピェゾメーターのリン酸イオン濃度を第1表に示す。 No.8は電気伝導度から 潮汐変化の影響があることがわかる。湧出量は満潮に最大を示さず、満潮前後
の方が大きい湧出量を示した。これはこの地点では潮汐変化の影響はあるが満 潮時に最大の湧出量になるわけではないことがわかり、潮位が高すぎても湧出 量は制限され、 SGDが湧き出しやすい潮位があることが考えられる。またリン 酸イオン濃度と湧出量は比例している。各地点の深度60cmに設置したピエゾ メーターのリン酸イオン濃度は0‑0.8ppm (第13表)となっていることから、
これは湧水が海床を通過する際に海床に沈殿しているリン酸イオンを含んでし まうためであると考えられる。このことは、 SGDが海床から沈殿している成分 を巻き上げており、海水の水質に影響を与えていることが示唆される。 No.17 は安定した水温、電気伝導度を示している。これは常にSGDが存在しているこ
とが裏付けられる。またNo.8と同様リン酸イオン値と湧出量は比例しているこ とから、湧水が海床を通過する際にリン酸イオンを含んでいると考えられる。
No.26は水温、電気伝導度ともに乱れながら変化している。これはこの地点は 安定した流動方向を持たないことが考えられ、その結果として湧出量も安定し ないと考えられる。
28
第1表 ピエゾメーターのリン酸イオン濃度
poヰ(ppm) No.1 No.8 No.17 No.26 Sea
0:00 X 0 0.4 0.1 0.5
3:00 X 0 0.4 0.7 0.5
6:00 X 0.8 0 0 0.8
9:00 × 0 0 0 0.8
12:00 X X X 0.1 0.6
リン酸イオン値は安定した流動方向を持たないと考えると、海床を何度も通過 することで、濃縮していると考えられる。つまりこの地点で再循環水の湧出が 卓越していると考えることができる。
5‑4.海底地下水湧出量と淡水含有率 8月2日
湧水中の淡水含有率を第2表に示す。各時間での海水(SW)の電気伝導度を
海水100%、干場(HW)の電気伝導度を淡水100%と考え、 No.1‑No.26の各 地点での電気伝導度の割合から、淡水含有率を求めた。
Cantent(%)=(No.x・EC ‑HW・EC) ÷SW‑EC X 100
より沖合にある地点ほど淡水含有率は減る傾向にある。これは比抵抗断面で、
沖合ぼど海水が地下に進入している結果からも裏付けられる。沿岸域において は、沖合の海床から湧出する地下水は地下で海水と混ざりながら湧出するため 電気伝導度が上昇する。そのため海床で湧出する際には電気伝導度は高い値を 示す。湧水に含まれる淡水成分の割合が沖合にいくにつれて減少するのは、沖 合ではより地下にまで海水が浸透しているため、海水がより影響することによ ると考えられる。
もっとも海岸に近い海底地下水湧出地点における海底地下水湧出量は,潮位 の変化によって異なるものの,最大湧出量は3月が21日の15:00の23.71/m2 瓜であるのに対し、 8月は2日の3:00の10.31/m2瓜であった。両時間ともに
干潮から3時間後である。また、同時間で陸域地下水と海水の電気伝導度から 求めた各月の淡水含有量は3月が91.1%, 8月が淡水含有量97.4%であった。
このことは、陸域から供給される地下水流量が多い時期には,再循環水の湧出 量も増加する傾向にあることを示しており、地下水と海水の圧力のバランスが 海岸付近の地下水および再循環水の湧出メカニズムに強く関係していることが
示唆された。
29
5‑5.調査地域における海底地下水湧出量の推定
今井観測所位置・湧出量推定範囲を第20図に、淡水湧出量の推定を第3表、
第21図に示す。
第2表 湧水中の淡水含有率
EC(mS/m) HW SW
0:00 1.04 44.5
3:00 1.07 44.2
6:00 1.01 45
9:00 1.08 43.2
12:00 1.03 44.2
EC(mS/m) No.1 No.8 No.17 No.26
0:0
3:0
6:0
9:0
12:0
0.199
0.79
2.19
3.5
2.19
0.00
20.ー
23.7
25.6
2ー.8
19.5
27.87
28.59
28.73
27.81
28.6
FWContent(%) No.1 o.8 o.17 o.26 0:0
100
100 56 38
3:00 97 4 36
6:00 9 4 37
9:00 97 51 37
12:0 5 36
30
部
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圏 藩 E トミつ
義 和 ヨ 固.I:I
第3表 淡水湧出量の推定
SGDVolume(I/m9/h) No.1 No.8 No.17 No.26
0:00 0.0 2.6 6.9 0.6
3:00 0.0 ー0.3 5.5 3.4
6:00 7.3 6.4 7.6 8.2
9:00 0.0 5.5 8.1 1.9
12:00 0.0 0.0 4.6 4.9
totalSGDVo山me 7.3 24.8 32.7 19.0
totaーSGDVolumelday 35.0 119.0 156.9 91.2
FWVolume(I/m2/h) No.1 No.8 No.17 No.26
0:00 0.0 2.6 3.8 0.2
3:00 0.0 ー0.ー 2.6 ー.2
6:00 7.3 6.0 3.3 3.0
9:00 0.0 5.3 4.1 0.7
ー2:00 0.0 0.0 2.6 1.8
totalR〝Vo山me 7.3 24.0 16.5 7.0
totalFWVolumelday 35.0 ーー5.4 79.2 33.4
SGDVolume(ton/day) 245.0 ー906.7 28ー2.5 82ー.3
FWVo山me(ton/day) 245.0 1846.3 1424.8 300.7
tota一 SGD Volume 1 day= total SGD Volume24h/5h total FW Volume 1 day=total FW Volume X 24h/5h SGD Vo山me (ton/day)
=totaJ SGD Volume No.1 ×7m+total SGD Volume No.8× 16m+total SGD Volume No.17 × 18m
+total SGD Volume No.26×9m 7m+16m+18m+9m‑54m(比抵抗電気探査ケーブル 測線長)
FW Volume (ton/day)
司ニOtalFW VoJume No.1 ×7m+total FW Vo一ume No.8× 16m+total FW Volume No.17 ×18m +total FW Volume No.26×9m 7m+16m+18m+9m‑54m(比抵抗電気探査ケーブル
測線長)
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SGDVolume(ton/day) 5785 FWVolume(ton/day) 3817 ShitomoRiver(ton/day)
44928
(2007年8月30日)
志登茂川の流量の約
8.5%
冬季には、夏季と同地点において夏季と比較して2.3倍ほどの湧出量を示した時間がある
冬
辛 :::.:.25.4%志登茂川の流量の約
宮岡他(2008)による海底地下水湧出地点と海底地形の勾配の大きく変わる地 域との関係において、 ISlの南北の沖積層基部等深度線‑10mの線まで同様の 湧出特性を示すと考え、比抵抗探査ケーブル全長54mX南北1000mの範囲での 海底地下水湧出量を推定すると、 8月2日の1日間で2411ton/dayと推定され た。そのうち淡水は1,539ton/dayと推定された。今井観測所で観測している志 登茂川の夏季の流量は44,928ton/day (2007年8月30日)となっていることか
ら、志登茂川の流量の約8.5%の淡水が湧出していると推測された。また、冬季 の海底地下水湧出量に含まれる淡水量を推定すると、 3,540ton/dayとなり、志 登茂側の冬季の流量は34,560ton/day (2007年2月12日)となり、志登茂川の 流量の約25.4%の淡水が湧出していると推定される。
34
6.まとめ
陸域の地下水位は3月調査時の方が8月調査時より高く、電気伝導度は低く なっており,その傾向は海岸に近づくほど顕著だった。このことは渇水期に相 当する3月の方が豊水期である8月よりも海底地下水湧出量が多いことを示し ており,比抵抗探査による塩淡水分布状況の結果からも裏付けられた。
もっとも海岸に近い海底地下水湧出地点における海底地下水湧出量は,潮位 の変化によって異なるものの,最大湧出量は3月が23.71/m2瓜であるのに対し, 8月の湧出量は10.3 1/m2瓜であった。また,陸域地下水と海水の電気伝導度か
ら求めた各月の淡水含有量は3月が91.1%,8月が淡水含有量97.4%であった。
このことは,陸域から供給される地下水流量が多い時期には,再循環水の湧出 量も増加する傾向にあることを示しており,地下水と海水の圧力のバランスが 海岸付近の地下水および再循環水の湧出メカニズムに強く関係していることが 示唆された。
潮位変化に伴うリン酸イオン濃度および電気伝導度は,海底からの地下水湧 出を示唆する時間帯と地下‑の海水進入を示唆する時間帯で大きく変化した。
また,これらの水質濃度が干潮時から満潮時にかけて安定した値を呈している 地点では,常に海底地下水湧出が存在していることが示唆された。
宮岡他(2008)による海底地下水湧出地点と海底地形の勾配の大きく変わる 地域との関係から,海岸付近における地下水湧出量を推定したところ,夏季で は志登茂川の流量の8.5%の海底地下水湧出量であるのに対し、冬季では25.4%
の湧出量が推定された。
以上のように,本地域沿岸域では,季節および潮位の変化によって海底地下 水流出特性は大きく異なり,湧出量は冬季に最大となるが干潮時または満潮時 に最大の湧出となるとは限らないことが明らかとなった。
35
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海釣り総合サイト 釣りの窓口 http://www.saltwater.jp
36
謝辞
本文をもって以下に挙げる方々に心より感謝の意を捧げます。
本研究を進めるにあたり終始ご指導いただきました宮岡邦任先生、宮崎清先 生ならびに現地調査及び分析機等の扱いなどに協力していただきました同研究 室の後輩諸氏に深謝し、感謝いたします。
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