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Designing of an art and sport class graduate school for teacher education Sakiko K

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(1)

教職大学院における芸術・スポーツ科目の授業設計

門脇早聴子

*

・小口あや

*

・吉野 聡

*

(2019 年 8 月 30 日受理)

Designing of an art and sport class graduate school for teacher education

Sakiko K

ADOWAKI

*, Aya K

OGUCHI

* and Satoshi Y

OSHINO

* (Accepted August 30, 2019)

1.はじめに

平成

29

年度及び

30

年度に改訂された学校学習指導要領の大きな強調点は「主体的・対話的で 深い学び」や「カリキュラムマネジメント」を取り入れた学習指導にある。教師と児童生徒の学習 指導上の主導性については,従前より振り子のように強調点が揺れ動いてきたが,期待される教育 成果を見通して学校教育目標を実現するためにカリキュラムをマネジメントするという考え方は,

至極当然のようで多くの学校教育現場で見過ごされてきており(田村,

2014

),アカウンタビリティ

(説明責任)が強く求められている現代において新しく重要な発想として注目に値する考え方であ ると言える。

カリキュラムマネジメントとは,学校教育目標を実現するための

PDCA

サイクルを見通す①全体 計画,各教科等の領域内容を俯瞰的に見通して単元を配置する②単元配列表,及び各単元を俯瞰的 に捉えて一つ一つの授業の位置づけを把握する③単元計画の作成が必須であると言われているが,

なかでも「教科横断的な視点で,その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと」

(カリキュラムデザイン)こそが,最も重要であると指摘されている(田村,

2019

)。教科横断的 な視点からの授業と言えば総合的な学習の時間が想定されるが,今回の学習指導要領の改訂では教 科毎の領域や内容そのものも有機的に結び付け関連させながら学習指導を進めていく必要性が求め られているのである。

このような各教科等を結び付けたカリキュラムの作成事例や実践事例は散見されるものの,その 成果について分析検討された論文は乏しい。また各教科論を学ぶのに精いっぱいである教員養成大 学でのカリキュラムに対し,将来的な教員のリーダーを育成する教職大学院でこそ教科の枠を超え た融合的な学習指導の在り方を学ばせる必要があるが,これらの教育組織で学ばせる授業設計の論 文は皆無に等しい。

       

*茨城大学教育学部(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1; College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512

Japan).

(2)

本研究では教職大学院における芸術・スポーツ科目の融合的な授業設計の在り方について検討す ることを目的とする。具体的には各教科論の基礎的知識を踏まえた融合の可能性について検討し,

実際の授業展開や学習評価の在り方に資する基礎資料を構想することにした。そのような努力は現 在求められている教科横断的な授業の構想に貴重な示唆を与えると考えた。

2.芸術・スポーツ科目融合の可能性

本授業を構想するにあたり,まずは音楽科,美術科及び体育科といった教科を想定しながら芸術

(音楽と美術間の融合を含む)とスポーツが融合できる可能性を探ることにした。

2.1 スポーツと音楽の融合

1

)音楽を伴った身体活動の意義

私たち人間は,音楽が聴こえると口ずさんだり勝手に身体が動いてリズムを刻んだりすること があるであろう。日本だけでなく世界の諸民族達は,宗教的儀式や祭り,労働,娯楽,人とのコ ミュニケーションにおいて,歌や音楽に合わせて感情や思いを身体で表現している。クラーゲス は,リズム現象について「音響と運動とのあいだにいわば精神的引力が働き,その結果,リズム的 音響はいずれもリズム的運動を引き起こし,リズム的運動はリズム的音響を引き起こす。」(クラー

1971

)と述べている。つまり歌や音楽と共に自然と身体が動き,踊るときも歌や音楽無しに踊

ることはできない,相互の関係にあるのである。

音楽と身体の関係は,大人に限らず子どもにおいても同じく,言語が発達過程である子どもにお いてはより必要不可欠なものである。ワロンは,子どもの精神発達にとっての身体,運動の重要性 について次のように述べている。「人間は身体の表れが相互に応じ合うことによって人と人が結び つけられ,それはもともと通じ合える機能を持っているからこそ,言葉や身振りの共有ができる」(ワ

ロン

1983

)。言葉が未分化な子どもは,身体の動きによって自身の心の動きを表出しているのであ

る。また,アノロフは音楽と身体表現について「認識力を高め,主体的にかかわらせ,そしてそこ にともなう情緒も養うゆえに,音楽的身体活動が幼児知能,情緒の相互発達に貢献するものは大き い」(アノロフ

1990

)と述べている。子どもは言語だけでなく,身体を通した音楽経験によって知 覚や認識力を高め,様々なことを学び吸収して行くのである。このように,身体による表現は人々 の言語に変わるコミュニケーション行為であり,また無意識のレベルでの思いを音楽によって表出 することができると言える。そこで教育においても,音楽と体育の融合的な指導が今後不可欠にな るのではないだろうか。

2

)音楽教育における身体活動の有効性

これまで日本の学校教育の中で,体育と音楽分野は,他の科目に比べて近い関係性を持っていた ことがわかる。明治維新後の学制頒布により,音楽教育の分野で教員養成の具体的な任務を担った のが,当時愛知師範学校校長であった伊沢修二(

1851-1917

)であった(森田

2010

)。彼は音楽教 育だけでなく,新設の体操伝習所主幹も兼務し,唱歌と運動の重要性を次のように説いている。「唱 歌は精神に娯楽を,運動は身体に爽快を与えることができる。それゆえ,唱歌と運動は一緒に行わ れるべきで,どちらかに偏るべきではない。しかし,幼い子どもには体操のような激しいものより

(3)

も遊戯のほうがふさわしい」(奥中

2008

)。このことからも,明治期の学校教育は,体育と音楽の要 素を補完しながら行おうとしていたことがわかる。

その後,体育と音楽の融合を図ったのが,師範学校教師であり舞踊家でもあった千葉躬治(みはる)

1903-1995

)である。昭和初期から千葉は,現在よく知られている赤と青色のカスタネットの前

身であるミハルスという楽器を作った人物である。この楽器は,両手に一つずつ持ちながら音を鳴 らすため,身体を動かしながら演奏することができる。彼は歌唱中心の音楽教育界にリズム教育を 取り入れることを提案し,ミハルス体操というラジオ体操のようなものまで考案し,日本全国の学 校で広めようとした。千葉は,ミハルスを使用する身体活動の効果について,「

1.

リズムを体得さ せる,

2.

音楽の基礎教育となる,

3.

舞踊の基本練習になる,

4.

動きの創作力を養なふ」(千葉

1949

という

4

点を挙げ,体育と音楽の両方の要素を認めていた。

平成

29

年度告示の小学校学習指導要領(音楽)解説において,次のように示されている。

この事項については,「

A

表現」及び「

B

鑑賞」つまりは全ての音楽学習において,必要に応じ身 体を動かす活動を取り入れることを示している。音楽科においては身体活動が目的になってはなら ないが,児童が音楽を感じる方法として,身体のあらゆる感覚を使って音楽を捉えていくことで,

想像力が育まれるのである。この想像力について解説の中で,「児童が思いや意図をもって主体的 に表現をしたり,曲や演奏のよさなどを見いだし音楽を全体にわたって味わって聴いたりするため には,全体的な見通しをもつという意味でのイメージが重要になる」(平成

29

年度告示の小学校学 習指導要領(音楽)解説)としている。音楽では楽譜に載っている音符を正確に声や楽器で演奏し たり音楽を鑑賞したりするだけでなく,聴いた音楽の特徴を捉えることや,作詞作曲した人の思い や意図や自分自身がどのように音楽を奏でたいのかということを思考・判断し表現することを楽し む。そのような学習で,音楽を感じ取る過程に身体を使うことは,有効であるとしているのである。

高倉は音楽で「体を動かす活動」として,次の3つに分類をしている(高倉

2017

)。

このように音楽に合わせて身体を動かすといっても,反応的に行う行為から創造的な表現方法ま で存在する。身体を①身体反応の例としては,鑑賞活動で同じフレーズが出てくる部分で手を挙げ ることで,クイズ感覚の中で目的を持った活動が挙げられる。また自分だけでなく他者の反応も見 ることが可能であり,同時にコミュニケーションを取りながらの学びとなる。

②身体運動は,音楽の諸要素を知識として知りながら実践の中で自ら思考し表現するという活動 である。例えば,ドレミといった音高を手の高さで示すことで,歌唱の際に明確な音高を意識しな がら歌い,同時に音の名前を一致させることが可能である。

音楽との一体感を味わい,想像力を働かせて音楽と関わることができるよう,指導のね らいに即して体を動かす活動を取り入れること。(第4章 

2

2

1

)イ))

① 身体反応 音楽の一部分に決められた反応を示すこと。鑑賞学習などでも有効。

② 身体運動 音楽に合わせて動くこと。これが音楽の諸要素をよりよく感じることにつな がり,音楽的な思考力を高めるのに役立つ。

③ 身体表現 音楽そのものを体の動きで表現すること。音楽との一体感を味わうのに適し ている。創造性も培うことができる。

(4)

③身体表現は,音楽を身体で表現するということであるが,音楽の旋律やフレーズを,諸感覚を 通して表現することができる。例として,サン

=

サーンスの《白鳥》の優雅な旋律をゆったりと表 現するという内容である。

このように,身体を使うことで見えない音を可視化したり,言葉で表現することが難しい思いを 言語化の前段階として表現したりすることで,より音楽を楽しみながら深く学ぶことができるので ある。

<スポーツと音楽を融合した事例>

平成

29

年度の小学校学習指導要領において,音楽科では郷土の音楽などの伝統文化に関する教 育の充実が求められている。体育科の

F

表現運動系においても日本の民謡を身につけ世界とも交流 する力や,即興的表現する能力を養うことが示され,中学校学習指導要領においては創作ダンスと して自分の表現したいイメージを身体で表現することが求められる。そこで,日本の有名な民謡の 一つである高知県民謡の《よさこい節》を使った活動を提案する。

現在は高知県で夏に開催される「よさこい祭り」に加え,様々な地域でイベントとして「よさこ い鳴子踊り」が披露されるようになり,全国に浸透していっている。「よさこい鳴子踊り」は,正 調と呼ばれる《よさこい節》に合わせ基本の踊りは決まっているが,多くのよさこいグループは編 曲やアレンジを加えた踊りを実践している。曲や踊りの原則は,鳴子と呼ばれる楽器を両手に持ち,

一部にでも《よさこい節》を取り入れて踊るということ以外は,振りや鳴子の鳴らし方,また衣装 も自由で門戸が広い。そのことから,北海道大学の学生により作られた北海道の「

YOSAKOI

ソー ラン祭り」を始めとし,多くのよさこいが広まったといえる。さらに,鳴子を使って踊りと共に音 を鳴らすということもポイントである。手首を振ることで音が出るカスタネットよりも簡易な楽器 であるため,誰でも扱いやすい。また音も歯切れが良く,集団で音が揃うと心地良い音色となる。

この「よさこい鳴子踊り」の実践は,体育と音楽の両面から融合的な指導が可能といえる。

第1段階 「よさこい鳴子踊り」基本をマスター

まずこの題材を行うにあたり,「よさこい鳴子踊り」がどのようなものなのかお祭りの様子を鑑 賞し,日本の音楽にも児童が親しみを持ちやすくかっこ良いと思える踊りがあることに気づけるよ う,入り口を広げることが必要である。その上で,音楽科では民謡の特徴を知るということを行う。

《よさこい節》の範唱を聴き,五線楽譜を見ながら自分たちも歌えるようにしていく中で,日本の 民謡の音階やこぶしと呼ばれる歌い方に気づくようにする。また踊りを鑑賞しながら,鳴子を鳴ら すタイミングやリズムの特徴を掴み,実際に踊りの中で音を鳴らしていく。体育科においては,踊 りの基本の振り付けを覚えていくのであるが,その中で日本の踊りの持つ固有のリズムを身につけ,

民衆の願いと共に踊り継がれている日本の文化を学ぶ。ただ,踊りと鳴子で音を鳴らす行為は同時 に行うことで習得しやすくなるため,音楽科と体育科の融合した活動が必要である。なお,鳴子は 高知県大阪事務所から借りることも可能であるが,図工の時間に自分たちで作る活動ができれば,

カリキュラムマネジメントとしての役割を持ち,より愛着をもって演奏するであろう。

2

段階 「よさこい鳴子踊り 〇〇小学校(中学校)編」を作り発表しよう

 これまでは正調のものを身につける活動であったが,発展形として自分たちオリジナルのよさ こい鳴子踊りを作る。実際に使用する音楽は,基本の正調でも良いが,《よさこい節》の様々に編 曲されているものから選択するのも創作意欲を掻き立てることとなる。実際に披露されている発展

(5)

的な踊りを鑑賞することも,想像を膨らませるきっかけとなるだろう。創作するポイントは,体育 科では自分たちのテーマに沿って曲想に合うよう動きをつける。音楽科では音楽づくりとして取り 入れたい鳴子のリズムを口唱歌(例:タカタカタン)や言葉のリズムから考えることができる。注 意点として,動きを考えずに鳴子のリズムにばかり注目してしまうと,実践した場合に踊りと鳴子 のリズムが合わないことになるため,ある程度同時に考える必要はある。また,日本の民謡の特徴 を捉えた表現という点は,大事にしたい。その上で,児童同士の対話の中で囃子詞(掛け声)等を 入れることや,集団の隊形を工夫することも可能である。

日本の音楽を学ぶことは難しいと,児童に限らず教師自身も考えてしまいがちである。しかし,

今回の事例は児童の自分もやってみたいという意欲を掻き立て,日本の音楽の特徴を身体で感じ取 り習得するという特色を持つ。このようにスポーツと音楽を融合した授業は,知識の習得だけでな く様々な感覚を働かせながら創造的な学びとなるのではないだろうか。

2.1.音楽と美術の融合

音楽も美術も表現活動である。だが,音楽と美術を聴覚的か視覚的かで区別することはできない。

特に現代の作品においては,聴覚的な媒体を構成要素の一つとする美術作品は数多くある。表現媒 体だけでなく,表現内容やその他の見方においても,聴覚的・視覚的要素は音楽・美術共に含まれ ている。よって,聴覚・視覚両方の力を用いることで,作品をより深く味わうことができるはずで ある。本節では,このような考えをもとに,非美術選修の

1

2

年次の大学生

16

名を対象にした 音楽的な要素を取り入れた美術作品の鑑賞実践の報告を行う。

1

)鑑賞する美術作品の選定

作品に表された色や形に音楽的要素を感じられるようにするためには,色や形に特定の意味を見 出せないものの方が鑑賞しやすいと考え,抽象作品を鑑賞対象にすることにした。そこで,ワシリー・

カンディンスキー(

1866-1944

)の作品「いくつかの円」

1926

年作,

140cm

×

140cm

)を鑑賞作品 として選んだ。「いくつかの円」は,題名の通りいくつかの円で構成された抽象画である。黒地に パステルトーンの赤や黄,青や緑様々な色や大きさの円が描かれている。

2

)音楽と美術を融合した鑑賞の方法

学生には作品を見せた後,それぞれの色や形を音に例えるとどのような音かを想像することを勧 めた。色や形を音に例える感覚を伝えるために使ったのは,マリンバ等の打楽器演奏の動画である。

打楽器を演奏するためのマレットには様々な種類があり,動画では柔らかい材質でできたマレット で叩くと柔らかい音が,固い材質でできたマレットで叩くと固い音が出ることを確認した。マレッ トの叩く部分は球状になっており,鑑賞作品である「いくつかの円」に描かれた円を彷彿とさせる。

この視覚的な共通要素を,音と形,ひいては色と結び付けるためのいわば呼び水として用いること にした。そこで,学生には「いくつかの円」と様々な種類のマレットで生み出される音とその演奏 の様子の動画を合わせて見せた後,音と色や形を結び付けて美術作品を鑑賞することを提案した。

3

)鑑賞の手順

音と色や形を結び付けて鑑賞するために,まずは作品の色や形を見なければならない。色や形を 見るための

手順として,「①作品に対する自分の第一印象を確認する」「②形や色を客観的に認識する」を行っ

(6)

た。①はまずは作品に近づくための活動,②はその後に,使われている色や形をよく見るための活 動である。②の具体的な活動は,「(ⅰ)絵のどこを見たのか,その視線の経路を線で描きこむ」「(ⅱ)

使われている色を言葉で書く」であった。(ⅰ)は,金子一夫の視線経路についての研究1をもと にした。美術作品の鑑賞に慣れていない鑑賞者は,作品のどこを見たらよいのかがわからない傾向 にある。それを解決するため,作品の見るべき場所を音と絡めて示し,どのように視線を動かせば よいのかを例として伝えた。そして,実際に自分の作品に対して行った視線の動きをカラーコピー した「いくつかの円」の中に書き込むように指示した。これらの活動の後に,「③作品の中で聞こ えてきそうな音や話し声,作品の色や形から連想したものなどを擬態語や擬音語,言葉などでカラー コピーした絵に書きこむ」活動を行った。書き込まれた言葉は次の項の通りである。

4

)学生の反応

学生には,色や形を音に例える鑑賞方法を提案したが,あくまでも提案であった。よって,必ず しも色や形を音に例えなければならないといった縛りはなかった。それにもかかわらず,

16

人中

12

人,

75

%の学生が色や形を音や音楽に例えていた。音の例えには種類があった。作中に示され た一つの円を「低くて大きい音」「高くて大きい音」「小さい音」のように一つの音として例えたも のもあれば,「ド」「レ」「ミ」「ファ」のように具体的な音階で例えた学生もいた。また,「高い音で やわらかい」「高い音でかたい」「低い音でやさしい」「低い音で強い」「ちょっと悲しめのオルゴール」

といった主観的に示した音で例えた学生もいた。さらに「一番低い音」「ミックス音」のように他 の音と比較する音で示したものもあった。さらに,一つの色や形だけでなく,ある程度の範囲ある いは作品全体を「おだやかな音楽」「ゆったりとした音楽」「交響曲」「弦楽器ではなく木管楽器が似 合う」と示したものもあった。それらは音の複合体としてイメージされたことが「音」ではなく「音 楽」と言う言葉が使われていることからわかる。また,「ザワザワ」「ドオーン」といった擬音語もあっ た。これも音である。また,「ファゴットのスタッカート」のように音だけでなく,リズムとも結 び付けて表した学生もいた。多くの学生が様々な言葉で音と色や形を結び付けており,音と色や形 を結び付けて美術鑑賞することは,それほど難しいことではないようであった。また,ワークシー トに書かれた作品についてのコメントからは,色や形の感受が広がっていった様子が伺えた。音と 色や形を結び付けての美術作品の鑑賞は,有効な方法であると考える。

5

)今後の展開

今回の実践で本節執筆者が想定していたのは,「いくつかの円」の作中の円を様々な音に置き換 えることだけであった。しかし,前述の学生の記述の中には,「スタッカート」や「交響曲」のよ うな音の連続性を表す記述もあった。音は一瞬だが音の連続は一定の時間を表す。音楽との融合に よる美術作品の鑑賞は,美術作品に時間の感覚をもたらす。美術鑑賞の新たな可能性をこの実践で 見いだせた。

また,「甘い音」といったように,味覚を表す記述もあった。作品には音楽(聴覚)的・美術(視 覚)的な見方以外にも,まだ見方があるのだろう。音楽と美術の融合的な学習指導は,音楽的・美 術的な見方以外のとらえ方で作品をとらえる活動への入り口となる。それは,様々な見方で世界を 捉えることにつながり,学習者の世界を豊かにすることへの入り口にもなると考える。

(7)

3.芸術・スポーツ科目の授業設計

以上のような芸術・スポーツの融合の可能性を踏まえ,具体的な教職大学院の授業として表

1

ように展開案を考えた。大きく分けると

3

つのパートで構成し,まずは①学校教育全体を視野に入 れた音楽科,美術科及び体育科の目標,内容・領域構成,学習指導及び学習評価の基礎的な理論を 習得させ,②それらを踏まえた芸術とスポーツの融合性について教員からの事例紹介を受けて自分 達でどのような授業ができるかをマイクロティーチング形式による指導を体験的に学ばせ(模擬授 業の実施),③どのような融合的学習指導ができるかをプレゼンテーションさせる形にした。

1 芸術・スポーツ融合科目の授業設計

授業の概要

・芸術・スポーツ系教科の特性,各教科・分野の理論と実践内容,内容の関連性・発展性について理解を

・各学校段階における各教科・分野の指導と評価に係る現状について,各種資料やグループディスカッショ深める。

ンや模擬授業を通して問題を把握し,課題を設定し,その解決方法を提案する。

・学修した内容の今後の活用方法についてグループで考察する。

授業計画

1

○シラバスを用いたガイダンス

・本授業の概要及び評価(評価規準及びその判定水準)に関する説明

2

○芸術・スポーツ系教科によるカリキュラム・マネジメント

・教科・分野横断的視点を取り入れた芸術・スポーツ系教科の融合可能性の検討

3

○芸術・スポーツ系教科の基礎的理解(1)

・各教科・分野の目標とその特徴

4

○芸術・スポーツ系教科の基礎的理解(2)

・各教科・分野における内容構成とその系統性

5

○芸術・スポーツ系教科の基礎的理解(3)

・各教科・分野における学習指導

6

○芸術・スポーツ系教科の基礎的理解(4)

・各教科・分野における評価

7

○教科横断による学習の構想

・受講者間(グループ編成)での協議(指導と評価の計画案の構想)

8

○異教科関連,教科横断による授業の実践的理解(1)

・授業設計(模擬授業

1・音楽と美術の融合的授業)

9

○異教科関連,教科横断による授業の実践的理解(2)

・授業設計(模擬授業

2・美術とスポーツの融合的授業)

10

○異教科関連,教科横断による授業の実践的理解(3)

・授業設計(模擬授業

3・スポーツと音楽の融合的授業)

11

○異教科関連,教科横断による学習の構想(3)

・授業設計(プレゼン

1・音楽と美術の融合的授業のあり方)

12

○異教科関連,教科横断による学習の構想(4)

・授業設計(プレゼン

2・美術とスポーツの融合的授業のあり方)

13

○異教科関連,教科横断による学習の構想(5)

・授業設計(プレゼン

3・スポーツと音楽の融合的授業のあり方)

・これまでの検討のまとめ

14

○学習成果発表

・「自然・科学技術系教科の理論と実践」、「言語・社会・生活科学系教科の理論と実践」受講 者との合同による学習成果発表会、質疑応答

第15回 ○学修のまとめ

・各担当教員から総括コメント

・検討成果の提出

(8)

4.まとめ

2019

年に改訂された学習指導要領では主体的・対話的で深い学びを保障する授業改善が求めら れると共に学校教育カリキュラムの全体像を視野に入れたカリキュラムマネジメントを踏まえた授 業実践が強く求められている。カリキュラムの全体像を踏まえた授業を行うことは至極当然のこと とはいえ,教科毎に授業目標や内容が編成されてきた歴史的な特徴上そのような視点はこれまで重 要視されてこなかった。

カリキュラムマネジメントという考え方は学校教育カリキュラムを俯瞰的に捉えつつ教科内での 授業のあり方を問うだけではなく教科間の融合も強く求められているが,そのような視点からの実 践的研究は皆無であり,基礎的な研究も今後求められると考えられる。

本研究では教科間の融合,とりわけ表現活動として共通項目多い実技科目である音楽科,美術科,

体育科を標的にした芸術とスポーツの融合というテーマで学習指導の在り方を考えてきた。特に教 職大学院での授業構想及び実践につながる知見を得ようと試みた。スポーツと音楽の融合可能性を 検討したり,音楽と美術の融合可能性を検討したりしながら具体的には教職大学院で各教科の特性

(各教科の基礎的理解:目標論,内容論,学習指導論,評価論)を踏まえた教授練習(模擬授業の実践)

やどのように融合させた授業を行えるかを整理させ発表させるプレゼンテーションの機会を設ける などの授業設計を行った。ただし,このような授業の大学あるいは大学院での授業実践あるいは授 業研究そのものが皆無に等しい現状において,その良し悪しは実践あるいは授業分析を通して批判 的に確かめられる必要がある。そのような意味で,本研究は教科横断的な授業を志向する教職大学 院での授業実践に向けた端緒的な授業研究として位置付けられると考えられる。

引用文献

奥中康人.2008.『国家と音楽-伊沢修二がめざした日本近代-』(春秋社).

金子一夫.2015.「視線経路を利用した鑑賞教育方法の構想 : 言語記述及び構図決定格子との関連」『美術教育学』

36, 139-149.

田村学.2019.『カリキュラム・マネジメント入門』(東洋館出版).

田村知子.2014.『カリキュラムマネジメント』-学力向上へのアクションプラン-(日本標準).

千葉躬治.1949.『千葉みはる創案 ミハルス教本 打ち方と踊り方』(白眉社).

森田尚人.2010.「伊澤修二の『進化原論』と『教育学』を読む-明治初期教育学と進化論」『彦根論叢』383,

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F. W. アロノフ.1990.『幼児と音楽』畑 玲子(訳)

(音楽之友社).

H .ワロン.1983.『身体・自我・社会 子どものうけとる世界と子どもの働きかける世界』浜田寿美男(訳)

(ミ

ネルヴァ書房).

ルードヴィッヒ・クラーゲ.1971『リズムの本質』杉浦実(訳)(みすず書房).

参照

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