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神奈川県新産のテツカエデ

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Academic year: 2021

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神奈川県新産のテツカエデ

著者 田村 淳, 入野 彰夫

雑誌名 植物地理・分類研究 = The journal of phytogeography and toxonomy

巻 51

号 1

ページ 75‑76

発行年 2003‑06‑25

URL http://hdl.handle.net/2297/48541

(2)

田村 淳・入野彰夫:神奈川県新産のテツカエデ

Atsushi Tamura and Akio Irino : Newly distributed Acer nipponicum H. Hara in Kanagawa Prefecture

神奈川県には日本産カエデ属

26

種のうち

18

種が生育している(浜口

2001)

が,今回新たにテツカエデ(Acer

nipponicum H. Hara)を加えることができたので報告する。

テツカエデは岩手県から宮崎県までの深山に分布し,とくに東北地方中南部,上越地方,北信地方などでは 普通の樹種である(倉田

1968)

。しかし,Ogata(1965)は,水平および垂直分布から当然分布してもよいは ずの地域に生育をみないことから不規則な分布を示すと報告している。また,生育地は一般的に標高

1,000 m

〜2,000 mの斜面中下部である(Ogata 1965)。神奈川県周辺の分布を神奈川県立生命の星・地球博物館所蔵 標本,『埼玉県植物誌』(高橋

1998)

,『静岡県植物誌』(杉本

1984)で確認すると,山梨県八紘嶺七面山(大

場達之

19052, 1961

6

11

日),埼玉県奥秩父(埼玉県植物誌),静岡県天城山・富士山(静岡県植物誌)

などの記録がある。これらより神奈川県内のブナ帯での発見が期待されていた。

発見したのは,丹沢山地最高峰の蛭ケ岳北面の標高

1,000 m〜1,300 m

にわたる数箇所である。いずれの生 育地もオオバアサガラが優占している群落内にテツカエデが小群状に混生していた。個体数は萌芽幹を合わせ て約

30

本あり,胸高直径は最大

25 cm

であった。果枝のついた個体はほとんどなく,1個体から標本用に果 枝を採集した。標本は神奈川県立生命の星・地球博物館に納めた。

自生木および採集標本をこれまでのテツカエデの記載(Ogata 1965)と比較したところ,樹皮が灰緑色で 平滑であること(Fig. 1 A)

,

花がほかのカエデ類よりも明らかに多いこと(Fig. 1 B),葉柄が葉身の

2/3

以上 であること(Fig. 1 C),果実が

20

以上と多いことからテツカエデであると確信した。

Yamazaki(2000)はテツカエデの地域的変異を調べ,東北から中部のものは雌雄同株,近畿以西のものは

雌雄異株であることから,前者を

subsp. orientale,後者を subsp. nipponicum

とした。さらに,それぞれの グループ内で葉裏面の毛のはえ方が異なるため,前者をキタノテツカエデ

var. orientale

とコウシンテツカエ

var. koshiense,後者をテツカエデ var. nipponicum

とナンゴクテツカエデ

var. australe

に区分した。今

Fig. 1. Acer nipponicumH. Hara in Kanagawa Pref. A : bark. B : Flowering branchlets. C : specimen.

June 2003 J. Phytogeogr. Taxon. Vol. 51. No. 1

75

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回採集したテツカエデは,葉の裏面葉腋に毛が少ないことからコウシンテツカエデの範疇に含まれると考えら れる。

この報告にあたり,標本および文献の閲覧でお世話になった神奈川県立生命の星・地球博物館の勝山輝男氏,

ならびに種種ご教示いただいた元神奈川県立生命の星・地球博物館の高橋秀男氏にお礼申し上げる。

引用文献

浜口哲一.2001.カエデ科.神奈川県植物誌調査会(編).神奈川県植物誌

2001, pp. 955―962.神奈川県立

生命の星・地球博物館,小田原.

倉田 悟.1968.テツカエデ.林野庁(監修).原色日本林業樹木図鑑

2

巻,pp.108―109, 218.日本林 業技術協会,東京.

Ogata, K. 1965. A dendrological study on the Japanese Aceraceae, with special referense to the geo- graphical distribution. Bull. Tokyo Univ. Forest 60 : 1―99.

杉本順一.1984.静岡県植物誌.812 pp., 4 pls.第一法規,東京.

高橋重男.1998.カエデ科.伊藤 洋(編).1998年版 埼玉県植物誌,pp.157―159, 374―376.埼玉県教育 委員会,浦和.

Yamazaki, T. 2000. Local variations of Acer nipponicum Hara. J. Jpn. Bot. 75 : 111―115.

(〒243―0121 厚木市七沢

657

神奈川県自然環境保全センター

Kanagawa Prefecture Natural Environ- ment Conservation Center, Nanasawa 657, Atsugi 243―0121, Japan)

植物地理・分類研究 51巻第1 20036

76

Fig. 1. Acer nipponicum H. Hara in Kanagawa Pref. A : bark. B : Flowering branchlets. C : specimen.

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