2016年度 第2回スピリチュアルケア研究講演会 報 告
著者 小野 久志
雑誌名 聖学院大学総合研究所Newsletter
巻 Vol.26
号 No.3
ページ 20‑21
URL http://doi.org/10.15052/00002906
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聖学院大学総合研究所の主催する、2016年度ス ピリチュアルケア研究講演会第 2 回が、2017年 1 月20日(金)に、講師に窪寺俊之氏(聖学院大学 客員教授)を迎えて、聖学院大学ヴェリタス館教 授会室にて、57名の参加の中で開催された。この 研究講演会は、本年度の基調テーマを、『人生の終 幕への寄り添いを考える〜かけがえのない人生へ の伴走と分かち合いのケア〜』と設定し、第 1 回は、
2016年10月に佐々木炎氏により「認知症の人と介 護者へのスピリチュアルケア」の講演が行われて いる。
第 2 回の今回、窪寺氏は「病いを生きる人への スピリチュアルケア」の論題のもと、窪寺氏が、
牧師として終末期にある患者と関わってきたこと による知見と体験から、死の意味をとらえ、一回 限りの人生の終わりに自己の生を肯定できるケア のありかたと役割について論じた。医学・医療の 急速な進歩に対し、疾患には対応できても精神的 存在である人間に向き合えない現状を窪寺氏は「高 齢者で慢性疾患患者に心蘇生法をもちいること」
を例として説明し、疾患のみでなく全人的存在に
向き合う必要性を強調した。そこに欠かせないの は「自己の意思表現」と「生命の質についての認識」
であり、これらを担うものとしてのスピリチュア リティの重要性が指摘された。
窪寺氏はスピリチュアリティの特徴を、いのち を支え、人生を意味付け、回復と赦しをもたらす ものと説明し、危機(病、老、愛する者との死別、
挫折など)における、自己コントロールの不可能 な状況における覚醒を契機としてあげた。このよ うに説明されるスピリチュアリティは宗教に近い が宗派には限定されない根底的なものとして認識 され、スピリチュアリティは、有限な存在として の自己を、「 2 つの極」、すなわち、超越的な外的 他者と、究極的な内的自己とが包み込む垂直関係 として描かれる、と窪寺氏はまとめた。
では、スピリチュアルケアの実際においては何 が整えられなければならないか、このことについ て窪寺氏は「傾聴=スピリチュアルな苦痛を聴く」
ことの重要性を指摘した。すなわち、個人の物語 を聞き、心のメッセージを聴くことから、「きく」
ことの重層性(聞く・聴く・訊く・利く・効く)
が統合され、それによって、苦のうちにある有限 な自己が「信-なにを頼りとしているか、望-な にを根拠としているか、愛-なにを大切にしてい るか」を理解し、そのさきにある「法」=いのち の法則を見出す、この過程を説明し、あわせて、
スピリチュアリティを育くむための要素として「宗 教的スピリチュアリティ、自然的スピリチュアリ ティ、文化的スピリチュアリティ、民俗・風習的 スピリチュアリティ」をあげ、また、スピリチュ アルケアラーの資質として、「優しさ・思いやり、
共感性、信じる心」を指摘して講演をしめくくった。
質疑応答では、生きることを拒否するケースへ の対処、現代において存在そのものを認める共同 体の創生は可能か、などが問われ、窪寺氏からは、
本人の意思をしっかり聞き取るための時間確保の 重要性(あわせて、本当の問題にふれずに終わっ
2016 年度
第 2 回スピリチュアルケア研究講演会 報告
報 告
会場内の様子と窪寺俊之先生
21 てしまうことへの心配)が指摘されるとともに、
スピリチュアルケアは個人の問題にとどまらず、
共同体(絆)の回復の面をも持つこと、すなわち、
ひとりひとりだけではなく、みんなが生まれ、生 きて来てよかった、と思える支援を考え合うこと から、スピリチュアリティを通じてヨコの関係も 再生される、と応じた。すなわち、存在そのもの を大切にしあうことから、そこにおいてひきださ れてくるはたらきや、はたらきあいのあることを 思い描くことを大切にしなければならない、とい うことである。
今回の講演は窪寺氏の豊かな経験に裏付けられ たところの、聴衆ひとり一人に自己のうちにある スピリチュアリティをみつめさせるかたりかけに 満ちたものであった。
(文責:小野 久志[おの・ひさし] 聖学院大学 大学院アメリカ・ヨーロッパ文化学研究科博士後 期課程)
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