鞍鮎問題の微分方程式解法
1
序 古瀬大山 ノ 、
コ
筆者は一昨年の本誌上において︑数學的計書法の微分方程式による解き方を述べた︒然し︑それが果して︑一般的
に牧束するものかどうか︑については︑何も言うことができなかつた︒
其後︑一ヶ年牛a間︑研究を績けた結果︑その牧束性を誰明できるようになり︑また︑方程式の形そのものについ
ても︑種々の改善を加えることができた︒昨年の末には︑この方程式を利用して︑線型計叢法を瞬間的に解くことの
できるアナログ型計算機の試作に成功した︒
以下︑これらの黙を取りまとめて︑敏學的計豊法・ゲーム理論・一般均衡論を研究されておられる方々の御参考に
供したいと思う︒
註
1﹁計豊法と分権的決定﹂︑商學討究︑第四巻第一號(昭和廿八年七月)︑一ー五二頁︒
第一章数學的解
鞍占蝋問題の微分方程式解法 析
423
︑
2
商學討究第五巻第四號第■節鞍鮎問題を微分方程式であらわすこと
ユ ます︑クーン及びタッカーの︑鞍鮎問題についての次の定理から出稜する︒
︹クーン及びタ・カーの定理︺z個の非負攣激よりなるヴェクトルxと︑m個の非負攣敏よりなるヴェクトルuと
の微分可能函敏$(劉層自)が︑
黛♂二︒)仏災図・ごβ︒)撚魯(吃埴巳h霞費口図WPqWO
なる關係式を成立せしめるところの或る非負値ゴ︑u︒(鞍鮎)を持つためには︑次の田から四までの關係の成立っこ
とが充分である︒
{一}轟眺ρ轟︑吃睦O鴇メ︒WO
り
㊤ 楽 W P 楽 ︑自 ︒ 11 0 堵 昌 ︒ W O
聾 $ ( 麟 噛訂 ︒ ) 肱 息 ( 吃 ℃自 ︒ ) 十 楽 ︑( 図 ! 吃 ) h o H 卸 昌 擁 W O
杢 $ 窟 ︒ 鴇ε W $ ( 〆 ︒ 髭 ︒ ) 十 楽 ︑( 詣 ー 亀 ) 幡9 巴 一 6 W O
恩・・(図3昌︒)急ξ(〆︒・目︒)̀鋳‑図鱒β・ー晶画︒念㌣ξ︾∵ $㎎﹂
﹁ズ魯巨(吃}
口 o ) \ 一
℃ ー )∴
.
︒図Nー図胴
一 鴇 (
昌 置
o )
ll 一
目 巨
1・ … ・・
昌o β
り
一424
これを使つて︑次の定理を誰明しよう︒
︹定理︺$(×博自)がuの任意の非負所與値に劉し︑xの総ての非負値について8β︒薯oであり(則ち︑任意の
βoWOに封して図が成立ち)︑また︑xの任意の非負所與値に封し︑uの総ての非負値について8β︿①図である(則
ち,.任意の図oWOに野して囲が成立つ)ならば︑次に示す聯立微分方程式の解は︑総での非負初期値に封し︑φの
3 鞍瓢に牧束する︒但し図と四とが何れも等號をとるときは︑牧束性をもたない︒
図員11窃(図ごSx,)$x戸堕図戸(O)WO一11ど⁝⁝℃N窮&(ξ1魯﹄)魯ご昌.スO)w.!ーB(郭
窃(暮)⊥随野︒.輩軽の
鞍黙問題を解くことのできる微分方程式としては︑右の個の他にも︑次のようなものを考えることができる︒
図μH$×一{寒図召)}
{瞬 鑑 逸 竃 ー ー ‑ ー ー ー ) §
け←8
難 響 器 難 騨 鱒 ヨ
け←8
これらが牧束するならぽ︑その牧束値はφの鞍黙になることは︑容易に誰明できる︒然しながら︑その牧束性につ
いての謎明は倒式のように簡輩には行かない︒以下㈲式についてのみ誰明を行い︑㈲︑例については︑その慮用を論
‑25する際に︑併せて論することとする︒4
鞍点問題の微分方程式解法
4 商學討究第五巻第四號
註'
1ロン︿.国昌昌碧畠﹀ン<.日賃oパo﹃"20邑置09︒噌即oσq旨ヨ葺言撃
中o訂び葺什ざa.ξ﹄・20鴇言碧鴇這部博唱﹄Q◎G︒博boヨ目9トの・ も6⑦8昌島団o蒔色遭Qの黒彗℃o㎝凶qヨ8竃9冨彗註o巴聾レニ︒︒件凶o・・碧畠
426
岬 第二節牧束値が鞍鮎に一致することの謎明
方程式個の初期値は非負であるから︑xのうちの何れか一つの憂激K︑が或る有限期間中引績き負になるためには︑
それが減少して♂HO軸を切る瞬間において︑曾一くOが成立たなくてはなむない︒ところが︑窃(図ご貸一)と
いう項が存在するために︑その瞬間に図一110となつて︑K︑は0のまま動けなくなつてしまう︑從つて︑xは︑初期
値が非負である限り︑決して負値をとることはない︒uについてもまた同様である︒この方程式㈲に從つて動く限
り︑x︑uの非負値條件は自動的に確保されることになる︒
㈲式の解が(網ロ≧ロ)に牧束するものと仮定すれば︑(図ロ彰ロ)は㈲式の特異鮎となり︑次の式を満足する︒
{闘職{麺晶鴛〜誌麟﹃鎚酔ひ胃ぜ訴(・・)︑
炉︑四の要素のうち︑0でない(則ち︑正の)要素岬︑19﹂については︑潴㍉晶﹄の値が何であつてもδの値は
必すーであるから︑
の{鷺鰐.{㊤)
が成立つ︒其他の.則ちOの値を取る要素押,︑19﹂については︑矧が成立つための必要十分條件は︑
5
'﹁轟賦︒τ 駅 ︒
となる︒
翻と煙mとを併せて考えれば,樹式の牧束値姐︑炉は︑田と囲の條件を悉く満足する︒同時にまた︑前提によりφは
図︑四の條件を既に満しているから︑クーン及びタツカーの定理により︑㈲の牧束値(図ロ勘βロ)は︑φの非負攣域に
おける鞍鮎に外ならない︒,'
ここで︑この牧束黙(メロ看ロ)が唯一黙しか存在しないことを確かめておく必要がある︒そこで︑(メロ植βロ)の外
にもう一つの別の⁝田︑図︑図︑⁝四の條件をみたす黙(図●"β●)が存在するとすれば︑クーン及びタッカーの定理によ
り何れも鞍黙であるから︑
S(罵●噂亀)肱息(図︒≧︒)肱息(図︒ヨ●)
$(図︒ヨ・)杁$(図●ヨ●)眺$曾3詔︒)
となる︒これが矛盾なしに成立つためには
息(図●ヨ︒)H息(吃L︒)H$(図3ロ●)H息(吃石●)
でなくてはならない︒從つて︑(図︒鳩吃)"(図︒乙.ン(図●造︒)噂(図.賃.)の四黙を結ぶ四邊形の等φ李面が存在し︑
その李面上の総ての瓢が田から四までの條件をみたす︒故に圏の牧束鮎が二つ以上存在するとすれば︑それは必らす
同じ等φ奉面上に存在しなければならない︒通常そうであるように︑φがx︑uについて連績な二次導函数を持つ場
合には・あ薔竺簿牧縮するから・一らの牧蕪は・里跨馨てし琴・從つて・φが驚ではなしに・姻
鞍点問題の微分方程式解法
7
6
商學討究第五春第四號鞍線鞍面等をもつ極めて特殊な場合を除き︑個の解は必らす︑唯一つの黙に向つて牧束する︒換言すれば︑小域的で28
4はなしに︑必らす大域的牧束性を持つことが保誰される︒
第三節牧束性の誰明
一般に微分方灘式の解の牧束性を誰明するには︑線型方程式であれば︑特性根の實部が負となることを立誰すれば
よい︒然し︑倒式のような非線型の場合には︑それは不可能である︒牧束黙の近傍でマク・ーリン展開を施して線型
化すれば︑その特性根を槍討することができるけれども︑その結論は︑あくまでも牧束黙の近傍における小域的牧束
性についてのみ當てはまるにすぎない︒
非線型微分方程式の大域的牧束性を槍討する方法として︑最近︑位相面による方法が盛んに使われるようになって
きた︒しかし︑この方法が有敷に使えるのは︑せいぜい三階(一階なら三攣敏)までであつて︑筆者の場合のような
一般的な多攣激函数では適用不可能である︒
そこで︑本論文においては︑黙列の牧束性を定める場合に塵々用いられるところの︑牧束黙との間の距離の時間的
攣化を見ることによつて︑この難黙を回避しようと試みた︒牧束が時間的牧束として表わされるならば︑それはま
た︑同時に︑牧束黙の安定性をも誰明することになるであろう︒
或る時黙における倒式の解の︑鞍黙(図3吃)からの距離rは︑左の式で表わされる︒
ロうげ.目鵠H図(図一‑誌)︑︒+図(8ー轟)圃
け この距離の時間的墜動傾向を見るために︑爾邊をtについて微分すれぱ︑
コふ ヨ
昌 11 図 ( 図 " i 詮 ) 卸 + 図 ( 5 1 晶 ) ヨ
Hμ
'
̀
'
7
ゆ
更 に ︑ 樹 式 か ら ・ x ︑ ・ u の 値 を 代 入 す る こ と に よ り ︑
れロコ
昌 11 図 窃 ( 図 ご 貸 一 ) . ( 図 一 ー 銘 ) 曾 一 ‑ 図 窃 ( ロ ご ー 魯 一 ) ( 〜 ー 轟 ) 魯 一 巨
μμ
となる︒
解(図噂μ)の蓮動過程において︑或る有限期間中︑引績き0の値を保つ若干の礎籔ゼ︑㎡があるならば.その期間
中は︑・
{録M∵麗騒
が成立たなければならない︒從つてまた︑
動(嶋℃$臓)110{占(轟・轟)"o
なる關係が保たれること︑言うまでもない︒それ故︑その期間中のrの攣動については︑
曽"欧(図1誌)貸陥昨(g㌣目哺)魯].,§
μH
㌦日管
( A同 C M U M 口 再 ノ 図 一 11 P 8 1‑ O 洋 び 一 し 轡 粥 〜 ,︹ 旨 = 輯 縛 び α 伽 轡 勃 縛 )
けμ
と書くことができる︒
他方︑前提によりφは︑任意の非負なるuに樹し︑xの総ての非負値について8昌︒署oであり︑また︑任意の非
鞍点問題の微分方程式解法
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︑
︑
8
商學討究第五巻第四號負なるxに封し︑uの総ての非負値について︒︒賢︿︒図であるから︑304$(図ヨレ)肱$(区2g>)+$ゆ︑(図!メレ)帖o円巴一属詣﹀り賃レWO{
$ ( 図 ♪ β ) W 叉 麟 ♪ 零 ) 十 忌 恥 ︑( 自 ‑ 自 レ ) h o 憎 三 一 × レ ≧ 召 > W O
右 の 第 一 式 に つ い て は
図 ← 図 ﹀ 博 図 ﹀ ← 図 噛 β レ ← 犀
■第二式については
図レ←層u弼←部レ堕β﹀当
と ︑ 符 號 を 童 日 き 換 え て も 差 支 な い か ら ︑
︑ 冷 ︑ ( 掴 ‑ × レ ) 賦 $ ( き 百 ) ー $ ( 図 ﹀ る ) h ︒ 円 瀞 = 区 ・ × ﹀ ・ ⇔ W o
P ‑ S 氏 ( 郵 ー β ﹀ ) 隣 $ ( き 号 ) ‑ $ ( 図 ヨ ) h 自 琵 夢 9 毫 W o
こ れ を 邊 々 相 加 え て ︑
$ 図 ︑ ( 菌 ー 図 レ ) 1 $ = ︑ ( 昌 レ 目 ﹀ ) 賦 $ ( 図 乙 レ ) I S ( 客 ﹀ 召 ) h o 円 瀞 一 一 図 噂ロ 藷 ♪ 口 > W O
が 得 ら れ る ︒ こ の ( 区 2 巨 レ ) は ︑ 非 負 値 で あ り さ え す れ ば ︑ 右 の 關 係 式 を 成 立 さ せ る か ら ︑ そ れ を 個 式 の 牧 束 黙 ( 掬 ︒ 匂
β ︒ ) に と れ ば
ねうり
︼ ( 図 一 ‑ 誌 ) $ 爵 ー ︼ ( 5 ー 蕊 ) 曾 ﹄ 肱 $ ( × 乙 ︒ ) ー $ ( 図 ︒ ヨ ) 隔 自 夢 嵩 図 ヨ W O 罵
μμ
となる︒ところで︑樹の牧束黙(メ︒≧︒)は︑(図噛詳)の非負攣域における函敏φの鞍黙であること︑既に前節におい
て鐙明すみであるから︑
︾
9 S ( 図 石 ︒ ) 肱 $ ( 図 ︒ 造 ︒ ) 肱 $ ( 図 ︒ 乙 ) h o 肖 筥 一 図 ヨ W O
●. ・ $ ( ど 吃 ) ー S ( 吃 る ) 肱 O ︑ h 自 9 ロ ど 望 W O
が 成 立 ち ︑ こ の 關 係 を 曲 式 に 代 入 す れ ば ︑
ヘコリ
図 ( 図 一 ‑ 銘 ) S × 一 ‑ 図 ( 8 1 墨 ) 魯 ﹂ 撚 O 出 霧 鉾 仁 き 目 W O
印け
に到達する︒
この㈲式の攣敏が圖式のそれに一致する場合を考えるならば︑
㌦巨蔚宴ヨ亭図(区一‑銘)貸一‑図(8ー甚)魯﹄賦図義驚一ー図一轟魯﹄
β昌 印
斗 目 ☆ ( へ 腰 C M ご M 一 算 ' 図 一 11 P 5 H O 録 が 一 己 言 O く ・ぺ ㊦ 勢 雪 醤 縛 が α 伴 轡 蜘 ↓ )
印μ
然るに︑囮式より
{讐 ∵ μ∵
でなけれぼならないから︑結局
㍉︑ヨ*
図 ( × 曲 ‑ 銘 ) 曾 一 ‑ 図 ( 8 ー 為 ) § 一 杁 O
μ
鞍点問題の微分方程式解法 し
431
覧
ρ
10
商學討究第五巻第四號
が成立つことになる︒覗
ところで︑㎝式を使つて︑㎜[式を書きなおすと︑
ロれリコ
羅 11 図 ( 図 一 ‑ 箆 ) 貸 回 ‑ 図 ( 5 ー 轟 ) 魯 ﹄
ドに
となる︒これを圃式に代入すれば︑
薗広O
が得られる︒右の式で等號が成立っのは︑解(目鳩")が︑
黛図ヨ⇔)11呉メ︒召︒)11念(ど亀)
なる匝域内にある場合,則ち,鞍黙(図︒鴇β︒)を含む等φ室間(黙︑面︑立膿︑等)上にある場合である︒この場合
には︑この等φ室間内の総ての黙は︑鞍黙になる︒この室間内では︑娠︑九は悉く0となり︑解は全く動かす︑軍一
鞍瓢の場合を除いて︑中立的安定歌態にある︒更にまた︑φがx︑uの双一次形式の場合にも︑x︑uの総ての非負
値について
$(塑亀)"$(図︒石︒)11$(図︒ヨ)
が成立ち︑從つて︒rは0となる︒但し︑この場合には︑解が鞍黙を原貼と見傲したとぎの座標軸のうちの一つを横
切る瞬間に﹂その座標軸方向への運動分力︑則ちφの導函敏が零となるだけで︑他の分力は正又は負の値をとるか
ら︑解は停止せすに︑運動を績ける︒蓮動を績けながら︑而も・rが0であるということは︑初期における鞍鮎から
の距離をそのまま保ちながら︑(N十影)次元超球面上を永久に振動し績けることに外ならない︒
右の二つの場合を除けば︑必す