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(1)

流通成果研究 の課題

高宮城 朝 則

Ⅰ.はじめに

流通の成果問題 は古 くか ら問われている。今 日までに為 された流通成果に関 する様々な議論 は,どれ もすべて何 らかの形で流通の評価を試みている

流通 を評価するために提示 された考え方を流通成果概念 と呼ぶ ことにす ると,流通 成果概念 は流通の多様な側面について形成 されてきた。換言すれば,流通の様々 な側面が評価の対象 とな り,評価を行 うために多種多様な方法が考案 され,ま た実際に評価が行われてきたということである

しか し,現在 までの ところ, 流通成果の内容 として何を考えればよいかについて研究者間での意見 の一致 は ない。また,提唱された成果概念のどれ もが克服 Lがたい概念上の問題 あるい は測定可能性 という問題をかかえている

さらに,諸概念 は何 らかの統合的枠 組の中で整理 され,関係づけられているわけではない。

本稿 は,流通成果に関す る諸問題を整理 し,その解明に向けて研究努力が注 がれるべき方向を明 らかにすることを目的 としている

以下ではまず,従来 の 流通成果研究において重視 された成果概念である流通費用 と流通生産性を中心 に して検討を加える。次に,個別的検討を整理す る形で流通成果概念形成 にお ける基本的問題を明 らかにし,今後の課題を検討す る

Ⅰ Ⅰ .主要成果概念の検討

( 1 )流通成果の測度の型 と階層性

流通成果 は流通の多様な側面について概念形成 されている

提唱された諸概 念に検討を加える前に,それ らを整理す る必要があるだろう

測度の型 と階層 性 という

2

つの側面か ら整理を行 うことが ここでは有用であ る

1

) 。 ここで,刺

目89〕

(2)

度の型による整理 とは,提示 された成果概念が成果を認識す る指標 として いか なる型のものであるかによって整理す ることである

測度の型 として通常考え られているのは,流通 システムの投入および産出という概念 に基づいた次 の 4 つである

①流通 システムの投入,( 診流通 システムの産出,( 参流通 システムの 投入 と産出の差,④流通 システムの投入 と産出の比,である

階層性 による整 理 とは,流通成果が流通 システムのもつ階層性 に対応 して種々な観点か ら判断 できるということに基づき,種々な流通成果概念がどの階層の成果を認識 しよ うとしているかによって整理することである

通常考え られる階層 として,① 流通 システムの構成素,②流通 システム全体,⑨課業環境,④全体 システム,

4

つの水準がある

2)

まず,測度の型の点か ら諸概念を整理すると以下のようになるであろう

流 通 システムの投入 とは,流通 システムがその行動を維持す るために必要 な諸資 源であり,諸資源 は人間,資金,資材,時間な どか ら構成 され ると考え られ

3)

。従来提唱された成果概念の中で投入に基づ く測度に相当するものとして, 流通費用,流通雇用量 4 ) ,小売店開設率 ・廃業率

5)

を挙 げることがで きる

れ らは流通への資源の投入がどの程度の大 きさであるかによって流通の成果を 把撞 し,評価 しようとす る

したがって,ここで 「 投入」 といって も,それ は いわゆる生産性指標においてその分母に位置づけられる 「 投入」を指すのでは な く,測度の型か らみて流通 システムの投入 と考え られる指標それ自体 によっ て成果を把握 し判断を行お うとするものを意味す る

6)。

1

)

田村正妃 「 流通 システム論の課題」,京都 ワークショップ 『マーケテ イ ング理論 の 現状 と課題』所収 ,白桃書房,昭和

4

8年

,64165

ペ‑ジ

2)

田村正紀 ,前掲論文

,64

ページ。列挙 した

4

つの階層 は大 き く区分 した ものであり, 各階層 はさ らにい くつかの階層的集計水準を持 ちうる。 この点 について は,久保村 隆祐 ,荒川祐吉 ( 蘇)『 商業学』,有斐閣 ,昭和

49

,486487

ペー ジを参照せよ。

3)

田村正妃 ,前掲論文

,63

ページ

4)

たとえば

,H.Barger

,

Distribution'sPlacein theAm'ericanEco'LOmy since1869,1955

を参照せよ。

5)

たとえば

,E.D.McGarry

,

"TheMortalityofIndependentGroceryStores inBuffalo and Pittsburgh,19191941

, "Jour

nalofMarketing

,

Vo

l

.12

,

No.1,July1947,pp.14‑24

参照。

6)

これ らの指標が必ず しも生産性 の投入要素 とな りえないとい うわけではない。

(3)

流通成果研究の課題

191

次に,流通 システムの産出とは,一般的に,流通 システムの行動 の結果生 じ た諸資源,および流通 システムの行動の結果生 じた流通 システムそれ自体 と環 境の状態である

7)

oこれ らの内容を表わす ものとして,消費者満足,経済成長, 公正性,安定性,反応性,生活の質,環境 の質 などが提示 されて いる

8)

。第

3

に,流通 システムの投入 と産出の差 という型をとる流通成果の測度 として,付 加価値 と利潤がある

付加価値 はそれ自体 として成果を把握す る指標・ tしてよ りも,む しろ生産性の産出要素を示す指榛 として取 り扱われることが多い。一 方,利潤 はしば しば流通費用に関す る議論において扱 われてい る9 ) 。最後 に, 投入 と産出の比 という測度型をとる流通成果概念 は,流通生産性ないし流通効 率 という名称の下で扱われる成果概念である。そこでは流通 システムがそれへ の投入に見合 うだけの産出をあげているかが中心的関心事である

次に,階層性の点か ら整理 してみよう

先に挙げた流通費用や流通生産性 な どは,複数の階層で集計 ・把握することがで きる1 0 ) 。流通費用 は,流通 システ ムの構成素水準では企業,事業所,活動の レベルで集計で き,また小売業 ・卸 売業別に集計す ることもできる。流通 システム全体の水準では社会的流通費用 として把握 されている

流通生産性 も同様 に,構成素の水準では小売生産性や 卸売生産性が,システム全体の水準では構成素を集計 したものとしての流通生

7)

田村正紀,前掲論文

,63

ページ。

8)

L

P.Bucklin and S.F.Stasch

,

"Problemsin theStudy ofVertical MarketingSystems

, "

tinL・P・Bucklin,ed

,VerticalMarketingSystem

1970,pp.57;E.Douglas,EconomicsofMarketing,1975,pp.599716;

T.H.Spratlen

,

"MacromarketingAnalyssOfAggregatePerformance:

Issuesandlnsigh ts

,

"inCombinedProceedingsofthe1975Springand FallConferences

,

American Marketing Association

,

Series No.37

,

p.566

などを参照せよ。

9)

産業組織論の枠組か ら流通成果の分析を試みる研究者 は,流通の成果 としての利潤 に強 い関心 を寄 せ て い る

た とえ ば次 の文献 を参 照 せ よ

。S.

H.

Sosnick

,

"Operation'alCriteriaforEvaluating MarketPerformance

, '

'in P.L Farrl

S

,ed

"

MarketStructureResearch,1964;J.C.Narver and R.

Savitt

,

The Marketing Economy : An AnalyticalApproach

,

1971;

E

.Douglas,op.cit.,pp.691692.

10)

田内幸一,相原 修 「 流通効率の測定,評価 について」,成瑛大学経済学部論集,

1

1 巻,第

1

号,昭和

55

,9

ページ,第

1

表参照。

(4)

産性が成果の測度 として重視 されてきた

流通 システムの環境の水準での成果 概念 は,流通 システムがその行動の結果 としてその環境 に与える影響を評価 す る目的で形成 され る。 この概念例 としては環境 の質がある1 1 ) 。最後 に,流通 シ ステムをその下位 システムとして含む全体 システムの観点か ら流通成果の評価 を試みる概念 としては,生活 の質、経済成長,消費者物価 の安定 を挙 げ ること がで きる。

以上の簡単な整理か らわかるよ うに,流通成果 は全体 としてみれば多元的に, 多階層的に概念化 されている。 ところが これ らの諸概念 を相互 に関係づ け,何

らかの統合的な枠組 の中で整序す るという試みはこれまでほとんど為 されてい ない。 これについては次節で論 じる

以下では,提唱 された流通成果諸概念 の 中で流通費用 と流通生産性 に限定 して検討を加える。なぜな ら,この

2

つ は従 来最 も重視 されて きた成果概念であり,また,これ らの もつ基本的 な問題点 は 他の成果概念 にも共通 して当てはまるか らである。

(2)

流通費用

流通費用 は流通生産性 とともに,これまでの研究において最 も重視 されて き た流通成果の 1つである

流通費用 は,流通 システムの もつ階層性 に対応 して, 種々な階層水準で集計で きる

流通 システムの構成素水準で,またその下位水 準 に位置す る活動,事業所,企業などのい くつかの水準で集計で きる。さらに, 流通 システム全体の水準で も把撞できる

従来の研究において も,種 々な階層水準での流通費用が分析の対象 とされて きた。 しか し,流通研究 において伝統的に重視 され,多大 な研究努力 が注がれ たのは,生産者か ら最終消費者にい たるまで生産物を流通 させ るのに必要 な総 費用である。 これは通常 「 社会的流通費用」あるいは 「マクロ ・マーケテイン

グ費用」 と呼ばれている1 2 ) 。以下ではこの流通費用 に焦点を絞 って論 じてい く

ll) T・H・Spratlen,op・cit.,p.566,ExhibitII.

また,田内幸一,相原 修,前 掲論文,1

8

ページも参照せよ.

12)

荒川祐吉 『 商業構造と流通合理化』,千倉書房,昭和

4

4 年

,322

ペ‑ジ参照。また,

R・Moyer,MacroMarketing,197

2( 三上富三郎監訳 『マーケテイングと社会』 ,

東京教学社,昭和4 8 年,8

9101

ページ)も参照せよ。

(5)

流通成果研究の課題

193

ことに しよう

流通費用の研究 は古 くか ら行われている

。19

世紀後半 にはアメ リカにおいて 農産物の流通費用が議論 されはじめている1 3 ) 。 しか し,流通費用 に関す る議論 が活発に行われるようになったのは第

1

次世界大戦以後であり 1 4 ) ,これ以後幾 多の経験的調査や研究が行われている。

代表的な研究には,二十世紀財団による

1929

年を対象 とした実証研究 『流通 費用 は多す ぎるか

』 15)

,バーガーによる

1869

年か ら

1948

年までを対象 と した長 期の時系列調査がある1 6 ) 。その他にも数多 くの研究の蓄積がみ られ るが,流通 成果の測度 としての流通費用 は近年 あまり重視 されな くなってきている

1

7 ) 。 そ れは研究者の関心が流通生産性へ と推移 したことが原因 と考え られるが,よ り 根本的には成果概念 としての流通費用が克服 し難 い問題点を包摂 しているため である。

流通費用に関す る問題の指摘 はこれまでにも行われている。以下ではこれを 概念上の問題,測定問題な らびに評価に関わる問題 に分けて整理 ・検討す る

( 彰概念問題

流通 システムへの投入 としての流通費用が流通成果の指標 とな りうるには, 概念的にはある一定水準の産出を所与 としなければならない1 8 ) 。 なぜ な ら,周 知のとお り,投入 とはある産出をっ くり出すのに要する諸資源である。したがっ て,どの程度の投入量によってどの程度の産出量が生み出されるかが当然関心、

の主対象である。つまり,産出を考慮することな しではその成果を判断す るこ

13)

たとえば,佐々由宇 「 「 配給費用問題」 の起源」 , 『現代流通論 の論理 と展開』所 収,有斐閣,昭和

49

,213234

ページ参照。

14)

橋本 勲 『 商業資本 と流通問題』,ミネルヴァ書房,昭和

45

,223

ページ

15) The Twentieth Century Fund

,

DoesDistribution CostToo Much

7 ,

1939.

16) H.Barger,op.cit.,1955.

17) R.D.Buzzell,"Marketing and EconomicPerformance:Meaning and Measurement

, ' '

Marketing Science Institute

,

Working Paper

,

Report No.72114,1972,p.7.

18)

久保村隆祐 「 配給の社会的機能 と生産性測定の問題点」,一橋論叢,第

4

8巻,第

2

号,昭和

37

,119

ページ ;片岡一郎 『 流通経済の基本問題』,御茶の水書房,昭

39

,215

ページ。

(6)

とはで きない。 ところが,流通費用によって成果を判断す ることは,投入 の側 面 のみを取 り上 げて産出については考慮 しないことを意味す る

それゆえ,概 念的には産出を一定 と仮定 しない限 り,流通費用 は,さらに投入 に基 づ くどの 成果測度 も流通成果の測度 とはな りえない。 この仮定下でのみ,流通費用 の大 小が評価の対象 となり,その可及的縮小が追及 目標 として妥当す るのである

従来の研究 は 「 産出一定」 という前提をどのように扱 うことで,流通費用 を 成果の測度 としていたのだろうか。 これに答えるには流通に対す る基本的認識

にまでさかのぼ らなければな らない。すなわち

,19

世紀後半以降の流通費用研 究 は,流通 は物理的製品 に実質的価値を全 く,あるいは殆 ど付 け加 えない,と

い うことを前提 としていたのである1 9 ) 。 この前提下では,ある製品 の流通費用 の低下 は望ま しい。社会的観点か らみれば,最終製品の最終価値に流通 が何 ら 貢献 しないとすれば,そのとき総流通費用 は成果の桔梗 とな り,流通費用 の縮 小 は追及 目標 となるのである。

しか しなが ら,流通 に対す る認識 は以後ず っと不変であったので はな く,認 識 の転換が生 じている2 0 ) .すなわち,流通 は製品 に価値 を付加す る,そ して,

その価値 の性質 と程度 は産業間,つまり製品間で異な り,ある産業 内で は経 時 的に変化す る,という認識が現われ,浸透 していったと考え られるのであ る

前者の認識 は付加価値説である

これについては後述す るが,この認識下で は 流通 はなん らかの産出を持

っ 。

そ うす ると成果の把握 は産出を考慮 しないでは 行えない。 しか も,産出一定 という仮定 は後者 の認識 によって除かれる

それ ゆえ,産出一定 という仮定を維持できるごく狭 い限定条件下以外 で は,投入 と

しての流通費用 によって成果を判断す ることは不適切 となる

今 日の流通論では,流通 は何 らかの ものをっ くり・ 出す という認識が一般的で ある2 1 ) 。 この認識 の下では流通費用 による成果の判断 はあま り有用で はな くな

19) R.D.Buzze

l l

,op.cit.,197

2

,pp.617,

20) Zbid.R.L.Steiner

,

Economic Theory and the Idea of Marketing Productivlty,MarketingScienceInstitute

,

Working Paper,ReportNo.

74108,1974

は この認識転換 の変遷 を長期間 について跡づ けている

2 1 ) 鈴木安昭,田村正妃 『 商業論』,有斐閣,昭和 5 5 年 ,5 4 ページ参照。

(7)

流通成果研究 の課題

I95

そうす ると,問題 は産出一定 と仮定 しうる条件をどのように して整備す る かということになる

これは流通の産出をどう規定 し,どう測定す るか とい う ことに依存す る。後でみるように,産出の概念化 と測定 については投入 の場合 よりも多大な問題があり,現在のところそれ らに関 して研究者間で論争がある。

②測定問題

流通費用に関す る第

2

の問題 は,具体的に流通費用をどう規定するか に関わ る

従来,規定問題 はその測定可能性 と深 く関連 して取 り扱われてきている。

今 日の流通論では,流通費用を流通機能の遂行 に伴 う費用 と概念化す ること が一般的である。すなわち,流通費用 は流通部門のすべての流通機関による機 能行為を費用 という点か ら評価 したものである2 2 ) 。このような概念規定 か ら流 通費由を把握す るための

2

つの要件が浮び上がる。第

1

に,流通機能を遂行す るすべての流通機関のその機能行為に伴 う費用を流通費用に含めなければな ら ない。第

2

に,その前段階 として流通機能を明確 に規定 し,種々の機能 ごとに その費用を測定 しなければならない。

流通費用を測定す るために従来 いくつかの方法が提示 されているが,最 も代 表的な方法 は消費者価格 と生産者価格 との差額 (スプ レッド)による方法であ る2 3 ) 。 この方法は主 として上記の第

1

の要件を満たさないということで数多 く の批判を受 けている。消費者価格 と生産者価格の差額 として流通費用を捉える ことによって,生産者が遂行す る流通機能に伴 う費用が欠落するという問題が 生 じる2 4 ) .この欠点 はスプ レッド法により流通費用の測定を試みている研究者 達によって も意識 されている。たとえば二十世紀財団の実証研究 は,流通費用 を流通機能の遂行に伴 う費用 と概念規定 している。 しか し,生産 と流通 を明確 に区別すること,したがって各々において遂行 される諸機能を生産機能 と流通 機能に区別す ること,さらにデータを入手することが困難であるとして,測定

22)

前掲書

,63ペ ー ジ。

23) TheTwentieth Century Fund,op.cit.;H.Barger,op.cit.;

E

.A.

Duddy and D・A・Revzan,MarhetingIAn InstitutionalApproach,

1953

などの研究で採用 されている

24)

久保村隆祐 ,荒川祐吉 ,前掲書

,491492ペ ー ジ。

(8)

の便宜上 スプ レッドによって流通費用を捉えているのである

25)。

スプ レッド法の持つ欠点 はこれだけではない。 この方法では流通段階におい て生産機能が遂行 される場合,それに伴 う費用が流通費用に付加 されることに なる

研究者 によっては,生産段階での流通費用相当分 と流通段階での生産費 用相当分 ははば相殺 される,と仮定で きると主張 している

26)。

しか し,両者 の 費用相当分が実際に正 しく相殺 されることは示 されていない。その仮定が概念 的には適切でないことは明 らかである。

さらに,第

1

の要件を考えるなら,消費者による流通機能の遂行 に要す る費 用が流通費用に包含 されなければな らない。従来の流通費用研究において は, 流通費用をいわゆる営利経路の費用 として概念化す ることが一般的であ る2 ' ) 0

しか し,流通機能遂行 に伴 う費用 として流通費用を規定 し,また,流通機能行 為の主体 として消費者を含めて概念化する限 り,消費者による費用を流通費用 に含めなければな らない。消費者による費用の内容の検討 は既に為 されている が2 8 ) ,データの入手可能性が小 さいことか ら,消費者費用 を含んで流通費用 を 経験的に推計す る試みは現在までのところない。

以上のような問題点を克服する方法 として,流通機能別に費用 を計測 し,そ れを合計することにより流通費用を把握す る試みがある2 9 ) .概念的な適切 さに もかかわ らず,機能別集計 は広告費や輸送費の推計などのごく限定的な領域 に おいて採用 されているにす ぎない。それは適切なデータが存在 しないか らであ るが、より大 きな理由は,流通機能の規定についていまだ明確にはされていな いことにある3 0 ) 。流通機能を明確に規定できたとして も,さらに利潤 の取 り扱

25) TheTwentiethCenturyFund,op.cit

,

,pp.68.

26) R.Co

,DistribzLtioninaHighLevelEconomy,1965

(森下二次也監訳

『 高度経済下の流通問題』,中央経済社,昭和

46

,156

ページ).

2

7) 鈴木安昭,田村正妃,前掲書

,59

ページ。

28)

前掲書 ,5 7 ページ

29)

た とえば

,H.H.Maym ardandT.N.Beckman,PrinciplesofMarheting

,

4thed.,1946,pp.655656

参照。

30)

荒川祐吉 『 現代配給理論』,千倉書房,昭和

35

年,第

7

(181198

ページ),および,

森下二次也 「 配給の

FunctionalApproach

について」,大阪市大経営研究,辛

22

号,昭和

31

,1‑4

4ページ参照O

(9)

流通成果研究 の課題

)97

いについて問題が残 る。第

1

に,流通費用の中に利潤を含めるか否かが問題 で ある

2

に,利潤を流通費用 に含むとして も,生産者の得 る利潤 を生産 によ る部分 と流通による部分 とにどう区分するか という問題がある3 1 ) 。 これ らの概 念的問題 について長い間論争があり,また測定問題 も解決 されていない。

③評価問題

流通成果の測度 としての流通費用に関する第

3

の問題 は,その評価に関わる。

既述のように,流通費用の測定には種々な困難が存在す るが,たとえ流通費用 を正確に測定で きる方法が確立 されたとして も,得 られた流通費用の大 きさが 妥当なものであるかどうかをどのように判断す るか,という問題が存在す る

計測 された流通費用 は,それが絶対額で示 されようが,消費者価格 中に占める 比率 として示されようが,費用の点か ら把握 した流通成果の状態を示す ものに す ぎないのであって,それ自体 によって流通 システムの良 し悪 Lを判断す るこ

とはできない3 2 ) 。

流通費用によって捉え られた流通成果を評価す るために,従来い くつかの方 法が採用 されて きた。第

1

の方法はクロスセクション分析による評価である。

これには商品別の比較,卸売業 と小売業の比較などい くつかの方法があるが, 流通費用研究が最 も強調 して きたのは生産費用 との比較である。 これは商品の 生産に要 した費用 とその流通に要 した費用の合計中に占める流通費用の比率の 大小によって評価す る方法である

流通の比率が生産 よりも大 きい場令, 「流 通 は生産よりも多 くの費用を要する

よって,流通は能率的でない 」 とい う評 価がなされ ることになる

㍊)。

この評価が不適切 であることは明 らかであ る

「 能率的

」(efficient)

であるかどうかは,その費用に対 して提供 された もの, つまり投入に対す る産出を考慮 しないことには判断できないか らである。 この 評価方法では産出について何の考慮 もされていない。 この方法が不適切である

3

1 ) 荒川祐吉,前掲書 ( 昭和

35

年)

,266ペ ー ジ

32)

田村正妃,石原武政 ( 蘇)『日本流通研究の展望』,千倉書房,昭和

59

,1920ペ ー

ジ 。

33) T.N.Beckman

,"

Criteria ofMarketing Efficiency

, "

TheAnnals of AmericanAcademyofPoliticalandSocialScience,May1940,p.138.

(10)

ことはしば しば指摘 されている叫。にもかかわ らず,この種の見解 は根強 く表 明 される。それは,生産活動の産出物が主 として有休財の形をとって客観的 に 把握 Lやすいのに対 して,流通の活動 とその産出物が目に見えに くく,客観的 に把握 Lに‑ くいことに起因 していると考え られる3 5 ) 0

流通費用評価の基準を得 るための第

2

の方法 は時系列比較である

流通費用 を時系列で計測 し,その趨勢を捉えることによって評価を行 う方法である

36)0

これによる単純な評価では,計測 された流通費用が経時的にみて増加す る時, 流通 は 「 非能率」 と判断 されることになる

この評価が妥当す るのは,その観 察期間中に流通による産出が一定である場合に限 られる

流通産出としてたと

えばサービスを考える場合,現実におけるサー ビスの内容および量 は経時的 に 変化することが しば しばである

したが って,産出を一定 と仮定す ることは, 期間が長 くなるほど困難になる。

時系列比較において,流通費用を生産費用 との比較,つまり商品最終価格 に 対す る比率 として評価 しようとす る場合,さらに留意 しなければならない点が ある

生産部門において,たとえば生産性の上昇などにより生産費用が下落す る場合がある。 この時,流通 システムの構造が安定 し,提供 され るサー ビスが 一定であるとして も,流通費用の比率は上昇す る

これは生産部門の成果向上

を反映 した ものであって,その限 りでは流通の成果 とは何 ら関係がない。

以上

2

つの評価方法では流通費用の大小を判断す る客観的基準を導出できな い。評価基準を得 るための第

3

の方法 として,一定の環境下における理想的 な 状態を仮定 し,そこか ら基準を設定する試みがある

3

7 ) O これは,生産物 のすべ てが産業資本家によって直接販売 される場合を理想状態 と仮定 し,そこで必要 となる流通費用を基準 として設定す る。 この基準値 と現実の値を比較対照す る

34)

たとえば

,F.

E

.Clark,PrinciplesofMarketing,1922,pp.494‑545で既 に

指摘 されている。

35)

田内幸一,相原 修,前掲論文

,1

1 ページ.

36) H.Barger,op.cit.

が その代表的研 究 で あ る

また次 の文献 も参 照 せ よ

o

P. D. Converse

,

"The Puzzle of Marketing Costs

, " J

ouTnal of Marheting,Vo

l

.21,No,4,April1957,p.4

41

.

37)

荒川祐吉,前掲書 ( 昭和

35

年)

,268273ペ ー ジ 。

(11)

流通成果研究の課題

199

ことにより評価を行おうとす るものである

この方法に関 してその測定に向け て若干の検討が加え られているが3 8 ) ,現実の値 はともか く基準値 を実際 にどう 測定す るかについて多大な困難があ り,現在までのところ試みの進展 はみ られ

ない。

(3)

流通生産性

流通生産性 は,流通 システムの投入 と産出の比 という測度の型をとる流通成 果概念である3 9 ) 。これによって流通成果を判断する試みは,流通 の種 々な側面 について,また種々な階層水準 において行われてきた。また,最近 の経験的研 究では様々な型の生産関数が導入 されて分析が行われている

流通成果の測度 として生産性を考える限 り,投入 と産出の内容規定が最 も重要であ り,かっ従 来最 も論争のあったところである

そこで以下では,投入 と産出に分けて流通 生産性を考案す ることにしよう

①投入

既述のように,流通 システムの投入 とは流通 システムがその活動を行 うのに 必要な諸資源であり,人間,資金,資材,時間などか らなる

生産性分析 にお

いて従来最 も重視されたのは労働である

労働が投入 として捉え られ,労働生産性が流通成果概念 として重視 されて き たのは様々な理由か らである

。 1

つには,経済において流通部門が相対的 に労 働集約的であるか らである。あるいは流通業 において費用の点か らみて投入労 働量が大部分を占めていることを指摘できよう

しか し,最大の理由は労働力 があ らゆる活動を遂行す るのに普遍的に必要であり 4 0 ) ,考え られ る最 も重要 な 生産要素 とみなされて きたか らである4 1 ) 。さらに経験的計測のさい,労働 に関

38)

田島義博 「 商品流通 と流通効率」,ビジネス レビュー,第

17

巻 ,第

1

号 ,昭和

44

年,

2627

ペー ジ。

39)

流通生産性 は流通効率 と呼ばれ ることもある。以下 で は流通生産性 とい う語 を使 用す る。なぜな ら , 「 生産性」 といえば投入 に対す る産出の比 とい うことが直接的 に連想 されるが , 「 効率」 とい う名称 はどち らか とい うと使用され る個 々人 によ っ て異 なる意味内容を付与 され ることが多いか らである

40) C.A,Ingene

,

"LaborProductivityinRetailing

,

''JoualofMarheting

,

Vo

l

.46,Fall1982,p.76.

4

1 ) E

.I)ouglas,op.cit.,p.6

81

.

(12)

す るデータが他の生産要素に比べて入手 しやすいとい うこともある

Q

投入の要 素 として労働のみが重視 されることは,生産性を把握す る上で 1 つの障害 にな

なぜな ら,流通業,とくに小売業 において労働 を資本に置換することによっ て成果を改善す る動 きがあるか らである4

2)

その最 も卑近な例 はセル フサー ビ ス方式の導入である

流通 における労働の測度 として利用 されて きたのは従業者数 ,入時,賃金 な どである

しか し,どの測度 も問題 をかかえている

データの点か らみて入手

しやすいのは従業者数である

これが労働の測度 として有用であるには,すべ ての労働者 の質 は同 じであるという仮定 に立たねばな らない。現実にはこの仮 定を維持す ることは困難である

熟練労働者 と未熟練労働者 ,常時従業者 と臨 時従業者が同質だ と見なす ことはで きないだろう

労働生産性分析において質 的側面が重要である場合 には,年令,性別,教育水準などの近似的指標 を用 い て調整 しなければな らない4 3 ) 。

従業者数 よりも労働を うま く把握で きるという考えか ら,入時数が測度 と し て広 く利用 されている

それは流通業,とくに小売業 において臨時従業者が多

く雇用 されていることによる

しか し,入時数で も労働 の質の問題 は解決 され ない。実際の計測では質を反映す るように何 らかの方法で調整が行われること が多 い。 しば しば行われ るのは賃金 による加重である

ところが,賃金 を用 い ることで別の問題が生 じて しまう

賃金 は従業者の能力により決定 されるとい うよりも,む しろ労働市場 における需給の相互作用の産物である4

4)。

したが っ て,労働の質的差異を的確 に反映す るとは言えない。

労働の質の側面 についてはもう

1

つ問題がある

それは経営者ない し所有者 および家族従業者 をどう取 り扱 うかという問題である

これは

2

つの側面で扱 いが困難である

まず,経営者ない し所有者 は通常,従業者 よりも熱心 にかっ

42)

バ ック リンは小売生産性分析 に資本 の導入 を試 みて い る

(L P.Bucklin,"Capital productivityinRetailing

, "

in D.A.Gautschi,ed

,Productit)ityand

E

fficiencyinDistributionSystems,1983,pp.6373)0

43)

E

.Douglas,op.cit.,p.68

1 .

44) Ibid.

(13)

流通成果研究 の課題

201

長時間働 くと考え られる4 5 ) 。また,小規模企業では家族従業者が労働力 とな っ ていることが多

い 。

集計にさい して これ らの点を考慮す る必要がある。しか し,

これとは反対の側面がある

流通部門において企業家的行動原則をとらない生 業型流通業が大 きな比重を占めている4 6 ) 。労働の質 という点で企業家的行動原 刺,つまり利潤極大化行動をとる場合 とそうでない場合 とではなん らかの差異 が生 じるはずである

労働に関す るもう

1

つの重要な問題 は,消費者の労働投入が従来殆 ど考慮 さ れていないということである

これは

2

つの点で問題になる。第

1

に,既述 し たところであるが,流通 システムにおいて消費者 は流通機能遂行の主体 の

1

つ である

したがって,流通 システムの投入 として労働を把挺す るさい,消費者 の投入する労働を考慮 しなければな らない。第

2

に,消費者の労働投入 は産 出 との関連で問題になる

流通の産出が消費者満足 として規定されることがある。

この規定の妥当性 は別に して,この規定の下では,産出としての消費者満足 に 対応する投入 は消費者の負担する犠牲であると考えるのが論理的である

4

7 ) 。 こ の場合,消費者の労働投入を把握 して生産性の投入要素に位置づけることが不 可欠である

流通 システムの投入 として資本が重要であることは既 に述べた。流通 システ ムにおける資本 は,( ∋店舗などの固定設備,( 卦商品在庫の保管 ・荷扱 い ・移動 用の設備などの準固定資本,⑨営業用備品,商品在庫などの変動資本,か ら成 ると考え られる4 8 ) 。具体的計測では店舗面積がよ く利用 される

ここで は,た とえば小売業おける壁面展示や立体展示をどのように扱 うのかなどの問題があ る

流通 システムの投入 として重視 しなければな らない要素に経営がある

経営 能力の差異が生産性に大 きく影響を及ぼす ことは明 らかである

しか し,これ を示すデータの入手可能性 はきわめて小さい。この側面を把撞す る指標 として

45) C.A.Ingene,op.cit.,p.77.

46)

田村正妃 『 大型店問題』,千倉書房,昭和

56

,103ペ ー ジ

47)

荒川祐吉 ,前掲書 ( 昭和

35

年)

,265ペ ー ジ 48) E.Douglas,op.cit.,p.682.

(14)

利潤が利用 されることがある

これは 「 利潤 は経営者の能力を反映す る」 と仮 定で きるな ら適切な経営の指標だろう4 9 ) 。 しか し,利潤 は独 占的利益 を含む可 能性があ り,成果の投入測度 としての取 り扱 いが困難な指標である

( 塾症出

産出に関わ る問題 は投入のそれよりも複雑であ り,かつ論争の多 いところで ある。流通産出に関す る従来の議論 は,概念規定 に関わるものと測定問題 に関 わるものに分 けることがで きるだろう

測定可能性 とは関係な く流通の産出として提唱 されて きたのは,消費者満足 とサービスである

流通産出を消費者満足 と規定す る研究者 はアメ リカにおい て もわが国において もみ られる5 0 ) 。 とくにアメ リカではこの規定が多 くの論者 によ り為 されていた。 この規定 は流通に関す る客観的分析か ら導 き出されたと いうよりも,む しろそれに対す る規範的認識 に基づいている

流通産出を消費 者満足 と規定す ることの困難性 は既 に明確 に指摘 されている。第

1

に,消章者 満足 は主観的,心理的要因に大 きく支配 され る概念であり,客観的分析 が きわ めて困難である5 1 ) 。 この批判 に対 して,近年消費者満足研究 が活発 に行 われ, その客観的把握 に向けて努力が傾注 されていることを指摘 しなければならない。

しか しなが ら,確かに科学的分析手法の発展 とともに客観的分析 の困難性 は解 消す るか もしれないが,それで もなお問題 は残 る

消費者満足を流通産 出 と規 定で きるには,それが流通固有の産出であるという前提に立 たなければな らな い。実際のところ消費者満足 は経済過程全体の産出と見 なす ことが適切である か ら,この規定 は論理的 とはいえない5 2 ) 。 こうした批判のためか,近年 で は消 費者満足 は流通産出 としてそれほど強調 されな くなっている

49) Ibid.

50)

たとえば,フィリップス,ダディとレブザ ン,片岡一郎が この見解 を とる

。C・F・

Phillips

,

"A Critical Analyss Of Recent Literature Dealing with Marketing Efficiency

, "

JournalofMarketing

,

Vo

l

.5

,

No.4

,

April 1941;E.A.DuddyandD.A.Revzan,op.cit.,p.562;

片岡一郎,前掲書,

213214

ページを見よ。

5

1 ) 荒川祐吉,前掲書 ( 昭和

35

年)

,262

ページ。

52)

前掲書

,263264

ページ

(15)

流通成果研究の課題

203

一方 ,サー ビスはその測定可能性 が小 さいにもかかわ らず,伝統 的 に重視 さ れてきた産出概念であり,最近 の研究成果で もこの規定が しば しば為 されてい る

たとえば,バーガーは流通 ない し流通機関が消費者 に対 して提供す るサー ビスを流通産出と規定 している5 3 ) 。最近では 「 買手 に対す る財貨の販売 にさい して遂行 され る種 々なサー ビスの総体

」54)

,あ るい は 「財貨 とサー ビスを潜在 買手 に物理的,法的にアクセス可能 にす る一群 のサー ビス」5 5 ) とい う規定 が行 われている

このような産出規定 はどれ も同 じ特徴を有 している

流通産出を営利経路の 産出物 として概念化 しているとい うことである

流通成果 ,とくに流通生産性 について論 じる研究では,たとえ明示的にで はな くて も,流通産 出を営利経路 の提供す るサー ビスとして概念規定 される場合が多 い。それは流通産出の測度 として具体的に何を選択す るか という問題が取 り扱われる時に共通 してみ られ る特徴である。そ こで,この産出規定 を前提 に して,経験的計測 の さいに選択 される測度 を個々に検討 しよう

従来提示 された測度には販売額,グロス ・マー

ジン,付加価値 ,取引数 などがある。

まず,販売額 はデータの入手可能性の容易 さか ら経験的計測 において最 もよ く採用 されている測度である

この

度が成果の産出指標 として妥当す るには

2

つの仮定 に基づかなければな らない。第

1

に,類似 した企業や事業所 の産 出 は金額表示 されるということ,第

2

に,提供 されるサー ビスは販売額 と一定 の 関係を持つ ということである5 6 ) 。第

1

の仮定 は,販売 された財貨 の物理 的単位 を基本的には産出量 として捉えるが,商品間での集計可能性を考慮 して販売額 が採用 されることを示 している。すなわち,販売額 は価格 によって加重 され た 物理的単位 と等価であ り,この加重 は異なったサー ビス水準 をイ ンプ リシッ ト

に反映す るとい うことにな る。価格がサー ビス水準を的確 に反映す るか どうか が ここでは問題 になる

2

の仮定 は,サービスの提供において規模の経済 が

53) H.Barger,op.cit.,p.20.

54)

田村正紀 『日本型流通 システム』,千倉書房,昭和

61

,332ペ ー ジ

55) E.Douglas,op.cit

"

p.676.

56) Ibid.,p.677.

(16)

発生する場合,サービスと販売額 は一定の関係をとらないことになるか ら,堤 わ しいものとなる。

次に,グロス ・マージンは販売額か ら流通活動 に帰属す る部分を分離す るた めに採用 される測度であり,付加価値 と多 くの共通点を持 っている

通常,グ ロス ・マージンは販売額か ら仕入額を控除 して得 られる

これを流通成果の産 出の測度 として選択するには,い くつかの問題点を克服 しなければな らない

1

に,グロス ・マージンによって産出を把握す る時,流通部門以外 の部門, たとえば製造部門において流通活動が遂行 される時,その部門が生み出 した流 通産出に対す る貢献が計算か ら脱落 して しまうことになる

2

に,グロス ・マージンの要素の

1

つである販売額 は価格に数量を乗 じて 得 られるが,ここで価格 は市場支配力によって変動するという問題がある。サー ビスの提供水準が実質的に同 じ2つの企業があるとして,一方が市場支配力 を 有 しているために価格を統制す ることができ,他方の企業がそ うでない場合, 両企業のグロス ・マージンは異なることが考え られる。 この時 グロス ・マージ ンは提供 されるサー ビス水準を反映す るのではな く,一方の企業 における独 占 的利潤を示す ことになる

市場の不完全性が もた らす問題 はこれに限 らない。たとえば,流通業 におい て慣習的なマージンで活動する企業が多 く存在 している

これ らの企業 は需給 の変化に対す る反応が鈍 く,マージンをある一定の水準に維持する傾向が強い。

この場合 もマージンは提供 されるサービス水準を的確には反映 しない。また, 市場支配力を持っ企業がその仕入れにおいてバイイング ・パ ワーを行使す るこ とが考え られる。その場合,グロス ・マージンのもう

1

つの構成素であ る仕入 額が押 し下げられることになる

これが価格に反映されない場合,グロス ・マー

ジンは大 きくなる

その大 きさがサービス水準 とは無関係の部分を含んでいる ことは言 うまで もない。

グロス ・マージンの持っ第

3

の問題 は付加価値 との比較により明 らかになる

企業の営業費用の一部 は他企業が生産 した財やサービスの購入に向けられる

これ らの財やサー ビスは当該企業の産出ではな く,その企業に財 ・サー ビスを

(17)

流通成果研究 の課題

205

販売 した企業の産出である

したがって,グロス ・マージンで把握 された産出 の大 きさは当該企業の貢献を過大評価す ることになる。

この問題を回避す る測度が付加価値である

付加価値 は当該企業のその生産 物に対する純貢献を反映す るようにグロス ・マージンを調整 したものである

付加価値では流通企業が非流通企業か ら購入 した財 とサービスの価額がグロス ・ マージンか ら差 し引かれる

付加価値の流通産出への適用 は古 くか ら行われていたが,その額 は結局 の と ころ流通費用 と同 じではないか,という疑念か らその後あまり注 目されなか っ た

5

7 ) 。 しか し,ペ ックマ ンは流通に付加価値概念を導入す ることを強 く説 いて いる

彼の主張によれば,付加価値 は,( 訂現代マーケティングの消費者志向理 念 と一致す る,②マーケティング過程で創造 される経済的価値を示す最 も入手

しやすい測度である,③マーケティングと他の経済部門 との比較を可能にする,

④マーケティングの浪費的側面よりも経済におけるその生産的側面を強調 し, マーケテイングに対す る偏見を排除する,( 卦それ と関連 して公共に対す るマー ケティングの関係に改善を もた らす

58)。

付加価値を産出の測度 とすることには賛否両論がある

オファーは,小売業 における産出を考える時,付加価値が不変価格で測定されるなら,グロス ・マー

ジンや販売額よりも適切な産出測度である,と考えている5 9 ) 。一方ホール らは, 付加価値 はグロス ・マージンが持 っているのと同 じ問題,つまり市場の不完全 性か ら独立 していないという問題を伴 っているとして,付加価値の使用 に反対 の立場をとっている6 0 ) 。

これ らの見解 はどちらかといえば測定に関わる問題 といえよう。先に,付加

57)

久保村隆祐,前掲論文。また

,R・S・Vaile,E.T.Gretherand R.Co

又,

Marheting intheAmericanEconom),1952,pp.657658

も参照せよ。

58) T.N.Beckman and R.Davidson

,

Marketing,7th ed.,1962,pp.785 787.

59) CurOfer

,

"ReturnstoScaleinRetailTrade

, "

Reuiew ofIncomeand Wealth,Series19,No.4,December1973,pp.36384.

60)

M.

Ha

l l

,J.KnappandC.Winsten,Distributionin GreatBritainand NorthAmerica,1961,pp.4142.

参照

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