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社会的厚生関数による接近*

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(1)

貧困度の計測:

社会的厚生関数による接近*

吉田建夫

1.問題

不平等比較の背後には所得分配に関する規 範的評価がひそんでいることを重視し,厚生 経済学的な観点から所得不平等度の計量的測 定に関する理論を基礎付けようとする接近方 法に「社会的厚生関数による接近(Social Welfare Approach)」がある。この接近手 法によって導出された所得不平等尺度は Dalton−Atkinson タイプの所得不平等尺度と してよく知られている。Dalton−Atkinsonタ イプの不平等度尺度の導出にあたってはまず 最初に価値判断を明示する関数として平等主 義的な社会的厚生関数が仮定される。平等主 義的な社会的厚生関数のもとでは,与えられ た総所得が人々の間に完全に平等に分配され ているときに社会的厚生は最大化される。こ の意味での理想状態における社会的厚生水準 を基準にとって,現実の所得分配において実 現されている社会的厚生水準が理想状態をど の程度下回っているかということで,所得不 平等を測定しようとするのが Dalton−Atkin−

sonタイプの所得不平等度尺度である。

このようなDalton−Atkinsonタイプの不平 等度尺度を貧困度計測に応用することを試み

1)

た興味深い論文にVaughan(1987)がある。

*)本稿の研究は長崎大学東南アジア研究交流奨励金

(研究促進奨励費)の助成を得て行われた。

注1)貧困度尺度の研究は Sen(1976)の先駆的研究 にはじまり,Atkinson(1978),Blackorby and Donaldson(1980),Chakravarty(1983),Kakwni

Vaughan の提唱に係わる貧困度尺度は,測 定の基準となる理想状態を完全平等分配から 貧困解消後の所得分配に置き換えることによ ってDalton−Atkinsonタイプの不平等度尺度 を貧困度計測に転用しようとするものであ る。貧困の判定基準は貧困線と呼ばれるある 所得水準によって先験的に与えられており,

現実の所得分配において貧困者と判定された 人達の所得が全員貧困線にまで引き上げられ たときに貧困は解消したとされる。貧困を解 消するためには非貧困者から貧困者への所得 再分配を行うか,さもなければ社会の総所得 を増加させなければならない。貧困度測定の 基準とされる貧困解消後の所得分配がその何 れにより達成されたと考えるかによって,貧 困度の「総」尺度(grossmeasure)と「純」

尺度(netmeasure)と名付けられる二つの異 なるタイプの尺度が定義されている。「純」

尺度は,非貧困者階層からの所得再分配によ って貧困の解消が達成されたとすれば実現さ れるであろう社会的厚生水準を基準にとって 定義されている。他方「総」尺度は,総所得 の増加を通じて貧困の解消が達成されたとす れば実現されるであろう社会的厚生水準を基 準にとって定義されている。

ところで貧困度の「純」尺度には解決され

(1981),Pyatt(1987),Takayama(1979),Thon

(1979,1983)他多数の貢献がある。本稿で考察 の対象としたVaughanの貧困度尺度がSenの尺 度をはじめ他の様々な貧困度尺度とどのような関 係にあるかについては槻会を改めて考察したい。

(2)

るべき問題がひとつ残されている。それは貧 困解消のための財源として課税される所得税 計画が確定されていないことである。どのよ うな課税計画を立てるかに応じて貧困解消後 に実現される社会的厚生水準が影響を受け,

それに従って貧困度尺度の値も変化する。同 ーの税収額をもたらす無数の課税計画のなか でどの計画を貧困度計測の基準として用いる のが適切であるかを明確にしておくことは,

「純」貧困度尺度が単にアイデアにとどまる ことなく,実際に実証分析への応用が可能と なるために必要なことである。

本稿の目的は,貧困解消のために課税され るあり得べき租税ベクトルの集りのなかで,

社会的厚生水準の最大値と最小値をもたらす それぞれの租税ベクトルを明らかにすること である。このことによって貧困度の「純」尺 度が取り得る値の範囲が確定される。不平等 度尺度の定義において基準とされる完全平等 分配は,与えられた総所得のもとで(あらゆ る所得再分配のあり方が許されているとき に)最大の社会的厚生を実現する所得分配で ある。貧困度尺度が不平等度尺度と異なる点 は,許され得る所得再分配が貧困の解消とい う限定された目的を達成する範囲に限られて いることである。貧困度尺度においては,こ の限定された所得再分配の範囲で達成され得 る最大の社会的厚生水準を理想状態として基 準とすると考えるのが自然、であろう。このよ うな考え方に立ったとき,本稿で得られる結 論を用いることにより貧困度尺度を確定する

ことができる。

2.社会的厚生関数と所得不平等度尺度 Vaughanの貧困度尺度を説明するための 準備としてDaltonAtkinsonタイプの所得不 平等度尺度がどのように定義されているかに ついて簡単に振り返っておくことから始めよ

冒頭でも述べたように, Da1tonAtkinson  タイプの所得不平等度尺度における基本的な 考え方の特徴は不平等比較の背後に所得分配 の規範的評価がひそんでいることを重視する 点にある。このような考え方に基づいて価値 判断を明示する関数として平等主義的な社会 的厚生関数が議論に先立つて仮定される。い ま社会の総所得を一定とすれば,平等主義的 な社会的厚生関数のもとでは所得が完全に平 等に分配されている時に社会的厚生は最大化 される。この意味での理想状態における社会 的厚生水準を基準にとって,現実の所得分配 において実現されている社会的厚生水準が理 想状態をどの程度下回っているかということ で所得不平等を測定しようとするのがDa1ton Atkinsonタイプの所得不平等度尺度である。

このタイプの所得不平等度尺度は形式的に は次のように定義される。

いま n 人から構成される経済社会を想定 し,所得分配をベクトルy=(yぃY2Yn)ε R~ で表すとしよう。この経済社会の平均所 得を μ(=LYin)で表すとする。社会的厚 生関数,W: R~ → R, が平等主義的である とは,もっとも一般的にはW が S凹関数で あるという意味であるが,本稿の議論では DaltonAtkinsonと同様に加法的に分離可 能でかつ対称的な社会的厚生関数

(1)  W(Y) U(Yi) 

を仮定しておこう。ここで加法的に用いられ る共通の関数u:R+→Rは任意の凹かつ増 加関数であるとされる。

さて,所得不平等の測定において社会的 厚生関数による接近を最初に提唱したのは Dalton (1920)であった。彼の提唱に係わる 所得不平等度尺度を D という記号を用いて 表すと ,D

(3)

W(μ・♂)‑W(Y) 

(2)  D一 一W(μ・♂)

と定義される。ここで♂=(1, 1,.. 1)  n 次元の単位ベクトルであるとする。 D の分子は,もし仮に人々の所得が完全に平等 に分配されていたとすれば実現されるであろ う理想状態における社会的厚生水準 ,W(μ en), と現実の所得分配が実現する社会的厚 生水準 ,W(y), の間にあるギャップを示し ている。 Daltonの不平等度尺度 Dはこのギ ャップが理想状態における社会的厚生水準の どれだけの比率になっているかを測定するも のである。

Da1tonの不平等度尺度における最大の難 点は W が一一比をとることに意味があると するもっとも強い意味において一一基数でな ければならないということである。この難点 を回避するための工夫としてAtkinson(1970)  は「等価平等分配所得 (equally distributed  equivalent  income) JL、ぅ概念を導入する

ことによって Dalton尺度を近代的に再構成 することを試みた。「等価平等分配所得」と は現実の所得分配のもとで実現されているの と同水準の社会的厚生を実現するのに必要と される(一人あたり)最小所得のことである。

この所得水準をYedeという記号を用いて表す と,Yede

LXi  Yede=min[乙さー]

x εO(Y) ι 

と定義される。ここでQ(y){xER~ : W(x)  W(Y)}である。とくに(1)式のような W もとでは WYedeの間には

2)このことは同時に.DにおいてはWが正の値 をとる,即ち(1)Wにおいて

u: R+R+ 

と仮定されていなければならないことを意味す

Yede=U 1

会 [

IZ4(Yi)

す ]

という関係が成立している。 Atkinsonの提 唱に係わる所得不平等度尺度一一以下ではこ れをAという記号で表す一ーはYedeを用いて

(3)  A=

守 些

と定義される。

ところでYedeは最初に仮定された W と同 ーの選好順序を表現しており, Yed旨を貨幣で 測定された社会的厚生であると解釈すること ができる。そうすると, μは総所得を一定に 保ちながら所得分配を完全に平等化するとい う意味での理想状態が達成されたときの社会 的厚生水準を意味しており ,Yedeは現実の所 得分配が実現している社会的厚生水準を意味 している。 Atkinson尺度は所得分配に関す る社会的選好順序をYedeの意味における貨幣 計量で測定するとする約束を導入することに よって装いを新たにした Dalton尺度である

と解釈することができょう。

3.  Vaughanの貧困度尺度

以上で概観されたように, Da1tonAtkin sonタイプの経済厚生尺度は,理想状態にお いて実現されるであろう社会的厚生水準を基 準として,現実の所得分配における社会的厚 生水準がこの基準をどの程度下回っているか を測定しようとする尺度であった。Vaughan の提唱に係わる貧困度尺度は,理想状態を完 全平等分配から貧困が解消された分配状態に 置き換えることによって, DaltonAtkinson  タイプの経済厚生尺度を貧困度の計測に応用 しようとするものである。

いま所得のある水準zが貧困線として定め られており,所得稼得額がz未満であるよう な構成員は貧困者であると認定されるとしよ

う。ただしzとyの間には

(4)

Yi (4)山=す

が成立しているとする。本節以降の議論では 構成員の番号は所得の昇順に付けられてお り,第1構成員から第q構成員までが貧困者 であるとする,即ち,

(5)  1豆 … … 豆YqzYq+1豆 … … 豆Yn が成立しているとしよう。貧困線zによって 社会の構成員は貧困者と非貧困者のふたつ の階層に分割され,社会全体の所得分配は y= (yp;yr)で表される。但し,ここで yP=(yl' 

" Yq), yr= (yq+ぃ … …Yn)はそれぞれ 貧困者階層と非貧困者階層の所得分配を表し ている。

貧困度尺度の定義にあたって基準となる所 得分配は,現実の所得分配における貧困者の 所得がすべてzにまで引き上げられ,貧困が 解消された状態である。その際貧困を解消す るための資金が同一社会における非貧困者階 層からの所得再分配によって調達されること を考慮に入れるか否かに応じて, r総」尺度

(gross naeasure)と「純」尺度(netnaeasure)  という二つのタイプの貧困度尺度が定義され ている。

貧困度の「総」尺度

さて,いま仮に貧困者の所得が全員zにま で引き上げられたとしよう。この場合の所得 分配をy事で表せば,y*

y*= (Z.(fl ;yr) 

で定義される。 Vaughanによる相対的貧困 度の「総」厚生尺度は f を基準として定義 される。言うまでもなく ,Yからの所得再分 配によって f が達成されることは不可能で ある。貧困を解消させるための財源の調達に 関わる問題が考慮されていないという意味で,

fを基準として定義される尺度は「総」尺度

と呼ばれるのである。 Daltonの不平等度尺 度において完全平等分配を f で置き換える ことにより定義される貧困度の「総」尺度を VGnという記号を用いて表すとしよう。 V

Gn

W(y‑ W(Y) (6)  VGn W(Y*) 

と定義される。「等価平等分配所得」の概念 を用いて表現される貧困度の「総J尺度を VGAという記号を用いて表すと ,VGA

(7)  VGA=弘子担

Yede 

となる。なおここでyゐ は W(Yつに対応して 定義される「等価平等分配所得」であり,

Yede W(Y)に対応して定義される「等価平 等分配所得」を表すものとする。

貧困度の「純j尺度

次に貧困を解消するための財源が同一社会 内部における所得再分配を通じて調達される 場合を考えよう。貧困者階層の所得をzにま で引き上げ,貧困を解消するために必要な総 額を記号Bで表すと,

v d

q

v

一 一

である。 Bは非貧困者階層の所得に対する課 税によって調達されなければならなL、。非貧 困者階層に対する租税ベクトルを tr=(tq+ 1, 

tn)で表すとする。課税は貧困救済のた めに行うのであるから ,trは次のような条件 を満たしていることが必要である。第ーには 税収総額が Bに一致していなければならな いことであり,第二には課税によって可処分 所得が貧困線を下回るようなことがあっては ならないことである。このような条件を満た している Fの集合を T という記号を用いて 表すとしよう,即ち

(5)

T={trER q:t;= B, z;:Yi‑ti豆Yi

.=q+l 

(i=q+ ,  …・・・, n)} 

であるとする。

以上の準備のもとで, Da1ton タイプの貧 困度の「純」尺度をVNDL、ぅ記号で表す

と,VN

uT(Z.(fl;yr‑tr‑ W(Y)  (8)  VND一 T(Z.(fl;yr‑tr)

(trE T)  と定義される。

VNDIこおける W 関数を「等価平等分配所 得」に置き換えることにより, Atkinson イプの「純」尺度が定義される。この尺度を VNAという記号によって表すと ,VNA

(9)  VNA=些云包

Yede 

となる。ここでY;de W(z(fl;yrtr)に対応 して定義される「等価平等分配所得」であっ , (1)式のWのもとでは

y=u‑1 (u(z).空+土的'iti)・+.‑)

i=q+l

となる。 Yede W(Y)に対応して定義される

「等価平等分配所得」である。

以上が Vaughanの提唱に係わる貧困度の 経済厚生尺度である。ここでこれらの貧困度 尺度が第1図のような社会的無差別曲線図表 上でどのように定義されるかを見ておくこと にしよう。ここでは単純化のため社会は二人 からなると想定されており,横軸と縦軸にそ れぞれ第l構成員の所得 Y1と第2構成員の 所得Y2がとられている。貧困線 zが破線で 書き込まれている。(1)式の W に基づいた社 会的無差別曲線は原点に向かつて凸であり,

かつ原点を通過する45度線を中心に左右対称 形に描かれている。右上の社会的無差別曲線 ほどより高位の社会的厚生水準に対応してい

Y2 

F G H  

Z~ ー・・ーーー・・・ -fi--

Yl 

1図貧困度の「総」尺度と「純J尺度

ることは言うまでもない。

いま仮に現実の所得分配が第 1図上の点 A で与えられているとしよう。このときに 実現されている社会的厚生水準はW1であり,

W1に 対 応 す る 「 等 価 平 等 分 配 所 得 」 は HO/2で示されている。点Aでは第1構成 員の所得がzに達していないという意味で社 会に貧困が存在している。いま第2構成員の 所得を減少させることなく第l構成員の所得 zに引き上げたとすれば,点 Bで示され る所得分配に到達する。他方第2構成員から の所得再分配によって第1構成員の所得を z に引き上げたとすれば,点 C で示される所 得分配に到達する。点 Bを基準とするのが 貧困度の「総」尺度であり,点 Cを基準と するのが「純」尺度である。以上で説明され た貧困度尺度が第1図上でどのように表され るかをまとめると次表のようになる。

「総」尺度 「純」尺度

Daltonタイプ

ザ 司… 一 一時九‑Wl

Y U D ‑‑W; 

Atkinsonタイプ

A ‑ FO 

VNn= UT2‑ W

D ‑‑W; 

VNA=QO‑HO 

A ‑‑CO 

(6)

ところで Vaughan自身も述べているよう に貧困の「総J尺度にはひとつの弱点がある。

それは貧困の解消による社会的厚生水準の増 加がその社会における資源の増加によりもた らされた社会的厚生水準の増加と明確に区別 できない点である。)このため, r総」尺度で

測 定 さ れ る 経 済 厚 生 水 準 の ロ ス ( loss of  welfare)は,貧困により生じたと考えられる 部分じより小さな総所得のために生じたと 考えられる部分とが混在した状態になってい る。一方, r純」尺度においては固定された 総所得のもとでの貧困の解消に伴う社会的厚 生水準の増加のみが測定されており, r総」

尺度におけるような混乱がない。このため,

J尺度の方が貧困度尺度としてはより適 切であると考えてよいのではないかと思われ

4. rJ貧困度尺度が取り得る値の範囲 しかしながら,貧困度の「純J尺度には未 解決の問題がひとつ残されている。それは,

貧困度計測の基準となる所得分配 (z.& ;  yr‑tr,において課税計画Fが未決定のまま

で残されていることである。非貧困者がl名 という例外的ケースを除けば,一般には同ー の税収額Bをもたらす課税計画 Fは無数に 存在する。どのような Fが選択されるかに よって,貧困度計測の基準となる理想分配が 変化し,従ってそれに応じて Vぬ や VNA

の値は変化する。 Fの選択問題に明確なルー ルを定めておくことは貧困度の「純」尺度を 実証分析の使用に耐え得るようにするために 必要なことである。

本節ではこのような問題意識を念頭におい て,一定の税収額 Bをもたらす課税計画の クラスTが与えられたときに ,(1)式のW

3) Vaughan (987). pp. 163164.

取り得る値の範囲を明らかにしたい。

さて,このことを明らかにするために準備 としてここでふたつの異なる課税計画 ,tr tr,を定義しておこう。

まず最初に,可処分所得にある上限値,s,  を定め,所得がこの上限値を上回る構成員に 対しては,可処分所得がPになるまで課税を 行い,所得がP以下の構成員からは税を取り 立てないとする課税計画を考える。このよう な課税計画を Fで表すとすれば,tr= (tq+ 1, 

tq2, ・・… t)

tj=max[yjs, 

(i=q+ , n)  と定義される。但し戸は

~ max[yj ‑s, 0] =B= ~ (ZYi) 

i=q+ 

が成立するように定められているとする。 z に関する(4)式の仮定により ,szの間には

ß~Z

が成立することに注意しておこう。 Fは,課 税によって所得順位が人々の間で逆転しない とする条件のもとで,高額所得者の税負担を 極度に重くするような性質を持った課税計画

であるといえよう。

次に F とは反対に,非貧困者階層の中で 相対的な低額所得者から,可処分所得が貧困 線を下回らないとする制約を課したうえで,

順々に可能な限り多額の税を徴収するような 課税計画Fを考えよう。 (4)式の仮定により,

4)もし仮にs<zであったとすれば,

~ rnaxlyiZ, ]く~ rnaxlyis, 

i=q+  i=q+ 

=B= ~ (Z‑Yi)が成立することになるが,民 z(iq+1)であるから,結局

~Yi< n.z 

を意味することになり, (4)式の仮定に反する。

(7)

与えられた B((Z‑Yi))に対して構成員 のある番号制ミq+2)が存在して

(Yi- Z) 豆 B~三エ (Yi- Z) i=q+  i=q+ 

が成立する。 tr=({q+ ,…… , {n)

ti=Yi‑ (i=q+ … ,k‑ B‑(Yj‑z) 

j=q+ 

(i=k) 

(i=k+ ,… , n)  と定義されるような課税計画である。

更に準備として次の補助定理を提出してお

」つo

[補助定理]

総所得の等しいふたつの所得分配 X= (Xl'……, Xn) 

Y =(Y, …・ ,Yn)  LXi= LYi 

に対して,ある実数αが存在して (Yi‑Xi) (Xiα)O

(i= 1, 2, ・ η)  が成立するならば,任意の凹関数 U(・)に対

して

U(Xi)LU(Yi)  が成立する。

5)このようなhが存在しないとすれば,

(Yi‑Z) B =  (ZYi) 

i=q+  j= 

が成立することになるが,このことは LYi< n.z 

を意味することになり, (4)式の仮定に反する。

6)この補助定理については吉田 0988pp. 8‑9)  を参照されたい。

以上の準備のもとにわれわれは次の定理を 提出することができる。この定理によって,

与えられた総所得のもとで貧困を救済するた めの(集合 T で示される)あらゆる課税計 画のなかで示が((1)式の Wの意味で)最大 の社会的厚生水準をもたらし ,trが最小の社 会的厚生水準をもたらすことが明らかにされ

[定理]

W(Z&;yr‑tr) ~五日T(Z.&;yr-tr) 三五日T(Z'&;

y‑M  ~tren

証明

最初に左側の不等式が成立することを明ら かにしよう。課税計画 Pに対応する可処分 所得ベクトルを dr=trで表すとする。 dr の各要素をその値の昇順に並べかえてベクト J'vd'=(d(q+ 1), d(q+ ),…… , d(n))を作ると しよう。ここで各要素における添字 (q+i) は,この要素が昇順にソートされる以前に drにおいて付けられた番号を表している。

さて,いま仮にある i(1i豆n‑q)が存在 して dq+i>Yq+iが成立していたと仮定すれ

d(q+Ji ~主 d(q+i)Yq+i 

= Z,…… ,n‑q)  が成立するから,ベクトル dr'の各要素のな かで値が Yq+iに等しいか,それ以下である ような要素の数は高々 i‑1あるに過ぎない ことになる。ところが,他方 treTであるこ とと(5)式によって

dq+m=Yq+m-tq+m~玉Yq+m~Yq+i (m= 1,…… , i)  が成立している。このことから,ベクトル drには(そしてdrにも)値がYq+iに等しい かそれ以下である要素の数はi以上存在する ことが分かる。従って,ある iが存在して d(q+i) >Yq+iが成立すると仮定することは矛

(8)

盾である。以上によりすべての i1i n‑q)に対してdCq+i)Yq+iが成立していなけ ればならないことが分かる。

以上の準備のもとで

uo)  (~q十 i-d(q+i)) ・ (dCq+i)‑dcq+k))O (i= ,一 n‑q) が成立するのを確認することは容易である。

まずi >kの場合には ,trの定義により tJ:.q+i

=Yq+i‑!q+i=Yq+iが成立しているから,上述 の考察により

~q+i-dCq+i) =Yq+i‑d(q+i)O が成立する。また dr'の各要素は値の昇順に 並べられており

dCq+i)孟dCq+k)

が成立している。従って(10)が成立すること が分かる。

次に i く h の場合には trの定義から ~q+i=

Yq+i‑!q+i=Zが成立しており,かっ trεT あるから

d(q+i)z である。従って

~q+i-dCq+i) =Z‑dCq+i)O が成立する。またd〆の作り方から

dCq+i)d(q+k)

が成立する。以上によりすべてのiに対して (1<>>が成立することが分かった。従って[補 助定理]により

T(Z.etJ; yr‑tr)三五日T(z . etJ  ; dr') 

W(z.etJ;yr‑tr('t/trεT)  が成立する。このようにして左側の不等式が 成立することが分かった。

右側の不等式が成立していることが言える ためには

)1 (dq+i‑+i)(+j‑s)

(i= , n‑q)  が成立することを確認すればよい。まずdq+i

>dq+iが成立している場合を考えよう。この 場合には ,trの定義により

Yq+idq+i>dq+i=Yq+i‑max[yq+i‑s, 

=min[yq+i, sJ 

が成立するから ,Yq+i>戸でなければならな い。従ってdq+i=sとなって(11)が成立する。

次に dq+idq+iが成立している場合には ,t の定義によってdq+i=Yq+i‑tq+iPがすべて iに対して成立していることから(11)式の成 立は明らかである。 (11)式と[補助定理]に より

T(Z'etJ ;yr ‑tr)W(z.etJ;yr̲tr) ('t/trεT)  が成立していることが分かる。

Q.  E.  D. 

以上の定理によって,固定された総所得の もとでの貧困の救済という目的を達成し得る 課税計画の集合 T のなかで, (1)式の意味で W が最大となる課税計画 Ctr)と, W 最小となる課税計画 (tr)が明らかにされた。

最後に tr の選択という問題を念頭におい て,Da1tonAtkinsonタイプの経済厚生尺度 を振り返ってみよう。このタイプの経済厚生 尺度は,理想状態において実現されるであろ う社会的厚生水準を基準として,現実の所得 分配における社会的厚生水準がこの基準をど の程度下回っているかを測定しようとする尺 度であった。ところで,理想状態となる所得 分配は再分配の許され得る範囲に依存して決 定される。所得不平等度尺度においては所得 再分配のあらゆるあり方が許されているため に,完全平等分配において最大の社会的厚生 水準が実現される。このために完全平等分配 が測定の基準とされたのである。これに対し て,貧困度尺度においては所得再分配は貧困 の救済という限定された目的を達成する範囲 に限られている。従って,この限られた範囲 で最大の社会的厚生を実現する所得分配が理 想状態として基準とされると考えるのは極め て自然、であろう。このような考え方に従えば,

(9)

「純」貧困度尺度において基準となるのは課 Chakravarty, S.  R. (983) Ethically  Flexible  税計画が Fのもとにおける所得分配 (z Measuresof Poverty", Canadian Journal  yrーめでなければならないことが本節で提出 01 Economics, 16, 7485. 

した定理により導かれる。 DaltonH. (1920), "The Measurement of Inequality  このような考え方に従ってtrが決定され of Incomes", Economic Journal, 30, 348

た「純」貧困度尺度,VNDVNん は(1) 361. 

W のもとでそれぞれ Kakwani, N. (1981) Note on a New Measure of 

VN

q.u(z) ~ u(rnin[yj, sJ) ‑~ u(yj) 

i=q+  i= 

q.u(z) ~ (minCYi, sJ) 

i=q+ 

VNA=Y;JeYede Yede 

という形をとる。ここでy;JeYedeはそれぞ

Y;Je=u一1(u (z)+ u(rnin[yjsJ)  . 2) 

i=q+ 

μ=u‑[~u (y;)す]

となる。

Povey"Econometrica, 49.  525526.  Pyatt, G. (1987). Measuring Welfare, Poverty and In

equality"  Eωnomic Journal, 97, 459‑

467. 

Vaughan, R. N. (1987) Welfare Approaches to the  Measurement of Poverty", Economic Jour nal, 97, 160170. 

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Takayama. N. (1979)Poverty, Income Inequality,  and Their Measures: Professor Sen's Ax iomatic Approach Reconsidered¥Econo 参 考 文 献 metrica.  47, 747759. 

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