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産業組織と国際経済
田 中 茂 和
1.序論
II.輸入競争と産業組織 皿.輸出機会と産業組織 IV.直接投資と産業組織
V結論
1序 論
これまで産業組織論と国際経済学は相互に独立した発展径路をたどってきた。それは前 者に比して後者が,すぐれて一回均衡理論的性格を有していることに基因するといわれる。
しかし,より直接的な理由は、産業組織論が取扱う市場範囲を国内市場に限定し,国際経 済理論が完全競争を基本的仮定として保持してきたことに求められよう。
かくして産業組織論においては市場構造一二場成果の分析にあたって,輸出入や子会社 生産といった国際連関ファクターは無視されてきた。そして国際貿易理論にお』いては輸送 費用、関税を除けば,国内市場に対する外国企業の参入に関して国内企業と外国企業との 間に参入障壁はないものと仮定されてきた。貿易にせよ,対外直接投資にせよ,国籍を異 にする企業の市場参入に対する参入障壁が全く存在しなければ,たとえ当該企業が国内市 場で何らかの市場支配力を有していても,貿易及び資本の自由化は外国企業が略奪的行動
をとらない限り,外国の潜在的競争者の国内市場への参入をつうじて競争を促進させ,経 済厚生を高めるものと期待できよう。
しかし最近,収支調整に関する実証分析によって,変動相場制の下での輸出入価格の硬 直性が経験的事実として指摘されることが多く,その現象は輸出入業者の寡占的市場構造
・市場行動と無関係ではないと思われる。またダンピングや輸出カルテル等の制限的慣行 が輸出企業の国内市場支配力の強化に役立つ場合も存在する。
本稿の目的は,従来の集中度一利潤率分析を対外投資・輸入といった国際連関を導入す ることによって拡張することにある。これらの市場構造・成果に及ぼす影響のウエイトは 貿易依存度の推移をみれば,近年高まりをみせていることが知れよう。主要先進諸国の貿 易依存度は,表1及び2が示しているように,着実な増大傾向をみせており,国際市場連 関要素を排除することによって生じるセンサス集中度と真の市場集中の乖離がますます問
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題になるこどは明らかであろう。貿易を上回る伸びで急速に拡大する対外投資を考えるな らば,この乖離は一層大きくなろう。
表1 輸出依存度とその変化
1952 1955 1960 1965 1970 1973 1975
日 本
12.69 P10.93
11.39 X9.56
11.44 P00
11.12 X7.20
11.67
P02.Ol10.92 X5.45
13.91
P21.59アメリカ
4.74
X7.73
・ 「
S.43
X1.344.85
P00
4.92
P01.44
5.51 P13.61
6.74
P38.97
8.62
P77.73
イギリス
24.01
P19.0421.82
P08.1820.17 P00
18.51 X1.77
22.09
P09.5223.94 P18.69
25.90
P28.41西ドイツ
16.12 V7.80
19.97 X6.38
20.72 P00
19.68
X4.98
23.09
P11.4424.50
P18.2428.14 P35.81
フランス
14.70 X8.00
15.07
P00.4715.00 P00
13.74 X1.60
16.24
P08.2718.27
P21.8019.85
P32.33(注)輸出依存度は輸出額/国内総生産。上段は輸出依存度の実数(%),
下段は1960年を100とした指数
(資料)IMF,配eγηα孟∫oηα1濡παηcゴα♂鋭α言∫s漉s, May 1977.
表2 国内総供給に占める輸入シェアとその変化 1959〜60年 1971〜72年 1973〜74年
日 本
訥11.31
P00
11.39
P00.7113.99
P23.68ア メ リ カ
4.32P00
6.99 P61.81
〆 9.10
@ 210.65
E C
12.31
P0012.55
P01.9416.64
P35.17イ ギリ ス
22.39
P00
27.54 P23.00
36.76
P64.18総 計
6.06
P00 7.05P16.32 9.77P61.22(注)国内総供給(Apparent ConsumPtion or Domestic DisaPPea「ance)
は国内生産プラス輸入マイナス輸出を定義される。上段は輸入シェア の実数(%),下段は1959〜60年を100とした指数。
(資料)UN, Hαπ励。砒。ブ1η孟e㍑α蜘ηα1 Tγα4eα掘DεのeJO仰eπ言 S孟α麗5麗CS。
本稿で論じられる課題はとくに小国について強調される。これは二つの理由から正当化 できる。第1に,一国の貿易依存度はその経済規模と無関係でなく,一般にその減少関数と 考えられる。第2に産業集中度もまた,おおむね国の経済規模の減少関数である。両命題
から小国における本来的に高い集中度は,その高い貿易依存度をつうじて激しい外国との ユ
競争にさらされているはずである。同様に,外国企業によって支配されている巨大企業の シェアの大きい国程,対外投資の競争秩序に及ぼす影響を無視できなくなる。
政策論的観点からいえば,本稿の分析は,貿易政策の効果分析において,ともすれば看 過されやすかった産業組織,ないしは競争秩序に及ぼす影響の側面を考察することをねら
いとする。そして以下の分析は,現代の国際経済秩序において集中と競争の問題を論じる 場合に,産業組織政策と貿易政策の関連を考慮することが重要である,という基本的認識 に基づいている。というのは,国際競争政策の観点からみれば,関税・輸入制限等の公的 競争制限は,国際カルテル・多国籍企業の競争制限活動などの私的競争制限と相互に補充 しあうからである。国際競争の自由化に対する脅威は,保護貿易・国際カルテル・寡占貿 易業者等の面にとどまらず,企業の多国籍化を通じてももたらされる。
本稿の主題に対しては,心心ルタナティヴなアプローチが考えられる。一つは国際市場 3
連関ファタターを明示的に考慮した集中度概念の確立・計測であり,いま一つは,外国と の競争機会を追加的な独立変数として,従来の集中度・利潤率分析を拡張することである。
以下では前者のアプローチに焦点を合わせるが,両者が補充的な関係にあることは論をま たない。
]1.輸入競争と産業組織
(1)輸入競争の代理変数
外国との競争の市場成果に及ぼす影響を評価する上で中心的な問題は, その適切な代理 変数の選択にかかれる。輸入競争についてはまず第1に,輸入の相対的規模をその代理変 数として用いることが考えられる。第2に負の代理変数として,関税および非関税障壁と
いった貿易障壁の高さを導入することも考えられる。
前者の方法は,まず輸入比率(産業の輸入総額の対売上高,または生産高に対する比率)
概念で確立される。輸入競争・集中度・利潤率に関する実証研究(回帰分析)のほとんど は,この種の輸入比率を用いている。より厳密な輸入比率概念は,国内消費そのもの
(apParent domestic consumption or domestic disapPearance),生産(Q)プラス
1。Pagoulatos&Sorensen〔1976b〕は,小国で貿易依存度が高い国程,国内産業集中度は国内産業 の独占力を正確に反映しないことを実証した。
2.外国との競争機会が集中度・利潤率決定の上でどの程度のウェイトをもつかについては,以下を参照 のこと。Marvel〔1980〕, Pagoulatos&Sorensen〔1976b〕〔1976c〕, Neuman, Bδbel&Haid 〔1979〕,Hitiri5 〔1978〕。
3.本稿では取上げないこの前者のアプローチについては拙稿〔1979〕,pp.110〜113参照。
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輸入(M)マイナス輸出(X)に対する輸入総額で定義される。両者の関係はM/(Q+M−X)
一(M/Q)/〔1十(M/Q−X/Q)〕である以上,産業内貿易が支配的である場合には,
両者の間に差異はないであろう。はじめの輸入比率(M/Q)は分母に輸出が含まれてお り,その分だけ実際の輸入競争を過小評価する以上,国内消費そのもの,もしくは国内総
供給に対する輸入比率はこのような難点をカヴァする代理変数であるといえる。
しかし,いずれの輸入比率を用いても問題は残る。これは輸入比率が輸入市場における 輸入競争の程度を正確に反映するか否かにかかわる。市場における競争の程度は競争単位 の数(企業数)とその規模の分布(規模格差)に関係するが,たとえ輸入比率が産業間で 同一水準であっても,外国輸出企業数と規模格差が異った組合せをもつ場合,輸入の国内 市場成果に及ぼす影響のしかた,程度において同じであるとはいえない。このように,輸 入比率が本来的に輸入競争の程度を正確に反映しえない可能性は,支配企業モデルによっ ら
てよく説明される。輸入比率はもう一つの難点をかかえている。それは輸入競争の代理変 数として,現実の競争のみならず,潜在的なそれを考慮しうるか,という点である。国内 企業の価格・利潤率を制限するのは厳密には輸入品のシェアでなく,国内価格変化に関す る輸入の供給弾力性である。現実の輸入水準が小さくても供給の弾力性が充分に大きけれ ば,輸入競争が支配的になる。図1はこの点を明確に示している。以上のように輸入比 率は企業規模の格差,潜在的競争の無視の2点で輸入競争を正しく反映しないおそれがあ ることは明らかであろう。とはいえ,輸入供給の弾力性はデータ上利用可能ではない。従 って何らかの方法で以上の難点をカヴァーすることが必要となる。輸入データが産業レヴ ェルでしか得られない場合には,企業規模の格差を考慮することは捨てざるを得ないが,
価格 /国内供給 轍比率・箒・認
P
o
門
ii
ii
国内需要 総供給
(懸馨プラス)
0 需給量
図1
4.国内消費そのものに対する輸入比率を用いた輸入競争と利潤率に関する実証分析は,Caves&
Porter〔1978〕, Marvel〔1980〕, Caves et al〔1980〕, Jacquemin et al〔1980〕, Hutchi・
nson〔1981〕参照。
5.支配企業モデルにお』ける国際要因の競争秩序に関するインプリケーションについては,Hitiris
〔1978〕参照。
潜在的競争を考慮することは可能である。それは輸入供給の弾力性の代理変数,ないしは 近似値として輸入需要もしくは輸入比率の成長率を導入することである。
輸入比率が同一の産業において,当該時点ないし期間における輸入需要の成長率が大き い産業程,競争の程度が大きいとみなしうる。輸入比率が比較的小さくても輸入成長が著 しければ,輸入比率は輸入競争の程度を過小評価することになる。その逆のケース,すな わち輸入比率が大きくても,輸入成長が緩まんか,衰退気味であれば,輸入比率は輸入競 争の程度を過大評価することになろう。実際には成長率タームでの輸入競争の代理変数の 6
導入は,良好な結果をもたらしているとは必ずしもいえないようである。
輸入競争の他の代理変数は貿易障壁である。とはいえ,貿易障壁のすべてを正当に評価 することは望めそうもない。輸入比率と南扇障壁は互いに補充的である以上,経験的検証
を行う際,同時に幾つかの変数を同一一ファクターに関して用いることは,その成果を強固 なものにする上で有効な手段である。関税は既存の外国輸出企業のみならず,潜在的外国 企業にも適用されるものであるから,潜在的競争を無視する輸入比率の欠陥を補充する。
関税は輸入競争のいわば負の代理変数であるが、産業組織の観点からみて,産業保護の 程度を表わすものとして,名目関税と実効関税のいずれが適切であろうか。名目関税は輸 入価格水準を左右するが,生産コストを含めて企業の超過利潤に関係するのは実効関税で
ある。
しかし,実際の関税政策が名目・実質のいずれをべrスとして運営されているのかが問 題である。換言すれば,産業に対する関税賦課がどのような目的にそって行われているか
によって,関税の競争秩序に対するインパクトは異なるであろう。もっとも過剰な関税の 場合は,関税水準がもとより外国企業にとっての参入障壁の高さを正しく反映していると はいいがたい。
(2)輸入競争の配分効率効果
輸入競争と集中度・利潤率との間にどのような関係が予想できるであろうか。輸入機会 は当該市場への企業の新規参入であり,国内企業の参入の場合と同じく,競争単位の増大 とみなされ,創造的破壊者として外国企業の参入はその産業における配分効率を改善する ものと期待されうる。
しかし,輸入競争と利潤率との問のアプリオリな負の相関関係は,一非競争輸入が存在し たり,国内生産者が輸入業者をかねそなえるような場合には期待できないことは明らかで ロある。そしてまた輸入競争に直面した国内競争企業の反応にも依るであろう。かくして,
外国企業と国内企業との間よりも,国内企業間において強い寡占企業の相互依存性は,輸
6.Pagoulatos&Sorensen〔1976c〕,馬場et al〔1977〕,は輸入需要の成長率よりもむしろ輸 入比率に関してより良好な結果が得られているのに対して,Turner〔1980〕は輸入需要成長率に関
してより満足な結果を得た。
90
7
入競争の配分効率効果を弱めるであろう。さらに,国内市場における競争の激化は,市場 確保のため既存企業の合併を招くことになると,集中を強化させる可能性も考えられる。
以上のように輸入の配分効率効果がネガティヴであるケースが考えられないわけではな い。いま国民所得の上昇によって需要が増大するケースを想定しよう。国内消費財需要の 一部は消費財の輸入需要の増加をひきおこすであろう。この場合輸入の増加と需要成長に 基づく利潤率の増大が両立しうる。もっとも輸入需要の増加が所得効果よりも代替効果に 主として依存するような場合には,輸入の配分効率効果はポジティヴと予想される。ある いはまた,外国との競争が国内企業の生産性改善努力のインセンチィヴになるかも知れな い。それは輸入競争が配分効率よりもむしろ技術効率に及ぼすインパクトを強調する見方 8である。
関税による産業保護の市場成果に及ぼすインパクトを推論する上で,留意しなければな らないことがある。関税を参入障壁の一形態とみなした場合,先験的な予測は産業保護と 利潤率との間に正の相関関係になろう。しかし,両者の関係は,第1に関税がもともと何 を目的として賦課されたか,あるいは引上げられたかに依存するであろう。第2に関税が 外国企業にとって参入障壁となるのは,それが輸出を国内市場への参入の手段として選択す
る場合に限定される。関税工場の議論はこの可能性を示唆する。直接投資は新規参入の一 形態であるから,一般的には進出先の国において当該産業における市場成果を改善するも のと期待される。輸入比率アプローチに比して少数派の関税アプローチは,いずれもこの 92点を全く無視していると思われる。
前者の点について,本稿での主題との関係で重要なのは関税政策の決定要因のうち,市 場構造に関係する諸要因である。市場構造の基本的諸要素の内,関税政策と直接関係する
と思われるのは,集中度・規模の経済・需要成長・研究開発の4つであろう。
まず初めに関税政策決定における集中度のウェイトを考える上で,寡占企業間の相互依 存性を無視できない。寡占企業相互間の政策的 協調を前提とすれば,集中度と関税率との 間に正の相関関係が予想される。しかし,反面非集中産業において政策的結託の志向が強 ければ,その限りではない。規模の経済についても,いまと同様の相対立する仮説が導か れる。もし利益集団の強い政策圧力を重視するならば,関税保護は規模の経済の強さに依 存するといえる。しかし,企業の分散化の関税政策決定における大きなウェイト,そして
7 アメリカ鉄鋼産業におしける経験的事実は,Krause〔1962〕,新野〔1970〕,pp.177−180で明 らかにされている。また国内価格と国際価格のリンクについては,Caves〔1979〕,pp.64−65,
Calmfors〔1978〕, Chap.11を参照。
8 J・nes, Laudadio&Percy〔1973〕,〔1977〕, Eastman&Stykdt〔1960〕,〔1967〕参照。
9 Pagoulatos&Sorensen〔1976c〕, Mc Fetrige〔1973〕, Bloch〔1974〕,¶Caves at al〔1980〕,
Hitiris〔1978〕, Huchinson〔1981〕を参照。
幼稚産業保護論から類推すれば,逆の関係も成立しそうである。これらの議論に比して,
需要成長の場合は一層明確である。市場需要が拡大基調にあるか,もレぐはその成長が近 い将来見込める産業では関税保護を必要としないであろう。最後に研究開発要素について は,国家的見地に基づく先端技術に対する保護政策のロジックからは,関税保護は利潤率 の増大にプラスの貢献をするかも知れない。それとは逆に,活発な研究開発活動による技 術的優位故に保護を要しないことも考えられる。かくして,確定的な予想を立てることは 困難であろう。
関税政策決定モデルの展開は,これまでの所乏しい内容しかもたらしていない。これま で明らかにされた経験的事実は㍉次の如くである。実際の関税交渉は,名目関税よりもむ しろ実効関税をベースとして行われていることにとどまる。規模の経済・集中度と関税 10
政策との問には,一義的な関係は確認されていない。もとより政策決定のメカニズムは国 によって異ることが予想される以上,関税政策の市場構造的決定要因について,確定的な 事実を確立するには,各々の国について一層の分析の積み重ねが必要であろう。
関税障壁を輸入競争の負の代理変数として用いる場合に,留意せねばならぬ第2の点に 議論を移そう。若干の調査によれば,直i接投資を行う動機について貿易利益,とくに関税 障壁の回壁がかなりのウェイトをしめており,実証研究の多くはこうした事実を立証して 11いる。それらの研究の中でHorst〔19凋の分析はとくに注目される。関税障壁は確かに対 ユ 外投資を促進させるが,輸出先の市場規模が相対的に小さければその限りではない。この
ことはカレントな輸出のウェイトが小さくても,企業が対外投資戦略を選択しうることを 含んでいる。問題は輸出先の市場規模であり,潜在的に需要成長が期待できるならば,企 業が対外投資戦略を選択する余地があろう。これまでの所,少なくとも先進国市場にお・い ては,関税工場論に対する反証は示されてない以上,関税保護の集中度・利潤率に及ぼす ユヨ 影響を考察する上で,関税障壁と対外投資との関係を無視することはできない。
保護関税の賦課が生産要素の国際移動を促進するか否かは,理論的には特殊要素モデル から演繹できる。一般均衡論的には,関税障壁が外国資本の流入を促進するとは必ずしも ユ
いえない。こうした理論的考察と観察結果との不一致をいかに解釈するのが適切であろ
10.Helleiner〔1977〕, Saunders〔1980〕, Caves〔1976〕,庄田〔1981〕を参照。
11.Brooke&Reminers〔1970〕,PP。227−230, Kolde〔1968〕, Brash〔1966〕, Johns〔1967〕, Barlow
&Wender〔1955〕,Safaran〔1966〕, Orr〔1975〕, Wonnacott&Wonnacott〔1967〕, Marshall,
Southard&Taylor 〔1936〕, Horst〔1969〕, 〔1972〕,〔1975〕, Brecher&Reisman〔1957〕,
Caves et al〔1980〕, pp.85−86。
12.Caves at al〔1980〕, P.18は,むしろ小国の関税賦課が外国企業による関税工場の設立を促すと 主張する。しかしこれは誤まった主張であろう。
13.関税を始めとして貿易障壁が対外投資を阻害する場合がない訳ではない。小宮・天野(1972〕,PP.439−440参照。
14.Corden〔1974〕, pp.331−335、および〔1967〕参照。
92
うか。部門特化資本の供給弾力性が相対的に高い産業に高関税をかけるという差別的関税 15
保護構造に説明を求めることもできようが,この考えは充分に根拠があるとは思えないし かつまた経験的な支持をえるのが困難であろう。
関税水準と対外投資水準との問に有意な関係が認められるにせよ,それは連続的なもの 16
ではないことを指摘しておく。さらにまた関税工場の議論は差別化産業,そして水平的統 合タイプの直接投資によくあてはまる。関税工場に関してこれまで行われた議論は,それ が子会社新設の形態をとるケースを想定している。そうではなくて,関税工場が既存企業 の買収という形態をとれば,市場成果に与えるインパクトが対照的になることは,もはや 17
・自明であろう。
ひるがえって考えてみると関税率と利潤率との間にどのような関係が予想されるかは,
18
単純な支配企業モデルに即して考えてみれば,確定的なことがいえそうもない。そして関 税障壁の高さと利潤率との関係は,他の参入障壁と同様に連続的ではないかも知れない。
(3)輸入比率と集中度の相互依存性
寡占の相互依存性の程度が海外市場よりも国内市場において強いことは,国内市場での 輸入シェアがある水準に達して始めて国内企業の価格反応がみられ,輸入競争が有効に作 用することを意味する。この場合輸入比率と利潤率との関係は連続的でなく,むしろ不連 続となる。そして輸入比率が外国企業を含めて企業規模格差を明示的に考慮できないとす るなら,少なくとも輸入と集中度の利潤率決定における相互依存関係,いいかえると相対 的ウェイトを調べることが必要となる。もともと参入障壁の高さと利潤率との関係はいく ぶん不連続であるといわれる(Bain〔1968〕, p.493)。輸入競争のthreshold effectの 存在の有無,輸入比率と集中度の相互依存性の実証的吟味は,輸入競争の配分効率効果を 正しく評価する上で重要な課題である。
輸入競争のthreshold effectを調べるには,最も簡単な方法として,二分法ないし三 分法がある。ちなみにカナダを対象とした輸入比率水準に応じた3つのダミー変数を用いて の回帰分析(Jones, Laudadio&Percy〔1973〕)によれば,高位輸入水準産業に関して回帰係数値 は正で有意であった。アメリカについての期間データーに基づく検証結果では,負で有意な係 数値が得られている(Joves, Laudadio&Percy〔1977〕)。一方,集中度に関する二分法を用いた 19
実証分析(Esposito&Esposito〔1971〕)では,輸入変数の回帰係数値は負で有意であった。
15Michaely〔1977〕p.90参照。
16例えばHorst〔1975〕参照。
17 この点についてはReuber&Roseman〔1972〕参照。
18 Corden〔1974〕,pp.216−219。
19 もう一つの輸入競争の代理変数である関税水準に関する同様の分析は,Bloch〔1974〕参照のこと。
しかし,名目関税水準と集中度の両者に二分法を適用した比較分析では,利潤率決定における集中度 と関税の相互依存性に関して,確定的な結論を得るに至っていない。
産業組織と国際経済 93 輸入比率と集中度の相互依存性については,次の仮説がたてられよう。輸入比率の大き
い産業では,その国内集中度は利潤率にほとんど,もしくは全く影響を与えないが,輸入 のウェイトがわずかな産業では,国内集中度は利潤率に正のインパクトを与えるであろう。
換言すれば,輸入競争の市場成果に及ぼすインパクトは集中度レヴェルに依存し,高位集 中産業で,輸入比率が高い場合に,輸入競争は有効であるといえよう。輸入競争のthreshold effectについては、イギリス産業を対象とした若干の実証研究により,その存在が確認さ
れている。Shepherd〔1972a〕は高位集中産業と低位集中産業との間で,輸入競争の集中 度へのインパクトが異なる事実を見出し,Turner〔1980〕もまた,高位集中産業程輸入競 争のインパクトが強いことを明らかにしている。
輸入競争のthreshold, effectを考慮しながら,その市場成果へのインパクトを正しく 20評価しようとする試みは実際最近なされている。それらはみな共通して集中度に輸入比 率を乗じたタームを用い,この変数の利潤率に対する回帰分析を展開する。輸入比率と集 中度の利潤率決定における相互作用に関する先述の仮説が正しく検定される場合には,こ の変数の回帰係数値は負の符号をとるものと主張される。しかし,乗法形のこのタームは 誤まった検定を導くと思われる。それは集中度が高く,輸入比率も大きい産業では確かに 負の係数値がえられよう。それとは反対に,集中度,輸入比率のいずれも低い産業では,
明らかに正の符号が予想される。もっといえば,集中度と輸入比率が互いに対照的なレヴ ェルにある産業の間では,一貫した符号は期待できないであろう。かくして,たとえ負で 有意な回帰係数値が得られても,輸入競争のthreshold effect, もしくは輸入比率と集 中度の相互依存性を経験的に立証したとはいえない。
正しい検定は,むしろ集中度を輸入比率で除したタームで行われるべきである。そして より重要なのは,外国企業の自国企業に対して保持する優位性の種類とその発生原因を追 求することであろう。外国企業にとって支配的な優位性の内容が知れると,輸入比率をそ の変数でデフレートしたタームを用いることによってよりすぐれた結果がもたらされるか 21
も知れない。
皿 輸出機会と産業組織
(1)輸出機会の代理変数
輸出機会の代理変数として,輸入比率に対応する輸出比率が考えられる。この概念は,
国際貿易理論における標準的な財の分類に対応する。すなわち,輸入比率の大きい財が輸
20.Pagoulatos&Sorensen〔1976b〕, Pugel〔1980〕, Jacquemin et a1〔1980〕, Caves et al 〔1g80〕, Hutchinson〔1981〕参照。
21.Sichel〔1975〕の分析は,外国との競争が重要である産業は非差別化生産財であり,さほど重要でな い産業は差別化消費財に多いことを指摘している。
94
入可能財,輸出比率の大きい財は輸出可能財,いずれの比率も無視できる程小さければ,
国内財,という具合である。
(2)輸出機会の配分効率効果
輸入競争の場合には若干の制限条件の下で正の配分効率効果が予想され,多くの実証分 析により充分とはいかないまでもほぼ確立された経験的命題といえそうである。しかし輸 出機に目を転じると,実際に得られた回帰係数値の符号は様々であり,有意性にも乏しく 22
輸入機会に比して確定的な結論は得ちれていない。輸出機会は企業間の競争を強化する点 23で,輸入競争と本質的にはシンメトリカルであろう。しかし,先験的な予想はそれ程明瞭 ではない。
最も単純な議論は,他の事情にして等しい限り,ダンピングが行われなければ,輸出の 大きさそれ自体は国際競争圧力の大きさをほぼ反映する,と主張することである。輸出が 本来的に企業にとってリスキーな事業活動であるなら,大企業がそのリスクの分散に関し て相対的に有利な立場にある以上,輸出と利潤率との間に正の相関が期待できそうである。
この輸出リスク仮説は,輸出の大半が大企業によって行われているという経験的事実によ って支持されるかにみえる。しかし,大企業の輸出シェアが中小企業に比して高い事実は 実は大企業の盛んな研究開発活動を反映したものにすぎないかも知れない。もっとも日本 のように投入物の面で輸入依存度が高い経済においては,輸出リスク仮説がある程度妥当 する可能性を否定できない。
よく知られているように,今日の先進諸国間の貿易の大半は,産業内貿易から構成され る。産業内貿易理論(Grubel&Lloyd〔1975〕)によれば,先進諸国間の貿易パターンの 決定要因として重視されねばならないのは,規模の経済と製品の差別化である。輸出活動 が企業にとって国内市場における相互依存性を弱め,海外市場において外国企業との競争 の激化に直面するならば,輸出機会と利潤率との間に負の相関関係が期待できる。
しかし,輸出を通じての生産量の増大が,規模の経済の達成を通じて集中度にフィード 25バックする場合には,逆の相関関係が見出されよう。こうした可能性はいうまでもなく,
22.既存の実証研究ではわずかに,Caves et al〔1980〕, Jenny&Weber〔1974a〕,〔1g74b〕,
〔197◎〕,Neuman, B6bel&Haid〔1979〕, Jacquemin et al〔1980〕が負で有意な結果を得ている
にとどまる。それとは逆にKhalizadeh−Shirazi〔1974〕,土井〔1979〕,土井・田中〔1981〕が正 で有意な回帰係数値を得ている。23。Pugel〔1980〕は輸出比率,輸入比率各々に集中度を乗じたタームで回帰分析を試みているが,前 者に関して有意な結果が得られなかった。それは輸入と輸出の市場成果に及ぼす影響がシンメトリカ ルでないことを意味するのかも知れない。
24.Auquier〔1980〕参照。
25.Neuman, Bδbel『
浮gaid〔1979〕は輸出が集中度にポジティヴな役割を果すと指摘している。輸出比率がかなり高い産業に限定される。従って,輸出比率が高い産業が国内市場におい てほとんど市場支配力を有していないとき,高い利潤率が高い輸出依存度に帰着せしめら れる度合いは増大するであろう。たとえ国内市場においてある程度の市場支配力を行使し ていたとしても,国内市場でのみ,それほどの利潤率を獲得しているとはいちがいにいえ ないであろう。
次に無視できないのは,輸出の増加がどのような要因に基づくのかという点である。一
般に需要成長は利潤率にプラスの作用をすると考えられている。いま輸出比率が比較的大 きい産業を想定する。輸出増加は外国需要の拡大と国内供給に由来するものとに二分され る。輸出増加が真の意味で需要成長とみなしうる場合には,輸出比率がきわめて高く,そ の産業の成長が主として輸出に依存する場合には,価格と輸出量の変化が正の相関関係に なければならない。需要成長に関するケイヴズ仮説は,外国需要の拡大が支配的な要因で ある輸出増加の場合においてさえ,輸出産業の市場構造いかんによって輸出の市場成果に 及ぼすインパクトが異なることを示唆する。
最後に,輸出が国際的製品差別化に基づく優位性を反映しているならば,輸出は利潤率 の増大に関係するであろう。
結局,輸出パターンの決定要因が,いずれの市場構造変数とどの程度かかわっているか を調べることが肝要である。企業の輸出活動に決定的な役割を果す市場構造諸要素がみと められるなら,それらで輸出比率をデフレートしたタームを代理変数として,利潤に対す る回帰分析を行う方がより実りある成果をもたらすのではなかろうか。
】V 直接投資と産業組織
(1)直接投資の市場構造・成果に及ぼす影響
直接投資の市場構造・成果に及ぼす影響は,以下の諸要素に依存するであろう。
第1に,外国企業の国内市場への参入形態,第2に,外国企業の競争戦略,第3に,そ の参入の決定要因,第4に,外国企業の参入に伴う他企業の反応,第5に,観察期間の長
さである。
対外直接投資は,企業成長論,ないし産業組織論的アプローチによれば,企業成長の一 形態であり,それに付随しておこる外国企業の国内市場への新規参入に他ならない。それ 故一般的には,進出先の当該産業における市場成果を改善するものと期待される。これま での所,多国籍企業による直接投資の市場構造・成果に及ぼす影響に関しては,相対立し た議論が併存し,一般的な結論は得られていない。
外国企業が新しい市場に進出する場合,現地企業との合併・買収という手段がしばしば
26Caves〔1964〕は競争産業と寡占産業との間で需要成長の利潤率に与える効果が異なる,という仮
説を呈示している。
96
27
利用される。このような進出が市場成果にマイナスの効果を与えることは自明であろう。
また競争関係にあった企業間の合併会社設立は,水平的結合と同一の効果をもつ。子会社 の新設は競争秩序の維持・促進に貢献しうるが,水平的結合は合併・買収・合弁のいかん を問わず,逆の作用をするであろう。
第2に,国内企業と多国籍企業との間で,企業行動にいかなる差異がみとめられるであ ろうか。競争戦略は外国の所有(多国籍性)と親会社の規模の大きさの2点に即して違い をみせると思われる。まず多国籍性に着目すれば,企業グループ全体の利潤極大をはかる 行動様式をとること,そしてリスクの分散が可能となることが導かれる。こうした行動様 式はトランスファー・プライシングなどを通じて利潤率に対してプラスの作用をするが,
分散可能なリスクは逆にマイナスの作用をするであろう。しかし,多国籍企業と製品差別 化との結びつきを考えると,非価格競争を通じて,参入障壁を引上げる作用をするかも知 れない。それとは反対に多国籍企業のすぐれた情報能力が国内企業よりも共謀・制限的慣 行の程度を減じることを考えると競争促進作用をもつかも知れない。
第3に,国内企業と外国企業との間で新規参入の決定要因に差異がみとめられるのであ ろうか。多国籍傘業による進出が参入障壁の高い産業で行われやすいならば,多国籍企業 28は潜在的参入者たりえる。
対外投資が受入国の産業組織にいかなる影響を及ぼすかは,多国籍企業の進出に伴い,
他の競争企業がいかなる反応を示すかにも依存しよう(Dunning〔1974〕, pp.595−597)。
外国企業の進出に対抗して国内産業再編成が行われるならば,それ自体は外国企業の新規 参入を制約しよう。しかし,需要成長の将来性が期待できるならば,活発な新規参入が見 込まれるであろう。従ってこの場合問題となるのは,受入国よりも投資国における競争企 業の反応である。寡占企業の相互依存性が外国への進出に関しても適用可能であれば,受 入国において外国企業のシ土アが増大するにせよ,むしろ市場構造・成果を改善すること 29になるかも知れない。
以上述べてきたことは,直接投資パターンと無関係な議論ではない。後方垂直的投資は 競争を阻害する可能性はきわめて大きいが(今井〔1976〕)、水平的直接投資と垂直的直接投 資とは明らかにその決定因を異にする以上,ここで主要な関心が寄せられるのは水平的直 接投資である。・
最後に外国企業の参入によって市場構造・成果がどのようなインパクトをうけるかは,
30
観察期間の長さにも依存する。短期的な視点に立てば,外国企業の参入はのっとりの形態
27.Reuber&Roseman〔1972〕, Rosenbluth〔1970〕,澄田他〔1972〕参照。
28.Caves〔1974a〕,〔1979〕, Gorecki〔1975〕,〔1976〕参品目
29.Knickerbocker〔1973〕は直接投資と寡占反応との関係を実証した。30.Caves〔1979〕pp.60−61, Lall〔1979〕p.328,松下〔1973〕p.130参照。
を除けば競争圧力の増大をひきおこし,さらにまた外国企業が国内企業に比して高位参入 障壁産業において相対的に有利な参入者であることを考えに入れるなら,多国籍企業の参 入は競争政策上望ましいことになる。しかし長期的な視点に立てば,究極的にはむしろ集 中度を増大せしめるかも知れない。その可能性は第1に,多国籍企業のもつ属性がかえっ て参入障壁を高めうることから生じる。第2に多国籍企業の市場行動が集中の増大をまね く可能性に関係する。それは多国籍企業の略奪的行動と多国籍企業による市場支配の脅威 に対抗した防衛的合併の2つから構成される。
このように直接投資の市場構造に及ぼすインパクトは,市場構造の長期的安定性にかか わる問題である以上,企業進出の市場構造諸要素に及ぼす影響について緻密な分析を待た ねば,確立された議論にはならないであろう。市場構造諸要素との関係で注目される直接 投資の産業特性は,高位集中(高位参入障壁)産業であり.水平的直接投資の場合差別化 寡占産業である。企業特性としては,第1に親会社・子会社とも大規模であり,第2に研 31究開発集約度の高い産業が活発な対外投資を行う傾向にある。
(2)実証分析
直接投資の集中度・利潤率に及ぼす影響は,まず初めに,国内企業と外国企業との間で シェア・集中度・利潤率といった指標がどのように異った分布をみせるかを比較すること から始められよう。あるいはもう少し進んだ分析としては,外国子会社のシェアを産業利 潤率に回帰させてみる方法が考えられる。
しかし,こうしたアプローチによる分析は予備的な考察にとどまる。けだし,それらは 共通した欠陥をもっているからである。すなわち,直接投資が産業の集中を強化するのか それとも産業の高位集中が直接投資を引きつけるのか,といった,いわば鶏が先か,それ 34とも卵かといった類の議論に帰着する。直接投資企業のもつ構造的特性一優位性一が受 入国の市場構造決定変数に及ぼす仕組みとその程度を検討することが是非とも必要となっ てくる。重要なことは,産業の集中化をもたらした要因と活発な直接投資行動をひきおこ した要因は同一であるということである。こうした認識に基づいた直接投資の受入国にお 35ける市場構造・成果に及ぼす影響について取組まれた研究は数少ない。
31.以上の特性については経験的証拠が充分示されている。Hymer〔1960〕第1部第4章,澄田他〔1972〕
第2章第1節,Gorecki〔1976〕,Caves〔1974a〕参照。
32.Task Force〔1968〕, PP.81−88, Steuer〔1969〕, Dunning〔1958〕, Behrman〔1970〕,PP.
44−60,馬場〔1974〕参照。
33.Rosenbluth〔1970〕, Pagoulatos& Sorensen〔1976a〕,〔1976b〕, Kalizadeh−Sirazi〔1974〕
参照。
34.このことはLall〔1979〕〔1980〕に端的に示されている。
35.Caves〔1g74b〕,Connor〔lg77〕,Lall〔1979〕参照。
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本節の分折目的にとって問題なのは,市場構造の決定要因と外国企業の優位性の内容が いかに重なりあうかである。直接投資の競争秩序に及ぼす影響を考察する上で:有用な企業 成長論,ないし産業組織論的アプローチが明らかにせねばならないのは,まず外国市場へ 移転可能な経営資源(優位性の源泉)と不可能なそれとを区別し,それらが市場構造の決 定因として,また直接投資の決定因として,どのように作用し,その結果どのような市場 36成果がもたらされるかである。直接投資と集中度・利潤率との関係について,いかに入念 に統計テストを試みても,外国子会社が,国内企業といかに違った市場行動をとるのか,
その存在が受入国の市場構造諸変数にいかに影響していくのかを明らかにしなければ,充 分な成果は望めないであろう。
V 結 論
外国競争のチャネル毎に,産業組織と国際経済の関係について議論を進めてきた。開放 経済の進展,相互依存性の増大とともに,産業組織と国際経済の関係は,今後とも益々重 要性が高まるものと思われる。したがって,国際経済学と産業組織論の 協力的展開は,一 層必要とされよう。
一般的にいえば,輸出入・直接投資といった外国競争機会は互いに独立ではない。関税 工場,外国支配企業の良好な市場成果・輸出パフォーマンス等を考えあわせると,そのこ
とはもはや明らかであろう(Hymer〔1960〕, Dunning〔1958〕)。
それと同時により精緻化された検証方法を用いることが必要である。これまでなされて きたこの分野の諸研究は,そのほとんどがOLSの段階にとどまっている。外国競争変数 は他の変数と同時関係をもちうり,外国競争の影響を正当に評価しようとすれば,同時方 程式モデルでの展開が望ましい。また外国企業の優位性の種類とその強さを明確にしょう とすれば,全産業サンプルでなく,消費財・生産財サブサンプルをベースとして分析しな ければ充分とはいえないであろう。
最後に,国内市場構造と貿易・対外投資との間には,本稿で論じてきた関係とは逆の,
もう一つの関係が存在する。すなわち,国内市場構造が国際貿易,あるいは対外投資パフ ォーマンスに及ぼす影響を明らかにすることは,本稿の主題である貿易・対外投資の市場 構造・成果に及ぼす影響を検討する上で重要な補完的作業と思われる。この点については 詳しくふれないが,Marvel〔1980〕,Glejser et al〔1980〕, White〔1974〕,Pagoulatos
&Sorensen〔1976a〕等の諸研究を挙げておくにとどめる。補完的という意味は,国内市 場構造と貿易・対外直接投資は本来的に同時決定の関係にあると思われるからである。
36.原〔1978〕,H・rst〔1972b〕, Lall〔1980〕参照。
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