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‑ 盲 ・聾 ・養護学校 の場合 ‑ 相 川 勝 代

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養護教諭 の役割 とス トレス ( 第 Ⅰ報)

‑ 盲 ・聾 ・養護学校 の場合 ‑ 相 川 勝 代

TheRol ea ndSt r e s sofSc hoolNur s e‑ Te ac he r(Ⅰ)

Ka t s uyoAI K A WA

Ⅰ.は じめに

近年 ,養護教諭の役割 に対 す る期待 が大 きい。 そ して,その期待 は さ らにエスカ レー ト してい くように思われ る。 児童 ・生徒のヘルス ・ニーズの変化 に応 じて,学校 におけ る保 健の専 門家である養護教諭の機能 が変化 してい くのは当然ではあろ う。保健室 と養護教諭 の機能 はあいまいであ る といわれ る ( 山本,1 983) 。 あい まい さ故 に,児童 ・生徒 のヘル ス ・ニーズの変遷 に応 じて,柔軟 に対応 で きる とい う利点 もあ る。期待 に応 えようとす る 態度 と引 き受 け うる機能の限度 に,養護教諭は役割葛藤 をだ きなが ら仕事 を してい るのが 実情 といえ よう。

養護教諭 は,学校保健活動 において推進 的役割 を期待 されてい る。学校保健 とは,児童

・生徒 の病気 や健康障害の早期発見,早期治療 に とどま らず,児童 ・生徒の生命 を維持 ・ 発展 し,健康 を増進 し,教育 を受 け,学習 をす る権利 を保障す る とい う観点 を含んだ広範 な意義 と目的 を もつ ものであ る。

児童 ・生徒 のヘルス ・ニーズにはさまざまな ものがあ る

心身障害児のヘルス ・ニーズ も特別 の配慮 を必要 とす る ものである。 1 97 9 年 に養護学校義務制 が施行 され,障害児の全 員就学 が実施 された。 その結果,精神薄弱養護学校や肢体不 自由養護学校の児童 ・生徒の 障害 の重度化 ・重複化が問題 とな って きた。その ような児童 ・生徒 の障害の実態の中で, 盲学校 , 聾学校及び養護学校 におけ る養護教諭 は どの ような保健活動 を実践 してい るのか, 保健活動 を実践す るにあた って,心身障害児ゆ えに, どの ような配慮 をお こな ってい るの か,そ して,その ような実践 を行 いなが ら, どの ようなス トレスを感 じているのかについ て調査 した。

Ⅱ.方 法

対 象は,長崎県下の盲学校,聾学校及 び養護学校1 8 校の養護教諭2 0 名であ る。1 8 校の う ち 2 校 は養護教諭 が複数配置 されてい る。精神薄弱養護学校 1 校 ,肢体不 自由養護学校 1 校 であ る。

調査期間は,1 9 97 年 8 月か ら 9 月にかけての約 1 か月 とし,郵送法 に よった。

回答があ ったのは,盲学校 1 校 ,聾学校 2 校 ,精神薄弱養護学校 5 校 ,肢体不 自由養護 学校 2 校で,養護教諭2 0 名 中1 0 名であ った。 その うち, 9 名の養護教諭 が看護婦免許 を も

っていた。

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1 8 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第 5 4 号

調査 は,「盲学校 ,聾学校及 び養護学校の養護教論の役割 とス トレス」 とし,記述式 に よった。調査 内容は,次の とお りであ る。( D普通学校 との職務 内容のちがい。( 夢仕事 を し ていての不満 や悩み.( 彰今後 さ らに深めたい専門的な知識 や技術,分野 な ど。

なお,養護教諭 の悩 みや不満 については , 「 養護教諭の役割 とス トレス ( 第 Ⅱ報 )」 とし て報告す る。

Ⅲ.結 果

1 .保健情報 の収集 ( 1 )健康観察

精神薄弱養護学校 では, 自ら訴 えることがで きない児童 ・生徒 が多 く,養護教諭 は児童

・生徒 の活動状況等 を詳柵 に観察す るように努めていた。養護教諭 はクラスを回 り,障害 の状況 に応 じて個 々に健康観察 を行 い,担任教師 と情報 を交換 しあ っていた。肢体不 自由 養護学校では,養護教諭は保護者 や入所施設 と,体温 ,排涯 ,食思,睡眠状態等 について 連絡 しあい,担任教師が検温 を済 ませた後 , クラスを回 り,健康観察 を行 っていた。盲学 校 では,特 に保有視力の低下 に注意が払 われていた。聾学校 では,幼稚部 の幼児や低学年 児童の健康観察 に特 に留意 されていた。

( 2) 保健調査

どの校種 も詳 しい保健調査 がな されていた。養護教諭 が保護者全員 と面接 を し,坐育歴 , 現病歴 ,既往歴,羅患傾 向等 について聞 き取 り,保健調査 を行 っている精神薄弱養護学校 が 1校 あ った。詳細 な保健調査 を実施 す ることと,プ ライバ シー保護 とのかねあいのむず か しさが指摘 されていた。

( 3)健康診断

どの校種 も保健調査 を もとに , 「手間 と時間」 をかけた健康診断がな されていた。健康 診断の実施 にあた っては,精神薄弱養護学校では健康診断のための諸検査が困難な こ とが 多 く,た とえば視力検査 に絵 のマ ッチ ングを用いた り,聾学校 では,事前指導 として,視 覚教材 を使 った指導 を行 い,健康診断実施時 も言語 によるコミュニケーシ ョン不足 を絵や 1 動作 で補 うための工夫 がされ,肢体不 自由養護学校 では健康診断その もの をコミュニケー

シ ョンやスキンシ ップの一環 として とらえ実施 されていた.

精神薄弱養護学校 では児童 ・生徒が健康診断に対 し受動的であるため,プ ライバ シーへ の配慮のむずか しさが指摘 され,盲学校 では児童 ・生徒の眼疾息の病因が先天的な ものが 多いため,プ ライバ シーに配慮 した事後措置 と保健管理の大切 さが指摘 されていた。

事後措置 としては,各疾患 に応 じて継続的な個別の対応 がな されていた。

2. 保健管理 ( 1 )救急処置

精神薄弱養護学校では, 児童 ・生徒の多 くは 自ら苦痛や受傷 について訴 えることがでず,

担任教師がいつ もの様子 と違 うとい うこ とで,保健室 に連 れて こられ るこ とが多 く,痛み

の部位 や程度な ども判然 とせず,養護教諭は判断がむずか しい と感 じていた。救急処置 を

行 うにあた って,的確 な判断 をす るために,養護教諭 は平素 か ら児童 ・生徒 について よ く

知 っているこ とが必要 であ り,そのためには児童 ・生徒 と接触 を多 くし,担任教師 とよい

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人間関係 を保 ち,情報交換 に努雀)る必要 があ る と考 え られていた。 また,救急処置後の経 過 を継続的 に観察 し,保護者 との連絡 も欠 か さずな されて いた。肢体不 自由養護学校 では, 食物 の誤【 燕,疫 のか らみ,け いれん発作等 に よる呼吸停止 やチアノーゼな ど,緊急 の事態 に対 し救急処置 を行 うこ とが多か った。 また,転倒等 に よる受傷の場合 ,受傷 の程度の判 断 がむずか しく,経過観察 と保護者 との連携 が大切 であ る と考 え られていた。盲学校 では, 視覚障害のため,生命 の危険 を感 じるような救急処置 が多か った。聾学校 では,幼 児 ・児 童 の転倒 に よる受傷 が多いが,高学年 になれば救 急度 は低 くな る とされていた。

( 2)学校伝染病

基本的 には普通学校 と同 じような対応 がな されていた。

( 3)慢性疾患 児の生活指導

精神薄弱養護学校 では,てんかんや瑞息 な どに対 す る服薬指導 があ るが,昼食後の服薬 は,学校 に よって担任教師か養護教諭 の どち らかが行 い,宿泊 を伴 う時は養護教諭 が服薬 の管理 と指導 を行 っていた。 てんかんに対 す る服薬指導等慢性疾患 児 に対 す る生活管理 の 必要性 が指摘 されていた。肢体不 自由養護学校 では,二分脊椎 児 に対 す る排湛指導 と水分 補給 ,骨形成不全症 児 に対 す る骨折予 防,軟骨無形成症 児 に対 す る装具装着 と歩行指導等 , 全校的 な共通理解の上 で生活管理 がな されていた。聾学校 の うちの 1 校 では ,1 5% とい う 高率の心疾患 の幼児 ・児童 が在籍 してお り,心臓病 の管理 区分 に よる生活指導 がな されて いた。

( 4)疾病予防

精神遅滞 児は,知識 を習得 し,態度 を変容 させ,行動化 す るこ とがむずか しいので,食 中毒 のための手洗 い,虫歯予 防¢) ための歯 みが きゃフ ッ素洗 口,かぜ予 防のための うが い

等 ,指導 を繰 り返 しなが ら,習慣化 させてい くような個別 の指導 が行 われていた。 そのた め には,担任教 師の保健 に対 す る理解 と保護者 との連携 が必要 とされていた。肢体不 自由 養護学校 では,職員 が外部 か ら食 中毒 やかぜな どの病原菌 を持 ち込 んで感染の媒体 とな ら ない ような配慮 がなされていた。盲学校 と聾学校 では,基本的 には普通学校 と同 じように 対応 されていた。

( 5) 精神保健

精神薄弱養護学校 では, 自ら言葉 で訴 えるこ とので きない児童 ・生徒 が,身体症状 や行 動障害 として,何 を表現 し,伝 え よう としてい るのか,十分 な観察 とその意味の理解 に努 めていた。小学部 か ら高等部 まであ る精神薄弱養護学校 の場合,思春期 の乗 り越 え方 に個 人差 が大 き く,行動障害 として表 われた時 ,関係者 の共通理解 を得 るのがむずか しく,対 応 の仕方が統一 で きず苦慮 していた。

( 6)健康相談

精神薄弱養護学校 では,健康相談 は 自ら訴 えることので きない精神遅滞 児の健康問題 に

ついて保護者 と共 に考 える機会 として とらえ られ,学校 に よっては,教育相談 の相談 内容

が健康 に関す る時は,養護教諭 も同席 して相談 を受けていた。相談の結果 に よって,医療

機 関等の専 門機関 との連絡 が取 り合われていた

肢体不 自由養護学校 では,養護教諭 は 日

常 的 に担任教師や保護者 と児童 ・生徒の健康 についての相談 を行 ってお り,学校 医 に よる

個別の健康相談 も実施 されていた。聾学校 では行事前 に学校医 に よる健康相談 が実施 され

ていた。

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2 0 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第 5 4 号

3 .保健学習 ( 1 )保健指導

精神薄弱養護学校 では,児童 ・生徒 の興味 を引 く視覚教材 を利用 し,わか りやすい説 明 の工夫 がな されていた。一般的 には個別の指導 か少人数 の指導 が効果的であ る と考 え られ ていたが, 1‑ 2か月 に 1回全体朝会 で,保健指導 を実施 してい る学校 もあ った。最近 の テーマ として肥満指導 を取 り上 げてい る学校 があ った。保健指導 と保健学 習が関連 づ くよ うな指導 にな るよう心 がけ られていた。肢体不 自由養護学校で も,児童 ・生徒 の理解 に応 じた個別 の保健指導 がな されていた。学校規模 の小 さい盲学校 では,児童 ・生徒の 2 倍 以 上 の教 師がいるため,養護教諭 自身 が保健指導 す る機会 は少 ない と報告 されていた。一方 , 聾学校 の うちの 1 校 では,規模 が小 さいための利便 として,歯科校 医及 び歯科衛生士学院 生 による個別 のブ ラ ッシング指導 について紹介 されていた し,また養護教諭 が担任教 師 と 相談 し,少人数で性 に関す る指導 を行 っていた。

( 2)保健学 習

精神薄弱養護学校 では,児童 ・生徒 の理解度 に応 じた保健学 習の必要性 が痛感 されてい るが,現実 には教科 の授業 としての保健学 習はむずか しく,現在 の ところ,養護教諭 が教 科 としての保健学習 に関わ りを もってい る学校 はなか った。肢体不 自由養護学校 では,一 部教科 としての保健学 習 も行われていた。

4 .環境の管理

精神薄弱養護学校 では,薬品や洗剤 の誤飲 や転落 の危険性等 ,危険物 や危険個所 に気づ いた ら早期 に対応 し,児童 ・生徒 の個 々の行動特性 に応 じた環境管理 が行 われていた。 月 1回点検表 に基づいて,環境 の点検 を実施 してい る学校 もあ った。 あ る養護教諭 は,生命 に関わ るような こ とは制限 しなければな らないが,環境 を整 え危険 な状況 をな くし行動 を 制限 しないで,思 い っ き り行動 させたい とコメン トしていた。肢体不 自由養護学校 は,ホ ッ トカーペ ッ ト,ス トーブ,冷暖房 ,扇風機 な どの調整 に留意 されていた。盲学校 では, 適度 の照 明 と日常的 な安全点検が行われていた。聾学校 では,後方 か らの呼びかけや車の クラクシ ョンな どが聞 き取 れないため,構 内への幸の乗 り入れ を禁止す るか,やむ をえず 進 入す る時は最徐行す るようにされていた。

Ⅳ.考 察

養護教諭の機能 と役割 について考 える時 ,養護教諭 が学校看護婦 か ら発足 し,児童 ・生 徒 の健康問題 の時代的 な変遷 とともに, どの ような役割の変化 を経 て,現代 の養護教諭の 機能 とな って きたのかをみてい く必要 があ る。

杉浦 ( 1 9 7 4 ) に よる と,学校 には じめて看護婦 を雇 い入 れたのは ,1 9 0 4 年 ,福 岡県女子 師範学校寄宿舎 であ る。発病者 の病床 で看護 にあた るためであ った。 その頃,学校 には ト

ラホームが蔓延 していたが ,1 9 0 5 年 ,岐阜県 において,県立病 院か ら看護婦 が派遣 され,

洗眼 ・治療 にあた った。 この 「学校看護婦」が,養護教諭 のは じま りであ る 。1 9 2 3 年 , 「 学

校看護婦執務指針 」 に よ り,学校看護婦 が学校 におけ る一 つの職種 として制度的に位置づ

け られたが,すで に, この頃 には,全 国 に 31 6 人 もの学校看護婦 が実在 していた といわれ

る。学校看護婦 か ら教育職 として職名 が変更 され るのは ,1 9 41 年 ,国民学校令の公布 に よ

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る ものであ る。 「 養護訓導」 とな り,教育職員 と しての身分 が確立 され,養護 をつか さ ど る とい う自律性 が確立 された。1 947 年 ,学校教育法 の制定 に よ り , 「養護訓導」 か ら 「養 護教諭」 と名称 が変更 され,小学校 ,中学校 ,高等学校 ,盲学校 ,聾学校及 び養護学校 に 配置 され るこ とにな った。

養護教諭 の職務 や役割 について論議 され るさ きがけ になったのは,1 968 年 の第 1 5 回学校 保健学会の シンポ ジ ュウムであ る。 シンポ ジ ュウムでは,養護教諭 の役割 として,疾病 ・ 障害の予 防処置 ,救急看護の担 当専 門技術者 としての職務 や,学校 におけ る保健指導 がで

きる教育者等 々の意見が出 された ( 飯 田,1 986) 0

小倉 ( 1 970 年 )は , 『養護教諭 その専 門性 と機能』 の なかで,養護教諭 の専 門職 化の 歴史的過程 を 3 層 の機能 で とらえた。学校看護婦 として発足 した養護教諭 の機能 の第一層 は学校救急看護 の機能 であ り,第二層 は集 団の健康管理の機能 ,そ して第三層 は教育保健 におけ る独 自の専 門的機能 とした。後 に,児童 ・生徒 のかかえる健康 問題 の変化 に即応 し て,第 四層 として人間形 成 の教育 ( 教職 )機能 を新 たに加 えた ( 小倉 ,1 985) 。 小倉 は, 養護教諭 の職務 を, 保健管理 ・保健指導 の専門職 としてその運営 や実施 にあた る とともに, 教育の専門職 の一員 として学校教育 の 目的達成 につ とめ る ことであ る と整理 した。

学校保健 関係者 は,1 972 年 1 2 月 に出された保健体育審議会 の答 申 「児童 ・生徒 の健康 の 保持増進 に関す る施策 について」 を引用 し,養護教諭 の職務 について解釈す るこ とが多い (曽根 ,1 997) 。答 申は,次の ように述 べてい る。「養護教諭 は,児童 ・生徒又 は幼 児の養 護 を掌 る ものであ り,専 門的立場 か ら,すべての児童 ・生徒 の保健 お よび環境衛生の実態 を的確 に把握 して,疾病 や情緒障害 ,体 力,栄養 に関す る問題等 ,心身の健康 に問題 を も つ児童 ・生徒 の個別の指導 にあた り,また,健康 な児童 ・生徒 について も健康 の増進 に関 す る指導 にあた るのみな らず,一般教 員の行 う日常の教育活動 に も積極的 に協 力す る役割 を持 つ ものであ る」 。 1 997 年 9 月,25 年 ぶ りの保健体育審議会 の答 申で,養護教諭 の役割 や保健室機能 の見直 しが行われた。

1 982 年 か ら1 984 年 にかけて,日本学校保健学会は 「 養護教諭 の養成のあ り方 をめ ぐって」

とい うテーマで研究討議 を行 った。第 1 年 次 ( 第2 9 回学会)は 「 養護教諭養成の現状 と問 題点」,第 2 年次 ( 第30 回学会)は 「ヘル ス ・ニーズの変貌 と養護教諭の役割」,第 3 年次 ( 第31 回学会)は 「 養護教諭養成 のための望 ま しい教育課程」であ った。第3 0 回学会で,2 0 年 の勤務歴 を もつ高等学校の養護教諭 は, 自己の実践記録の分析 か ら,養護教諭の職務の 拡大 ・変化 について指摘 した, と飯 田 ( 1 98 6)は報告 してい る。

1 983 年 に,国立大学養護教諭養成協議会 は,「児童 ・生徒 の健康 問題 の変化 と養護教諭 の役割 の変化 を実証 す るための調査 を行 った。 その結果 ,養護教諭 の基本的 な機能 とし て,第一 に学校保健の三分野 ,つ ま り看護 ・臨床 医学 ,健康管理 ,教育 におけ る専門的機 鰭 ,第二 に総合的学校保健経営¢) 機能 としての学校経営の中で組織的 ・計画的 ・総合的 に 活動 を推進 す る機能 ,第三 に研究の機能 の三つの機能 が導 き出された。 さ らに,最近 の児 童 ・生徒 の健康問題 の変貌 に よ り,養護教諭 に新 たな役割 が求め られて きた。養護教諭 の 現代的 な機能 として,学校保健問題 を的確 に把握 す る機能 ,精神的健康 問題 への個別的対 応 の機能 ,組織的活動推進機能及 び教 師 としての機能 が付け加 え られた ( 石原 ,1 98 7)0

この ように関係者 は,児童 ・生徒 のヘル ス ・ニーズに応 じて活動 し,現実の活動 に即 し

て 「養護」の意味や定義 を考 え よう としてい る。 そ して,養護教諭 自身 は教育現場 で,児

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2 2 長崎大学教育学部教育科学研究報告 第 5 4 号

童 ・生徒 のヘル ス ・ニーズに応 じた実践 とは何 かを模索 しなが ら,児童 ・生徒 のヘル ス ・ ニーズに応 え よう としてい る。

保健教育学者 の数見 ( 1 9 9 4 ) は,養護教諭 とい う職種 の誕生 は,既述 の ように トラホー ムの治療 とい う子 どもの健康障害 の事実 を何 とか しなければ との思 いか ら出発 してい る と い うこ とを銘記 す る必要 があ ろ う, と述 べてい る。つ ま り,養護教諭 は,子 どもの健康実 態の必要 その ものか ら誕生 した職種 であ る。 しか しなが ら,時代的 な変遷 を経 て ,1 9 5 8 年 の学校保健法制定時 に出された養護教諭 の職務項 目は,学校 医や保健主事 に対 し従属的で 自律性 の乏 しい ものであ った 。1 9 6 0 年代 に入 り,養護教諭 の職務 の実態 に対 して問題意識 を もって創造 的 に取 り組 む仕事 を してい こう とい う動 きが創 りだ され, 自主的 なサー クル がで きた 。1 9 7 0 年代 にな り,実践 をま とめ分析 す るこ とに よって,養護教諭の仕事 の基本 的 な視点 と原則的 なあ り方 が理論化 され るようにな った。 これまでのや らざるをえない仕 事 をや りこな してい く「 職務」観 か ら,子 どもの現実 に即 して何 を成 すべ きかを考 える 「実 践」観 へ と,養護教諭の意謡餌ま変 わ って きた ( 東京 ・芽 の会 ,1 9 8 4. 数見 ,1 9 9 4 ) .

現在 の学校教育 において,児童 ・生徒 のヘル ス ・ニー ズに応 じた養護教諭 の実践 につい て検討 す るにあた って,大 き く二 つの領域 が考 え られ る。一 つは最近 の児童 ・生徒の特異 な健 康 問題 であ る不定愁訴 や精神的 問題 を もつ児童 ・生徒 の増 加 であ り,一 つは本論 の テーマであ る心身 に障害 を もつ児童 ・生徒 の養護 と教育 にかかわ る問題 であ る。

今回の調査結果 を もとに,盲学校 ,聾学校及 び養護学校 におけ る養護教諭 の実践 につい てみてみ る。障害 を もつ児童 ・生徒 の個別 あ るいは集 団の健康管理 を行 うため に,養護教 諭 は児童 ・生徒一人 ひ とりの保健情報 を詳細 に把握 す る こ とに努 めてい る。詳細 な健康観 察や保健調査 の重要性 は言 うに及 ばない。客観的 な情報源 であ る健康診 断は普通学校 に比 べ格段 の 「 手 間 と時間 」 がかけ られてい る

障害児学校 では,健康診断その ものの教育的 な側面 がいか されてい るが, さ らに 「手 間 と時間」 をかけてな された健康診断 を どの よう に教育診 断 として活用す るかが今後 の課題 であ ろ う

健康診断は,教育診 断の一環 として,健康面 か ら児童 ・生徒 の実態 を とらえ,その結果 を教育診 断の資料 として,教育計画 を立案 し,教育活動 を行 い,教育効果 を高め る。 つ ま り,健康診断は疾病異常 を発見 し治療 を促 すだけではな く,児童 ・生徒 の教育 を受 け る権 利 をよ りよ く保障 しなければな らない。 そのため に も,健康診断の事後措置 は,教育的な 配慮 が不可欠 であ る。健康診断 に よ り,健康上 の問題 で,学習や運動 ,お よび作業等の停 止や軽減等 が必要 であれば,担任教師は学校 医の指示 を求め,当該 の児童 ・生徒の教育計 画 を検討 す る必要 があ る。 その時 ,養護教諭 は,担任教師の教育計画の立案 と遂行 に対 し て,専 門的 な立場 か らの対応 を求め られ るが,看護 や医療 的な基盤 の うえに,養護教諭 と

しての独 自の発達的 な視点や教育的 な視点 が問われて くる。

健康診断以外 に も,今回の実態調査 において,盲学校 ,聾学校及 び養護学校 の養護教諭 は,実践 のあ らゆ る側面 ,た とえば救急処置 ,生活指導 ,疾病予防,保健指導 な どにおい て,発達的な視点 か ら児童 ・生徒 を理解 し,教育的 に対応 してい こう とす る意識的, 目的 的な実践 を行 っていた。

ヘル ス ・ニーズは児童 ・生徒 の障害 の実態 に よって異 な って くる 。1 9 7 9 年 の養護学校義

務化以降,精神薄弱養護学校及 び肢体不 自由養護学校 では児童 ・生徒の障害 の重度化 ,重

複化,重症化 が問題 とされてい る。精神薄弱養護学校 の場合,重度の発達遅滞 にてんかん

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や行動 障害 の合併 が高率 であ る ( 川崎 ら,1 989.飯 田 ら,1 993.相

,1 996) 。肢体 不 自 由養護学校 の場合 ,鈴木 ら ( 1 99 7) は,経管栄養 ,疫 の吸引,導尿 ,気管 切開部 の管理 な どの医療的 ケアの必要 な児童 ・生徒 が登校在籍 児童 ・生徒 の2 0%近 くを占め る とい う実態 を報告 してい る。

鈴木 ら ( 1 977) は,東京都下の重症心身障害 児施設通 園児等94 人 ,都立肢体不 自由養護 学 校 の児童 ・生徒 及 び在 宅重症 児の訪 問看護対 象児429 人 の医療 的 ケアの実態 につ いて分 析 して い る。調査 結果 に よる と,養護学校 全体 で7. 0%の児童 ・生徒 が 日常的 に医療 的 ケ アを受 けなが ら登校 してい る。 しか し下校 してか ら家 で医療 的 ケア を受 けてい るのは2 0%

を越 えてお り,差 し引 き1 3%以上 が 日常 的 に医療 的 ケア を要 しなが らも,学校 の時 間帯 は それ を受 け られずに就学 を続 け ざるを えない状態 にあ る。 この ような実情 に対 して,東京 都教育委 員会 の事業 として,都立村 山養護学校 と東京都 小児療育 園 との医療 ケアに関す る システムが紹介 されて い る。 この システムは教師 は医師の責任 あ る指導 の もと,指導 され た範 囲で忠実 に医療 的 ケア を遂行 し,注意深 い観 察 と疑 問や問題 を指導 医 に問 いなが ら実 施 す る ものであ る

この ように医療 的 ケアを要 す る重度 ,重症 の児童 ・生徒 が在籍 す る学校 では,養護教諭 の看護婦免許 は必要 な要件 ではなかろ うか。石原 ら ( 1 98 7) は,養護教諭 に看護婦 免許 が 必要 か どうか,養護教 諭養 成機 関の卒業 生 1 40 人 を対 象 に調査 し,91 人 (うち特殊 学校 4 人 を含 む)の回答 ( 有効回答率6 5. 0%)を分析 した。調査結果 に よる と,看護婦 免許 を持 たない養護教諭 は,看護婦 免許 を持 つ養護 教諭 に比べ ,初任校 で救急処置 に最 も多 くの時 間 を費 や してお り,赴任後 ,医学的知識 の必要性 を感 じて勉強 して いる。如来 ( 1 99 7)は, 看護婦免許 が必要 だ といわれ るが,た とえ看護婦 の資格 があ って も,医師の指示 がなけ れ ば医療行為 はで きないのであ るか ら,大切 なのは傷病 の程度 の判 断や救急処置 があ る程 度 落 ち着 いてで きる実 力 をつけ る こ とが必要 であ る と述 べてい る。筆者 は,医療的 ケア を必 要 とす る児童 ・生徒 が在籍 してい る養護学校 の養護教諭 は,看護婦免許 を もち,臨床看護 の経験 を もってい る こ とが望 ま しい と考 えてい る。

わが国の養護教諭 に相応 す る職種 として,ア メ リカには スクールナー ス とい う職種 があ る。藤 田 ( 1 995) は,ス クールナ一 一ス と養護教諭 の 日米比較 を行 って い る。調査期 間は1 990 年 1 2 月 〜1 991 年 4 月 ,調査対象はア メ リカの ス クールナー ス236 人, 日本の養護教諭41 7 人 であ る。もっ とも重要 な健康 問題 として,日米双方 とも心理 的 ・情緒 的問題 をあげて い るO

日本 の養護教諭 は,健康診 断や測定 に比較 的時間 を費 や し,子 どもたちの一般的 な悩 み相

談 に頻繁 に応 じてい る。仕事 を進 め るうえで,養護教諭 は圧倒 的 に多 くが教師 との連携 を

重 視 して い るが, スクールナー スは父母 との連携 を重視 してい る。 今後身 に着 けたい と考

え る能 力 につ いて, 養護教諭 は カウ ンセ リングや心理学 に関す る知識 や技術 ,ス クールナー

スは医学 的 ・看護的知識 や技術 ¢) 向上 を求め る者 が多 い。 仕事 に対 す る満足感 や将来 の見

通 しにつ いては, スクールナースは肯定的 で,確信的 な傾 向を示 してい る。藤 田 ( 1 995)

に よれば,ア メ リカの ス クー ル, ナー ス も,歴 史的 に身分 が不安 定 で,役割 や仕事 の 内容が

確立 されてお らず,他 の教 師 との格差 に悩 まされて きた。 しか し現在 では, 日本の養護教

諭 とは学校 におけ る位置 と実践 の構 図が基本的 に異 な ってい る。 そのちがいは養護教諭 の

実践 は 「 教育実践 としての構 図」 であ り,ス クールナー スの実践 は 「 看護 実践 と しての構

図 」 であ る。 ス クールナー スは学校 において看護婦 と しての専 門的機能 を発揮 し, プ ライ

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2 4 長 崎大 学 教 育学 部教 育 科学 研 究報 告 第 5 4 号

マ リーケア を提供 してい る。 ス クールナースは障害 を もった生徒 に対 し頻繁 に, しか も重 要 な関与 を してお り,障害 を もった生徒 が通 う学校 では,そのため にスクールナースが置

かれてい る と言 っていい程 ,スクールナースの仕事 は重要 であ る。

次 に養護教諭 の複数配置 についてみてみ る。養護教諭 の複数配置 の歴史 は ,1 9 60 年代後 半 か ら始 ってい る。文部省 は ,1 9 93 年 か ら 6 年計画で 3 0 学級以上 の学校 に複数配置 を措置 す る方針 を出 した。 これ までの複数配置 は,大規模校 ,障害 児学級 ,同和地域 ,公害地域 , その他教育 の困難校 な ど特定の条件 を もった学校 への 「 特別加配」 であ ったが, これか ら は,養護教諭 の職務 の充実や制度 の発展のための複数配置 とい う制度的整備 が期待 されて い る。複数制 の よさは,職務 の基本 とな る養護教諭 自身の時間的,精神的ゆ とりが うまれ, 児童 ・生徒 の健康 問題 を複数 の 目で見 て,評価 し判断 し対応 す るこ とがで きる とい う専門 的 に よ り的確 な役割遂行 が期待 で きる こ とであ る ( 藤 田 ,1 9 97b) 。 今回の調査 で も,複 数配置 が導入 された精神薄弱養護学校 や肢体不 自由養護学校 があ るが,今後 さ らに制度 と

して整備 されてい くように期待 したい。

日本 の学校教育 は,教科教育の担任 の他 には養護教諭 が配置 されてい るだけ とい う単一 職種 の集 団である。 それは,心身 に障害 を もつ児童 ・生徒 が在籍 してい る盲学校 ,聾学校 及 び養護学校 において も同様 であ る。 ニ ュー ヨー クで活躍 中の カニングハム久子 ( 1 9 7 7) は最新 のアメ リカ特殊教育事情 について紹介 してい る。 それに よる と,アメ リカの特殊教 育 では関連専門分野の層 が厚 く,特殊教育校 にはスクールサイ コロジス トが配置 され,児 童 ・生徒 の診断査定 を行 い,教師や親 たちのア ドヴ ァイザ‑ と して機能 してい る。さ らに, 作業療法士 や言語療法士 な どさまざまな療法士 たちが,特殊教育の職員 として雇用 され, 障害 児童 ・生徒の発達 に重要 な役割 を担 ってお り, これが,横 の有機的な専 門的連携 に よ るテ ィーム ・アプ ローチを容易 にす る要 因 とな ってい る と述 べてい る。藤 田 ( 1 9 97 a )は, 学校 におけ る 日米の相談機能 について整理 してい る。 アメ リカではス クール カウンセ ラー は生徒 の履修 ,進路相談 と指導 が主柱 であ り,ス クールナースは健康相談 を行 い,さ らに 診 断や治療的相談 を受 け るスクールサイ コロジス トとい う職種 があ る。ようや く日本で も, 発達障害 や さまざまな適応障害 を もつ児童 ・生徒 に対応 す る学校心理士 ( スクールサイ コ

ロジス ト)の資格認定 が始 まろ う としてい る ( 上野 ,1 9 9 7) 。

日本ではアメ リカ等 で多 くの専門職種 が分担 し,専 門的 な連携 を行 ってい る複数の職種 の機能 を養護教諭 が一手 に引 き受けてい る感 があ る。 そ して,児童 ・生徒 のヘルスニーズ の多様化 につれ,昨今,関係者 は養護教諭の職務 への期待 をさ らに強めてい る とい う現状 があ る。 しか し,一 つの専 門職種 が引 き受け うる職務 内容 には限界 があ る。筆者 は,養護 教諭の役割 と位置 づけが確立 され る とともに,スクール カウンセ ラーやスクールサイ コロ ジス ト等の職種 が導入 され,担任教師 を中心 として,それぞれの職種 が専 門性 を発揮 し, チーム ・アプ ローチが展開 され るこ とを期待 す る。

文 献

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参照

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