A New Fastener using Half-Moon Shaped Bolts for High-Strength Steel Member Part 3 Influence of Flange Fastener on Beam Joint Stiffness
by
Hiroyuki TAMAI* and Takahiro KIRIYAMA**
The authors have presented the half-moon shaped bolts for a fastener of high-strength steel members. In previous paper, influence of a self fastening effect on flexural rigidity of the Beam joint of single splice plate by using of the half-moon shaped bolts was shown. We were prepared to test several types of specimens of two pieces of splice plate and specimens axial in which direction of the bolt is different. The beam flange joint specimen as an application of the half-moon shaped bearing bolt was prepared. Cyclic loading tests were performed on their beam flange joints. This paper showed influence of a self fastening effect on flexural rigidity of their beam joint by using of the half-moon shaped bolts.
Key words : Bearing Bolt, Built-up Member, H-SA700A, High-Strength Steel, Beam Flange Joint.
1 はじめに
建築構造で利用するための普及型高強度鋼(H-SA700) が開発され,その利用技術に関する研究が多くの研究者 によって行われている1).高強度鋼部材の接合では,超 高力摩擦ボルト接合を行っても,かなり多くのボルト本 数を必要とすることが既往の研究で明らかとなってい る.高強度鋼を用いた乾式組立材を普及させるためには,
接合方法をより高耐力かつ簡便にすることが必要と考 えられる.これらの観点から,著者等は支圧接合により 接合性能を向上させる,新ボルトの提案・開発を行って いる2).
本報では,複半月充填ボルト接合した梁継手試験体を 3 種類製作する.この試験体により,せん断状態の違い による継手の剛性評価を行う.また,充填ボルトの自己 充填性の検討及びボルトのすべり面の角度の違いによ る剛性評価を検討することを目的とする.
2 複半月テーパ充填ボルトの概要
この支圧接合は,超高力摩擦ボルト接合に比べ接合耐 力が高く,ボルトの本数を約半分にすることができボル トの本数が少なく済むので,接合部がコンパクトになり 施工性に優れるという特徴がある.
複半月充填ボルトを用いた充填ボルト接合法と,その
ボルトを図1に示す.この接合方法は,半月形断面のボ ルトが,ボルト孔を荷重方向にギャップをなくすように 充填するので,複半月テーパ充填ボルトと呼んでいる.
ワッシャーはスプリングワッシャーを用い,このワッ
平成25年7月24日受理
* システム科学部門(Division of System Science)
** 工学研究科(Graduate School of Engineering)
図1 充填ボルト
図2 試験体
写真1 試験体設置詳細 写真2 試験体継手の詳細
図3 試験体の継手詳細
シャーの常時の復元力を利用しギャップが解消される.
これにより繰返し荷重に対して,ボルトねじとナットに は緩みは生じず,ずれが生じてボルト孔が拡径しても,
スプリングワッシャーの復元力により,充填ボルト2 が 隙間に入り込むため,せん断方向にボルトの緩みは生じ ない(この効果を以降ではボルトの自己充填機能と呼ぶ).
複半月テーパ充填ボルト接合は,リベット接合と同等程 度(0.2mm 以内) にギャップは解消されることが期待で
きる.そのため従来の支圧接合の問題点を解決でき,か つ,ボルト鋼種を14T で使用できるのでボルトのせん断 耐力は非常に高く,板厚が厚く,高強度の鋼材に対して 効率のよい接合ができる.
充填ボルトのテーパ部の付け根は応力集中が起きな いようにRがとってあり,テーパ角度はボルト軸方向に ずれた時の拡径によって設計する.本実験の場合は,
5mmの軸方向のずれに対して,1mmの拡径を設定して
載荷実験の概要を以下に示す.
3.1 試験体
図2,写真1,2に試験体を示す.試験体は,全長4500mm 支点間が 4000mm の梁(BH-250-125×6×9,SN400)に,
中央点より500mmの位置に継手部を設けたものである.
試験体は,図3に示す継手様式を変化させた2体を用 意した.
(a)SPS試験体及び(b)SPF試験体は,板厚12mmの添板
一枚を介して,上下フランジにボルト各12本計24本で 接合し,一面せん断状態となる梁継手で,(a)SPS試験体 は,充填ボルトを用いた支圧接合で,充填ボルト(B10T) のすべり面を加力方向と直交させて設置したものであ り,(b)SPF試験体は,摩擦ボルト(S10T)を用いて摩擦接 合したものである.
(c)DPS試験体と(d)DPI試験体は,板厚6mmの添板2
枚を介して,同様に上下フランジに充填ボルト各 12 本 計24本で支圧接合し,二面せん断状態となる梁継手で,
(c)DPS試験体は,充填ボルト(B10T)のすべり面を(a)と同
様加力方向と直交させて設置したものであり,(d)DPI 試 験体は,充填ボルト(B10T)のすべり面を加力方向に対し 45°傾けて設置したものである.
また,いづれの試験体もウェブは,6mmの添板2枚を 介して,摩擦ボルト(S10T)8 本で摩擦接合している.試 験体のウェブ(6mm),フランジ(9mm)の1号試験片3本か ら平均した素材引張試験結果を表1に示す.
3.2 載荷装置と加力プログラム
図4に加力装置を示す.図5に加力プログラムを示す.
試験体の両端をピンとローラー支持し中央部にピン治 具とロードセルを介して上部から油圧ジャッキで正負 交番の繰返し載荷を行う.加力プログラムは,正負交番 漸増荷重繰返し載荷として 10kN,20kN,30kN,45kN,
60kNの荷重振幅について,各2サイクルずつ載荷した.
3.3 計測計画
計測方法は,荷重についてはロードセルから荷重Pを 中央たわみwは中央点の変位cと支点変位lとrを平均 した変位との差により求める(図4参照).
図5 加力プログラム
図6 継手部の回転角 図4 加力装置
表1 素材試験結果
y u u st i (N/mm2) (N/mm2) (%) (%) (%)
6mm plate 330 444 26.1 2.7 15.4
9mm plate 280 414 25.1 2.1 19.4
y:降伏応力,u:最大応力,u:破断ひずみ,
st:加工硬化ひずみ,i:一様伸び
2
c r
w = l
(1) wの計算値は,H形梁の曲げ剛性EIを用いて,
48
P 3
w = E I
l
(2.a) ここに,lは梁の支点間距離である.
(2.a)式を変形すると,以下の無次元化荷重-たわみ関係 が得られる.
2
48
w P
E I l
l (2.b)
4 梁継手の剛性評価
本節では,充填ボルトを用いて支圧接合した梁の荷重
-中央たわみ関係の理論値を求める.通常の曲げ変形に 加えて,ボルトの緩みに伴う変形が中央たわみに加わる ので,継手のガタを考慮した荷重-変位関係は次式とな る(図6参照).
sgn( )
b h
w = w P w (3.a) ここに,
3
48
b
w P
E I
l (3.b)
付加される中央たわみ:whは,
L
h R
w l
l l (3.c)
2( )
d
D - d
l (3.d) であり,θは継手位置のボルトの緩みに伴う最大回転角,
Dは孔径,dはボルト径,ldはH型鋼の中心からフラン ジ中心までの距離,lRは継手の中心から右の支点までの 距離,lLは継手中心から左の支点までの距離である.
5 実験結果とその考察
実験結果を図7,8及び写真3に示す.図7は漸増振
図7 漸増振幅繰返し載荷時の無次元化荷重-中央たわみ関係
(a) SPS試験体 (c) DPS試験体
(d) DPI試験体 (b) SPF試験体
幅試験全載荷過程無補強梁の荷重-支点間距離で無次 元化した中央たわみの関係であり,単位変形角の荷重で 無次元化した.図8は60kN荷重振幅の1サイクル目の 荷重-たわみ曲線である.また,図7,8の(c),(d)では 副尺として基準強度を235N/mm2として求めた降伏荷重
で無次元化した荷重P/Pyを示している.
ボルト孔とボルトとにギャップを有する際の理論値 を一点鎖線で図7,8に併せ示す.写真3には,実験後 のフランジ孔の形状をSPS試験体について示す.
以下に各項目ごとに分けて考察を示す.
図8 60kN荷重振幅時の無次元化荷重-中央たわみ関係
(a) SPS試験体 (c) DPS試験体
(d) DPI試験体 (b) SPF試験体
写真3 実験後フランジボルト孔の変形性状(SPS試験体)
5.1 理論値との比較
SPS試験体において図7(a)から,点線で示される最 大剛性時の理論値(継手がない場合の梁)と最小剛性 時の理論値(ボルトが充填ボルトではない通常の支圧 ボルト場合の梁)の間の値を取ることがわかる.また,
図 8(a)に示すように荷重を大きくしても最大剛性と最
小剛性の半分の値となることがわかる.これから,一 面せん断状態の梁継手においても,ボルトの自己充填 機能によって剛性の確保ができることがわかる.
ある程度のDPS試験体では,図7(c)からその剛性は 最大剛性時と近い値をとることがわかる.また,図8(c) から荷重が大きい場合においても最大剛性時の理論値 に近い値となり,二面せん断状態の梁継手では,ボル トの充填機能が良好に作用し,剛性の確保ができるこ とがわかる.
5.2 ボルト設置角度の影響
DPI試験体では,図7(d)からDPS試験体に比べてそ の剛性は若干低い値を取ることがわかる.また,図8(d) から荷重振幅を大きくした場合も同様であることがわ
かる.これは図9から,ボルトのすべり面を加力方向 に対して,直交軸から45°大きく傾くと,充填する方 向と異なるため,軸力方向にギャップが発生してしま うことが原因と考えられる.
5.3 せん断面数による比較
図7(a)(SPS試験体)と図7(c)(DPS試験体)の荷重-変 位関係を比べると,二面せん断状態の継手の方が剛性 は高いことがわかる.これは,充填ボルトで自己充填 性が発揮されても,一面せん断状態の場合せん断面を 中心にボルト軸が垂直位置から傾き,結果として上下 フランジに相対変位が生じたためと考えられる.
これから,複半月充填ボルトでは,二面せん断状態 の接合が有効であることがわかる.
写真3から,フランジボルト孔には局所的な変形は 生じていないことがわかる.
5.4 スリップバック現象
充填ボルトのすべり面には切断加工のままで何も処 理を施していない.支圧力が大きくなると,充填ボル
1回目 2回目 3回目
すべり始めの傾斜角 16° 18° 17°
摩擦係数 0.287 0.325 0.306
平 均 0.306
(a) スリップバック現象 (b) 摩擦係数評価試験
図10 スリップバック現象と摩擦係数評価試験
図9 ボルト充填方向の比較
表2 摩擦係数試験結果
ここに,は摩擦係数である.
本 実 験 の 充 填 ボ ル ト の す べ り 面 の 摩 擦 係 数 を 図
10(b) のような実験器具を用いて計測した.その結果
を表2に示す.
表 2 から計測されたすべり面の摩擦係数は=0.306 の値を持つ.従って,(5)式は満たされることはなく載 荷実験中にボルトがスリップバックする現象は生じな い.
6 まとめ
複半月充填ボルト接合した梁継手試験体を3種類製 作し,漸増荷重振幅繰返し載荷試験を行い,梁継手の 曲げ剛性と充填ボルトの自己充填性とボルトのすべり 面の角度の違いによる剛性への影響を検討した.
また,継手付梁の最大・最小剛性算定式を誘導した.
得られた知見は,以下の様に要約できる.
1) 一面せん断状態の充填ボルト接合継手を有する梁 の剛性は継手の最大と最小剛性の中間の剛性とな り,ボルトの自己充填機能が発揮されている.
2) 二面せん断状態からなる充填ボルト接合梁継手は,
最大剛性に近い剛性となる.
3) 荷重の繰返しによって充填ボルト接合継手の剛性 に大きな変化は見られない.
ない.
謝辞:本研究は広島工業大学「高性能構造システム開発 研究センター」(代表者 高松隆夫教授)のプロジェク ト研究の一環として実施しました.また,平成24年度 広島工業大学高松研究室の修士,学部4年生諸君には,
実験補助していただきました.また,本研究の一部は 科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)基盤研 究(C)(課題番号 23560687 研究代表者 玉井宏章)で賄 われました.ここに記して謝意を表する.
参考文献
1) 佐藤篤司,吹田啓一郎,井上一朗,建築構造用高
強度鋼材 H-SA700A を用いた柱梁材を弾性に留め
る乾式接合法の開発,日本建築学会構造系論文集,
第74巻,第646号,pp.2355-2363,2009.12.
2) 玉井宏章.高松隆夫,尾川勝彦,高強度鋼用の複 半月テーパ充填ボルト接合法に関する基礎的研究,
鋼構造年次論文報告集,第 19 巻,pp.201-208,
2011.11.