水溶液から生成された氷の冷却固体面からのかき取りに関する研究
Study on scraping of ice made of solution from cooling solid surface
精密工学専攻
02
号 秋本高寛Takahiro Akimoto
1.緒論
ダイナミック型氷蓄熱システムに用いる氷スラリーの生 成に関しては様々な方法が検討されており,氷スラリーに水 溶液凍結層を用いる方法がある.水溶液を凍結させると,針 状の氷結晶と高濃度水溶液から構成される Mushy 層とよばれ るものが生成され,この Mushy 層は純粋な氷と比較すると非 常に脆く,攪拌や僅かな衝撃だけで流動性を持った氷スラリ ーとなる.また,Mushy 層と冷却面との付着力は純水と比較 して 1 桁以上小さいことが報告されており,氷スラリー生成 時に必要なエネルギーを抑えられるといった利点がある.
氷スラリーの生成において,Mushy 層を冷却面上から剥離 する方法には,カッターなどで機械的にかき取るハーベスト 法(1),冷却面を加振運動させ剥離させる方法(2),浮力によ り氷を冷却面から剥離させる方法(3)など様々な方法がある.
本報では上記のなかでも,冷却面から氷を機械的に剥離する ハーベスト法に着目した.この方法は,システムの設計上,
冷却面からの凍結層のかき取り力が非常に重要となってく る.そこで,本研究では水溶液中において,冷却固体面から の氷の成長の観察及び,生成された氷を垂直方向からスクレ ーパーを用いてかき取り,その時の力を測定することでかき 取り現象の解明につなげていく.特に本報では冷却面温度,
過冷度に着目し,これらのパラメーターが氷のかき取り力に 及ぼす影響を実験により明らかにする.また,ハーベスト法 により実際に氷スラリーを生成する場合,連続して氷のかき 取りを行う.そこで,連続してかき取る場合,かき取り回数 が氷のかき取り力に及ぼす影響についても検討する.
Nomenclatures
Ts :Surface temperature[℃]
ΔT :Supercooling degree[℃]
Ci :Concentration[wt%]
t :Ice formation time[min]
2.実験
2.1 実験装置
Fig.1(a)に本報で用いた実験装置の概略図を示す.また,
金属冷却面の温度測定点とスクレーパーの形状を Fig.1(b)
に示す.本報では金属冷却面の材質に直径 30mm の円柱形状 の炭素鋼を用いた.なお,炭素鋼は炭素鋼表面粗さが算術平 均粗さで 0.2〜0.3μm(Ra)となるように実験毎に調整した.
炭素鋼表面温度は炭素鋼表面から表面に垂直方向に内部に 向かって 1.5mm の等間隔に 3 点穴を開けて,その中に熱電対 を挿入し,3 点の温度から炭素鋼表面の温度を外挿した.炭 素鋼表面上に製氷された氷をかき取るスクレーパーは,高密 度ポリエチレン製であり,先端角度が 15°となっている.こ のスクレーパーの先にモーターと荷重変換機が取り付けら れており,モーターの上下運動により炭素鋼表面に製氷され た氷をスクレーパーでかき取り,その時の力を測定する.本 報における水溶液にはエチレングリコール水溶液(以下 EG 水溶液)を 500ml 用い,EG 水溶液(製氷部)の中央に熱電対
ThThermostat bath
CCD camera Copper plate
Carbon steel Load cell
Scraper
Stirrer Moving
Brine
Ethylene glycol solution
50mm
90mm
Thermocouple ermostat bath
CCD camera Copper plate
Carbon steel Load cell
Scraper
Stirrer Moving
Brine
Ethylene glycol solution
50mm
90mm
Thermocouple
(a) Experimental apparatus
15°
1.5mm
15mm Φ30mm
1.5mm 1.5mm
24mmThermocouple Carbon steel
Scraper
Solution
15°
1.5mm
15mm Φ30mm
1.5mm 1.5mm
24mmThermocouple Carbon steel
Scraper
Solution
(b)Shape of scraper and measurement points to determine surface temperature of carbon steel
Fig.1 Experimental apparatus
を設置し EG 水溶液の温度を測定した.なお,EG 水溶液はマ グネットスターラーを用いて攪拌しており,温度分布や濃度 分布がないことを予備実験により確認している.さらに,炭 素鋼表面に対して正面側と側面側にそれぞれ CCD カメラを設 置し,氷の成長の様子を観察した.なお実験装置は外部への 熱損失を防ぐために厚さ 30mm の断熱材で覆われており,さ らに実験装置は約 0℃に保たれた恒温室内に設置されている.
2.2 実験方法
冷却ブラインの循環により炭素鋼を冷却する.炭素鋼表面 温度と炭素鋼表面近傍の液温(以下で説明)が所定の温度に 達したら,炭素鋼表面の中心部に氷核を接触させることで炭 素鋼表面上で過冷却を解消させ,炭素鋼表面上に氷を生成・
成長させる.なお,この時の様子を正面と側面の CCD カメラ を用いて観察を行う.過冷却解消後 30min 経過した後,スク レーパーを送り速度 10mm/sec で垂直方向より動かすことで 氷を炭素鋼表面よりかき取り,その時の力を測定する.
本報では炭素鋼表面近傍の液温を用いて過冷度を決定す るが,実際の実験では炭素鋼表面に氷を生成してかき取るた
℃
0 3600 7200 10800
-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5
Time[sec]
Temperature[]
Solution temperature [℃]
Solution temperature near carbon steel surface [℃]
Carbon steel surface temperature [℃]
め,炭素鋼表面近傍に熱電対を取り付けるのは難しい.そこ で,予備実験を行い炭素鋼表面温度から炭素鋼表面近傍の液 温を求めた.その方法を以下で説明する.まず予備実験にお いて,炭素鋼表面近傍に熱電対を設置した.Fig.2 は炭素鋼 表面温度‑3.3℃、EG 水溶液濃度 7.5wt%における予備実験の 温度履歴の一例である.これより炭素鋼表面温度が定常状態 になった時の炭素鋼表面近傍の液温は炭素鋼表面温度と 0.6℃の差があった.そこで,実際の実験においても炭素鋼 表面温度に 0.6℃を加え,炭素鋼表面近傍の液温を算出した.
なおここでは,過冷度=(水溶液の凝固温度)−(炭素鋼表 面近傍の液温)と定義する.
2.3 評価方法
本報では,主に以下の 3 つの評価を行い,かき取り現象の 解明につなげていく.
(1)かき取り力の算出
Fig.3 は炭素鋼表面から氷をかき取る時の力の結果の一例 である.なおこの結果は,かき取り時に測定した値から直後 に測定した,炭素鋼とスクレーパー間の摩擦力を引いた波形 であり,正味のかき取り力を表している.このかき取り波形 において,波形の最大値を かき取り力 と定義し,かき取 りの評価に用いる.なお,かき取り力の結果は,かき取り実 験を 10 回行い,その中央値をプロットした.また,データ のばらつきをエラーバーを用いて表している.
(2)氷の平均厚さと,平均厚さの経時変化
氷の成長の評価方法として氷の平均厚さを用いた.氷の平 均厚さは炭素鋼の端部を基準にして,垂直方向に 5 等分した それぞれの位置での氷の厚さを,側面から CCD カメラを用い て撮影し,各点における氷の厚さの平均を 氷の平均厚さ として定義した.また,製氷開始後の経過時間と氷の平均厚 さの関係から,氷の平均厚さの経時変化を算出した.
(3)氷の観察
正面及び側面の CCD カメラを用いて,氷の発生や成長を観 察し,パロメーターの違いによる氷の成長の違いなどの状態 観察を行った.
2.4 実験条件
本報では,以下の 4 種類の実験を行った.
1) 製氷時間を一定とし,炭素鋼表面温度と過冷度を変える.
2) 製氷時間と炭素鋼表面温度を一定とし,過冷度を変える.
3) 製氷時間と過冷度を一定とし,炭素鋼表面温度を変える.
4) かき取り力の測定を連続して 8 回行う.
3.実験結果・考察
3.1 炭素鋼表面温度と過冷度の影響
0.6℃ 炭素鋼表面温度と過冷度がそれぞれ‑3.0℃(過冷度 0.3℃),
‑3.3℃(過冷度 0.6℃),‑3.6℃(過冷度 0.9℃),‑3.9℃(過 冷度 1.2℃)と炭素鋼表面温度と過冷度が同時に変化する条 件において,EG水溶液濃度 7.5wt%,製氷時間 30min でかき 取り実験を行った.Fig.4 のかき取り力の結果より,炭素鋼 表面温度が‑3.6℃までは炭素鋼表面温度の低下にともない かき取り力は増加しているが,‑3.6℃をピークに‑3.9℃では その値は減少しているのが分かる.また,この条件における 製氷開始後の経過時間と氷の平均厚さの関係,つまり氷の平 均厚さの経時変化を Fig.5 に示す.Fig.5 より,炭素鋼表面 温度が低下(過冷度が増加)するほど,成長初期の氷の平均 厚さの増加割合は大きく,その後の増加割合も比較的大きい.
また,同時刻での氷の平均厚さも厚くなっているのが分かる.
以上より,炭素鋼表面温度の低下に伴い,氷は厚く成長して いるにも関わらず‑3.9℃でかき取り力は減少してしまった.
本実験は炭素鋼表面温度,過冷度が同時に変化していること からも,これらが影響していると考える.そこで,以下で炭 素鋼表面温度,過冷度が氷のかき取り力に及ぼす影響を別々 にみていく.
Fig.2 Temperature history
3.2 過冷度の影響
3.1 節より,過冷度がかき取り力に何らかの影響を及ぼし ていると考えられる.そこで,製氷時間 30min,炭素鋼表面 温度一定(‑2.8℃)の条件の下,過冷度を 0.1℃,0.4℃,0.7℃,
N] [ rce g f pi cra S
-2.7 -3 -3.3 -3.6 -3.9 -4.2 0
1.0 2.0
Surface temperature [℃]
no
Ts : -3.0℃(ΔT : 0.3℃)
Ts : -3.3℃(ΔT : 0.6℃)
Ts : -3.6℃(ΔT : 0.9℃)
Ts : -3.9℃(ΔT : 1.2℃)
Ci : 7.5wt%
t : 30min
Fig.4 Relationship between scraping force and surface temperature
mm
ce of i ss kn hi ge t era Av
0 1000 2000
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
Time[sec]
ce[]
Ts : -3.0℃(ΔT : 0.3℃)
Ts : -3.3℃(ΔT : 0.6℃)
Ts : -3.6℃(ΔT : 0.9℃)
Ts : -3.9℃(ΔT : 1.2℃)
Ci : 7.5wt%
t : 30min
0 1.0 2.0 3.0
0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
Scraping force[N]
Time[sec]
Scraping force(Maximum value)
Fig.5 Relationship between average thickness of ice and time Fig.3 Relationship between scraping force and time
1.0℃と変えてかき取り実験を行い,過冷度が氷のかき取り 力に及ぼす影響について検討する.なお,本実験では従来の EG 水溶液濃度 7.5wt%では,過冷度等の条件によってはかき 取り力が非常に小さく,測定されたかき取り力に有意義な差 が生じなかった.そこで,かき取り力を大きくするため,ま た氷を厚くして観察しやすくするために,濃度 5.0wt%の EG 水溶液で実験を行った.Fig.6 のかき取り力の結果より,炭 素鋼表面温度一定の条件では過冷度が増加するとかき取り 力が減少する傾向がみられた.また,この条件における氷の 平均厚さの経時変化を Fig.7 に示す.Fig.7 より,炭素鋼表 面温度が同じにもかかわらず,過冷度が大きいほど成長初期 の氷の平均厚さの増加割合が大きく,その後の増加割合も比 較的大きい.一方,過冷度が減少すると成長初期の氷の平均 厚さの増加割合が小さく,その後の増加割合も減少する傾向 がみてとれる.また,製氷開始 30min 後の側面側からの氷の 観察画像の比較を Fig.8 に示す.なお、どちらも炭素鋼表面
温度‑2.8℃であり,過冷度がそれぞれ 0.1℃,1.0℃と異なっ ている.Fig.8 より過冷度が大きいほど氷の先端は針状であ り,氷全体として疎であるように観える.一方,過冷度が小 さいと氷の表面は滑らかであり,氷が密であるように観える.
以上より,炭素鋼表面温度一定の条件では,過冷度が大き いほど炭素鋼表面と垂直な方向への氷の成長が促進される ため,氷は厚く成長するが,炭素鋼表面の面方向への成長が 抑制されるため,根元の氷は疎な氷が生成され,かき取り力 が減少したと考える.一方,過冷度が小さいほど炭素鋼表面 と垂直方向への氷の成長は抑制されるため,比較的薄い氷が 生成されるが,面方向への成長が促進され,根元の氷がより 密となるように成長するので,かき取り力が増加したと考え る.
3.3 炭素鋼表面温度の影響
3.2 節では過冷度が氷のかき取り力に及ぼす影響について 考察した.そこで,本節では製氷時間 30min で過冷度一定
(0.1℃)の条件の下,炭素鋼表面温度を‑1.9℃,‑2.2℃,
‑2.5℃,‑2.8℃と変えてかき取り実験を行い,炭素鋼表面温 度が氷のかき取り力に及ぼす影響について検討する.なお,
EG 水溶液濃度は前回と同様に 5.0wt%である.Fig.9 のかき取 り力の結果より,過冷度一定の条件では炭素鋼表面温度の低 下にともないかき取り力は増加し,またその変化も単調増加 の傾向がみられた.次に,この条件における氷の平均厚さの 経時変化だが,炭素鋼表面温度が低いほど氷の平均厚さの増 加割合は大きくなった.ここで,製氷開始 30min 後の側面方 向からの氷の観察画像の比較を Fig.10 に示す.なお、どち らも過冷度は 0.1℃であり,炭素鋼表面温度がそれぞれ
‑1.9℃,‑2.8℃と異なっている.Fig.10 より両者を比較する と,炭素鋼表面温度が低いと表面が滑らかで,氷が密である のに対し,炭素鋼表面温度が高いほど表面が凹凸で氷が疎で あるようにみえる.
0.1 0.4 0.7 1
0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
Supercooling degree [℃]
Scraping force [N]
Ts : -2.8℃ Ci : 5.0wt%
t : 30min
Fig.6 Relationship between scraping force and supercooling degree
0 500 1000 1500 2000
0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
Time[sec]
Average thickness[mm] ΔT : 0.1℃ΔT : 0.4℃
ΔT : 0.7℃ ΔT : 1.0℃
Ci : 5.0wt%
Ts : -2.8℃ t : 30min
] N
rce [
g fo in cra S
-3.1 -2.8
-2.5 -2.2
-1.9 -1.60
1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
Surface temperature [℃]
p
ΔT : 0.1℃ Ci : 5.0wt%
t : 30min
Fig.7 Relationship between average thickness of ice and time Fig.9 Relationship between scraping force and surface temperature.
1mm 1mm
Ts:-2.8℃(ΔT:1.0℃)
Ts:-2.8℃(ΔT:0.1℃)
1mm 1mm
Ts:-2.8℃(ΔT:1.0℃)
Ts:-2.8℃(ΔT:0.1℃)
1mm 1mm
Ts:-1.9℃(ΔT:0.1℃) Ts:-2.8℃(ΔT:0.1℃)
1mm 1mm
Ts:-1.9℃(ΔT:0.1℃) Ts:-2.8℃(ΔT:0.1℃)
Fig.8 Enlarged photographs from side view
(Ci:5.0wt%,t:30min)
Fig.10 Enlarged photographs from side view (Ci:5.0wt%,t:30min)
以上より,炭素鋼表面温度が EG 水溶液から生成された氷 に及ぼす影響として以下のことが考えられる.まず,炭素鋼 表面温度が低いほど EG 水溶液は急冷され密な氷ができやす くなると考える.また,一般に Mushy 層(4)中の未凍結の液 層は凝固点降下を起こし凍結しにくくなっているが,炭素鋼 表面温度の低下により,凝固点降下を起こしている未凍結の 液層が凝固しやすくなり,結果として Mushy 層が密になりや すくなると考える.
以上より,Fig.4 においてかき取り力が逆転した理由とし て,Fig.4 は炭素鋼表面温度の低下にともない過冷度も増加 している.そして,3.2 節,3.3 節より,炭素鋼表面温度の 低下はかき取り力を増加させ,過冷度の増加はかき取り力を 低下させるので,それらはかき取り力に対しては逆に作用す る.よって,過冷度と炭素鋼表面温度の影響が互いに相殺し あうことで,Fig.4 に示すように炭素鋼表面温度‑3.6℃でか き取り力が最大となり,炭素鋼表面温度‑3.9℃でかき取り力 が減少したと考える.
3.4 かき取り回数依存性実験
本実験は,EG 水溶液を過冷却解消させ炭素鋼表面上に氷を 生成し,30 分後に氷をかき取る.その後.30 分間氷を生成さ せた後,再び氷をかき取る.これを 8 回連続して繰り返し行 うことで,かき取り回数が氷のかき取り力に及ぼす影響につ いて検討する.なお,実験条件は EG 水溶液濃度 7.5wt%,製氷 時間 30min,炭素鋼表面温度‑3.0℃,過冷度 0.3℃とした.
かき取り力の結果を Fig.11 に示す.Fig.11 より,かき取り 力はかき取り回数が増すにつれて増加するが,その後かき取 り回数の増加に伴いかき取り力の増加割合は減少していく 傾向にあることが分かる.また,正面からの観察により,炭 素鋼表面から氷をかき取った後,炭素鋼表面に残氷があるこ とが確認された.そして,残氷の割合もかき取り回数の増加 に伴い増加する傾向にあった.また,2 回目以降は氷核を投 入することなく炭素鋼の表面から氷が成長していくのが観 察された.これは炭素鋼表面に氷が残り,そこから氷が成長 するためであると考える.以下において,かき取り回数の増 加に伴いかき取り力が増加する要因について検討する.
せん断方向に荷重を与え,冷却固体面から氷を剥がすとき の力を測定する装置(5)を用いて,氷を炭素鋼試験板表面か ら剥がすための力と氷を氷試験板表面から剥がす力をそれ ぞれ測定した.具体的な実験方法について簡単に説明する.
‑3.0℃に保たれた炭素鋼表面上に PVC 製のパイプ(接触面積 54mm2)を設置し,その中にイオン交換水を 0.2〜0.3ml 滴下 して製氷する.製氷した後,水平方向より荷重をかけ,パイ プ内の氷を炭素鋼表面から剥がすときの力を測定した.また,
同様の条件で氷試験板表面からパイプ内に生成された氷を 剥がすときの力を算出した.Fig.16 にその結果を示す.
Fig.16 より,炭素鋼界面から氷を剥がす力に比べ,氷試験板 表面から氷を剥がす力が約 2 倍以上大きくなった.
以上より,かき取り回数の増加に伴いかき取り力が増加す る理由として以下のことが考えられる.かき取り直後,炭素 鋼表面に残氷が残る.その結果,かき取り 2 回目以降は炭素 鋼表面に残った残氷から氷が成長すると考える.そのため,
2 回目以降のかき取りは,炭素鋼表面から氷を剥ぎ取る力と 残氷から成長した氷を残氷表面から剥ぎ取る力の合計が,
Fig.4 で示したかき取り力に相当していると考えられる.前 述のとおり,炭素鋼界面から氷を剥がす力に比べ,氷表面か ら氷を剥がす力が約 2 倍以上大きくなった.よって,かき取 り回数が増えるに伴い,かき取り直後の炭素鋼表面の残氷の 割合が増えるので,測定されるかき取り力に占める氷表面か ら氷を剥がす力の割合が増加すると考える.その結果,かき 取り回数の増加に伴い,かき取り力が増加したと考えられる.
2 4 6 8
0 0.5 1.0 1.5
Scraping times
Scraping force[N]
Ts : -3.0℃(ΔT : 0.3℃)
Ci : 7.5wt%
Fig.11 Relationship between scraping force and scraping times
0 0.2 0.4 0.6 0.8
Removing force [MPa]
Carbon steel Ice on carbon steel Ts : -3.0℃
Fig.12 Shearing stress
そして,炭素鋼表面積は一定なので,かき取り回数がある程 度増加すると次第にかき取り力が一定になると考えられる.
4.結言
・ 過冷度が氷のかき取り力に及ぼす影響を明らかにした.
・ 炭素鋼表面温度が氷のかき取り力に及ぼす影響を明ら かにした.
・ かき取り回数が氷のかき取り力に及ぼす影響を明らか にした.
参考文献
1) Masaaki Ishikawa,Tetsuo Hirata,Toru Fujii, Force estimation of mechanical removing processes of mushy structure in an aqueous solutin,Int.J.Refrig.25,pp.208-217(2002). 2) Masahiko Yamada,Shoichiro Fukusako, Hiromichi Kawabe,
A quantitative evaluation of the production performance of ice slurry by the oscillatory moving cooled wall method, Int.J.Refrig.25,pp.199-207(2002).
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(2003).
4) S.Fukusako,M.Yamada,Freezing Characteristics of Ethylene Glycol Solution, Warme und Stoffubertragung 24(1989),pp.303-309.
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