一インフレとほ何か
二 需要インフレ
三 米国のインフレ要因
四 賃金インフレ
五 利潤インフレ
﹁レユ;ほ資本主義制度を破砕する最善の方法ほ通貨を墜落さすことであると富明したといわれる︒インフレージョ
ンの絶えざる過程によって︑政府ほ国民の富の大部分を︑秘密転且つ限に見えないで︑収奪することができる︒この方法
にょって政府ほただ収奪するのみでほなく︑任意に収奪するのであって︑それほ一方多くのひとびとを貧困化せしめると
ともに他方若干のひとびとを実際監品裕ならしめる︒このような富の任意な再分配の状況ほ︑現在の富の分配関係の平衡
に対する保障を破壊するのみならず︑それへの信頼の念をも破壊する︒この機構にょって︑当然の報酬を超えるばかりで
なく︑期待ないし庸望するところをすら超える偶然的利益を獲得するひとびとは﹁成金﹂となり︑インフレーションによ
ってプロレタリアーー以上に収奪されたブルジョアジーの怨岨の的となる︒インフレーションが進み︑通貨の実質価値が日
毎に大巾に変動するにつれて︑資本主義の究極的な基礎をなす債権者と債務者との問の恒久的な関係のすべでが全く撹乱
︵三四九︶ 山〇九 インフレーションの原因
インフ レーションの原因
1アメリカ経済の一研究1
今
正
︵三五〇︶ 劃 仙○ 節三十二巻 第三・四・五号
されてはとんど細川意味となり︑富の獲得の過程は賭博と富敦に墜落する︒レー一㌦ンはたしかに正しかった︒現在の社会の
基礎を覆すのに通貨を墜汚さすはど陰険にして確実な方法ほない︒この過程ほ経済法則のかくれた諸力すべてを破壊の方
向に働かす︒しかもそれは百方人のうちの劇人すら診断することを得ない仕方においてなされる︒﹂
ケインズ ﹁平和の経済的帰結﹂
一 インフレとほ何か
現代アメリカの経済が直面している未解決の重要問題にインフレがある︒その経済は高度に繁栄しており︑人々
は以前よりよい家に住み︑よい着物を着︑よい食物を食べている︒生産性ほ高く︑その経済は発展をつづけてゆく
ものと期待されている︒一部では今後ひどい不況にみまわれることほないとさえ信じられている︑しかしその経済
さえインフレをどのようにして防ぐかについてほまだ迷っている︒このインフレの問題ほ世界中の人々の念頭にあ
る︒それほアメリカにおけるインフレの動向によって大きな影響をうけるからであるが︑またどの国においてもイ
ンフレの脅威からのがれることが難かしいと考えられているからである︒
インフレがおそろしい理由をあげることは容易である︒第二次世界大戦の直後︑われわれが経験したことをふり
かえるたけで十分であろう︒インフレといっでもすべての価格があがるのではない︒まして同じ割合であがるので
もない︒このために階級間に所得が再分配される︒
インフレほ借手や利潤所得者︵資本家︶ に有利で貸手や賃金所得者︵労働者︶ に不利である︒今年十万円貸して
来年返してもらっても︑もしその間に物価が二倍になっておれほ実質的な購買力でほ貸したものの半分しか返して
もらわないことになる︒物価が三百倍にもなるときにほ貸手の富ほ全く消えてしまう︒戦争中数千円の国債を買っ
ておいた人が現在元利の償還をうけるとするとどうなるであろうか︒十五年前にピアノを買うことを思いとどまっ
て国債を買った人が元金利子を受取っても︑それでもってレコード脚放しか買えない︒生命保険に加入した人も同
様である︒インフレにおいては事務員︑教師︑鉄道職員︑郵便配達人など比較的固定的な所得をえていた人々ほ生
活費の⊥昇に直面してその生活水準を維持することができなかった︒月々一定額の恩給年金あ渇いは利子で生活し
ている老人︑未亡人︑身体障碍者ほもっと生活に困った︒
他方お金を株式や土地に投資したり食料品を買込んだ人ほインフレの間に巨額の利潤を得た︒仕入れて売却する
までの問に物価ほ上昇する︒固定費用あるいは総がかり費用ほ同じままである︒︵これほ会計上の慣行にもとづく
からである︶ その他の費用ほ上るけれども物価はど速くほない︒このため利潤ほ増大する︒それほ当然の報酬を超
えるたけでなく︑当人が期待きえしなかったはどの偶然の利益が手に入る︒このようにしてひどいインフレの時に
は思慮のない無鉄砲な人でも金満家になることができる︒よく組織された労働組合の中にほ斗争的な団体交渉によ
って生活蟄の上昇に追ついてゆくものもある︒しかし大多数の労働者の実質賃金ば低くなっていった︒
このようにインフレにおいてほ貸手かも借手へ︑賃金所得者から利潤所得者へ︑いいかえると個人から事業へ労
働者から資本家へ所得が再分配される︒競争市場の働きに信頼をお■く人の中には︑暗黙のうちに適者生存の考えを
用いて︑市場での弱者ほ経済あるいは社会にとって価値のないものであるというかもしれない︒しかし経済的才能
のない裁判官教師であっても社会にとって重要な人であることはいうまでもないことである︒経済的に自らを守る
力が最も弱い人々に山番重い負担をかけるインフレほ絶対にさけなければならない︒インフレほ経済的力の弱い人
にかかる残酷な租税であるとさえいえる︒このインフレほ我憎することのできない悪である︒この原因が何である
かについてここで考えよう︒ノなおその前に何をインフレと考えるかについて仙言述べておこう︒
われわれほすべてあるいほはとんどの財用役の価格が上昇しっづける状態をインフレとよぶ︒正常なときにほ上
インフレーショソの原因 ︵三五こ 劇一一
︵三五二︶一〟二 第三十こ巻 第三1四・五号
る価格があるとともに下る価格もある︒インフレのときには血般物価が上昇しっづける︒このインフレという言葉
は別の意味︑貨幣数鼠の増加という意味につかわれることがある︒しかし一般物価の止昇の意味につかうことが今
日普通になっている︒
一般という言葉は重要である︒自由な市場経済においては需給が変るにつれて︑上る価格もあれば下るものもあ
る︒こうして劇部の価格があがっても︑もしそれを埋め合わすように他の価格がさがるならインフレで咤ない︒価
格のこのような盛衰は人的物的資源の効率的利用を促進するものであり︑一これがなければ嗜好︑技術︑国の要求な
どの変化に反応して生産が変ってゆくことができなくなるであろう︒われわれがここで注目しているイン
うのほ︑山般物価が強い上むきの趨勢Tレンド︶ を示す場合である︒これについて見るためにほ人々が買う種々
のものの価格の動きを示す尺度が必要である︒それは人々がその所得のどれだけを何につかうかを考慮に入れたも
のでなけれ︑ばならない︒このためにはコーヒーの価格の二別の変化よりも米の価格の山割の変化の方にウエイトを
おかねばならない︒この種の堀格の変化の国民全体の平均は︑どの個人にとっても理想的なものであるというわけ
にほいかない︒それは人によって貨幣のつかい方がちがうからである︒しかしそれははとんどの人にとって重要な
価格の状態を示す︒このような一般物価の尺度が物価指数である︒このような変化を示すための物価指数ほ沢山あ
るが︑われわれほ一般的な関係について考えているのであるから︑その目的のためにほ消費財物価指数あるいは卸
売物価指数をつかっておけほよいであろう︒
二 需要インフレ
さてインフレの原因であるが︑﹁インフレはなぜ起るか﹂という問に対する最も普通の答えは﹁少い商品を追っ
かける貨幣が多すぎるためである﹂ということであろう︒しかしこれはこの問題に対する答えのはんの出発点にす
ぎない︒商品と貨幣がちょうど均り合っていなくて貨幣の方が多いということはなぜ起るか︒これを二つの面から
検討しょう︑すなわち商品が少いことの意味︑貨幣が多すぎることの意味を尋ねてみよう︒まづ後者.からほじめる
貨幣が多 いことの意味は何か︒
表面的に見ると右の説明は経済をインフレに駆りたてているものは貨幣数量であるといっているようである︒以
前にほ物価水準の動きについて考えるのに簡単な貨幣数量説が用いられた︒﹁経済における貨幣数鼠を倍にすると
物価水準ほ倍になる︒また半分にすると半分になる︒したがって物価水準を安定にするためにほ貨幣数藍を安定に
すればよい︒﹂これほ簡単な理論である︒しかしこれは簡単すぎて事実にあてはまらない︒実際上重要なのは貨幣
数壷ではなくて貨幣文題すなわち総需要である︒貨幣数鼠ほ総審要を説明する助けにはなるが同じものでほない︒
貨幣数量が変らなくても総需要ほ変る
らべて総需要が多すぎると物価があがる傾きがある﹂というぺきであろう︒
このように貨幣が多すぎるということは実は総需要が多すぎることであるが︑これがなぜ多すぎるかについてみ
るためにほ︑それを個人の支出︑事業の支出︑政府の支出に分けて考えると理解し易いであろう︒ け
ある年に個人がどれだけ支出するかを決める要因は何か︒それにはいろいろある︒その年の所得︑特に納税後の
可処分所得の大きさは非常に重要である︒今年の所得と過去の所得に差があることあるいほないこと︑将来の所得
についての見込みなども重要である︒その支出はまた将来の物価についての見込み︑貨幣などの流動資産︑証券や
家屋などそれはどには流動的でない資産の手持高︑その価借の変動安定などによっても左右されるであろう︒
事業家も消費者と同じように︑その所得︑資産︑流動性︑将来の必要︑利潤の見込み︑経済の将来の見込みなど
にもとづいてその支出を決める︒
インフレージョンの原園 ︵三五三︶一仙三
︵三五四︶ 山 仙四 第三十二巻 第三・四・五号
政府の支出に影響を与える要因ほ︑消費者や事業家の支出に影響するものとは非常にちがう︒そのためここでこ
れや海外からの需要は外生的に決まると.考えても許されるであろう︒しかし特に防衛費などほ物価に大きな影響を
与える要因である︒
商品が少いということの意味ほ何か︒
簡単な場合はこうである︒商品の数量が物的に限られているときにほ︑それにむかって流れる貨幣すなわち総需
要が増えるにつれてその価格はあがる︒しかし普通の商品ほ事業が生産する物である︒これについても︑もし生産
が既に物的限界に達しており︑それ以上生産を増すことができない場合にほ︑総需要の増加ほ価格の引あげに終る
だけである︒特定の商品あるいは特定の産業においてほこうなることもあるが︑普通経済全体がこうなることはな
い︒商品の生産に対する限界ほ物的なものでほなく︑経済的なもの︑費用の上昇である︒生産を増すことが物的に
可能であっても︑単位当りの費用の増加を伴うことなしにそうすることほできないことが多い︒こうなる理由ほいろ
かろあげることができる︒特殊技能者は十分いないので適任でない労働者を雇わなければならなくなる︒これまでよ
り高価な原料や効率の劣る生産方法を用いることが必要になる︒需要がこの点を超えると︑生産はその物的限界に
達していないのに︑単位当り費用したがって物価の上昇を生むであろう︒もっともこの限界点は短期には固定された
ものであるが長期ほそうでほない︒長期においてはこの限界すなわらある年の国の経済の生産能力を引あげる要因
としてつぎのものがあげられる︒人口の増大︑女性の職場への進出︑資本量の増大︑技術の進歩︑生産性の向上など︒
総需要が増大しないとすると生産能力の拡大は物価を押しさげる傾きがある︒生産能力の増大と平行して総需要
が増加すると︑少くとも長期においては物価は安定している︒しかし総譜要の増加の方が速いと物価ほ上昇する︒
ことで述べたことほ︑インフレは総需要と生産との均りあいが破れるために起るということである︒このことは
普通に見られるつぎのこととどのようにして両立するであろうか︒物価があがるときには通常誰れかが価格や賃金
をあげるように決定しておる︒このことは右に述べたことと矛盾することではない︒価格や賃金をあげるという決
定はいろいろの要因にもとづいてなされるが︑もっとも重要なことは賃金物価をあげるとき販売高や雇用をさげる
潤と賃金を引あげるよう決めたとしよう︒このときには所得が増えそのため消費者も事業も需要を増す︒物価の上 ことなしにそうすることができるかどうかである︒価格の引あげを決定したり︑賃金引あげの要求が承認されるの ほすべて︑現実のあるいは見込みの総需要の増加に応じて行われる︒すなわち物価は現実のあるいは見込みの総需 要の増加と歩調を合して上昇してゆくようである︒
しかしながらインフレほ別の途から起ることもある︒物価が総需要以外の原因のために上昇し︑その物価に足な
みをそろえて総需要の方が増えるかもしれない︒いま仮りに事業と労働者が総需要や生産の事情とほ関係.なしに利
昇の方が総需要の増加を引おこす︒J消費者は価格が多少高くても所得が増えているから前と同じように買うことが
できる︒また物価がもっと高くなると予想してE貝いそぐかもしれない心事業は銀行からの借入れを増やしてその資
金を高価になった投資にむける︒
要するにインフレを引おこす途は則つではない︒消費者︑事業︑政府が貨幣支出いいかえると総需要を増すため
に価格があがることがあるβこれをわれわれほ需要インフレとよぶ︒また物価賃金が総常要とは関係なしに上昇
し︑それが貨幣支出の増大をひきおこし︑それがさらに物価をあげることもある︒これほコストインフレとよばれ
ているものである︒
三 アメリカのインフレ要因
ここで戦後十年間にアメリカにおいてインフレをひき起したと思われる重要な要因について目をむけよう︒なお
︵三五五︶ 二五 インフレーショソの原因
︵三五六︶一二ハ 第三十二巻 罪三・四・五官
ここでほ一九四七年からほじめることにする︒それほ四六年が戦争から平和への転換の年であった⊥︑またその年
には物価の統制がなお行われていたからである︒なお以下に種々の要素なあげるが︑それらの要素がこの期間中ず
っと作用し︑つづけていたと考えているのでほない︒また物価の汲ほ三回おしよせているが︑それが中断される場合
にも物価ほはとんどさがらず上昇しなかっただけである︒し鱒が?てこの期間のインフレについて説明するために
ほそれがなぜ上ったかを説明するだけでなく︑それがなぜ下らなかったかも説明しなければならない︒
前節で述べたことからインフレのこの問題について考えるにほ︑つぎの三つの要因に分けて考えるのがよいこと
が分る︒総需要︑生産能力︑市場構造 ︵賃金︑利潤の動き︶ これを順に見てゆこう︒
この十年間に総需要は八七パーセントすなわち一年に平均六︒五パーセント弱の割合で増えている︒米国におけ
る ︵実質︶ 国民生産の成長率が年三パーセントから四パーセソートであることにくらべると︑この総需要の増加がど
んなに大巾であったかが分る︒これから戦後十年のインフレの主要な原因が総需要の増加であるといえる︒なぜこ
んなに出えたのであろうか︒
民間支出の増大︒この期間のはじめに総需要が大波となっておしよせたが︑その重要な原因は消歯財家屋生産設
備公共姓設に対する需要が︑戦争のために満たされないままになっており堆鼓していた ︵バックロッグ︶ ためであ
る︒ところが戦争中に貨幣供給が巨額に増え︑戦争が終ったときには個人も事業も国債などの流動資産を巨額にも
っていた︒このように貨幣やそれに近似のもの︑すなわち容易に現金化できる流動資産を沢山もっており︑それが
戦争中買わずに我慢していた財を買いに出廻った︒︵しかも国債価格ほ支持されていた︒︶▼特に四七年と四八年はこ
のために需要が増大したのであるが︑その後にも総督要が高かった理由の一半ほここにある︒民間支出ほこの期問
に七山パーセント増加しているのである︒
政貯支出の増大︒政府支出は戦争造後大巾に減退したが再び増加に転じた︒それほこの期間に二〇三パーセント
増大した︒それが増加した理由の一つほ物価が上昇したためであるか︑それを割引したとしても−〇三パーセント
増加し≠いる︒この増加の理由のうち大きなものは国防の要請︑戦争中に堆積した必要︑人口の増加などである︒
この期間冷戦がつづき完全にほ平和態勢になっていなかったことがインフレの圧力を助長した︒この期問国防費
が国民総生産の仙割以下になることはなかった︒それは五二年︑五三年にほ二四パーセントに達した︒この水準が
高かったことほインフレを助長することになった︒軍需産業ほ労働や材料を買いあさるが︑その支払う価格は市場
にお軒る競争によってよしとされる必要ほない︒また軍需産業はその必要をみたすために人材を確保し︑そのため
経営者技術者熟練工はかなり不足した︒そのためその黄金が上昇し︑それが他の産業へひろがっていった︒
この十年問を全体としてみると国の支出は租税収入と均衡していた︒しかし政府予算の余剰はこの期間の終りに
なるはど小さくなった︒したがって政府支出はこの期間の終りに近づくほど腰インフレ的な姜因となった︒
たとい政府の支出が租税とらはうど均衡していたとしても︑それほ総需要を増す効果をもっていたであろう︒そ
の理由はこの均衡のために巨額になっていた租税のうち一部ほおそらく民間の貯蓄を減らし︑支出ほ減らさなかっ
たであろうから︒そのため民間の支出は政府支出の増大ほどにほ縮少しなかったであろう︒
人口の増加︒この期間にほ出生率が高く人口増加は急速であ?た︒そのうえ人口ほ東部から西部へ︑都市から農
村へ大移動した︒このため多くの種類の裔要が増大した︒とりわけ家屋や公共サービス ︵学校を含む︶ に対する需
要がふえた︒
海外における物価の上昇︒山国においてインフレが起るとその国の物価が上昇するため輸出は割高になり海外で
の売行ぎほ少くなる︒他方海外の国の供給するものほ比較的安くなり輸入は増え︑そのため手持外貨が減少し︑イ
︵三五七︶ 劇 山七 インフレージョンの鹿田
︵三五八︶ 二八 第一一手二巻 第手四孟号
ンフレの持続を抑制する力が作用するものである︒ところがこの力はこの期間には作用しなかった︒それほはとん
どの国において同時にインフレが起ったからである︒
累積的な過程︒おそらく総需要の増大をひきおこす最も重要な理由ほ︑総需要の増大傾向であるといえるであろ
う︒支出が増えると人々の受取る金額は増加し︑そのため一層多くを支出するようになる︒たとえばこの十年問に
総需要は八七パーセント増えたが租税を納めた後の個人所得は七七パーセント上昇し消費支出ほ七〇パーセント上
昇した︒また総舘要の増大は物価ないし生産を増した︒そしてこのことは生産工場や生産設傭に対する投賓支出に
対して都合のよい環境をつくり出した︒
このような累積的な過程はいつまでも自動的に進行し終れがないというものではない︒普通それはある限界につ
き当る︒もし貨幣供給が総需要と同じ速さで増えないときにほ制約が生ずる︒それほ貨幣の不足のために起る︒人
々は現金残高をもっておこうとしてその支出をおさえる︒また国民生産の方が総需要より速く上昇する傾きもあ
る︒こうなるのは租税徴収額︵これほ国民生産の計算においてそれに含まれる︶の方が政府支出︵これほ総需要に
含まれる︶ よりも速くL昇し︑輸出よりも輸入の方が速く上昇する傾きがあるからである︒このような力が作用し
てプレイキをかけることが期待出来るから︑われわれほこの戦後の期間にこの作用にもかかわらずなぜこの累積的
︑過程が作用したかについて尋ねておかねばならない︒
その叫つは経済についての事業や消費者の予想が変ったことである︒人々ほ所得がこれまで以上に増加するであ
ろうという確信を増していった︒山九四六年の雇用法のために政府は雇用と所得を高い水準にたもっておくという
責任を負うこことになった︒また第二次大戦後︑戦争から平和への過渡期に事業活動がひどく低下すると予想され
たのに︑実際には少しさがっただけであった︒事業活動の上むきの傾向ほ四八年︑四九年と五三年︑五四年にとま
ったがそれほ二時的のものであった︒これが一時的のものであったために山部でほ米国はひどい不況をさける能力
があると信じられるようにな?た︒そのため将来に対する確信ほ増し︑それで景気後退のあった後には消班者︑事
業の需要が大波となっておしよせてきた︒
しかし人々の心理が変′つただけでほなかった︒四八年︑四九年に景気後退から回復したとき︑五〇年後半に朝鮮
戦争がほじまり︑消費者︑事業はまた物資が欠乏するものと予想して買いあさった︒その結果物価も所得も急速に
上昇した︒そしてこのことが更に物価所得を増大した︒物価の上昇ほ五劇年後半にほとまったが︑その後政府はひ
きつづき支出を増し︑それによってブームほ長びいた︒そして五三年五四年に政府支出が大巾に消滅されたときに
ほ︑大巾の減税を行い︑貨幣政策を綬和し︑雇用を高い水準にたもとうとした︒
最後にこの期間にほ繚奮要をおさえるという目的を達するのに︑貨幣供給の増大をおさえることによってするこ
とほ難かしかった︒それほ購買力の予
ある︒それほこれまでになく巨額であっただけでなく︑国民生産や取引の大きさとくらぺても大きかった︒このた
め貨幣供給が増加しなくても総需要は増加することができた︒実際にはこの期間に貨幣供給も二三パーセント増え
ている︒このようにして総需要ほこの期問に八七パーセント増加したのである︒
これに見合うだけ生産が増加すればインフレは起らなかった筈である︒と
パーセントすなわち一年当り平均して三︒七パーセ争1増加しただけである︒どの年にもこの平均だけ増えたとい
うのでほない︒この十年間の生産の増大ほ過去七五年の平均よりも速かった︒しかし総需要は六四パーセントの複
利率で増えた︒したがって物価の上昇はむしろ当然であった︒
この十年間に物価があがらないようにしておくに十分なだけ生産を増すことができたであろうか︒これは記録を
インフレーションの原因 ︵三五九︶ 二九
︵三六〇︶ 〟二〇 第三十二巻 第三・四・五号
少し調べればすぐ分ることで透る︒まづ労働力の変化について見よう︒この期間労働市場への新参加老の数は減っ
ているが︑これは三〇年代の出生率が低かったためである︒塵た学校数宵の年数が延びたこと︑結婚年令が低下し
たことほ同じような効果をもっていた︒更に軍隊への徴集があった︒人口の申に労働力の占める割合ほ四二︒九パ
ーセントから〇・五パーセントだけさがった︒しかん篭通の労働年齢︵一四才以上︶の者についてみると五七・四
パーセントから一・三パーセントだけ増加している︒学校教育の年数が延びたこと︑老令退職の時がくりあげられ
たことの効果を除くために二〇才以下と五〇才以上を除いて考えると︑そこでも増えている︒
労働力がもっと豊富であったらもっと生産できたであろう︒しかし人口の趨勢︑労働力の大きさ︑その増加率が
与えられているとき︑この期間の雇用が異常に低かったとみることほできない︒
またとの前後一山カ年のうち八カ年にほ失業率ほ四・五パーセント以下であった︒そして季節変動を除去した数
値によると央業率が六パーセントを超えたのは一三二カ月のうち二一カ月であった︒しかしながら労働力が最高の
効率で利用されなかった点が仙つある︒それは農業払従事した労働者が多すぎたことによる︒その数ほこの十年間
に四分の山はど減少したのにそうである︒鹿央においてほ農産物価格支持政策によって政府が一部を買あげている
のに︑なおそこで得られる所得は比較的低かった︒農業︑非農業双方を含めての民間の総生産は︑労働者が農場か
らもつと移っていたらもっと増大することができたであろう︒
四九年︑五〇年︑五四年および五七年後半の期間を除くと︑生産資源ほ労働も資本もこの期間に完全に利用され
ていた︒事実労働力の利用については経営専門家︑技術家︑熟練労働者ほ不足していた︒それほ特に建設業界にお
いてそうであった︒そのうえ労働者山人当りの生産高すなわち生産性ほ過去のどの十年とくらぺても劣らぬくらい
の速さで増加した︒したがってこの期間に物価を押えて上昇しないようにしておくに十分なだけ生産を増すことほ
出来なかったであろう︒
しかしながら労働者一人当りの生産の増加は五六︑五七両年にほこの期間のはじめの年にくらべると少なかっ
た︒この両年における生産性のの︑びの速さは長期の平均ののびより遅かった︒この両年において生産性ののびが低
かったのに総馨要が多かったことがこの両年における物価上昇の重要な要因であったといえるであろう︒
なお投資ほ一面において総需要を構成しインフレを助長するが他面それは生産事業の資本を増加し生産の増加に
責献しインフレを押えた︒この期問には国民生産のはば二一パーセントが工場施設や生産設備にむけられた︒これ
は減価償却を含む数億である︒それを除くとほぼ五パーセントである︒投資は大きかったけれども以前の年より大
きいものではなかった︒減税などによって投資をもっと盛んにすべきであったであろう︒総需要と生産の事陪がこ
のようであれば︑経済にある程度のインフレが起ることがさけられないことは明らかである︒
四 賃金インフレ
上に述べた総需要の過剰のみがインフレの原因であることを認めない人もいる︒それは生産能力が増えてくるに
つれて設備の稼動率が低下するときにも物価の上昇が止まらないからである︒また戦後のインフレにおいては矢来
がないときにも︑またそれが多いときにも物価の上昇がつづいた︒上にのべた需要インフレによると︑舘要の過剰
が終るとインフレほ止むはずである︒ところが需要が停滞し生産設備が遊休化し失業が増えているときにも物価ほ
上昇をつづけたのである︒このことは特にこの期間の終りにおいてそうである︒このような現象は需要インフレで
なく︑賃金インフレであると説明されることが多い︒
それにょるとインフレほつぎのように説明される︒すなわち一方で国が高い雇用の維持を謙遜とすることと︑他
方で組合の力が強力になったことと結びついたためであるといわれている︒個々の労働者ほその労働に対して高い
︵三六こ 山二一 インフレーレヨンの原因
︵三六二︶ 仙二二 第三十二巻 第三・四・五号
賃金を受け取ることを好む︒しかし高い賃金を要求すると職がえられなくなるからその要求は自ら押えられる︒し
かし彼が組合に加入し団体協約を結ぶと︑彼ほその会社において誰れか他の人がもっと安い賃金で働こうとしてい
るということに気をくぼる必要ほない︒もし組合が産業全体において成立すると︑他の企業の労働者が彼を仕事か
ら追出すことを心配することは必要でなくなる︒
おそらく組合は賃金を市場できまる以上に決め計と︑その組合員から失業者を出すかもしれないということをお
それ︑その要求をいくぶん制限するであろう︒そうでなけれほ労働者の要求ほいまよりずると大きなものになるで
あろう︒しかしながらつぎの点も指摘できる︒価格の安定をくつがえすはど速く平均賃金をひきあげることをさけ
なければ失業が増えるかもしれないということにづいてほ墟合は余り敏感でない︒
その理由はいろいろある︒まづ常山に組合の要求するために起る賃億引あげの行すぎは小さいかもしれない︒た
とえばある産業で賃金がかなり引あげられてもその産業では労働者山人当りの生産高が急速に増加していて価格の
引あげや雇用の引さげをさけることができるかもしれない︒
第二に大きな組合のある産業で大巾の賃金上昇に成功すると︑他の産業においても同じように上むきの力が働く︒
この力はサJビス業のよ︸に生産性ののびが少いところでも作用する︒その結果物価偲あがり︑場合によってほ生
産や雇用を減らす︒
第三に組合の指導者はその権力と地位を維持するために︑大巾の賃金引あげを要求し︑それを得る︒そしてそれ
を組合員の利益に有効に奉仕していることの証拠として利用する︒克とい賃金の引あげのために失業が起ってもそ
の関連はほっきり認められない︒もし政府がインフレの犠牲をおかしても総育要を盛んにし高い雇用を維持する政
策をとるなら失業ほ起らないであろう︒
このようにこの議論によると︑過度の賃金引あげの結果は雇用を高く維持する政策のために変形される︒それを
要求している労働者が失業という形でその罰をうけるのではなくて︑消費者がインフレという形で困らされる︒イ
ンフレになるかもしれないというおゃれほ賃金引あげの要求をおさえることにほならない︒というのほどの組合
も単独でほインフレにたいした影響を与えることほできないから︒そして多数の労働者の賃金が過度に引あげられ
るなら経済の自己修正的なメカニズムの結果失業が起り︑それによって賃金物価をもとにもどす傾きがあるであろ
う︒しかし政府は失業の増加が起ればそれを防ぐ手をうつであろう︒
事実ほどうなっているであろうか︑まず高い雇用と物価の安定とは両立しないかもしれないという可能性を否定
してしまうことほできない︒しかし事実はあきらかでない︒もし完全雇用の意味が極端に低い失業︑たとえばどの
産業においても二パーセソートの失業におさえておくことであるなら︑またすべての労働者が強力な全産業にわたる
組合をもっているという事情のもとでほ︑雇用を高く維持することが物価の安定をくつがえすことははとんど確実
である︒他方もしたとえば六パーセント
用の条件ほ物価の安定をくつがえすことほないであろう︒
現実の経済ほこの中間である︒
高い雇用ということが失業をたとえば労働力の四パーセント以下にたもつことであり︑短期間それを超える披さ
え取除いてしまうことであるとほ大多数の人ほ考えていない︒また組合員ほ非農業労働者の三分の山にすぎない︒
組合に入っていない労働者の賃金は事実上離合に入っている労働者の賃金と一緒に動く傾きがあるがこれは雇用水
準の高いことを反映したものであって︑組合員賃金と非組合員賃金の必然的関係を反映しているのでは太い︒
このような中途半端の事情のもとで賃金や利潤はどの′ように動くであろうか︑このような事情になってから十年
︵三六三︶一二三 十ソプレーンョソの原因
第三十二巻 撃予四.・五号 ︵三六四︶ 二一四
になる︒準則にほ高い雇用を政策目標にすることもなくまた組合の力も現在ほど強くなかった︒この期間について
一つのことがはっきりしている︒単位当りの賃金や利潤は急速に上昇して価格の安定と両立していない︒√の期間
に時間当りの賃金︵賞与も含めて︶は民間経済の農業以外の部門でほ七〇パーセント上昇している︒さらに物価に
関連の深い単位当りの労働費用は三三パーセント上昇した︒その他の費用は利潤を含めて単相当り余り上昇してい
ない︒それで価格ほ平均して三二パーセント上昇した︒
しかしこの期問にほはかに多くのインフレ的力が作用していた︒この期問全体にわたってどの年にもたいてい需
要が生産能力より速く上昇した︒そして昔のインフレを見ると雇用法も強い組合もないときにも労働費用利潤がと
もにあがっている︒現在の事情のもとで.われわれの知っていないのほつぎのことである︒長期にわたって総需要が
経済の生産能力とはぼ歩調を合して上昇するとき生産物単位当りの費用ほ上昇するであろうか︒これに対してほこ
の期問の経験から答えることはできない︒というのはこの期間にほこのような事情が成立していなかったから︒
五五年から五七年にわたっての価格の上昇ほ単位当りの労働費用がキとい需要が過度でないときにも上る傾向が
ぁることの証拠としてのべられることがある︒経済の基本的傾向の決定的証拠をみるにしてはこの三年ほ短かすぎ
る︒そのうえこの三年の期間にほつぎのような特徴がありそのためそれが長期の傾向の証拠であると解釈すること
ほ難かしくなっている︒
一︑終戦直後インフレ傾向が強く年々の大巾の賃金上昇があったがこの塾がこの期問にもなお労働者の要求や期
待に影響を与えた︒
二︑この期間には需要生産雇用が鋭く循環的に上昇しほじめた︒
三︑失業の労働力に対する割合ほこの期間にほ二年当り四・四パーセント足らずであったが労働市場ほこの数字
が示す以上に引きしまっていった︒少くともこの期間の大部分はそうである︒またある種の労働者については特に
そうであった︒これは限界労働者である婦人や非常勤 ︵パートタイム︶ の労働者が沢山雇用されたことで示されて
いる︒
四︑この期間の叫人叫時間当りの生産の増加の速さほ戦後十年あるいほ一層長期の上昇の速さとくらべて小さか
った︒それで賃金や利潤の増加が単億当り費用を大巾に引あげた︒それほ普通より大きかった︒
五︑これまで上昇の遅れていた住宅やサービスの価格がこの三年間においかけてあがったためにこの期間の物価
上昇の山部ほ引おこされている︒それでもまだ戦前における他の物価との関係にほもどっていない︒
アメリカの経済において需要がちょうど満足のできる高い水準にあるとき︑・費用と価格が上る傾きがあるかどう
かについてほはっきりは分っていない︒この問題は今後の研究課題である︒
五 利潤インフレ
事業が価格を引あげて生産二軍位当りの利潤を増すように決めたとしても同じような効果が起るであろう︒たと
えば重要産業における大企業がその価格をあげようと決めても販売高ほそれ隠ど減らないと仮定しょう︒同じ産業
における他の企業がそれにつづく︑あるいほ他の産業における企業さえそれにつづく︒.上昇した価格ほ他の産業に
おける企業に対する封用の増大となりこんどほ後者がその価格をあげる︒利潤の増加は労働が賃金の引あげを要求
する基礎となり︑事業ほこの要求に抵抗することが難かしい︒そとで物価は再びあがる︒というのははじめの利潤
引あげの試みが成功しなか.ったから︒
物価の上昇をほじめた原因が︑事業が利潤をあげようとする欲求であるときにほ︑前の場合と同じようにすなわち
労働部合が過度に賃金引あげを要求し費用が高くなる究めに物価が上昇するときと同じように︑物価の上昇には限
インフレーショソの原因 ︵三六五︶ 山五
︵三六六︶ 三六
第三十二巻 肇三・四二重号 界がある︒いづれの場合にも物価の上昇は売行きを低目にする傾きが届る︒時にほそれを減らし雇用ほ減退する︒
もし政府が︑物価の上昇にかかわらず高い雇用の維持を目的とした政策を実際にとるなら︑売れゆきの減退はおこ
らない︒というのは政府が需要を盛んにするから︒
コストインフレの要因が特に賃金の側にあるか利潤の側にあるかについては労働者の主張と資本家の主張とほ正
面から対立している︒ここでは利潤インフレであると主張する労働者の意見について展望しょう︒労働者ほ戦後十
年のインフレ特に最後の三年間のインフレは賃金の上昇によってひきおこされたものではない︑それほ自動車︑農
機具︑鉄鋼などの生産者が人々に押しっけているのであると強調する︒労働者ほこれを説得するために大会社の価
格利潤政策に注目する︒
たとえば五五年の賃金交渉につづいて鉄鋼産業は屯当り七・五ドルあげた︒またゼネラルモーターズほ五六年型
の価格を五パーセントあげた︒フォードは自動車上フックの価格をあげただけでなく︑トラクタ1の価格も七パー
セソートあげた︒それは農業機械の生産者にとって模範となった︒いうまでもなく人々︑なかでも特にひどく苦しん
でいる仙辰民ほ不平をのべた︒しかし会社ほタイミングをうまく考えて価格の引上げを賃金の引あげの時につづける
ことによって賃金が上昇するときには価格が上昇しなければならないという虚構を承認させようとした︒しかしこ
れほ正し・くない︒まづ第一に現在主要産業にほ競争がなく克っているものがあることを知る必要がある︒農産物の
市場においてはげしい競争が行われているが︑鉄鋼︑・アル︑︑\︑その他の重要産業でほ需要供給による価格決定の法
則ほ事実上なくなっている︒
たとえばユー●エス・スチール会社はその産業の﹁価格管理者﹂であり︑その他の会社はそれに従っているぺ鉄
鋼生産の増減にかかわりなく価格決定の力を行使している︒そしてそれが濫用されるときにもその費用を消費者に
支払わせている︒
鉄鋼労連の議長マクドナルドほつぎのように指摘している︒﹁この ︵ユー・・エス・スチール︶会社ほ昨年ほ賃金
引あげによ・つて純益をあげた︒山九五五年の賃金上昇の理論上の費用ほ三千万ドルはどであった︒実際上の費用は
生産性の上昇のために零である︒しかし会社ほ賃金引あげにつづいて徽鋼の価格を屯当り七・五ドル引あげた︒こ
の価格引あげは会社に九・六千万ドル以上をもたらし一九五五年の賃金上昇の理論上の費用を六・六千万ドル超え
る純益をもたらした︒
一九五五年がユー・エス・スチールにとって記録的な年となったのほ決して不思議でない︒納税後の利益ほ三・
七億ドルを超えた︒仝鉄鋼の九十パーセントを生産する大手二十杜につい・てみると純益ほ十億ドルであり︑これほ
前年より二・七五億ドル以上超えている︒﹂
自動車や‡フックの生産を独占している少数の会社も︑同じようにその価格をあげ異常恕軋益を得ている︒フォ
ードの五五年の納税後の利益は四︒三七億ゲルで前年より九一天−セント増えている︒ゼネラル・モーターズは鉄
鋼価格の上昇とそれ自身の賃金上昇を吸収した後でさえも︑正味税引後の利益を一二八九億ドルすなわちそれ以
前の最高の年よりも三・五五億ドル多くの利益をえた︒
農業機械産業においては利益ほ大きかったがそれはど目覚ましくほなかった︒その理由は明らかである︒そのお
客の多くが農家であったからである︒
叫九五五年の利潤ほ蔓卜⊥賃金と鉄鋼価格が高いにもかかわらずーーはとんどの会社においてかなりに好転した︒
ディール会社ほ五四年の三七パーセント増の二︒八千万ドルをえた︒キャタピラー・トラクター会社ほ三九パーセ
ント増の税引三︒九千万ドルを討上した︒インターナショナル・ハーベスター社の純益は前年に比し五三パーセン
インフレーシ︑ヨンの原因 ︵三六七︶ 劃二七
ト増の五・九千万ドルであった︒
すべてのアメリカの会社をいっしょにして考えると五五年は記録的な年であった︒納税以前の純益すなわちすべ
ての生産費を支払った後に窺るものは四二二四億ドルにのぼった︒二一八億ドルの村税を支払った後の利益は四五
年より四六倍ドル鹿加しており︑ただ朝鮮戦争前で租税がかなり低かった五〇年より低かっただけである︒
五五年にほ配当も二 心二億ドルに達した︒これほアメリカの全農民がその年に土地と労働からえた全所得より多
い︒株主配当の支払が食物と繊維を提供する人の所得を超え尭のほ以前にほ二皮だけであった︒それほ三〇年から
一二二年にかけての荒涼たる年であった︒
すべてがこの利潤と配当のブームに平等に浴しているわけで.ほない︒本物の価格競争が行われるところでほ利潤
が阻止されている︒最大利潤を計上している会社すなわち自己の価格を管理でき︑賃金ぞの他の費用の増大をかわ
してコストに付加できる会社ほめぐまれている︒それほ最大の利益を記録している︒これらわずかの会社の自制の
ない行為のためにインフレほ起っているのであり︑最終消費者やその他の事業が犠牲にされているのである︒この
ように労働者痕利潤インフレであると主張する︒
また.労働組合の要求する賃金の引あげはつぎのように弁護する︒上述のようにこれらの事業ほ第二次大戦いらい
これまでに承認されている﹁無理でない報酬﹂をほるかに超える利益を株主に与え︑物価が下らねほならないとき
にもたえず高くしてきた︒こうすることによって産業自身が吸収すべき賃金増加の費用を消翠者に負担させてい
る︒最近の賃金上昇のはとんどほ実際には新しい費用をともなうものでほない︒その支払ほ労働の生産性の上昇︑単
位当りの労働費用の低下がもたらす節約の労働者への分けまえである︒ひきつづきき生満水準が上昇し︑また雇用
機会が増加するためにほ︑この貸金増加は理論上の費用として防ぐカのない消費者に負わさないで事業が吸収すべ 第三十二巻 第三・四・鼠号 ︵三六八︶一二八
きである︒産業の効率が上昇するにつれてその利益は価格の低下を通じて消費者にも到達しなければならない︒
不幸なことに産業において広がっているもう洲つの慣行のために物鳳の下方への動きほ止められている︒それは
価格と収入をひきあげ︑十分な配当を支払い︑資本拡張費用の大部分さえそれで支弁しようとすることである︒こ
の産業拡張費用ほもとより賃金上昇の理論上の費用を消費者に負担させようとする要求が物価を剥きあげているの
である︒戦後産業資本に追加されてきた二兆ドルの資金の大部分は会社の内部資金から出ている︒その大部分ほ配 当されない利潤である︒危険負担をする新資本︑の投資からほはとんど出ていない︒
いいかえると産業の価格利益政策は今や高度に遂勤していて︑費用のかからぬ何十億の資本が消費者からしぼり
とられ︑現在の株主のみの利益にむけられているのであ.る︒資本家がこのような価格制潤に関する政策をとる限
り︑需要インフレのないときにもインフレほ起りうる︒これが労働者の主張する利潤インフレである︒これに対し
資本家ほ労働組合のとる賃金政策のために資金インフレになっていると主張する︒ここでは紙巾の都合で資本家の 主張ほ割愛するがその主張の内容ほ前節にのぺたことから推測できるであろう︒
文 献
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イシフレージョンの原因 ︵三七一︶ 一二