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(1)

空気抵抗係数を考慮に入れた直流直巻モータで駆動 される電気自動車の運動解析

著者名(日) 草野 清信

雑誌名 宮城教育大学紀要

巻 42

ページ 123‑135

発行年 2007

URL http://id.nii.ac.jp/1138/00000083/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

ᴮ.はじめに

 自動車が一定速度で平地を走行するときに受ける抵 抗を走行抵抗という。空気抵抗はその一部であるが、

時速±°° ëí程度になると、そのᴴ〜ᴵ割に達するこ とが知られているᴮ)¬ ᴯ)。しかも、空気抵抗は速度の ᴯ乗に比例するという性質があるため、自動車の高速 化にとってその軽減化が重要な課題である。

 空気抵抗の軽減には自動車の形状が重要な要素であ ることが、早い段階から知られており、幾多の工夫が なされてきている。それは飛行船の形や飛行機の翼形 を真似ることから始まった。さらに、模型による風洞 実験が系統的におこなわれるようになり、±¹³°年代の

流線形の全盛時代が到来することになったᴰ)。±¹·°年 代の世界的なエネルギ−危機を契機に、各地に大型の 風洞が設置され、燃料節約を目標とした空気抵抗軽減 化の研究に拍車がかかった。フォルクスワ−ゲン社が この研究に最も熱心であったとされるが、各研究機関 でも盛んに研究されたᴱ)−ᴳ)。その成果が乗用車等に 取り入れられて燃費の向上に役立てられているᴴ)  空気抵抗は空気抵抗係数Cdというただᴮつの定数 で評価できる。その低減化の歴史経過は文献ᴰ)と文 献ᴴ)に見出すことができるが、現在では、Cdが°®²µ という乗用車も現れている。空気抵抗係数の決定には 従来、風洞実験が唯一の手段であったが、最近では計 算機を利用した数値流体力学が飛躍的に発展してきて

ᴪ±²³ᴪ

空気抵抗係数を考慮に入れた直流直巻モータで駆動される 電気自動車の運動解析

ª

草  野  清  信

Íïöåíåîô áîáìùóéó ïæ Äàóåòéåó íïôïò äòéöåî åìåãôòéã öåèéãìå  ôáëéîç éîôï áããïõîô ôèå áåòïäùîáíéã äòáç ãïåææéãéåîô®

 ËÕÓÁÎÏ Ëéùïîïâõ

Áâóôòáãô

  Éî ôèéó ðáðåò¬ á íåôèïä æïò áîáìùúéîç ôèå íïöåíåîô ïæ åìåãôòéã öåèéãìå äòéöåî âù á Äàóåòéåó íïôïò éó  ðòïðïóåä ôáëéîç éîôï áããïõîô ôèå áéò òåóéóôáîãå® Ôèïõçè áîáìùôéãáì óïìõôéïîó ãáîîïô âå ïâôáéîå䬠ôèéó íåôèïä  åîáâìåó õó ôï ïâôáéî ôèå óïìõôéïîó éî ôèå îõíåòéãáì öáìõå âù áòâéôòáòù áããõòáãù® Ôèåôèå éîæìõåîãå ïæ ôèå  áåòïäùîáíéã äòáç ãïåææéãéåîô áîä ôèå öåìïãéôù ïæ ôèå ÷éîä ïî ôèå óðååä ïæ åìåãôòéã öåèéãìå áîä ôèå ôéíå  ãïîóôáîô áòå ãìáòéæéåä âù õóéîç ôèéó íåôèïä®

         

Ëåù ÷ïòäó

 Áåòïäùîáíéã äòáç ãïåææéãéåîô(空気抵抗係数)

  Äàóåòéåó íïôïò(直流直巻モータ)

  Åìåãôòéã öåèéãìå(電気自動車)

  Óðååä(速度)

  Ôéíå ãïîóôáîô(時定数)

  技術教育講座

(3)

おり、空気抵抗軽減研究の有力な手段となりつつあ る。空気抵抗係数の低減化が一層加速しつつある。

 技術科の教育内容は、現在、「 情報系列 」 と「もの づくり系列」に整理されている。そのため、従来の分野 の壁を取り除いた教科内容の確立が求められている。

著者らは直流モータで駆動される電気自動車の設計・

製作の研究を行い、幾つかの知見を得てきたᴵ)¬−±°) その経過の中で、電気自動車の設計・製作には電気分 野と機械分野そして材料分野の知識が必要であり、そ れは技術科の「ものづくり系列」の教材に相応しい内 容を有していることが分かってきた。また、計算機制 御を持ち込むこともできるので、電気自動車は「情報 系列」を含めた技術科の総合教材ともなる可能性を有 している±±)

 さて電気自動車に関する著者らのこれまでの研究で

ᴵ)−±°)、空気抵抗を無視してきた。教材化を念頭に

おいていたので、時速²° ëí程度までの速度を有する 電気自動車を設計・製作が可能であれば十分と考えた からである。しかし、より本格的な電気自動車を設 計・製作するためには、空気抵抗を取り入れた、すな わち、空気抵抗係数Cdを考慮した研究が不可欠となっ てくる。本論文はこれに応えようとする試みである。

ᴯ.直巻モータのトルク・回転角周波数特性  直巻モータ(図ᴮ)の印加電圧をE(Ö)、逆起電力 E(Ö)そしてトルクをg T(Îe m)とする。これらは 次のように表すことができる±²)

    EEg =Ia¨Ra+Rs©       Eg =k2ωv

Φ

, Te =k2Ia

Φ

,

Φ

=k3Ia  ここでΦは各極磁束(Wb)、Iaは電機子電流(Á)、

ωvはモータ軸の回転角周波数(rad/s)そして RaRs

はそれぞれ電機子抵抗(Ω)および直巻界磁巻線抵抗

(Ω)である。

 式⑵の関係を式⑴に代入すると、

     /{ ¨ ¨ ©¯¨ ©©ý

©¬

¨

3 2 3

2 3 2

k k R R k

k E I

R R I I k k E

s a v a

s a a a v

+ +

=

= +

ω

ω

 

式⑶を式⑵に代入すると次のようになる。

/{ 2 3¨ ¨ ©¯¨ 2 3©©2}

2 k k R R k k

E

Te= ωv+ a+ s  

いま、

2 0 3 2 2 0 3 2

0

¨ © ¯¨ ©¬

{

¯¨ ©ý ¯ ω

ω

= Ra+Rs k k T = E k k   とおくと、IaとTeは見易くなり、

2

0 0

0 0

0

© 1

©

¯

¯¨¨

© 1

©

¯

¯¨¨

©

¯

¨

+

=

+

=

ω ω

ω ω ω

e v a v

T T

E T I

 

となる。図ᴯにはトルク(Te)・回転角周波数(ωv)特性 が示されている。

ᴰ.電気自動車の運動方程式

ᴰ−ᴮ.運動方程式ᴶ)¬±°)

 ここでは図ᴰの直巻モータで駆動される電気自動車 を考察の対象とする。この自動車が、図ᴱのように勾 配角θ(òáä)の坂を登っているものとする。このと きの自動車の運動方程式に関係する諸量を次に掲げ る。

RS=mg óéî(θ):勾配抵抗 Rr=μmg ãïó(θ):転がり抵抗 Ra=CdρA°νa²

¯²:空気抵抗 

ただし、

θ:勾配角(òáä),g:重力加速度(m/s² μ:転がり抵抗係数,Cd:空気抵抗係数

ρ:空気密度(kg/m³),A°:車の正面投影面積(m² νa:自動車の対空気速度(m/s)

これら諸量を用いると、運動方程式は次のように表現 できる。

Medν¯dt=ηFeFr  ただし、Mem+(Ie+If(λ¯r)²

    Fe=(λ¯r)Te

    FrRSRrRa

ここで、

  Te=モータの駆動トルク(N・í)

  IeIf:回転系の慣性モーメント(kg・m²   λ(=λ±λ²):変速比、η:動力伝達効率   r:駆動輪(後輪)の半径(m)

ᴪ±²´ᴪ

㔚ᯏሶ

⇇⏛ࠦࠗ࡞

E Eg

I

I A

I=Ia=If

図ᴮ 直流直巻モータ 図ᴯ トルク・回転角  周波数特性

(4)

式⑹と式⑻を考慮すると、運動方程式はさらに具体化 され、

  

a v

e

R mg

T r dt

dv M

− +

+

=

© sin

¨ cos

©

© 1

¯¨¨ /

©

¨ /

/ 0 0 2

θ θ μ

ω ω λ

η

 

となる。空気抵抗Ráは向かい風のときは制動力とな るが、追い風の時には,次のように,制動力にも駆動 力にもなる±³)

⎪⎪

⎪⎪⎨

⎢⎢

=

W W

d

W W

d

W d 0

0

0 a

v v v

v A C

v v v

v A C

v v A C R

p p

追い風

向かい風

2

© /

¨

2

© /

¨

2

© /

¨

2 2 2

ρ ρ ρ

ただし、

⎩⎨

=⎧

> 向かい風

:追い風  風速vW

v 0,

 

本論文では実用上重要である向かい風の場合を前提に 議論を進める。このとき、運動方程式は次のようにな る。

¨ cos sin © ¨ © /2

©

© 1

¯¨¨ /

©

¨ / /

2 2 0 0

W d

v e

v v A C mg

T r dt dv M

− +

+

=

ρ θ θ μ

ω ω λ

η

  0

これが解析の出発点である。

ᴰ−ᴯ.運動方程式の解

 モータのトルク・回転角周波数特性は式⑹で表すこ とが出来る。さらに,ωvと速度vが次のように結び

つけられることを考慮する。

      

ω

v=¨λ/r©v   運動方程式は次のように書き換えられる。

2 2 0 0

2

©

©¨

©¨ /

©¨ / 2 /

¨1

© sin

©¨ cos

©¨ /

¨ /

©

©

© 1

¯¨¨ /

¨

©

©¨ /

¨ / /

W v e d e e v

v

M A C r

M mg r

T r M dt d

ω ω ρ

λ

θ θ μ λ

λ

+

+

= η ω ω

ω

  0

もちろん、次のように置いている。

      

ω

W=¨λ/r©vW   この微分方程式は次のように変形できる。

  dW/dt

=

A

+

B/W2

+

C¨W

− ω

0

− ω

W©2   ただし、

    

Me d A C r C

T e r

M B

Me mg r A W v

© /

©¨ / 2 /

¨1

2 0 0 0

©2

©¨ /

¨ /

© sin

©¨ cos

©¨ /

¨ /

0

ρ λ

ω

θ θ

=

=

+

= +

=

dz ǯ

Ǵ dz

ȁ ȁ

 

式⒂を積分すると、次のように書き換えられる。

=

+ +

+ + +

dt C

C B W C

A W W

dW W

W

W© { / ¨ © } /

¨

2 0 3 0 2 2

4

2

ω ω ω

ω

 

式⒄の左辺分母はᴱ次式であるが、その形状は付録Á で明らかにしてある。そのᴱ根をW1,W2,W3および W4とすると、式⒄は次のように書き換えられる。

©

¨

©

©¨

©¨

©¨

¨

1 1

4 3

2 1

2

積分定数 c

c Ct

W W W W W W W W

dW W

+

=

∫ −

 

 W1,W2,W3およびW4の求め方の手順は付録Âに明 らかにされている。具体的には次の通りである。

δ ω

ω ω

ω

δ ω

ω ω

ω

δ ω

ω ω

ω

δ ω

ω ω

ω

− +

+

− + + +

=

− +

+

− + +

=

− + +

+ + + +

=

− + +

+

− + +

=

n k

k W

n k

k W

n k

k W

n k

k W

W W

W W

W W

W W

4

© /

¨

©

©¨

2 /

¨1

4

© /

¨

©

©¨

2 /

¨1

4

© /

¨

©

©¨

2 /

¨1

4

© /

¨

©

©¨

2 /

¨1

0 2 0

4

0 2 0

3

0 2 0

2

0 2 0

1

 

kとnはδが決まれば式(­µ)に従って自動的に決ま るが、そのδの求め方は付録Ãに明らかにされている.

 付録Áの議論から、W1W2W3およびW4はᴯ実根・

ᴯ虚根であるか、ᴮ正実根・ᴰ負実根であるか、ᴮ負 実根・ᴰ正実根であるかの何れかとなることが明らか になっている。

 現実的なパラメ−タを課した場合、ᴯ実根(ᴮ正根 とᴮ負根)・ᴯ虚根になることが多いようである。そ こで、ここではW1(<ᴭ:負)とW2(> ᴭ:正)が

ᴪ±²µᴪ 図ᴰ 考察の対象となるᴰ輪電気自動車

図ᴱ 坂を登る電気自動車

(5)

実根、そしてW3W4が虚根であると仮定して議論を 進める。もちろん、W3W4が実根そしてW1W2 虚根であるときは、以後の議論で得られた結果に対し W1W3で置き換え、W2をW4で置き換えればよい。

もちろん、W1,W2,W3およびW4が共に実根となると きもあるが、そのときは付録Äの結果を出発点とすれ ばよい。

 さて、議論を進める。付録Åで得られた結果を用い れば、式⒅は次のようになる。

  

α

2 1

1 2 3

4

2 3

2 2

1 1

] 4 /

2 [ /

tan 4 /

©© 1 2

¨ /

¨

|

|

©ln 2

¨ /

|

| ln

|

| ln

c t C

A W A

W W A

W W A W W A

+

=

− +

− − +

+ + +

− +

β α α

α β

β α

 

さらに、

      

γ

1= A1¯A2,

γ

2 =A3¯¨2A2©   とおくと見やすくなり、次のようになる。

© / exp

}]

4 /

2 { /

tan 4 / 1

©©ý

¯¨2

¨

© / exp[{

|

|

|

|

|

|

2 0

2 1

2 2 3 2 4

2 1

2 2 1

A t C C

W A

A A A

W W W W W

W

=

− +

× −

×

− +

+

α β

α α

β α β

α

γ γ

¨

  ¨

これが最終的な積分結果である。ただし、C0は未定 係数であり、初期条件等を課すことによって決定され る。

 そこで、t=ᴭのときW=ω0(すなわちωv=ᴭであ り、モータ軸が回転していないということ)なる条件 を式艦に課すと次の結果が得られる。

}]

4 /

2 { /

tan 4 / 1

©©ý 2

¨ /(

© / exp[{

|

|

|

|

|

|

2 1 0

2

2 3 2 4

2 0 1 0 0

2 0

0 2 1

α β

α ω α

β

α

ω ω

β αω

ω

γ γ

− +

× −

×

− +

+

=

A A A A

W W

C

 

この結果を式艦に代入すると、

© / exp

}]]

4 / 2 { /

tan } 4 / 2 { /

[tan 4 / 1

©©ý

¯¨2

¨

© / exp[{

©|

¯¨

©

¨

|

©|

¯¨

©

¨

|

©|

¯¨

©

¨

|

2

2 0 1 2

1 2

2 3 2 4

0 2 2 0 1

1

2 0 2 0

1

2

A t C

W A A A A

W W

W W W

W W W

=

− +

− +

×

×

×

+ + +

+

α β

α ω α

β α α

β

α

ω ω

β αω ω β α

γ

γ

¨

  ¨

となる。

 数値計算に適した形にするために次の置き換えを行う。

τ

τ ω β β ω α α

ω α

β ω

ω ω

ω

/

/ ,

/ , /

,

©/

¨ / , 4 / /

, / ,

/ ,

/

2 2

0 1 0 1

0 2 4 4 2 0

3

0 2 2 0 1 1 0

t T

C A

A A X X

W X W X W Y

=

=

=

=

=

=

=

=

=

さらに

 

すると、より見やすくなる。すなわち、

© exp

©ýÝÝ 2 /

¨1 { tan

©ý 2

¨ / {

© [tan exp[

1 ©

¯¨

©

©|

¯¨1

©

©|

¯¨1

©

¨

|

1 1 3

3 1 3 1

2 1 4

2 2

1 1

1 1 1

2 1

1

2

T X

Y X X

X

X X

Y X X Y

Y Y

=

+

+

×

×

+ + +

+

α

α γ

α

β α β

α

γ γ

¨

  ¨

ただし、式諌の時定数τの定義に際して,A2>ᴭおよ C <ᴭなることを用いた。

ᴰ−ᴰ.速度の過渡特性

 さまざまな時間Tを式貫に与え、対応するYの値を 求め、それをグラフ上に記入すれば、Yの時間変化が 視覚化できる。モータ軸の回転角周波数ωvは(Y−ᴮ)

ω0であるので、これはωvの過渡特性を表すことにな る。さらに、式甘を用いれば

      v

=

ȁvr/

λ =

¨Y

1©ȁ0r/

λ

  であるので、それは速度の過渡特性になる。

 ここで表ᴮに掲げる条件で数値的に検討する。モー タは甲府明電舎製の直流直巻モータÈÏ­ÍÒÏ­ ³°(²´

(Ö)、´°°(×))を想定している。図ᴲには、風速vW

をᴭ(í¯ó)、−±°(í¯ó)および−²°(í¯ó)と変化させ たときの過渡特性が書き込まれている。図中には比較 のため、空気抵抗を無視したときの速度変化も書き込 んである。

 定常速度(最終速度)VSYの定常値(最終値)YS

を用いれば、

      VS =¨YS1©ȁ0r/

λ

  と書き表すことができる。各条件下の時定数τと最終 速度VSは表ᴯの通りである。風速vWは時定数τと定 常速度VSに大きな影響を及ぼすことが分かる。vW(í¯ó)に対応する曲線と空気抵抗無視に対応する曲 線の差が無風状態での空気抵抗の影響を表している。

ᴪ±²¶ᴪ

ω0=10.94¨rad/s©,T0=472.4¨Nm©,m=115¨kg© Ie+If=0.1¨kg・m2©,r=0.254¨m©, g=9.8¨m/s2©,λ=10, μ=0.01,θ=3¨度©,η=1,Cd=0.4,ρ=1.241¨kg/m3©,A0=1¨m2©

表ᴮ 数値計算条件

(6)

表ᴯ 表ᴮの条件下での時定数と定常速度(最終速度)

νW(í¯ó) τ(Ó) V(ëí¯è)S

° ·®µ± ±´®¸

−±° ³®¸± ±±®¸

−²° ±®·´ ¸®··

空気抵抗無視 ¸®¶¹ ±µ®³

ᴱ.空気抵抗の影響

ᴱ−ᴮ 空気抵抗係数Ãäの影響

 第ᴰ節で空気抵抗を考慮した電気自動車の運動解析 法を提示した。本節ではこの方法を用いて空気抵抗の 影響を解析する。

 空気抵抗の大きさは空気抵抗係数Cdを用いて表す ことが出来る。その大きさは形状と密接な関係を有し ており、図ᴳにはその値が示されている。Cdの大きさ は最大±®²程度であることが分かる。

 ここで表ᴰの条件下の自動車の時定数と定常速度

(最終速度)のCd依存性を計算する。表ᴮの条件と

IeIfが異なっている。また、風速vWはᴭ(í¯ó)と 固定している。結果は図ᴴに示されている。Cd=ᴭは 空気抵抗無視の場合に対応しているので、影響はこの 値と比較することによって知ることが出来る。定常速 VSCdの増大と共に緩やかに減少すること、時定 τCdの増大に伴って急激に減少することが分か る。

ᴪ±²·ᴪ 図ᴲ 直巻モータで駆動される電気自動車の過渡特性の例

図ᴳ 形状と空気抵抗係数±´)

図ᴴ 時定数(τ)と定常速度(ÖÓ)の  空気抵抗係数(Ãä)依存性 ω0=10.94¨rad/s©, T0=472.4¨N・m©,m=115¨kg©

Ie+If=0.01¨kg・m2©,r=0.254¨m©,g=9.8¨m/s2©,η=1, μ=0.01,θ=3¨度©,ρ=1.241¨kg/m3©,A0=1¨m2©,vW= 0 ¨m/s©

表ᴰ 数値計算条件

図ᴵ 時定数τと定常速度ÖÓの風速ö×依存性

(7)

ᴱ−ᴯ 風速ν÷の影響

 空気抵抗の影響は空気抵抗係数Cdばかりでなく、

風速vWを介しても現れる。図ᴵには、変速比λをパ ラメータとして、時定数τと定常速度VSの風速(vW)依 存性を示す。計算条件は表ᴱに示すとおりであり、空 気抵抗係数Cdはᴮとしてある。定常速度は、風速vW

が−±°(í¯ó)ほどまでは線形的に減少すること、変速 比λが大きくなるほどその減少の度合いが小さくなる ことなどが分かる。時定数も風速vWと共に減少する が、減少の度合いは変速比に依らない。図ᴴの結果と 比較すれば、時定数の減少の度合いのCdとλに対す る依存性が異なることが分かる。

ᴴ.まとめ

 第ᴯ節では電気自動車の運動解析に不可欠な直巻 モータのトルク・回転角周波数特性の理論式が式⑹で あることを明らかにしている。

 第ᴰ節は本論文の核心である。まず、向かい風状態 下での運動方程式が式⑾であることを明らかにしてい る。これを積分すれば、式艦に変形できることを明ら かにしている。さらに、起動時のモータ軸が静止して いるとの初期条件を課せば、モータ軸の回転角周波数 ωvは式貫の解として得られることを明らかにしてい る。また、この結果をもとにして、速度の過渡特性の 例示もおこなっている。

 第ᴱ節では、定常速度VSと時定数τに与える空気 抵抗の影響を、空気抵抗係数Cdと風速vWのᴯ面から 明らかにしている。空気抵抗係数と風速の影響は変速 比λが大きくなると減少すること、両者の影響の現れ 方が異なることなどを明らかにした。

文献)

ᴮ)柴田寿一、迫田正儀、中川邦夫:乗用車の空力的諸特性 の 研 究:三 菱 重 工 技 報、Öïì® ±¹ îï® ´ ðð® ±°´ ­ ±±±

(±¹¸²)

ᴯ)牧野光雄:「流体抵抗と流線形」、産業図書(±¹¹´)

ᴰ)伊藤晋吾、星野隆三:自動車のスタイルと空力特性(第 ᴮ報)、Ôïùïôá Ôåãèîéãáì Òåöéå÷¬ Öïì® ´± îï® ±  ðð®±²¶­±³´(±¹¹±)

ᴱ)武藤真理:「 自動車の空気抵抗係数(ÃÄ)値の動向と軽

減法 そのᴮ 乗用車タイプについて 」、日本自動 車研究所 技術調査報告 第ᴮ号(±¹¸°)

ᴲ)武藤真理:「 自動車の空気抵抗係数(ÃÄ)値の動向と軽

減法 そのᴯ 大型トラックタイプについて 」、日 本自動車研究所 技術調査報告 第ᴯ号(±¹¸°)

ᴳ)伊藤晋吾、星野隆三:自動車のスタイルと空力特性(第 ᴯ報)、Ôïùïôá Ôåãèîéãáì Òåöéå÷¬ Öïì® ´± îï® ²  ðð®±²µ­±³´(±¹¹±)

ᴴ)齋藤 孟、山中 旭:「自動車の基本計画とデザイン」、

ð𮲲±­²²¸ 山海堂(²°°²)

ᴵ)草野清信:直流モーターで駆動されるソーラーカーの設 計、日 本 産 業 技 術 教 育 学 会 誌、Öïì® ´´ Îï® ´  ð𮱸±­±¹°(²°°²)

ᴶ)草野清信:直流モータで駆動される電気自動車の電池容 量の設計、日本産業技術教育学会誌、Öïì®´¶¬ Î﮳®¬ 

ðð®±±³­±²±(²°°´)

±°)草野清信,安孫子啓:直流直巻モータで駆動される電気 自 動 車 の 設 計 手 順、日 本 産 業 技 術 教 育 学 会 誌、

Öïì®´· Î﮲¬ ðð®±°¹­±±¸ (²°°µ)

±±)草 野 清 信:電 気 自 動 車 は 環 境 に 良 い¡¿、技 術 教 室、

Îï®¶±´ ðð®´´­µ±(²°°³・¹)

±²)天野寛憲、常広 譲著:「電気機械工学」、電気学会(±¹¹´)

±³)草野清信:空気抵抗を考慮に入れた直流モータで駆動さ れる高速電気自動車の解析的設計理論、日本産業技 術教育学会誌、Öïì®´¹ Îï®±¬ ðð®±±­²³ (²°°·)

±´)古澤 丈、福永恭一、藤村真:徳山高専におけるソーラー カ ー の 製 作、徳 山 工 業 高 等 専 門 学 校 研 究 紀 要、

Öïì®±¹ ðð®·­±¶(±¹¹µ)

±µ)森口繁一・宇田川銈久・一松信著:「数学公式Ⅰ 微分積 分・平面曲線」,ð𮸲­¸³ 岩波書店(±¹¹µ)

ᴪ±²¸ᴪ ω0=10.94¨rad/s©,T0=472.4(N・m),m=115(kg)

Ie+If=0.01(kg・m2),r=0.254(m), g=9.8(m/s2),

μ=0.01,θ=3(度),η=1,Cd=1,ρ=1.241(kg/m3),A0=1(m2) 表ᴱ 数値計算条件

(8)

付 録Á g×)=×−²ωω××û Á¯Ã)+

ωω×ý×+(¯Ã)の形状

 上記関数ç(W)の形状を明らかにする。そのために 微分g(W)を明らかにする。

©ýÝ /

¨

© 8

©û¨

/16

¨1

©ý 4©¨

3/

¨ 4 Ûû

ýÝ

©

¨

© /

©û¨

/2

¨1

© 2©¨

3/

¨ 4 Û

©

¨

2

0

2

0

2

0 0

© 2

¨1

C A W

W

C A

W W

W W g

W W

W W

+

+

=

+ + +

+

=

ω ω

ω ω

ω ω

ω ω

  (Á­±)

式(A-1)から、実数の極は次のように分布すること が分かる。

  

0

© /

¨

© 8

¨

©

¨2

© /

¨

© 8

¨

© /4

¨1

©

©¨

/4

¨3

© /

©

¨ 4© 1/

¨

© 4©¨

3/

¨ 0

© /

¨

© 8

¨

©

¨1

0 2 0

2 0 0

2 0 0 0

2 0

= +

+ +

+

=

+

+

=

= +

W

C A

C A W

C A W

W

C A

W

W W b

W W a

W

のとき  のとき 

p f

ω ω

ω ω

ω ω

ω ω

ω ω ω ω

  (Á­²)

 ⑴の場合のç(W)の増減と形状は、(B¯C)<ᴭであ るから、表A-1および図A-1のようになる.ç(Wa)が正、

ç(Wb)が負となるときは、ç(W)はᴱ実根を有する。

それ以外のときはç(W)はᴯ実根を有することが分か る。

 ⑵の場合のç(W)の増減と形状は、(B¯C)<ᴭであ るから、表A-2および図A-2のようになる。明らかにç

(W)はᴯ実根を有する。

付録Â ×−²ωω××+ûÁ¯Ã)+ωω×ý        ×+(¯Ã)=の根の求積について  上記ᴱ次方程式の根を求める。ここでは、フェラリ の解法を採用する。この解法に従い、δを次のように 導入する。

©©

/

¨

¨

©

¨

©© 2 /

¨

¨2

}

©

¨ {

2 0

2 2 0

2

C B W

W C A

W W

W W

+ +

=

+ +

δ ω

ω δ δ

δ ω ω

  (­±)

右辺が完全平方となり、,

2

2 0

2

©

¨

© /

¨

¨

©

¨

©© 2 /

¨

¨2 n kW

C B W

W C

A W

+

=

+ +

δ ω ω δ

δ

  (­²)

となったとする。すると、式(B-1)は次のように書 き換えられる。

   { ¨ © } 0 }

©

¨ {

0 0

= + + + +

×

+ + +

n W k

W

n W k W

W W

δ ω ω

δ ω

ω

2 2

  (­³)

これから、ᴱつの根が次のように得られる。

δ ω

ω ω

ω

δ ω

ω ω

ω

δ ω

ω ω

ω

δ ω

ω ω

ω

+

+

+ + +

=

+

+

+ +

=

+ +

+ + + +

=

+ +

+

+ +

=

n k

k W

n k

k W

n k

k W

n k

k W

W W

W W

W W

W W

/4

©

¨

©

©¨

/2

¨1

/4

©

¨

©

©¨

/2

¨1

/4

©

¨

©

©¨

/2

¨1

/4

©

¨

©

©¨

/2

¨1

0 2 0

4

0 2 0

3

0 2 0

2

0 2 0

1

  (­´)

もちろん、式(B-2)から、次の関係のあることは明 らかである。

  (­µ)

ᴪ±²¹ᴪ 表Á−ᴮ g¨×)の増減

W W0 Wa Wb

g(W) − ° ° ° g

(W) g(0) g(Wa (Wg b

W0=0 Wa Wb

¨B/C©

g¨W©

W

¨ω0w©2¾¸¨A/C©

図Á−ᴮ g¨×)の形状

W0= 0

(B/C) g(W)

W (ω ω0+ w)2<8(A/C)

図Á−ᴯ g¨×)の形状 表Á−ᴯ g¨×)の増減

W W0

g(W) − ° g

(W) B/C

©

¨ 2 2

© /

¨

© / 2 ¨

0 2 2 2

kn W

C B n

C A k

ω ω δ δ

δ

+

=

=

=

(9)

 次に、式(B-2)のように完全平方となるための条 件を明らかにする。その条件は次の通りである。

  

© 0

¯¨2

© /

¨

©

©

¨

© /

©¨¨

/2

¨1

©

¨

©© 0 /

¨

©©¨

/

¨

¨2 4

©©

¨

¨ 2

2

2 2 0 3

2 0 2

= +

+ +

=

=

+

C AB C B

C A f

C B C

A

W W

δ

δ ω ω δ

δ

δ δ

ω ω δ

  (­¶)

この三次方程式のᴮつの実根が得られたとすると、そ れを式(B-5)に代入すれば、knが算出できる。

ω0とωWは既知であるので、いま得られたδ,kとnを 式(B-4)に代入すれば、W1,W2,W3およびW4が確 定する。

付録Ã f(δ)の増減と形状および f  (δ)=ᴭの根   あらためて、f(δ)を記す。

   ¨ / © ¯¨2 ©

©

©

¨

© / 2©¨¨

1/

¨

©

¨

2

2 2 0 3

C AB C B

C A

f W

+

+ +

=

δ

δ ω ω δ

δ

  (í±)

f

(δ)の微分f(δ)は

3] /

© / 3 ¨ / ý

©

¨

© / [ û¨

© 3

¨ 2 0 2

©

¨1 A C B C

f

δ

= Ǭ +

ω

+

ω

W Ǭ

  (í²)

である。f(δ)の極は f(δ)=ᴭを満たすが、それら は次の条件に従い、実根あるいは虚根となる。

虚根

の場合

:実根 の場合

© 0 /

¨ } 12

©

¨

© / û¨

©

¨

© 0 /

¨ } 12

©

¨

© / û¨

©

¨

2 2 0

2 2 0

p f C B C

A

C B C

A

W W

+ +

+

+ + +

ω ω

ω ω

そこで各場合に分けて考える。

Ⅰ:û¨A/C©+¨

ω

0+

ω

W©2ý2+12¨B/C©f0のとき  このとき、f(δ)の極値は次のᴯつの値δ±とδ²に位 置する。すなわち、

© / 12¨

©

©

¨

© /

¨

¨ 6© 1/

¨

©

©

¨

© / 6©¨¨

1/

¨

©, / 12¨

©

©

¨

© /

¨

¨ 6© 1/

¨

©

©

¨

© /

©¨¨

/6

¨1

2 2 0

2 0 2

2 2 0

2 0 1

C B C

A C A

C B C

A C A

W W

W W

+ +

+ +

+ +

=

+ +

+

+ +

=

ω ω

ω ω δ

ω ω

ω ω δ

  (í³)

(B/C)は負である。したがって、δ±とδ²は次のᴯ つの場合に応じて、共に正または共に負となる。

    共に負

共に正

© 0

¨

© /

¨

©

¨

© 0

¨

© /

¨

©

¨

2 0

2 0

p f

W W

C A

C A

ω ω

ω ω

+ +

+ +

また、δ=ᴭでの(δ)の値はf AB/(2C²)であり、正に も負にもなる。これらを考慮して,f(δ)の正負とf

(δ)の増減をまとめると、表C-1のようになる。その

形状は図C-1のようになる。

 δ±とδ²が共に正の場合、f(δ±)と(δf ²)の正負に応 じて、次のようにᴰつの根の在り方がある。ただし、

この場合B>ᴭ,C<ᴭ であり、Aは正にも負にもな りえることに注意する必要がある。

0© 2 ©

¯¨

¨

0© 2 ©

¯¨

0 ¨

© , ¨

© 0

¨ 3©

¨

0© 2 ©

¯¨

¨

©

© 0

¯¨2

¨

© 0

¨ ,

© 0

¨

©

¨2

©

© 0

¯¨2

¨

© 0

¨ ,

© 0

¨

©

¨1

2 2 2

1

2 2 2

1

2 2

1

f p f

f

f p p

f

p p

p

C AB

C AB f

f

C AB

C AB f

f

C AB f

f

または1負実根 1正実根

実根 または1負実根・2正

3正実根

1正実根

δ δ

δ δ

δ δ

⑴が図Ã-1中形の場合に対応する。根は図中のÄ点で ある。⑵の場合は、式(B-5)の関係が存在するから、

δとして次の範囲に入るものからᴮつ選択する。

k2=2

δ

¨A/C©f0 ∴

δ

A/C©/(í´)

⑶の場合はᴮつの正または負の実根が求めるδである。

 δ±とδ²が共に負の場合、f(δ±)と(δf ²)の正負に応 じて、次のようにᴰつの根の在り方がある。ただし、

この場合はA>ᴭ,B>ᴭおよびC<ᴭであることに 注意する必要がある。

ᴪ±³°ᴪ

表Ã−ᴮ g¨×)の増減

δ δ1 δ2

f(δ) ° °

f

(δ) (δf 1 (δf 2

 ¨イ© ¨

A/C )+( ω

0

W©2

> 0

 ¨ロ©  ¨

A/C

)+(

ω

0+

ω

W©2

< 0

0 δ1 δ2 δ

f¨δ©

AB/(2C2©

δ 0 δ2

δ1

f¨δ©

AB/(2C2©

図Ã−ᴮ 極値があるときのf δ)の形状

参照

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