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厚生労働省科学研究費補助金

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Academic year: 2021

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(1)

厚生労働省科学研究費補助金

成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(健やか次世代育成総合研究事業)

「妊婦健康診査および妊娠届を活用したハイリスク妊産婦の把握と 効果的な保健指導のあり方に関する研究(H27-健やか-一般-001)」

総合研究報告書 研究代表者

地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 統括診療局長 兼 産科 主任部長 光田信明

産婦人科分娩取り扱い施設における社会的経済的リスクを持った 妊婦取り扱い状況の全国調査

地域における産後2週間健診によるハイリスク産婦の抽出 分担研究者 荻田 和秀 りんくう総合医療センター

周産期センター産科医療センター長 兼 産婦人科部長

研究要旨

産婦人科分娩取り扱い施設における社会的経済的リスクを持った妊婦取り扱い状況 の全国調査・地域における産後2週間健診によるハイリスク産婦の抽出

【はじめに】

児童虐待防止の観点からもハイリスク妊婦の抽出は医療機関にとっては重要な事項 であることは多研究にて論じられているところである。特に産婦人科医療機関でハイ リスク妊婦を早期に覚知し、地域に繋げることが虐待防止に果たす役割は大きい。し かるに、各医療機関での認識が違ったり覚知しても地域に繋げることのできない施設 があるという報告もあるため日本産科婦人科学会と協力して日本のすべての分娩施 設にアンケートを送付し、各施設での社会的経済的ハイリスク妊婦への対応や望まな い妊娠、児童相談所への通告など出生児への介入や特別養子縁組の実態を調査するこ ととした。また、大阪泉南地域にある泉佐野市で産後うつの早期発見を目的に導入さ れた産後2週間健診での育児困難事例についても検討した。

【結果】

アンケートの回答は

1538

施設より回答を得た。回答率は

63%であった。診療所や一

般病院などの一次施設からの回答が

85%あり、周産期センターは 9%、と幅広い施設

より回答があった。多くの症例は周産期センターで扱われていることが読み取れ、周 産期センターは医学的ハイリスク以外のハイリスク妊婦を扱う最前線とも考えられ た。

また、平成

28

4

月~平成

29

12

月まで産後2週間健診の受診率は、70%に達し たが、育児困難事例の発見は2名であった。これらは妊娠中見守りが必要とされてい ない症例で、見守りが必要とされた産婦は受診しないものがおり、従来の保健師によ

る訪問事業も依然重要であると考えられた。

(2)

産婦人科分娩取り扱い施設における 社会的経済的リスクを持った妊婦取 り扱い状況の全国調査

A.

研究目的

児童虐待防止の観点からもハイリス ク妊婦の抽出は医療機関にとっては 重要な事項であることは多研究にて 論じられているところである。特に産 婦人科医療機関でハイリスク妊婦を 早期に覚知し、地域に繋げることが虐 待防止に果たす役割は大きい。しかる に、各医療機関での認識が違ったり覚 知しても地域に繋げることのできな い施設があるという報告もある。

そこで当研究班は日本産科婦人科学 会と協力して日本のすべての分娩施 設にアンケートを送付し、各施設での 社会的経済的ハイリスク妊婦への対 応や望まない妊娠、児童相談所への通 告など出生児への介入や特別養子縁 組の実態を調査することとした。

B.

研究方法

本アンケートは日本産科婦人科学会 拡大医療改革委員会の協力で平成

28

1

月現在分娩を取り扱っていると 回答した2429施設を対象にアン ケートを送付し、1538施設より回 答を得た。回答率は63%であった。

診療所や一般病院などの一次施設か らの回答が85%あり、周産期センタ ーは9%、と幅広い施設より回答があ った。

C.

研究結果

本アンケートは当学会拡大医療改革 委員会の協力で平成28年1月現在 分 娩 を 取 り 扱 っ て い る と 回 答 し た 2 4 2 9 施 設 を 対 象 に 昨 秋 委 員 の 皆様にご相談した内容でアンケート

を送付し、1538施設より回答を 得た。回答率は

63

%だった。

回答施設の属性は図1に示す。

また、回答施設の分娩数は以下にお示 ししたとおりで、診療所や一般病院な どの一次施設からの回答が

85

%あり、

周産期センターは

9

%、年間550件 以 上 の 分 娩 数 を 扱 っ て い る 施 設 は

26

%だった。

回答施設は日本の周産期事情をある 程度反映しているのではないかと考 えている。

図1 回答施設の属性

図2 回答施設の規模

母体の社会的経済的リスクは児童虐 待のハイリスクと考えるかという問 いには図3の通りほぼ

93%

の先生方 が考えていると回答している。

診療所 57.2%

大学病 4.6%

一般病院 27.4%

周産期センター 9.0%

その他

0.6% 無回答 1.2%

n=1538

1~249 27.0%

250~

349件 17.6%

350~

549件 27.8%

550件 以上 26.0%

無回答 1.7%

n=1451

(3)

実際、未受診妊婦は約半数の施設で経 験している(図4)が、

図4 未受診妊婦を取り扱っている か

MSW

がいる施設は

33.9%に過ぎない

(図5)

図5 院内に

MSW

はいるか

回答のあった施設のうち

37.2%がそ

の 後 の 児 童 虐 待 を 覚 知 し て い る と 回答している。

図6 自分の扱った症例が児童虐待 にあったことがあるか

また、回答のあった施設の行政や地域 の福祉窓口との関わりを調べるため に特定妊婦などを通告する場所を知 っているか(図7)、福祉から患者を紹 介されたことがあるか(図8)及び昨 年度の児童福祉法の改正について知 っているかの問いの答えを図9に示 している。

図 7 通 告 す る 場 所 を 知 っ て い る か?

図8 福祉からの紹介経験

考えており対応し ている

52.8%

考えているが対応 できていない

40.6%

考えて いない 5.1%

無回答 1.4%

n=1538

いない 48.7%

いる 49.9%

無回答 1.4%

n=1538

いない 65.7%

いる 33.9%

無回答 0.4%

n=1538

いない 59.0%

いる 37.2%

無回 3.8%

n=1538

知ら ない 29.1%

知って いる 69.4%

無回答 1.5%

n=1538

ない 67.9%

ある 31.1%

無回答 1.0%

n=1538

(4)

図9 児童福祉法改正を知っているか

これを分析してみると、行政との連携 の最前線はやはり周産期センターが 最も多く、一次施設は周産期センター を通して行政と関わっていると考え られる。

また、育児支援の難しい児の分娩後の 行き先に関して以下の問いを設けた。

児童相談所などへの乳児の引き取り に至った症例を経験している施設は 約

20

%あり(図10)、特別養子縁組 に 至 っ た 症 例 を 経 験 し た 施 設 は

14.8

%となっている(図11)。

図10 児童相談所への引き取りを 経験

図11 特別養子縁組を経験

図12 どの施設へ収容したか

その内訳を問うた設問では児相など の公的施設>本人の探した私的団体

>施設の探した私的団体 という結 果となった(図12)。

E.

結論

アンケート結果からは分娩を扱って いる施設の産婦人科医は社会的経済 的リスクは児童虐待につながるとの 認識が一般的であるが、

MSW

不在な どの施設が多く、それらの症例は周産 期センターに集中している可能性が あることがわかった。また、児相への 引き取りが特別養子縁組よりも多く、

アンケート期間においては養子縁組 の

12.5

%は本人が探した私的団体が 仲介していた。

F

.健康危険情報 なし

G.

研究発表

1

.論文発表 なし

知って いる 36.9%

知らな 61.0%

無回答 2.1%

n=1538

ない 78.7%

ある 19.8%

無回答 1.4%

n=1451

いな かった

82.2%

いた 14.8%

無回答 3.0%

n=1451

19.6 2.3

12.5 1.7

69.5 0% 20% 40% 60% 80%

児童相談所などの公的団体 施設で探したNPOなどの私的団体 本人が探したNPOなどの私的団体 その他 無回答

n=479

(5)

2.学会発表

1)第69回日本産科婦人科学会学術

集会にて発表予定

H.

知的財産権の出願・登録状況(予定 を含む。)

1.特許取得:なし 2.実用新案登録:なし 3.その他:なし

J

.今後の展開

今回の結果をもとに、各地域での情報 提供のあり方やスキームなどの工夫 について調査・提言し、フィードバッ クする形で各地域に落とし込み、より 綿密な連携のためのシステム作りに 役立てたい。

地域における産後2週間健診による ハイリスク産婦の抽出

A.

研究目的

厚生労働省雇用均等・児童家庭局が平 成

28

1

月に改訂した「妊娠・出産 包括支援事業概要」1の中で①産前産 後サポート事業、②産後ケア事業、③ 妊娠・出産包括支援緊急整備事業、④ 妊娠・出産包括支援推進事業、の

4

つ が条文化されているが、これに先立つ 平成

26

4

月に日本産婦人科学会、

日本産婦人科医会、日本周産期メンタ ルヘルス学会の

3

学会で「妊産婦メン タルヘルスに関する合同会議 2015」

が立ち上げられ、その報告書2では精 神障害のハイリスク妊婦の抽出(妊娠

期)には妊娠初期、中期、末期の

3

回、

包括的質問(英国国立医療技術評価機 構・NICEのガイドラインで推奨され るうつ病・全般性不安障害を評価する ための

2

項目質問票)の使用、産後う つ病の抽出(産褥期)には

Whooley

う つ病スクリーニングやエジンバラ産 後うつ病質問票(EPDS)が推奨され た。

これらに先駆けて泉佐野市では平成 28年度より育児困難例や産後うつ 病の早期発見により地域保健システ ムの見守り事業につなげる事が可能 かどうかを検討するため、産後2週間 健診を開始した。

B.

研究方法

大阪府泉佐野市では母子保健法第

10

条を根拠法令としつつ、平成

28

4

月より産後

2

週間サポート事業を地区 医師会が請負い実施している。当該地 域で行う産後

2

週間サポート事業手引 では、必須項目を

◯産婦に対し:問診、血圧測定、尿検 査、乳房・授乳指導、育児相談(抱っ こやおむつ替えなどの関わり方の指 導を含む)、赤ちゃんへの気持ち質問 票

◯乳児に対し:体重測定、身体チェッ ク、保健指導(スキンケアなど)

として制定している。この地域では日 本産婦人科学会発刊の「妊娠等につい て悩まれている方のための相談援助 事業関連マニュアル・平成

26

3

月」

で提示されている自己記入式質問票 の中から「赤ちゃんへの気持ち質問票」

(6)

を採り入れており、要フォロー妊婦の 抽出を試みた。

図1 赤ちゃんへの気持ち質問票

当院では泉佐野市に出生届が出てい る妊産婦の41%の分娩を取り扱っ ており、産後健診が見守りに繋げる 方法として妥当かどうかを検討した。

C.

研究結果

大阪府泉佐野市にあるりんくう総合 医療センターで集計した「赤ちゃんへ の気持ち質問票」について、平成

28

4

月~平成

29

12

月までを集計して みたところ、対象者(当院で分娩を行 い、泉佐野市含む

3

3

町に住民票を 持つもの)

775

人に対し、産後

2

週間 サポートを利用した褥婦は

542

(70%)に達した。

また、赤ちゃんへの気持ち質問票で見 守りが必要とした産婦は6名、児の体 重増加不良が認められた2名をフォ

ローしたが、そのうち2名を保健セン ターと連携して子ども家庭センター へ通告しているが、これらの2名は妊 娠中の受診コンプライアンスに異常 はなく、妊娠合併症や社会的経済的リ スクを認めなかった。

この間、児や産婦自身の有害事象は発 生していないが、事前に見守りが必要 だと考えられた対象産婦4名は受診 していなかった。

D.

考察

産後2週間健診の受診率は、70%に 達し、概ね好評であったが、育児困難 事例の発見は2名であった。また、見 守りが必要な産婦は受診しないもの がおり、従来の保健師による訪問事業 も依然重要であると考えられた。

E.

結論

育児困難事例の早期発見や産後うつ のスクリーニングには産後健診は有 用であると考えられるが、

EPDS

など の質問票による陽性的中率などのス クリーニング感度は今後評価が必要 であると考えられた。

F.健康危険情報

G.

研究発表

1.論文発表

なし

2.学会発表

なし

0 20 40 60

4

8

12

4

8

12

未受診者 受診数

(7)

H.

知的財産権の出願・登録状況(予定 を含む。)

1.特許取得:なし 2.実用新案登録:なし 3.その他:なし

I

.問題点と利点

今回のデータは

EPDS

ではなく赤ち ゃんの気持ち質問票によるものであ り、またフォロー期間が短く、中期予 後については不明である。

J

.今後の展開

このシステムを用いた

EPDS

による スクリーニングが有効かどうか、陽性 対照者(EPDS>10点)についての背 景やフォローを続けてゆきたい。

参考文献

1)

厚生労働省雇用均等・児童家庭局 長:母子保健医療対策等総合支援事業 の実施について,平成

17

8

23

日 雇児発第

0823001

号(平成

28

1

20

日改訂版)

2)

竹田 省,他:妊産婦メンタルヘル スに関する合同会議

2015

報告書,日 産婦誌

68

1

号,20

参照

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