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新規殺菌セラミックによる Legionella pneumophila 殺菌効果に及ぼす 温泉水泉質の影響

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Academic year: 2021

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(1)

Legionella

属菌は高齢者や免疫力低下をきたす

基礎疾患を有する者を中心にレジオネラ症 (肺炎)

を起こす細菌であり,主に循環式浴槽,給湯施設,

冷却塔など人工環境水系にアメーバや微細藻類と 共生して棲息している

1)

.本邦におけるレジオネ ラ感染源の一つに循環式温泉入浴施設があり

1)2)

, それらの温泉施設における

Legionella

属菌汚染状 況はこの 10 年間で僅かに減少しているがまだ約 30% 台にある

2)〜4)

.温泉水における

Legionella

属 菌汚染対策はその泉質の他に様々な問題を抱えて

い る こ と か ら 容 易 で は な い.最 近,我 々 は

Le-

gionella

属菌に対してする優れた殺菌作用を示す

新規殺菌セラミック (EcoBALL-AID,特許出願中)

を開発している

5)

.今回は当該セラミックによる

L. pneumophila

殺菌効果に及ぼす温泉水泉質の影

響について検討した.

材料と方法

新規殺菌セラミックはセラミック通商 (浜松市)

と共同で開発した.既報

5)

に従い,10 種類の主成分

(Na

2

O,SiO,FeO,CaO,Al

2

O

3

,K

2

O,MgO,

MnO,NiO,TiO)と 8 種類の微量成分(B

2

O

3

, In

2

O,P

2

O

3

,ZnO,Ag

2

O,ZrO

2

,CoO,SrO)か ら成る基材を直径約 5mm のセラミック球に付着 させるために 180℃ にて焼成させたものを使用し た.

新規殺菌セラミックによる Legionella pneumophila 殺菌効果に及ぼす 温泉水泉質の影響

1)北里大学医学部微生物・寄生虫学,2)(財)北里環境科学センター,3)北里大学医学部第 5 内科学

笹原 武志

1)

奥田 舜治

2)

菊野理津子

2)

佐藤 義則

1)

関口 朋子

1)

高山 陽子

3)

井上 松久

1)2)

(平成 16 年 9 月 21 日受付)

(平成 16 年 12 月 21 日受理)

泉質の異なる 9 種類(硫黄泉,炭酸水素塩泉 Na 型,塩化物泉,冷鉱泉,鉄泉,硫酸塩泉,単純温泉,

塩化物強塩泉,放射能泉)の温泉水を用いて新規殺菌セラミックのL. pneumophilaに対する殺菌効果を検 討し,温泉水の泉質によって当該セラミックの殺菌効果が異なることを明らかにした.即ち,処理 24 時間目において killing rate で<−2 log の殺菌効果が認められた泉質は,高いものから順に塩化物強塩 泉>単純温泉>硫黄泉>炭酸水素塩泉 Na 型であり,特に,塩化物強塩泉での生菌数は検出限界以下で あった.一方,硫酸塩泉や冷鉱泉は僅かの生菌数の減少を認めるに過ぎなかった.これらの成績から,

当該セラミックは我が国の温泉の 9 割を占める泉質(単純温泉,塩化物泉,硫黄泉,炭酸水素塩泉 Na 型)の温泉水において優れたLegionella属菌殺菌効果を発揮することが推察される.

〔感染症誌 79:157〜160,2005〕

別刷請求先:(〒228―8555)神奈川県相模原市北里 1―

15―1

北里大学医学部微生物・寄生虫学 笹原 武志

Legionella pneumophila, ceramic, hot spring waters, antimicrobial activity Key words:

157

平成17年 3 月20日

(2)

Table  1  Killing effect of the antimicrobial ceramic on L. pneumophila in hot spring waters Killing rate Hot spring water samples

48h 24h

Spring quality Region

− 2.86

− 2.26 sulpfur spring;S・Na-HCO3・SO4・Cl, pH6.7

Fukushima

− 3.69

− 2.21 hydrogencarbonate spring;Na-HCO3・SO4・Cl, pH6.8

Fukushima

− 1.77

− 0.8 chloride spring;Na・Ca-Cl, pH5.8

Tochigi

0.29

− 0.15 mineral spring;Na-HCO3・Cl, organic component, pH8.3

Tokyo

− 1.64

− 1.25 iron spring;Fe (II)-HCO3, pH6.4

Nagano

− 1.23

− 0.09 sulfate spring;Na・Ca・Mg-HCO3・SO4・Cl, pH6.9

Niigata

− 2.84

− 2.38 simple thermals;Na-HCO3・Cl, pH8.8

Mie

<− 3.91

<− 4.61 chloride spring, CO2-Na-Cl, pH7.6

Wakayama

− 2.57

− 1.85 radioactive spring;Na-HCO3・SO4・Cl, pH7.0

Tottori

<− 4.68

<− 3.8 control, deionized water, pH7.0

試験に供された温泉水は硫黄泉と炭酸水素塩泉 Na 型(福島県),塩化物泉(栃木県),冷鉱泉(東 京都),鉄泉(長野県),硫酸塩泉(新潟県),単純 温泉(三重県) ,塩化物強塩泉(和歌山県) ,放射 能泉(鳥取県)の 9 種類であり,それぞれの源泉 から直接採取し使用まで凍結保存した.

殺菌セラミックの

L. pneumophila

に対する殺菌 試験法は次のとおりに実施した.即ち,濾過滅菌 した温泉水或いはイオン交換水 400ml に

L. pneu- mophila

ATCC33153 株(血清型 I 型)を最終菌数 が約 10

5

cfu

!

ml の割になるように添加後,その 150 ml を 2 本の共栓付き三角フラスコに分注し,その 一 方 に は 殺 菌 セ ラ ミ ッ ク 20g を 加 え て experi- mental 群,他方は何も加えない control 群とし,40

℃下にてゆっくりと振盪(60rpm)処理した.処理 0,24,48 時間後の生菌数は,GVPC

α

寒天培地

(日研生物医学研究所,京都市) を用いたコロニー 形成法にて定量した.即ち,滅菌生理食塩水にて 適宜希釈された処理液の 0.1ml を当該培地に塗抹 し,37℃5 日間培養した.各時間の生菌数 (cfu

!

ml)

は 3 枚のシャーレで培養して得られたコロニー数 に 10 倍を乗じ,その平均値として算出した.結果 は以下の式から得られる殺菌効果(killing rate)と して表現した.Killing rate=log(各処理時間にお ける experimental 群の生菌数

!

各処理時間におけ る control 群の生菌数)

成績と考察

泉質の異なる 9 種類の温泉水を用いて殺菌セラ

ミックの

L. pneumophila

に対する殺菌効果を検討

した.その結果,温泉水の泉質によって殺菌効果 はかなり異なっていた(Table 1).即ち,処理 24 時間目において生菌数の減少が認められた泉質 は,高いものから順に塩化物強塩泉>単純温泉>

硫黄泉>炭酸水素塩泉 Na 型>放射能泉>鉄泉>

塩化物泉であり,その中で塩化物強塩泉,単純温 泉,硫 黄 泉,炭 酸 水 素 塩 泉 Na 型 は killing rate で<− 2 log の殺菌効果をもたらし,特に,塩化物 強塩泉は既報

5)

と同様に最も顕著な殺菌効果 (検出 限界以下の生菌数)を示した.また,処理時間が 48 時間に及ぶとこれらの温泉水における生菌数 は塩化物強塩泉を除いてさらに減少する傾向を示 した. 我が国の温泉を泉質に基づいて分類すると,

多 い も の か ら 順 に 単 純 温 泉(40%) ,塩 化 物 泉

(29%) ,硫黄泉 (11%) ,炭酸水素塩泉 Na 型 (7%)

が挙げられる

6)

.これらのことから, 当該セラミッ クは我が国の温泉の 9 割を占めるこれらの温泉水 において優れた

Legionella

属菌殺菌効果を発揮す る可能性を有することが推測される.一方,硫酸 塩泉や黒湯と呼ばれる冷鉱泉は僅かの生菌数の減 少を認めるに過ぎなかった.

当該セラミックによる

L. pneumophila

の殺菌効 果には溶出する銀イオンを含む複数種の元素イオ ンが関与していることから

5)

,殺菌効果が殆ど得 られなかった泉質の温泉水ではこれらの元素イオ ンの溶出が阻害されているものと考えられる.Lin らは銀・銅電極を用いた

L. pneumophila

の殺菌に

笹原 武志 他

158

感染症学雑誌 第79巻 第 3 号

(3)

おいて pH9.0 では銀イオンの遊離が阻害され殺菌 効果が得られないことを明らかにしている

7)

.そ こ で pH の 他 に Na

,K

,Mg

2+

,Ca

2+

,Cl

, HCO

3

−,SO

42‐

,H

2

SiCO

2

の 各 成 分 に つ い て 殺 菌 効果が得られた泉質とそうでない泉質に分けて比 較検討したが,これらの成分から当該セラミック の殺菌効果を阻害する要因になったものを見出す ことはできなかった(成績示さず).しかし,Kim ら は 銀・銅 系 セ ラ ミ ッ ク が pH5.9 よ り pH7.3〜

pH8.1 の範囲においてより強い殺菌効果をもたら すことを報告していることから

8)

,温泉水の泉質 における酸性側の pH が当該セラミックの殺菌効 果を阻害しやすい環境要因の一つになっている可 能性もあると考えられる.

奥田らは家庭用循環浴槽(24 時間風呂)にて浴 槽水の浄化用に敷設されている微生物膜濾過装置 を使用せずに垢等の汚れを取り除く特殊な繊維 フィルターを併用することで当該セラミックの優 れた殺菌効果を引き出すことができることを明ら かにしている.今後,温泉入浴施設において当該 セラミックのかかる殺菌効果を発揮させる為に は,温泉水の泉質を考慮する他にこれらの実証経 験を踏まえて循環方式に使用されている微生物膜 濾過装置の取り扱いに工夫を凝らす等さらなる詳 細な検討を行うことが必要であろう.

謝辞:本研究の一部は(社)日本銅センターおよび(財)

とうきゅう環境浄化財団からの研究助成により実施され た.実験遂行に当たり卓越した技術をもって実験補助をし

ていただいた北里環境科学センター技師の菅谷ちえ美氏,

小澤智子氏,乾香代子氏に深謝いたします.また,温泉水 の提供を頂きました関係各位に深謝いたします.

1)国立感染症研究所 感染情報センター:レジオ ネラ症 1999. 4〜2002. 12.病原体微生物検査情報 2002;24:27―35.

2)笹原武志,菊野理津子,奥田舜冶,関口朋子,佐 藤義則,高山陽子,他:温泉水におけるLegionella 属菌汚染と泉質に関する調査・研究.感染症誌 2004;78:545―53.

3)古畑勝則,原 元宣,吉田真一,福山正文:温泉 水からレジオネラ属菌の分離状況.感染症誌 2004;78:710―6.

4)厚生労働省健康局生活衛生課:入浴施設におけ る レ ジ オ ネ ラ 症 防 止 対 策 の 調 査 結 果.http:!!

www . mglw . go . jp!topics!bukyoku!kenkou! legionella!030331―1. html.

5)笹原武志,菊野理津子,曽我英久,関口朋子,佐 藤義則,高山陽子,他:水系汚染Legionella属菌に 対する感染防止対策法の確立―セラミック触媒 の殺菌作用に関する評価―.感染症誌 2004;

78:22―31.

6)斉藤幾久次郎:わが国温泉地の泉質分類表の作 成について.(財)日本健康開発財団 研究年表 XI, 1989;p. 10―4.

7)Lin YE, Vidic RD, Stout JE, Yu VL:Negative ef- fect of high pH on biocidal efficacy of copper and silver ions in controlling Legionella pneumophila. Appl Environ Microbiol 2002;68:2711―5.

8)Kim J, Cho M, Oh B, Choi S, Yoon J:Control of bacterial growth in water using synthesized inor- ganic disinfectant . Chemosphere 2004 ; 55 : 775―80.

泉質の新規セラミックの殺菌性に及ぼす影響 159

平成17年 3 月20日

(4)

Antimicrobial Ceramic for Killing

Legionella pneumophila

in Hot Spring Waters Takeshi SASAHARA

1)

, Shunji OKUDA

2)

, Ritsuko KIKUNO

2)

, Yoshinori SATOH

1)

,

Tomoko SEKIGUCHI

1)

, Yoko TAKAYAMA

3)

& Matsuhisa INOUE

1)2)

1)Department of Microbiology & Parasitology, Kitasato University School of Medicine

2)Kitasato Research Centre for Environmental Science

3)Fifth Department of Internal Medicine, Kitasato University School of Medicine

Killing of

Legionella pneumophila

by an antimicrobial ceramic was evaluated during culture in nine kinds of hot spring water at 40℃. After 24 hours, the efficacy against

L. pneumophila

varied, de- pended on water quality. The strongest antibacterial effect was seen in chloride hot spring water from Wakayama and in deionized water. In four hot spring water samples(sulfur and hydrogen car- bonate springs from Fukushima, simple thermals from Mie, and radioactive spring from Tottori) , the decrease was<−2 log cfu after 48 hours. These results suggest that the antimicrobial ceramic is able to eradicate

Legionella

from hot spring waters.

笹原 武志 他 160

感染症学雑誌 第79巻 第 3 号

Table  1  Killing effect of the antimicrobial ceramic on L. pneumophila in hot spring waters Killing rateHot spring water samples 48h24hSpring qualityRegion − 2.86− 2.26sulpfur spring;S・Na-HCO3・SO4・Cl, pH6.7Fukushima − 3.69− 2.21hydrogencarbonate spring;Na

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