平成20年度 原子核物理学 1
原子核物理学
4. 原子核の壊変(崩壊)
安定な原子核(1)
理科年表には,自然界に存在する
287
種の安定同位体があげられている 質量数が等しい原子核の中で最も安定な原子核質量数
A = 1 – 209
(1H
から 209Bi
まで) の207
核種A = 5, 8
には安定な原子核がないベータ安定線
232
Th
,234,235,238U
平成20年度 原子核物理学 3
安定な原子核(2)
放射性同位体(次の3グループに分類される)
1.
長寿命の放射性元素を親とする放射壊変系列に属す核種2.
放射壊変系列に属さない長寿命の核種3.
宇宙線によって生成される核種3
H,
7Be,
10Be,
14C,
22Na,
32P,
35S,
36Cl
などz
二重ベータ崩壊する核種原子核の崩壊様式
1.
核子放出(強い相互作用)中性子(陽子)が過剰すぎると中性子(陽子)を放出する
2.
α崩壊(強い相互作用)α粒子を放出して,質量数が4小さい核種に変わる
3.
β崩壊(弱い相互作用)安定でない原子核の多くはβ崩壊して,
質量数が等しい別の核種に変わる
4.
γ崩壊(電磁相互作用)核種は変わらない(励起状態からエネルギーの低い状態へ)
5.
自発的核分裂(強い相互作用)6.
二重ベータ(ββ)崩壊(弱い相互作用)安定でないが,β崩壊がエネルギー的に許されない原子核の崩壊
平成20年度 原子核物理学 5
1.核子放出
中性子分離エネルギー :1個(2個)の中性子を原子核から取り出すのに必要なエネルギー
中性子分離エネルギーが正である原子核は安定,負である原子核は不安定
陽子分離エネルギー :1個(2個)の陽子を原子核から取り出すのに必要なエネルギー
陽子分離エネルギーが正である原子核は安定,負である原子核は不安定
中性子(陽子)ドリップライン中性子(陽子)ドリップライン中性子(陽子)分離エネルギーが
0
になる境界の原子核を結んだ線フッ素同位体の陽子・中性子分離エネルギー
核子放出が,核図表の上で,原子核の存在範囲の左端と右端の境界を与える
平成20年度 原子核物理学 7
2.α崩壊
α粒子を放出して崩壊するモード
α粒子の分離エネルギーα粒子の結合エネルギー
分光学的因子(spectroscopic
factor
)と
Coulomb 障壁によって,崩壊寿
命が極めて長くなることがしばしば ある3.β崩壊
3種類の崩壊様式 β- 崩壊
β+ 崩壊
電子捕獲
Q
値(Q value
)
β- 崩壊
β+ 崩壊
電子捕獲
例平成20年度 原子核物理学 9
ベータ崩壊の分類
許容遷移(
Fermi, Gamow-Teller
)の場合は電子とニュートリノの位相空間の積分で、
Coulomb
ポテンシャルの中の電子の波動関数を用いる。
ベータ崩壊の例
平成20年度 原子核物理学 11
4.自発的核分裂
大きな質量数をもつ原子核が,2つの質量数が小さい原子核に割れる崩壊 様式
一般に非対称な分裂片に割れる Coulomb
障壁の効果が大きく,長い寿命をもつことが多い5.二重ベータ崩壊
弱い相互作用の2次の過程
下の例(質量数がA = 100
の原子核のエネルギー)に示すように,エネルギーが最も低くないが,通常のβ崩壊ができない原子核(100
Mo
)の 崩壊様式
最も短い半減期が平成20年度 原子核物理学 13
平均寿命と半減期
単位時間に崩壊する個数は,その時刻にある個数に比例する
実験則
崩壊様式によらない
方程式の解は
平均寿命(mean life
) 個数が1/e
になる時間 半減期(half-life
) 個数が1/2
になる時間崩壊率,崩壊幅
崩壊率(decay rate
) :平均寿命の逆数
崩壊幅(decay width
)
原子核のある状態が有限の寿命をもつとき,その状態のエネルギーは虚部をもつといえる:
波動関数の時間発展確率(波動関数の絶対値の2乗)の時間変化
平成20年度 原子核物理学 15
2体崩壊 Q
値:内部励起がないとき,終状態の運動エネルギーの和
終状態にある2つの粒子の運動 エネルギーを測定すると,その和 は始状態の粒子の崩壊寿命の幅 をもつ半値幅
FWHM (Full Width at Half Maximum)
原子核が存在するとは
寿命がある程度長くないと,存在が確認できない ある程度とはどのくらいか?{
光が原子核を通過するのに要する時間程度:原子核の大きさを