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針刺し事故防止に向けて 東京女子医科大学感染対策部感染症科

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Academic year: 2021

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はじめに

最近,病院におけるリスクマネージメントの必 要性が強調されている.病院感染対策を行うこと は病院におけるリスクマネージメントの一環と言 える.病院感染対策は患者を感染から守るととも に医療従事者を感染から守るとの立場で遂行され るが,針刺し防止は,主に後者を目的として行わ れる対策である.針刺しは自己完結的であること が多いので,自分の不注意として暗黙に処理され がちで,フィードバックがかかりにくく,実際の 報告件数は少なくなる傾向がある.米国において は毎年 60 万から 80 万件の針刺しの発生が推計さ れている.我が国でも「HIV 感染症に関する臨床 研究」研究班(主任研究者:木村哲)の報告では 20〜25 件!100 床と推計しており,我が国で報告さ れている病床数約 160 万床から単純に推計する と,米国の半数の 30〜40 万件の発生があるのでは ないかと推定される.針刺しの実体,背景を明ら かにして,発生防止に向けての適切な対応をとる ことは,労働衛生上は勿論,リスクマネージメン トの観点からも極めて重要な問題である.そのた め今回は,ICD が知っておくべき針刺し防止対策 の最新の知識についての呈示がなされた.

針刺し発生状況

1996〜1998 年の 3 年間の HIV 研究班によるエ イズ拠点病院を対象とした調査では,針刺しが起 きたのは,総計 11,798 件であり,100 床あたり 4 件 であった.汚染源となった患者の感染症は HCV が 7,708 件,HBV が 1,862 件,HIV が 88 件であり,

明らかな発症は HCV の 28 件だけであったとさ れる.

発生状況では,リキャップ時が 26%,鋭利器材 使用中が 22%,使用後廃棄までが 22% あり,採血 後のリキャップ時が最も多く,手術や採血中,ま

たは採血直後,その後の廃棄なでの間の順である ことが多い.欧米においてはリキャップによる針 刺しは数%と低くなっており,リキャップをしな いで廃棄できる専用廃棄ボックスを使用すること やリキャップはしないという教育を徹底すること によりわが国でも発生数を減少させうる部分と思 われる.しかし,リキャップを行わないように指 導を行っても,なかなかリキャップによる針刺し の減少を認めていないのが現状であり,さらに教 育を徹底する必要性がある.

針刺し対策

針刺し防止対策は発生前の防止対策と発生後の 事後対策に大きく分けられる.針刺しのサーベイ ランスは事後の問題を扱ってはいるが,その内容 を分析することにより,針刺しの防止に役立てる ことができるので,サーベイランスは事前対策の 一種でもある.現在は,EPINet の導入により,多 施設間での集計が行われ,詳細な解析が可能と なっているが,報告率のいっそうの向上が急務で ある.これらの解析結果は事前対策としては最も 重要である医療従事者への教育へも反映されるの で,その推進は極めて重要と言える.

事前の対策としては,すでに示した廃棄専用容 器の設置の他に,針刺し防御装置つき針器材の普 及が今後の大きな課題である.米国では 1998 年に 初めてカリフォルニア州で「針刺し事故防止法」 制定されたが,2000 年 11 月 6 日にはクリントン 大統領が署名して「針刺し事故防止法」は連邦法 に格上げされ,安全器材の使用,針刺し報告と予 防計画の作成が義務づけられている.事前対策へ の設備や器材の投資は,米国の流れから見ても医 療経済上,また労働衛生の考え方がますます必要 となってきており,それらも考慮して検討する必 要がある.さらに事後の対策では,米国 CDC のガ

針刺し事故防止に向けて

東京女子医科大学感染対策部感染症科

戸 塚 恭 一

特別寄稿(第76回日本感染症学会総会/第5ICD講習会)

849

平成14年10月20日

(2)

イドラインの改訂が行われ,予防投与に関して新 たな内容が示されている.

おわりに

この ICD 講習会ではわが国における針刺しの

現状と問題点が整理され,米国における対策など から,わが国においても安全器材の導入の必要性 などの今後の方向性が示された.

戸塚 恭一 850

感染症学雑誌 第76巻 第10号

参照

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