小学校教材「おもりで動くおもちゃ」について
著者 松村 佳子, 池尾 和子
雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告
巻 4
ページ 15‑24
発行年 1981‑03‑10
その他のタイトル Toys Moved by the Force of Weight URL http://hdl.handle.net/10105/4642
小学校教材「おもりで動くおもちゃ」について
松村佳子(物理教室)・池尾和 子個科教育教室)
Toys Moved by the Force of Weight
Keiko Matsumura {Department of Physics) and Ka z uko I keo (Department of Science Education)
Abstract
Starting from this school year, 1980, the course of study at elementary school is changed.
A new unit, "toy which are moved by the force of weight" opens at the second grade of the elementary school. The Moving Toys are good educational materials but they have a lot of difficult problems. To solve them, we tried to make the toys such as WAKOROGASHI (Rotat‑
ing Rings) and carried out some workshops with the toys. Our students also tried to make the toys and played with them for preparing the educational subjects. They found out some rules of physical schemes. At Higashiobase Elementary School in Osaka, we had a science class about
the moving toys and let the children understand some effects of frictions.
Keywords:
Science Education Moving Toys
I.はじめに
現代の子供たちの問にかなりの理科嫌いが目立っているといわれる。その原因としては、こ れまでの学習指導要領や教科書を見ると、理科は実験・観察が少なく、多くの内容を分析的に 扱って理論が優先していたからだと考えられる。東京都内の中学生を対象にした理科学習にお ける関心度調査から、三輪重夫氏は「理科嫌いの原因は、理科の学習において実験・観察が全 くないか、足りないということが大きな要素になる」と指摘しているlo)さらに彼は、 「小学校.
中学校での従来の理科の学習における実験・観察の目的は、教えたいと思う内容を実証すると いう要素が強かった。小・中学校での理科学習指導の目的は、ある実験・観察を行って、だか
らこの法則が成り立つというような持っていき方よりはむしろ、その実験・観察を行うことに より、子供たちに今探求しようとしている自然現象に親近感を持たせる目的の方がより大切で はないかと思う。」と述べている。特に小学校低学年の子供たちの認識過程は、自然の事物を客 観的にとらえたり理論的に考えたりする段階には至っていない。このような子供たちは、遊び を通して自然の事物・現象に直接働きかけ、身体を動かしながら考え、学習していくのであ
る。
今年度より実施されている新学習指導要領では、小学1年生で、、動くおもちゃ′′ 、 2年生で
、、おもりで動くおもちゃ′′などの製作数材がとりあげられ、子供たちが具体物を製作しそれで 遊びながら学んでいくということが重視されるようになった。学習指導要領には、第2学年の 内容の1つに「おもりで動くおもちゃを工夫して作ったり動かしたりさせながら、おもりの重 さ、付け方などによって、動きに違いがあることに気付かせる。」というのがある。現行の2年 生の教科書でとりあげられている教材には表1に示すようなものがある。このうち「やじろべえ」
は従来から扱かわれていた教材であるが、他の大部分は新しく入ってきたものである。
表1現行小学校理科教科書にみられる「おもりでうどくおもちゃ」
(分類のし方は文献㈲による)
お も り う で こ く お
均 衡 型 移 動 型 回 転 型
振 動 型
支 点 固定 型
支 点 転 回 型
車 型 つな
わ 落 下 型 は
ず 上 下 振 り も
ち や 出
移動 型 た
り型
み
車 振 動 型 子 型 モ や シ ゆ お か で コ じ ロ ケ せ ら メ ヨ 振 じふ
l ビ ル
じ 】 ソ
1 り か
」
き ん か ん え ぐ しり
ロ ど [ [ ん つ リ 】 ヨ 1
り ど り
版 ろ こあ ころ コ う フ
ウ ブ
ル ぶ か ラ 1 子 うこ
社 ベ ぼが が ロ し
エ 力 う さ ン コ 人 し え しり し 車 や イ 1 き ん ド 1 形 や
東 京 書.籍 ○ ○ ○ ○ ○
大 日 本 図 書 ○ ○ ○ ○ ○
教 育 出 版 ○ ○ ○
○ ○ ○ ○
啓 林 館 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
学 校 図 書 ○ ○ ○ ○
信 濃 出 版 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
「かんころがし」を例にとってみると、教科書では、
「おもりをつけて、ころがるおもちゃをっくってみましょう。」
「とおくまでころがるようにするには、おもりをどのようにつければよいでしょうか。」
「おもりのおもさや、おもりをつけるところをかえて、うどかしてみましょう。」
というような扱かい方をしている。
子供たちはいろいろな輪を作って、どんな輪が遠くまで転がるかお互いに競争して遊ぶだろ う。おもりの数や付け方を変えたりしなから遊んでいるうちに、ある規則性を兄い出すことも ある。そしてどのように転がしてもある決まった位置に止まるおもちゃ(おきあがりこぼし)
や、振り子やシーソー、やじろべえなどへと輪を改造して遊びを発展させてゆくかもしれない。
これらの子供の遊びを観察しながら、その中に存在する規則性に気づかせる様に適当なガイダ ンスを与えなければならない。
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そこで、缶ころがし(ころがる輪)に注目して、どんな輪が遠くまで転がるのかという基礎 実験を行ってみた。また、おもりで動くおもちゃを大学生の、、教材研究′′の題材としてとりあ げたので、それらについて述べる。さらに小学校の現場での授業の結果と大学における学生の 教材研究実験の結果とを比較して、それらの中にある問題点についても述べる。
II.かんころがLについての実験
缶(輪)転がしをするときに、どんなものを作ればより遠くまで転がるであろうか。ここで、
輪転がしの実験を試みる。輪を転がし始める時、輪に働く力が一定になるように注意しなけれ ばならないので、図1に示すように、斜面上を転落させて着地点から床の上をどれだけ転がっ て正まるかを測る。
斜面と転がる輪との問に摩擦がなく、空気抵 抗の影響等が無視できる程度なら、線加速度は 輪の直径・質量の違いには関係なくどれでも同 じになる。高さhの所から転がり始めた輪は、
着地ノ軸こ来た時、初めに持っていた位置エネル ギーが線速度Vの運動エネルギーに変わる。こ
のエネルギーで床の摩擦力に抗して輪を着地点 図1 輸ころがし からの到達距離Lだけ転がすという仕事をする
と考えると、次のような関係になる。
(位置エネルギーー)=(床の摩擦力)×(到達距離)。
輪の質量をm、床の摩擦力をFで表わすと、次の式が成立する。
mgh=FXL
F=mgh/L
実際の測定では、厚さ約1.5cm、良さ60cm、幅約25cmの板の下に高さ7cmの木片を置いて斜面 を作り、着地点ではプラスチックの下敷を使っ
て落差を和らげる工夫をした。塩化ビニルのパ イプ(厚さ約3mm)を幅3cmに切って作った輪 を板の上の定点から転がし落して、着地点から 輪が正まる所までの距離を測定する。床と輪と の間には転がり摩擦力が働く。その効果を見る ために、輪の直径の違いによる到達距離の変化 を測定した。また輪の質量の違いによる到達距 離の違いも測定した。輪に働く床の摩擦力は床 の条件が変ると違ってくるので、その効果を見 るために、毛布の上、布張りの床の上、リノリ ウムの床の上、板張りの床の上でそれぞれ実験 を試みた。輪の質量は、輪の内径に等しく切っ た竹ひごの中央にゴム粘土を付けたものを輪の 内側に固定して、ゴム粘土の量を加滅すること
10
9
8
盲7
J 6
5
4
3
/・!・/
毛布
0 5〆(cm)10 15
図2 直径のちがいによる到達距離の変化
によって調整した。
図2に質量を一定にした時の輪の直径の違いによる到達距離の変化を示す。どの床の上でも 直径が大きい輪程遠くまで転がることより、ころがり摩擦は直径が大きくなる程減少すること がわかる。図3に直径を一定にして、輪の質量の変化に対する到達距離の違いを示す。これよ り、輪との摩擦が大きいと患われる床の上では、質量が増すと到達距離は短かくなり、摩擦の 小さい床の上では、重い輪ほど遠くまで転がることがわかる。
摩擦力は、図4に示すように質量に比例する。
直線の傾きの違いが、床と輪との問の摩擦係数 の違いに対応するとみていいであろう。これら の結果から、直径が大きくて重い輪程遠くまで 転がると言える。毛布のように抵抗の大きい床 の上では重い輪程到達距離は減少するが、それ ほど影響されないとみてもよい。
おもりを輪の中心からずれた位置につけた輪 や、いくつかのおもりをっけた輪は、スムーズ には回転せずに複雑な動きを示すので、それら についての議論は難かしくなるためここでは触 れない。しかし、おもりの数やつけ方の変化に よる動きの違いについては、子供たちの興味を 引くと思われる。
III.「おもりで動くおもちゃ」
の教材研究
A)大学生の考える「おもりで動くおもちゃ」
現在の大学生は小学生時代には1年に「砂 車」2年に「やじろべえ」、5年生で「て
︵ j
= J
50 100 W(g)150 200
図3 重さと到達距離(板張りとリノリウム の床の上に対するLはたて軸の右側の 目盛で示す)
こ」などの力学的なおもちゃで遊んできた 云 筈である。「砂車」はポテンシャルエネル ギーを力学的仕事に変換するという基本的 な法則を発見させるための装置として、ま た「てこ」は力のモーメントの概念を理解
させるための実験として学習してきたと思 われる吾)
これら力学的なおもちゃを経験した大学 生に、回転について質問した。1つの組に は、生卵とゆで卵を見せ、割らないでどちら
が生卵かゆで卵かを判定する方法があるかと尋ねた。他の組には生卵とゆで卵の見わけ方 としてそれらをこまの様に回転させるとよいと予め教えた。それを理解させるために学生の 前で実際に回転させて見せた。生卵は内部摩擦のため回転しにくく、ゆで卵はよく回転した。
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そのあと次のことを予測させた。生卵とゆで卵を斜面から同時に転がり落したらどちら が早く転がり落ちるか、またその理由も推測して考えさせた。生卵の回転を見て考えた組と 見ない組と計67名の学生の中で「生卵がゆで卵より早く転げ落ちる」と正解した学生は3 人にすぎなかった。殆んどの学生は、
ゆで卵が早く転がり落ちると考え、そ の理由としてゆで卵は垂心が固定して いるからと書いていた。実際は、ゆで 卵の場合には重心の運動エネルギーに 必然的に結びついた回転の運動エネル ギーが必要で、位置エネルギーがこの 両方に分割されて遅くなるが、生卵で は中味の回転は殻の回転よりも少ない から大方の位置エネルギーが重心運動 に変るので早く転げ落ちる。現在の大 学生は回転体についてはこの程度の理 解しか示さなかった。
将来小学校の教師を希望する108名の 学生に各自思い思いの「おもりで動く おもちゃ」を自作させた。−写真1。
6社出版の教科書にみられるおもちゃを表1の様に分類したので学生の自作のおもちゃ も同様に分類し表2に示す。
表2 大学生が製作した「おもりで動くおもちゃ」
お 与 を・
お も ち ゃ
均 衡 型 移 動 1 型 回 転 型 振 動 型
支 点 固 定 型 支 点 移 動 型
転 回 型
車 型 つ な わ た 型 り
落 下 型 は ず み 車
そ の 他
上 下 振 動 型
振 り 子 型
落
下
型 モ
l ビ 十し
や シ
l ソ 1
ゆ り か
こ
お か で
か ん え ぐ し り
コ じ ロ ケ せ ら ゴ メ き
つ つ き
ヨ l ヨ l
振 振
じ き ん ロ ど l l ん つ 1 リ り り
ろ こ あ こ
ろ コ う フ
ウ フ
ル ぶ か ラ l 子 子
ベ ば が が ロ し エ カ う さ ン 人 動自
え し り し 車 や イ l き ん ド 形 車
人 数 0 1 3 2 2 1 6 1 2 6 0 8 6 3 1 3 2 2 1 1 1 1 1
% 0 12 .0 1 .9 1 .9 14 .8 1 1 .1 5 .6 0 7 .4 5 .6 2 8 .7 2 .8 1 .9 1 .9 0 .9 0 .9 0 .9 0 .9 0 .9
108人中
学生自作め「おもりで動くおもちゃ」
の中の3つを紹介する。−写真2 A−1
イ)卵のおきあがりこぼし(図5、イ)
作り方:卵の中味をぬき鉄粒と蝋の切片を 計量しながら入れ、重さの異った3種類 の卵を用意する。その後卵を熱湯に浸し 蝋をよく融かした後砂の上に垂直に立て て除々に冷やす。
あそび方:それぞれのおきあがりこぼしを
イ)卵のおきあがりこぼし
(甘〕
ロ)やしろべえ風向計
ハ)ぐるぐる車
床に平行に90度倒し、直立にもどるまで の時間を測る。
結果:重い卵は全体の質量も大きく重心の位置も低いので復元力が大きく垂直の位置にも どるのが早く、軽いものは全体の質量も小さく重心が前者に比べて高いので復元力が小 さく垂直の位置にもどるのが遅い。実測の結果は下の表に示す。
ロ)やじろべえ風向計(図5、ロ)
やじろべえは色々あったが生活に直接役立 って遊べるものは少なかった。この風向計 は感度も良く生活に関係のあるものとして 取り上げた。
作り方:材料−マッチ棒、荷札、虫ピン、
角材、粘土、木板
i)荷札を切って羽根の部分を作る。
ii)マッチ棒の後方に切りこみを入れ、
そこに羽根を差し込む。
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おきあがりこぼしの垂直に もどるまでの時間
重 さ
体 積
A B C
8 .4 9 11 .2 9_ 24 g_
60 cm3 6 0cm3 5 7cm3
1 回 28 秒 2 5 秒 13 秒
2 回 29 秒 25 秒 15 秒
3 回 3 1秒 26 秒 15秒
iii)虫ピンをマッチ棒の中央に差し込む。
iv)荷札についている細い針金を適当な長さに切り、マッチ棒に巻き付けてやじろべえ の腕とする。
Ⅴ)粘土でおもりを作り針金の先に吊す。
vi)角材を板につけ土台を作る。
vii)角材の上にやじろべえ風向計を置きっり合いのとれる様調整する。
遊び方:扇風機で風を送り風向計が風の方向を示すことを最初に確かめる。その後、やじ ろべえ風向計より脊の高い箱の前、横、上さらに箱の後側に風向計を置き変える。置き 場所の違いにより風の向きが変化するか調べながら遊ぶ。
結果:障害物のないところは風の向きは変わらないが障害物があると風のうずが出来るこ とが風向計の回転することよりわかる。
ハ)ぐるぐる車又はせんぷうき(図5、ハ)
作り方:材料一円板用ボール紙、ストロー、竹ひご、おもり3個以上(重さの異るもの)、
たこ糸
i)ボール紙を円形に切り竹ひごをその中央に通す。
ii)竹ひごにストローをかぶせ円形ボール紙と反対側の竹ひごの端にたこ糸をつけ、その 糸の端におもりを付ける。
遊び方:糸を竹ひごに巻き付けおもりをっりさげると竹ひこ、が回転し同時に閂板も回転す る。おもりの重さを変えて同様に円板を回転させる。円板に放射状に色々の採色をほど こしておくと回転するとき、その色の変化が楽しめる。
結果:学生のリポートによると おもりが落ちるという落下運動が竹ひごに巻き付けられ た糸によって回転運動を起こさせることがわかる。おもりの重さを大きくしても円板の 回転の速さは変らなかった。それは重さが変っても物体の落下速度は変わらないためで ある※,,と述べていた。
※ 学生がこのぐるぐる卓でおもりの重さを変えて遊んだところ観察の結果、円板の回 転数は変わらなかったと報告している。
A−2 「おもりで動くおもちゃ」の教材化
イ)の 卵のおきあがりこぼし やロ)の やじろべえ風向計 の遊びについては、学生の 報告を発展させることによってそれらを教材として利用することは出来る。一方ハ)の ぐ
るぐる車 はそのまま教材として利用することは出来ない。
ぐるぐる車についての運動方程式を考える。
Mg=Ma+Iw+K(M+M )gw …‥・・……=(1)
但し、 M:おもりの質量 M′:円板と軸の質量の和
g:重力の加速度 a:おもりの加速率 W:軸の回転角速度
W:一票−、軸の回転角加速度 I:円板と軸の慣性モーメント K:摩擦係数を含む定数 とする。
重りの質量が異なれば重りの下向きの仕事は夫々異る。従っておもりの落下運動が竹ひこ を通じて円板の回転運動に変わるとすれば、おもりが重くなると円板の回転数は増える筈で
ある。しかるに円板の回転数がかわらないとすれば他に原因がある筈である。構造上、軸受 と軸との摩擦係数を含むKが軸のたわみのため、おもりの重さが増すと共に大きく増加する と考えられる。そのためMgの増加する分、Kの増加で見かけ上相殺されると考えられる。
この様に 遊びの結果 を再検討や確認をせず、そのままうのみにして言葉に表わすことが 不適当なものもある。
手作りのおもちゃの中から3個の例を取上げたが、材料が入手しやすく、安価で、作り方 も比較的やさしく、しかも子供が遊んで楽しいと思えるものはそんなに数多くはなかった。
教材としての「おもちゃ」は、ただ遊ぶだけでなく、あそび方が工夫でき、条件を変えるこ とにより何かがみつけられることが望ましい。
「おもりで動く」ということは、摩擦の考え方を抜きにしては考えられない。現在の学生 では、物理Iの履習者のみが摩擦についてのいくらかの知識をもっている。物理Iの履習者 の少ない現状で今後摩擦についての研究が望まれる。
B)「おもりで動くおもちゃ」の小学校での研究授業 大阪市東小橋小学校
小学校3年生 1級26人(男13人 女13人)
本年度より施行の単元でしかも2年生の後半の単元のため小学校3年生に授業を行った。
級担任 岩橋恭子先生(奈良教育大学・理科教育研究全会員)
まず授業の前に用意した輪を配布した。塩化ビニールの直径の異なる円筒3種類をそれぞ れ幅3cmに切り、輪ころがしの輪を準備した。輪の表面にそれぞれの輪の重さを記入した。
この授業の前週の授業では、理科教室の床の上で上記の輪で輪ころかしをして遊んだら直 径の大きい重い輪が直径の小さい軽い輪より遠くまで転がるということを児童は理解してい
た。
扱この授業の目的は、IIの項で輪ころがし遊びは床の性質の違いにより重い輪が軽い輪よ り遠くまで転がるとは限らないことがわかったが、実際に小学校の児童に遊びを通してそれ を納得させられるかを確かめるために行った。
級を3つグループに分け、それぞれのグループには約80g_の輪のグループ、約40g_の輪の グループ及び約20且の輪のグループとして一種類の重さの輪のみを持たせた。
理科教室は板張りの床で図書室はパンチカーペットの様なじゅうたん張りであったので授 業の前半は理科教室で、後半は図書室で授業を行った。
理科教室での輪ころがLでは斜面を転がり落ちたあと、重い輪が遠くまで転がることは、
すでに前回の授業で知っていたが、もう一度同じ輪で、転がる距離を測った。奇数回の測定 のあと図書室へ移動し、同じ斜面を使って輪ころがLを行った。どのグループも、理科教室 の床板の上よりも図書室のじゅうたんの床上での輪の転がる距離が小さいことを各自のメモ より気づいた。そのあとすぐにその記録距離と理由を考えて紙に書かせた。児童は じゅう たんの床の上では、板の上より、転がる距離が小さかった。その理由は、じゅうたんの上は 表面がでこぼこしていてすすみにくかったからだと思う とほとんど全員が、摩擦が原因に なっていると考えた。
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この授業を通じて児童に床の材質が異ると輪の転がる距離が異るという事実は理解させら れた。また摩擦という現象についても気づかせられた。
床の材質をかえての研究授業は、児童に輪ころがLがおもしろいという興味をもたせるの には、大いに効果があった。この授業のあと児童は 次にどんな床の上で実験するんですか と、各自くちぐちにいいながらもう一度この授業をしてほしいと言っていた。
Ⅳ.考察および今後の課題
小学校で学習する力学教材を大別すると、1つは力のつり合いに関するものであり、他は仕 事やエネルギーに関するものとしての展開に分けられると考えられる。表3に示すように、2 年生で学習する「おもりで動くおもちゃ」は両者の展開に関連するものを含む重要な位置にあ る。「おもりで動くおもちゃ」を使って学習する時、どのような順序で扱えば小学校高学年に なって、あるいは中学や高校に進んでから学習する事柄への発展的な理解の基礎ができるかを考 えねばならない。また前述の小学校の「輪ころがし」の授業で、教室の床の上と図書室の床の 上で輪の転がる距離が違うのは床の材質の違いによることを全部の子供が気付いている。この ように子供の観察力を充分引き出させるt夫が必要である。これまでに「やじろべえ」や「か んころがし」を扱かった学習指導に関する報告3,4)がいくつかあるが、それらの中には生活との 関わり合いについては触れていない。教科書の内容と我々の生活の中に見られる道具や身の
表3 小学校における力学教材の展開 学
年 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年
教
材
ゴ ム の お も ち ゃ
か ざ わ か ざ ぐるま
「  ̄お もぉりもでちうやご く ̄「
l l l; か ん こ ろ が し ,
: で ん ぐ り が え L
i コ ロ 了 口 率 −
: ゆ りか ご ・シーソー :
! お きあカ1りこぼ し i 仁 ニ Z ベ j ‡り 。 人 形i
; ふ りこ 自動 車 ! 1 1 l l l l
せ ん ぷ う き −
てんぴん・ て こ
風 車
まわりの現象なりとの関連についても触れ、理科と生活との関わり合いを忘れないような学習 でありたい。また、図工教材の中にもおもちゃ作りが扱われている。共に製作活動という点て 共通する部分はあるが教科問のつながりは殆んどないと言ってよい。更に理科と生活との関連 をとり入れ、理科がもっと親しみの持てる総合的な教科として扱われるなら、理科嫌いもなく なるのではないかと期待される。
また一方、 重さ とか 力 のような目で見ることのできないものの概念を子供たちに理 解させることは難かしい。小学校では、 固体の変形と重さ 、 力と重さ 、 溶解と重さ
水等に浮いているときの重さ 、 熱による月初長と重さ, などを学習するようになっている。
小学校の中学年段階までは、体積の大きい物は重く、小さな物、薄くて軽い物などには重さが ないと考え、そのようなイメージで物質の重さを判断する傾向が認められる吾)小学生では重さ
と体積の概念の分離が非常に困難である。「重さ」という概念を 重い 、 軽い という生 活経験上の感覚を前提にして学習するものなら、見えない物または存在に気づかない物には重 さがないと子供が考えるのも当然と思われる。従って、二酸化炭素や空気に重さがあることを 理解させるのはかなり困難なことであるが、低学年の頃からよく親しみ経験的に重さを確認で きる粘土や水などに重さがあることを理解させるのは容易である。これらのことを考えると、
「おもりで動くおもちゃ」を扱かう時に、おもりとして粘土だけではなく、ビー玉、パチンコ 玉、アルミ箔、綿、紙など多くの素材を使うことが望ましい。そうすることによって子供の重 さ観や重さに対するイメージを豊かにすることが可能になる。
今後はこれらのことを考えた上で、実際に数多くの現場での子供たちの活動を見ながら、よ り良い授業展開、教材研究ができるよう考えてゆきたい。
本稿をまとめるに際して、ど親切など助言をいただいた本学名誉教授の岡崎良吉先生に深く 感謝いたします。授業の場を提供された東小橋小学校の岩橋恭子先生、実験に協力された辻佐 代子、大西久子、辻貞子、広川千子、福田倫子、宇田泰子諸氏に感謝します。
参考文献
1)三輪重夫:理科嫌いをなくす学習指導について−理科嫌いの要因一、東京学芸大学附属中学校研究紀要、
第19号.
2)石黒浩三:物理教育に望むこと、科学教育研究、Vol.4(1980)No.3.
3)奈良教育大学附属小学校:価値ある教材とその授業(1969),
米田秀俊:低学年理科における製作教材の開発と実践(I):教育二L学センター研究報告、第3号(1980),
姫路市立大津茂小学校:楽しく行動する理科学習−2年 おもりでうどくおもちゃ−、初等理科教育 VoI.
14(1980)No.9.
4)小林晶子他:子どもを生かす学習指導−おもりで動くおもちゃ一、西宮市立教育研究所研究紀要174
(1978).
5)関谷秀行他:小学生の「重さ観」、第30回日本理科教育学会研究発表資料(1980).
6)田中義朗、浅井清:教材開発に関する一考察一2年「おもりでうどくおもちゃ」について−、第83匝「全 国理科教育センター研究協議会資料.
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