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[資料紹介] アメリカの自動車保険証券について

その他のタイトル [Materials] On the Family Automobile Policy

著者 亀井 利明

雑誌名 關西大學商學論集

巻 15

号 1

ページ 62‑81

発行年 1970‑04‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00021188

(2)

〔資料紹介〕

アメリカの自動車保険証券について

亀 井 利 明

は し が き

現在いずれの国においても自動車保険問題は深刻な社会問題化している。

世界の自動車保有量の約半分,8,370万台を有するアメリカにおいても重大な 社会問題となっている。すなわち,保険事故の増加,一件当たりの保険金の 高騰からくる積年の赤字に保険者は悩まされており,他方被保険者は保険料 の上昇,保険金支払の遅延,付保困難に多大の不満を持っている。もはや現 行の過失責任主義を前提とする制度では根本的な解決にならぬという意見が 続出し,無過失責任主義を導入した改革案がいろいろ発表されている。その 中で最も有名なものほ周知のごとく, Keeton and  0onnell planである。

これらの改革案はいずれも,一部の保険者,弁護士の自己本位からする反対 により,いずれも実現するに至っていない。

ところでアメリカ自動車保険の危機の分析については別稿を用意している ので,本稿はアメリカの自動車保険証券の内容がどのようなものであるかを 簡単に解説することにしよう。何分ぼう大な規定と意表外の内容を有するの で説明は単なる要約に止めた。

アメリカの自動車保険証券ほ Bureau Insurers'Policy Independent Insurers'Policyに分かれ,前者はNationalBureau of Casualty Underwriters  および Mutual Insurance  Rating  Bureauによって制定された書式であり,

後者はこれらの Bureauに加盟していない会社が独自に制定したものである。、

しかし,両者間にほ大差がない。最も一般に使用されるものほ営業車につい ては BasicAutomobile Policy (BAP)であり,個人用車についてほ Family Automobile Policy (FAP)である。本稿は後者の解説である。

(3)

FAPは五つの部門に分かれている。すなわち,責任保険 (Liability),医 療費給付 (Expenses for  Medical Services),無保険運転者補償 (Protection against Uninsured Motorists),車体保険(PhysicalDamage),契約条件(Con‑

dition)がそれである。

I 責 任 保 険 1.保 険 給 付

この保険証券は所有自動車 (owned automobile) ま た は 非 所 有 自 動 車 (non‑owned  automobile)の所有 (ownership),保存 (maintenance)または 使用 (use)から生じる身体傷害,疾病または廃疾 (bodily injury,  sickness  or  disease),  もしくは財産の損傷または破壊 (injury to  or  destruction of  property)により,被保険者 (insured)が損害賠償をしなければならない法 的責任を負ったとき,その金額を被保険者に支払うことを約束する。これが 第一部責任保険の第1条危険約款の前段,すなわち保険給付に関する主たる 規定の要旨である。この規定はいちぢるしくアメリカ的で,説明すべき多く の問題点を含んでいる。

(1) 被 保 険 者 (insured)

この用語は第4条の定義によれば,第3条の被保険者群 (personsinsured)  に記述された人または機関を意味する。この被保険者群というのが,また複 雑な内容を有している。すなわち,①所有自動車に関してほ,(a)記名被保険 (namedinsured)および同一世帯の居住者,(b)記名被保険者の承諾の下に その自動車を使用するその他の者(ただし,かれの現実の運転またはかれの

(1) 

運転手の現実の使用がかかる承諾の範囲内であること),(c)上記二種類の被保 険者の行為またほ過失(actor omission)により責任を負わされるその他の者 または機関,②非所有自動車に関しては,(d)記名被保険者,(e)記名被保険者

(2) 

と同一世帯に属する親族 (relative),ただし, これは自家用乗用車 (private passenger  automobile)またほトレーラー (trailer)の場合にかぎられ,かつ,

(1)  承諾をえた者が現実に運転せず,他人に運転をさせている場合をさす。

(2)  四輪の自家用乗用車,ステーション・ワゴン,ジープ型自動車をさす。

(4)

64 (

その親族の現実の運転またはかれの運転手の現実の使用が所有者の承諾の範 囲内にあることを条件とする。 (f)上記(d)(e)の被保険者の行為またほ過失によ って責任を負わされるその他の者または機関,がそれである。

被保険者ほ被保険利益の主体であって,保険契約締結の際には必ずしも特 定されるものではなはが,上記のような広範囲の被保険者を認めるのはアメ

リカ自動車責任保険の一大特色であろう。しかしながら,たとえ,広範囲の 被保険者を保護するとしても,中心となる被保険者を特定しておく必要があ るので,保険契約締結に際して,通常自動車の所有者が記名被保険者として 告知される。けだし,所有者の責任利益を付保するのが本来の自動車責任保 険だからである。ただ,この場合に注意すべきは,第4条定義のところで,

記名被保険者は declarationの第1項に記名された者および同一世帯に居住 しているその配偶者 (spouse)としていることである。つまりあくまで夫婦 を記名被保険者として取り扱うのである。

次に注意すぺき点は,前記の(e)(f)である。つまり,各種被保険者(自動 車の使用者といってもよい)の過失によって責任を負わされる者を被保険者 として保護していることである。これは一体何を意味するのか。例示をもっ て説明するのが便利である。たとえば,記名被保険者Nが所有自動車をA 貸し, AB社の仕事をするためにそれを使用したとする。その際にCが負 傷し, CNABに損害賠償の請求をしたとする。この場合契約の条項いか んによって三つの利益が保護される。とりわけNの責任が追求されるとき,

この保険証券で保護されるのである (Huebner,Black and  Cline,  Property  and Liability  Insurance,  1968, p.  439)。また,従業員が企業内で,あるい は企業の業務に自己の自動車を使用することがある。その際に発生した事故 については企業側に責任が追求されることがある。この場合,従業員の自動 車保険で,その企業が被保険者として保護されることになる。つまり,雇主 責任もまた保険保護の対象となっているのである(Greene,M. R., Risk and  Insurance 2nd ed., 1968,  p.  421) 

かくて,アメリカの自動車責任保険は被保険自動車と記名保険者を特定し ながら,その保護範囲をいちぢるしく拡大している。すなわち,自動車につ

(5)

いては非所有自動車をも包含することにより日本の他車運転損害賠償保険に 相当する保護を与え,他方被保険者については単に記名被保険者 (named insured)のみならず許可使用者(permissiveuser(1) s)や追加被保険者 (additio

(2) 

nal insured)をも包含する。したがって,この保険は自動車所有者の責任保 険の範囲を越え,その性格が若干不鮮明なものとなっている。

被保険者の範囲が広いがゆえに,ある場合には保険者は一人の被保険者が 他の被保険者に対して有する損害賠償責任について支払うことが要求される。

たとえば,記名被保険者が,彼の車を隣人に貸したとする。その隣人は過失 でガレージからバックするときに,記名被保険者を負傷させたとしよう。権 利,義務のやかましいアメリカのことであるから,記名被保険者は隣人(記 名被保険者の保険証券で保護されている被保険者)に対して当然損害賠償を 請求し,場合によっては訴訟に発展することさえありうる。保険者は第1 後段により隣人を防衛するとともに,記名被保険者に対して評決された金額 を支払わねばならないことになる (Greene,op.  cit.  p.  432)。同種の問題は 夫婦間においても生じる。

(2)  所有自動車と非所有自動車

両者の相違によって保険保護を受けられる被保険者群が異る。所有自動車 とは,(a)担保条件に従って該当する保険料を支払い保険証券上特定された自

(3) 

家用乗用車,農業用または実用自動車 (farmor utility  automobile),  (b)記名 被保険者によって所有されるトレーラー,(c)保険期間中記名被保険者によっ て取得された自家用乗用車,農業用または実用自動車,ただし,①上記(a) 定義されたように所有自動車として買い替え (replacement)られたこと,R 当保険者がその買い替えの時に記名被保険者によって所有されているすべて の自家用乗用車,農業用または実用自動車の保険を引き受けており,記名被 (1)(2)  これらの用語はそれぞれ前記(b)(e)ならびに(c)(f)について Greeneの使用

した用語である。

(3)  農業用自動車とは積載能力1,500ボンド以下で農業以外の事業に使用されない トラック型の自動車を意味する。また,実用自動車とは積載能力1,500ボンド以下 で事業や商業目的以外に使用されない pickup body,  sedan  deliveryまたは panel truck型の自動車を意味する。

(6)

66 (66) 

保険者が保険期問中または買い替え後30日以内に当保険者に通知すること,

そしてその自動車に当保険者による他の保険証券が発行されていないこと,

(d)一時的代用自動車 (temporarysubstitute automobile)とされている。

これは非常に複雑な定義であるが,要するに,所有自動車とは実際上,

declaration に特定した自動車を意味し, そして, 必ずしも保険証券所持者 によって所有されている自動車である必要はない。上記の定義に明らかなご とく, トレーラーが告知されなかった場合でも,記名被保険者に所有されて いるものを含むが,それは自家用乗用車に使用されることが意図されている。

被保険自動車すなわち申告自動車 (declaredautomobile)に対して,買い 替え,またほ一時的代用の自動車も所有自動車として取り扱うという優遇規 定がある。すなわち,前者については記名被保険者の全自動車を付保してい るならば,買い替え自動車を一応担保することを規定した自動的規定 (auto matic provision)となっている (Huebner,op.  cit. p. 438)。後者については 所有自動車が故障,修繕,点検,喪失または破損のため通常の使用として所 有者の承諾をえて代用している自動車またはトレーラーを意味し,特別の要 件が付加されていない。

次に,非所有自動車とは一時的代用車とは異り,記名被保険者またはその

(1) 

親族の定期的使用のために所有または整備されていない自動車またはトレー ラーを意味する。

非所有自動車についてはその担保が所有自動車ほど広くない。けだし,被 保険者群が異るのである。しかし,記名被保険者とその同一世帯の親族(配 偶者と子供が普通)は,その正規の使用のために所有または整備されていな い自動車であれば,事業用たると非事業用たるとを問わず,担保される。た だし,それは事業用または非事業用とは無関係に使用され,所有者の事業と は関係がないことを条件とする。

例示すれば,記名被保険者の息子が隣人の車を貸りてドライプし,事故を 起こした。いうまでもなく隣人の車は非所有自動車である。それゆえ,多分 その子供の父親が記名被保険者として彼の車に付保している自動車保険証券

(1)  親族は記名被保険者と同一世帯に属している場合にかぎられている。

(7)

によって息子は保険保護が受けられる。しかしながら,隣人の車がトラック であったなら,その事情は異る。けだし, トラックはFAP上の自動車では ないゆえ,非所有自動車として認められず,父親の自動車保険証券による保 護をその息子は受けることができない。しかし,この場合でも,その息子ほ 許可をえてドライブしたのであるから,隣人の保険証券(多分 BAP) の下 で,被保険者として保護を受けられる。

この場合のように他人の保険で自分も保護が受けられるなら,ー車分の保 険料で二車を保険することが可能ではないかと考える向きがあるかもしれな い。しかし,それは不可能である。例示しよう。 ABが保険費用を節約す るため, Aは自分の車に保険をつけるが,無保険のままに残されているB 車を通常使用する。 BほAの車を使用し, Aの 車 の 保 険 証 券 で 許可使用者 (permissive user)として自己の保険保護を期待する。 ABの車を非所有自 動車と考え,当然自分が自分の車に付保した保険証券で, B車運転中も担保 されていると期待する。前者は正しいが,後者は正しくない。けだし, A Bの車を定期的に使用しているわけであるから,非所有自動車の範囲に入ら ないし, Bは自分の車に付保していないのであるから, AB車の許可使用 者でありえないからである (Greene,op. cit.  p.  431)

ところで,保険給付を規定した第一条の後段は防衛規定であって,被保険 者に対して提起された訴訟に対して,保険者が被保険者を防衛する権利を有 することを規定している。これがために,被保険者が支出した一切の費用を 填補することを約しているのが,第二条の補足給付 (supplementpayments)  の規定である。防衛規定は海上保険でいう損害防止約款に相当し,防衛規定 上の費用は保険金額とは別個に支払われる。

たとえば, Aが対人賠償1人当たり10,000ドル,ー事故当たり20,000 対物賠償5,000ドルを付保した。彼は三人を傷つけ,そのうちの一人が所有

している家屋に損害を与えたとする。訴訟の結果, B5,000 C 3,000 D11,000 Bの家屋に4,000ドル支払えと判決された。こ の訴訟のためA6,000ドル支出したとする。保険者は次のごとき支払いを

(8)

なす。

Aを通じてB

Aを通じてC Aを通じてD A自身に

対人賠償$ 5,000 対物賠償 4,000  対人賠償 3,000  対人賠償 10,000  訴訟費用 6,000 

$28,000 

いうまでもなく, Dは現実に11,000ドルの損害を受けているにもかかわら ず,保険者から10,000ドルの支払いしか受けられないのは,一人当たりの保 険金額が10,000ドルに制限されているからである。差額の1,000ドルはA 身がDに賠償しなければならないものである。

2.免 責

第一部責任保険における免責事由は多岐にわたっているが,(1)被保険自動 車の使用 (usesof covered automobiles),  (2)損害の原因 (causesof loss),  (3)  損害賠償請求者 (claimants), (4)財産 (property)に関するものに整理するこ

とができる (Kulp,C. A.,Casualty Insurance, 4th ed.,  1968, p. 322) (1)  被保険自動車の使用に関する免責

a)  A Pは農業用自動車に付随して使用される農業用ワゴン,農業用補充 車を包含するけれども,農業機械を包含せず,その操作から生じた損害賠 償責任を担保しない。

b)  また,自動車が公共運送手段として使用されている間の事故ほ担保され ない。たとえぼ,自家用乗用車がククシーとして使用されている間の事故 は担保されない。けだしこの種の危険ほFAPの意図していない事業危険 だからである (Greene,op. cit.  p.  432)

C)  自動車事業に従事または雇傭されている人が,その業務遂行中に所有自 動車を使用したことによる事故ほ担保されない。けだし,被保険者の車を 事業目的に使用することに伴う自動車企業の保護を避けるためである。た だし,この免責は記名被保険者およびその同一世帯の居住者等には適用さ

(9)

れない。

d)  被保険者の事業に雇傭または従事している人が,その業務遂行中に非所 有自動車を使用したことによる事故は担保されない。ただしその非所有自 動車が記名被保険者等によって運転され,占有されている場合にほこの限

りでない。

(2)  損害の原因に関する免責

a)  原子力責任保険で保護される事故ほ担保されない。この免責は担保の重 複を避けるためである。

b)  被保険者が意識的にまたはその指図によって生じた事故は担保されない。

いわゆる故意による危険招致の免責である。

(3)  損害賠償請求者に関する免責

a)  ある事業から,または事業遂行中に被保険者の従業員について生じた傷 害事故ほ担保されない。けだし,かかる事故は労災保険の領域に属するか らである。ただし,労災保険法の適用されないような小企業の場合ほかか る免責が適用されない。

b)  雇主の自動車をその事業目的に従って,ある従業員が使用したとき,同 僚の従業員を負傷させた事故についてほ担保されない。たとえば, Aが記 名被保険者で雇主, BAの従業員で,その就業中Aの車を運転し,同僚 Cを負傷させたとする。 CAに対する損害賠償請求はこの保険では担 保されない。

14)  財産に関する免責

a)  被保険者が所有,運送,賃借,保管している財産の被保険者による損傷 は担保されない。これは自分自身が起こした事故については自分自身に損 害賠償できないのであるから当然のことである。

b)  記名被保険者が他の責任保険を付保した場合の買い替え自動車またほー 時的代用車の使用に伴う事故は担保されない。

3.責 任 制 限

責任制限としては二つの形態がある。その一つは金額に関するものであり,

(10)

70 (70) 

その二は他保険約款 (o~her insurance clause)である。金額の責任制限は通 常の場合,対人賠償の場合,一人当たり10,000ドル,ー事故当たり20,000 対物賠償の場合5,000ドルである。 この金額は強制責任保険法 (Complsory

(1) 

Liability  Insurance  Law)を実施している州および賠償資力法 (Financial

(2) 

Responsibility Law)を実施している州によって定められた金額と大体一致し ている。

他保険約款は被保険者が第一部で保護されるのと同じような保険を他に付 保していた場合の規定で,いわば共同保険ないし重複保険の規定である。こ

の場合,他の保険との比例基準 (pro rata basis)で損害填補がなされる。た だし,非所有自動車と一時的代用車に関してはニクセス条件とみなされる。

たとえばABの車を借りて運転中事故を起こした場合, A Bどちらの保険 証券でも担保されるわけであるが, Bの保険者がその責任限度額まで支払い,

なお,その損害額が不足する場合, Aの保険者がその不足分を支払うことに なる (Greene,op.  cit.,  p.  433)

4.賠償資力法に関する規定

賠償資力法は,事故を起こした者は一定金額まで保険に加入していること を証明するか,損害賠償をするに十分な現金または有価証券を供託しなけれ ばならず,それができない場合には運転免許証および自動車の登録が取り消 されるというのがその骨子である。いわば保険の間接的強制である。かくて,

ほとんどの自動車保有者は自動車保険に加入し,本法を遵守している。とこ ろで,被保険者が,この保険証券の条件に違反した場合,その担保は否定さ れることになる。しかるに各州の法は,条件違反のゆえに被保険者の責任を 否定する権利が保険者にあるにもかかわらず,保険者は被害者に対して支払 (1)  Massachusetts, New YorkおよびNorthCarolina3州で, Massachusetts

州だけが対人1人当たり$5.000,対人ー事故当たり$10.000で,対物は強制され ていない。

(2)  上記3州を除く, 47州である。 19701月現在,ほとんどの州は 10/20/5であ るが,金額の高い州として目だつのは, Virginia20/30/5Maine20/40/10 ある。

(11)

いをなすことが要求されている。かかる場合,保険者は要求された支払いを なすが,被保険者に対してその金額の返還を請求することができる。これを 念のために規定したのが第 6条の賠償資力法に関する規定の目的である。

II 医 療 費 給 付

これは記名被保険者およびその親族の自動車占有中の傷害を担保する保険 で,傷害保険の一形態である。この保険は過失のいかんにかかわらず,偶発 的傷害の結果として発生する医療費を被保険者に支払うという点がいちぢる

しい特長とされている (INA, Personal Automobile Insurance, FAL,p.17) 保険金額は500ドルから5,000ドルに定められるのが普通である。

医療費とは事故の日から一年以内に生じた一切の医療費を意味し,医療,

病院,看護婦の費用を含む。かかる費用を一入当たりにつき保険金額を限度 として支払われる。たとえば,自動車の所有者が3,000ドルの保険をつけて おり,乗車中の4人が一事故で負傷した場合,保険者の最高支払金額は12,000

ドルである。

保険保護の対象となるのは,(1)所有自動車占有中の記名被保険者および同 一世帯の親族,(2)記名被保険者または同一世帯の親族または記名被保険者の 承諾を受けた人によって使用されている所有自動車占有中に傷害を受けた他 人,(3)記名被保険者,その使用人,その親族が非所有自動車をドライブして いる場合の搭乗者である。

問題は占有中 (occupying)の意味である。それは乗車中および乗降の双 方をさす。

この保険で免責されている事由は(1)所有自動車が公共用に使われていると き,または住居,施設として使用するために自動車が定置されているときの 事故,(2)農業用トラククー等が公共の道路外で使用されているとき,自動車 が鉄道や運送車によって運送されているときの記名被保険者またはその親族 の事故,(3)非所有自動車を公共運送に使用しているとき,自動車事業またほ その他の事業に雇傭されている者が非所有自動車を使用したときに生じた他 人の事故,(4)労災保険で支払われる事故,(5)戦争である。

(12)

この保険にも他保険約款が挿入されている。被保険者が非所有自動車,一時 的代用車を運転しているときに事故に逢った場合,他人の医療費給付の保険 (medical  payment insurance)がまず最初に適用され,被保険者のその保険 ほニクセス条件となる。たとえば,自己の保険証券に500ドルの医療費給付 のあるAが 1,000ドルの医療費給付のある保険証券を持つBの車を借りて 運転中傷害を受け,その金額が, 1,250ドルであったとする。この場合, B の保険者が1,000 Aの保険者が250ドル支払うことになる (Greene,op.  cit.  p.  435) 

無 保 険 運 転 者 補 償

自動車保険の被保険者が無保険車,盗難車,ひき逃げ車によって身体傷害 を被った場合,これらの者の損害賠償責任額を保険者が被保険者に支払う特 約である。これはわが国の自動車損害賠償保障事業,英国の MotorInsurers'  Bureau,フラソスの fondsde garantieの補償業務に相当するが,あくまで 被保険者だけを対象としている。

無保険自動車 (uninsured automobile)はひき逃げ車 (hitandrun auto mobile)および適切な保険契約なくして使用されている自動車を意味し,そ のトレーラーをも含む。

この特約によって保護される者は,記名被保険者,その親族,および被保 険自動車の乗客であるが,前二者については乗車中,乗降時だけに限定され ておらず,歩行中も包含されると解される。

また,この特約で免責されている事由は(1)被保険自動車自体による身体傷 害,(2)保険者の同意なくして事故処理をした場合,(3)労災保険で保護される 事故となっている。第2のものについてはこの特約において重要な意味を持 っ。被保険者はもちろん無保険運転者に対して損害賠償の請求ができるわけ で,被保険者はこの特約のあることをよいことにして,賠償資力法上の無保 険運転者に対する罰則に同情し,その責任を免除するような事故処理を勝手 にした場合,被保険者はこの特約の保護を受けられない (Kulp,op.  cit.  pp.  337  8) 。換言すれば,無保険運転者は賠償資力法の要求する保険を持たな

(13)

いのであるから,運転免許および自動車登録の取消しという米国社会におけ る決定的打撃を免れようとするには二つの道しかない。すなわち,被害者に 賠償するに十分な現金または有価証券を供託するか,被害者に損害賠償請求 権を放棄してもらうかである。自動車保険もつけていない無保険運転者には 恐らく前者の能力はないであろう。このような無保険運転者の立場に同情し て,被害者であるこの特約の被保険者は保険保護のあることをよいことにし て保険者の書面による同意なくして;自己の権利を放棄してはならないので ある。つまり,そのような行為は保険者の代位権の侵害になるわけである。

IV 車 体 保 険

車体保険に関しては選択余地のある 6つの契約条件が設定されている。

1.総 合 保 険

この保険ほ衡突免責総合保険 (ComprehensiveexcludingCollision)と身廻 品保険 (PersonalEffects)に分かれているが,両者を同時に付保されること が多い。

衡突免責総合保険は所有または非所有自動車(トレーラーを除く)の損傷 に対し,最も広い担保を与え,海上保険の AllRisks条件のごとく特に免責 されていないかぎり一切の危険を担保する。衡突が免責されているのほ,衡 突危険がきわめて大でアソダーライティ、ノグとレーティング上別個の配慮が 必要だからである(INA,op. cit.  FAL, p. 7)。なお,衡突の中にほ転覆(upset) が含まれていることに注意せねばならない。

なお,ガラスの破損, ミサイル,落下物体,火災,盗難,爆発,地震,暴 風,雹害,水災,洪水,悪行または蛮行,一揆または内乱による損害ほ衡突 による損害とはみなされない旨規定されている。この規定は因果関係追究上 時間的近接を問題とせず,被保険者を保護する規定である。衡突免責総合保 険には通常50ドルの小損害免責が約定されるようである。

次に身廻品保険は記名被保険者またはその親族の所有に属する身廻品で所 有自動車内にあったものを火災,落雷につき保護する保険である。保険金額

(14)

100ドルが限度とされている。

2.衝 突 保 険

衝突保険は上記の保険で免責されているものを担保しようとする保険であ る。自動車の走行中,停車中,駐車中の他物(もちろん他車を含む)との接 触,その結果としての転覆が担保される。ただし,ー事故につき100ドルの 小損害免責が付加されている。この免責は他車との衝突の場合には適用され ない。

この保険のみを付保する被保険者も存在するが,注意深い被保険者は衝突 免責総合と同時に付保し,文字どおりの総合保険証券を入手している。

3.牽引および労務費用担保

牽引および労務費用 (Towingand labour costs)を担保する特約は保険会 社と自動車クラプとの競争上生れたものである。所有自動車,または非所有 自動車が無力化 (disablement)し,その無力化した場所で労務が遂行された ときにのみ,牽引および労務費用が支払われる。通常この費用は25ドルまで とされる。また,この特約では部品の取替費用は担保されていないc

4.火災,落雷および運送保険

この保険は所有または非所有自動車が,(1)火災または落雷,(2)暖房設備の 突然,異常および過失ある操作によって生じた煙害 (smoke) ま た は 焦 損 (sudge),  (3)自動車が運送されている運送手段の坐礁 (stranding),沈没(sink ing),火災 (burning),衝突 (collision)または脱線 (derailment) によって被

った損害を填補する保険である。

この保険は総合保険を付保することを望まない人のために,用意されたも ので,この保険と前記の衝突保険を組み合わせることも行なわれているよう である。

なお,第3番目の担保は海上保険および運送保険の領域に属する。この担 保は共同海損または救助料が被保険自動車に対して法的責任を負わせる場合

(15)

も填補される。すなわち,共同海損犠牲,共同海損分担額,救助料分担額が 填補される (Huebner, op.  cit.  p.  287)。もっともこれは補足給付とされて いる。

5.盗 難 保 険

この保険ほ所有または非所有自動車の盗難を担保するものである。この保 険だけが単独で選択されることはまれであって,多くの場合,火災,落雷お

よび運送保険,あるいは衝突保険と組み合わされる。

6.結合追加担保

結合追加担保 (CombinedAdditional Coverage)は所有または非所有自動 車が,暴風,雹害,地震,爆発,一揆または内乱,航空機の強制着陸または 墜落,洪水または増水 (floodor rising waters),悪行または蛮行,雨・雪・

みぞれによる損害を除き水の外的流出または漏出によって損害を生じたとき,

その損害が填補される。ただし,悪行または蛮行の場合には25ドルの小損害 免責が適用される。

総合保険の包括責任主義とは違って,この保険は火災,盗難を除いて多く の個別危険を結合担保している。

7.補 足 給 付

補足給付 (SupplementaryPayments)は(1)盗難担保の場合と,(2)運送危険 担保の場合に補足的に填補される。後者については共同海損およグぴ救助料で ある。前者は盗難の間接損害 (consequential loss)の填補を意味する。すな わち,被保険自動車が盗難によって失われたとき,代替車やククシーを利用 することにより発生する費用が填補される。この補償は盗難の事実が保険者 および警察に届出られたときから48時間後に始まり,自動車が発見されるか または保険者が盗難損害の支払いをしたときに終る。その間一日当たり10 ルが補償され,最高300ドルをもって打ち切られることになっている。

(16)

8.免 責

車体保険の免責事由は次の八つの事由である。これらは,(1)自動車使用に 関する免責,(2)損害の原因に関する免責,(3)財産に関する免責に要約される (Kulp, ~P· cit.,  p.  355) 

(1)  自動車使用に関する免貴

この免責はまず第一に被保険自動車が公共運送手段として使用されている 間の事故を免責するという条項を意味する。けだし,それほ危険変動を構成 するからである。第二に,被保険者が自動車事業に雇傭または従事している とき,その間に,非所有自動車を運転した場合である。この点に関しては責 任保険では所有自動車の運転が免責されているのと異るゆえ注意を要する。

自動車事業というのほ,自動車の販売,修理,サービス,保管,駐車等の事 業を意味する。したがって,駐車場の従業員が顧客の車を業務上使用した場 合の事故は担保されない。この種の事故は GarageKeepers Legal Liability  Insuranceの担保頗域となる。

(2)  損害の原因に関する免責 この免責は次の四つである。

a)  戦争による損害

b)  自然消耗,氷結,機械的または電気的故障または障害による損害,ただ し,この保険証券で担保される盗難によって生じた場合はこの限りでない。

C)  放射能汚染

d)  菌突保険の場合のガラスの破損,ただし総合保険を付保していない場合 にはこの限りではない。

以上の免責のうち, aC)は異常危険の除外を意味する。 b)は当然の免責 であるが,中には自動車の経常費(operatingexpense)と偶発損害(accidental loss) とのボーダーラインにある損害もあるので, 盗難という明確な事故に

よる場合は例外としている (Kulp,op. cit.  p.  356)。d)はガラスの破損がた とえ衝突によって生じた場合でも,総合保険の頗域とされる。つまりそれは comprehensive  lossとされている。そこで,総合保険が付保されている場 合には,ガラスの破損に50ドルの小損害免責,総合保険が付保されず,衝突

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