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− 教員免許更新講習での試み −

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【実践報告】久留米大学教職課程年報 2019, 第 3 号, 3-12.

LTD 基盤型研修プログラムの実践と効果

− 教員免許更新講習での試み −

須藤 文 ・ 安永 悟

(久留米大学 非常勤講師) (久留米大学 文学部)

【キーワード】LTD 話し合い学習法, 協同学習, 教員免許更新講習, アクティブラーニング

1. 問題と目的

協同学習に依拠した LTD 話し合い学習法(安永・須藤, 2014:Learning Through Discussion、

以下 LTD と略す)は、論理的な言語技術(看・聞・読・話・書)や思考能力の育成にとって理想 的な学習法であり、コミュニケーション能力やディスカッション能力を磨く効果的な訓練法で ある。近年その有効性と汎用性の高さが認められ、高等教育の専門性を超えて、徐々に広がり を見せている(安永,印刷中)。

この LTD を中核に組み込んだ授業開発の枠組みとして図1に示す「LTD 基盤型授業モデル

1

」 がある(安永, 2017, 2018, 印刷中; 安永・須藤,2018)。本モデルは「LTD を学ぶ」基礎段 階と「LTD で学ぶ」応用段階で構成されている。基礎段階では、基本的な技法を体系的・重層 的に導入し、くり返し訓練する(図1の LTD コアパッケージ)。そのなかで協同学習の考え方 を体験的に理解させ、最後に LTD を伝える。一方、応用段階では基礎段階で培った協同学習の 考え方と技法に基づく LTD が、高等教育のあらゆる場面で活用できることを示している。学内 における講義や演習はもちろんのこと、学内外における実験・実習や体験型学習など、学問領 域や授業内容、授業形態を問わず活用できる。基礎段階で獲得された協同学習の考え方と LTD を含む協同学習の技法により、学習活動は活発になり、大きな授業成果を期待できる。

この LTD 基盤型授業モデルに依拠した実践例が報告されている。まず、安永・須藤・松永・

徳田(2014)は本モデルに沿って初年次教育科目 である「教養演習Ⅰ」(1 年次前期 15 コマ)を展 開している。本科目は、新入生の大学生活への円 滑な移行を援助することを目的とした。なかでも 主体的かつ能動的な学習法を身につけること、論 理的な言語技術を獲得し、対話力と文章作成能力 を向上させることが目標であった。授業実践の結 果、授業開始時から2か月の間に、批判的思考態

1

図中の RR は「ラウンドロビン」 、TPS は「シンク=ペア=シェア」 、PBL は「PBL テュートリア ル(問題基盤型学習法) 」 、TBL は「チーム基盤型学習」を表す。

傾聴 ミラー

リング

特派員

LTDRR

ジグソー

TPS

(LTDを学ぶ段階)

LTDコアパッケージ

基礎段階

臨地実習 現場

社会

PBL

TBL 実験

実習 討論

講義

(⽂章作成)

応⽤段階 

(LTDで学ぶ段階)

協同学習の理論・協同の精神

図1.LTD基盤型授業モデル

(2)

度や協同の認識、ディスカッション・スキルなどに対する自己認識の向上が認められている。

また、須藤・安永(2014)は看護学生(1 年次前期 15 コマ)を対象に LTD コアパッケージ に沿って LTD を導入し、論理的な言語技術の基礎づくりをおこなった(基礎段階)。この第 1 段階を前提に、第 2 段階ではディベートを用いて論理の組み立て方と相手を説得する討論力の 育成を、そして第 3 段階ではエッセイの作成を通して文章作成力の向上をめざした(応用段 階)。その結果、論理的な言語技術が向上し、仲間との人間関係が改善した。また、授業で作 成したエッセイ 2 編が全国コンテストに入選している。

さらに、須藤・安永(2017)は LTD 基盤型授業モデルにそって教職科目「討議法」(3 年次 後期 15 コマ)を実践している。教員採用試験において課される集団討論や面接、小論文に対 応できるだけの論理的な言語技術を獲得させることが目的であった。第 1−2 講では協同学習の 理論を、第 3−6 講では LTD を用いた読解を指導した(基礎段階)。その後、第 7−13 講は LTD 過程プランを活用した集団討論を、第 14−15 講では LTD 過程プランを活用した小論文の指導を おこなった(応用段階)。この授業を通して、協同学習の基本的な理論を理解でき、文章作成 や討論に LTD を活かせた。また、授業時間外で実施した模擬授業において、協同学習の代表的 な技法を実践で活用することも確かめられた。

長田(印刷中)は、医療教育の領域で広く導入されている PBL テュートリアル(問題基盤型 学習、以後 PBL と略す)の改善に向け、LTD を活用した授業づくりを試みている。彼の実践は LTD 基盤型授業モデルの枠組みで理解できる。つまり、本モデルの基礎段階にそって LTD を伝 えたあと、応用段階として PBL を展開している。その結果、学習成績が従来の PBL と比較して 向上することが認められている。

LTD 基盤型授業モデルは学内の授業科目のみならず、学外における実習においてもその有効 性が示されている(石田, 2015;野上・山田・野中・田中・中村, 2016)。安永(2011)は学 外実習を前提とした授業科目「心理インターンシップ」(3 年次通年科目)を展開している。

本科目においては 2 週間の現場実習がメインとなるが、それ以上に、事前指導と事後指導に力 を入れている。事前指導が LTD 基盤型授業モデルの基礎段階に、実習と事後指導が応用段階に あたる。基礎段階で協同学習の理論と技法を獲得できている学生たちは実習先でも高い評価を 受けることが知られており(宇治田, 2015)、「心理インターンシップ」でも大きな成果が報 告されている。

このように、高等教育の学生を対象とした授業科目を LTD 基盤型授業モデルに沿って計画・

実践することにより、大きな成果をえられることが報告されている。そこで問題となるのが、

LTD 基盤型授業モデルに沿って授業を計画・実践できる教師の育成である。本報告では、その ような教師の育成を目的とした研修会を紹介し、その有効性を協同に関する認識とグループ学 習に対するイメージの変化、および参加者の事後アンケートを参考に検討する。

今回対象とした研修は LTD 基盤型授業モデルに依拠した教員免許更新講習である。改正教育

職員免許法の成立により 2009 年 4 月 1 日から教員免許更新制が導入された。その目的は「そ

の時々で求められる教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を

身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目

指すものである」(文部科学省,2007)。主体的・対話的で深い学び(以下、アクティブラー

ニングと略す)の実践が求められている現在の学校教育において、アクティブラーニングの基

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盤となる協同学習の理論と技法を理解した教師の育成は解決すべき喫緊の課題である。この意 味において、本講習は教員免許更新制の趣旨にかなう試みと理解できる。

2. LTD 基盤型授業モデルに依拠した教員免許更新講習の概要

本報告で取り上げる教員免許更新講習は、2018 年 8 月 1 日〜3 日に、久留米大学で開講した 全 12 コマ(4 コマ×3 日間、1 コマ 90 分)の講習である。本講習は選択科目であり、講習のテ ーマは「協同学習による授業づくり」であった。以下、本講習の基本情報を述べる。

(1) 講習目的 三日間にわたる講習の目的は「①協同を基盤とした教育実践力を養う」と「② 活動性の高い授業を実践できる」の 2 点であった。この講習目的は「自他の変化成長を実感で きる授業づくりを同僚と共に楽しむ」という講師が抱く「ねがい」と共に、講習の冒頭、受講 者と共有・確認した。

(2) 参加者 受講者は小学校、中学校、高等学校の教師が大半を占め、一般の会社に所属する 受講者が 1 名、現在所属のない受講者が 2 名いた。年齢は、30 代 23 名、40 代 8 名、50 代 29 名、計 60 名(女性 41 名,男性 19 名)であった。

講師は本研究の著者二人であった。第一著者が実践的な側面を中心に、第二著者が理論的な 側面を中心に、互いの持ち味を活かしながら、進行とファシリテーターを交代で務めた。

(3) グループ編成 できるだけ異質なグループになるように、男女・年齢・学校種を考慮した 4 人グループを 15 グループ編成した。講習の二日目にグループを再編した。

(4) 使用教材 本講習ではテキストとして「LTD 話し合い学習法」(安永・須藤, 2014)を採 用した。また、必要に応じて、資料や学習プリントを作成し、使用した。

なお、本講習では独自に作成したスライド資料を多用した。スライドは二種類あり、一つが 講習内容の理解を促す「説明スライド」であり、一つが活動を明示する「指示スライド」であ った。指示スライドのなかには授業内容を仲間と確認する「確認タイム」と授業内容に基づき 議論を深める「検討タイム」が含まれていた。両者とも、協同学習の基本構造である「課題明 示・個人思考・集団思考」に沿った構成となっていた。

(5) 基本構成と展開法 本講習は「LTD 基盤型授業モデル」を中核に、現場で活用できる具体 的な内容を織り込んだ構成とした。具体的な授業の展開方法として、安永(2012)が提案してい る「対話中心授業」の流れに沿って、上記のスライドを映写しながら展開した。なお、対話中 心授業は協同学習の基本的な理論と技法に裏打ちされた「個人思考・集団思考・クラス対話」

の流れを基本とした授業展開をいう。

3.講習内容と展開

三日間にわたる講習の内容と展開を表 1 に示す。表 1 に沿って講習の流れを次にまとめる。

≪一日目≫「1.導入・講習内容」 まず、本講習三日間の目的と内容を伝えた。その際、講習 の目的だけでなく、目的に至るまでの学習ステップも明示し、受講者と共有した。これは協同 学習で重視している「単元見通し」を意識した構成であった(杉江, 2004)。また、講習の進 め方や主な使用教材についても簡単に説明した。

「2.仲間づくりと基本技法」 次に、学びの場づくりをおこなった。初めて出会った者同士が、

いきなりグループになって話し合うことは難しい。そこで、異質集団を強調したグループ編成

の考え方や座席の配置の仕方を伝えたあと、自己紹介による仲間づくりをおこなった。自己紹

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介の内容は「姓名(漢字・由来)、出身・お国自慢、いまの体調・気分」の三点であった。そ の際、メモは取らずに、傾聴することを指示した。

「3.基本技能のアレンジ」 協同学習の観点から、上記の自己紹介による仲間づくりに込め られた創意工夫、すなわち、話し合いの基本スキルである「傾聴」と「ミラーリング」、協同 学習の基本構造である「課題明示・個人思考・集団思考」を伝えた。これら重要な概念につい ては「確認タイム」を設定し、理解したことを自分の言葉で表現し、グループで話し合うこと により、その場で理解を深められるようにした。その際、「確認タイム」が協同学習の基本技

表1.教員免許更新講習(三日間)の内容と展開、キーワードと技法      (注、技法は「 」で示す)

講習の内容と展開 講習のキーワードと「技法」

1日目 1. 導入・講習内容 講習の内容、進め方、教材、単元見通し 2. 仲間づくりと基本技法

(1) グループ編成・環境整備 異質集団、4人グループ、座席配置 (2) アイスブレイク 協同による自己紹介

3. 基本技法のアレンジ

(1) 学習の基本技法 「傾聴・ミラーリング」「シンク=ペア=シェア」「ランドロビン」

協同学習の基本構造(課題明示・個人思考・集団思考)

(2) 技法のアレンジ 「シンク=ライト=ペア=シェア」「ライト=ペア=スイッチ」「特派員」

4. 看図アプローチ

(1) 看図作文 非連続型テキスト(絵図)をつかった作文指導 (2) 看図アプローチ 協同学習ツール

(3) 体験・絵図「ふろしき」 「要素抽出・関連づけ・外挿」「学びの出会い」

5. これからの教育

(1) 求められる人材 社会人基礎力、学士力、生きる力、現場で活躍できる人材、人間尊重社会 協同実践、協同の精神、科学的探究

(2) 方法としてのAL アクティブラーニングの実践的・理論的定義、協同学習の技法と理論  (1日目の授業の振り返り) 授業記録紙

2日目 6. 前日の振り返り

(1) あいさつ・授業通信 傾聴、仲間への関心、一日の見通し 7. 協同学習の基本理論

(1) 協同学習の定義と特徴 認知と態度の同時学習、意図的な計画、公平な取組、意味ある学習 協同の学習観、社会に開かれた学び

(2) 協同の精神と意義 協同の精神、社会的手抜き、基本的信頼感、支持的・協同的風土 (3) 協同・競争・個別 協同を前提とした競争・個別、グループ間競争、切磋琢磨 8. 協同学習の基本要素

(1) ジョンソンの5要素 肯定的相互依存、促進的相互交流、個人の二つの責任、

集団スキルの促進、活動の評価、「ジグソー学習法」

(2) ケーガンの4要素 参加の平等性、活動の同時性  (グループ再編)

9. LTD話し合い学習法

(1) LTDの基礎 LTDの理念・目的、LTD過程プラン、

(2) 予習とミーティングの方法 知識との関連づけ、自己との関連づけ、「ジグソー学習法」

10. LTDの体験的理解

(1) 分割型LTD 役割分担、活動の見通し、主観と客観の区別

三色ボールペンの活用、論理的な文章構成とLTD過程プラン  (2日目の授業の振り返り) 授業記録紙

3日目 11. 前日の振り返り

(1) あいさつ・授業通信 傾聴、仲間への関心、一日の見通し 12. LTDの実践例・小学校モデル

(1) 分割型LTD LTDの45分授業への応用例、PISA型読解力の育成 (2) 小5国語科での実践 国語科・説明文の単元での実践

(3) 学習成果 認知面(学力)、態度面(QUテスト)

13. LTD基盤型授業モデル

(1) 活動性の高い授業 対話中心授業、教授学習ユニット

(2) 学習技法の導入活用法 技法の体系的・重層的活用、LTDコアパッケージ 14. 授業づくりと効果

(1) LTD基盤型授業の成果 高等教育の実践成果

15. 講習全体の振り返り 「まずは仲間から(仲間が一番)」

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法である「シンク=ペア=シェア」と「ラウンドロビン」により構成されていることを体験的 に理解させた。そのうえで「シンク=ペア=シェア」をアレンジした技法である「シンク=ラ イト=ペア=シェア」と「ライト=ペア=スウィッチ」を伝えた。

その後、「検討タイム」を設定し、基本技法のアレンジと活用法を考えさせた。受講者それ ぞれが、担当教科のどの単元のどの場面でどうように使うかを考え、グループで出し合った。

その後、グループ間交流をおこなうための技法として「特派員」を紹介し、実際に体験させた。

ここまでで初日午前中の活動が終了した。

「4.看図アプローチ」 午後の内容に入る前に、午前中の振り返りをおこなった。協同学習 では、見通し同様、振り返りを重視する。疑問点がなかったか、個人で確認し、グループで話 し合って解決し、その後全体で共有するという流れで振り返りをおこなった。

午後は「看図アプローチ」から始めた。看図アプローチとは、非連続型テキスト(絵図)を 活用した教育改善方法の総称である。鹿内(2013)により、さまざまなツールやその活用法が紹 介されており、実践者も増えている。そこで本講習では、看図アプローチの基盤となる看図作 文を体験させた。その際、交流の技法として「学びの出会い」を紹介し、体験させた。

「5.これからの教育」 一日目最後の内容は、現在社会で求められている教育の目的と方法 について考える時間とした。本講習の担当講師は、教育の目的を「現場で活躍できる人材の育 成」と見定め、そのような人材は「協同の精神」と「科学的探究」に基づく「協同実践」に長 けているという仮定のもと授業づくりに臨んでいることを伝えた。またその方法として、アク ティブラーニングの必要性を説き、効果的なアクティブラーニングの実現には協同学習の理論 と技法が不可欠であることを説明した。

一日目の最後 15 分間を使って「授業記録紙」(A4 判用紙 1 枚)に感想を書かせた。この活 動は三日間ともおこなった。この感想をもとに、担当講師が「講習通信」(安永, 2012)を作 成し、翌日の最初に「講習通信」を用いた振り返りをおこなうことも伝えた。

≪二日目≫「6.前日の振り返り」 まず、全体で挨拶したあと、グループごとに挨拶し、グ ループ内で「ちょっといい話」と「いまの体調」を相互に紹介させ、簡単な雰囲気づくりをお こなった。なお「ちょっといい話」は日常生活のなかに喜びを見つけ、それを報告し合うこと で、学びの場を和ませる。また「いまの体調」はこれから共に学ぶ仲間の状態を知っておくと 適切なサポートができる。これらの点も受講者に伝えた。

この挨拶に引き続き、「講習通信」をもとに一日目の内容を振り返った。まず講習通信を一 人で読み(個人思考)、話題を二つ以上選び、選択理由とコメントの準備をさせた。その後、

グループで交流し、引き続き全体で交流した。

「7.協同学習の基本理論」 ここではまず協同学習の定義と特徴を伝えた。そのうえで「確 認タイム」において、協同学習の特徴を自分の言葉で説明することで理解を深めさせた。次に、

「協同の精神」とその意義についても、同様の手順で理解を深めさせた。最後に、「協同・競 争・個別」の関係について説明し、それらは過程ではなく結果で判断することを確認した。

「8.協同学習の基本要素」 ここではジョンソンの五つの基本要素を、講師から学ぶのでは なく、ジグソー学習法を用いて受講者同士が協力して主体的に学ぶことを体験させた。その後、

ジョンソンの基本要素と関連づけながら、ケーガンの四つの基本要素を解説した。

ここまでで三日間講習の半分が終了したのでグループを再編した。グループ替えの前に、グ

ループごとに、 共に学んだ仲間へ感謝の言葉を述べ合った。そして、新しいグループをつくり、

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初日同様、自己紹介による仲間づくりをおこなった。新しいグループも、多様なメンバーにな るよう担当講師があらかじめグループを編成した。

「9.LTD 話し合い学習法」 午後は、LTD 話し合い学習法の学習から始めた。まず、LTD の目 的や基礎について説明し、LTD の要となる「LTD 過程プラン」の概要を伝えた。LTD 過程プラ ンを、ジグソー学習法を用いて学んだ。そのうえで、LTD 過程プランで理解が難しいとされて いるステップ 5 とステップ 6 の関連づけの差異について説明した。

「10.LTD の体験的理解」 LTD の概要を理解したあと、小学校四年生国語の教科書から選ん だ説明文『大きな力を出す』(出典:光村図書出版)を LTD の課題文として用いて、LTD の体 験的理解を促した。この課題文は、教科書見開き 2 ページという短いものであったが、著者の 主張が文章の最初と最後で述べられる双括型の文章構成となっており、文章の主張と話題が明 確であり、LTD を初めて体験するのに適したものであった。また、双括型の文章構成は論理的 な文章の構成であり、LTD 過程プランのステップとも対応していることを図で示し、確認した。

本講習では、LTD 過程プランの全てのステップを体験することはせず、ステップ 3 の主張の 理解と、ステップ 5 と 6 の関連づけを中心におこなった。ここでも、個人思考のあと、グルー プで話し合い、全体交流をするという活動を仕組んだ。グループでの話し合いの際、 「司会係・

時計係・発表係・記録係」といった四つの役割を分担させた。この体験を通して、一人ひとり に役割を持たせることが円滑な話し合いに役立つことを理解させた。

二日目の最後にも、一日目同様、「授業記録紙」に感想を求めた。

≪三日目≫ 「11.前日の振り返り」 三日目の内容に入る前に、二日目と同様の手続きで、

「あいさつ」をおこない、「講習通信」をもとに前日の内容を振り返った。

「12.LTD 実践例・小学校モデル」 ここでは LTD の実践例として小学校の実践を紹介した。

まず、小学校 45 分の授業に LTD を導入するために、ステップごとに予習とミーティングをお こない、予習も授業時間内におこなう「分割型 LTD」について説明した。次に、小学校五年生 の国語『インスタント食品とわたしたちの生活』(出典:東京書籍)を課題文とした具体的な 実践方法を紹介し、その学習成果を示した。実践紹介のあと、受講者同士で感想を交流させ、

全体での質疑応答もおこなった。

「13.LTD 基盤型授業モデル」 続いて、LTD を中核に据えた「LTD 基盤型授業モデル」につ いて説明した。まず、めざす授業は協同による活動性の高い授業であることを確認し、「対話 中心授業」の展開例を示した。これは、現在教育界で求められているアクティブラーニングを 実現する一つの実践法である。次に、さまざまな協同学習の技法を体系的・重層的に活用する 技法の導入方法を示した。さらに、これらの技法を効果的に活用するためには、協同学習の理 論と協同の精神が基盤になることを説明した。

「14.授業づくりと効果」 LTD を体験的に理解したあと、「LTD 基盤型授業モデル」につい て説明し、二つの実践例を用いて LTD 基盤型授業の成果を紹介した。一つは、大学医学科一年 生を対象とした授業成果であった。そこでは、低得点者のみならず高得点者も含めてクラス全 体のテスト成績が向上したことを紹介した。もう一つは准看護学校における実践であった。こ の実践でも学ぶ意欲の向上がみられ、学業成績が向上したことを紹介した。これらの報告のあ と、受講者同士で感想や意見を交流した。

「15.講習全体の振り返り」 ここでは三日間にわたる講習全体を振り返った。振り返りの方

法として「協同カフェ」の形式をとった。「カフェ」とは喫茶店での自由な会話からイメージ

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できるように、何ら制約なく、思いつく内容を気兼ねなく語り合う活動をさす。 「協同カフェ」

では「協同による授業づくり」をテーマに二回の話し合い場面を設定した。一回目は学校種別 の意見交換、二回目は自由なグループでの意見交換をおこなった。所要時間は二回とも 15 分 間であった。

この活動のあと、技法「まずは仲間から(仲間が一番)」を解説した。この技法は、課題が 出されたあと、 まず自分で考え、 わからなければ仲間と話し合う、それでも解決できないとき、

初めて教師(指導者)の意見を求めるという手順が重要であることを説明した。この手順を常 に意識させることで、主体性が獲得されることも説明した。

最後に、三日間共に学んだ仲間への感謝の言葉を伝え合った。そして、最終日も授業記録紙 に感想を求めた。

4. 効果測定尺度

本講習では、教員免許更新講習の成果と講習内容の検討を目的として、講習開始時と講習終 了時に、次に示す二つの尺度からなる質問紙を実施した。

(1) 協同認識尺度(増井・安永, 2016)

本尺度は「仲間重視、自己貢献、個人志向、互恵懸念」の 4 因子 22 項目(5 件法)によっ て構成されている。「仲間重視」因子には「グループでの活動は、仲間がいてくれるから頑張 れる」や「グループのなかで、自分を支えてくれる仲間がいることに喜びを感じる」などの 10 項目、「自己貢献」因子には「仕事の分担を決める時、多少の負担があってもグループの ためなら、すすんで引き受けたい」や「グループのために自分の力(才能や技能)を使うのは 楽しい」などの 5 項目、「個人志向」因子には「周りに気遣(きづか)いしながらやるより独り でやる方が、やり甲斐がある」や「グループでやると必ず手抜きをする人がいる」などの 4 項目、「互恵懸念」因子には「グループ活動は仕事の出来ない人たちのためにある」や「弱い ものは群(む)れて助け合うが、強い者にはその必要はない」などの 3 項目が含まれていた。

なお本尺度は、長濱・安永・関田・甲原(2009)の協同作業認識尺度の改訂版と位置づけら れる。協同作業認識尺度は「協同効用、個人志向、互恵懸念」の 3 因子で構成されていた。こ の協同作業認識尺度の「協同効用」因子が、協同認識尺度では「仲間重視」因子と「自己貢献」

因子に分割されたと理解できる。

(2) グループ学習イメージ尺度(高旗・原田・関田, 2010)

本尺度は、「懐疑、肯定、相対視」の 3 因子 17 項目(5 件法)によって構成されている。

「懐疑」因子には「教師にとって負担の大きい方法である」や「学生たちにとって負担の大き い方法である」など、グループ学習に対する否定的ないしは懐疑的な 8 項目が、「肯定」因子 には「学生たちの学力向上を促す有効な方法である」や「学生たちの学習意欲を育むうえで有 効な方法である」など、グループ学習に対する肯定的な 5 項目が、「相対視」因子には「グル ープ学習は、あくまでも一斉授業を補うための方法論のひとつである」や「グループ学習の有 効性は、科目の特性に依存することが多い」など、グループ学習の有効性や成否に対して距離 をおいた見方を示す項目が含まれていた。

5.結果と考察

(1) 質問紙調査の結果

(8)

受講者 60 名のうち、協同認識尺度とグループ学習イメージ尺度のデータが揃っていた 58 名を対象に、講習前と講習後のデータを表 2 にまとめた。表 2 に示す協同認識尺度の結果のう ち、「合成得点」は「(仲間重視+自己貢献)−(個人志向+互恵懸念)」により算出した得 点である。この得点が高いほど協同に対して肯定的な認識をもつと判断できる。

①全体の結果 表 2 より、全体の 58 名のデータを読む限り、協同認識尺度の 4 因子のうち仲 間重視と自己貢献は得点を伸ばしており、個人志向と互恵懸念は得点を低下させている。その 結果として合成得点は講習前から講習後にかけて伸びていることが読み取れる。そこで協同認 識尺度の合成得点を対象に講習会前後の得点を t 検定で比較したところ有意な伸びを確認で きた( p < .001)。一方、グループ学習イメージ尺度においても、全ての因子においてグルー プ学習に対するイメージが改善する方向に変化していることが確認できた(全て、 p < .001)。

なお、協同認識尺度の合成得点を用いて男女差を求めた。またグループ学習イメージ尺度の 3 因子についても男女差を確認したが有意な結果が認められなかった。そこで、以後の分析に おいて性差は考慮しないことにした。

②年齢別の比較 次に、年代別に、協同に対する認識とグループ学習に対するイメージの変化 を表 2 に示す。40 代の参加者数が少なかったので、30 代と 50 代を、t 検定を使って比較検討 した。その結果、30 代と 50 代においては協同認識尺度とグループ学習イメージ尺度の、どの 時点における平均値にもまた変化の大きさにも有意な差は認められなかった。

参加者数の問題から 40 代について検討できていないので暫定的な考察となるが、30 代と 50 代、協同に対する認識やグループ学習に対するイメージに大きな差異が認められないことは、

学校現場にアクティブラーニングの考え方が浸透してきたことを表していると考えられる。

③所属別の比較 受講者の所属による差異を調べるために、小学校・中学校・高校に分けてデ ータを整理した。特別支援学校と所属なしを除外した 53 名の結果を表 3 に示す。その結果、

協同認識尺度の合成得点を見る限り、小学校は事前調査の段階から中学校や高校よりも協同に 対して肯定的な認識をもっており、講習を受講したあとも同じ傾向が認められた。

また、グループ学習イメージ尺度に関しても小学校は中学校や高校にくらべて肯定的な評価 をおこなっているように読み取れる。しかしながら因子ごとに 3(校種)×2(時期)の分散 分析をおこなったが、いずれの因子においても時期の要因にのみ主効果が認められ(いずれも、

p <.001)、校種に明確な差異は認められなかった。

この結果において、高校教師が小学校や中学校の教師と明確な差異がなかったことに注目し たい。小学校や中学校の教師と比べて高校の教師は、協同やグループ学習に対して一般的に否 定的な傾向が強いという指摘がしばしば繰り返されてきた。本知見はそれを否定する方向の結

表2.年齢別にみた講習前後における協同認識とグループ学習イメージの変化

n 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後

全体 58 4.43 4.84 3.67 4.27 3.00 2.29 1.48 1.22 3.63 5.61 2.49 2.10 4.25 4.80 2.93 2.21 30代 24 4.49 4.87 3.78 4.30 3.06 2.41 1.44 1.19 3.76 5.57 2.48 2.27 4.27 4.87 2.84 2.22 40代 8 4.28 4.90 3.30 4.15 3.13 2.22 1.67 1.13 2.78 5.71 2.59 2.20 4.10 4.78 2.94 2.03 50代 26 4.42 4.80 3.68 4.28 2.89 2.20 1.45 1.27 3.76 5.61 2.47 1.90 4.28 4.75 3.00 2.25

協同認識尺度 グループ学習イメージ尺度

仲間重視 自己貢献 個人志向 互恵懸念 合成得点 懐疑 肯定 相対視

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果である。その理由として、協同を主題とする本講習を選択した教師を対象とした結果である ことを考慮しておく必要があるが、アクティブラーニングが高校にも浸透してきた結果とも受 けとめられる。つまり、本受講者の大半が居住する福岡県では、高校を含む全ての県立学校に アクティブラーニングを導入することを目的に、福岡県教育委員会が推進する「福岡新たな学 びプロジェクト」を積極的に展開しており、2018 年度で四年目を迎え、2018 年度からは全て の県立高校でアクティブラーニングを導入している(福岡県教育委員会, 2018)。この取り組 みが功を奏していることも一つの原因と考えられる。

(2)事後アンケート(感想)

教員免許更新講習では、講習申し込み時に事前アンケート、講習終了後に事後アンケートを 大学に提出することが求められている。事後アンケートのなかから代表的な感想を二つ紹介す る。前者(①)は講習開始時から「協同認識の合成得点」が高く、後者(②)は低かった。

① 今回の講習を受講する前と受講後とは明らかに認識が変わりました。特に「協同」に関し ては新たな認識を持つことができました。また、アクティブラーニングに関しても授業で やっていたつもりになっていたことに気づかされました。今後は講習の内容を活かした授 業展開を考えていきたいと思っています。そして、何よりも仲間の大切さ、今ここに生き ること、真剣な姿勢、どこででも、誰にでもできること、対話の大切さを学ばせていただ きました。様々な先生方との出会いは新たな発見につながることも多く、その中での経験 談や疑問、相談も大変勉強になる内容でした。

② これまで様々な研修(一般企業含め)を受けてきたが、こんなに全員がまとまった感覚にな った研修はなかった。全員で協同の精神を共有することがこれほどパワーを持つというの が衝撃だった。早く、自身の生徒たちがこんな環境で学習ができるようにしたいとわくわ くしていた。8 月 6 日に平和の学習の感想を交流させることができたが、ルールの確認や傾 聴等のスキルの確認をしないまま始めてしまい、これまでと同様のグループ交流にとどま ってしまった。これから傾聴の姿勢、ミラーリングの仕方、それぞれの目的、その意識を 持たせることを通して、全員が協同の精神を培うことができるよう、そしてグループの居 心地の変化を体験させるよう細やかな工夫を実行し続けていこうと思う。

6. おわりに

本研究の著者 2 名によるこの講習は、今回の講習で 6 回目になる。初回は 20 名ほどの参加 であったが、年々参加者が増え、今回は定員の 60 名になった。「同僚に勧められて参加した」

という声も聞かれるようになった。また、この講習がきっかけで、第 2 著者が主催している研

究会に参加した受講者もおり、本講習が学び続けられる教師の育成にも貢献できていると思わ

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れる。教員免許更新講習は十年に一度の研修である。本講習も十年続けることで、全ての年代 の先生方に協同による授業実践の素晴らしさを伝えることができる。同じ学校に勤務する教員 のなかに協同実践の熟達者を増やすことで「協同による授業づくり」から、「協同による学校 づくり」が実現することを願ってやまない。

引用文献

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参照

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