- 52 - 東アフリカにハゲワシは 6 種類ほど
いますが,最も多く出会う機会がある のは,この写真の"ベンガルハゲワシ"
です。この鳥は北はスーダのオレンジ リバーにかけて,広く分布しています。
"ベンガルハゲワシ"によく似ていま すが,ひと回り体が大きく,羽毛の先端 が白い"マダラハゲワシ"や,頭から首 にかけてがピンク色をした"ヌビアハ ゲワシ",人間の耳たぶのように頬の左 右に突起がある"ミミヒダハゲワシ", 体が白く,顔が黄色い"エジプトハゲワ シ"など,いずれもひとくせもふたくせ もありそうな面構えをしています。
ハゲワシは群れで行動し,大空を飛 び回ります。そしてひとたび獲物を発 見しますと,アッという問に急降下し て騒々しい大宴会を始めます。
食事中のハゲワシの群れのうるさい ことといったら,他に比べようがない ほど。
"ギャーッ,ギャーヅ'と薄気味悪い声を 出しながら,我先にと,獲物目がけて突き進 んでいきます。先客があっても,まる写真 2 ヌーの体が見えないほど先を争って食べる
でお構いなしで,上空から獲物の中心に向 かって舞い降り,仲間を蹴ろうが,踏みつけ
ようが,知らん顔なのですから……。マナー も順番もまるで無視の世界です。
"屍肉漁り"を得意とするハゲワシたちです が,まずライオンやチーター,ハイエナなど
礼儀知らずのハゲワシ
動物雑感 (21)
平 岩 雅 代
アニマルフォトグラファー トラベルライター
- 53 - が仕留めた獲物がなければ,話になりませ ん。
気の早いハゲワシは倒されたばかりの獲 物がまだ息のあるうちから,ぐるりと回り をとり囲み,一刻も早くごちそうにありつ けるのを,首を長くして待っています。肝心 の狩りの主役は,たくさんの目にじっと見 つめられて,せっかくのごちそうをゆっく り味わうこともできず,落ち着かない様子 です。
ライオンはさすがに堂々と,気の済むま で(満腹になるまで)食べ続けますが,チー ターはたくさんのハゲワシに取り囲まれて しまいますと,食事の途中でも渋々ごちそ うをあきらめて,その場を逃げ出すことが あります。
ハゲワシと同じように,アフリカハゲコ ウも屍肉漁りの順番を待っていることがよ くありますが,身長がハゲワシよりも 70 セ ンチほど高いアフリカハゲコウは,自分よ りも小さなハゲワシの軍団に遠慮をしてか, 少し離れたところで大人しく順番を待つこ とが少なくありません。
ところでアフリカハゲコウは,屍肉の他 にシロアリ,イナゴ,他の鳥の卵,フラミン ゴなどを食べることもあります。
一般に野生の生き物は腐ったものは本能 的に避け,口にしないといわれていますが, ある時,ケニアのマサイマラ国立保護区で, ベンガルハゲワシが数十羽,草原に倒れて 死んでいるのを見かけたことがあります。
ハゲワシの死体のすぐ横には,一匹のヌ ーの死体が転がっていました。
恐らく病気で死んだヌーの肉を食べ,集 団食中毒にでも当たったのでしょう。
私はこれまでに約 90 回のアフリカ訪問で, たびたびハゲワシの集団が繰り広げる饗宴 に出会っていますが,タンザニアの巨大な 火口原,ンゴロンゴロ,クレーターの中で見 たハゲワシの食事風景は,忘れることがで きません。
ハイエナが倒したヌーを目ざとく見つけ た彼らは,アッという問に 3 頭のハイエナを 押しのけ,食べ始めました。礼儀知らずのハ ゲワシを恨めしそうに見ながら,ハイエナ は 5 メートルほど離れたところに立ちつく していました。ハゲワシは鋭いくちばしを ヌーの体に突き立て,少しでも多くの肉を 食べようと必死です。二重,三重に重なり合 って,いちばん下になってしまったハゲワ シは踏みつけられて食べるどころではあり ません。
それにしてもハゲワシは不気味な鳥です。