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極端な暴風雪時における吹雪量と国道通行止めの関連について

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北海道の雪氷 No.38(2019)

Annual Report on Snow and Ice Studies in Hokkaido

-19-

Copyright©2019 公益社団法人日本雪氷学会北海道支部

Hokkaido Blanch of the Japanese Society of Snow and Ice

極端な暴風雪時における吹雪量と国道通行止めの関連について

A study on the relationship between the transport rate of drifting snow and national road closure during extreme snowstorm

大宮 哲, 武知 洋太, 金子 学, 高橋 丞二

Satoshi Omiya, Hirotaka Takechi, Manabu Kaneko and Joji Takahashi Corresponding author: [email protected] (S. Omiya)

The purpose of this study is to propose indices to support winter road management. We conducted case analysis on the extreme snowstorms that occurred in eastern Hokkaido at March 2013 and February 2014. As a result, it was shown that there is a characteristic for each route in the relationship between national road closure and the transport rate of drifting snow.

1.はじめに

北海道内における冬期の国道通行止めは,吹雪 に因るものが約4割を占める.観光や物流など,

北海道の社会経済活動は自動車交通に強く依存 しており,吹雪による通行止めが地域社会に及ぼ す影響は大きい.吹雪によるダメージを最小限に とどめるためには,的確で効果的な通行規制の実 施や除雪体制の構築,情報提供が必要である.

現在,雨に因る通行規制については,対象とす る区間(事前通行規制区間)ごとに定量的な基準 が定められていることが多い1), 2).一方,吹雪に 因る通行規制については定量的な基準が存在し ない.各路線の道路管理者が,気象状況に加え,

現地パトロールや道路管理用カメラ映像,道路交 通状況など,総合的な判断に基づいて実施してい る.

本研究の最終目標は,一回の極端な暴風雪の厳 しさを適切に表現し,通行規制や除雪の実施判断,

情報提供をサポートするための客観的かつ定量 的な指標を提案することである.本報では,北海 道東部を中心に大きな被害をもたらした 2 つの 極端な暴風雪事例(①2013年3月2日~3日,

②2014年2月16~19日)を対象に,吹雪量と 国道通行止め実施の関係を整理した結果につい て報告する.なお,「吹雪量」とは吹雪の激しさを 示す指標の1つであり,単位幅を単位時間に通過 した雪の質量のことを指す.

2.暴風雪時の天気概況と被害状況 (1)2013 年 3 月 2~3 日の暴風雪

図1に,3月2日9時と同日15時の地上天気 図を記す.2日9時頃に網走沖と苫小牧沖にあっ た2つの低気圧が,12時頃に網走沖で1つにな って急激に発達した.低気圧の中心気圧は9時か ら15時の6時間のうちに15hPaも低下し,風速 が急激に強まった.例えば,9時の北見アメダス の最大瞬間風速は1.8 m s-1であったが,15時に は13.2 m s-1,その後17時40分には22.7 m s-1 を 記 録 し た . 日 本 道 路 交 通 情 報 セ ン タ ー (JARTIC)によると,北海道内の国道通行止めは 22路線43区間におよんだ.また,オホーツク海 側や太平洋側東部を中心に合計 300 台以上の車 両が立ち往生した.道路交通以外ではJR北海道 で361本が運休したほか,新千歳空港を発着する 205便が欠航した.

(2) 2014 年 2 月 16~19 日の暴風雪

図2に,2月15~18日の9時の地上天気図を 記す.2014年2月14日から16日にかけて関東 甲信地方に記録的大雪をもたらした南岸低気圧

土木研究所 寒地土木研究所

Civil Engineering Research Institute for Cold Region, Public Works Research Institute

図1 3月2日9時と15時の地上天気図

3/2 9時 3/2 15時 3/2 21時

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北海道の雪氷 No.38(2019)

Annual Report on Snow and Ice Studies in Hokkaido

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Hokkaido Blanch of the Japanese Society of Snow and Ice が発達しながら北東進し,16日21時には根室の

南東海上に達した.その後,低気圧は19日にか けて千島近海に停滞したため,北海道東部は長時 間にわたって暴風雪となった.弟子屈アメダスで は,平均風速が16日21時30分から18日12時 30分までの39時間にわたって常に15 m s-1以上 であった.JARTICによると,北海道内の国道通 行止めは12路線15区間において実施された.

3.吹雪量の算出

吹雪量の算出には大宮ほかによる手法 3) を使 用し,気象庁より配信される降水強度,気温,風 速の時別値(解析雨量・毎時大気解析GPVデー タ)を用いて 1kmメッシュの時間吹雪量を求め た.なお,解析雨量は 1kmメッシュデータであ る一方,毎時大気解析 GPVデータは 5kmメッ シュデータである.そこで,ここでは5kmメッ シュを25個の1kmメッシュに分割し,それらは すべて同値であると仮定した.また,各気象要素 や気象履歴から吹雪の発生有無を統計的に判定 するフロー4) に基づき,「吹雪あり」と判定された 場合についてのみ吹雪量を計算し,「吹雪なし」

と判定された場合の吹雪量はゼロとした.時間吹 雪量の計算結果の一例(2013年3月2 日18 時)

を図3に記す.

4.通行止めの実施有無と時間吹雪量の関係 国道通行止めの実施有無(吹雪に因る通行止め のみ対象)と時間吹雪量の時間変化の関係につい て整理する.ここでは,美幌町を中心としたエリ ア(図3の黒丸で囲んだエリア)における国道を 対象に,その特徴を述べる.なお,通行止め履歴 については JARTIC により提供されたデータを 使用した.

(1)2013 年 3 月 2~3 日の暴風雪

2013年3月の暴風雪事例について,2日11時 から21時までの1時間ごとの時間変化を図4に 示す.図中には,当該エリアにおける国道路線と その番号を付記してある.当該時刻において通行 止めが実施されていた路線・区間は赤で,実施さ れていない路線・区間は黒で示してある.なお,

吹雪発生判定フローによって「吹雪なし」と判定 された吹雪量ゼロのメッシュについてはグレー で示してある.

3月2日18時

kg m-1h-1

図3 3月2日18時における時間吹雪量

図4 通行止め実施有無と時間吹雪量の関係

(2013年3月2日11時~21時)

図2 2月15日~18日の9時の地上天気図

334

240 243 39

333 238

244

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391 334

240 243 39

333 238

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39 39

391 網走

北見

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333 238

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243 240 39

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334

243 240 39

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3/2 11時 12時 13時

14時 15 16時

17時 18時 19時

20時

334

240 243 39

333 238

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39 39

391

21

美幌

弟子屈 市街

kg m-1h-1

2/15 9時 2/16 9時

2/17 9時 2/18 9時

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北海道の雪氷 No.38(2019)

Annual Report on Snow and Ice Studies in Hokkaido

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Hokkaido Blanch of the Japanese Society of Snow and Ice この結果より,11時の時点では,広い範囲にお

いて吹雪は発生していない.その後,時間経過と ともに吹雪発生エリア・吹雪量ともに増加したこ とが確認される.当該エリアにおいて最初に通行 止めが実施されたのは 238号と243号であった

(16時30分).次いで,5分後の16時35分に 39号が,17時に244号が,18時に334号が,

19時30分に39号(区間延伸)と391号が,20 時30分に39号(さらに区間延伸)が追加で実施 された.なお,3日15時に,243号の通行止め区 間の通行止め理由が「吹雪」から「雪崩の恐れ」

へと変更になった(当該区間には美幌峠がある). 本結果より,通行止め区間や地域ごとの特徴が 読み取れる.例えば 16 時30 分前後において通 行止めが実施された238号と39号を比較した場 合,海岸沿いに位置する238号は昼過ぎから強め の吹雪が継続したにも関わらず,吹雪の発生開始 が遅く,かつ比較的吹雪が弱かった39号とほぼ 同じタイミングで通行止めが実施された.一方,

20時30分に延伸された39号の区間については,

夕方以降,長時間にわたって強い吹雪が発生して いたにも関わらず,通行止め実施タイミングは遅 かった.また,弟子屈市街は15時頃から長時間 にわたって強めの吹雪が継続していたにも関わ らず,その中心部が通行止めになることは無かっ た.

(2)2014 年 2 月 16~19 日の暴風雪

2014年2月の暴風雪時の国道通行止め実施履 歴と時間吹雪量の時間変化について述べる.図5 に16日19時から17日9時までの1時間ごとの 時間変化を示す.吹雪量の激しさを示すカラーバ ーは図4と同じものを用いている.ここで,2月 16日21 時以降の243号一部区間を赤の点線で 示してあるが,これは当該時刻に「雪崩の恐れ」

との理由で通行止めが実施されたものである.な お,この区間は図 4に記した 243号の通行止め 区間と同じである.

2013年3月の暴風雪事例と同様,238号と39 号の通行止め実施タイミングは周辺の路線より も早かった(17日4時).次いで5時に334号 が,6時30分に39号(区間延伸)と244号が,

8時30時分に238号(区間延伸)が追加で実施 された.

通行止め実施にいたるまでの時間吹雪量の推 移傾向は2013年3月の事例と類似しており,

海岸沿いに位置する238号は39号に比べて強い 吹雪が継続していたにも関わらず,通行止めの実 施タイミングは39号同じであった.また,弟子 屈市街においても,長時間にわたって強い吹雪が 継続していたにも関わらず,通行止めが実施され ることはなかった.

これらの結果は,エリアや路線(区間)ごとに 吹雪に対する耐性が異なることを意味するもの である.すなわち,通行止め実施判断に関する指 標を作成するにあたっては,その区間ごとの特性 を考慮に入れた検討を行う必要がある.

334

243 240 39

333 238

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391

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2/16 19時 20時 21

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23時 2/17 0時

22

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1時 2時 3時

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4 5時 6時

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334

243 240 39

333 238

244

39 39

391

7 8時 9時

図5 通行止め実施有無と時間吹雪量の関係

(2014年2月16日19時~17日9時)

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北海道の雪氷 No.38(2019)

Annual Report on Snow and Ice Studies in Hokkaido

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Copyright©2019 公益社団法人日本雪氷学会北海道支部

Hokkaido Blanch of the Japanese Society of Snow and Ice 5.通行止め実施と累積吹雪量の関係

次に,通行止め区間ごとに,吹雪発生から通行 止め実施にいたるまでの累積吹雪量との関係に ついて整理する.ここ

では,通行止めの区間 延伸が行われた 39 号 と238号についてはそ の延伸区間を別区間と して扱うこととし,図6 に示すようにそれぞれ 分割した.

まず,各通行止め区間の累積吹雪量を代表する と見なすメッシュの選定を行う.本解析では,各 通行止め区間において最も吹雪が激しかったと 推定されるメッシュを「当該区間を代表する吹雪 量を示すメッシュ」として扱うこととし,吹雪発 生中における任意の 3 時間累積吹雪量が最大と なったメッシュを抽出した.これは,国土交通省 が想定する各除雪工区における 1 サイクルの除 雪時間(除雪作業開始から終了後に戻ってくるま での時間)が約3時間であることに基づく5)

図7に,代表メッシュにおいて吹雪の発生が推 定されてから通行止め実施にいたるまでの各通 行止め区間の累積吹雪量を示す.本結果より,通 行止めにいたるまでの累積吹雪量は通行止め区 間ごとに大きく異なることが示され,その差は最 大で約43倍であった(2013年3月の39号②と 334号).また,総じて2014月2月の事例の方が 2013年3月よりも通行止め実施までの累積吹雪 量は少なかった.

最後に,累積吹雪量の増加速度と通行止めとの 関係を図8に示す.通行止めが実施されたタイミ ングを横軸0hとし,実施までの累積吹雪量につ いて示した.2013年3月の事例を実線,2014年 2月の事例を破線,同一区間を同色で示した.こ の結果,累積吹雪量の増加傾向は2つの暴風雪事 例で大きく異なり,2013年3月の事例では短時

間で急激に増加していたのに対し,2014年2月 の事例では長時間にかけて徐々に増加したこと が確認された.

6.結論と展望

本解析によって,通行止めの実施判断をサポー トするための指標を作成するにあたっては,その 判断基準(閾値)を路線や区間ごとに検討する必 要があることが示された.本研究は気象データの みに基づいて解析を行ったものであり,地形や土 地利用状況,道路の周辺環境等については考慮し ていない.今後は解析事例数を増やすとともに,

気象要素以外についても検討項目に加える.路線 ごとの除雪体制の違いや地域特性,実際のオペレ ーションなど,社会科学的観点からもアプローチ する予定である.

【参考文献】

1)北海道開発局HP,事前通行規制区間

https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/dou_kei/ud4 9g7000000zegg.html#sOffice (2019年6月28 日閲覧)

2)北海道庁HP,道路維持事前通行規制

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kn/sbs/doro_iji _04_jizenkisei.htm (2019年6月28日閲覧)

3)大宮ほか, 2018:「タイトル」を,雪氷研究大会

(2018・札幌)講演要旨集, p.273.

4)武知ほか, 2016:「タイトル」を,寒地技術論文・

報告集, vol.32, pp.157-162.

5)国土交通省HP,第4回冬期道路交通確保対策

検討委員会(2018年11月1日開催)配付資料,

資 料 4: 今 冬 の 大 雪 対 応 予 定 http://

www.mlit.go.jp/road/ir/ir-

council/toukidourokanri/giji04.html (2019年6月28日閲覧)

図7 通行止め実施までの累積吹雪量

図8 通行止め実施にいたるまでの

累積吹雪量増加の様子

238①

39① 39③

39② 238②

図6 区間の分割

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000

39① 39② 39③ 238①238② 243 244 334 391 通行止め区間

吹雪発生から通行止め実施までの 累積吹雪量(kg m-1)

2013年3月の暴風雪

2014年2月の暴風雪

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

-15 -14 -13 -12 -11 -10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 通行止め開始前の時間 (h)

吹雪発生から通行止め実施まで 累積吹雪量(kgm-1)

39① -243

39② -244

39③ -334

238① -391

238②

実線:2013年3月の暴風雪 破線:2014年2月の暴風雪

図 1 3 月 2 日 9 時と 15 時の地上天気図

参照

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