英語学習にたいする理由、目的および態度について
-沖縄国際大学英米言語文化専攻1年生の場合-
English Learning: Reasons, Objectives and Attitudes ―Amongst First-Year English Majors
at Okinawa International University―
松 田 節 子
Setsuko Matsuda
はじめに
本学の英米言語文化専攻1年生はどのような英語学習の理由・目的を持って入学してくる のであろうか。また、英語にたいしてどのような心的態度を持って入学してくるのであろ うか。本研究ノートではこれら2つの疑問について2014年2月に実施したアンケート結果を、
2009年1月に実施したアンケート結果と比較しながら考えてみたい。
本アンケートは学生の英語学習の理由・目的、英語学習への態度、その他を調べることで 授業改善に資することを目的に行っているものである。対象者は2014年、2009年ともに筆者 が担当した「English Reading Ⅰ」と「English Reading Ⅱ」を受講した学生である。アンケー トの参加者は、2014年が43名、2009年が46名である。両クラスとも県内高校出身者が90%以 上を占め、出身高校はいわゆる進学校から職業高校まで幅広い。英語能力については英検準 2級保持者が2014年は43名中30名(69.76%)、2009年は46名中30名(65.21%)、と過半数を 大きく超える。
アンケートは2014年、2009年とも前期に1回、後期に1回行った。前期は学生の学習履歴、
学習時間、学習法などを調べることを目的に行い、後期はEnglish Reading Ⅰ・Ⅱを通した授 業評価を目的として行った。本研究ノートでは後期に行ったアンケート結果を主として見る ことにする。
1.アンケートの概要
目 的:本学英米言語文化専攻1年生の英語学習にたいする理由・目的、態度などに ついて
参 加 者:英米言語文化学科1年生:⑴ 2014年43名(男10名 / 女33名)
⑵ 2009年46名(男10名 / 女36名)
実施年月日:2014年2月4日 / 2009年1月26日 質 問 項 目:12項目(付録参照)
回 答 方 法:多肢選択と自由記述の組み合わせ
1.1 アンケート結果抜粋
ここでは、質問12項目の中から英語学習について問うている、⑴質問項目7:英語学習の 理由・目的、⑵質問項目8:ネィティブ・スピーカー教師かノン・ネィティブ・スピーカー 教師かの選択、⑶質問項目9:ネィティブ・スピーカー教師を選ぶ理由、⑷質問項目10:英 語学習上一番力を入れている領域、そして⑸質問項目11:質問項目10の回答についての理由、
5項目の結果を見ることにする。
⑴ 質問項目7 あなたが英語を勉強する理由・目的はつぎのどれにあてはまりますか。(複 数回答可)
英語学習の理由・目的については、「①英語が好きだから」と「③将来英語関係の仕事に つきたいから」の2つを挙げる者がここ10数年変わらず多い。2014年は「①英語が好きだか ら」を選んだ者が43名中26名(60.46%)、「③将来英語関係の仕事につきたいから」を選ん だ者が22名(51.16%)いた。2009年は①を選んだ者が22名(47.82%)、③を選んだ者が28 名(60.86%)、と2014年と順位が入れ替わってはいるものの、両年ともこの2つの選択肢を 選んだ者が圧倒的に多い。
2番目の選択肢である「②国際語だから」については、2014年では12名(27.90%)が選ん でいる。2009年の結果では6名(13.04%)だったから、今回は約2倍の学生が「②国際語だから」
を選んでいることになる。
最後の選択肢である「④その他」については2014年は3名(6.97%)、2009年は2名(4.34%)
と少ない。この5名は、表現の違いはあるが「外国に旅行する」、「世界を旅する」のように 海外旅行を目的として挙げていた。
それでは、上記のような英語学習の目的を持つ学生達は教師としてネィティブ・スピーカー とノン・ネィティブ・スピーカーのどちらが望ましいと思っているのであろうか。つぎの質 問項目でこのことについて聞いてみた。
表1.1 2014年2月実施 (回答者数 43名)
① 英語が好きだから 26名 60.46%
② 国際語だから 12名 27.90%
③ 将来英語関係の仕事につきたいから 22名 51.16%
④ その他(自由記述) 3名 6.97%
※ ①と②の複数回答 4名 9.30%
※ ①と③の複数回答 8名 18.60%
※ ②と③の複数回答 1名 2.32%
表1.2 2009年1月実施 (回答者数 46名)
① 英語が好きだから 22名 47.82%
② 国際語だから 6名 13.04%
③ 将来英語関係の仕事につきたいから 28名 60.86%
④ その他(自由記述) 2名 4.34%
※ ①と③の複数回答 22名 47.82%
⑵ 質問項目8 英語を学ぶにはネィティブ・スピーカーの先生とノン・ネィティブ・スピー カー(日本人)の先生ではどちらがいいと思いますか。
日本人の「ネィティブ崇拝」(山田 2003)は未だ強いと言われる。本学の学生について も英語を学ぶからにはネィティブ・スピーカーの教師と考えそうなものだが、アンケート結 果を見ると、2014年が「③両方」を選んだ者が35名(81.39%)、2009年が「③どちらでもよい」
が20名(43.47%)、「※両方」が3名(6.52%)である。この回答の背景には「国際語として の英語」、「リンガ・フランカとしての英語」、「World Englishes」、「理想的な英語話者」(Cook
1999, Murphey & Arao 2001)などについての認識が学生の側にも浸透しつつあると先ずは言
えそうである。
他の選択肢については、①のネィティブ・スピーカーを選んだ者が2014年は7名(16.27%)、 2009年は10名(21.73%)であり、②のノン・ネィティブ・スピーカーを選んだ者は2014年 は1名(2.32%)、2009年は7名(15.21%)である。
以上の結果について、つぎの質問項目9ではとくに①のネィティブ・スピーカーを選んだ 者にその理由を聞いてみた。
⑶ 質問項目9 上記8の質問にネィティブ・スピーカーと答えた人に聞きます。あなたは なぜネィティブ・スピーカーの先生を選ぶのですか。その理由を教えてください。(自 由記述)(以下原文のまま)
表1.3 2014年実施(回答者数 43名)
① ネィティブ・スピーカー 7名 16.27%
② ノン・ネィティブ・スピーカー 1名 2.32%
③ 両方 35名 81.39%
④ 分からない 0名 0%
表1.4 2009年実施(回答者数46名-この46名中には無回答 者6名を含む)
① ネィティブ・スピーカー 10名 21.73%
② ノン・ネィティブ・スピーカー 7名 15.21%
③ どちらでもよい 20名 43.47%
※ 両方 3名 6.52%
(※印は学生が書き足した選択肢)
A 2014年
① ネィティブ・スピーカーの先生だと、本物の発音が聞けるので日本人の先生よりよ いと思った。
② 日本人とネィティブ・スピーカーでは発音のしかたが違うから。
③ しっかりした発音を聞きながら授業が受けられるから。
④ 発音、会話、考え方、いろいろなことが学べると思うから。
⑤ ネィティブ・スピーカーだとリスニングが上達しそう。
B 2009年
① 本場の発音やイントネーションを学びたいから。
② 実用的な英語を学びたいから。
③ 発音だけでなくアメリカ文化などをより具体的に分かりやすく学ぶことができるか ら。
④ ノン・ネィティブ・スピーカーだと日本語に頼ってしまうから。
以上、2014年、2009年のコメントから、発音、リスニング、会話、考え方(発想)、と 学生がネィティブ・スピーカーの教師に求めるものがよく見える。
また、2014年実施分では、とくに理由の記述を指示されていない「③(ネィティブ・スピー
カーとノン・ネィティブ・スピーカー)両方」を選んだ35名(81.39%)の中10名がコメン トを書き添えていた。以下に代表的なものを3つ挙げる。(以下、原文のまま)
① ノン・ネィティブ・スピーカーの先生の方が、日本語と英語の文法的な違いをより はっきり説明できる。また、ネィティブ・スピーカーの先生は発音や会話の練習な ど、生きた英語を教えてくれるから。
② ネィティブ・スピーカーだと、生徒たちが分からないところが理解できてなさそう だからノン・ネィティブ・スピーカーの先生もいたほうが良いと思う。
③ ネィティブ・スピーカーだとリスニグが上達しそう。日本人だと、先生方も私たち と同じように英語を勉強してきているので、もし文法などにつまずいてしまった時 にどのように改善した方がよいかなどのアドバイスを適切にしてくれると思うか ら。
以上、「③(ネィティブ・スピーカーとノン・ネィティブ・スピーカー)両方」を選んだ者も、
ネィティブ・スピーカーの教師には発音、リスニング、会話を求めており、「①ネィティブ・
スピーカー」を選んだ者たちとその理由が共通している。一方、ノン・ネィティブ・スピー カーの教師については同じ英語学習者としての経験から英語学習上の困難点が分かり、その 説明ができるからとしている。
ネィティブ・スピーカー、ノン・ネィティブ・スピーカー教師の選択に続いて、学生達自 身が英語学習上一番力を入れている領域について尋ねた。
⑷ 質問項目10 英語を勉強する上であなたが一番力をいれている領域はつぎのどれです か。
授業外で英語学習についての相談を受ける場合、「どうすれば英語が話せるようになりま すか」と尋ねられることが多い。このことから④の会話を選ぶ者が一番多いと予測できそう だが、2014年は10名(23.25%)、2009年は18名(39.13%)で、どちらも過半数に満たない。
2014年については、「③語彙」が16名(37.20%)、と「④会話」の10名(23.25%)を上回っている。
2014年に「③の語彙」を選んだ16名(37.20%)はその理由をつぎのように言っている。
⑸ 質問項目11 上記10の質問にたいするあなたの回答の理由を教えてください。(以下、
③語彙についての5名の記述を挙げる。原文のまま。)
① 語彙が多いほど単語だけでも伝えたいことを伝えられるから。
② 単語が分かればある程度の内容は理解できると思うから。
③ 語彙がないと会話ができないから。
④ 語彙が低かったら、まともにしゃべれないし、文章をつくることもできないから。
⑤ 単語を分かっていればなんとなく英語が聞き取れそうだから。
表1.5 2014年(回答者数 43名)
① 発音 5名 11.62%
② 文法 12名 27.90%
③ 語彙 16名 37.20%
④ 会話 10名 23.25%
表1.6 2009年(回答者数 46名)
① 発音 4名 8.69%
② 文法 11名 23.91%
③ 語彙 12名 26.08%
④ 会話 18名 39.13%
⑤ その他(自由記述) 1名 2.17%
上記5名以外の残り11名も表現は異なるが内容的には上記と似たような理由を挙げていた。
沖縄の中学校、高校、大学生3597名を対象に沖縄の英語教育と米軍基地について大幅な調 査研究をした柴田(2013)は、高校生が身につけたい英語力は「英会話力」だとしている。
柴田の結果は“英語力は英会話力”との世間一般の見方を裏付けるものと言える。
2014年実施の上記項目11で得られた結果は表面上は柴田の結果と一致しないように見える が、(英語学習上)一番力を入れている領域として「③語彙」を選んだ者たちが挙げている、
「単語だけでも伝えたいことが伝えられる」、「単語が分かればある程度の内容は理解できる」、
「語彙がないと会話ができない」、等のような理由から、語彙はコミュニケーション能力(“英 会話力”)に繋がる近道だと考えていることが分かる。
また、2014年実施アンケート結果で「③語彙」を選んだ者が37.20%と一番多かった理由 として、約1年間の授業を通して筆者がReading能力はコミュニケーション能力全体に大きく 関与するもので、Reading能力は語彙力、文法能力、背景的知識などから構成されるもので あることを随時説明したことに影響を受けている可能性も考えられる。
2.アンケート調査結果について 2.1 英語学習の理由・目的
約300人の日本人大学生を対象に外国語の学習目的を調査した八島(2004)は、日本人大 学生は、「異文化への興味や外国人との接触動機を表す『異文化友好オリエンテーション』、 職業や資格試験をめざす傾向である『道具的オリエンテーション』」(65)の2つのオリエンテー ションを合わせもっている傾向があるとしている。また、この2つのオリエンテーションの 相関はかなり高く、英語能力(TOEFL)との相関も高いとの結果も得ている。「英語が好き だから」、「将来英語関係の仕事につきたいから」の2つを英語学習の理由・目的として選ぶ 本学の英米言語文化専攻1年生も、上記八島(2004)の結果と似たような傾向を持っている と言える。2014年実施のアンケート結果では、「英語が好きだから(異文化友好オリエンテー ション)」を選んだ者が60.46%、「将来英語関係の仕事につきたいから(道具的オリエンテー ション)」を選んだ者が51.16%、この2つを複数回答として選んだ者が18.60%との結果であった。
八島(2004)では、「異文化友好オリエンテーション」と「道具的オリエンテーシン」の 相関の高さが英語能力の相関の高さにつながるとしているので、本学の学生についてもこの
2つのオリエンテーションを合わせ持たせる工夫が必要になってくる。とくに、「英語が好き
だから」という漠然とした理由・目的だけを持つ学生にたいしては、「学校のテスト、英検、
TOEIC」といったような短期的かつ具体的な英語学習の理由・目的を持たせることで英語学
習をさらに促進し、ひいては英語能力の向上にもつなげることができる。
英語学習の理由・目的については、上述のように動機づけの観点から見ることに加えて、「国 際語としての英語」を学ぶ理由・目的を学生に明確に認識させることも大事になる。そのた めには、「自分のことを世界に発信する英語」を身につけさせることが必要となる。鈴木(2011)
は国際化時代の英語として、「日本人が日本の歴史、文化、社会、そして何よりも自分の考
えを、英語で外国人に向かって発表できる」(175)とする発信型の英語教育を強く主張して いる。また、鈴木は同書で「国際英語とは自分英語」とも言っており、英米人の英語ではな い自分(日本人)の英語で堂々と世界に向けて発信することも主張している。
柴田(2013)は先に触れた『沖縄の英語教育と米軍基地』の中で、沖縄の英語学習者は英 語学習について明確で具体的なヴィジョンを持ち得ていないとし、「基地がある沖縄でこそ、
鈴木が主張する『ことばは武器である』という見解が強調されるべきである。英語を武器に して、それを使って日本本土からではなく沖縄から『沖縄の基地問題』を世界に知らしめ、
沖縄の立場を国際的に主張するのである。この意識を持てば、沖縄における英語学習の意義 とグローバル市民としてのアイデンティティがより明確にかつ具体的になるはずである。」
(156)と一つの見解を述べている。
英米言語文化専攻の場合、専攻上英米の言語文化についての勉強が大きな部分を占めるこ とになるが、それだからこそ「英語イデオロギー」に絡め取られることがないように、「国 際語としての英語」、鈴木の言うところの「自分英語」の視点を持たせることが大事となる。
筆者は2008年と2009年にEnglish Reading Ⅱのクラスで沖縄について英語で書かれた教材を使 用したことがある。その狙いは外国人に「英語で沖縄について語ることができる自分」をつ くらせることにあったが、最後に行った授業評価では「英語と自分と沖縄」の関係について 再認識を迫られたといったような「英語学習とアイデンティティ」に関するコメントが多くあっ た。(松田 2010)
2.2.ネィティブ・スピーカーかノン・ネィティブ・スピーカーか
英語を学習する上で教師はネィティブ・スピーカーがいいか、それともノン・ネィティブ・
スピーカーか。ここでは、2002年実施のアンケート結果も加えて、2002年→2009年→2014年、
と学生の教師観についての変化を見ることにする。2002年に英米言語文化学科1年次99名を 対象に実施した英語学習に関するアンケートでは、ネィティブ・スピーカーの教師を選んだ 者が66名(66.66%)であった。対して、ノン・ネィティブ・スピーカー(日本人)を選ん だ者が9名(9.09%)、どちらでもよいを選んだ者が24名(24.24%)であった(松田 2003)。
表2 ネィティブ・スピーカーかノン・ネィティブ・スピーカーか
2002年(99名) 2009年(*46名) 2014年(43名)
ネィティブ・スピーカー 66名( 66.6%) 10名(21.73%) 7名(16.27%)
ノン・ネィティブ・スピーカー 9名( 9.09%) 7名(15.21%) 1名( 2.32%)
どちらでもよい 24名(24.24%) 20名(43.47%) -
両方 - 3名( 6.52%) 35名(81.39%)
※-の部分は選択肢として設けていない
*この46名中には無回答者10名を含む
このネィティブ・スピーカー志向に変化が見られ始めたのが2009年に46名を対象に実施した アンケート結果である。2009年の結果では、ネィティブ・スピーカーの教師を選んだ者が10 名(21.73%)、対してノン・ネィティブ・スピーカーを選んだ者が7名(15.21%)、どちら でもよいを選んだ者が20名(43.47%)であった。そして、今回2014年の結果では、43名中ネィ ティブを選んだ者が7名(16.27%)、ノン・ネィティブ・スピーカーが1名(2.32%)、両方 を選んだ者が35名(81.39%)である。
上記3回のアンケートは、実施年度により対象数と選択肢の表現に異なるところがあり、
正確な比較とは言えないところもあるが、学生のネィティブ・スピーカー/ノン・ネィティ ブ・スピーカー教師観についての傾向を知ることはできる。すなわち、本学の英米言語文化 専攻1年生の場合、2002年、2009年、2014年、と年を経るに従って、ネィティブ・スピーカー 教師からネィティブ・スピーカー / ノン・ネィティブ・スピーカー教師両方へと志向が変化 してきていることである。この変化の背景には、既に触れたように「国際語としての英語」、「リ ンガ・フランカとしての英語」、「World Englishes」、「理想的な英語話者」などについての認 識が学生の側にも浸透しつつあることがある。
このことを如実に表しているのが学生の「理想の英語話者観」である。2014年と2009年の アンケートで、質問項目12として、「あなたが理想とする英語話者はどんな人ですか。なぜ その人が理想の英語話者なのかその理由も教えてください」(自由記述)と聞いてみた。そ の結果は、2014年は米軍基地内で翻訳業務に携わっていた祖父、米軍基地内で英語を使って 仕事をしている叔母、中学時代の英語教師など、身近な存在から、プロゴルファーの宮里藍、
ダンサーであり振り付け師でもある仲宗根梨乃など、世界で活躍している日本人を挙げた者 が多かった。一方2009年は、ハワイ大学留学中の姉、米軍基地内で翻訳・通訳業務に携わる 叔母、琉球放送アナウンサーの狩俣倫太郎、英語字幕翻訳家の戸田奈津子、と2014年同様に 身近な存在から社会で活躍している有名人を挙げた者が多かった。(松田 2010)
必ずしもネィティブ・スピーカーに拘らない態度は、質問項目10の「英語学習上一番力を 入れている領域」として「発音」より「語彙」を選んでいる者が多い結果にも現れていると 言える。ネィティブ・スピーカー志向が強い場合はネィティブ・スピーカーのような発音を 身につけることを第一の学習目的とする者が多いことは周知のことである。筆者のアンケー トに参加をしてくれた学生たちの中には、そのような志向からある程度“自由”になってい る者が一定数含まれることがわかる。
柴田(2013、77)では、「ジャパニーズ・イングリッシュ」にたいする肯定意見が大学生 では中学生、高校生より増えているとの調査結果を示しており、このことは英語学習がある 程度進み、言語知識が増えた大学生では「どのような英語(特に発音)で話すか」よりも「何 を話すか」を意識する余裕が出てくるのかもしれない、と分析している。また、柴田(同書、
同ページ)はMatsuda(2003)のインタビュー結果を引いて、「英語習得がある程度進むと、
特に英語母語話者の発音を習得することは現実的に非常に困難であることに気づくかもしれ ない」とも指摘している。この柴田の指摘は、英語習得の面で一番母語の干渉が残るのが発
音であることを考えると納得がいくものである。
3.まとめと今後の課題
本研究ノートでは本学英米言語文化専攻1年生の英語学習の理由・目的と英語にたいする 心的態度について、2014年2月に実施したアンケート結果を、2009年1月に実施した結果と比 べることで見てみた。その結果、次の3つのことが分かった。⑴英語学習の理由・目的が「英 語が好き」という異文化友好オリエンテーションと「将来の仕事のため」という道具的オ リエンテーションの2つに集約されること、⑵英語を習いたい教師は「ネィティブ・スピー カー」よりも「ネィティブ・スピーカーとノン・ネィティブ・スピーカー両方」であること、
そしてその背景には⑶「国際語としての英語」、「リンガ・フランカとしての英語」、「World
Englishes」、「理想的な英語話者」などについての認識が浸透しつつあること、の3つである。
今後の課題としては、⑴英語学習の理由・目的をより正確かつ具体的に把握するための データ収集を行うこと、⑵「英語が好き」という理由を挙げる学生にたいして具体的な英語 学習の目的を持たせる手立てを講じること、⑶日本人英語話者であるとのアイデンティティ をしっかり持ち、自文化を外に発信できる英語能力を養成するための教材を開発・選択をす ること、などが挙げられる。これらの課題については、継続して考えてみたい。
参考文献
Cook, V. (1999). Going beyond the native speaker in language teaching. TESOL Quarterly, 33, 185- 209.
Dornyei, Z. (2005). The psychology of the language learner: Individual differences in second language acquisition. NJ: Lawrence Erlbaum.
Hayashi, H. (2005). Identifying different motivational transition of Japanese EFL learners using cluster analysis: Self-determination perspectives. JACET Bulletin, 41, 1-17.
Noels, K.A., Pelletier, L.G., Clement, R., & Vallerand, R.J. (2000). Why are you learning a second language? Motivational orientations and self-determination theory. Language Learning, 50, 57- 85.
Sugawara, K., et al. (2013). Influences of international attitudes and possible selves on willingness to communicate in English: A comparative analysis of models for Japanese high school and university learners of English. JACET Journal, 57, 21-40.
Sumida, A., Nonaka, T., & Seki, K. (2010). Motivational orientation of college students who self- select to study English. JACET Bulletin, 50, 35-46.
Matsuda, A.(2003). The ownership of English in Japanese secondary schools. World Englishes, 22, 483-496.
Murphey, T. and Arao, H.(2001). Reported belief changes through near peer role modeling. TESL- EJ 5 (3). Online at http://tesl-eg.org/ej19/al.html.
Ryan, S. (2009). Self and identity in L2 motivation in Japan. The ideal L2 self and Japanese learners of English. In A. Dornyei, & E. Ushioda. (Eds.), Motivation, language identity and the L2 self
(pp. 120-143). Clevedon, UK.:Multilingual Matters.
Ushioda, E. (2001). Language learning at university: Exploring the role of motivational thinking. In Z. Dornyei & R. Schmidt (Eds.), Motivation and second language acquisition (pp. 461-492). Honolulu, HI: University of Hawaii Press.
柴田美紀.(2013).『沖縄の英語教育と米軍基地-フェンスのうちと外での外国語学習』.東 京:丸善出版社.
鈴木孝夫.(2011).『あなたは英語で戦えますか(国際英語とは自分英語である)』. 東京:冨山房インターナショナル.
鳥飼久美子(2014).『戦後史の中の英語と私』.東京:みすず書房.
松田節子.(2003).「国際語としての英語の習得と教授について」.『沖縄国際大学外国語研究』. 第6巻、第2号、405-423.
松田節子(2010)「英語学習にたいする態度の変化について-沖縄国際大学英米言語文化専 攻学生の場合-」.『沖縄国際大学外国語研究』.第6巻、第2号、405-423.
村野井仁.(2006).『第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法』.東京:大修館書店.
山田雄一郎.(2003).『言語政策としての英語教育』.広島:渓水社.
八島智子.(2004).『外国語コミュニケーションとしての情意と動機』.大阪:関西大学出版部.
付録
アンケート
(本研究ノートに関連する部分のみ記載)
※ このアンケートはEnglish Reading Ⅱの授業の改善を図るために行うものです。ご協力を お願いします。
※ 選択肢のある質問には該当する項目に○をつけてください。
B.英語学習について
7 あなたが英語を勉強する目的はつぎのどれにあてはまりますか。
① 英語が好きだから ② 国際語だから ③ 将来英語関係の仕事につきたいから
④ その他(できるだけ具体的に書いてください)
8 英語を学ぶにはネィティブ・スピーカーの先生とノン・ネィティブ・スピーカー(日 本人)の先生ではどちらがいいと思いますか。
① ネィティブ・スピーカー ② ノン・ネィティブ・スピーカー ③ 両方 ④ わからない
9 上記8の質問にネィティブ・スピーカーと答えた方に聞きます。あなたはなぜネィティ ブ・スピーカーの先生を選ぶのですか。その理由を教えてください。(自由記述)
10 英語を勉強する上であなたが一番力をいれている領域はつぎのどれですか。
① 発音 ② 文法 ③ 語彙 ④ 会話
11 上記10の質問にたいするあなたの回答の理由を教えてください。(自由記述)
12 あなたが理想とする英語話者はどんな人ですか。なぜその人が理想の英語話者なのか その理由も教えてください。(自由記述)