日本小児循環器学会雑誌 6巻2号 333〜334頁(1990年)
〈研究会〉
第13回 北海道小児循環器研究会
日 時 平成元年11月18日(土)
会場山之内製薬大通りビル9F
1.当科における大動脈縮窄複合・大動脈離断症の 手術経験
国立札幌病院心臓血管外科
清水 元良,松浦 弘司 俣野 順,明神 一宏 北海道大学第2外科
酒井 圭輔,田辺 達三 昭和60年8月より平成元年11月迄に当科で経験した CoA complex 8例, IAA 2例を対象とし,その術前 状態,手術々式について検討した.術前全例で心不全 を合併しており,上下肢圧較差は,IAAで小さい傾向 にあった.手術はCoA complexでは7例に鎖骨下動 脈フラップ法を,1例で人工血管による大動脈再建術 を施行し,IAAに対しては人工血管による大動脈弓再 建術を施行した.肺動脈絞拒術は3例に施行した.一 期的に行った大動脈離断症の1例,二期的に行った CoA complexの一例と緊急的に心内修復を行った2 例を失ったが,初回手術では10例中8例を救命し得た.
2.三尖弁閉鎖症に対するFontan手術の経験 北海道大学医学部第2外科
朝田 政克,松居 喜郎,合田 俊宏 酒井 圭輔,田辺 達三
Fontan手術が行なわれた3例の三尖弁閉鎖症の術 後血行動態と心機能の変化,及び運動耐容能を調べた.
症例は9歳から12歳.Edward Burchell分類Ilb,
Ia,およびIbである.1例は直接右房肺動脈吻合を行 ない,他の2例は右房切開により後壁を作成し,前壁 は人工血管等でパッチを形成した.
術前の肺血管抵抗係数はO.4から4.OU・m2であった が,術後遠隔期にはすべて1.3U・m2以下になった.し かし,術直後は2.3U・m2以上に上昇するものがみられ た.左室駆出率,左室収縮末期圧,左室収縮末期容積 は,術後は術前より低下していた.術後のTreadmill testでは,いずれもBruceプロトコールのstage 2で あり,運動能力の低下が認められた.
3.肺動脈絞拒術後,左室型単心室に対する
modified Fontan手術札幌医大第2外科
馬場 雅人,安喰 弘,鎌田 幸治 栗本 義彦,竹田 晴男,小松 作蔵 肺動脈絞拒術後の左室型単心室症例に対しmodifed Fontan手術を施行し,失った症例を経験したので手 術適応を中心に報告した.
症例は6歳女児.8ヵ月時,心臓カテーテル検査を 受け,単心室,LTGA, PHを診断され,11ヵ月時,肺 動脈絞掘術を施行した.根治手術時の肺動脈平均圧は 17mmHgであり肺血管抵抗値Rpは1.25であった.
Fontan型手術の適応と考え根治手術を施行した.術 後血行動態は比較的安定していたが,術後1日目の夕 方,突然,体血圧の低下と心房圧の上昇をきたし,以 後種々の治療にもかかわらず死亡した.肺組織所見で は正常の肺動脈に比し,中膜が肥厚している所見が認 められ,肺組織所見から本症例はFontan型手術の適 応外と考えられた.
4.当院NICUで経験した先天性心疾患
旭川厚生病院小児科森 善樹,丸山 静男,坂田 宏 平元 東,白井 勝,柳川 淳一 旭川医大小児科 岡 隆治
1986年〜1989年7月までに新生児期に当院NICU
に入院した598名中CHDは45例(7.6%)で,うち低出 生体重児が24.5%を占めた.病型では合併奇形を伴うものも含めるとVSDが55.6%と最も多く, TGA
(8.9%),Asplenia(6.7%), TOF(4.4%)の順であ
り,ASDはPDA合併の1例のみであった.入院理由
は心雑音,呼吸障害,チアノーゼがほとんどで,院外 出生児に入院時期の遅れが目立った.入院時期が早期 なものほど重症であったが,入院時,心雑音が聴取さ れずECGが非特異的で,心拡大も明確でないものが 多かった.心エコー法の普及などにより新生児期の心 カテ症例が減り,心カテなしで手術(BASを含む)を 施行したものは5例であった.死亡は22%で手術に至らず死亡した例は5例で,3例は染色体異常,低出生 体重児であった.
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334−(112)
5.胎内心不全による非免疫性胎児水腫(NIHF)の 治療経験
北海道立小児総合保健セソター
水江 伸夫,伊藤 介一,新飯田裕一 池田 和男,梅津 征夫
NIHFは非常に予後不良の疾患とされてきたが,近 年超音波検査の発達と周産期集中管理の進歩により,
救命例が増加してきている.我々は1988年9月より 1989年9月までの1年間に,胎内心不全が原因と考え られるNIHF 3例を経験し,いずれの症例も救命し得 たので報告する.心不全の原因は先天性肺奇形,発作 性上室性頻拍症,Ebstein奇形であった. NIHFの周産 期集中管理手順を中心に報告する.
6.胎児不整脈で発見された新生児心臓腫瘍の1例 札幌医科大学小児科
要藤 裕孝,長田 伸夫
沢田陽子,富田英
苫小牧市立病院小児科我妻 嘉孝,藤林 伸助 黒沢 洋一,藤川 知子 妊娠中に胎児心音不整が認められ,胎児心音エコー により心臓内腫瘍が発見され,結節性硬化症の新生児 例を経験した.出生後まもなくより発作性上室性頻拍 が頻発し,常用量のジソピラミドではコソトロール不 可能であった.血中濃度をモニターしながらジソピラ ミド35mg/kg/dayまで増量し,投与間隔を1日6回 にすることにより頻拍発作は抑制された,
胎児不整脈の原因疾患の検索に胎児心エコーは有用 であった.常用量のジソピラミドではコントロールで きない上室性頻拍では,血中濃度をモニターしながら ジソピラミドを増量すべきであると考えられた.
7.乳児期早期に高度肺血管病変を発現した完全大 血管転換症1型の3例
北海道大学小児科
清水 隆,信太 知 小西 貴幸,長谷 直樹 天使病院小児科 太田八千雄 国立函館病院小児科 浜田 勇 生後2ヵ月以内に高度肺血管病変(PVD)を生じ,
心不全にて死亡した3例の完全大血管転換症(TGA)
につき報告した.3例とも心室中隔欠損症を伴わず,
症例2のみ動脈管開存症を合併していた.いずれも生
後半月以内にBASを施行し有効であったが次第に
PaO2は低下し,心臓カテーテル検査では左室/右室収 縮期圧比は1以上,肺血管抵抗は症例1,3でそれぞ日小循誌 6(2),1990 れ11.4と11.1単位と上昇していた.剖検では症例1で Heath−Edwards分類III度,症例2で同分類IV度でmi−
crothrombusを散在性に認めた. PVDの原因として 症例2は動脈管,症例1,3は気管支動脈一肺動脈側 副血行路の存在を考えている.TGAはPVDを高頻度 にかつ早期に発現すると言われるが,生後2カ月以内 にPVDが完成した例は稀である.
8.早期手術にもかかわらず2歳前にアイゼンメン ジャー化したVSI)の1例
北海道大学附属病院小児科
羽田 裕子,信太 知,小西 貴幸 清水 隆,長谷 直樹
天使病院小児科 太田八千雄 乳児期にlarge VSD+PHにおいては,2歳前後ま でに手術することが望ましいと言われているが,今回 私達は1歳2ヵ月で手術を行ったにもかかわらず,そ の後もPHが進行し,アイゼンメンジャー化を来して 2歳10ヵ月で死亡した例を経験した.large VSD+PH では,希ではあるが本症例の様に早期に肺血管閉塞病 変が進行する場合があり,診療に於いては,大きな欠 損口が存在するにもかかわらず,聴診にて相対的僧帽 弁狭窄による心尖部での拡張期雑音を聴取しない事 や,心エコーにてLA, LVの拡大が軽度の場合には,
肺血管抵抗の上昇を疑い早期に手術する必要があると 思われる.
9.Jatene手術を受けた2例の大血管転換症の術 後の心機能にっいての検討
旭川医大小児科 岡 隆治,土田 晃 斉藤 隆,秋葉 真弓 市立旭川病院胸部外科
青木 秀俊,久保田 宏,村上 忠司 Jatene手術を受けた2例の大血管転i換症の術後の 心機能について検討した.左室トレーニング手術の時 期が遅く,Jatene手術までの経過観察期間の長かった 1例では,解剖学的肺静脈基部が動脈瘤状の拡張を示 しており,大動脈弁閉鎖不全の程度も強かった.また 左室造影にて前壁から側壁にかけてのhypokinesisの 所見を認め,左室の駆出率は51%と低下していた.ま た他の1例で右室流出路の狭窄を認めた.前者ではパ ルスドプラーで計測した僧帽弁口での血流パターンの 分析で拡張早期流入波形(E波)と心房収縮波形(A波)
のピーク値の比A/Eが1.43と高く,後者では三尖弁口 でのA/Eが1.35と高値を示した,今後二期的Jatene 手術では肺動脈絞拒術の時期とその後のJaten手術ま での期間について検討が必要と考えられた.
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