社団法人 日本航空宇宙工業会 革新航空機技術開発センター
2005 年 3 月
航空機工業の競争力強化に関する調査研究 成 果 報 告 書
No.1606
ISSN 1342-4017
新しい動的現象を加味した
ヘリコプター翼型の解析・設計技術の研究
この事業は、オートレースの補助金を受けて実施したものです。
Auto Race
ま え が き
日本航空宇宙工業会は、平成16年度事業の一つとして、日本小型自動車振興会から補助金の 交付を得て、「航空機工業の競争力強化に関する調査研究」を下表のように実施した。
本書は、そのうち「新しい動的現象を加味したヘリコプター翼型の解析・設計技術の研究」に ついて川崎重工業 ㈱ に委託して行った研究の成果報告書である。
研究の実施に対し、その実現と推進にご尽力賜った経済産業省ならびに日本小型自動車振興 会のご関係者に厚くお礼申し上げる。
平成17 年 3 月
社団法人 日本航空宇宙工業会 革新航空機技術開発センター
報告書番号
1 6 0 1
1 6 0 2
1 6 0 3
1 6 0 4
1 6 0 5
1 6 0 6
1 6 0 7 委託会社
研 究 名
新ピーニング法の航空機部材への 適用技術の研究
ECM数値シミュレーション技術適用 によるECM加工技術の研究
ジェットエンジンダクト用高耐久可動部 シールの研究
循環制御技術による航空機の高揚力 性能改善の為の空力設計技術の研究 新しい動的現象を加味したヘリコプ ター翼型の解析・設計技術の研究 航空機への摩擦攪拌接合(FSW)の 適用研究
新表面改質技術、新素材を用いた 高疲労特性部材の研究
区分
完了
同
同
同
継続
同
同 分野
機体/
空力
機体/
空力 機体/
空力 機体/
空力 機体/
空力 推進
推進 No.
1
2
3
4
5
6
7
石川島播磨重工業㈱
新明和工業㈱
川崎重工業㈱
富士重工業㈱
川崎重工業㈱
富士重工業㈱
イーグル・エンジニアリ ング・エアロスペース㈱
調査研究委託会社 川崎重工業(株)
新しい動的現象を加味した
ヘリコプター翼型の解析・設計技術の研究
目 次
第1章 研究の概要... 1
1.1 研究目的... 1
1.2 実施期間等... 2
1.3 実施内容... 3
1.4 成果概要... 4
1.5 所見... 6
第2章 研究の内容... 7
2.1 緒言... 7
2.2 目的... 11
2.3 方法... 12
2.4 解析結果及び考察... 20
2.5 結論... 42
第3章 問題点と今後の課題... 43
3.1 問題点... 43
3.2 今後の課題... 43
第4章 関連事項調査... 45
4.1 関連特許... 45
4.2 参考技術文献... 49
APPENDIX ... 51
APPENDIX-1 代表的ヘリコプタブレード用翼型の拡大図... 51
APPENDIX-2 静的CFD解析による各翼型の3分力特性... 55
APPENDIX-3 各翼型の高マッハ数領域での抵抗発散特性及びモーメント変化特性 ... 71
APPENDIX-4 各翼型動的CFD解析結果の空間マッハ数分布履歴... 79
APPENDIX-5 各翼型の動解析によるマッハ数-3分力特性履歴... 87
APPENDIX-6 1周期のマッハ数-3分力履歴に関する動的CFD解析と静的CFD解析からの 内挿値の比較... 95
第1章 研究の概要
1.1 研究目的
ヘリコプタは現在実用化されている唯一の垂直離着陸できる民間機であり、また現時点で我 が国の航空機メーカーが自社ブランドで販売している民間航空機は川崎重工業のBK-117と三菱 重工業のMH-2000の2種類のヘリコプタだけである。また利用面でも民間の飛行場が少ない我が 国に適した航空機であり多方面で利用されている。このようにヘリコプタの設計・製造技術は 我が国の航空産業にとって非常に重要である。
ヘリコプタにおいても他の航空機と同様に空力特性が性能に対して大きな影響を持っており、
翼に相当するメインロータブレードの高性能化は騒音・燃費・高速性などの性能向上に有効で ある。ロータブレードは文字通り回転する翼であり、翼型の断面形状を持ち、その特性がロー タ全体に及ぼす影響は大きい。
本研究は、このロータブレード用翼型の性能向上を目的としたものである。今までブレード 翼型設計において見逃されてきた、速度変動による動的特性に着目し、特に動的特性が大きく 依存する高速前進飛行時の空力特性の改善とそれによるヘリコプタの性能向上を目的とする。
具体的な数値目標としては代表的な中型民間ヘリコプタで300 km/hの前進飛行中に顕著な性能 低下を生じないブレード翼型設計を目指す。一方、現在の技術では約250 km/hが限界となって いる。
翼型の設計は、形状の定義と、その翼型の性能評価の繰り返しからなる。特に近年、自動最 適化技術の進歩により、コンピュータによる解析で適切な性能評価さえできれば、コンピュー タ内部で自動的に膨大な試行錯誤を繰り返して最適な形状を設計することができるようになっ ている。そこで、本年度の研究では、新しいコンセプトを導入した解析方法により、より実現 象に即した性能解析法の確立を目的とする。
1.2 実施期間等
(1) 実施期間
平成16年7月~平成17年3月
(2) 実施場所
川崎重工業㈱航空宇宙カンパニー
〒504-8710 岐阜県各務原市川崎町1 TEL0583-83-5346、FAX0583-82-1519
(3) 研究主務者
嶋英志(技術本部研究部、専門監)
1.3 実施内容
本年度は以下の内容を実施した。
(1) 代表的ブレード翼型の収集
下記の作業に用いるため、基本的な翼型3種、実用的高性能翼型5種の翼型断面形状を収 集した。
(2) 代表的ブレード翼型に対する静的解析の実施
8種類の翼型について、マッハ数0.2から0.8超までの流れ条件について、合計約1400ケ ースの静的CFD(Computational Fluid Dynamics:計算流体力学)解析を実施し、揚力、抵 抗、モーメントの特性を取得した。
(3) 代表的ブレード翼型に対する動的解析の実施
8種類の翼型について、150 kt(約278 km/h)飛行条件近似条件で2次元の動的CFD解析 を実施し、動特性を取得した。
(4) 静的解析結果と動的解析の比較による性能評価法の抽出
上記作業(3)(4)で得られた特性、及び(2)で得られた高速飛行時の翼型に対する要求を 比較し、高性能翼型設計に必要な性能及び性能評価法を取得した。
1.4 成果概要
代表的ブレード翼型8種類に対して、マッハ数0.2から0.8以上までの速度範囲、失速若しく はバフェットオンセットまでの迎角範囲において約1400ケースの静的CFD解析を実施し、低速 から高速までの統一的な静的な性能評価法(CL300:抵抗係数Cdが0.03となる揚力係数CL)を見出 した。また同翼型に対して速度変動を含む動的CFD解析を実施し静特性と比較した。
速度変動の影響により動的失速は衝撃失速の入り混じった複雑なものになり動的失速後の特 性は静特性から推定することはできないことが分った。しかしCL300を用いて動的失速が生じる か否かの判定は可能である。図1.4-1に基本翼型NACA0012の動的解析の一周期の履歴をマッハ 数-3分力(揚力係数:CL、抵抗係数:CD、モーメント係数:Cm)で示し、同時に特性CL300特性
(図中ではCL @ CD =0.03)を示す。CL300はマッハ数毎に利用できる静的な最大揚力を示すとい えるが、動解析において、マッハ数低下と共に揚力が徐々に増え、最終的にCL300を上回ると大 きな剥離が発生し、抵抗急増・モーメント急変を招いていることが分る。
また図1.4.-2に示されるように、動的失速が生じない場合の特性は静特性からほぼ予測可能 であることが分った。
8種類のブレード用翼型のCL300特性を図1.4-3に示す。同時に近似3次元解析(翼素理論)よ って算出した中型ヘリ296.32 km/h(160 kt)水平飛行時にブレード外端付近の翼型が曝される、
マッハ数-揚力係数の履歴を示す。160 kt飛行時の要求性能を上回るCL300特性を持つ翼型はな く300 km/h水平飛行可能な翼型の設計がチャレンジングな目標であることが分る。
NACA0012
0.2 0.4 0.6 0.8
-0.8 -0.4 0 0.4 0.8 1.2 1.6 2
Mach CL
CL@CD=0.03
Mach CL
CL-local
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4
CD Cm
CD-local Cm-local
図1.4.-1 NACA0012翼型のマッハ数-3分力の履歴とCL300特性
NACA0012
0.2 0.4 0.6 0.8
0 0.4 0.8 1.2 1.6
Mach CL
CL-Static
CL
CL-Dynamic NACA0012
0.2 0.4 0.6 0.8
0 0.1 0.2 0.3 0.4
Mach CD
CD-Static
CD
CD-Dynamic
NACA0012
0.2 0.4 0.6 0.8
-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1
Mach
Cm
Cm-Static Cm
Cm-Dynamic
図1.4-2 NACA0012翼型のマッハ数-3分力の履歴について動解析(細線)と静解析(太線)
の比較(揚力(左上)、抵抗(右上)、モーメント(左下))
Cl300 of Each Airfoils
-0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
MACH
CL
NACA0012 NACA23012 NACA23008 VR-7 VR-8 HH-02 SC1095 AK100D 160kt 96%
図1.4.-3 各翼型のCL300特性(実線)と300 km/h水平飛行時のロータブレード外端の 翼型が曝される条件(破線)
1.5 所見
(1) 静的CFD解析と動的CFD解析の比較により、静的CFD解析を用いたブレード翼型の総合的 評価方法の開発と、静的CFD解析の適用限界を明確化が、本研究の最大の成果であると 考える。
(2) 本研究の初期に実施した、基本翼型NACA0012の動的解析では速度変動の影響が顕著に現 れたので、翼型一般に対して速度変動の動的影響が甚大であると予想した。しかし、
様々な実用的なブレード翼型に対して解析を実施した結果、確かに速度変動を含む動的 失速の動特性への影響は顕著であるが、動特性が静特性と明らかに異なる領域は、流れ の剥離により大幅に性能が低下して実用範囲とはいえないことが分った。実用範囲の動 的特性に関しては、静的CFD解析で推定可能な部分が多かったのは、予想外であった。
しかし、1ケース毎に数十時間の計算時間を要する動的解析に比べて、計算時間が少な くて済むことを意味するので、設計適用に用いる解析としては喜ばしい方向の誤算とい える。
(3) 平成16年度作業は、平成17年度に実施予定の新翼型設計のための性能調査法の調査の位 置付けであったが、その役割をはたす成果は残すことができた。また、平成16年度の解 析から、動的現象を有効活用することで、薄翼の弱点の低速高迎角の弱点をカバーし、
高速側の長所を生かすことで、低速高迎角から高側低迎角まで優れた特性を持つ翼型を 設計できる指針が得られたので、新翼型設計の見通しは明るく、平成17年度の翼型設計 に研究を進めたい。
(4) 低速側での短時間の動的失速の活用が総合的な高性能翼型の設計に有効であるとの知見 を得たが、その程度を定量的に表現するには至らなかった。もし、この定量評価が可能 となれば、翼型設計時点において、長時間を要する動的CFD解析を不要とできるはずで ある。平成17年度の研究において、動的解析を用いて翼型設計を実施すると同時に、動 的失速の許容範囲に関する知見を深めてゆく必要がある。
第2章 研究の内容
2.1 緒言
ヘリコプタは頭上の回転翼を回転させることにより、揚力と推進力を得る。回転翼は2枚か ら6枚程度の細長い翼からなり、ロータブレード若しくはヘリコプタブレードあるいは単にブ レードと呼ばれる。ブレードは前進飛行中、その位置(アジマス角φ:後方を0 °としロータ の回転方向を正に取る)によって異なる速度の流れを受ける。速度の違いによる揚力の変化を 相殺する目的もあって、一周期の間にサイクリックピッチと呼ばれる翼姿勢の調整によって迎 角を調整しなければならない。ブレードを構成する翼型には、迎角と速度に対して適正な利用 範囲があり、その領域を越えると急激な抵抗の増大や揚力の低下を招く。ピッチ角及び相対速 度変化の結果、高速飛行中には一周期中に、高速低迎角の前進側ではブレード上に衝撃波の発 生による抵抗の急増、低速高迎角の後退側では失速による抵抗急増・揚力低下が発生する場合 がある。ヘリコプタの飛行状態の関係で述べると、高空や大重量状態でのホバリング時に大き な揚力、即ち、ブレード翼型の高迎角での利用が必要となるのは当然として、高速飛行時にも 後退側ブレードが大迎角に曝されるため、失速によって、最大速度が制限されるということも 起こる。そこで、高速性能にも低速性能にも優れたブレード用翼型を設計することができれば、
ヘリコプタの高速性を改善することはもちろん、燃費の低下による経済性の向上を実現するこ とができる。
ま た 、 ヘ リ コ プ タ の 高 速 飛 行 時 に は 翼 端 で の 衝 撃 波 の 発 生 に 伴 うHSI(High Speed Impulsive)ノイズが発生することが知られているが、高速性能に優れた翼とは即ち衝撃波の弱 い翼であり、HSIノイズの低下を実現できる。また、失速や衝撃波の発生により急激な揚力の 変化が生じ、これはブレードの振動となって機体に伝わるので、これらを現ずることは快適性 の向上にも有効である。また、ブレードの長手軸周りに働くねじりモーメント(以下、単にモ ーメント)は、ブレードをねじり変形させることで有効な迎角を変動させロータブレードの運 動に大きな影響があるが、衝撃波や失速によって、このモーメントも大きく変動するので、揚 力や抵抗だけではなくモーメントにも充分な注意を払う必要がある。2次元翼断面に働く力は、
揚力、抵抗、モーメントの三つであるから、結局、全ての成分について注意が必要ということ になる。
このためにブレードの翼型には低速高迎角と高速での衝撃波特性の両方の特性に優れたもの が選ばれ、低速性能の指標としては最大揚力係数(CLmax)が高速性能の指標としては抵抗発散マ ッハ数(MDD:Drag Divergence Mach Number)がしばしば用いられる。ただし、ヘリコプタ以外 の固定翼機でも、この二つの性能指標が重要なことに違いはないので、これらは、特に回転翼 機特有というわけではない。ヘリコプタに特徴的なのは、低速高迎角から高速低迎角まで中型
ヘリの場合で、一周期0.16秒程度の短時間で変化することで、この急速な変化による動的現象 が生じることである。
後退側での失速は迎角がピッチ運動によって非定常に変動するため通常の風洞試験などでの 静的なものとは異なった動的失速となり、ヘリコプタ特有の空力の重要項目として風洞実験や 数値計算による研究が進められている。1)-13)(Computational Fluid Dynamics:計算流体力学) では乱流モデルによって解が違うが、いずれも実験との定量的一致には今一歩である。しかし、
定性的には良い一致が得られている。(図1.4-1、2、3)
これらの研究の多くは、2次元風洞試験において、迎角を周期的に変化させるイメージの試 験あるいはCFD解析であり、速度は一定とされているのがほとんどである。一方、実機の飛行 状態では、迎角と共に速度も遷音速から低速まで変化する。実機を忠実に模擬したサイクリッ クピッチ機構を有する模型ロータを用いた風洞試験ならば、この現象は再現できる。しかし翼 型設計に一般に用いられる2次元風洞実験等では、風速を短周期で変化させて速度変化を模擬 することは不可能である。後に示すように、風速を変化させる代わりに翼を前後に移動させる ことによっても相対速度を変えることができる。風洞試験において、このような運動を行わせ
た例14)15)もあるが、実機を模擬するパラメータを風洞試験で実現するのはきわめて困難であり、
実施例はない。また、速度変動を含めたCFD解析を最適設計に組み入れる試み16)もあるが、文 献で公開されている範囲では速度変動幅も小さいので、衝撃波を含む失速を捉えておらず、速 度変動を伴う動的失速の現象を明らかにしているとはいえない。後述するが速度変動を含む場 合、失速に対する衝撃波発生の影響は極めて大きい。
一方、CFDを用いれば風洞試験の難しい現象のシミュレーションも可能である。ロータ風洞
試験を模擬した3次元CFDには膨大な格子点と計算時間が必要であるが、近年の並列スーパーコ ンピュータを用いることで解析は実行可能になった。17)18)しかし、これらの3次元計算は未だ 非粘性(Euler方程式)レベルである。失速を再現するにはRANS(Reynolds Averaged Navier- Stokes)解析や、更に多大の格子点と計算時間を要するLES(Large Eddy Simulation)等の粘性 解析が必要であるが、いずれにしても非粘性解析に比べて遥かに計算負荷が大きい。現時点で も最高性能の並列コンピュータを用いればこのような粘性解析も不可能ではないが、設計適用 のためのパラメトリック解析を考えると3次元粘性解析の直接利用は適切とはいえない。
また、今後の空力設計を考える上で、自動最適設計技術の利用を忘れることはできない。設 計、ここではブレード翼型の形状を、数個から数十個のパラメータ表現し、コンピュータで適 切な性能評価計算を実施することができれば、コンピュータ内部で数十から数千回のパラメー タ設定と性能評価の繰り返しを行うことで、最適な設計を実行することができる。そのために、
適切に設計対象の性能を評価できる手法が必要であり、また、その手法は数多くの繰り返しが 可能になる程度の短時間で終了する必要がある。時代と共に流れ解析技術やコンピュータの速
度は進歩し、いずれ、3次元粘性解析によるロータ解析を自動最適設計のループに組み入れら れる時代も訪れると思われるが、少なくとも、ここ数年のうちには不可能である。したがって、
自動最適設計に組み込むことが可能な規模の計算量の解析技術の開発が重要である。
そこで、本研究では、速度変動を含むブレード翼型の動的特性に着目し、それを2次元CFDで 解析することによって高性能なブレード翼型設計に用いることのできる技術の調査・研究を実 施する。
M=0.2 Re=5E5 2次元ダイナミックストール
-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
-10 0 10 20
迎角
CL,CD,CM
CL-EXP CL-SA
図1.4-1 速度一定の動的失速の迎角-揚力係数特性。SA(Spalart-Allmaras)乱流モデルを 用いたCFD結果(実線)と(破線)の比較を示す。筆者らによる文献1)より。
M=0.2 Re=5E5 2次元ダイナミックストール
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8
0 5 10 15 20
迎角
CL,CD,CM
CD-EXP CD-SA
図1.4-2 速度一定の動的失速の迎角-抵抗係数特性。SA乱流モデルを用いたCFD結果(実線)
と実験値(破線)の比較を示す。筆者らによる文献1)より。
M=0.2 Re=5E5 2次元ダイナミックストール
-0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0.0 0.1
-10 0 10 20
迎角
CL,CD,CM
CM-EXP CM-SA
図1.4-3 速度一定の動的失速の迎角-モーメント係数特性。SA乱流モデルを用いたCFD結果
(実線)と実験値(破線)の比較を示す。筆者らによる文献1)より。
2.2 目的
本研究では、比較的計算時間の短い、2次元のCFD解析をより優れたヘリコプタブレードの設 計に適用することを大目的とし、平成16度の研究では従来見逃されてきた速度変動の動的効果 の影響を2次元CFDでどのようにブレード翼型の評価に結び付けるかの手法確立を目的とする。
この設計法の確立により、様々な条件での翼型設計が可能となるが、本研究の成果が端的に現 れるものとして、中型ヘリが300 km/hで飛行している条件でも、顕著な性能低下を生じない翼 型の設計を目標とする。(現在の代表的な民間中型ヘリコプタは高速領域でのロータ駆動トル クの増大等により最大速度が250 km/hに制限されている。)
この性能評価指標を用いて平成17年度には具体的な翼型設計を実施し、更にその後、3次元 の大規模なCFDによって、その効果を確認することを計画している。
2.3 方法
2.3.1 概要
(1) CFD(計算流体力学)による翼型性能の取得
ブレード翼型はマッハ数、迎角の非常に広い範囲で用いられるため、翼型の特性を風洞 試験で取得するには多大の時間と費用を必要とする。また、2次元の風洞試験は側壁境界 層の影響の除去など技術的に難しく、異なった風洞で行われた実験を同列で比較するこ とはできない。したがって、様々な翼型の特徴を実験的に統一的に評価するには更に時 間と費用を要することになる。そこで、本研究では様々な翼型について同じ条件で実施
するCFD解析を翼型特性取得のために用いる。また、設計時に用いるツールとしても、
CFDコードの利用は非常に重要である。
翼型の空力特性を高速特性と低速特性に分けたとき、高速側の代表的な性能指標であ る、MDD(定義は後述)がCFDで正確に求められることは知られている。低速の代表的な性 能指標である最大揚力に関しても、CFDでかなり良好な結果が得られることが確認され ている。19)また、動特性に関しても1)、図1.4-1、2、3に示されるように、少なくとも定 性的にはCFDと実験との一致は良好である。よって、本研究でCFDにより翼型性能を取得 するのは妥当な方法であると考える。
(2) 代表的ブレード翼型に対する静的CFD解析による静特性の取得と評価法の検討
従来のブレード翼型設計はCFDや風洞試験を用いて取得した静的特性を用いて実施され ている。そこで様々な特徴をもつ翼型の静特性を、CFDによって取得しておく。ヘリコプ タブレード用翼型の設計に供する手法を開発するのが本研究の目的であるので、ヘリコ プタブレード用の代表的翼型を収集し解析する。また、ブレード翼型の用いられる幅広 い条件での性能を統一的に評価できる手法を検討する。
(3) 基本翼型に対する動的CFD解析による動的現象の把握
様々な文献でも静的特性・動的特性が調べられている基本翼型NACA0012について、動的 CFD解析を実施し、本研究で特に注目する、速度変動の動的効果に関する流体現象や、そ の翼型性能への影響を調査する。
(4) 代表的ブレード翼型に対する動的CFD解析による動特性の取得
収集した代表的なヘリ翼型に対して動的CFD解析を実施し、その挙動を調べ、翼型毎の 性能の特色を抽出する。
(5) 動的CFD解析結果と静的CFD解析結果の比較検討によるブレード翼型性能評価法の設定 上記項目(3)、及び(5)で調査した、静的及び動的特性を比較検討することによって、速 度変動を含む動的特性を考慮した、ブレード翼型評価方法を設定する。
2.3.2 代表的ブレード翼型の収集
次のような翼型を収集し、本研究に用いた。各翼型の特徴を次に示す。なお、実機におい ては、モーメントを調整するために、後縁に短い板状のタブをつけることがあるが、本研究 においては、翼型の一部として定義されているもの以外は含んでいない。また、各翼型の拡 大図を、APPENDIX-1に添付する。
(1) NACA0012
キャンバ(翼のそり)のない対称翼で、上下面が簡単な数式で表されるので、空力設 計・解析において基本的な翼型として用いられる。また、対称翼のモーメント変化が少 ない特性などから、CH-47(旧型)等の実用機にも用いられた伝統的な実用翼型である。
図2.3.2-1 NACA0012
(2) NACA23012
厚み分布はNACA0012と同じであるが中心線にキャンバを持たせることで前縁が下に垂れ 下 が っ た ( ド ル ー プ ) 形 状 と し て 、 最 大 揚 力 の 向 上 を 実 現 し た 翼 型 で あ る 。 川 崎BK- 117C1等の機体にはこの翼型を修正したものが用いられる。
図2.3.2-2 NACA23012
(3) NACA23008
本研究の中で、薄翼で低速での失速特性を改善する前縁ドループのある翼型が高性能で ある可能性が示唆されたので、そのような翼型の代表として取り上げた翼型である。キ
0.2 0.4 0.6 0.8 1
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
x/c y/c NACA0012
0.2 0.4 0.6 0.8 1
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
x/c y/c NACA23012
ャンバはNACA23012と同じで、中心線周りの厚みが2/3になっている。実機での利用状況 は不明であるが、調査した範囲では例はなかった。
図2.3.2-3 NACA23008
(4) VR-7
ボーイングCH-47の新型に用いられている高性能翼型である。VR-7は翼端をのぞく部分 に用いられる。
図2.3.2-4 VR-7
(5) VR-8
ボーイングCH-47の新型に用いられている高性能翼型である。VR-8はVR-7より薄翼で高 マッハ数に曝される翼端部分に用いられる。
図2.3.2-5 VR-8
0.2 0.4 0.6 0.8 1
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
x/c y/c NACA23008
0.2 0.4 0.6 0.8 1
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
x/c
y/c VR-7
0.2 0.4 0.6 0.8 1
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
x/c
y/c VR-8
(6) HH-02
ボーイングAH-64攻撃型ヘリコプタに用いられている高性能翼型である。後縁付近が薄 い板状となっており、タブを含んだような形状になっている。
図2.3.2-6 HH-02
(7) SC1095
シコルスキーUH-60等に用いられる高性能翼型である。
図2.3.2-7 SC1095
(8) AK100D
コミュータヘリコプタ先進技術研究所で開発され特許(特願平9-30730号)で公開され ている高性能翼型である。適用実機はない。
図2.3.2-8 AK100D
0.2 0.4 0.6 0.8 1
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
x/c
y/c HH-02
0.2 0.4 0.6 0.8 1
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
x/c y/c SC1095
0.2 0.4 0.6 0.8 1
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
x/c y/c AK100D
2.3.3 CFD解析手法
本項では、静的CFD解析及び動的CFD解析に用いたCFD解析手法の概要を述べる。静解析、
動解析の違いは定常解析モードと非定常解析モードの違い及び、動解析における回転・平行 移動効果の導入部分であり、その他に関しては同じコードを使用している。
(1) CFD解析手法の基本
CFD解 析 に は 研 究 担 当 会 社 ( 川 崎 重 工 業 ) で 開 発 し た 、2次 元CFD解 析 コ ー ド UG2(Unstructured Grid 2D)を適用する。UG2は非構造有限体積法に基づき、粘性/非粘性 の圧縮性流れを解析できる。また、定常/非定常流れの解析が可能である。計算手法の詳 細は文献20)を参照のこと。
UG2は2次元RANS(Reynolds Averaged Navier-Stokes)方程式に基づくCFD手法で翼型を解 析する。基礎方程式は次のように書ける。
H S R F E
Q
t+
x+
y=
x+
y+
(1)ここで、Q, E, F, R, Sは各々、保存変数、x, y方向の非粘性流束、x, y方向の粘性流 束、Hは翼型に固定された座標系が並進・回転することによる慣性力項を示す各々4変数 のベクトル量である。また、外部境界条件も翼の運動に伴って非定常に変化させる。
数値解析手法としては次のようなものを用いる。
・空間離散化:MUSCL(Monotone Upstream-biased Scheme for Conservation Laws、空 間2次精度)及びSHUS(Simple High Resolution Upwind Scheme)
・時間積分:MFGS(Matrix Free Gauss-Seidel)陰解法
・粘性項:二次精度中心差分
ブレード翼型の用いられる高レイノルズ数の乱流場を解析するには乱流モデルが必要で あるが、ここではRANSで取り扱い、RANSの乱流モデルとしてはSpalart-Allmaras(SA)モ デル21)を主に適用し、必要に応じてBaldwin-Lomax22)モデル及びq-ωモデル23)も用いた。
なお層流から乱流への遷移条件は全場乱流とした。
時間積分は一次精度Euler陰解法とするが、MFGS陰解法に伴う線形化やヤコビアン簡略 化を補うため陰解法の非線形性の補正のための2回の内部反復を行う。また各々の内部反 復のなかで、Gauss-Seidel反復を20回実施した。
格子は図2.3.3-1に示すような翼型O型構造格子で、格子点数は周方向に263点、半径方 向に60点で、半径方向の最小格子間隔は1x10-5とした。
静的解析の場合は(1)式においてH=0とし、定常解への収束加速法として一般的な、局所 時間法を用いて計算時間を短縮した。
図2.3.3-1 NACA0012翼型周りのO型格子
(2) ロータブレードの運動模擬
回転するブレード上のある一つの翼断面に着目する。前進速度Vad、対象となる翼型の 半径位置R、アジマス角φ、角速度ω1とすると、ブレードに直交する接線方向の流れ速度 VTは次のように表せる。
φ ω
1 adsin
T
R V
V = +
(2)ここで時刻をtとして
1
t ω
φ =
(3)とする。これを系1とする。
一方、一様気流中で前進後退する2次元翼を考え(系2)、前進後退の振幅をA、一様流の 速度をVunif、角速度ω2とすると気流に対する相対速度Vrelは次のように表せる。
t A
V
V
rel=
unif+ ω
2sinω
2 (4)ここで、各系の音速、翼弦長、動粘性係数をa1、a2、C1、C2、ν1、ν2とし、次の4組の 無次元パラメータを一致させることにより系2で系1を模擬する。
①平均(周速)マッハ数:
2 1
1
a V a
M
R= R ω =
unif(5)
②前進比(Advance Ratio):
unif ad
V A R
m V
21
ω ω =
=
(6)③無次元角速度(Reduced Frequency):
V
unifC R
k C
2 2
2 2
1
ω
=
=
(7)④レイノルズ数:
2 2 1
1 1
Re
2ν ν
ω C V C R =
unif=
(8)ただし無次元角速度の基準速度としては平均となる周速度Rω1を使用している。
一様流中で2次元翼が迎角変動を伴ないながら前後運動する系2を風洞試験で実現する事 は原理的には可能だが、後退側の動的失速が顕著になる高速時の条件を実現するのは、
風洞試験全般においても困難なレイノルズ数の一致を別にしても、現実には、かなり難 しい。例えば、代表的な中型ヘリの250 km/hでの飛行を模擬するには、翼弦長0.33 mと して、M=0.6の一様流中において振幅A=1.78 m、周期T=0.16 secで模型を前後に振動させ る必要がある。詳細省略するが、模型寸度に比例して振幅は減少するが、周期も短縮す るので縮小模型を用いても模擬がやさしくなるわけではない。
本研究では上記の方法を用いて、ヘリコプタブレードの運動を2次元CFD計算で次のよう に模擬する。
・ ロータ特性に重要なブレード端近く(95%程度)の翼型に着目し、一周期中の迎角と対気速 度のデータを取り出す。
・ 25%コード位置を中心に回転することでピッチ運動を模擬する。
・ 回転中心を基準点として一様流で前後に往復運動させることで速度変動を模擬する。周速 度が一様流速度に、前進後退の最大速度がヘリの前進速度に対応する。
(3) 迎角変動
ヘリコプタのサイクリックピッチはスワッシュプレートとピッチリンクによって駆動さ れているので単純な正弦波ではなく高周波数成分を含む。したがって、一般に一様流に 対する迎角は
( )
∑
∞=
+
=
0
) cos(
) sin(
n
n
n
n t b n t
a ω ω
α
(9)と表される。本研究では一次の近似として、
ω t α α
α =
0−
1sin
(10)とする。
2.4 解析結果及び考察
2.4.1 静的CFD解析結果及び考察 (1) 静解析結果からみた翼特性の特徴
代表的なブレード翼型について、M(マッハ数)=0.2からM=0.8までの範囲で迎角を変化 させた静的CFD解析を実施し、静特性を取得した。レイノルズ数は代表的なロータ周速度 マッハ数=0.6と翼弦長ベースで、4.61x106とした。迎角範囲は、揚力が0から、最大揚力 あるいはバフェット・オンセット(後述)が含まれる範囲とした。APPENDIX-2に各翼型、
各マッハ数の3分力(CL:揚力係数、CD:抵抗係数、Cm:モーメント係数)を示す。(注意:3 次元翼の揚力係数、抵抗係数をCL 及びCD、2次元断面の揚力係数、抵抗係数をCl 及びCdと 添え字を小文字にして区別することが多い。しかし小文字の添え字が判読し難いことも あり、本研究はほとんどが2次元断面に関するものであって混乱の恐れもないので、CL 及 びCDの表記に統一する。)
図2.4.1-1にNACA23012翼型のM=0.2及びM=0.75での特性を示すが、これに典型的に示さ れるように、低マッハ数領域では、ある迎角までは単調に揚力が増加するが、ある迎角 で最大値を持つ。これを最大揚力、また、そこでの揚力係数を最大揚力係数と呼び、記 号ではCLmaxで表す。CLmax付近ではCDも急増し、Cmも急変するので、揚力がこれ以上大きく ならないだけではなく、一般にこれ以上の迎角で翼を用いることはできない。(CFDによ る最大揚力係数の予測能力に関しては、文献19)でも述べられているように、未だ完全 とはいえないが定性的には正しく、また定量的にも、かなり正確といえるレベルに達し ていることが知られている。)
マッハ数の増大と共にはCLmax は徐々に低下する。翼型によって、多少、傾向は異なる が、CLmaxに関して、概ね0.6以上の高マッハ数領域では、明確な揚力の最大値がなくなり、
一旦揚力が低下することもあるが、迎角増加とともに、揚力は徐々に上昇し、抵抗は急 増することがわかる。流体現象としては、衝撃波が強くなり、それに伴なう衝撃失速が 発生し、流れが不安定になって空気力が振動を始めることが知られており(バッフェッ ト・オンセット)、この点の揚力を CLbuffetと呼び、高速時の翼の限界性能の指標として用 いられる。CFDの結果も高迎角では定常解に収束せず、振動を始めるので、この迎角及び 揚力をCLmaxに変えて用いる。3分力の図では破線で示される範囲で流れが振動的な性質を 示している(図2.4.1-1)。
NACA23012@M=0.2
-2 2 6 10 14 18
-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8
Alpha [deg]
CL
CLfinal CLaverage -0.15
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35
CD Cm
CDfinal CDaverage
Cmfinal Cmaverage
NACA23012@M=0.75
-2 2 6 10 14 18
-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8
Alpha [deg]
CL
CLfinal CLaverage
-0.15 -0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35
CD Cm
CDfinal CDaverage
Cmfinal Cmaverage
図2.4.1-1 NACA23012翼のM=0.2(左)、M=0.75(右)における3分力特性
低マッハ数から中マッハ数領域での翼型の性能限界は概ね、高迎角特性に現れるが、
M=0.75-0.8の高マッハ領域に達すると、迎角よりも、マッハ数増大による特性変化、典 型的には抵抗係数の急増が顕著になる。そこで、揚力一定の条件(即ち迎角は揚力を設 定値に調整するために変化させる)で、マッハ数を徐々に変えた時の特性が重要となり、
抵抗が急増するマッハ数をMDD: Drag Divergence Mach Number(抵抗発散マッハ数)と呼 び、翼の高速性能の指標として用いられる。図2.4.1-2にNACA23012翼型の抵抗発散特性 を示す。またAPPENDIX-3に各翼の抵抗発散特性及びその時のモーメント特性変化を示す。
固定翼機の翼の場合とも共通していえるが、CLmax及びCLbuffet、 MDDの大なる翼が基本的 には優れた翼である。ただし、モーメント変動をピッチリンクで受け止める必要があり、
また細長いブレードが空気力で捩れ易い、ヘリロータ特有の要請として、モーメント特 性の変化の少ない翼が特に求められる。
NACA23012
0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1
Mach CD
CL=-0.2 CL=0 CL=0.2
図2.4.1-2 NACA23012翼の抵抗発散特性
(2) 静的CFD結果整理方法の検討
前述のように、翼型の高迎角での性能限界はCLmax及びCLbuffetで表され、高速側の限界は MDDで表現される。CLmax及びCLbuffetはマッハ数によっても異なるので、マッハ数を横軸に揚 力係数を縦軸にとって図2.4.1-3の実線の様に表される。
MDDの定義にはマッハ数に対する抵抗係数の増加傾向を示す微分値(現実には実験値あ るいは計算値の差分値)
dC
D/ dM
が0.1になるマッハ数とするダグラス式と、亜音速か らの抵抗係数の増加分が0.002になるマッハ数とするボーイング式がある。抵抗値に関し て、1万分の1を1カウントと呼ぶことが多いが、その表現では20カウントの増加となる。実際に翼型のCFD結果に適用すると、マッハ数に対して抵抗増加が単調ではない翼型があ り、このような場合には微係数を用いるダグラス式は、適切に適用できないことがある ので、ここではボーイング式を適用する。またMDDは揚力係数に依存するので、CLmax及び
CLbuffetと同様にマッハ数-揚力係数のグラフに表現することができる。図2.4.1-3の破線に
示す。
CLmax及びCLbuffetとMDDにより、概ね連続した曲線が形成され、この曲線の左下部分が、こ
の翼型について利用可能なマッハ数-揚力の範囲を示すことになる。
Clmax, CLbuffet and MDD
-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
Mach
Cl
CLmax-NACA0012 CLmax-NACA23012 CLmax-VR-7 MDD-NACA0012 MDD-NACA23012 MDD-VR-7
図2.4.1-3 NACA0012,NACA23012及びVR-7翼型のCLma、CLbuffet及びMDD特性
(3) 静的CFD結果整理方法の問題点と再検討
従来、前記の方法で、翼型性能が整理されることが多いが、この方法には次のようない くつかの問題点がある。
・CFD計算で解が振動を始める点を計算上のCLbuffetとしているが、本来は物理的な流体 力の振動開始の条件を意味する。数値解が振動解になるか否かは、純粋に数値的なア ルゴリズム上の工夫である時間積分法によっても異なり、物理的な流体振動と同一視 することには疑問がある。また(1)節で述べたように高マッハ数域では明確な最大揚 力が表れない場合があるので、CLbuffetに変えて全マッハ数でClmaxを用いるわけにも行 かない。
・ 高 速 側 で 、CLbuffetとMDDの 定 義 の 違 い に よ っ て 、 各 々 違 う 限 界 値 を 示 す が 、 例 え ば M=0.75の条件で、どちらを優先すべきなのか判断がつかない。
・ブレードの高速側ではM>0.8となり、大抵の翼のMDDを超えたところで使われることに なるが、この領域での特性に関し、MDDが高速側の限界を正しく表現できているとは いえない。
そこで、これらの問題点を解決し、より適切に幅広い条件での性能限界を表現し得る、
性能指標を考える。各翼型、各マッハ数の三分力特性を見ると、CLmaxやCLbuffetを迎える条 件では抵抗が急増していることがわかる。概ね、どの翼型、どのマッハ数でも抵抗係数 が300カウント(0.03)を超える辺りで、CLmax若しくはCLbuffetを生じている。抵抗の急増に よって、これ以上の高速・高迎角は実用範囲から外れるので、単にCLmax若しくはCLbuffetの 代替というだけではなく実用的な意味も大きい。(最大揚力以後の揚力低下・抵抗急増の 状態をを「失速」と言い習わしているが、まさに抵抗急増によって速度が失われること を示している。)ただし、翼型一般や流れ一般に関しては、300カウントという閾値が適 切とは断定できない。また、この辺りで抵抗が急増するので、閾値を300カウントにとっ ても400カウントにとっても大きな違いはない。本研究では、様々なブレード翼型でこの 傾向を確認したので、ブレードに適切な翼型でブレードの用いられる流れ条件の範囲で は、この値を使っても問題ないと考える。
また高速側でも、抵抗値が300カウントとなるマッハ数を通常のMDDに変えて用いること ができる。低速高迎角側でも高速側でも、結局、抵抗が300カウントとなる揚力とマッハ 数の組み合わせの点が、この性能値を示すことになるので、CLmax及びCLbuffetとMDDと同様に、
低速での性能とあわせて、マッハ数-揚力係数のグラフに示すことができる。また、低速 高迎角と高速で基準が同じなので、翼型ごとに連続した1本の曲線で翼型性能を表すこと ができる。通常のMDDの定義とは異なるので、少し数値は大きめになるが、翼型間の差異 をより適切に表現している。翼型の通常の運用状態での抵抗係数は100カウント程度であ り、通常のMDDの定義である20カウントの増加は、衝撃波のない状態から抵抗が増大し始 め る マ ッ ハ 数 を 示 す 。 し た が っ て 、 高 速 時 に ブ レ ー ド が 曝 さ れ る 可 能 性 の あ る マ ッ ハ 0.82あたりの抵抗は大きくても、それよりの低いマッハ数での抵抗の増大が緩やかな翼 型を実用上の性能に反して高性能に評価する問題点がある。抵抗値そのものを指標にす る本方法は、より広いマッハ数範囲での性能指標として有効である。抵抗が300カウント に達する揚力係数であるので、この指標をCL@CD=0.03若しくは簡単に、CL300と呼ぶことに する。図2.4.1-4に図2.4.1-3と同じ翼型についてCL300で性能を示す。図2.4.1-3と比較し て各翼型の性能を示す曲線がより連続的に滑らかに表現されていることがわかる。
CL300
-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
Mach
CL
Low-MACH NACA0012 Low-MACH NACA23012 Low-MACH VR-7 High-MACH NACA0012 High-MACH NACA23012 High-MACH VR-7
図2.4.1-4 NACA0012,NACA23012及びVR-7翼型のCL300特性
(5) CL300特性の乱流モデル依存性
CFDによる高迎角特性の評価には、計算に用いられる乱流モデルの影響が大きいことが 知られている。そこで、CL300特性に対する乱流モデルの影響を、極めて異なる特性を持つ 二つの翼型NACA23012及びVR-8について、調査した。用いた乱流モデルは、本研究で標準 的 に 用 い て い るSAモ デ ル17)、 簡 単 ・ 堅 牢 で 広 く 用 い ら れ て い る 代 数 型 のBaldwin- Lomax(BL)モデル18)、より複雑な2方程式モデルのq-ωモデル19)である。各々のモデルによ るCL300特性の評価結果を図2.4.1-5に示す。0.45以上のマッハ数では乱流モデルの違いは ほとんどないことがわかる。このことから、CFDによるCL300特性は、少なくとも、ぶれの 少ない評価指標として用いることができるといえる。
Effect of Turbulence Model on CL300
-0.5 0 0.5 1 1.5 2
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
MACH
CL
SA NACA23012 SA VR-8
q-ω NACA23012 BL NACA23012 BL VR-8 q-ω VR-8
図2.4.1-5 CL300特性に対する乱流モデルの影響
(6) CL300特性で見た代表的翼型の特徴
図2.4.1-6に本研究で用いた翼型のCL300特性をまとめて示す。曲線が左上側に来るほど、
高 マ ッ ハ 数 で 高 揚 力 が 使 え る こ と を 意 味 す る の で 高 性 能 な 翼 型 と い う こ と が で き る 。 各々の翼型のCL300特性を比較すると、いくつか興味深いことがわかる。
- 全てのマッハ数で優れた、絶対優位の翼型は存在せず、どの翼型にも取り得がある。
したがって、新しい翼型を設計したとしても、全ての点で既存翼型を凌駕するのは難 しいことが予想される。目標を満たすための最小限の性能をマッハ数-揚力係数の組 み合わせで注意深く選ぶ必要があると考えられる。
- CL300特性で見たときに零揚力付近での高速特性は、ほぼ翼厚みだけで決定され、そ の他の翼型の特徴への依存性は小さい。
- 輸送ヘリ、ボーイングCH-47に用いられるVR-8やVR-7、攻撃ヘリ、ボーイング ア パッチAH-64に用いられるHH-02などはM=0.6近辺のCL300が大となっている。ホバリン グ状態でのブレードチップ付近のマッハ数はほぼ0.6であり、これらの翼型がホバリ ング能力を重視して設計されていることがわかる。
Cl300 of Each Airfoils
-0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
MACH
CL
NACA0012 NACA23012 NACA23008 VR-7 VR-8 HH-02 SC1095 AK100D
図2.4.1-6 本研究で用いた各翼型のCL300特性。一般に右上ほど良好な性能を示す。
2.4.2 動的CFD解析結果及び考察 (1) 基本翼型に対する動的解析結果
翼型にはNACA0012を用いた。この翼型は本研究で収集した他の翼型と比較して様々な現 象が顕著に表れるため、現象の説明には適している。
表2.4.2-1に示される諸元のヘリが海面上150 kt(276.6 km/H、M=0.226)で前進飛行す る場合を考え、表2.4.2-2に示されるよ うな条 件を設定した。 迎角範 囲は、重量条件 等 様々なパラメータによって変化するが、ここでは最大迎角で失速にほぼ達するモデル条 件として選んだもので、特定の現実の飛行状態を考慮したものではない。また、速度変 動に伴なう高マッハ数の影響が顕著に表れる例として、ブレード外端付近の翼断面を選 択した。この条件で、速度と迎角を変動させるケースをCASE-1とする。また、CASE-1の 最小速度かつ最大迎角であるφ=270 °での一定のマッハ数(M=0.374)の流れ中で迎角のみ が変動するケースをCASE-2とした。これは、本研究以外の動的失速の研究で用いられて いる、速度一定の動的失速の条件に近い。周期、迎角範囲等その他の条件はCASE-1と同 じとする。詳細な条件を表2.4.2-3に示す。CASE-1では周速基準(M=0.6)で無次元角速度 k=0.0632で あ る が 、 同 じ 周 期 をCASE-2で は 一 定 速 度(M=0.374)で 無 次 元 化 し た 結 果 、 k=0.101となる。
表2.4.2-1 ロータ諸元
項目 数値 備考
ロータ半径 5.5 m コード長 0.33 m ロータ角速度 38.95 rad/sec
周速 203.51 m/sec 95%半径位置 周速マッハ数 0.600 音速340m/sec レイノルズ数 4.61x106 海面高度
周速基準 無次元角速度 0.0632 95%半径位置
表2.4.2-2 解析条件(CASE-1)
項目 数値 備考 前進速度 150 kt
前進マッハ数 0.226 音速340m/sec
前進比 0.377 マッハ数範囲 0.374-0.826
迎角範囲 0 °-15 °
無次元周期 165.8 (翼 弦 長/音 速)基準 時間刻み
5
2
10
1 2 × ω
π
10万ステップで一回転
表2.4.2-3 解析条件(CASE-2)
項目 数値 備考
周期 165.8 CASE-1と同じ マッハ数 0.374 CASE-1の最大
迎角時のマッ ハ数で固定 迎角範囲 0 °-15 ° CASE-1と同じ 無次元角速度 0.101 一定マッハ数
(0.374)基準 時間刻み
5
2
10
1 2 × ω
π
CASE-1と同じ計算は約2周期に渡って実施したが、最初の一周期には初期擾乱が多いので、結果は第1 周期の終わりから第2周期の終わりまで、φ=360 °-720 °の範囲を示す。また、両ケー スの迎角-揚力係数を図2.4.2-1に示す。比較のために、CASE-1に関しては迎角毎に異な る各アジマス角での速度で無次元化し、CASE-2は一定速度M=0.374で無次元化した。
流れ場を調査するためにムービーを作成して観察したところ、CASE-1では前進側の高速 状態で発生した翼上面の超音速域及び衝撃波が、超音速域を減らしながらも後退側まで 持続する。これは速度減少と迎角増加による上面の流れ加速が拮抗するためである。そ のため後退側での失速は大迎角と衝撃波の混在したものとなる。そのため図2.4.2-1に示 されるように、迎角10 °付近でこの衝撃剥離のため揚力が大きく減少する。図2.4.2-2に 失速直前のCASE-1の流れ場と同じアジマス角でのCASE-2の流れ場を示す。
図2.4.2-1 速度変動を含む場合(CASE-1)と含まない場合(CASE-2)の迎角-揚力特性の比較。
翼特性の比較のために、CASE-1に関して、迎角毎に異なる各アジマス角での 速度基準の動圧で無次元化している。太線はCASE-1、細線はCASE-2、淡色は 上昇側、濃色は下降側を各々示す。
図2.4.2-2 CASE-1で失速直前の流れ場(マッハ数分布)と同じ迎角でのCASE-2のマッハ 数分布。青(M=0)から赤(M=1.2)まで色の違いで示す。アジマス角φ=198 °、
迎角9.8度、CASE-1の局所マッハ数はM=0.53、CASE-2は一定のM=0.374
Lift Characteristics of CASE-1&2
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6
0 2 4 6 8 10 12 14 16
Angle of Attack (deg)
L o ca l L if t C o ef fici en t
CASE-1 DOWN
CASE-1 UP
CASE-2 DOWN
CASE-2 UP
CASE-2では、迎角が最大値より減少すると比較的早く付着状態に回復するのに対し、
CASE-1では剥離が収まって揚力が回復すると再び前縁に超音速域が発生→衝撃剥離を繰 り返す。CASE-1では迎角減少とともに速度が増加するため再び衝撃波剥離が発生してい る。一方、CASE-2でも最大迎角付近では前縁付近に小さな超音速領域が見られ衝撃波に より剥離が誘起されているように見受けられる。これは、一定速度の(普通の)動的失 速においてもマッハ数が0.4近く、圧縮性効果が大きいからである。
図2.4.2-3に両ケースのモーメントの比較を示す。絶対値を比較するために、両ケース
とも周速基準の動圧で無次元化している。CASE-2では大きなモーメント変動は迎角13 ° 以上の領域のみに見られる。それに対し、CASE-1では迎角10 °付近での衝撃失速に伴う モーメント変動が最大迎角付近のそれと同程度の大きさを有している。
Moment of CASE-1&2
-1.20E-01 -1.00E-01 -8.00E-02 -6.00E-02 -4.00E-02 -2.00E-02 0.00E+00 2.00E-02 4.00E-02 6.00E-02 8.00E-02
0 2 4 6 8 10 12 14 16
Angle of Attack
Cm
CASE-1 CASE-2
図2.4.2-3 CASE-1(太線)とCASE-2(細線)における迎角-モーメント係数特性。
絶対値の比較のため、周速(M=0.6)基準の動圧で無次元化している。
以上のように、速度変動の影響により動的失速の状況は、より複雑なものとなる。特徴 的なのは最大迎角より、むしろ、その前後での、やや小迎角、高マッハ数の領域で圧縮 性の効果が顕著に表れることである。
やや条件は異なる(M=0.2、k=0.1、迎角範囲=0 °-20 °、レイノルズ数=5x105)が、
速度一定の動的失速に関して、実験とCFDの比較を示す。(図1.4-1,2,3)1)実験との一致 は完全とはいえないが、定性的には現象を再現しているといえる。ここに示される、速 度一定での動的失速の実験とCFDの差と比較して、速度変動有無による特性の違いは明ら かに大きく、例えCFDの予測に誤差があったとしても、重要な現象を示唆していることは 間違いないと思われる。
(2) 代表的ブレード翼型に対する動的解析
パラメータは表2.4.1-2に示されるNACA0012の速度変動を伴うケース(CASE-1)と同じと し た 。 た だ し 、 翼 型 に よ っ て 零 揚 力 迎 角 が 異 な る の で 、 揚 力 レ ベ ル を 合 わ せ る た め に M=0.2とM=0.8の零揚力迎角の平均値分だけ、迎角変動範囲を調整し、下表の様にした。
ただし、失速等の非線形現象が生じるので、迎角を調整しても計算結果の揚力が各翼型 で等しくなるわけでない。
表2.4.2-4 各翼型の迎角変動範囲
翼型 迎角範囲
NACA0012 0.00 °~15.00 ° NACA23012 -1.19 °~13.81 ° NACA23008 -1.19 °~13.81 ° VR-7 -2.10 °~12.90 ° VR-8 -1.22 °~13.78 ° HH-02 -0.56 °~14.43 ° SC1095 -0.73 °~14.27 ° AK100D -1.29 °~13.71 °
各 翼 型 の 動 的CFD解 析 の 結 果 に つ い て 、 ア ジ マ ス 角 φ=0 °,45 °, 90 °, 135 °, 180 °, 225 °, 270 °, 315 °でのマッハ数分布をAPPENDIX-4に示す。NACA0012の場合 と同様、全ての翼型についてムービーを作成して流れ場を観察したが、APPENDIX-4の静 止画でも概ねの状況は捉えられている。
APPENDIX-5に各翼型の動的CFD解析の結果によるマッハ数-3分力特性の1周期の履歴を、
横軸を局所マッハ数として示す。翼型としての負荷が理解しやすい、局所速度で力を無 次元化したグラフ(上)と機体に及ぼす力の絶対値として意味を持つ周速度で無次元化 したグラフ(下)の2種類を示す。局所速度で無次元化した3分力は静特性と直接の比較が できるので、各翼型のCL300特性を重ね画いている。
静特性との比較については、項を改めて後述する。その他、動的CFD結果から見出され る事項を次に列挙する。
- NACA0012、NACA23008、VR-8、HH-02、SC1095は高迎角に顕著な流れの剥離が見られ、
3分力でみると、急激な抵抗の増大と頭下げモーメントが生じている。
- NACA23012、VR-7、AK100Dでは高迎角での顕著な剥離は見られず、抵抗・モーメン トの急変もない。
- 何れの翼型でも高マッハ数域での頭下げ方向へのモーメント変化は多少とも生じて いる。SC1095、HH-02、AK100D等の高性能翼型ではM=0.7程度までは何とかモーメント を小さく押さえているが、最高マッハ数付近での急激な変化は押さえられていない。
対称翼であるNACA0012の変動は顕著に小さく、VR-7は特に大きいが、その他の翼型は モーメントの最大値の観点では大差ない。薄翼の方が高マッハ数での変化が緩やかで あるとは言える。
- VR-7はマッハ数分布の流れ場からは高迎角での剥離が少なく優秀な翼型に見えるが、
高速側では衝撃波による抵抗、モーメント変動ともに最大である。尤も、VR-7は高マ ッハ数に曝される先端部分をVR-8に任せることにしたブレード内側用の翼型であるか ら、このような欠点が問題になることはない。
下の表2.4.2-5に周速度で無次元化した各翼型の1周期の平均揚力係数、平均抵抗係数、
平均揚抗比を示し、図2.4.2-4、5、6に各々をグラフで図示する。最高の平均揚抗比を示 すAK100Dをはじめとして、高迎角での剥離を生じない翼型については、抵抗が小さく、
揚力が大きく、結果として平均揚抗比も高いのは当然であるが、興味深いのは翼厚比8%
の薄翼のNACA23008の特性である。高迎角で短時間の剥離を生じているNACA23008が平均 揚抗比では剥離を生じないVR-7を上回り、NACA23012を僅かに下回っているだけで、上か ら3番目の性能を示している。これは、最低速・最高迎角側で失速を生じているが、ここ での動圧は低いため全体への寄与が小さく、薄翼による高速・高動圧側での低抵抗が全 体の性能を引き上げているためである。また薄翼で衝撃波による遷音速現象が緩やかな ので、高速でのモーメント変動も小さい。このように低速側で短時間に生じる動的失速 を有効活用することができれば、薄翼の優れた高速特性を生かした高性能翼型を開発で きる可能性を示唆している。
表2.4.2-5 各翼型の平均揚力係数、平均抵抗係数、平均揚抗比
翼型 平均揚力係数 平均抵抗係数 平均揚抗比
NACA0012 0.546 0.0515 10.5
NACA23012 0.629 0.0365 17.2
NACA23008 0.638 0.0380 16.7
VR-7 0.610 0.0388 15.7
VR-8 0.548 0.0520 10.5
HH-02 0.734 0.0459 15.9
SC1095 0.624 0.0463 13.4
AK100D 0.715 0.0351 20.3