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牧野ヶ池緑地(愛知県名古屋市)におけるアリ類生息調査

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Academic year: 2021

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報告

牧野ヶ池緑地(愛知県名古屋市)におけるアリ類生息調査

中村 肇

名古屋自然史談話会

Ant fauna of Makinogaike-Ryokuchi, Nagoya, Aichi, Japan

Hajime NAKAMURA

Nagoya Natural History Society Correspondence:

Hajime NAKAMURA E-mail: [email protected]

要旨

2018 年 7 月 21 日,8 月 4 日,8 月 21 日の 3 回,牧野ヶ池緑地(愛知県名古屋市名東区)で実施したア リ類生息調査において 4 亜科 17 属 22 種のアリを記録した.

はじめに

アリ類は,陸上のさまざまな環境に適応して繁栄し,

最も身近に見られる生き物の1つであり(寺山・久保田, 2009),日本では 10 亜科 62 属 296 種が報告されている(寺 山ほか,2014).

アリ類の調査は,市民協働による環境学習プログラム としても実施され,子どもでもできる簡便な採集調査に よって身近な緑地における十分な種類のアリが採集で き,採集地の環境と採集されたアリの種類との対応を確 認できるため,生物多様性を体験的に学ぶための有効な ツールであり(岩西・高田 , 2016),子どもたちが自然 科学の調査・観察の手法を学び,自らの生活する地域の 環境を評価し,生物多様性について学習する機会が期待 される(山口ほか , 2011).環境教育の目的について布 谷(2006)は『各個人が自分の価値観を持ち,自分が良 いと思う環境を選ぶことができるようにすることである と考える.そのため,子どもたちに対して行う環境教育 は,環境について多くの知識を伝えることよりも,具体 的な課題,それは必然的に身近にある課題での体験的な 教育によって,自分で納得できるような経験をすること から始めるべきであるということを主張したい』と述べ

ており,生物多様性について考える上では,多くの方が 身近な地域の自然環境に興味・関心を持ち,どんな環境 が生物にとって良い環境であるかを考え,選択できる価 値観を持てるように,自ら調べる体験を通じて体感的に 学ぶ機会を提供していくことが必要である.

本報は,牧野ヶ池緑地における調査で記録したアリ類 を報告するとともに,牧野ヶ池緑地における環境学習等 で活用されることを期待するものである.

調査地

牧野ヶ池緑地(愛知県名古屋市名東区)は名古屋市の 東部(35°08'43"N,137°00'51"E)に位置する約 150 ha の 都市公園である.緑地面積の約半分は,愛知カンツリー 倶楽部のゴルフコースが占めているため調査範囲から除 外するが,残りの緑地には,ため池の他,湿地,樹林や 竹林,草地,芝生広場,グラウンドなど様々な環境を有 する.

牧野ヶ池緑地の植生に着目し,筆者が 2015 年以降に 行った調査(中村 , 未発表)では,約 280 種の植物を確 認しており,植栽された一年生草本等を除くと表1である.

牧野ヶ池緑地において,芝地やグラウンド,園内の通

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路および通路沿いなどは,公園管理の目的で定期的に下 草や落葉等が掃除され,人の往来等による踏圧に伴い草 本層が退行し,地表が荒地・裸地化している場所がある ものの,緑地内の多くの場所では豊富な A0層が維持さ れている.しかし,善意の市民による美化活動等により,

緑地内の植生が改変され,花壇ではない場所が花壇と化 している場所もあり , これらの場所は牧野ヶ池緑地の生 態系に影響を及ぼしている可能性が高いと考えている.

採集および同定

2018 年 7 月 21 日,8 月 4 日,8 月 21 日の 3 回,地表を 徘徊するアリおよび樹幹や低木上を徘徊するアリについ て見つけ捕りによる採集を行った.採集に際しては,野 外での種の判別が難しいため,可能な限り多くの個体を 採集したが,行列を形成しているアリについては,その 中から 10 個体程度に留めた.採集したアリは 80% エタ ノール中に保存し,後日,双眼実体顕微鏡(SMZ745, Nikon)を用いて同定した.種の同定は『日本産アリ図鑑』

(寺山ほか , 2014)に従い,同定した個体は三角台紙に 貼り付け標本とした.

参考記録

本調査と合わせた参考記録として,吹上公園(名古屋 市千種区),名城公園(名古屋市北区),白川公園(名古 屋市中区),久屋大通公園(名古屋市中区),鶴舞公園(名 古屋市昭和区),熱田神宮(名古屋市熱田区),金城ふ頭 中央緑地(名古屋市港区),呼続公園(名古屋市南区),

小幡緑地(名古屋市守山区),平池北公園(名古屋市守 山区),大高緑地(名古屋市緑区),猪高緑地(名古屋市 名東区),平和が丘第二公園(名古屋市名東区),天白公 園(名古屋市天白区)においても 2018 年 8 月に各 1 回,

同様の方法で標本を得た.

結果および考察

本調査では,牧野ヶ池緑地において 4 亜科 17 属 22 種 のアリを記録した(表 2).牧野ヶ池緑地では確認され なかったものの,他の調査地において記録された種には,

熱田神宮でトフシアリ(Solenopsis japonica),金城ふ頭 中央緑地でクロヒメアリ(Monomorium chinense),イ ンドオオズアリ(Pheidole indica),テラニシシリアゲ

ア リ(Crematogaster teranishii), ア ワ テ コ ヌ カ ア リ

(Tapinoma melanocephalum),小幡緑地でイトウオオ アリ(Camponotus itoi),平池北公園でクロヒメアリ

(Monomorium chinense),大高緑地でテラニシシリア ゲアリ(Crematogaster teranishii),天白公園でコヌカ アリ(Tapinoma saohime)があり,これらの種の一部 は牧野ヶ池緑地においても生息している可能性がある.

また,春先および秋口にのみ地表へ出て活動するクロナ ガアリ(Messor aciculatus)については,今回の調査が 夏期に実施したものであるため確認されなかったが,牧 野ヶ池緑地にも生息している可能性は極めて高いと考え ている.なお,アカカミアリ(Solenopsis geminata)や アルゼンチンアリ(Linepithema humile)など特定外来 生物に指定されているアリは,全ての調査において確認 されなかった.

地上徘徊性昆虫を対象とした生物相調査では,定量性 に優れたベイトトラップやピットフォールトラップなど の手法が用いられることが多く,アリ類の調査において もこれらの採集方法が一般的である.しかし,アリの多 様な生活様式に合わせた複数のトラップ設置にはアリ類 に対する知見が必要となることから,本調査においては,

定量性を重視せず,地上,樹上,腐葉土層など幅広い環 境を選び,調査時間を定めず黙々と見つけ捕りによる採 集を行ったことが 22 種のアリを記録することに繋がっ たと考えている.

なお,牧野ヶ池緑地におけるアリ類の生息状況を正確 に把握するためにも,ハチミツや鮭フレーク,粉チーズ などを用いたトラップ調査を併用しつつ,調査時期や調 査回数を増やして継続していきたいと考えている.さら に,牧野ヶ池緑地におけるアリ類の継続調査を,地域の 子どもたちが参加できる環境教育のツールとしても活用 していきたい.

謝辞

牧野ヶ池緑地における植物調査に際しては,(故)田 尻忠義氏に多くの情報をいただいた.また,牧野ヶ池緑 地におけるアリ類調査に際しては,調査補助として瀬古 柚太氏にご協力いただいた.ここに記してお礼申し上げ る.

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引 用 文 献

岩西哲・高田兼太.2016.身近な環境の生物多様性につい ての意識の向上を目的としたアリ類を用いた環境学習 プログラムの開発と実践.環境教育,26(1): 26-37.

寺山守・久保田敏.2009.アリハンドブック.文一総合出 版,東京.pp. 80.

寺山守・久保田敏・江口克之.2014.日本産アリ類図鑑.

朝倉書店,東京.pp 278.

山口勇気・小林紀絵・岩西哲・工藤起来.2011.新潟大学 五十嵐キャンパスにおけるアリ相:環境教育への応 用.新潟大学教育学部研究紀要 自然科学編,3(2):

69-76.

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表 1.牧野ヶ池緑地の主な植生

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表 2.牧野ヶ池緑地で確認されたアリ類

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参照

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