岡 監 第 4 6 号 平 成 1 9 年 5 月 8 日
請 求 人 氏 名 省 略
岡 山 市 監 査 委 員 広 瀬 慶 隆
同 石 川 敬 之
岡山市監査委員 職務執行者 伏 見 源十郎
同 礒 谷 和 行
岡山市職員措置請求に係る監査の結果について(通知)
平成19 年3月12日付けで地方自 治法(昭和22年法律第67号 。以下「法」 という。)第242条第1項の規定に 基づき提出された岡山市職員措 置請求書につい て,監査し た結果を同条第4項の規定 により下記のとおり通知する。
記
第1 請求 の受付
1 請求 人の住所氏名 省略 2 請求 書の提出日
本件 請求書は,平成19年3月 12日に提出された。 3 請求 の要件審査
本件 請求は,法第242条所要 の法定要件を満たしているもの と認め,監査 を行う ものとした。
第2 請求 の要旨
請求人 が提出した「岡山市職員措 置請求書」による請求の要旨は ,次のとおり である。
1 請求 要旨
「 」 「 」 「 」
し かし,その実態は,岡山市 議会等において,種々の疑問や 不明点が指摘 され た分譲住宅,賃貸住宅,ス ポーツクラブ,有料老人ホーム ,保育所など の経 営をする事業者に市民の財 産である学校用地等を定期借地 方式で貸し付 けた ものである。
( 2) 岡 山市当局は,種々の疑問や 不明点について十分な説明をせ ず,岡山市議 会で の疑問や問題点を払拭しな いまま,執行した出石小学校跡 地整備事業(以 下「本件整備事業」という。)に関 する定期借地権設定契約(以下「本件定期 借地 権設定契約」という。)の締結 ,屋上庭園(里丘)・駐車場整 備に係る補 助金(以 下「本件補 助金」という。)の支出及び本件整備事業 実施区域内で保 育所 を運営する社団法人(以下「本件社団法人」という。)に 無償で市の土地 を貸 付する契約(以下「本件無償貸 付契約」という。)の締結 について,岡山 市に 損害を与える事務の執行を 改め,当該行為を是正すること により岡山市 の利 益を保全するとともに,是 正されるまでの間の損害の補て んを求める。 2 事業 計画の概要について
( 1) 本 件は,賃貸人である岡山市 長が賃借人である出石小学校跡 地整備事業者 以 下 本件整備事業者 とい う に学校用地を貸し付け マンションの建
( 「 」 。) ,
設, スポーツクラブの経営,有 料老人ホームの経営をさせるも のである。 ( 2) 分 譲マンションについては, 近隣のマンション価格と比較し て決して安い
とは いえない。賃貸マンション についても,計画時より月額総 額で約100 万円 近く高い家賃設定がされて おり,近隣の賃貸住宅と比較し て決して安い とは いえない。
, 「 」
ま た 岡山市議会で 岡山市当局は 外 国人留学生が住めるような居住 環境 と説 明していたが,とても外国 人留学生が居住できるような家 賃ではない。 ( 3) ス ポーツクラブ及び有料老人 ホームも使用料金が安いとはい えない。駐車
場の 多くはスポーツクラブに通 う人たちに利用されるものと思 料される。 ま た,屋上庭園はマンション 居住者と有料老人ホームの庭園 であり,公共 性は 非常に希薄である。
な お,コミュニティハウス, さくらみち,さくら公園などは 公共施設とし て岡 山市が2億9,000万円 余を投じて建設するものであり ,事業者の負 担で はないことを明白にしてお くべきである。
3 本件 定期借地権設定契約の締結 について
是正 に至る間の損害について補 てんを求める。
( 2) 本 件定期借地権設定契約書の 保証人は,本件整備事業者傘下 の一企業であ
, ,
り その代表取締役は本件整備事業 者の代表取締役と同一人で あることから 保証 人としての適格性を欠くと 思料される。
よ って,将来の岡山市の利益 を保全するためには保証人の追 加又は差し替 えな どの是正を求める。
( 3) 契 約の目的及び賃貸借の期間 について,本契約は,借地借家 法(平成3年 法律 第90号)第22条に定め る定期借地権の設定を前提とし ,契約の目的 を建 物の所有を目的とする一般 定期借地権の設定,賃貸借期間 を2005年 (平 成17年)12月8日から 2059年(平成71年)12 月7日までの 54 年間と定めている。
法 で地方自治体の長及び議員 の任期を4年と定めている趣旨 は,市長及び 議員 の権限行使を長期に及ぼさ ないためと解されるので,本契 約の目的及び 定期 借地期間は市長の権限を超 えたものと思料される。
5 4年間の契約は,公有財産 管理として適正を欠いていると いわざるを得 ない ので,建物は簡易な構造に よるものとし,契約期間は10 年に是正する よう 求める。
( 4) 土 地の賃料について,土地の 賃料及び定期借地率に誤りがあ るので,その 是正 を求めるとともに,是正さ れるまでの間の岡山市の損害を 補てんするよ う求 める。
ア 本件定期借地権設定契約書 第6条には土地の賃料を年額2 5,678, 0 00円,月額214万円と 定めており,算出方法は次のと おりである。 {(本契約締結年の相続税路線価× 本件土地面積)− 公共施設の整備費等}
× 1.97%(1,000円 未満の端数は切り上げる。)
この算出方法で計算すると ,土地価格は16億円余となり ,この賃料に よ る定期借地率は1.605 %となるので,本件算出方法は 誤っている。 イ 公共施設整備費等を土地価 格から差し引くと定期借地率の 意味をなさな く なり,本件整備事業者に0 .365%の利益を生じさせる 結果を生む。 正しい算出方法により賃料 を算出すると,18,966, 000円を本 件 整備事業者に不当に利益を 得させていることになる。
よって,算出方法を適正な 方法に是正し,是正されるまで の間の損害額 を 岡山市職員は補てんすべき である。
本件整備事業者が土地を所 有するとなれば,当然借入金に 頼ることとな り ,岡山市が借入している2 .3%より高い金利設定になる と思われ,最 低 でも993,666,00 0円の金利を負担することにな るので,本契 約 により本件整備事業者は約 10億円を上回る利益を得たこ とになる。
よって,本契約は不当であ り,契約の破棄は当然である。
エ 岡山市内の他の定期借地権 設定契約では,定期借地率は5 .28%であ り ,20年間の商業用定期借 地権設定契約の例でも,本件と は比較になら な いほど高率である。
NHK跡地の例は,10年 で建物を撤去しなければならな いという厳し い 条件にもかかわらず,公益 性を加味した条件で坪当たり月 額3,055 円 である。
したがって,本件契約に係 る坪当たり月額750円という 契約の前提で あ る定期借地率1.97%は 妥当性がなく,上限2%という 規定も当然妥 当 性がない。
上記ウで検証したように, 固定資産税等より安い定期借地 料は論外であ り ,貸し付けるならば,岡山 市財産条例(昭和39年市条例 第27号。以 下「市条例」という。)に基づく 岡山市普通財産(土地・建 物)貸付料算定 基 準(以下「貸付料算定基準 」という。)による3%が妥当 である。
これによると,岡山市長は 岡山市に54年間で総額約12 億円の損害を 与 えることになるので,本契 約の是正を求め,是正されるま での間の損害 補 てんを求める。
上記 アからエに示したとおり, 賃料について検証したが,いず れの点からも 契約の 是正が求められることが明 白である。
4 本件 補助金の支出について
本件 補助金の支出については妥 当性がない。
屋上 庭園・駐車場整備は本来整 備事業者,有料老人ホーム経営 者及びスポー ツクラ ブ経営者によって整備され るものである。
駐車 場台数は176台とのこと であるが,主としてスポーツク ラブの利用者 が多く ,また,マンション居住者 用となると思われる。
屋上 庭園は分譲及び賃貸マンシ ョン居住者と有料老人ホームの 入居者のため の庭園 であるので,公益性は希薄 であり,補助金の支出は不適切 である。
よっ て,同施設への補助金9, 560万円の返還を求める。 5 本件 無償貸付契約の締結につい て
件と なっているにもかかわらず ,本契約を岡山市長が本件社団 法人に無償貸 付を 行ったことは岡山市の利益 を著しく侵害している。
よ って,本契約を破棄し,有 料契約に改めるべきである。市 条例に基づく
, ,
貸付 料算定基準の規定による年 3%の貸付料で計算すると 年 額561万円 30 年総額1億6,830万円 の損害を岡山市に与えることに なるので,契 約破 棄されるまでの間の損害補 てんを求める。
( 2) 本 件社団法人には,以前運営 していた場所に係る市街地再開 発事業の移転 補償 金や保育所建設費補助金が 支出されている。そのうえに1 億6,000 万円 余の利益供与であるから, 税の公正な使用とはいい難い。
し かも,本件社団法人は,そ もそも以前運営していた場所に できた市街地 再開 発ビル内に保育所を設置す べきであり,それが可能であっ たにもかかわ らず ,都市計画決定を変更して まで,岡山市の土地を無償で貸 し付けて,便 宜を 図り,利益を供与すること は問題である。
さ らには,保育需要から見て も,新設保育所は,まず,第一 に西福祉事務 所管 内に設置すべきであり,当 該保育所の設置は岡山市の保育 所設置政策の 誤り である。
本 件社団法人への特別な利益 供与は,他の社会福祉法人等と 市の関係とは 異な っており,公平性を欠く特 別な関係が疑われる。
第3 監査 対象課
監査 対象課 企画局民間活用 事業班(平成19年4月1日か ら企画局事業 企画調整課)
保健福祉局保育 課
都市整備局都市 再開発課(平成19年4月1日 から都市整備 局都市計画課)
第4 請求 人への証拠の提出及び陳述 の機会の付与
1 法第 242条第6項の規定に基 づき,平成19年4月10日請 求人に対して 新たな 証拠の提出及び陳述の機会 を与えたところ,主として請求 書に係る陳述 がなさ れた。
なお ,請求人の陳述の際,法第 242条第7項の規定に基づき ,関係職員を 立ち会 わせた。
2 陳述 の概略は,次のとおりであ った。
( 2) 本 件定期借地権設定契約の不 当な点について,損害の補てん を求めたり, 契約 の破棄を求めているが,こ れらは,あくまで例示であって ,要するに市 の結 んでいる本件定期借地権設 定契約の土地の賃料は安いと考 えている。 ( 3) 請 求書において,措置請求の 相手方は岡山市長である。
3 なお ,請求人が提出した請求書 のうち,本件補助金の支出につ いての表現の
,「 , 。」 「 。」
中で 補助金9 560万円の 返還を求める を 補助金支出を防止したい と変更 したい旨,平成19年4月 12日に文書で申し出があった ので,これを 認めた 。
第5 監査 の実施
請求書 及び関係書類等を調査し, 平成19年4月10日に関係職 員の陳述の聴 取を行い ,合議により慎重に監査し た。
なお, 関係職員の陳述の際,法第 242条第7項の規定に基づき ,請求人を立 ち会わせ た。
第6 関係 職員の陳述
陳述の 概略は,次のとおりであっ た。 1 本件 定期借地権設定契約の締結 について
,「 」
( 1) 出 石小学校跡地活用について は 出石小学校跡 地活用の基本的な考え方 を平 成14年4月に公表し,広 く市民の方々の意見を聴き,そ の結果を踏ま えて ,平成15年7月に「本件 整備事業に関する実施方針」を 策定した。
こ の中で学校跡地については ,市民の財産であること,中心 市街地の活性 化等 の観点から基本的に市が所 有したままの状態で,民間活力 の利用を前提 とし た事業を行うこととし,本 件整備事業についても定住促進 ,市の経費節 減, 民間ノウハウの活用等の観 点から事業を行い,将来は,更 地として市に 返還 されるという定期借地権を 設定することとした。
事 業実施については,平成1 5年7月に実施方針の公表,同 年10月には
, 。
プロ ポーザル事業者募集要項の 公告を行い 3グループからの 応募があった 提 案された内容について,公 募委員2名を含む10名で構成 された審査委 員会 で審議し,平成16年3月 13日に審査結果を得た。この 審査結果に基 づい て,平成16年3月24日 に優先交渉権者及び順位を決定 したものであ る。
平 成18年1月から工事に着 手し,現時点では分譲住宅棟及 び公園部分以 外に ついては,施設が完成し供 用されており,平成20年1月 には全施設が 完成 する予定である。
( 3) 賃 料の算出方法については, 契約締結年の相続税路線価の㎡ 当たり単価に 借地 面積である9,412.3 9㎡をかけて求めた金額から, 既存施設の解 体撤 去費やコミュニティ施設建 設費及び都市公園整備費などの 公共施設整備 費等 を控除した金額を土地の基 礎価格とし,これに借地率1. 97%をかけ た金 額を年間の賃料としている 。
こ の土地の基礎価格について は,不動産鑑定評価でも「基礎 価格について は, 更地の経済価値に即応した 価格から,評価対象不動産を更 地の状態にす るた めに必要となる費用及び公 共施設の建設・引渡に要する費 用等を控除し た額 とすることが相当である。」と いう考え方のもとで設定さ れている。 ( 4) 定 期借地率1.97%の根拠 については,定期借地権普及促 進協議会が平
「 」
成1 5年6月に報告している 全国 定期借地権付住宅の供給実 績調査報告書 によ る全国事例平均の1.92 %を目安とした。
プ ロポーザル応募者が高い貸 付料によって応募することで, 住宅販売価格 が高 くなり過ぎないようにする ため,1.92%に最も近い整 数2%を上限 とし ,事業区域内の集合住宅部 分を1.92%,その他の施設 を2%で計算 し, 全体で1.97%としたも のである。
貸 付料算定基準には「前年度 分の相続税課税標準価格× 3% 」という基準 があ るが,今回の場合,定期借 地権付住宅の全国事例平均1. 92%と比べ てか け離れているため,貸付料 算定基準にある「規定により算 定した額が, 民間 実例等の実情に照らして不 適当と認められる場合には,近 傍類似の民間 賃貸 実例又は民間精通者の意見 等を基礎として,貸付料基準額 を定めること がで きるものとする。」という規定 により,1.97%を採用 している。
さ らに,不動産鑑定士による 鑑定評価も行っているが,土地 の契約賃料は その 鑑定評価額よりも高くなっ ているので,妥当であると考え ている。 ( 5) 保 証人の適格性の判断につい ては,被保証人に依存している 経営を行って
いる かどうかということが問題 である。当該保証人は,本件整 備事業者の関 連会 社ではあるが,本件整備事 業者に依存した経営を行ってい ないというこ とで ,保証人としての要件に問 題はないと考えている。
2 本件 補助金の支出について
( 1) 本 件補助金の支出については ,本件整備事業区域内施設のう ち,駐車場及 び空 地等が対象である。補助金 の支出は,岡山市市街地再開発 事業等補助金
( 。 「 」 。)
補 助対象施設としている駐車 場は,事業地区の中心部にある 3階建ての1 78 台収容の駐車場であり,そ のうち一般市民に開放される1 65台分の時 間貸 し駐車場部分を公共性が高 く,不特定多数の利用が図られ る部分として 補助 の対象としている。残り1 3台分は使用者が特定される月 極駐車スペー スに なっているので,補助の対 象とはしていない。
ま た,空地等については,里 丘を中心とした空地部分を一般 市民に開放さ れ, 隣接の下石井公園に連続す ることから公園と一体性のある 公共性の高い もの として補助の対象としてい る。
( 2) 請 求人は,「補助金の支出は妥当性がなく,公共性 は希薄であって,補助金 の支 出は不適切であるとして, 同施設への補助金9,560万 円の返還を求 める。」と主張してい るが,現 時点で平成18年度の市街地再 開発事業等補助 金の 支出はしていない。補助金 交付決定額の9,060万円は 5月中旬に支 払う 予定である。
3 本件 無償貸付契約の締結につい て
, , , ,
( 1) 本 件無償貸付契約に至る経過 について まず 保育事業は 児童福祉法上 原則 として市町村にその実施が 義務付けられていることから公 益事業といえ るが ,岡山市では他の多くの市 町村と同様に,すべての保育ニ ーズを市立保 育所 で満たすことは困難である ので,民間の力を借りながら保 育ニーズに応 えて いる。
こ のような中で,平成13年 7月25日に出石学区連合町内 会長などの連 名で 「出石小学校廃校後の要望 書」が提出され,この跡地利用 に幼稚園また は保 育所の設置が要望された。 岡山市では,保育所待機児の解 消の継続とと もに ,市中心部の保育ニーズに 対応するため,この要望を受け 入れる形で本 件整 備事業の一つとして保育所 を整備することに決定した。
整 備に当たっては,民間活力 を活用するということで,平成 16年7月2 日に 保育所の設置及び運営を行 う団体の公募についての説明会 を開催した。 設置 運営団体には,市中心部の 保育需要に応える特別保育,す なわち,延長 保育 ,乳児保育,一時保育,休 日保育の実施を条件とし,さら に土地につい ては 無償貸付し,貸付期間は3 0年間という条件での公募を行 った。
こ の結果,2者の応募があり ,外部の委員を中心とした設置 運営団体選考 委員 会を平成16年8月に3回 にわたり開催し,最終的に本件 社団法人に決 定し たものである。
やす く,安定的な保育所の運営 を確保するうえからも,無償貸 付を条件とし たも のである。岡山市の普通財 産の無償貸付は,以前にも平成 14年度開設 の保 育所,平成16年度開設の 保育所の計2か所で行っている 。
ま た,普通財産の無償貸付に ついては岡山市公有財産管理委 員会に諮り, 平成 16年7月6日に承認され ている。
( 3) 保 育所の設置認可については,厚 生省が平成12年9月8日 に通知した「国 又は 地方公共団体以外の者から 不動産の貸与を受けて既設法人 が通所施設を 設置 する場合の要件緩和につい て」の中に,「法人による通所 施設の経営が安 定的 ,継続的に行われるために は,通所施設の設置に必要な不 動産のすべて につ いて,当該通所施設の設置 者たる法人が所有権を有してい るか,又は国 若し くは地方公共団体から貸与 若しくは使用許可を受けている ことが原則」 であ ると示していることなどか ら,保育所のその土地自体は必 ずしも自前で なけ ればならないというもので はない。
ま た,この土地は無償で貸し 付けるという条件を付して公募 しており,本 件社 団法人が必ず採用されるこ とを前提にしたものではなく, 保育所を運営 して いる不特定多数の法人が参 加されることを念頭に置いたも のである。 ( 4) 請 求人は,移転補償金や保育 所建設費補助金が本件社団法人 に支出されて
いて ,税の公正な使用とはいい 難いと主張している。
保 育所を建設する際には,国 から次世代育成支援対策施設整 備交付金とい う補 助が出るが,本件社団法人 には,移転補償金があるので, 事前に厚生労 働省 にも見解を尋ねている。
厚 生労働省からは,この再開 発事業の移転費用の一部として 支出される補 助金 とこの建物を新たに建てる ものに対する補助金が重複する 部分があれば 困る けれども,重複しないので あれば問題ないという回答を得 ており,補助 金の 支出には問題ないと考えて いる。
公 募の中で本件社団法人以外 の法人等が採用されれば,その 法人等に対し ても ,本件社団法人と同じよう に土地の無償貸付や保育所建設 費補助金を交 付す ることになる。
第7 監査 の対象事項
2 本件 補助金の支出について
これ については,支出の事実を 証する書面がなく,請求書の提 出日には,支 出され ていなかったが,市は,本 件整備事業者からの補助金交付 申請書を受け 付けて いた。したがって,本件補 助金の支出は法第242条第1 項に定める, 当該行 為がなされることが相当の 確実さをもって予測される場合 に該当すると 判断し ,監査の対象とした。
3 本件 無償貸付契約の締結につい て
第8 監査 の結果及び判断
監査の 結果,本件定期借地権設定 契約の締結,本件補助金の支出 及び本件無償 貸付契約 の締結について,岡山市に 損害を与える事務の執行を改め ,当該行為を 是正する ことにより岡山市の利益を 保全するとともに,是正するま での間の損害 を補てん するよう市長に求めた本件 請求には理由がないと判断した 。
以下, その理由について述べる。
1 本件 定期借地権設定契約の締結 について
( 1) 本 件定期借地権設定契約を締 結するまでの経過について
,「 」 。
こ れは 第 6 関係職員の陳述 の1の( 1) 及び( 2) にあるとおりである ( 2) 本 件定期借地権設定契約の法 的根拠について
本 件整備事業に係る土地は, 岡山市の普通財産である。法第 237条第2 項に は「第238条の4第1項 の規定の適用がある場合を除き ,普通地方公
, , ,
共団 体の財産は 条例 又は議会の議決による場合で なければ これを交 換し 出資 の目的とし,若しくは支払 手段として使用し,又は適正な 対価なくして これ を譲渡し,若しくは貸し付けてはならない。」と 規定し,同第238条の 5第 1項には「普通財産は,こ れを貸し付け,交換し,売り払 い,譲与し, 若し くは出資の目的とし,又はこれに私権を設 定することができる。」と規定 して いる。
ま た,岡山市公有財産取扱規 則(昭和39年市規則第21号 。以下「市規 則」とい う。)第23 条第3項に「普通財産の貸付けは,次の 期間を超えるこ とが できない。」とあって,第2号には「建物の所有を目 的とし,借地借家法 第2 2条に規定する定期借地権 を設定して,土地及びその土地 の定着物(建 物を 除く。)を貸し付ける場合 50年」と規定し ている。さらに,同条第4 項に は「前項第2号,第3号, 第8号及び第9号に規定する貸 付期間につい て, 特に必要があると認めると きは,それぞれ当該各号に定め る期間を超え て貸 し付けることができる。」と規 定している。
, 。
請 求人は,本件定期借地権設 定契約書第4条に規定している 54年間は適 正を 欠いており,10年に是正 するよう主張している。
し かしながら,本件整備事業 は,地元からの要望を受け,中 心市街地の活 性化 ,定住促進を図るなど,一 定の政策目的を達成するために 計画されたも ので あり,事業を推進するうえ で有効な手段として定期借地権 の設定を決定 した ものである。
ま た,借地借家法第22条の 規定に基づく定期借地権を設定 することは, 上記 ( 2) でも検証し たとおり,市規則で認めら れている方法である。
こ うした状況から考えると, 市の判断が不合理であるとはい えない。 ( 4) 本 件定期借地権設定契約書に 規定している土地の賃料につい て
本 件定期借地権設定契約書第 6条に規定している年間25, 678,00 0円 (月額214万円)の賃料 は,次の算出により求められる 。
{(本契約締結年の相 続税路線価× 本件土地面積) − 公共施設 の整備費等} × 1.97%
請 求人は,この算出方法によ って求められる土地の賃料は安 いとし,貸付 料算 定基準による3%の率で貸 し付けることが妥当であると主 張している。 貸 付料算定基準「第1 貸付料基準額の算定」に は土地の貸付の場合,「住 宅用 又は非営利用の場合 前年 度分の相続税課税標準価格× 3 /100」で 貸付 料を求めるようになってい るが,同算定基準には「規定に より算定した 額が ,民間実例等の実情に照ら して不適当と認められる場合に は,近傍類似 の民 間賃貸実例又は民間精通者 の意見等を基礎として,貸付料 基準額を定め るこ とができるものとする。」とも 規定している。
市 は,国の支援を受けて設立 された定期借地権普及促進協議 会による「全 国定 期借地権付住宅の供給実績 調査報告書」を調査し,上記の 貸付料基準額 の3 %と比べ,1%以上の開き があることを考慮して,独自の 算出方法を検 討し,1.97%を導き出したものであ る。こ れは,第6の1の( 4) に示すと おり である。
, , ,
さ らに 市は この算出方法によって 求めた土地の賃料を検証するた めに 不動 産鑑定士に土地の賃料を評 価させ,鑑定価格よりもこの算 出方法によっ て得 られる賃料の方が高いとい うことを考慮のうえ,この方法 に決定してい る。
こ のように,民間の賃貸実例 を調査し,民間精通者の意見等 として不動産 鑑定 評価書と比較して決定した 土地の賃料及び定期借地率は, 不合理である とは いえない。
( 5) 保 証人の適格性について
請 求人は,保証人の代表取締 役が本件整備事業者の代表取締 役と同一人で あり ,本件整備事業者の傘下企 業であることから,代表者が同 一人である保 証人 はその適格性を欠くと思料 するので,将来の岡山市の利益 を保全するた めに は保証人の追加又は差し替 えなどの是正を求めると主張し ている。
民 法第450条に規定してい る保証人の要件は,「能力者である こと」 「と 弁 済の 資力を有すること」である 。本件定期借地権設定契約を締 結するに当た って ,市は,本件整備事業者及 び保証人の決算報告書等に基づ き,これを評 価し ,保証人の能力や弁済資力 には問題ないと判断している。
代 表取締役が同一人であって も,保証人としての資格に問題 はなく,こう した 経過を踏まえて保証人を認 めた市の判断が不合理であると はいえない。 2 本件 補助金の支出について
( 1) 補 助金の定義について
補 助金とは,一般的には,特 定の事業,研究等を育成,助長 するために地 方公 共団体が公益上必要がある と認めた場合に対価なくして支 出するもので ある 。補助金は本来,地方公共 団体が独自の判断によって支出 する直接補助 が多 いが,一方では国の施策に 基づき,国からの補助を受けて 地方公共団体 が間 接的に補助する場合もある 。
( 2) 補 助金支出の根拠及び対象に ついて
今 回,対象となっている本件 補助金は,市補助金交付要綱に 基づく補助金 であ る。
本 件整備事業は,出石小学校 跡地に,公共性が高く中心市街 地の活性化, 定住 促進等に寄与する施設とし て,民間からの事業提案により 複合施設を整 備す るものであるが,そのうち ,今回の補助金の対象としたの は,駐車場及 び空 地部分である。
本 件整備事業者から補助金交 付申請書が提出され,これを受 け付け,その 内容 に問題がなければ,その申 請は受理しなければならない。 そのうえで, 市は ,補助金額の算定も市補助 金交付要綱に定めているとおり に算定し,補 助金 の交付決定を行っている。
( 3) 補 助金支出の妥当性について
適切 であるので,その支出を防 止したいと主張している。
し かしながら,駐車場は,出 入口が公道に面して一般市民の 利用が十分可 能な 構造になっており,補助対 象としたのも一般市民が利用す る時間貸し部
, 。
分の 165台分に限られている ことから 厳正に審査している ものと考える ま た,空地である里丘も,一 般市民が利用することは十分可 能であり,本 件整 備事業が完成すれば,下石 井公園とも連動して市民の憩い の場となるこ とが 十分期待できるものである 。
こ のように,公共性が認めら れることから,請求人の主張は 失当である。 3 本件 無償貸付契約の締結につい て
( 1) 本 件無償貸付契約の法的根拠 について
法 において普通財産を貸し付 けすることができるとした規定 は,第8の1 の( 2) に示すとおり である。さらに,市条例第 8条には, 「普通 財産は,次の 各号 の一に該当するときは,こ れを無償又は時価よりも低い価 額で貸し付け るこ とができる。」とし,第1号に「公共団体等又は公共的団 体において公用 若し くは公共用又は公益事業の 用に供するとき。」と規定して いる。
こ うした規定に基づいて,一 定の条件が整えば,普通財産を 無償で貸し付 ける ことができる。
( 2) 本 件社団法人の市条例におけ る公共的団体及び公共用の該当 性について 次 に,本件社団法人が公共団 体等又は公共的団体に該当し, 保育所の設置 が公 用若しくは公共用又は公益 事業の用に供するときに該当す るかどうかに つい て検討する。
公 共的団体とは,公共的な活 動を営むものをいう。社団法人 は,民法第3 4条 に基づいて設立された公益 法人のうちの一つであり,本件 社団法人は, 児童 福祉法による保育所の設置 経営を目的とした法人であるこ とから,公共 的団 体に該当する。
ま た,公共用とは,保育所, 公民館等広く一般に供される場 合をいう。 こ のように検討してみると, 本件土地の利用については,公 共的団体が公 共用 に供するものということが できるので,市条例第8条第1 号に該当し, 法令 に基づく適正な事務処理で あると判断できる。
( 3) 土 地の無償貸付の妥当性につ いて
本 件 無 償 貸 付 契約 を 締 結 す る まで の 経 過 に つい て は , 第 6 の3 の ( 1) 及 び ( 2) のとおりである 。
物い ずれについても,保育所の 設置者が所有権を有しているか ,又は国若し くは 地方公共団体から貸与若し くは使用許可を受けていること が原則」と示 され ており,こうした国の通知 によっても認められているもの なので,問題 ない といえる。
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請 求人は 本件無償 貸付契約が 岡山 市の利益を著しく侵害している ので 本契 約を破棄し,有料契約に改 めるべきであると主張している 。
当 該保育所は,市中心部にお ける,増大し多様化する保育需 要に適切に対 応す るため,市有地の有効活用 を含め,民間活力の手法により 整備を図った もの である。
そ の保育所の設置運営団体の 選定に当たっては,安定的な運 営を確保する
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うえ からも 市有地の 無償貸付を前提に広く公募し た その公募条件と して 保育 所の健全な運営実績を有し ,かつ,都市型保育として,市 立保育所での 実施 が進みにくい延長保育をは じめ,乳児保育,一時保育,休 日保育を実施 する ことを求め,民間による保 育所の整備が図られた。
こ のことは,中心部の多様な 保育ニーズに応えるもので,公 益性も十分認
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めら れるので 土地の無償貸付とい う市の判断が不合理である とはいえない ま た,土地の貸付期間を30 年間としていることについては ,市規則第2
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3条 第3項第5号に基づくもの であり 岡山市公有財産管理委 員会に付議し 承認 も得ている。
こ うした状況を総合的に判断 して,土地の無償貸付を行った ことについて は, 妥当性を欠いているとはい えない。
第9 結論