「くらし
Jに関わる環境教育教材の開発
教科・領域教育専攻 自然系(理科)コース 三 好 美 恵
1 はじめに
本来、自然環境は、私たちが生活するために 必要な清澄な水と空気を提供し、また、私たち の生活活動から出る廃棄物、汚濁物質を浄化し ている。しかし、人口増加、産業・経済活動の 急激な拡大が地球規模の環境問題を引き起こし ている。そのために、環境問題の根本的解決と 結びついた環境教育が必要である。環境問題に 関する基本的事実は、現代社会と密接に関係し ており、極めて複雑で、あり、教師も各自の視点 や意見を探究しながら、子どもとともに環境教 育に臨むべきである。
本研究では、現代社会の主要な材料でありな がら取り上げられなかったセメントやプラスチ ックなどの素材を「くらしJの視点から取り上 げ、教材研究を行った。
また、生活排水の問題を河川と自然との関わ りで見直す教材として、愛媛県小田川の水質並 びに、河川堆積物の自浄作用の季節変化、河川 堆積物に木炭や砂などを加えた場合の自浄作用 の変化に関する研究を行い、河川モデル1)を用 いた総合的な学習の時間のための活動案を構想
したので、これを中心に、以下に報告する。
2 愛媛県小田川の自浄作用の季節変化 (1) 実験 富田の開発した開放系循環型河 川モデル1)を小・中学生でも簡単に扱えるサイ
ズに改良し、同様に自浄作用をモデル上で再現 できることを確認した。愛媛県小田川で採取し た河川堆積物(5.6kg)を敷き、斜度10 をつけた
指 導 教 官 喜 多 雅 一
塩ピ製の樋に、イオン交換水6.4Qを、水流ポン プで循環させ、水温を約25tに保ち、アルキル ベンゼンスルホン酸 (ABS)の濃度変化を、
市販の簡易キット(ポナールキット)を用いて 測定した。
(2) 自浄係数kの決定 河川モデ、ルを用い て測定したABSの濃度変化を指数関数[AB
S]=[ABS]o e‑ktでフィッティングし、自浄 係数を求めた。ここで、 [ABS]。は時間O秒に おけるABS濃度である。 kが大きいほど自浄 作用は大きい。
(3) 結果と考察 測定の結果、小田川の自浄 係数は 0.3‑‑1.2で季節変化による変動があま
り大きくないことがわかった(図 1)。 1.2
a
0.84二
議
0.6 臨 0.4括経 冊 0.2
O
12/1 211 4/1 6/1 8/1 10/1 12/1
300 250
E
200、
、
、副 150
益
10050 O
探取日
図 1 愛 媛 県 小 田 川 の 自 浄 係 数 の 季 節 変 化
1 2月 2月 4月 6月 8月 10月 月
図 2 愛 媛 県 内 子 町 の 月 別 降 水 量
また、自浄係数の変化に大きな影響を与える のは、どちらかというと水温ではなく、降水量 (図 2)の方が大きいということが推定される。
これは、雨が降ると付着性微生物などが流され てしまうため、自浄作用が小さくなってしまう のではなし、かと考えられる。
3 自浄作用の強化・促進
(1) 実験 自浄係数のほぼ同じ河川堆積物 の上に炭、砂、コンクリートなどを数日開放置 し、自浄係数の大きさの変化を測定した。測定 方法は、 2‑(1)と同様で、ある。
① 木 炭‑4750μm‑‑850μmのもの 250g (バーベキュー用木炭を金槌で破砕)
②備長炭一市販の粒状備長炭(20g x8パック)
③砂一十分に水洗いした鳴門教育大学グランド の砂場の砂(河川堆積物と同量5.6kg)
④コンクリート片一長径1cm‑‑
4 c
m 1kg (インスタントモルタルで、作ったコンクリートブロックを金槌で破砕)
(2) 結果と考察 炭 、 砂 コ ン ク リ ー ト 片 の 自浄係数は0.2前後で、河川堆積物の自浄係数 は0.5程度であった。河川堆積物の自浄係数は 3日めをピークにして小さくなる。一方、コン クリート片、炭は 6日め 7日めにピークと なり、河川堆積物のみに比べて大きくなってい る(表 1)。これは、微生物がそれぞれの表面に 付着し、生育面積を広げたためと考えられる。
コンクリート片を使って実験した結果、コンク リート片にも自浄作用を強化する働きがあるこ とがわかったo コンクリート三面張りの水路に も砂利やコンクリート片などがあれば、自浄作 用を保持できると考えられる。一方、砂を用い た場合は、自浄係数はあまり大きくならない。
これは、川砂利を砂が覆い尽くしたためと考え られるo
表 1 自浄係数の変化
木炭 備長炭 砂 コンクリ 河川堆 }ト片 積物 日 0.27 0.20 0.34 0.22 0.47 O 0.54 0.56 0.51 0.55 0.47 1 1.51 0.96 0.96 0.54 1.90 2 2.63 2.26 0.95 2.80 2.27 3 2.61 3.64 1.08 2.87
主 主 皇
4 2.56 3.33 0.85 3.41 2.31 5 2.58 3.13 0.97 3.44 1.77 6 2.69 4.00L
鐙 4.14 1.27 7主 皇 室
3.56 1.20 3.94 0.86 4 総合的な学習の時間での教材化河川モデルを活用することで、自分たちの身 近な河川の自浄作用についての探究活動や排水 路での自浄作用の強化・促進についての工夫な どに目を向けさせることができる。微生物の働 きと自然環境の調和などの生物多様性について の教材としても活用できる。さらに、たとえば、
環境をテーマにした総合的な学習の時間では、
よく再生紙や廃油石けんを作る活動が取り入れ られている。ところが、再生紙作りでは、牛乳 パック用いた場合、内側を洗うだけでも、大量 の水が使われ、川を汚し、これを河川の自浄作 用で分解するためにはどれほどの時間が必要か などを河川モデルを用いて確かめ、環境にょい と思って行った活動の波及効果についても考え ることができる。
学校現場で環境問題について考えるとき、今 まで一般的・常識的だと思われていた考え方や 判断の仕方が不適切なこともあるということに 気づかせ、意識を変革することを目的とする学 習活動を展開していきたい。
1)富岡敬子鳴門教育大学修論 (2001)