• 検索結果がありません。

紫外光励起オゾン混合ガス 回折光学素子の研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "紫外光励起オゾン混合ガス 回折光学素子の研究"

Copied!
130
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

紫外光励起オゾン混合ガス 回折光学素子の研究

道根 百合奈

電気通信大学 情報理工学研究科 博士(工学)の学位申請論文

2020 年3月

(2)

紫外光励起オゾン混合ガス 回折光学素子の研究

道根 百合奈

博士論文審査委員会

主査 米田 仁紀 教授

委員 白川 晃 准教授

委員 桂川 眞幸 教授

委員 武者 満 准教授

委員 渡邊 昌良 教授

(3)

著作権所有者

道根 百合奈

2020 年 3 月

(4)

Development of UV-excited ozone mixed gas grating

Yurina Michine

Abstract

Recently, maximum power of lasers is going up by year and year. A MJ(10

6

) laser and Exa-watts (10

18

) laser are constructed and designed. In such laser systems, large size of optics is required because the damage threshold of the optics still remains several tens J/cm

2

. Control of the damage margin is also important and actual operating fluence is lower than this threshold. Among many optical components in the laser system diffraction optics such as gratings are weakest. Therefore, the development of high damage threshold optics is an important issue.

We propose Ozone mixed gas grating instead of conventional grating. The elements of spatial modulation of the refractive index is neutral gas molecule. There is no ionization and temperature of working gas medium is kept at lower temperature than ionization temperature. Ozone molecules are a key of periodically energy deposition in the working gas.

UV laser pulse that have resonant wavelength for ozone molecule is also used for initiation

of the grating. Up to now, we have demonstrated this gas medium grating and clarified it has

(1) high damage threshold for ns lasers (1.6 kJ/cm

2

) (2) high average diffraction efficiency

(96%) (3) low production energy (<70 mJ/cm

2

) (4)high diffraction wave front quality. In

the future, this gas medium grating will contribute not only to the miniaturization of existing

high-intensity laser systems, but also to increase of laser energy.

(5)

紫外光励起オゾン混合ガス回折光学素子の研究

道根 百合奈

概要

本論文は、従来の固体光学素子での使用レーザー強度を2桁程度増加でき、可視から赤外までの広範 囲な波長で使用可能で、なおかつナノ秒の高速応答性を持つ全く新しい概念のオゾン混合ガス光学素子 の研究である。近年、レーザーの高エネルギー化、高出力化は増加の一歩をたどり、最大エネルギーで

106J(MJ)、最大強度で1016W(10PW)になってきている。一方で、そこで使用される光学素子での取り扱

えるレーザーフラックスは、誘電体多層膜技術が完成されてから、材料や成膜手法などの改善があった ものの10倍程度に限られている。このため、レーザーシステムは大型化の一途をたどり、使用される 光学素子の大きさも1m2を超えるものまで出てきている。一方、このような大型化だけでなく、高出力 パルスレーザーの繰り返し周波数も、従来の数10HzからMHzへと増強されつつあるが、光学損傷は 確率的な現象になっており、これまで十分であった光学素子であっても取り換えや損傷に対して照射面 を移動させるなどの対処をせざる得なくなってきている。このため、新しい概念に基づく光学素子の開 発が望まれている。本論文は、これらの問題を解決するために、新しいオゾン混合ガスを用い回折光学 素子を提案し、その生成条件の物理を明らかにするとともに、回折光学素子としての性能を評価、これ を使った新しいレーザーシステムの概念を提唱している。本論文は5章からなる。

第1章では、現在の高出力レーザーの開発現状とそこに使用されている光学素子の状況。ならびに最 近出てきた光学損傷に対してそれをマネージメントしながら使用せざる得なくなっている状況をまと めている。また、それを解決する目的で提案されているプラズマをベースにした過渡的光学素子につい ても、その性能や応用例、さらにはその課題などについて述べている。

第2章では、本研究で使われるオゾン混合ガスと紫外レーザーの相互作用により、どのようにして基 本となるガス分子の大振幅密度波が形成されるかを理論的に説明し、その特性を実験的に明らかにした 結果をまとめている。特に、初期に紫外線の吸収によりオゾン分子が分解励起され、その後短時間に再 結合をし、そこから温度の空間分布が形成された後に通常音波と第2音波の結合した波が励起され、大 振幅の空間密度波が形成されることを、理論的、実験的に明らかにしている。

第3章では、回折光学素子に用いるオゾン発生部と、その混合ガスを回折波面が乱れないように、な おかつオゾン混合ガス領域が窓無し領域でも閉じ込められた状況にする装置システムの説明を行って いる。通常、自由膨張状態のガス流体では、レイノルズ数が容易に数1000 を超えてしまうので、乱流 になりやすく、本研究が目的としているような高精度な波面を制御できるような密度の一様性を得るこ とは難しい。ここでは、流速や温度、流路経路の最適化を行った結果、得られたオゾン混合ガスの密度 分布特性などについて述べている。

(6)

第4章では、本研究で開発したオゾン混合ガスを使った回折光学素子の動作特性をまとめている。こ こでは、レーザー耐力、スイッチング速度、回折効率、回折波の波面などの計測結果をもとに、レーザ ーシステムへの実応用を仮定した場合の特性評価についてまとめている。

第5章では、それまで回折光学素子の達成された性能を受け、どのような新しいレーザーシステムが 構築可能であるかを示している。特に、大型レーザーシステムでよく採用されている大型スイッチや大 型偏光子を使った再生増幅器が、本研究で開発された光学装置によりどのようにダウンサイジングされ るか、大出力レーザーで用いられる空間フィルターを、この回折光学素子の持つ高い波面選択性により どうやって置き換えられるかなどについて述べている。また、本素子のもう一つの特徴である超低挿入 損失性を利用してできるエンハンスメント共振器についても、その基礎特性を評価した結果を述べてい る。

第6章では、これらの章で得られた結果をまとめ、本研究で開発された光学素子の評価及びその応用 への可能性をまとめている。

(7)

目次

序論 ... 1

1. 第1章 研究背景 ... 2

1.1 レーザーの発展と光学素子 ... 2

1.2 現在の高出力レーザー、産業用高繰り返しレーザーにおける光学素子の現状 ... 6

1.3 プラズマ光学素子 ... 8

1.4 研究の目的 ... 11

2. 第2章 オゾン混合ガス回折光学素子の生成原理 ... 12

2.1 はじめに ... 12

2.2 オゾン混合ガス回折光学素子の概要 ... 13

2.3 オゾン分子の紫外線吸収特性と光解離・再結合反応 ... 14

2.4 オゾン混合酸素ガス中の密度波の生成... 17

2.5 音波との比較 ... 29

2.6 数値流体シミュレーションによるオゾン密度波の解析 ... 33

2.7 流体方程式における中性ガス中密度波の解析解 ... 39

2.8 非線形音波と非線形減衰 ... 45

2.8.1 オゾン密度波における流体方程式2次解析解 ... 45

2.8.2 オゾン密度変調の非線形減衰の確認 ... 54

3. 第3章 装置構成... 59

3.1 はじめに ... 59

3.2 オゾン生成:誘電体バリア放電 ... 60

3.3 乱流とレイノルズ数 ... 64

3.4 オゾン混合ガス回折光学素子の設計 ... 65

3.5 装置構成 ... 68

3.6 紫外レーザーの高精度化 ... 72

4. 第4章 性能試験... 75

4.1 はじめに ... 75

4.2 屈折率変調量の測定 ... 75

4.3 損傷閾値の測定 ... 78

4.4 回折効率の測定 ... 81

4.5 波面の測定 ... 93

5. 第5章 オゾン混合ガス回折光学素子の応用 ... 100

5.1 はじめに ... 100

(8)

5.2 再生増幅器と空間フィルター・スイッチ ... 100

5.3 デブリシールド光学素子 ... 103

5.4 エンハンスメント共振器 ... 104

第6章 ... 108

まとめ ... 108

謝辞 ... 110

参考文献 ... 112

関連論文 ... 118

会議・学会発表 ... 118

受賞 ... 122

(9)

序論

核融合、粒子加速、実験室天文学、高温高圧化の極限状態化の物質の研究など、高強度レ ーザーを利用した研究はレーザーのピーク強度の増大とともに発展してきた。1960 年にル ビーレーザーで誕生したレーザーも、サブJレベルから2000年代にはMJ(106J)まで発展 し、世界各国でkJを超える大型レーザー施設が稼働中である。この大型エネルギーレーザ ーの発展は、主には慣性核融合のエネルギードライバーとして建設されてきたが、1990年 代に現われたチャープパルス増幅の発明により、超短パルスレーザーでも高出力化が進ん だ。短パルスであるための光学素子の損傷閾値の低下もあって、光学素子の大型化・高精度 化がさらに進むことになった。これら光学素子は基本的には誘電体などの多層膜が用いら れているが、レーザーシステム中で取り扱えるレーザーフラックスは、この多層膜技術が完 成されてから現在までに材料や成膜手法などの改善があったものの、およそ10倍程度の 進歩に限られてしまっている。その結果、レーザーシステムは大型化の一途を辿り、1m2を 超える光学系も大型レーザーでは当たり前のように出てきている。

一方で、このようなシングルパルスで大きなエネルギーパルスや超高強度のものだけで なく、様々な応用からの要求でパルスレーザーの繰り返し周波数も増加している。これまで 比較的高いMW 級のパルスを発生できるフラッシュランプ励起のNd:YAG Q スイッチレ ーザーでは、その熱除去の問題から数10Hzに限られてきたが、半導体レーザー励起や、量 子欠損の低いYb系レーザーの出現によりkHzからMHzへと増強されつつある。光学損傷 は確率的な現象であるため、これまで低繰り返しでは十分な強度を有していた光学素子も 取り換えや、照射面を移動させるなどの対処をせざる得なくなってきている。そのため、産 業用や他分野研究用のレーザーでも新しい高耐力の光学素子の開発が望まれている。

そこで、本研究では、この課題に対処するために、まったく新しい高耐力レーザー素子の 開発を行っている。以下、本章では、高出力・高強度レーザーシステムの現状と、固体光学 素子、素子の高耐力化という概念から開発されたプラズマ光学素子について、その性能や応 用例、課題などをまとめ、本研究の目的と概要について述べる。

(10)

1. 第 1 章 研究背景

1.1 レーザーの発展と光学素子

2018年にノーベル物理学賞を受賞したGerald Mourou氏、Donna Strickland氏らによっ て実証されたCPA(チャープパルス増幅)[1]や光学素子の開発により、今日におけるレー ザーの高強度化と超短パルス化が著しく進展した。現在、世界最大のレーザー(米国国立点

火施設NIF)の出力エネルギーはメガジュールに達し[2]、欧州ではエクサワットのレーザ

ーを目指すプロジェクト( 欧州極端光施設 : ELI )も進められている[3]。この研究には加 速器の粒子ビームでさえ置き換えるような斬新な超高強度場科学の発展が期待され[4]、理 論予測や予備的な実験が行われるようになった。しかし、これらの高強度・大出力レーザー システムの発展は、結果的に光学素子の大きさやその光学性能、レーザーに対する光学損傷 耐性を限界にまで推し進めた[5]。特に、CPA手法で用いられるレーザーパルス圧縮用回折 格子や増幅最終段のミラーのレーザー損傷は、現在でもレーザーの最大出力エネルギーに 対する主な制限の1つであり続けている。ミラー、レンズ、回折格子といった光学素子は、

基本的にはガラスを母材とする媒質で作られており、一度損傷がおこれば光学素子内でレ ーザー照射領域をずらして対応するか、損傷箇所が多ければ取り換えるしか方法はない。そ のため現在のNIF、フランスのレーザーメガジュール(LMJ)、大阪大学のLFEX、ロ チェスターのOMEGAといった高エネルギーレーザー施設では、光学素子の損傷を回避 する目的で、1m2級の大口径の光学素子を使用した大規模レーザーシステムが構築されてい

る[6],[7]。このような大型の光学素子を使用することで、光学素子の単位面積あたりのレー

ザー照射エネルギーを下げることができるが、残念ながらすでにこのような光学素子の大 型化は、精度やビーム制御性低下の問題などから製造的な限界を迎えていると言われてお り、したがって、光学素子自身がレーザーシステムの出力限界値を決定しているのが現状で ある。このことが現在レーザーのエネルギーのさらなる増大に対する大きな問題となって いる。

(11)

ところでレーザーによる光学素子の損傷・破壊は、レーザーのパルス幅によって熱的に破 壊が生じるものと電界的なものとに分類されるが、光学素子に損傷が起きる最低のレーザ ー照射エネルギー値(レーザーエネルギー密度)は両者ともにレーザー誘起損傷閾値(Laser induced damage threshold)と定義されている。この損傷閾値の決定方法は国際標準規格

(ISO11254)[8][9][10]厳密に定義されている。図 1-1にはISO11254で定められている 光学素子の損傷閾値の定義[8]を示した。

図 1-1 レーザー損傷閾値の定義[8]

損傷は確率的に生じる現象であるために、図 1-1 では、縦軸に損傷確率、横軸に照射レー ザーエネルギー密度をとっている。ここでの損傷閾値は、損傷が起こらない最大の照射レー ザーエネルギー密度になっている。損傷閾値の測定方法には、同じくISO11254で定められ ているように代表的には次の3種類が挙げられる。1試験ごとにレーザー照射領域および レーザー照射強度を変更して、シングルショットでの損傷閾値を決定する1 on 1テスト、

1試験ごとにレーザー照射領域およびレーザー照射強度を変更して、マルチレーザーパル スでの損傷閾値を決定するS on 1テスト、同じ照射領域で低エネルギーから徐々にエネル ギーを上げ損傷閾値を決定するN on 1 (R on 1 )テスト、がある。高エネルギーレーザー施 設で使用される大口径の光学素子に対しては、局所的な損傷がレーザーパフォーマンスに 影響することもあり、Raster scanという、~1mm程度の照射レーザー断面積で、数cm2 の 範囲にわたってスキャンし損傷閾値を決定する方法もある。

このように複数の評価方法が存在する理由は、ただテストレーザーの照射ショット数や 照射面積の大きさを変えるだけでも損傷閾値の値が全く異なってくるからである。たとえ

ばN on 1、 Raster scanのように損傷が起こるまで同じ領域にレーザーパルスが照射され

(12)

る形のテストでは、レーザーコンディショニング[11]と呼ばれる効果により、誘電体多層膜 の光学素子やKDP結晶、石英ガラスなどでシングルショットのテスト時より損傷閾値が高 まる[12],[13]。このような光学素子の損傷閾値の評価については、日本ではレーザー総合技 術研究所にてレーザー耐力試験やデータベースの構築が行われている[14]。

しかし、一言で光学素子と言っても、基板の材質、基板の上に蒸着されるコーティングの 種類、コーティング方法、照射されるレーザーのパルス幅、波長によっても様々な種類のも のが存在しており、損傷閾値も当然異なる。損傷の原因には光学薄膜内、および母材の不純 物、欠陥、設置時の汚染などが原因とされており、これまでにその耐力や光学性能を高める ための数多くの研究がなされてきた。

基板の材質に関しては、短パルス領域で高い損傷閾値をもつ材料は限られている。 石英 ガラスは高い損傷閾値をもつ筆頭として挙げることができ、波長1053 nm、パルス幅1 ps

で2J/cm2程度になる[15]。また石英ガラスは非常に均質で大きなものを作ることができ、

かつ研磨しやすいので精度の高い素子を作る上では利点がある。

この基板の上に、所望の波長や反射特性を得るために、金属膜や誘電体多層膜が成膜され る。成膜手法としては、電子ビーム蒸着法(e-beam)やイオンビームスパッタリング法(IBS)

などがあるが、どちらも真空下で蒸着が行われ、材料、ガス圧や蒸着速度などの加工パラメ ーターなどが膜の特性を決定する点は同じである。e-beam とIBSの大きな違いは堆積エネ ルギーにある。同じ材料であっても基板に堆積した原子が低いエネルギーを持つ場合、膜と しては微小な細孔を含むことになる。この細孔が膜の充填密度を決定し、環境に対する安定 性を決める。IBSで生成された膜は充填密度が高いので、真空条件でも安定で低損失である が、損傷閾値については多くの場合、電子ビーム蒸着法が勝っており[16]、現在でも膜中の 欠陥が少なくできるIBSの損傷閾値を高めるための研究も進められている[17]。

膜の種類は大きく金属か誘電体かに分けられる。金属膜は、誘電体多層膜より以前に確立 された技術であり、反射ミラーや ND フィルターといった光学素子で使用される。基本的 には、基板に一層か数層の金属を蒸着するのみで少ないプロセスで製作できることが利点 である。が、その反射特性は金属材料自身によって決定される。損傷閾値は1053nm、1ns のパルスレーザーに対して金コートのミラーでおよそ1.5 J/cm2 、回折格子で0.8 J/cm2程 度になっている(回折格子では、その表面構造のためにミラーよりは損傷閾値は低くなる)。

ただし、レーザーパルス幅が100 psより短くなると、パルス幅に依存せずミラーならば0.6 J/cm2 、回折格子ならば0.4 kJ/cm2で固定された値になる[15]。この損傷閾値の低さが、超 高強度レーザーの開発する上での問題になってくる。

誘電体多層膜の場合は、反射や、反射防止膜として使用される。何層も屈折率の異なる誘 電体材料を重ねなければならない分製作プロセスとしては複雑になり、大型化が難しいと いう難点はあるが、例えばミラーや回折格子であれば、所望する波長域で高反射率のものを デザインすることも可能である。誘電体多層膜の損傷閾値は、やはりパルス幅に依存し、パ

(13)

ルス幅が低下すればその損傷閾値は低下していく。パルス幅が短いときの損傷の原因は多 光子吸収により伝導帯内に自由電子が生成されるためであり、およそ1020-22 / cm3の自由電 子密度を超えると損傷が生じることがわかっている[18]。現在、ナノ秒程度パルスレーザー に対してミラーでは紫外~赤外領域で損傷閾値およそ 1~数 10J/cm2 [19]、回折格子では

4.4 J/cm2 程度のものが得られている[20]。一方で、0.5~1psパルス幅のレーザーに対して

は、回折格子の損傷閾値は0.18J~2.5 J / cm2まで低下している[20],[21]。特に回折格子は 高強度レーザーシステムにおいて最もレーザーエネルギーが高まった増幅最終段のパルス 圧縮や、波長変換前後のレーザー光を分光するものに使われるため、現在でもその損傷閾値 を向上させる研究が進められている。

現在の光学素子製造技術の範囲内で高強度レーザーフラックスに対抗するには、上記の ような母材や膜質の工夫によって質的に損傷閾値を増加させるか、もしくは素子自身を大 型にするしか方法はない。質的な損傷閾値の増加についてはほぼ飽和してきているのが現 状であり、しかも超高強度レーザー施設においては数万個もの光学素子が使用されるため、

製造時間、コスト、同じものを再現よく製造できるかについても考慮する必要がある。一方 で、光学素子の大型化にも製造的限界が存在する。大型になればなるほど光学素子自身が重 くなり(1m級のもので数トン)、それによってメンテナンスが困難になり、その結果、運用 コストが大幅に増大する。また大型であればあるほどビーム制御性が低下することも問題 である。また、例えば、高効率、高損傷閾値、高波面品質の回折格子を製造するには、回折 格子領域全体にわたって特定の深さおよび形状の均一間隔の平行溝を製造する必要がある。

この平行な溝はレーザーの干渉によって母材表面に添付されたフォトレジストへ露光、化 学的なエッチング処理をすることで得られるが、露光用のレーザーがわずかに波面曲率分 布を持っているだけで最終的に不均一な間隔で湾曲した溝になる。 この溝の歪みは回折格 子のスペクトル分解能を低下させ、また、回折波面に曲率を生じさせる[22]。メートル級の 誘電体多層膜回折格子の回折光の波面精度は、波長632nmに対して/3であり[7]、その半 分の大きさの回折格子で/5と言われている。ミラーの面精度が/10、とすれば、この値は 比較的低い値になっており、波面歪みは別途フォーマブルミラーなどによって補正を行う 必要がでてくる[23]。このように素子の大型化はコスト、制御性、精度の面で課題がある。

(14)

1.2 現在の高出力レーザー、産業用高繰り返しレーザーにおける光学素子の現状

レーザーによる光学素子の破壊が起これば元にはもどらない。時には後段の光学素子に も影響を及ぼす。そのため通常は、光学素子の損傷閾値にある程度の安全係数をかけた値、

光学素子が間違いなく壊れない領域でレーザーシステムの設計を行う。しかし既に述べた ように増幅後のレーザーエネルギーは光学素子の製造限界に達しており、分割した光学素 子で対応するか、素子が壊れる前提で使用するしか方法がない。現在、波長351 nm、3 ns パルス幅で1.8 MJの出力を誇る世界最大のレーザー施設NIF(米国立点火施設)では、

この高強度レーザーパルスを得るためにすでに光学素子の損傷閾値を超えた運営を行って いる。

図 1-2 NIFにおける(左)レーザーエネルギーフルエンスと光学素子への照射ビーム径 の関係 (右)最終光学系の構成[24]

図 1-2左にはNIFの現在の運営エネルギーフルーエンスを、図 1-2右にはNIFレー ザーの最終増幅光学系を示している[24]。ここでは Nd:glass ベースのレーザーパルス増幅 手法で波長1064 nmのレーザー光を生成、波長変換し351 nmを得ているが、増幅最終段 の光学素子の平均エネルギーフルーエンスはおよそ 8 J/cm2 と、紫外領域の光学素子の損

傷閾値4 J/cm2(溶融ガラスの損傷閾値は紫外領域では1桁下がる)を超えたオペレーショ

ン条件にある。特にチャンバー内のターゲットに向かってレーザーを集光するためのフォ ーカスレンズと、ターゲットから飛来するデブリから各光学素子を保護する回折格子[25]の 2つは、レーザーのショット毎に必ず損傷する光学素子である。この図 1-2 の光学素子コ ンポーネントはNIFの192本のレーザービームそれぞれに対して存在するので、損傷した 素子の交換コストも莫大な金額になる。そこで NIF では、“ダメージマネージメント”とい

(15)

う、レーザー照射で損傷した箇所の修復を行いながらトータルパフォーマンスを維持する というシステムデザインをとっている。

図 1-3 COレーザーによる光学素子の損傷箇所修復の方法[24]

図 1-3 には、NIFにおける具体的な光学素子のダメージマネージメント方法を示してい る[24]。光学素子は、いったん小さなクラック(損傷箇所)ができてしまうと、たとえ損傷 閾値以下のエネルギーで照射しようが、その部分から損傷が拡大していく。そのためNIF では、1ショットのレーザー照射試験のたびに図 1-2の光学素子を検査場まで運び出し(1 ショットごとにフラッシュランプやその他素子の冷却時間が必要なのでショット数は1日 あたり最大でも2回程度)、検査顕微鏡で大きさおよそ50µm の以下の大きさのクラックを 検出したのち、COレーザーを用いて損傷箇所の修復作業を行っている。クラックの中心 と大きさに合わせてまずオペレーターが損傷を修復するか否かを含め修復方法の判断を行 い、修復する場合は100 µm程度に集光したCOレーザーを損傷箇所に円を描くように照 射し、コーンのような形状で削り取る。この修復方法は、損傷箇所の大きさに応じて5種類 存在している。修復した箇所の情報はレーザーシステムにフィードバックが行われ、次のシ ョット時にはパッチをあてたように修復箇所でレーザー光が減衰するような工夫がされて いる[24]。

光学素子の損傷を修復し、再利用するこの光学素子の“リサイクルループ”は確かに効果的 である。しかし、こういった修復の上でも、1週間に40もの光学素子の交換を行わなけれ ばならない。典型的には35 cm四方の光学素子の大きさで最終的な修復箇所はおよそ20~

400箇所にも及び、1~11回の修復を繰り返したのち交換が行われている。

一方、産業用レーザーでは、金属材料の溶接や切断には主にはCWレーザーが使用される が、フォトリソグラフィー、マーキング、表面加工、内部改質といった用途ではナノ秒から

(16)

フェムト秒の短パルスレーザーが用いられ、その高平均出力化、高繰り返し化が進められて きた。現在ではMHzの高繰り返しレーザーを市販で手に入れることもできる。こういった 短パルス高繰り返しレーザーの登場は、光学素子の損傷問題を今まで以上に顕在化させて いる。例えばNIFや従来の産業レーザーのような、繰り返し周波数の低い短パルスレーザ ーでの光学素子の損傷に関しては、入射パルスの電界密度に対する材料の電子の応答から 生じる絶縁破壊のみを考慮すればよい。しかし、レーザーの高繰り返し化が進むと、材料に 対しては疑似CWレーザー的な照射になり、それまでの低繰り返し短パルスレーザーでは 考慮しなくてよかった材料への熱の蓄積、吸収による損傷が生じてくる。また先に述べたよ うに、光学素子の損傷は確率的に生じるため、現在の計測手法で定義される損傷閾値以下の 低レーザー照射エネルギーであっても、高繰り返しの場合は素子が損傷する可能性を考慮 する必要があることを意味している。実際に一つの産業用レーザーを例に挙げると、すでに 3倍高調波発生用の波長変換結晶は、同じ照射領域を使用し続けると数百時間で出力が低 下していくことが確認されている。そのため、照射面積をずらしながら使用せざるを得なく なっているのが現状である。いずれは他の光学素子の限界にも近づいていくことが明らか であろう。

1.3 プラズマ光学素子

(1)プラズマミラー

こういった光学素子の損傷は、今後レーザーの高出力化、高強度化、高繰り返し化が進め ばさらに問題になってくる。そこで近年は新しい高耐力光学素子として、プラズマ光学素子 というアイディアが提唱され、実際に一部の高強度レーザーシステムにおいて使われてい る。プラズマ光学素子は高強度レーザーの媒質への照射によって生成する自由電子の屈折 率変調を利用した過渡的光学素子であり、生成される屈折率変調nの値は

n = √1 −

𝑛𝑛𝑒

𝑐

のように表される(ne :プラズマ電子密度、nc :プラズマ臨界密度)。このとき、波長 1µm

ではnc =1021 [cm-3 ]の値になる。例えば上式でne >nc のとき屈折率nは虚数となり、こ のとき生成されたプラズマによって入射レーザー光はプラズマ中を進行することができな くなる。この反射条件を光学素子として利用したものがプラズマミラーである[26],[27]。こ のプラズマ光学素子のレーザー耐力は固体素子に比較すれば1桁程度増加させることがで きる。プラズマミラーは、無反射コーティングを施したガラス基板を媒質にして、高強度レ ーザーを入射し、基板表面をプラズマ化させて反射機能をもたせたものである。具体的なプ ラズマミラーの利用法としては、高強度レーザーパルス中の強度の最も高いメインパルス

(17)

の他に増幅時に副次的に生成されるプレパルスをカットする(プレパルスカッター)や、高 次高調波の発生[27]などがある。

プレパルスとは、高強度レーザーパルスの生成や増幅時などにメインで増幅されるパ ルスのナノ秒からフェムト秒前に存在するサブパルスのようなもので、自然放出光の増幅 や、パルス圧縮光学系での不完全な位相補正の結果として生じる。このプレパルスはメイン パルスよりも強度は弱いが、メインパルスよりも先にターゲットに到着し表面をプラズマ 化するので実験結果に影響を与えることがある。そこで、メインパルスとプレパルスの時間 タイミングと強度の差を利用し、プレパルスをカットするのがプラズマミラーの利用方法 の一つである。ターゲットへの集光前にガラス基板を用意しておくと、時間的に先に到着す るプレパルスは強度が低いためガラスを通過するが、メインパルスは強度が高いので、ガラ ス表面がプラズマ化し臨界密度を超える電子密度が生成され、メインパルス部分のレーザ ー光のみがその密度領域内に進入できずに反射される。このようにして生成されたプラズ マミラーでは、2桁程度、メインパルスの強度コントラストを改善する時間フィルターとし て機能する[27]。一方で、完全なプラズマミラーの生成のためにはレーザー照射面を常に新 しくする必要があるため、1ショット毎にARコートガラス面を回転させ、最終的にはガラ ス基板を交換する必要がある。よってプラズマミラーは上述したようなものに用途が限ら れる。

(2)プラズマグレーティング

同様にプラズマを利用した過渡的光学素子に、プラズマグレーティング[28][29]がある。

この素子は高強度レーザーの二光束干渉によって空気中にレーザーの照射・非照射部を生 成し、照射部で生成される自由電子と空気の屈折率差(Δn~10-4程度)で回折格子を作る。

構造は透過型の体積回折格子と同じではあるが、媒質が気体の分、プラズマミラーのように 基板を取り換える必要がなく耐力も固体回折格子に比べて高い(100 J/cm2)。図 1-4[29]は 実際のプラズマグレーティングの生成手法とそれを利用して実際に光を回折させている。

ここでは波長 1μm の赤外高強度レーザーを用い、この時、プラズマ電子密度は 1017cm-3

(電離度1%)、臨界密度は1021cm-3でのプラズマが生成されている。生成されるプラズマ 長Lが 100µm あればΔn×Lの値は波長程度の長さになり、2π以上の光を制御できる。

プラズマグレーティングを生成するのに必要な光強度 I は1016W/cm2以上必要であり、

典型的な被回折レーザーエネルギー(I<1014 W/cm2)と同等か、時には上回ることもあり エネルギー効率が良いとは言えない。また現状では、回折効率も10~50%に留まっている。

さらに、このとき生成されたプラズマは高強度光によって温度が上昇するため、膨張速度も 増加する。このときの速度は、赤外光1eV : 1.0×104Kとして、1μmの格子間隔では0.4ns には膨張し、回折格子として機能しなくなる。残念ながら、プラズマグレーティングは高い 損傷閾値をもつものの、生成効率、回折効率、存在寿命が欠点のため、高強度レーザー制御 用素子としては実用化されていない。

(18)

図 1-4 プラズマグレーティング (a)プラズマグレーティング生成方法 (b)白色レーザ ーをプラズマグレーティングで回折させたイメージ[29]

(19)

1.4 研究の目的

高強度・高出力化していくレーザーシステムにおいて、光学素子の損傷は大きな問題であ る。光学素子のコーティングの技術は進歩しているが、現状は、たとえ大面積化しても高強 度レーザーを扱うには製造、精度の面で問題が生じてきている。あるいはすでに述べたよう に、NIFのように光学素子は破壊される前提で損傷箇所の修復を行うしかなく、この手法 では損傷した光学素子の交換頻度を減少させる意味はあるが、これ以上のレーザーエネル ギーの増大は望めない。NIFでは次世代の高強度レーザー生成計画として(Next

Watt=Nexawat計画)、増幅システム最終段のパルス圧縮に使う回折格子を4倍の大きさに、

さらに最終増幅回折格子へのレーザー光入射前に、複数ビームに分割し、その後コヒーレン トに再結合させるといった技術を組み合わせる計画を立てている[30]。しかし、回折光学素 子の拡大は技術的にも難しく、現在でも大阪大学やLLNL では複数の大型回折格子を組み 合わせる技術開発などで対応しようとしているが、課題は多い。

本研究では、このような光学素子の現状を踏まえて、新しい高耐力光学素子を開発するこ とを目的とした。本研究で開発した高耐力光学素子は中性ガス中の密度変調を利用してレ ーザー光を回折させる回折光学素子としての機能を備えており、本論文では、原理の解明を 含む効率的な光の制御(回折)手法をまとめている。また現在使用されている固体回折格子 と同等の高回折効率、回折後の波面品質も維持した、実用的な性能も併せ持つ光学素子を目 指した。固体光学素子の 100 倍の耐力をもつ光学素子が実現すれば、現在高エネルギレー ザーフラックスに対抗するために1mの面積の光学素子が必要だったところ、1cmで 制御できるようになる。これは結果的にレーザーシステムそのもののダウンサイジングが 可能になり、光学素子で制限されていた最大レーザーエネルギーを増大させる技術となる であろう。

(20)

2. 第 2 章 オゾン混合ガス回折光学素子の生成原理

2.1 はじめに

本研究では、固体回折格子に代わる新しい高耐力光学素子として、中性ガスを媒質とした 過渡的回折光学素子の開発を行った。中性ガスを媒質とした理由は、従来のように固体物質 を使用している限りは破壊閾値が桁違いに高い光学素子を作ることは本質的に不可能であ り、かつ常に損傷のリスクを抱え続けるためである。逆に言えば、気体でレーザー光を制御 できるものが生成できればダメージフリーで動作させることができる。そこで本研究では、

元来固体よりも高い破壊閾値をもつ気体に注目し、これに回折光学素子としての機能をも たせることとした。

ガス媒質中で光を制御するためには、すでに開発されているプラズマグレーティングの ように、気体中に高強度レーザーパルスの照射によって周期的なプラズマの屈折率変調構 造(Δn=10-2~-3)以上を生成し、体積回折格子のような構造にすることが考えられる。しか し前章で述べたように、屈折率変調源としてプラズマを利用する手法は、生成するために膨 大なエネルギーが必要であり、かつ高温になるため膨張速度がピコ秒オーダーとなってし まう。よって光学素子としては短時間しか使用できず、多くの応用には利用できない。そこ で、プラズマを使わない密度変調生成手法を考える必要がある。

ここで気体の屈折率を考えてみると、大気圧、0℃の条件で例えば窒素の屈折率 n は n=1.000297, 酸素ではn=1.000272 など[31]、そもそも真空のn = 1からわずか10-4程度 しか差がないので、プラズマを使わずΔn=10-4~5以上を達成するには、中性ガス中で大きな 密度変調構造を誘起する必要があることがわかる。本研究では、オゾンを含む酸素ガスと紫 外レーザーの組み合わせによって、中性ガス中で大振幅密度変調構造を生成する手法を開 発した。そしてこの構造を過渡的回折光学素子として利用し、実際の本章では主に、開発し た過渡的回折光学素子における屈折率変調生成原理を実験的、理論的に解明した結果を示 す。この素子は、中性ガスを媒質とするので、原理的に破壊閾値が桁違いに上がることだけ でなく、非線形現象を使わないので必要な回折格子生成エネルギーが低く、安定に動作させ ることができる。

(21)

2.2 オゾン混合ガス回折光学素子の概要

本研究で開発したオゾン混合ガス回折光学素子は、オゾンを含む酸素ガスに、干渉計で作 った紫外レーザーの周期的な光強度分布を照射し、ガス中に大振幅の空間周期的密度変調 構造を励起することで作成する。図 2-1 左に簡単な模式図と密度変調構造生成の時間発展 を示す。

ここでは、紫外レーザーとしてKrFレーザー(COMPEX101、λ=248nm, 100mJ,

15 nsパルス幅、繰り返し周波数1~20 Hz)を用いた。また、気体にはオゾンを選択し、こ

れは原料酸素ガスから誘電体バリア放電の手法で生成する。生成させたオゾンと酸素の混 合ガスはフローさせた状態にしておき、そこに2本の紫外レーザーで干渉縞を書き込む。す ると、気体に密度変調構造を作ることができる。その後被回折レーザー(図中の緑色、オゾ ン混合酸素ガスに対して吸収係数の低い波長を選択)を紫外光レーザーが照射された時間 から数十ナノ秒程度遅らせて、回折格子の条件に合わせて入射すると、ガス中で回折が起こ る。

図 2-1 右側では、このときのガス中でのオゾン密度の時間発展を簡単に示している。初 期状態では、オゾンガスは一様な密度状態にある。オゾン分子は紫外領域において高い吸収 断面積をもつため、紫外レーザーが照射されると、照射された領域のみのオゾンが紫外レー ザーのエネルギーを吸収し、熱を持つ。これがさらに時間発展していくと(t=t2)、紫外レー ザーの照射部、非照射部でオゾン密度の異なる状態を作ることができる。これが屈折率差

(Δn)を生むので、ガス型体積透過回折格子を作ることができる。

図 2-1 オゾン回折格子の概念図(左):生成方法(右):ガス密度の時間発展イメージ

本章では、まず、オゾン分子の紫外線吸収特性を記し、実験的に明らかになった密度変調 の時間発展とその性質を述べる。次に、オゾン混合ガス中への紫外レーザーの空間周期的照 射によってのみ生成される粗密波の理論的解釈を述べる。

(22)

2.3 オゾン分子の紫外線吸収特性と光解離・再結合反応

オゾンは酸素原子3つから成る分子構造をもち、大気中での放電時に臭気を放つ気体が 生成されるとして 1785 年頃からその存在を知られていた。のちにハートレー、ハギンス、

チャピウスらによって、幅広い波長帯域での吸収が報告されている。図 2-2 にはオゾン分 子の吸収断面積の波長依存性を示した[32]。オゾンは特に、ハートレー帯と呼ばれる波長

250nm領域の紫外光をよく吸収し、吸収断面積σはおよそ10-17 cm2にも及ぶ[32]。この値

は他の波長に比較しても5桁以上大きく、本研究では、オゾン分子のこの紫外波長と他の波 長での吸収断面積の差を利用する。一方で、原料酸素分子に対する紫外領域の吸収は波長

160 nmでピークを迎え、波長250nm領域ではほぼない[33]。

図 2-2 オゾン・酸素の吸収断面積[33]

オゾンは、よく知られているように、大気の上層にあって波長300nm以下の光を吸収す る。よって、地表に人体にとっては有害な紫外波長帯の光が降り注がないわけであるが[34]、

成層圏に存在するオゾンが紫外光を吸収する反応については今までにも多くの研究がなさ れている。大気中でオゾンは、O+Oの結合反応によって生成されると同時に、中部及び 下部成層圏で波長 300nm 以下の光を吸収し励起されたのち、ただちに光解離する(O3 + ℏν → O+O2)。光解離反応では酸素原子Oが生成されるので、再結合反応がおこり、再 びオゾンが生成される。そのため、全体としてのオゾンの量は減らない。大気中でオゾンを 消滅させる反応は酸素原子系との反応であることが知られている。これら一体の反応サイ クルはチャップマンサイクルと呼ばれているが、これには成層圏程度の低圧条件化という

(23)

但し書きがつく。実際の実験条件は大気圧程度で、成層圏に比較すれば高圧条件であり、反 応はより複雑になる。例えば、周囲にO2が多く存在していれば、O+O2の再結合反応速度 定数も低下することが報告されている[35]。実際には、オゾン混合ガス回折光学素子生成条 件と同じ、1気圧の酸素にわずかに含まれるオゾン(1~10%)に紫外レーザーが照射され るとオゾンがどのように変化するのかについて、検討する必要がある。

以下には、紫外レーザーによってO3が光解離した後の詳細な O3分子の化学反応プロセ スを示す[36]。

ここで、O、O2、O3は基底状態の各分子、O3(v)は振動状態のオゾン分子である。

(1)式:紫外レーザー照射後にOがO原子とO2に光解離するプロセスを示す。ここ でO原子はO(1D)とO(p)の2つの電子状態に分岐される。

(2)式:(1)式で生成されたO(1D)がO(p)になる。300Torr程度の圧力下で はこの現象は3 ns 以下の時間で終了する[37]ので、760Torrではより短い時間スケールで この反応は終了する。

(3)式:再結合によって O(p)が振動励起 O3(v)になるプロセスを示している。

(4)式:振動励起O3(v)がO2と衝突し基底状態O3に失活するプロセス。このとき、

トータルの振動励起O3(v)の量はO2ガス圧に依存し、右式のO2はO3(v)から運動エ ネルギーを受け取った状態になっている。

(24)

(5)式:(5b)式は基底状態のO3から直接的に振動励起O3(v)を生成する。(5a)

式はO3と反応してO原子になるが、このO原子はただちに式(3)を介して反応が進む。

よって、(5a)、(5b)式ともに振動励起O3(v)の生成プロセスになる。

(6)式:Oの電子状態のみが変わるプロセス。

参考文献[36]では、我々の実験条件に非常に近い条件で(1)~(6)式の各反応速度定数 を求めている。この実験では、波長248 nm、80mJ/pulse、10 nsパルス幅のKrFレーザー を大気圧程度のO2とO3の混合ガスに照射する(ガスは室温)。

まず、これらの式から、紫外レーザーの照射によって全体のO濃度が変わるかどうかを 考える。ここでのO3濃度は、基底状態O3と振動励起O3の両方を含む。(1)式で光解離 して生成されたO 原子はすべて、一部は(2)式を経由し、最終的には(3)式で振動励 起O3(v)になる。よって、(1)式から(3)式まででO濃度は変化しない。(4)式は 振動励起O3(v)が基底状態O3になるだけの反応なので、やはり正味のO3濃度は変化し ない。(6)式にはO3が関わらない。(5)式には両辺に O3が存在するので、結論として は、トータルのO3濃度変動は式(5)の影響を最も受ける。しかし、(5)式左辺のO3の 初期状態濃度はO2に比較すると少ない(O2が大気圧のとき O3はその 10%程度)ので、

(3)式や(4)式の反応に比べるとこの式は非常に長い時定数を持つ。よって、10 nsの 紫外レーザーパルスが照射されている間じゅうずっとこの反応が起こるので、(1)式での 光解離反応で減った全体のO濃度が元に戻るまでの時間が十分にあり、かつ変動量も小さ い。

(3)式のO+O2の再結合による O3(v)の生成時にいくつかの赤外波長域(9.6 µm, 4,7 µm, 3.4 µm, 2.1-2.7 µm)の発光が観測されるが、これは式には含まれないわずかなエネ ルギーである。よって、これらの式から、基底状態にあったO3は、紫外レーザー(λ= 248

nm, E= 5eV)による光解離後、各プロセスを経由し、最終的に一部は基底状態O3に戻り、

一部は振動励起O3(v)になり、また一部のO2は振動励起O3(v)から運動エネルギー を受け取ると考えられる。

(25)

2.4 オゾン混合酸素ガス中の密度波の生成

オゾン混合酸素ガスへに紫外レーザーパルスを照射中すると、O3の光解離+再結合プ ロセスがおこり、これによって振動励起O3(v)分子と、振動励起O3(v)からエネルギ ーを受けとったO2分子を生成できる。また、このプロセスは紫外レーザーパルスの照射時 間内に終了する。以下には、O3のこの性質によって、オゾン混合酸素ガス中で大振幅の密 度波が生成する過程を実験的に示した結果について述べる。

(1) オゾン密度の時間発展計測

ここでは、まずオゾン混合酸素ガスに紫外レーザーパルスを空間周期的に照射したのち のオゾン分子の動きについて、オゾン(基底状態、振動励起状態含む)密度の時間発展の計 測を行った結果について示す。

オゾン密度は吸収計測によって測定する。この手法は物質の光の吸収を利用して密度を 求める方法で、媒質の吸収係数と長さが既知のとき、媒質中に光を入射する前後の光強度を 計測することで、媒質の密度を求めることができる。ここで入射する光の波長は媒質に吸収 のある波長を適当に選択する。このときの光の媒質による吸収はランベルト・ベールによっ て以下のような式で示されている。

ここで、

I0:入射光強度 I:媒質透過後の光強度 N:媒質の密度[cm-3] σ:媒質の吸収係数[cm2] L:媒質長[cm]

である。

この実験では、紫外レーザー照射後のオゾン密度の時間発展を計測するため、紫外レーザ ーと時間的に同期したプローブレーザー(λ=298nm)を用意した。図 2-2に示されるよう に、オゾンは弱くこの波長の光を吸収する。実際の実験では、以下の3つの状態の計測を行 った。

① 入射光強度I0(Ino_ozone):空の測定領域中を透過するプローブ光強度(オゾンは生成さ せていない状態。大気圧の実験室空気で測定)

② 透過光強度I(Iozone):オゾンガス領域(測定領域)透過後のプローブ光強度(紫外レ ーザーで干渉縞を書き込んでいない場合)

③ 透過光強度I(IKrF+Ozone):オゾンガス領域透過後のプローブ光強度(紫外レーザーで 干渉縞を書き込んだ場合)

(26)

このとき、プローブ波長における既知の媒質の吸収係数値を利用すると、上式により

Nozone(紫外レーザーで干渉縞を書き込んでいない状態のオゾン密度、すなわち初期状態)、

NKrF+ozone(紫外レーザーで干渉縞を書き込んだ状態でのオゾン密度)を求めることができる。

図 2-3には、実際のオゾン密度測定のための吸収測定系を示した。

図 2-3 左部では、オゾン密度時間発展計測プローブのための色素レーザー部システムを 構成している。色素レーザーの励起にはSHG: Q-Switch YAGレーザー(波長532nm、パ

ルス幅6 ns)を用いた。色素にはローダミン6G、溶媒にはエタノールを用い、これを四面

研磨された石英ガラスセルに入れている。励起レーザーをシリンドリカルレンズで石英ガ ラスセル表面付近に細く集光させ、側面励起すると、色素レーザー(波長598 nm)を発振 させることができる。このとき、色素レーザーは励起レーザー軸に対して垂直に両方向に発 振する。

図 2-3 密度変調測定光学系

この状態の色素レーザーは、10nm 程度の比較的広い発振スペクトルをもつ。ここでは、

正確な吸収測定のためにさらに発振スペクトルの狭窄化を行っている。図 2-3 左部で示し ているように、2つある色素セルのうちの一方(図中下側)の発振光路に回折格子を置き、

発振光を回折格子によって波長分散させる。得られた1次光はアルミミラーで反射させ、再 び同じ光路で色素セルに入射させる。このとき、色素セルと回折格子の間にはスリットを置 き、波長分散させたスペクトルのうちの一部を切り出すことで、元の発振スペクトルより狭 いスペクトル光のみが色素セルに戻るようになっている。ここで、図中下側の色素セルのも

(27)

う片方の発振光路にエンドミラーを置き、色素セルをサンドイッチするようにアルミミラ ーとの間で共振器構造を作ると、回折格子によって波長選択された光のみを増幅すること ができる。このスペクトル狭帯域化された光を、2つめの色素セルに入射し、さらに光強度 の増幅を行った。増幅された直後の光は、BBO結晶に入射し、波長変換を行って2倍高調

波の波長298nmの光を生成した。これをオゾン密度吸収計測のためのプローブ光として利

用した。

APD(大気圧プラズマ発生装置)部では、原料酸素ガスからオゾンを生成しており、図 2-3中のAPD部においては、生成されたオゾン混合酸素ガスを閉じ込めるための窓のない 状態でも媒質長が定まるようなガス領域を生成できる機構になっている(詳細は第三章に 記載)。ここでは媒質長1㎝のガス領域を生成した。

2本の紫外レーザー(KrF, λ=248nm, 15 nsパルス幅)はガス領域(奥行~1cm)に干縞 縞を書き込むように入射する。BBO結晶で波長変換された色素プローブ光も、同じガス領 域に入射される。色素レーザーと紫外レーザーは同一のパルスジェネレーター(DG64 5)で同期をとっており、2つのパルスの時間遅延を制御している。時間ジッターは±1ns 程度に収まっており、オゾン密度の変化としてはこの範囲内では一定とみなせるので測定 結果への影響は無視している。

このとき、色素レーザーの励起と波長変換によって生成されたプローブ光は、ショット毎 に強度がふらついてしまう問題が生じた。そこでガス領域直前で色素プローブの光をビー ムスプリッターで分割し、一方はガス中に、もう一方は空気中を伝搬させることで、光強度

(I、I)を同時に計測することができるシステムとした。ショット毎にプローブ光強度が 異なるデータのうち、同じリファレンス光強度I0をとるときの、ガス中を通る光強度Iを比 較することで、正確な時間発展計測を行うことができる。

図 2-3のように、ガス領域を通るパスをサンプルライン(I)、空気中を伝搬するパスをリ ファレンスライン(I)とし、これら2つの光はCCDカメラ直前で三角プリズムによって 合流させ、CCD カメラでその強度を計測している。CCD カメラで得られる吸収測定画像 は、上下に同時にI とIが記録される形になる。各光路の途中のレンズは、サンプルライ ンがガス領域を通過した直後の位置の像が CCD カメラ上に像転送される位置に挿入して いる。

図 2-4には紫外レーザーの縞間隔が23 µmのとき、図 2-5には63 µmの時のCCDカメ ラで観測されたプローブ光透過像(I)の時間発展を示した。紫外レーザー照射開始時間を 0 nsとして、パルス幅分の時間(0~15 ns)、ガスに紫外レーザーが空間周期的に照射され続 け(写真では縦方向に紫外レーザーの干渉縞を作っている)、その後は照射されない。図中 の数字は紫外レーザー照射開始時間からのプローブレーザーの遅延時間を表している。

(28)

図 2-4 密度変調構造の時間発展(縞間隔23 m)

図 2-5 密度変調構造の時間発展(縞間隔63 m)

(29)

図 2-4、図 2-5 に示されるように、紫外レーザーが照射されてからオゾン密度が時間発 展する様子が観測された。紫外レーザー照射中はオゾン密度の変化は観測できないが、時間 の経過とともに空間密度変調が発展していく様子が確認できる。図 2-4 では、紫外レーザ

ー照射後55 nsに照射・非照射領域のオゾン密度変調量が最大になっている。ここで、縞の

黒い部分は初期紫外レーザー非照射部、縞の白い部分は紫外レーザー照射部に対応してい る。この後、次第に密度変調量は減少し、105 ns で振幅が最小になったあと、150 ns後に はまたオゾン密度変調量が最大を迎えている。このような密度振幅が繰り返される様子は、

図 2-5のように紫外レーザーの干渉縞間隔が図 2-4より大きい場合でも同様に確認できる。

ただし、密度変調の構造は異なることが確認された。

図 2-6にはこの吸収計測においてサンプルラインから得られるプローブ光の光強度Iと、

リファレンスラインから得られる光強度 Iにより計算された、オゾン密度の時間発展を示 している。紫外レーザーの縞間隔は23 µm である。図中の橙色の点は紫外レーザー照射部、

青点は紫外レーザー非照射部のオゾン密度を表し、その時間発展を示した。

紫外レーザー照射開始(0 ns)時には、紫外レーザー照射部と非照射部の密度差はない。

このときのオゾン密度は1.4×1017cm-3であり、1気圧の酸素分子密度2.4×1019cm-3とすれ ば、光解離+再結合反応を経て生成されたオゾンは、酸素に対しておよそ 1% 含まれるこ とが見積もれる。紫外レーザー照射部に存在していたオゾンは時間とともに減少し、オゾン 密度変調量が最大となるとき(55 ns)、照射領域のオゾン密度はほぼゼロになっていること がわかる。一方、紫外レーザー非照射領域のオゾン密度は、逆に時間とともに増加しやがて ピークを迎える。このオゾン密度の時間的な変化は周期のように繰り返している。

前節で示されているように、紫外レーザーによるオゾンの光解離+再結合プロセスは、各 反応速度定数[36]と初期濃度から計算すれば紫外レーザー照射終了直後にほぼ同時に終了 する。よって、図 2-6に示されている時間スケールではオゾン濃度の増減はないとすれば、

この紫外レーザー非照射部のオゾン密度の増加は照射部に存在していたオゾン分子の移動 によるものと考えられる。また、紫外レーザーの照射によってこのオゾン密度が疎になる場 所、密になる空間的な場所は常に同じであり、何サイクル経ようが変わらないことが同時に 観測された。

(30)

図 2-6 オゾン密度の時間発展

この計測において、ガス中には大きな屈折率変調構造が生成されているため、プローブ光 もガス中を通過する間に屈折する効果が現れる。図 2-4、図 2-5 の吸収計測像に違いが現 れるのはそのためであり、図 2-5 の方には屈折効果でより顕著にプローブレーザー光が白 い部分に集中していることがわかる。図 2-6 においてはその影響が小さいとしてオゾン密 度を算出しているが、実際にどの程度、紫外レーザー光の非照射部分にオゾン分子が集中し ているのか、具体的な数字に関しては、今後プローブ光の屈折効果を含めた補正計算を行う 必要がある。

上記の実験では、空間周期的に紫外レーザーを照射することでオゾン分子の移動、周期的 なオゾン密度の時間変化が観測された。では、単にオゾン混合酸素ガス中に単に紫外レーザ ーを集光照射した場合にはどのような変化が起こるのか、以下には補足として記述する。

図 2-7には、紫外レーザーパルスを50mJ/cm2 のエネルギーでオゾン混合ガス中に集光 照射したのち、130ns後と300ns後の屈折率の変化をCCDカメラで観測した像を示してい る。プローブ光にはオゾン混合ガスに対して吸収のない波長の Q-Switch YAG レーザー

(SHG、波長532nm、パルス幅10ns)を使用している。図 2-7の緑色プローブレーザーに よる干渉縞は、屈折率変調量を計測するためのものである(計測手法の詳細は第4章に記述 した)。この像では全体にオゾン混合ガス領域があり、ちょうど中心に紫外レーザーパルス が集光照射され、その後の時間変化を観測したものとなっている。

(31)

図 2-7 オゾン混合ガスに紫外レーザーを集光照射した場合の密度の変化

写真に示しているように、紫外レーザー照射後130ns後の屈折率変化に比較し、300ns後 の屈折率の変化は、その干渉縞の歪みの大きさから、大きくなっていることがわかる。しか し興味深いのは、このような紫外レーザーの集光照射条件、すなわち空間周期的に照射して いない条件の場合、図 2-6 に見られたようなオゾン密度の周期的に現れたり消えたりする 大きな密度変化が観測されないことである。紫外光レーザーによるオゾン分子の光解離・再 結合プロセスによれば、基底状態にあったO3は、紫外レーザー(λ= 248 nm, E= 5eV)に よる光解離後、各プロセスを経由し、最終的に一部は基底状態O3に戻り、一部は振動励起 O3(v)になるが、紫外レーザーの照射条件の違いによって密度変調の時間変化に違いが出 るということは、全く別の物理プロセスが紫外レーザーを空間周期的照射した場合にのみ 起こっているということが言える。

(32)

(2) 酸素密度の時間発展計測

オゾン密度の時間発展計測と同様に、紫外レーザーをオゾン混合酸素ガスに空間周期的 照射した場合の、酸素密度の時間発展計測についても同様に行った。この理由としては、オ ゾンの光解離・再結合プロセスにより、一部のO2が振動励起O3(v)から運動エネルギー を受け取るために、オゾン分子と同様に酸素分子についても紫外レーザーの照射後に時間 的な変化が現れる可能性があるためである。

図 2-2によれば酸素分子は波長170 ~200 nm領域(シューマルンゲ吸収帯)に対して吸 収がある。またこの波長域ではちょうどオゾン分子に対しても大きな吸収があるので、波長

193 nmのArFレーザー(COMPEX101、λ=193nm, 100mJ, 15 nsパルス幅)を密度

変調観測プローブ光として選択し、オゾン+酸素分子の紫外レーザー照射後の密度変調を 観測した。図 2-8にはその測定系を示している。

図 2-8 2波長プローブによる酸素・オゾン吸収同時計測システム

この測定では、図 2-8 中の赤点線丸の密度変調測定領域に含まれる酸素以外の、大気中 の酸素の影響と、ArFレーザーの発振スペクトル幅内(=1nm)で酸素分子の吸収が不連 続であること(シューマルンゲ吸収帯)を考慮する必要がある。大気中の酸素の影響につい ては、測定領域以外の ArF レーザーの伝搬光路中に酸素が含まれないよう、システム全体 を囲い、その中をCOガスで満たすことで解決した。また、Oの吸収測定のために、ガス 領域通過後の ArF レーザースペクトルを分光し、その吸収スペクトルを観測した。また、

色素レーザーシステムによって生成された298nmの波長の光によって、オゾン分子の密度

(33)

変調時間発展も同時にモニターし、最大密度変調をとる時間の把握を行っている。ArFレー ザーは密度変調領域通過後に回折格子(3600本/mm)に入射させ、その1次回折光分光像 をカメラでモニターした。このときArFレーザー光路中では2枚のレンズによる像転送光 学系により密度変調領域通過直後のイメージが観測できるようになっている。また、この測 定時には図中赤丸線部のガス領域からガスがシステム中に漏れ出ることのないよう、紫外 レーザーを透過するガラスウィンドウでガス領域をふさいでいる。

図 2-9 波長193 nm付近での酸素吸収スペクトル

図 2-9には測定されたArFレーザーの吸収分光スペクトルを示した。写真は、回折格子 で分光されたプローブ光をカメラで観測したものであり、横軸は波長、縦軸は空間を表して いる。下段はこの観測像の波長方向断面図をとったものであり、中央および右画像の右側に に示されている断面図は空間方向断面図になっている。

図 2-9左の画像は、システム全体をCO2ガスで満たさない場合のArFレーザーのスペク トル分光像を示しており、大気中の酸素の線吸収スペクトルが観測されている。中心の画像 は、システム全体をCO2ガスで満たした上で、図 2-8中赤点線部の測定領域を真空にひい たときの吸収スペクトル分光像を示している。この場合は ArF レーザー全光路中に酸素分 子、オゾン分子が存在しないので一切の吸収が見えない。右の画像は、まずシステム全体を CO2ガスで満たし大気中の酸素の影響を取り除き、次に測定領域にオゾン混合酸素ガスを 満たした上で、紫外レーザーを空間周期的に照射し密度変調を生成させたときの吸収スペ クトル分光像を示している。中心の画像と比較すれば、測定領域に酸素を含む分、わずかに 酸素の線吸収スペクトルが観測されている。また、ArFレーザー波長帯にもオゾン分子の吸

図  1-4  プラズマグレーティング  (a)プラズマグレーティング生成方法  (b)白色レーザ ーをプラズマグレーティングで回折させたイメージ[29]
図  2-4  密度変調構造の時間発展(縞間隔 23 m)
図  2-6  オゾン密度の時間発展  この計測において、ガス中には大きな屈折率変調構造が生成されているため、プローブ光 もガス中を通過する間に屈折する効果が現れる。図  2-4、図  2-5 の吸収計測像に違いが現 れるのはそのためであり、図  2-5 の方には屈折効果でより顕著にプローブレーザー光が白 い部分に集中していることがわかる。図  2-6 においてはその影響が小さいとしてオゾン密 度を算出しているが、実際にどの程度、紫外レーザー光の非照射部分にオゾン分子が集中し ているのか、具体的な数字に関し
図  2-7  オゾン混合ガスに紫外レーザーを集光照射した場合の密度の変化  写真に示しているように、紫外レーザー照射後 130ns 後の屈折率変化に比較し、 300ns 後 の屈折率の変化は、その干渉縞の歪みの大きさから、大きくなっていることがわかる。しか し興味深いのは、このような紫外レーザーの集光照射条件、すなわち空間周期的に照射して いない条件の場合、図  2-6 に見られたようなオゾン密度の周期的に現れたり消えたりする 大きな密度変化が観測されないことである。紫外光レーザーによるオゾン分子の光解離
+7

参照

関連したドキュメント

The set of families K that we shall consider includes the family of real or imaginary quadratic fields, that of real biquadratic fields, the full cyclotomic fields, their maximal

 Adjustable soft--start: Every time the controller starts to operate (power on), the switching frequency is pushed to the programmed maximum value and slowly moves down toward

(4S) Package ID Vendor ID and packing list number (K) Transit ID Customer's purchase order number (P) Customer Prod ID Customer Part Number. (1P)

into burst−mode. In burst−mode, switching operation is halted when V COMP is lower than V BURL and resumed when V COMP is higher than V BURH. By skipping un-needed switching

The analog current sense pin in such an event will output the fault state current−typically higher than the currents sensed during normal operation and a high fault−state sense

C.海外の団体との交流事業 The Healthcare Clowning International Meeting 2018「The Art of Clowning 」 2018 年 4 月 4

To synchronize the receiver frequency to a carrier signal, the oscillator frequency could be tuned using the capacitor bank however, the recommended method to implement

To synchronize the receiver frequency to a carrier signal, the oscillator frequency could be tuned using the capacitor bank however, the recommended method to implement