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はじめに(pdf)

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Academic year: 2021

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はじめに

本書は,消防吏員,建築行政,そして火災調査員のために書かれたものである。本書にある 数式等を有効に利用するためには,初歩的な数学の知識を必要とする。少しでも工学・科学を 学ばれた経験のある方にはより役に立つと思われる。本文は,火災技術者への講義資料を含ん でいるが,理論やかなり詳しい知識を論ずるところは含んでいない。初級本であるが,本書に 書かれている火災科学の概念は,すでに火災科学を学習している皆さんにも同様の利益をもた らすと考える。

本書は,米国の The Bureau of Alcohol, Tobacco, and Firearms (BATF)の火災調査員に行わ れる教育課程で使用された講義資料から生まれたものである。また,この講義資料の一部は米 国政府 Federal Law Enhancement Training Center (FLETC)の後援のもと,州や地方自治体の 火災調査員への教育プログラムでも使用されている。私はそれらの組織から,実火災の理解や, 火災現象の理解へどのように科学を利用するかを考える場をたくさん得ている。BATF の Rick Miller と Jackie Herdon らは私に教育をどう考えるかという場を提供してくださり,Bill Petraitis は私に火災調査員にどのように火災の分析を行わせるかを一緒に説いていただいた。 本書はまず大まかに火災現象とは何か,研究の背景とは何か,どのように皆さんが火災を学 習していくべきなのかを説明することから始まる。絵や図などをなるべく使うようにし,数式 記号,物理単位などは巻末に収めている。 まず初めに火災の概念として,拡散火炎,予混合火炎,燻焼,自然発火を論じることにする。 ロウソクの炎の実験はいくつかの火災の概念を理解することに役立つものとして論じられてい る。 伝熱工学,着火,火炎伝播,燃焼速度が本書では述べられている。数式は本書を読む皆さん が実際に使って,火災を定量的に考える概念を植え付けられるように掲載してある。kWとい う単位で代表される発熱速度(Q3 )は火災を考える一つの因子として重要なものである。 後半の章は,火災プルーム,燃焼生成物,そして区画火災について,前章同様,定量的な数 式を用いて説明している。 本書の最後に,どのように火災分析を火災安全設計や火災調査へ応用するかを述べることに する。例えば,1993年 4月 19日に起きた Branch Davidian 教団の火災を含むいくつかの実例 を掲載してある。最終章を読むことで,皆さんが本書を用いて,皆さん各々が直面する問題を 解き明かしていけることを祈っている。 火災科学を初めて勉強される方に一言付け加えておく。火災は予期もしない危害や被害を与 えることが可能な現象である。小さな炎でさえ,数秒で火傷を引き起こし,家一軒を燃やす火 災は数分で死亡事故や避難不能の状態を引き起こす。もし実験を行う際には,本書で述べられ

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はじめに

ii

ている実験はあくまでも教育目的であり,十分な換気や可燃物の燃焼を抑制することができる ことなど,確実に安全が担保された環境下において実験を行うこと。特に液体燃料を使用ある いは扱う際には必要以上の安全の配慮を施すこと,をお願いしたい。

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日本語版によせて

This book grew out of courses given to fire investigators who wanted to learn more about fire. That desire has grown from the original group:The Bureau of Alcohol, Tobacco, and Firearms(ATF), to include the International Association of Arson Investigators(IAAI)and others. The IAAI now include on their website courses that cover many aspects of fire investi-gation. These web−based courses are sponsored by a federal program that emerged due to 9/11. I urge those that read this book to investigated this website:http://www.cfitrainer.net.

An important feature of this book is to try to convey the physics of fire behavior to the read-er through an explanation and formulas to estimate the phenomena. I cannot emphasize the need to understand the physics of fire more. Today in a world of computers and animated out-put, the user can be led to accept easy answers. The physics of fire comes from nature, and any representation of nature must be true to it.

本書は,さらに火災についてより深く勉強したいという火災調査員らのために行われた講義 から生まれました。元は,米国 The Bureau of Alcohol, Tobacco, and Firearms (BATF),Inter-national Association of Arson Investigators(IAAI)やその他火災調査に従事するグループから の要望でありました。IAAIは現在,火災原因調査についてウェブサイトを活用して学術的観 点も含めた形でのオンラインコースを進めています。このウェブサイトは,ある米国政府の援 助,支援を 9/11ワールドトレードセンター事故をきっかけに進められています。私は,本書 の読者にぜひ IAAIのウェブサイト(http://www.cfitrainer.net)を訪れて,彼らの火災調査を どのように考えるかという啓発活動を見ていただき,参加していただきたく思います。 本書の一番重要なポイントは,読者が火災現象を概念と数式を駆使して,どのように火災現 象の物理的背景があるのかを考え,理解するかを導き出すということです。特段,物理式の起 源を一つずつ究極まで考えるということを読者には求めていません。今日,コンピュータやア ニメーションによる出力が可能になったことで,人々は火災原因の答えをより簡単に導き出せ るようになってきています。火災という物理現象は元々自然現象の一つであり,いかなる自然 現象は真実でなければならないのです。 January, 2009

James G. Quintiere

 (ジェームスG.クインティアリ)

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訳者まえがき

James G. Quintiere 先生とはじめてお会いしたのは,米国で開催された UJNR(U. S.−Japan Cooperative Program in Natural Resources)会議の会場であった。当時,私は大学院生として 博士論文をまとめていた時期で,研究テーマが先生のご専門と近く,先生のご執筆された論文 を繰り返し読み返していたこともあり,目前で論文発表した際の緊張感を未だ鮮明に覚えてい る。早いもので,あれから火災研究に携わりながら 15年近く経過したが,今なお先生の研究 論文を拝読する機会も多く,先見性,創造性,そして洞察力など,示唆の富む論文には敬服す るばかりである。

原著 「Principles of Fire Behavior」 は,Quintiere先生の数多い著書のうち,入門書として位 置づけられているものであり,火災科学の専門書として世界中で最も読まれている名著の一つ である。原著は,消防吏員,火災調査員や防火技術者をはじめとする火災の関係者らが,火災 現象の基礎事項を理解し,さらに火災現象に対する自己発展的な思考の展開を可能にする貴重 な良書として,多くの方々の座右の書となっていることと思う。 私の研究室のゼミでも,原著を教科書として使用してきた。日本にも,多くの優れた火災専 門書が刊行されているが,原著では 「火災現象を理解するための身近な話題」 を所々に織り交 ぜ,そして 「ファラディのロウソク実験」 のような 「火災現象の本質を見抜くシンプルな実験」 を通して難解な火災現象の理解を深化させようという原著ならではの試みが随所に包含されて いる。研究のみならず,教育者としても類まれなセンスを感じることのできるテキストでもあ る。原著の中で日本の火災事例などにも触れられており,日本人の学生らも興味深く,そして 関心を持って本書を扱っている様も垣間見られた。そのような原著に触れた学生らの中には, 日本の方々に本書の内容が広まり,火災科学に興味をもつ方が増えればという声もたびたび聞 かれた。 本書の構成であるが,原著に従い全 10章で組まれている。前半の章では,「火災科学のあゆ み」 からはじまり,火災現象を学ぶために必要な科学の基本的な事柄や数式を平易な形で整理 している。後半の章では,火災現象の構成要素について実験事例を引用しながら物理・化学的 な観点で解説し,最終章では,本書で学んだ事項を火災分析や火災調査へ活用する方法など, 具体的な例が示されている。Quintiere先生が原著で留意された写真や図を使用したわかりや すい解説が本書でも再現できるよう,書面サイズの関係で図表が原著に比べ縮小しているもの もあるが,原著同様の理解が得られるよう心掛けたつもりである。 翻訳は 3年ほど前から取り掛かり,昨年,私が英国で過ごした一年間の在外研究期間中に仕 上げる形をとった。Quintiere先生の門下生である共訳者の若月 薫博士には,翻訳開始時から 火災現象の英語独特の表現をはじめとし,米国での火災事例などの日本語訳の細部にわたりご

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訳者まえがき

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配慮いただいた。しかしながら,本書を手にした方々から日本語訳として不十分な拙訳に対す るご叱正,ご意見を賜れれば幸いである。 最後に,本書の刊行にご快諾いただいた Quintiere先生には心より御礼申し上げます。そし て,本書の刊行にむけご協力いただいた大宮研究室の当時大学院生であった,織戸貴之,桑名 裕太,小玉直史,後藤大輔,城明秀,寺川喬,松原敏子,柳澤晶人の各氏,また,原稿の執筆 遅れに根気強くお付き合いいただいた共立出版株式会社の横田穂波氏のご尽力に深く感謝いた します。 2009年 3月



大宮喜文

原著「Principles of Fire Behavior」は,国際火災安全科学学会の会長や数多くの火災調査を 学術的立場からされた Quintiere先生が,火災調査のエントリーレベルの方に火災科学をかな り噛み砕いて教科書としたものであり,世界的にも有名な火災科学の教科書の一つです。おそ らく,火災科学研究者の方々は,この原著を一つのバイブルとしてお持ちかと思います。私は, 世界的にも評価のある本書の日本語版出版に参加させていただいたことは,一人の火災科学研 究者としてとても名誉なことであり,また Quintiere先生の教え子の一人としてとても誇りに 思っています。Quintiere先生が私たち教え子にいつも説かれていた,「火災という物理現象を どのように考え,解釈するか」を本書を通して少しでも多くの方に理解していただければと 思っています。 本書は,大宮先生と初めて火災研究の仕事をさせていただいてから,二人が目指す火災科学 の教育・啓発活動の一つとして,入門向け教科書を作成しようという企画から生まれました。 特段,私はこの分野の人に読んでほしいということは考えてはいません。むしろ,一人でも多 く,火災という物理現象を考える原点として,本書を活用していただければうれしく思います。 本書は,原著の文章に沿って忠実に日本語訳をしましたが,一部英語にあって日本語にない 語彙などは,可能な限り意訳しました。 原著出版元との交渉,出版にあたりご協力いただいた共立出版株式会社横田穂波氏,原稿を 作成するにあたりご協力いただいた東京理科大学大宮研究室の皆さんに感謝いたします。  2009年 3月



若月 薫

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