第3章 データ
本章では、本研究におけるデータの「妥当性」についてフォローアップ・アンケー トの結果を報告し、基本情報として発話文数を提示する。
3.1データの妥当性
本研究では、会話データの妥当性と会話分析の結果の信頼性を裏付けるため、会話 の2次データとして、会話終了後にはフォローアップ・アンケートを実施している。
以下では、対話相手の年齢・社会的地位の認知と収集された会話データの「自然さ」
についてのフォローアップ・アンケートの結果を提示する27。
3.1.1対話相手の年齢・社会的地位の認知
本研究は、円滑なコミュニケーションを図るために、対話相手との年齢差、性差 の「力関係」に応じて話し手がどのように言語使用を操作するかを分析するものであ り、べ一スの被験者が、対話相手の年齢と社会的地位をどのように認知しているかが 非常に重要である。そのため、実験者(筆者)はべ一スの被験者に対して「目上」、
「同等」、 「目下」と捉えて割り当てた対話相手の組み合わせについていかに捉えて いるかを、5段階で評定してもらった。その結果を、言語別に以下の表5と表6に示す。
表5ベースの被験者の対話相手の年齢・社会的地位の評定平均値(日本語)
実験者割り当て 年齢 社会的地位 年齢+社会的地位 目上(45歳前後)女
@ 男
4.33 S.00
3.33 R.33
7.67 V.33
全体 4.17 3.33 7.50
同等(35歳前後)女
@ 男
2.33 Q.67
3.00 R.00 R.00
5.33 T.67
全体 2.50 5.50
目下(25歳前後)女
@ 男
2.00 Q.00
3.00 R.00
5.00 T.00
全体 2.00 3.00 5.00
27 坙{語の女性のデータは、第2章の研究方法で述べたように、Usami(1999)の資料であ る。そのデータに関しては、Usami(1999)において、年齢と社会的地位の認知や会話デー タの「自然さ」について妥当性が確認されている。ここでは、日本語においては、男性の データだけの結果を提示する。
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表6ベースの被験者の対話相手の年齢・社会的地位の評定平均値(韓国語)
実験者割り当て 年齢 社会的地位 年齢+社会的地位 目上(45歳前後)女
@ 男
@ 全体
4.50 S.75 S.63
3.25 S.25 R.75
7.75 X.00 W.38
同等(35歳前後)女
@ 男
3.00 R.00 R.00
2.75 R.00
5.75 U.00
全体 2.88 5.88
目下(25歳前後)女
@ 男
1.50
P50
P.50
2.50 Q.25
4.00 R.75
全体 2.38 R.88
表5と表6に見られるように、平均値で見る限り、日本語と韓国語ともに、年齢の平 均値は、実験者の割り当てとほぼ一致していることが分かる。しかし、社会的地位の 平均値に関しては、日本語は同等と目下に対して社会的地位の認知が同じという結果 が出ており、韓国語は上、同、下は一致しているが、同等と目下の差が年齢ほどはっ きりと出ていない。これは、宇佐美(1996)でも指摘されているように、年上に当たる 被験者が年下の相手の社会的地位を「下」と評定することに抵抗を感じることによる
ものと思われる。
以上の結果から、日本語・韓国語ともに、平均として、ほぼ実験者の上・同・下の 割り当てと被験者の認知は一致しており、本研究におけるデータは妥当であるとみな
してよいだろう。
3.1.2収集された会話データの「自然さ」について
会話録音が終了した後にフォローアップ・アンケートを行い、相手が初対面の方と して話しやすかったか、相手の話し方・態度について、少し失礼だ、或いは、少し不 愉快だと感じたところはなかったか、自分の話し方について、初対面の相手との会話
としてどう思ったか、録音を意識せずに自然に話すことができたか、また、会話協力 が2回目以上の被験者については、会話を繰り返したことの影響の有無などについて、
5段階で評定してもらい28、 「自然な」会話が収集できたかどうかを確認した。その結
28 スだし、 「相手の話し方・態度について、少し失礼だ、或いは、少し不愉快だと感じ たところはなかったか」の設問に関しては、 「1.全くなかった」と「2.少しあった」の2 段階で評定してもらった。
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果を言語別に、以下の表7と表8に示す。なお、平均値が高いほど(1から5まで)、被験 者が当該の設問内容について、 「その程度が高い」という評価をしたことを示してい る。例えば、 「話しやすさ」の平均値が高いほど、 「話しやすさ」の程度が高かった ことを意味する。
表7データの「自然さ」の評定平均値(日本語)
実験者割り当て 話しやすさ 失礼さ 自然さ 録音への意識 繰り返しの影響 目上(45歳前後)女
@ 男
@ 全体
3.00 S.33 R.67
1.33
P.00 P.17
3.00 S.00 R.10
2.33 Q.33 Q.33
2.67 Q.33
Q50
同等(35歳前後)女
@ 男
4.00 R.00 R.50
1.00 P.00
3.67 Q.67 R.17
2.33 Q.33 Q.33
3.00 R.00
全体 1.00 3.00
目下(25歳前後)女
@ 男
@ 全体
3.67 S.33 S.00
1.00 P.00 P.00
3.33 R.33 R.33
2.33 Q.33 Q.33
2.67
Q50
Q.60
会話データ全体 3.72 1.06 3.33 2.33 2.88
表8データの「自然さ」の評定平均値(韓国語)
実験者割り当て 話しやすさ 失礼さ 自然さ 録音への意識 繰り返しの影響 目上(45歳前後)女
@ 男
@ 全体
3.75 R.25
1.00 P.25 P.13
3.50 R.25 R.37
2.00 Q.00 Q.00
4.00 Q.00 R.00 3.50
同等(35歳前後)女
@ 男
4.50 S.00
1.00 P.00 P.00
4.00 R.75 R.87
2.00 Q.00
2.75 S.00
全体 4.25 2.00 3.37
目下(25歳前後)女
@ 男
@ 全体
4.25
S50
S.37
1.00 P.00 P.00
350
R.75
2.00 Q.50
3.00 S.00
3.62 2.25 3.50
会話データ全体 3.92 1.04 3.62 2.08 3.29
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表7と表8に見られるように、平均値で見る限り、日本語・韓国語ともに「話しやす さ」の項目に関しては「話しやすかった」、 「失礼さ」の項目に関しては「ほぼなか った」、 「自然さ」の項目に関しては「特に不自然ではなく、かなり自然に話せた」、
「録音への意識」の項目に関しては「特に意識はしなかった」と言ってよいだろう。
ただし、日本語・韓国語ともに録音の「繰り返しの影響」の項目に関しては「少し影 響があった」という結果が出ているが、自由記述には「1回目より2回目はもっと自然 に話せた」というような反応があり、データの「自然さ」には問題がないと判断した。
以上の結果から、本研究におけるデータは、日本語・韓国語ともに大きな問題はな く、自然な会話であるとみなす。
3.2 データの基本情報
ここでは、本研究におけるデータの基本情報としての発話文数を、表9に示す。本 研究の主な目的は、対話相手の年齢と性別に応じたべ一ス側の言語行動を考察するこ
とであるため、本稿で実際に分析の対象としたのはべ一スの発話文のみである。
表9データの基本情報
情報
セ語
両話者の総発話文数 ベースの発話文数総発話文数に占める xースの発話文数の割合
日本語 6534 3133
47.9%
韓国語 7970 3802
47.7%
合計 14504 6935
47.8%
表9に見られるように、日本語・韓国語ともに、べ一スの発話文数が総発話文数の 約5割を占めており、べ一ス話者が一方的に話しているのではなく、両話者のバラン スがよくとれている会話であることが分かる。
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