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〈論 説〉
国 際 化 時 代 の 「中 国経 済 」 の 課 題 とは な に か
清 水 嘉 治
10乙
問題の所在
目 次
中国経済の動向と課題
(1)高 成 長 の中 国 経 済② 国 内改 革 と して の農 業 改 革
一一一農業 生産 責任制 か ら郷 鎮企業 制 へ一 (3)開 放 政 策 と して の外 部 依 存 型 経 済 発 展 戦
略
(4)「 全 方位 開放 」 政 策 の特 徴
(5)華 南経 済 圏 の担 い手 と して の華 人 資本 3.当 面 す る中国 経 済 の課 題
(1}イ ンフ レの 要 因 とそ の対 策
② イ ン フ レ抑 制策 とは何 か
⑧ 中央 政 府 の物 価 抑 制 策 4.今 後 の課 題
中 国 が 世 界 の 経 済 成 長 の セ ン タ ー で あ る こ と の 表 わ れ は,中 国 へ の 多 国 籍 企 業 の 旺 盛 な 投 資 活 動 に あ った 。 で は,こ う した 中 国 経 済 の 「発 展 」 ぶ り と は一 体 な に か 。 中 国 の市 場 経 済 化 の 特 色 と は 何 か 。 こ の点 を1980年 代 か ら90年 代 に か け て の 中 国 経 済 の 「発 展 」 過 程 に 求 め て 検 討 し て み た い。
第1に,90年 代 前 半 の 中 国 経 済 の動 向 と課 題 は 何 か を究 明 して み た い。
第2に,高 成 長 の もた らす 矛 盾 と して の イ ン フ レの 要 因 とそ の 対 策 を 検 討 す る 。
第3に,今 後 の 課 題 と して 成 長 に 伴 う環 境 対 策 を ど うす る か に つ い て 考 え た い。
2.中 国経 済 の動 向 と課題
1.問 題 の 所 在
世 界 の 経 済 成 長 の セ ン タ ー と して 東 ア ジ ア,と く に 中 国 経 済 が 脚 光 を 浴 び て い る。1994年8月 30日 にUNCTAD(国 連 貿 易 開 発会 議)が 発 表 した
「世 界 投 資 報 告 書 」 に よ る と,1993年 の 世 界 企 業 に よ る 対 外 直 接 投 資 は1950億 ドル で,3年 ぶ り に 増 加 に転 じた と報 告 し,そ の う ち 途 上 国 へ の 投 資 は40%(800億 ドル)で,目 立 っ た 動 き は,中 国 が 280億 ドル を 占 め た 点 に あ る。 中 国 は投 資 受 け 入 れ 国 と して は,米 国 の320億 ドル に 次 い で 第2位 で あ っ た 。 中 国 へ の 投 資 の 中 心 は,日 本,米 国, EUそ してNIES,ASEANの 国 々 で あ り,多 国 籍 企 業 が 中 心 的 役 割 を 占 め て い る と い う。
1978年,中 国 は 経 済 改 革 ・開 放 政 策 路 線 を 選 択 して 以 来,一 貫 して 市 場 経 済 を 実 践 して い る。80 年 代,中 国 は従 来 の質 素 と貧 困 の 社 会 主 義 か ら脱 皮 して,庶 民 の 生 活 の 豊 か さ を求 め る 社 会 主 義 市 場 経 済 を選 択 した の で あ る。
1993年3月 の 中 国 共 産 党 第14回 全 国 代 表 大 会 (14全 大 会)は,「 社 会 主 義 市 場 経 済 」 へ の 転 換 を 強 調 し,第8次5か 年 計 画(1991〜95年)の 経 済 成 長 率 を8〜9%に し,経 済 建 設 を 国 家 の 中 心 任 務 で あ る と した 。 この 時 点 で 中 国 は,国 内 の 経 済 改 革, す な わ ち1人 当 りの 所 得 水 準 の 向 上 と福 祉 の 充 実 を 基 本 とす る経 済 諸 制 度 の 「改 革 」 を 推 進 す る と 同 時 に,対 外 的 に は経 済 を 「開 放 」 し,国 内 の経 済 水 準 を 向 上 す る た め に,外 資 導 入 に よ る対 外 経 済,す な わ ち世 界 経 済 の シ ス テ ム(例 え ば,IMF,
2 国際化時代 の 「中国経済」 の課題 とはな にか GATTな ど)へ の 参 加 を 通 じて,中 国 の経 済 発 展
を 強 力 に推 進 す る と い う の で あ る。 こ の 点 か ら ま ず 中 国 経 済 の 高 成 長 の 特 徴 を み て み る こ と に す
る 。
(1)高 成 長 の 中 国 経 済
中 国 経 済 は 「国 内 経 済 政 策 」 と 「外 資 導 入 に よ る沿 海 地 域 の 開 放 」 と い う2っ の路 線 を 連 動 す る こ と に よ って 「社 会 主 義 市 場 経 済 」 の 充 実 を 選 択
した と い って よ い 。
中 国 は,改 革 ・開 放 政 策 下 で,事 実 上,高 成 長 を続 け て い る。1981〜90年 の10年 間 の 平 均 実 質 成 長 率 は9.1%で あ り,90年 代 に 入 っ て,量 的 に み る と,92年,93年 と,実 質 成 長 率13%で あ り, む し ろ 余 り の 高 成 長 ゆ え に 経 済 過 熱 が 懸 念 さ れ た 。 中 国 の 高 成 長 は ア ジ ア地 域 に お い て も抜 群 の 伸 び を 示 して い る(図D。 中 国 経 済 を総 体 的 に対 外 経 済 状 況 か らみ る と,1980年 代 以 降 の 中 国 の貿 易 の 伸 び 率 は著 しい 。 ち な み に79年 か ら92年 ま で の13年 間 を と っ て み て も,輸 出 は6.2倍,輸 入 は5.1倍 に 増 大 し,92年 水 準 で 中 国 貿 易 を 世 界 貿 易 の 視 点 で み る と,第11位 に位 置 す る。す で に 世 界 銀 行 は,台 湾,香 港 地 域 を 含 め た 中 国 経 済 の 動 き を 中 華 経 済 圏 と 呼 び,購 買 力 平 価 で 換 算 す る と,こ の 地 域 の 経 済 規 模 は,2002年 に い ま の 米 国 の 経 済 規 模 に達 す る で あ ろ う と報 告 して い る。
こ う した 改 革 ・開 放 政 策 の 結 果 は,中 国 経 済 の 高 度 成 長 と な っ て 表 面 化 した が,同 時 に沿 海 部 の 都 市 と非 沿 海 部 の 都 市 間,都 市 と農 村 間 の そ れ ぞ
図1ア ジ ア 地 域 の 成 長 率
(1992年,GNP対 前 年 実 質 増 加 率) 中 国
マ レ ー シ ア ベ トナ ム 台 湾 タ イ イ ン ドネ シ ア 韓 国 香 港 シ ン ガ ポ ー ル 日 本 ブ イ リ ピ ン
0246S10(%)
(出所)FarEasternEconomicReview,24and31,Dec.1992よ り作成.
れの所得間格差拡大 および環境破壊 の増大に直面 して いる。 こうした諸問題 をどのように克服す る かが当面 の政策課題 である。
② 国 内 改 革 と して の 農 業 改 革
一 農 業 生産 責 任 制 か ら郷 鎮 企 業 制 ヘー 一 中 国 経 済 が 高 成 長 を も た ら した の は,そ れ な り の理 由 が あ る。80年 代 以 降 進 め て き た 中 国 の 国 内 諸 改 革 は 成 切 と失 敗,試 行 錯 誤 の 繰 り返 しで あ っ た 。 と くに今 日の 経 済 成 長 の影 に は,国 内 に お け る農 村 改 革 の 諸 課 題 と無 関 係 で は な か っ た。 この 点 を 検 討 す る こ と は重 要 で あ ろ う。1993年3月 に 打 ち 出 した社 会 主 義 市 場 経 済 の定 義 を み て も社 会 主 義 的 政 権 の も とで 市 場 経 済 を活 性 化 し,計 画 経 済 で そ れ を 抑 制 し,発 展 さ せ る と い う 考 え 方 に 立 って い る。 と くに 「社 会 主 義 」 と い う中 味 は, 基 本 的 生 産 手 段 の 公 有 化 と い う意 味 づ け で あ る。
た とえ ば 農 地 は,農 民 全 体 の 所 有 制 で あ る。一・方, 農 民 の 中 で,希 望 す る者 が い れ ば,政 府 が 農 地 を 貸 し付 け,耕 作 さ せ,生 産 を 高 め る政 策 を採 用 し
て い る。 農 民 は50年 に わ た って 借 用 し,耕 作 し, 生 産 物 を 市 場 化 し,貨 幣 を 手 に入 れ て も よ い こ と に な っ た。 この 政 策 は公 有 制 の も とで,農 村 の 市 場 化 を 進 め る と い う発 想 で あ る。 こ の 点 を 国 内 改
革 と して み て み よ う。
79年 の 改 革 以 前 の 社 会 主 義 建 設 の パ タ ー ン は 重 化 学 工 業 政 策,と く に重 工 業 の 公 有 化 政 策 を 通
じて,軽 工 業 を 育 成 し,生 産 力 の 向 上 に 求 め,そ の 結 果,所 得 向 上,労 働 者 へ の 分 配 分 を 高 くす る
と い う政 策 を 選 択 して き た 。 こ の 政 策 は,結 果 的 に は,生 産 力 向 上 を も た らす こ と が で き な か っ た 。 そ れ は ひ とつ の 失 敗 で あ った 。 こ う した 反 省 か ら,軽 工 業 重 視 に転 換 した 。
中 国 経 済 の80%が 農 業 経 済 で あ り,農 業 生 産 の 向 上 が な い 限 り,人 民 の 生 活 の 向 上 に連 動 しな い 。 した が って,旧 来 の 人 民 公 社 方 式 を 解 体 し, 農 業 生 産 を 向 上 させ る た め に,農 業 生 産 責 任 制 を 導 入 し,従 来 の 土 地 共 有 制 か ら請 負 制 度 を 選 択 し
た 。 そ れ は,第1に は,生 産 ノ ル マ を 改 め,割 当 以 上 の 生 産 物(超 過 分)を 個 人 所 有 に し,市 場 で の 売 買 を 可 能 に し,不 足 分 が で た場 合 を 罰 金 と して
国際化 時代のF中 国経済」 の課題 とはなにか
「農 業 生 産 」 を 促 進 す る こ と を 企 図 し た もの で あ る。 第2に は包 幹 制 度 で あ る。 そ れ は生 産 制 ノ ル マ を 決 め ず に 農 業 税 を 収 め,割 当 量 を 国 家 に供 出 す る制 度 で,い ず れ も農 村 の所 得 向 上 を ね らい, 農 業 制 度 を 改 革 した。 土 地 と基 本 的 生 産 手 段 は集
団 所 有 に し,請 負 制 度 に よ っ て 農 業 生 産 の 向 上 を 図 った の で あ る。実 質 的 に85年 頃 ま で,農 業 生 産 は 向 上 し,年 平 均7.5%ず っ 増 加 し た。 こ の 制 度 を み る と都 市 近 郊 の 農 家 で は,市 場 へ 供 出 す る専 業 農 家 が 増 加 し,年 収 一 万 元 を 超 え る万 元 戸 が 出 現 した。 だ が,一 般 的 な 農 民 の 所 得 は低 い 。 農 民 の 所 得 は1人 当 り400元 と貧 しい 。
農 業 生 産 責 任 制 度 は,農 業 生 産 を 向 上 さ せ た が 農 村 に お け る余 剰 労 働 力 を もた ら した 。 余 剰 農 産 物 を供 出 し,市 場 で 売 買 す る こ と に よ って,所 得 が 増 加 す る農 家 で は人 手 不 足 を もた ら し,一 方 農 産 物 の 不 足 分 に 直 面 し た農 家 で は収 入 が 減 少 し, 過 剰 労 働 力 を 発 生 させ た。 今 日,こ の 問 題 は 依 然 と して 存 在 して い る。
こ う した 過 剰 労 働 力 を 吸 収 す る た め に 政 府 は 郷 鎮 企 業 制 度 を採 用 し た。郷 鎮(日 本 の町 村 ・市 に相 当す る)企 業 の 業 種 は,農 業,工 業,商 業,建 築 業, 交 通 運 輸,飲 食 業 な ど多 種 に わ た る。 そ れ ぞ れ の 業 種 は 中小 規 模 で,経 営 しや す い た め に,そ の発 展 は す さ ま じ く,91年 に は,郷 鎮 企 業 の 従 事 者 数 は 約9000万 人 と い わ れ,約2億 人 に 及 ぶ 農 村 過 剰 労 働 力 の 約2分 の1近 く を 吸 収 し,81年 か ら 90年 の10年 間 に,生 産 額 は20倍 と な っ た 。 中 国
の融府統計 によれば,91年 には郷鎮企業 の総生産
額 は 全 体 の 社 会 総 生 産 額 の約4分 の1,農 業 生 産 額 の10分 のs,工 業 総 生 産 額 の10分 の3を 占 め た の で あ る。 こ の 限 り に お い て,全 体 と して 農 業 の 収 入 を増 大 さ せ,農 民 の 生 活 水 準 を 高 め,一 時 的 に 都 市 と農 村 の格 差 を 縮 少 さ せ た 。 だ が そ の 後 の 沿 海 地 域 の 高 成 長 の 中 で,こ の 地 域 の 所 得 と農 村 地 域 の 所 得 の 格 差 は増 大 し た。 郷 鎮 企 業 は,改 革 路 線 の 一 環 と して の 農 業 生 産 制 を 通 じて,社 会 主 義 市 場 経 済 を 促 進 して い く軸 に な っ た 。 だ が こう した 農 業 の 過 剰 労 働 力 を 吸 収 す る た め の郷 鎮 企 業 も10年 間 は,円 滑 に い っ た の で あ る が,そ の 後 鈍 化 した。 経 営 経 験 も浅 く小 規 模 で,技 術 水 準,
3 競 争 意 識 も低 く,市 場 経 済 の メ カ ニ ズ ム を 洞 察 で
きず,し た が っ て企 業 間 の 合 理 的 分 業 も う ま く い か ず,そ の 後,生 産 は 低 下 した。 一 方 資 本 不 足 と 生 産 過 程 の 無 駄 も存 在 し,郷 鎮 企 業 の 限 界 を露 呈 せ ざ る を え な か っ た 。 結 論 的 に い え ば,政 府 は市 場 経 済 シ ス テ ム の 中 で 郷 鎮 企 業 を 位 置 づ け,中 国 経 済 の計 画 性 と効 率 性 と公 平 性 を実 現 す べ き で は な か ろ うか 。
1988年 の 憲 法 改 正 は,個 人 経 営,8人 まで の少 人 数 の 個 人 経 営 を個 体 経 済 と して 位 置 づ け,さ ら に,村 営,町 営 の 中小 企 業 で あ る前 述 の 郷 鎮 企 業, 私 営 経 済 も個 体 経 済 と して 位 置 づ け た。 さ らに 中 国 の 企 業 は,国 営 企 業(全 人 民所 有制),郷 鎮 企 業, 三 資 企 業(外 資 企 業f華 僑 資 本企 業,合 弁 企 業)の 三 種 類 が 存 在 し,国 営 企 業 の 規 模 は大 き い が,数 で は3%内 外 で あ る。 だ が 工 業 生 産 額 の40%以 上, 納 税 者 数 の60%以 上 を 負 担 す る。 だ が,市 場 経 済
の メ カ ニ ズ ム の 中 で,そ の 効 率 性 が 低 下 し,膨 大 な赤 字 を累 積 して い る。
こ う した 国 内 の 経 済 改 革 は,現 実 の 中 国 の社 会 経 済 の 変 動 の 中 で,展 開 さ れ,そ の 中 軸 は 市 場 経 済 に あ っ た 。 政 府 は そ の 結 果 発 生 し た さ ま ざ ま な 格 差 を ど の よ う に 克 服 す る か を 今 後 の 政 策 課 題 と
した 。
こ う して,中 国 政 府 の 改 革 ・開 放 路 線 の 中 で 国 内 改 革 を 最 初 に 実 施 した の は,農 業 部 門 の 改 革 に あ っ た 。 そ れ を 改 め て 整 理 す る と,第1に 個 人 農 家 の 創 設 で あ り,第2に 農 産 物 価 格 の 政 府 買 付 け 価 格 の 引 上 げ で あ り,第3に 農 業 投 入 財 の 販 売 価 格 の 引 き下 げ等 の 政 策 を 実 施 し,農 業 経 済 を活 性 化 した点 に あ る。だ が84年 以 降,経 済 改 革 が 都 市 部 の 企 業 改 革 へ 移 行 す る と 農 業 生 産 が 鈍 化 し た
(『世 界 経 済 白書 』1993年,257ペ ー ジ)。
農 業 生 産 が 鈍 化 した 理 由 は,第1に 農 業 向 け投 資 の 不 足 に あ り,灌 概,農 機 具 供 給 不 足,肥 料 不 足,農 業 イ ン フ ラの 未 整 備,都 市 と の運 輸 交 通 大 系,流 通 経 路 の 未 整 備 な ど を 指 摘 す る こ とが で き
る。 第2に 郷 鎮 企 業 へ の 労 働 力 移 動 に よ り耕 作 地 が 減 少 した こ と で あ る。 第3に 農 産 物 の 販 売 価 格 と農 業 投 入 財 の 購 入 価 格 と の比,す な わ ち 交 易 条 件 の 改 善 が み られ な か っ た 。1985年 以 降,都 市 地
4 国際化時代 の 「中国経済」の課題 とはなにか 図2中 国 の1人 当 た り実 質 所 得 都市 と農 村 の 比 較
(1985‑100と した 指 数) 150
140
130
124
110
100
都市部
農村部
90
198586878889909192年
(出 所)国 家 統 計 局 『中 国 統 計 年 鑑 』1993年,経 企 庁 『世 界 経 済 白書 』1993年 。
500
400
300
200 100
図3農 村 部 の1人 当 た り収 入(省 別 の 推 移) ("1年 一100と した指 数)
口1985年
$,..年 皿1991年
0
全 国 広 東 省 江 蘇 省 安 徽 省 四 川 省 貴 州 省
(出所)国 家統計 局 『中国統計 年鑑』1993年,経 企庁r世 界 経済 白書』1993年 。
域 と農 村 地 域 の 所 得 格 差 を み る と,1985年 を100 と した 指 数 で 表 現 す れ ば,1990年 都 市 部 で124, 農 村 部108で あ り,92年 に は,145対115で あ る
(図2)。 両 地 域 の 所 得 格 差 は拡 大 して い る。 も ち ろ ん,農 村 地 域 で も,沿 海 地 域 の 農 村 と 内 陸 地 域 の 農 村 の一 人 当 りの 収 入 を み る と,広 東 省,江 蘇 省 等 の 沿 海 地 域 の 農 村 部 は,安 徽 省 や 貴 州 省 等 の 内 陸 地 域 よ り も収 入 の 伸 び が 高 くな って い る(図3)。
こ う した 農 村 地 域 の所 得 の 低 迷 状 態 を 克 服 す る た め に,政 府 は,93年6月,農 民 の 負 担 軽 減 に 関 す る37項 目 の 課 徴 金 廃 止 政 策 を 打 ち 出 し た。 農 村 宅 地 使 用 料,農 地 建 設 資 金 の 政 府 負 担,水 利 ・ 電 力 建 設 の 資 金 負 担,農 村 部 小 学 校 の 費 用 調 達 な
どを 実 施 し,農 村 経 済 の 活 性 化 を 図 って い る。
だ が,農 民 に対 す る課 徴 金 負 担 の 廃 止 の み な ら ず,基 本 的 に は,農 業 生 産 性 向 上 の た め の農 村 イ ン フ ラ の 充 実,交 易 条 件 の 改 善,生 産 技 術 の 導 入, 都 市 の輸 送 道 路 整 備 ま で 拡 大 した 政 策 を 展 開 す べ
き で あ ろ う。
中 国 経 済 の 高 成 長 政 策 の課 題 は,都 市 と農 村 と の格 差 の 是 正 を 軸 と して 改 め て 農 業 政 策 を ど うす る か に か か って い る と考 え る。
(3)開 放 政 策 と して の 外 部 依 存 型 経 済 発 展 戦 略 中 国 経 済 の 発 展 の 条 件 と な っ た の は,外 資 導 入 政 策 に あ った 。
1991年 よ り始 ま っ た 中 国 へ の 第3次 大 型 投 資 は,第1次(84〜85年),第2次(88〜89年)の 各 投 資 ブ ー ム よ り も大 型 で あ っ た。92年 の 直接 投 資 受 け 入 れ 額 は,契 約 ベ ー ス で4万8,764件 で,前 年 比3.8倍,金 額 に して581億2,351万 ドル,対 前 年 比4.9倍 で あ り,実 行 ベ ー ス で110億751万
ドル,前 年 比2.5倍 で あ る(表1)。1件 あ た りの 投 資 規 模119万 ドル で,前 年 の92万 ドル を か な り 上 回 っ て い る。92年 の 大 型 直 接 投 資 受 け 入 れ 額
は,79年 か ら91年 ま で の13年 間 の累 計 額 を 上 回 る規 模 で あ っ た 。 と くに91年 か ら契 約 べ 一 ス の 直 接 投 資 額 は急 上 昇 して い る(図4)。
こ う した 理 由 は,第1に,土 地 開 発 な ど契 約 額 の 巨 大 な不 動 産 投 資 に あ っ た こ と,第2に,工 業 用,家 庭 用 の 大 型 発 電 所 や 交 通 体 系 整 備 の た め の 鉄 道 建 設 な ど社 会 資 本 の 大 型 プ ロ ジ ェ ク ト投 資 に あ っ た と い わ れ て い る(JETRO『 海 外 直 接 投 資』
1994年,226〜7ペ ー ジ)。
92年 の 直 接 投 資 を 形 態 別 に み る と(表2),合 弁 企 業 が70%を 占 め て い る。 そ の理 由 は,従 来 の 委 託 加 工 よ り有 利 で あ る こ と,新 しい 開 発 地 域 で の 土 地 投 資,小 売 業 の 分 野 で は独 資 を認 あ ず,合 弁 を 条 件 と して い る か らで あ る。 した が っ て 不 動 産 投 資 は す べ て 合 弁 企 業 で あ る。 と こ ろ で,こ こ で 改 め て,中 国 の 開 放 政 策 と して の 外 資 導 入 方 式 を 検 討 して み よ う。
第 一 は,中 国 領 土 内 に 外 資 を 導 入 した 限 定 地 域,輸 出加 工 区 と して 沿 海 地 域 を設 定 した 点 に あ
国際化 時代 の 「中国経済 」の課題 とはなにか 表1中 国 外 資 利 用 導 入 状 況
(単 位:件 億 ドル)
総 計 対外鰍 擁 国直搬 資1そ の他の投資
年 度 契 約 金 額
件数 金額 件数 金額 件数 金額 金 額
1979‑1992 91543 1911 ?52 747 90791 1105 59
1978‑‑1982 949 206 27 136 922 60 10
1983 522 34 52 15 470 17 2
1984 1894 48 38 19 1856 27 2
1985 3145 99 72 35 3073 59 4
1986 1551 117 53 84 1498 28 5
1987 2289 121 56 78 2233 37 s
1988 6063 160 118 98 5945 53 9
1989 5909 115 130 52 5779 5s 7
1990 7371 121 98 51 7273 ss 4
1991 13086 196 108 72 12978 120 5
1992 ,... fi94 94 io7 48764 581 6
実 行 金 額
1979‑1992 988 607 344 38
1979‑1982 125 107 12 6
1983 20 11 6 3
・ ・, 27 13 13 2
1985 47 27 17 3
'.・ 73 5Q 19 4
1987 85 58 23 3
1988 iO2 65 32 6
1989 101 63 34 4
1990 ●103 65 35 3
1991 116 69 44 3
1992 192 79 110 3
(出所)『 中国対 外経済貿易統計年 鑑』1984‑1998年 の各年版 による。
装2形 態 別 直 接 投 資 受 入 状 況(契 約 ベ ー ス)
(単 位:件,goo万 ドル)
91年 92年
件 数 金 額 件 数 件 数
合 弁 企 業
合 作 経 営 企 業 100%外 資 企 業
共 同 開 発
8,395(105.2) 1,778(35.0) 2,795(50.3}
10(100.0)
6,080(124.9) 2,138(70.5) 3,667(50ユ) 920(p52.6)
34,354(309.2) 5,711(221.2)
$.592(211.0) 7030.0)
29,128(379.1) 13,255{520.0) 15,fi96(328.0) 434(p52.8)
(注)カ ッコ 内 は 前 年 比 増 減 率%。
(出 所)『 中 国 統 計 年鑑1993』,,METRO『 海 外 直接 投 資 』1994年,226ペ ー ジ。
5
一一6‑一 国 際 化 時 代 の 「中 国経 済 」 の 課 題 と は な に か
図4中 国 に 対 す る 海 外 直 接 投 資 額(1985‑92年) (億 ドル)
700
soo
500
400
goo
200
iao
198586878889909192年
(出 所)『 中 国 統 計 年 鑑 』1993年,『 海 外 直 接 投 資 』JETRO, 1994年.p,102。
る。79年 後 半 に 四 つ の 経 済 特 区 す な わ ち広 東 省, 福 建 省 内 に,深 士川,珠 海,汕 頭t慶 門,に 設 置 し
た 。
こ の 特 区 に お け る外 資 利 用 形 態 は,① 委 託 加 工 ま た は ノ ッ ク ダ ウ ン方 式 で あ り,② 機 械 設 置 と技 術 を 外 国 か ら借 款 し,製 品 を 市 場 で 販 売 し,そ の 収 益 を 分 割 償 還 す る と い う コ ンペ ンセ ー シ ョ ン貿 易 で あ り,③ 合 弁 方 式 で あ り,④ 外 資 と の 共 同 経 営 方 式 で あ り,⑤ 外 国 資 本 単 独 経 営 で あ り,こ の 方 式 は,中 国 側 が 外 国 資 本 に土 地 の利 用 権 と労 働 力 を 提 供 し,外 国 資 本 に よ る経 営 者 か ら地 代 と税 金 を 徴 収 す る と い う方 式 で あ り,外 資 導 入 に よ り,中 国 の市 場 経 済 を 活 性 化 し,自 国 の 利 益 を 図 る と い う もの で あ る。
1984年4月 に は,14の 沿 海 開 放 都 市 と15の 経 済 技 術 開 発 区 の 設 置 計 画 の実 践 化 に は じ ま り,保
税 区,ハ イ テ ク産 業 開 発 区,工 業 団 地 な ど の 外 資 導 入 の た め の 経 済 開 発 区 を 設 置 す る こ と に した 。 外 資 導 入 と合 作 経 済 を計 画 的 に実 行 し,先 端 技 術 産 業 を 設 立 し,対 外 貿 易 に 強 い体 質 の 工 業 開 発 地 区 を 作 り,競 争 力 を 高 め る方 針 を 打 ち 出 した。
1985年 に は蘇 州,無 錫,常 川,仏 山 な ど の11の 都 市 と そ の 周 辺 の 農 村 部 を 沿 海 経 済 開 放 区 に 指 定
し,外 資 導 入 に よ る工 業 化 を 推 進 し た。86年 に
は,江 蘇省の徐州 を中心 に山東省,河 南省,安 徽 省 をふ くむ准海経済区を設置 し,都 市間 の格差解
消 と周 辺 農 村 部 と の均 衡 あ る発 展 を実 践 した 。89 年 に は,広 東 省 に 所 属 して い た海 南 島 を 海 南 省 に昇 格 さ せ,対 外 開 放 経 済 政 策 を 全 島 的 に実 施 す る こ と を 決 め た 。89年 に は,広 東 省 の 経 済 特 区 で あ る深 士川市 に対 し,立 法 権 限 を 与 え た 。90年 に は, 経 済 特 区 に お け る外 国 企 業 の 土 地 使 用 権 取 得(工 業 用 地50年,商 業 用 地40年)を 公 式 に 認 め た。
90年4月 に は,上 海 市 の 浦 東 地 区 を 開 発 区 に 指 定 した 。 こ の 地 区 は第8次5力 年 計 画(91〜95年)
の 拠 点 開 発 区 で あ り,外 資 を 積 極 的 に 導 入 し,中 国 の 一 大 工 業 開 発 区 に 位 置 づ け て い る。 した が っ
て,前 述 した よ う に1992年 の外 資 導 入 は,過 去 13年 間 の 累 積 投 資 を 上 回 る額 に な っ た わ け で あ る。
一 方 経 済 特 区 は ,香 港,台 湾 に近 接 して い る関 係 上,政 治 的 統 一 の 基 礎 づ く り の性 格 を も って い る 。 香 港 と広 州,台 湾 と福 建 省 の地 域 経 済 的 ネ ッ
トワ ー クが 形 成 さ れ,華 南 経 済 圏 と も呼 ば れ,い ま や この 地 域 の 相 互 貿 易 と相 互 資 本 交 流 は き わ め て 活 発 で あ る。 し た が って 経 済 特 区 は,華 僑 ・華 人 の 対 中 投 資 の受 け入 れ 窓 ロ の機 能 を は た して い る 。 さ ら に こ の地 域 を 輸 出加 工 区 で な く,新 産 業 都 市 と して 位 置 づ け て い る。 産 業 構 造 は 工 業 と貿 易 の 同 時 発 展 を 具 体 化 し,さ らに 先 端 技 術 産 業 を 造 成 し,所 得 水 準 の 向 上 に 努 め て い る。 ま た こ の 地 区 は 資 本 主 義 市 場 の 実 験 場 と して の ク ッ シ ョ ン の 役 割 も担 って い る。い ま 華 南 経 済 圏 と は,広 東, 福 建,海 南 の 各 省,広 西 自治 区 な ど中 国 南 東 部 を
中 心 と して,NIESの 香 湾,台 湾 を 含 め た 経 済 地 域 で あ り,人 口1億 人 以 上,面 積 は約37平 方 キ ロ メ ー トル,GNPは 約2000億 ドル で,1人 当 りの 国 民 所 得 は平 均3000ド ル で あ る。 い ま や 香 港 資 本 の 約50%が 広 東 向 け で あ り,台 湾 資 本 の約4分 の3が 広 東 省,福 建 省 に投 資 さ れ て い る。 進 出 し
た企 業 を 業 種 別 に み る と,服 飾 品,製 靴,紡 績, 食 料,ゴ ム,プ ラ ス チ ッ ク製 品 等,労 働 集 約 的 産 業 と電 子 ・電 機 等,資 本 集 約 的 産 業 が 目立 って お り,投 資 形 態 は 合 弁 企 業 で あ る が,独 資 企 業 も多 く60%と も い わ れ て い る。一 方 中 国 の 香 港 向 け 直
国際化 時代 の 「中国経済」 の課題 とはなにか 接 投 資 も活 発 で,90年 ま で の 累 積 投 資 総 額 は,約
340億 香 港 ドル に達 し,米 国,日 本 に次 ぐ資 金 供 給 源 と な っ て い る。 香 港 に 事 務 所 を もつ 中 国 系 企 業 は3000社 以 上 で あ る。
広 州,福 建 の 両 省 に お け る合 弁 企 業,独 資 企 業 の 担 い 手 は 華 人 で あ り,人 的 ネ ッ トワ ー ク も進 み,地 域 的,民 族 的,血 縁 的,業 的 共 同 体 的 メ リ ッ
トを 生 か し,他 の 経 済 地 域 よ り も,成 長 率 が 抜 群 に 高 い(清 水嘉 治 論文 「東 ア ジ ア経 済 の発 展 と中 国 ・ 東 北経 済 圏 の特 質 にっ いて」 『経 済 貿 易研 究 』No ,20, 1993年3月)。
一 方 中 国 政 府 は
,財 政 面 で も こ の特 区 に特 別 援 助 方 式 を 採 用 し,両 省 に 対 して 「定 額 請 負 制 」 を 導 入 した の で あ る。 両 省 内 に あ る政 府 直 系 の 事 業 収 入 は 中央 政 府 へ,そ れ 以 外 の す べ て の 事 業 収 入 と支 出 の管 理 を両 省 庁 に与 え た。 両 省 は財 政 に っ い て の 自主 裁 量 権 ま た は 自主 決 定 権 を も ち
,市 場 経 済 を 円 滑 に押 し進 め る こ と が で き た 。 外 国 資 本 の 導 入 も,工 場 ビル,デ パ ー ト,ホ テル の建設 を積 極 的 に進 め た。 だ が,そ の後,中 央 政 府 は, 特 区 に お け る景 気 拡 大 に基 づ くイ ン フ レ,資 源 配 分 の 歪 み を 是 正 す る た め,両 省 の 自主 権 を コ ン ト
mル した 。
一 方 沿 海 地 区 の 経 済 配 置 が 揃
っ た1988年 に 政 府 は,「経 済 発 展 戦 略 」 を 打 ち 出 し,外 資 導 入 を 軸 に原 材 料 と労 働 力 を 提 供 し,製 品 を輸 出 す る と い うNIES方 式 を 導 入 し,労 働 集 約 型 産 業 か ら 資 本 ・技 術 集 約 型 産 業 政 策 を 志 向 し た。 開 放 政 策 は,国 際 分 業 の シ ス テ ム の 中 で,中 国 経 済 を 位 置 づ け る と い う戦 略 で あ った 。
(4)「 全 方 位 開 放 」 政 策 の 特 徴
92年 の 大 型 の 直 接 投 資 受 け 入 れ 体 制 は,上 海浦 東 地 区 を 中 心 と して 巨 大 開 発 だ け で な く,華 南 経 済 地 域 や そ の 開 発 区 に お け る開 発 投 資 で あ っ た。
国,地 域 別 に み て も,第1に 香 港 資 本 が 約70%を 占 め る。1992年 金 額 に して,400億4,400万 ドル で あ り,件 数 に して3万781件 で あ り,他 を 圧 倒 して い る。 第2に 台 湾 系 資 本 が55億4,300万 ド ル で,件 数 に して6,430件 で あ る。 第3に ,米 国 資 本 で31億2,goo万 ドル,件 数 に して3,265件
7 で あ る。第4に 日本 資 本 で21億7,300万 ドル,件 数 に して,1,805件 で あ る。以 下 シ ン ガ ポ ー ル,タ
イ,韓 国 の 順 に な って い る。
な お 香 港 資 本 は,広 州 ・深 別 ・珠 海 間 高 速 道 路 建 設 投 資 を は じめ,先 端 技 術,軽 工 業 部 門 へ の 投 資 を 展 開 し,香 港 資 本 も台 湾 資 本 も従 来 の 広 州 省,福 建 省 に 限 らず,長 江 流 域,中 国 東 北 地 域 へ の 投 資,上 海 地 区 へ の 投 資 な ど広 範 囲 に わ た っ て い る。 この 点 は,92年 か ら中 国 政 府 が 打 ち 出 した
「全 方 位 開 放 」政 策 の 一 環 で あ る と考 え る。 こ の 政 策 に よ る と沿 海 だ け で な く内 陸 部 へ の 投 資 を 拡 大 さ せ,地 域 間 格 差 是 正 を 狙 って い る 。 地 理 的 に み る と,沿 海 地 域 と長 江 地 域 を 二 辺 と す れ ば,そ の 接 点 に 当 る 上 海 が 軸 と な る 「T字 型 経 済 発 展 戦 略 」 が 展 開 さ れ た。 こ こ に香 港 資 本,台 湾 資 本 も か な り力 を 入 れ て い る こ と が 特 徴 的 で あ る。 こ れ は,中 国 政 府 が,社 会 主 義 市 場 経 済 の 中 心 を 沿 海 地 域 に お き,そ こ で の 生 産 性 向 上 を 達 成 し,さ ら
に,地 域 間 格 差 を 克 服 す る た め に,92年 に 沿 海 地 域 か ら長 江 流 域(沿 江),辺 境 地 区(沿 辺)の3地 域 の 活 性 化 を も た らす 政 策 を 選 択 した の で あ る。 三 沿 政 策 は,従 来,内 陸 部,周 辺 部 の 住 民 か ら,中 央 政 府 の 沿 海 地 区 市 場 中 心 主 義 に 対 す る潜 在 的 不 満 を 解 消 す る た め だ け で な く,都 市 間 の 所 得 格 差,都 市 と農 村 の 所 得 格 差 を 漸 次 解 消 して い く と い う 中 央 政 府 の 経 済 政 策 の 狙 い が あ った の で は な い か と考 え る。 三 沿 政 策 は,沿 海 地 域 と内 陸 地 域 の 矛 盾 を 緩 和 し,社 会 主 義 市 場 経 済 を 内 陸 部a長 江 流 域 に 拡 大 す る 政 策 で あ り,地 域 主 体 の 政 策 運 営 の 選 択 で あ る と思 う。三 沿 政 策 こそs21世 紀 に 向 け た 中 国 の 世 界 に開 き,地 域 に 根 ざ した 新 し い 開 放 政 策 と位 置 づ け て よ い で あ ろ う。
服 部 健 治 氏 は,こ の 点 に つ い て 次 の よ う に い う。
「三 沿 政 策 は 沿 海 の発 展,内 陸 の 振 興,ア ジ ア ・ 太 平 洋 地 域 と の 経 済 的 緊 密 化 と い っ た 一 挙 三 得 の 全 方 位 開 放 政 策 で も あ る。」(r世 界 』1994年8月 号 60ペ ー ジ)。三 沿 政 策 は,わ た く し な り に 整 理 す る と,一一方 で 国 内 の経 済 発 展 の 拡 大 均 衡 を 着 実 に 進 め る と 同 時 に,外 資 導 入 を 通 じて ,国 内 の資 源 と 安 い労 働 九 豊 富 な 市 場 を 提 供 し,輸 出 主 導 型 の
一8一 国 際 化 時 代 の 「中国 経 済 」 の 課 題 と は な に か
工 業 化 政 策 を 軸 に,対 外 競 争 力 を 高 あ,NIES, ASEANと の経 済 協 力 を 強 化 し,世 界 経 済 の シ ス
テ ム に 参 加 し,GATT,IMFの メ ンバ ー とな り, 中 国 経 済 を 中 進 国 な み に位 置 づ け る と い う政 策 で
あ る と思 う。 も ち ろ ん,97年 の 香 港 返 還 の 経 済 的 基 盤 の構 築 を仕 上 げ る と い う政 策 が 同 時 に存 在 す る。 す で に 香 港 と広 州 地 域 は,市 場 の 一 体 化 が 進 み,香 港 の主 要 資 本 は,中 国 市 場 に定 着 して い る。
す で に 華 人 企 業 の活 躍 は,華 南 経 済 圏 を 安 定 させ て い る。
(5)華 南 経 済 圏 の 担 い 手 と して の 華 人 資 本 中 国 経 済 の 活 力 を 外 部 か ら刺 激 した の は,と り わ け華 人 企 業 で あ っ た。 そ れ は,同 時 に 中 国 資 本 の み な らず 日本 や 欧 米 の 資 本 に対 して も中 国 市 場 に お い て 競 争 力 を 高 め る イ ンパ ク トを 与 え た の で あ る。 華 人 企 業 に よ る対 中 国 投 資 は1988年 に 約 40億 ドル,92年 に500億 ドル,93年840億 ドル と い わ れ て い る。 華 人 企 業 は,血 縁,地 縁 業 縁 に 基 づ く人 脈 を 重 視 し,ネ ッ トワ ー ク を 形 成 し中 国 企 業 の 対 外 投 資 に協 力 も して い る。 華 人 企 業 は 対 中 投 資 と平 行 して,故 郷 に学 校,道 路,病 院 な
ど に 投 資 し,現 地 の信 頼 を 獲 得 して い る 。 今 日,中 国 だ け で な く,シ ンガ ポ ー ル,マ レー シ ア地 域 を 含 め た 華 人 系 企 業 の活 躍 は め ざ ま しい も の が あ る。 例 え ば,OCBC(Oversew‑Chinese
BankingCorporationLtd.華 僑 銀 行)は 代 表 的 な 華 人 系 企 業 集 団(金 融 グル ー プ)で あ る。 華 人 系 企 業 集 団 の 経 営 者 は,創 業 者 一 家 や 一 族 の 血 縁 関 係 の 結 合 集 団 で あ る。 だ が 最 近 は 所 有 と経 営 を分 離 し た 近 代 経 営 を 志 向 して い る と い わ れ る。 現 在 の OCBCグ ル ー プ の 主 要 企 業 は 図5の 通 り で 旧 イ ギ リ ス系 大 企 業 の 株 式 を10%か ら50%近 くを 所 有 し(グ ル ー プ企 業 の 所有 分 を含 む),シ ン ガ ポ ー ル 証 券 取 引 所 に 上 場 さ れ て い る 華 人 系 企 業15社
(株式 資本 の時 価 総 額順)の う ち,実 に6社 を そ の 支 配 下 に 収 め て い る(岩 崎 育 夫rシ ンガ ポー一ル の華 人 系 企 業 集 団』 ア ジア経済 研 究 所,1990年,30〜31
ペ ー ジ)。OCBCは 華 人 系 企 業 集 団 の 代 表 的 事 例 で あ り,す で に マ ラヤ,イ ン ドネ シ ア,中 国,香 港,ミ ャ ンマ ー に 合 計17の 支 店 を も ち,中 国 進 出
図51グ ル ープ の 主要 企 業(1987年) 100%F…S・a・(謝173
(銀 行;1959 年 買 収) GreatEastern
LifeAssurance
Oversea Chinese Banking
Corpora‑(自 動 車 販 売)
(注)(1)・Xシ ン ガ ポ ー ル 証 券 取 引 所 上 場 企 業 。
(2)企 業 名 の 前 の 数 字 はOCBCグ ル ー プ の 株 式 所 有 比 率 。 (3)企 業 名 の 前 の マ ル 数 字 は 付 表 の ラ ン ク 順 位 。 (出 所)ocsc,Annual1〜eport,1986,1987;FarEastern.
EconomicReview,Oct.6,1983。 岩 崎 育 夫 『シ ン ガ ポ ー ル の 華 人 系 企 業 集 団 』 ア ジ ア 経 済 研 究 所,1990年,30 ペ ー ジ。
に 際 して,金 融 グ ル ー プ と して 大 き な 役 割 を 果 し て い る。 こ こで は一 例 を 紹 介 す る に と ど め た い。
華 人 資 本 は,華 南 経 済 圏 に お け る そ の 経 営 力, 資 本 蓄 積,労 働 条 件 の 改 善,地 域 社 会 貢 献 を 発 揮 す る こ と に よ っ て 成 長 を 促 進 す る役 割 を 果 して い
る。
JETROの 『海 外 直 接 投 資 』(1994年)は,こ れ ま で の 華 人 資 本 の 流 れ に つ い て こ う述 べ て い る (JETRO,『 海 外 直 接投 資』1994年,13ペ ー ジ)。
ま ず 最 初 に香 港 シ ン ガ ポ ー ル に 投 資 会 社 な ど の 企 業 を 設 立 し,フ ァイ ナ ンス の 拠 点 とす る。 そ こを ベ ー ス と して,ア ジ ア の 近 隣 諸 国 に投 資 を 行 うパ タ ー ンが み られ る。 投 資 活 動 範 囲 は80年 代 後 半 に は 米 国,カ ナ ダ,英 国,豪 州 な ど の 先 進 国 に ま で 及 ん で い る。90年 代 に 入 っ て,そ の流 れ は
ASEAN (1.9%) オ 髄 ストラリア
(2.1%)米
国際化 時代の 「中国経 済」 の課題 とはなにか
図6華 人NIESを 中 心 と す る 華 人(華 僑)資 本 の 流 れ(85〜92年 累 計) ASEANの 直 接投 資受 け入 れ
(国 ・繊 別)ASEAN(鞄:100万 ド・レ)
人 \ IES 5.0%)
(3,480)
タ イ
イ ン ドネ シァ(8・030)
〈在 比 華 僑 〉 (908)1117
2a,2ii
ブ イ リ ピ ン(7 ,793 マ レ
ー シ ア
33
9
15,1%舞 (注)1.ASEANか らの 投
資 に は在 比 華 僑 か ら フ ィ リ ピ ンへ の投 資 を含 む
2.複 数 国J.V.に よ る投 資 は イ ン ドネ シ アへ の 投 資 分
米 国(
3,603)
日 本
(4$1)
(14,067)
(ssl)
{5,977)
台湾 の華僧 投 資受 け入 れ
藩 轍 所在地別)
(17.0%)総
麟 無
額(39.6%) 1,3534,085
(4,16fi)
(1,977)
(1,447)
シ ン ガ ポ ー ル
..
16
21,878 250
香 港
906 4
台湾
(19,573)
1,353 (う ち ア ジ ア系
華 僑1,〔 蛤81
271
(1,917)
華 人NIES
179
中 国
(0 欧 州 (3.1°/n
377
中国 の直接投資 受け入 れ (国 ・地墳 別)
その他
,543 (101
〈華 僑 〉 ベ トナム
(注)個 人 名 義 の 投 資 の み(注)欧 州 は 英 独 仏 蘭
の み (注)香 港 → 中 国 の85年 は マ カ オ を 含 む 。
中 国 →ASEANは タ イ ・マ レ ー シ ア ・フ ィ リ ピ ン(フ ィ リ ピ ン は89〜92年 の 累 計)。
華 人 系NIES→ ベ トナ ム は88〜92年 の 累 計 。 台 湾 → 中 国 は79〜92年 の 累 計 。
シ ン ガ ポ ー ルt台 湾 → 日 本 は91〜92年 の 累 計 。 ASEAN→ 華 人NIESは 香 港 ・台 湾 の み 。
(資 料)OECD'̀ForeignDirectInvestmentRelationsBetweentheOECDandtheDynamicAsian Economies"お よ び 各 国 受 け 入 れ 統 計 よ り 作 成
台 湾:経 済 部 投 資 審 議 会 「統 計 月 報 」(認 可 ベ ー ス,増 資 分 含 ま ず) 香 港:OECD(85〜89年),SurveyofOverseasInvestmentinHongI{ong'sManufacturing
Industries(90〜92)(製 造 業 の み,簿 価 ベ ー ス の 対 固 定 資 産 投 資 額+流 動 資 産)
タ イ:OECD(85〜86年),MonthlyEconomicIndicators(87〜92年)(国 際 収 支 ベ ー ス) マ レ ー シ ア:OECD(85〜87年),StatisticsontheManufacturingSector(88〜92年)(プ ロ ジ ェ ク ト ロ ー ン+払 込 資 本 金)
中 国:中 国 対 外 経 済 貿 易 年 鑑(実 行 べ 一 ス)
ベ トナ ム:SCCI(国 家 投 資 協 力 委 員 会)資 料(認 可 べ 一 ス) 米 国:SCB(簿 価 べ 一 ス)
日 本:大 蔵 省 届 け 出 統 計
(出 所)日 本 貿 易 振 興 会 『海 外 直 接 投 資 』1994年,14ペ ー ジ。
中 国 に 向 って い る。華 人 資 本 は,当 初,97年 に 予 定 さ れ て い る香 港 の 中 国 返 還 に よ る不 安 や 天 安 門 事 件 も あ っ て 対 中 投 資 に は慎 重 で あ った 。 と こ ろ が,91年 か ら は 中 国 の 積 極 的 な 開 放 政 策 に よ り対 中 投 資 に方 向 を転 換 さ せ て い っ た 。 さ らに 中 国 本
土 の 資 本 が 逆 に 香 港 に流 出 す る ケ ー ス が 目 立 ち 始 め た 。 こ う して,中 国 資 本 と海 外 華 人 資 本 が 双 方 向 的 な 形 で ネ ッ トワ ー ク を形 成 し,一 段 と 緊 密 化
して き た 。
こ う し た華 人 資 本 の 流 れ を 図6の よ う に示 して
一10一 国際化時代 の 「中国経済」 の課題 とはなにか い る。 この 図 で み られ る限 り,香 港 シ ンガ ポ ー
ル を ハ ブ と して 華 人NIES,ASEAN各 国 の 華 人 資 本,そ れ に 中 国 資 本 が 中 国,ASEAN,華 人 NIESの 東 ア ジ ア地 域 に お い て 還 流 す る一 方 で, 殴 米 先 進 国 に まで 流 出 して い る。 華 人 資 本 の 東 ア
ジ ア 地 域 に お け る域 内 還 流 は,こ の 地 域 の 経 済 発 展 を 支 え る も の と な っ て い る。 そ れ が 華 人 経 済 圏 の 形 成 に っ な が っ て い る。
こ う した 指 摘 は き わ め て 重 要 で あ る。ASEAN の 直 接 投 資 受 け 入 れ 額 の割 合 を地 域 別 に み る と, 華 人NIES25%,日 本21%,欧 州15%,米 国 9.4%,そ の他 と な っ て い る。 こ こで も華 人 資 本 の 優 位 性 が 目 立 っ て,日 本 の 資 本 進 出 を 越 え て い
る。 一 方 中 国 の 直 接 投 資 受 入 れ 額 を み て も,85年 か ら92年 の 受 入 累 計 総 額315億9,200万 ドル の
う ち,な ん と華 人NIESが69.3%を 占 め,次 が 日 本 の10.6%,米 国8.8%,欧 州3.1%,そ の他, 7.4%,ASEANO.8%で あ る。 この 地 域 に お け る 華 人 資 本 の 直 接 投 資 の 占有 率 が い か に 大 き い か が わ か る。 一 方 注 目す べ き点 は 中 国 資 本 の 香 港 向 け 直 接 投 資 で あ る 。
中 国 の 企 業 に よ る香 港 向 け 直 接 投 資 の 増 大 は, 資 本 の 相 互 浸 透 の意 味 で 大 き い。93年 ま で の製 造 業 向 け累 積 投 資 総 額 は,約400億 ドル で,日 本, 米 国 に次 ぐ もの で あ る。 す で に 香 港 で 活 躍 して い
る 中 国 企 業 は,3,800社 と も い わ れ て い る。 中 国 企 業 の 投 資 先 は,製 造 業,金 融,不 動 産,ホ テ ル, 建 設 業 等 で あ り,そ れ ぞ れ の 分 野 に お い て半 ば 成 功 して い る。 中 国 は香 港 に お い て 生 産 資 本,流 通 資 本,サ ー ビ ス資 本 の 地 域 的 循 環 を 通 じて,そ の 製 品,ノ ウ ハ ウ,経 営 技 術,人 的 結 合 を 中 国 に還 元 す る シ ス テ ム を 形 成 しっ っ あ る 。
中 国 と 台 湾,香 港 との 貿 易,投 資 の 相 互 浸 透 は, 華 南 経 済 圏 の 軸 を 形 成 して い る。 地 域 経 済 圏 が 定 着 して い る と い う こ と は,こ の地 域 に お い て,華 人 資 本 と中 国 資 本 の 相 互 浸 透 を通 じて,資 本 が 生 産 資 本,流 通 資 本,商 業 資 本 の各 循 環 を く りか え し な が ら地 域 経 済 を 豊 富 化 し,資 本 の 自 己 増 殖 運 動 を通 じて,一 方 で,資 本 蓄 積 を促 進 す る と同 時 に,他 方 で 労 働 分 配 率 を 高 あ る こ と に よ っ て,地 域 の 消 費 需 要 を 促 進 す る。 した が っ て 」 華 南 経 済
圏 の定 着 化 は,中 国 経 済 の 市 場 経 済 化 を よ り促 進 す る 原 動 力 に な る で あ ろ う。 華 南 経 済 圏 の 形 成 は,た ん に 中 国 経 済 の 市 場 経 済 化 を 促 進 す る契 機 と な るだ けで は な い。 ア ジ ア諸 国 と の 地 域 間 の 分 業 関 係 を創 造 し,従 来 に ま して 地 域 経 済 の 補 完 関 係 を作 り あ げ て い る の で あ る。 今 後 環 境 保 全 を 前 提 に した 地 域 経 済 の 循 環 シ ス テ ム を具 体 化 す べ き で あ ろ う。
こ の 華 南 経 済 圏 の形 成 は,中 国 開 放 政 策 の ひ と っ の メ リ ッ トで あ る。 こ の地 域 経 済 圏 は,中 国 の 国 際 化 時 代 の 新 しい 政 策 路 線 の 実 現 化 で もあ る。
そ れ は,中 国 東 北 地 域 の 経 済 圏 の 活 性 化 に連 動 し て い る だ け で な く,東 ア ジ ア の 経 済 地 域 の成 長 を 促 進 して い る。 そ れ だ け で は な い 。 中 国 の 地 域 市 場 圏 は,中 国 と い うナ シ ョナ リズ ム を こ え て,グ ロ ー バ リズ ム と リー ジ ョナ リズ ム の 中 で 位 置 づ け な け れ ば な ら な いで あ ろ う。
3.当 面 す る中国経 済 の課題
当 面 す る中 国 経 済 は,世 界 経 済 の 激 動 の 中 で 最 も注 目 さ れ て い る。 と く に改 革 ・開 放 政 策 を推 進 して 以 来,2桁 台 の経 済 成 長 を 続 け,そ の 内 容 は, 外 国 資 本 の 導 入 に よ り,合 弁 企 業 や 独 資 企 業 の形 営 形 態 を 通 じて,国 内 の 豊 富 な 資 源 と良 質 の 労 働 力 を 結 合 さ せ,そ の 製 品 を 外 国 市 場 へ 輸 出 す る と 同 時 に 国 内市 場 に 吸 収 す る こ と に よ っ て 成 長 力 を 計 る こ と が で き た 。 と くに,製 品 を 輸 出 す る こ と に よ って,貿 易 収 支 を 黒 字 に し,そ れ を 国 内 に 再 投 資 す る こ と に よ って 市 場 を 拡 大 して い っ た 。
一一方 ,外 資 導入 は,国 内 の企 業育 成 のた めだ け で な く,工 業 基 盤 や 都 市 基 盤 な ど の社 会 資 本 投 資 へ 振 向 け る こ と に よ って 成 長 促 進 の条 件 作 り に 貢 献 し た 。 こ う し た 成 長 を 可 能 に し た 基 本 的 理 由 は,一 貫 した 改 革 ・開 放 政 策 の 成 果 に あ っ た と い って よ い で あ ろ う。 だ が 同 時 に社 会 主 義 市 場 経 済 路 線 が 定 着 す る中 で,そ れ を 支 え る法 制 度,金 融 制 度,労 働 力 育 成 な ど の 制 度 を ど の よ うに 確 立 す る か の 問 題 が あ る し,ま た成 長 政 策 は過 去4回
に わ た る物 価 上 昇 に 基 づ く生 活 不 安 に直 面 した 。 高 度 成 長 が 必 然 的 に 生 み だ す 「経 済 の 過 熱 化 」=
国 際化時代の 「中国経 済」 の課題 とはなにか イ ン フ レを ど の よ うに 克 服 す るか の 課 題 に 直 面 し
た 。 さ ら に地 域 間 格 差 耳 所 得 格 差 を ど の よ う に克 服 す るか が 大 き な課 題 と な って 表 面 化 した 。
(1)イ ン フ レの 要 因 と そ の 対 策
改 革 ・解 放 路 線 が 定 着 して か ら 目立 っ た物 価 高 は,1980年,84年,87,88年 に お こ り,政 府 は, 厳 し い金 融,投 資 な ど の 引 締 め政 策 を 採 用 し,成 長 率 を 抑 制 した 。 鉱 工 業 生 産 は90年 第1・4半 期 に は,89年 と比 べ て 落 ち込 み,国 営 企 業 を は じめ 民 営 企 業 の 間 に経 営 を悪 化 さ せ る傾 向 を み た 。90 年 半 ば 頃 か らや っ と 引 締 め 政 策 を 緩 和 し,改 め て 経 済 の 活 性 化 政 策 を 採 用 した 。91年 に 全 体 と して 物 価 上 昇 率 は5%以 内 に 収 ま っ た。 と こ ろ が92年 第4・4半 期 頃 か ら上 昇 を 続 け,93年 上 半 期 に は, 前 年 同 期 比10.5%と 高 い 上 昇 率 を み せ た。 「中 国 統 計 年 鑑 」(1994年)に よ る と,都 市 部 で は,生 計 費 指 数 上 昇 率 は,93年 上 半 期 で 前 年 同 期 比 17.4%,と く に6月 に は21.6%の 上 昇 率 で あ っ た。
1994年8月29日 の 新 華 社 通 信 は,陳 銀 華 国 家 計 画 委 員 会 主 任 が 全 人 代 常 務 委 員 会 で 行 っ た 国 民 経 済 状 況 報 告 の 中 で,こ う述 べ て い る。「上 半 期 の 全 国 商 品 小 売 物 価 の 全 般 的 水 準 は 前 年 同 期 よ り 19.8%上 昇,7月 も21.4%上 昇 した 。94年7月 , 35大 中 都 市 の 食 品 類 の物 価 上 昇 が 激 し い。 こ の 問 題 を う ま く解 決 しな け れ ば,当 然 一 般 大 衆 の不 満 が 高 ま る こ と に な る。 李 鵬 総 理 も国 務 院 全 体 会 議 で,省 長,市 長 が し っか り取 り組 み,供 給 を保 証 し,物 価 を 抑 え な け れ ば な ら な い 」(rエ コノ ミス ト』1994年9月27日 号,54ペ ー ジ)と 。
こ う した物 価 上 昇 を 抑 制 す る に は,ま ず そ の 主 要 原 因 を 究 明 しな け れ ば な らな い。
第1の 理 由 は,価 格 自 由 化 に あ る。79年 ま で の 国 家 の 統 制 下 に あ っ た価 格 規 制 を 順 次 緩 和 した こ と に あ る。90年 代 に入 って 資 本 財sエ ネ ル ギ ー, 消 費 財 な ど の価 格 規 制 を 緩 和 した こ と に あ る。 も ち ろ ん,市 場 経 済 の本 来 の 姿 は,自 由 競 争 を 通 じ て,消 費 財 の 供 給 を 需 要 に対 応 して 増 加 さ せ る こ と に よ って 物 価 を下 げ る シ ス テ ム を 作 る こ と に あ る。 市 民 の 生 活 水 準 を 上 昇 さ せ る こ と を 前 提 に物
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価 を 下 げ る シ ス テ ム を 作 る こ と に あ る。 と こ ろが 中 国 で は,主 要 重 化 学 工 業 は 国 有 企 業 形 態 に あ り,ま た 消 費 財 も国 家 規 制 下 に あ り,社 会 主 義 市 場 経 済 で あ る限 り,市 場 経 済 に お け る 消 費 財 の 供 給 を 需 要 増 に 対 して,充 分 に対 応 で き る政 策 手 段 を 有 して い る の で あ る。 と こ ろ が この 政 策 手 段 を 行 使 す る以 前 に,消 費 市 場 に お け る需 要 増 が 供 給 を 上 廻 り,物 価 上 昇 を 招 来 した 。 と くに,前 述 し た 諸 資 財 の 価 格 統 制 を 緩 和 した に も拘 らず,こ の 種 の 需 要 と供 給 関 係 を 調 整 す る こ とが で き な か っ た 。 以 下90年 代 に 入 っ て か ら の 政 府 に よ る価 格 規 制 緩 和 を み て み よ う。
1992年,93年 に エ ネ ル ギ ー と して の 石 炭 の 価 格 を部 分 的 に 自 由 化 し,93年 か ら石 油 製 品 の 価 格 も部 分 的 に 自 由 化 し,鋼 材 価 格 も,93年1月 か ら 軍 需 用,農 業 用,鉄 道 建 設 用 を 除 い て 原 則 自由 化 に ふ み き っ た 。穀 物,食 用 油 の価 格 に つ い て は92 年4月 に 自 由化 した。
こ う した 価 格 規 制 の 緩 和 策 は,そ れ ぞ れ の 価 格 を 順 次 上 昇 さ せ た。 そ れ は 中 国 内 外 の 価 格 と の 関 係 上 昇 圧 力 と連 動 して,価 格 低 下 に 結 び っ か な か っ た 。 穀 物 価 格 に つ い て は,92年 に は,前 年 期
と比 べ て24.3%に 上 昇 した。 政 府 は,本 来 の市 場 経 済 に お け る価 格 自 由 化 を 通 じて,供 給 増 に よ り,需 要 抑 制 を 通 じて 価 格 低 下 を 図 っ た が,逆 に 進 行 した 。 こ の 点 は市 場 メ カ ニ ズ ム の シ ス テ ム を 充 分 に管 理 で き な か っ た と い うべ き で あ ろ う。 こ の 点 の 対 策 に つ い て は,ま た あ と で 展 開 した い。
第2の イ ン フ レ要 因 は,旺 盛 な 過 剰 投 資 に あ っ た 。1990年 代 か ら積 極 的 な 外 国 投 資 を 受 け 入 れ, と くに そ の 中 心 は,基 本 建 設 投 資 に あ っ た 。 基 本 建 設 投 資 額 の伸 び 率 は急 速 度 で あ った 。90年,91 年,92年,い ず れ も,平 均 前 年 比15〜20%の 伸 び 率 で あ っ た(図7)。93年 第1・4半 期 は,前 年 同 期 比,28%か ら62%の 増 で あ る。 基 本 建 設 関 連 投 資 は,当 然 の こ とで あ るが,建 築 材 料 の 需 要 を 急 速 に増 加 さ せ た 。 と りわ け鋼 材,木 材,セ メ ン トs 家 具 調 度 品 等 の価 格 の 急 騰 の み な らず,人 件 費 の 上 昇 を もた ら した 。 と りわ け鋼 材 価 格 は,1992年 に 前 年 比24.6%,木 材 価 格 は 同12.6%,人 件 費 は 3.5%の 上 昇 を 示 した(図8,経 企庁r世 界 経 済 白書』
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%40
35 30 25 20 15 10 5 0
国際化時代 の 「中国経 済」の課題 とはなにか
図7中 国の基本建設投資額の推移
地方 の 寄与 度
中央の寄与度
一5
198889909192年
(出所)国 家統計局 「中国統計年鑑」,「中国統計摘要」。 図8中 国 の 建 築 業 部 門 の 建 築 コ ス トの 動 向 (前年 比,%)
0505050504332211
/'材 料 費 氏一.乙 ノ
1986878889909192年
(注)こ こで の建 築 業 は 国 有 部 門 の み。
(出 所)国 家 統 計 局 「中 国 統 計 年 鑑 」,「中 国統 計摘 要 」,図7, 8は 経 企 庁 『世 界 経 済 白書 』1993年 度 版,245ペ ー ジ よ り作 る。
1994年,245,246ペ ー ジ)。
こ こで,87〜89年 の 経 済 過 熱 化 と くに 物 価 上 昇 に よ る国 民 生 活 の 圧 迫 を 比 較 す る と,92年 の 過 熱 化 は,過 剰 投 資 圧 力 は 厳 し く経 済 を 悪 化 し た が, 消 費 は前 回 の20%を 超 え る イ ン フ レ よ り も,消 費
は 安 定 して い る点 に あ る 。 そ れ は,基 本 的 消 費 資 材 を手 に 入 れ,物 価 の 上 昇 に予 防 的 対 応 を す る こ
と が で き た 点 に あ る。
93年 の 経 済 過 熱 化 は,不 動 産 と株 式 に 対 して, 過 剰 投 資 と い う よ り,投 機 的 な 投 資,バ ブル 経 済 化 を 拡 大 した 点 に あ る。 と く に,目 先 き の 儲 け に 狂 奔 した一 部 の 大 衆 が,証 券 会 社 に 殺 到 し,投 機 的 な 投 資 を 拡 大 した 。 こ の こ とが,イ ン フ レを 加 速 化 さ せ た 一 面 も あ る。 もち ろ ん こ う した 証 券 政 策 の 不 充 分 な や り方 が 基 本 的 誤 りで あ っ た。 一 方
建 築 投 資 の 急 増 は,90年 代 に入 って 経 済 政 策 の一 環 と して,中 央 政 府 が,地 方 分 権 と ま で は い え な い が,地 方 政 府 へ の 投 資 権 限 を委 譲 した 。 こ の こ と に よ り,地 方 政 府 は,自 主 裁 量 権 を もち,地 域 開 発 に 積 極 的 に取 り組 み,外 資 導 入 を 通 じて 建 設 投 資 に 傾 斜 し た 。 と りわ け,中 国 は,原 則 的 に土 地 公 有 制 で あ る が,そ の 使 用 権 は50年 単 位 で 有 償 に よ る譲 渡 が 認 め られ て い る。 した が って 外 資 導 入 に よ り,積 極 的 な 地 域 開 発 を 展 開 した。 工 業 開 発 の み な らず 民 間 の 住 宅 建 設 投 資 も活 発 化 し た 。華 人 資 本 も,建 設 投 資 に 積 極 的 に の りだ した。
こ う した投 資 過 剰 は,住 宅 関 連 資 材 の 需 要 増,株 式 価 格 増 を も た ら し,経 済 を過 熱 化 した と い って
よ い で あ ろ う。 そ の 他,生 産,流 通,消 費 の 全 過 程 の 拡 大 再 生 産 過 程 で,資 金 需 要 の 増 大 に対 す る 金 融 の 拡 大 も イ ン フ レを 加 速 さ せ た と い って よ い。 さ らに 通 貨 流 通 量 の 増 加 や イ ン フ レマ イ ン ド に よ る売 り惜 しみ 等 に よ る物 価 上 昇 も一 要 因 で あ ろ う。
② イ ン フ レ抑 制 策 と は 何 か
以 上,今 回 の イ ン フ レ要 因 を 分 析 した 。 こ う し た 要 因 を ひ とつ ひ と っ 解 消 して い く政 策 手 段 を も ち実 践 す る こ と が,同 時 に イ ン フ レ抑 制 策 に繋 が る の で あ る。 だ が 事 態 は,一 直 線 に要 因 が 明 らか に さ れ て も,そ れ を 越 え た 課 題 が た え ず 存 在 す る。 と い うの は,一 方 で 開 放 政 策 に よ る 自 由 市 場 経 済 化 の 下 で,価 格 は原 則 的 に 自 由 市 場 の 需 給 関 係 で 決 ま る。 に もか か わ らず,社 会 主 義 的 市 場 体 制 で あ る限 り,国 家=政 府 の 規 制 の 自 由 裁 量 権 に あ る。 政 府 は,市 場 経 済 の 過 熱 化 に対 して,抑 制 す る手 段 を 他 の 国 よ り も 数 多 く有 して い る。 だ が,市 場 経 済 は,こ う した 規 制 を こ え て 進 行 す る。
し た が っ て,経 済 の 過 熱 化 は,周 期 的 に 発 生 せ ざ る を え な い 。
だ が 今 日の 中 国 で は,景 気 過 熱,過 剰 を 客 観 的 に計 測 す る方 式 が 存 在 して い る。 そ れ は 「全 社 会 固 定 資 産 投 資 」 と い う コ ン セ プ トで あ る。 今 回 の イ ン フ レ ー シ ョ ンを もた ら した 最 大 の 要 因 は,固 定 資 産 投 資 が 国 力 に 比 べ て,き わ め て 過 大 で あ っ
た と い う認 識 が,中 央 政 府 に あ っ た 。 こ の 点 に つ
国際化時代 の 「中国経済」 の課 題 とはなにか 一13一
表3投 資率と全国小売物価総指数
1988 1989 1990 1991 1992 1993年 GNP
(10億 元) 1,407 1,599 1,770 2,Q24 2,404 3,138 全社 会 固 定 資 産投 資
(10億 元) 45Q 414 450 551 786 1,183 投 資 率
(%) 32.0 25.9 25.1 27.2 32.7 37.7
全国小売物価総指数
C%)
18.5 17.8 2.1 2.9 5.4 13.4 経 済成 長 率C%) 11.3 4.3 3.9 8.0 13.2 13.4
(出 所)『 中 国 統 計 年 鑑 』1993年 版,1993年 度 統 計 公 報,物 価 総 指 数 経 済 成 長 率 は対 前 年 比,『 エ コ ノ ミス ト』1994年9月27日 号 。
い て 検 討 して み よ う。
今 回 の イ ン フ レ防 止 の た め の 指 標 と して の 全 社 会 固 定 資 産 投 資 の 概 念 の構 成 は,イ ン フ ラ,住 宅 建 設,工 場 建 設,ホ テ ル 建 設 な ど す べ て の 固 定 資 産 投 資 を 含 め て い る 。 全 社 会 固 定 資 産 投 資 を GNPで 割 っ た も の を 投 資 率 と す れ ば,80年 代 か らの 中 国 の投 資 率 の 計 算 に よ る と,30%が,物 価 の 安 定 ラ イ ン と連 動 す る と い う。1988年 ま で は こ の 投 資 率 は30%を 突 破 し て い た が89年 か ら91 年 ま で に は,30%以 下 に 下 が っ た。92年 か ら は,
ま た30%を 超 え た 。
この 投 資 率 の 動 き と全 国 小 売 物 価 総 指 数 と は 関 連 性 が 高 い と い わ れ て い る。 表3を み て もわ か る よ うに,投 資 率 が30%以 下 に な る と,1年 後 に物 価 上 昇 率 は1ケ タ に な る。投 資 率 が30%を 超 え る
と,1年 後 に は,物 価 上 昇 率 は2ケ タ に な って い る。 し た が って,政 府 は こ の投 資 率 を ど の よ う に して30%以 下 に 抑 制 す るか に あ る(大 久 保勲r中 国 い よ い よ本 格 化 す る イ ンフ レ抑 制 策 」 『エ コ ノ ミス
ト』1994年9月27日 号)。 資 金,原 材 料,輸 送 面 で ひ ず み が で て く る の は,投 資 率30%以 上 を 超 え た 場 合 で あ る。1993年 の 投 資 率 は37.7%と い う 高 率 で あ った か ら,当 然 小 売 物 価 総 指 数 も,13%
に な っ た 。
この 統 計 で み る限 り,い か に 政 府 が 投 資 率 を 抑 制 す る か が,消 費 者 物 価 を 下 げ る政 策 手 段 と な る。 した が っ て 過 剰 投 資 を抑 制 す る こ と,つ ま り, 外 資 を 投 資 率30%以 下 の 範 囲 内 で 活 用 し な い 限
り物 価 は上 昇 す る こ と に な る。
こ の 点 を,政 府 と 地 方 政 府 は,市 民 の立 場 に た って 物 価 を 抑 制 す べ き な の で あ る。 つ ま り建 設 投 資 を 具 体 的 に 抑 制 しっ っ,物 価 を 下 げ る政 策 を 実 施 す べ き な の で あ る。
中 国 は,先 進 国 に 学 ん で 景 気 過 熱 抑 制 策 に あ た っ て 実 施 して い る金 融 政 策 を 物 価 抑 止 策 と して 選 択 した 。
92年,中 国 人 民 銀 行 は 各 種 銀 行 に対 して イ ン フ レ抑 制 策 の 一 環 と し て 貸 付 枠 の 縮 小 を 要 請 し た り,93年 に は,5月 と7月 に わ た っ て,金 利 を 引 上 げ た り,3年 以 上 の 定 期 預 金 金 利 に対 して ,市 民 の 不 満 を 緩 和 す る た め に 物 価 ス ラ イ ド制 を導 入
し,さ らに 国 債 の 利 率 も 引 き上 げ る対 策 を 選 択 し た 。 さ らに 政 府 は 地 方 の 省,市 の 自主 裁 量 権 を 抑 制 し,開 発 区 に 対 す る投 資 規 制 を実 行 し た。 こ の 点 に お い て は,わ が 国 を 始 め とす る先 進 国 と比 べ て,中 国 の イ ン フ レ抑 制 策 は,半 ば 徹 底 化 して い る。 政 府,地 方 政 府 に よ る イ ン フ レ抑 制 策 は,か な り成 功 して い る と い っ て よ い の で は な か ろ う か 。
だ が す べ て 順 風 満 帆 で は な い 。 た しか に鉱 工 業 生 産 額 は,一 次 的 に 鈍 化 した が,93年6月 前 年 比 30.2%を ピー一ク に12月 に20%台 に低 下 した 。 鋼 材,化 学 原 料,自 動 車 な ど の 価 格 上 昇 率 も,順 次 低 下 した 。 だ が 生 計 費 上 昇 率 は,20%台 の 高 率 を 示 し,鈍 化 傾 向 に な い。
した が って 中 央 政 府 も地 方 政 府 も,本 格 的 な 物 価 抑 制 政 策 を,原 材 料 面,消 費 財 面 か ら厳 し く実 施 して い くべ き で あ ろ う。
一14一 国際化 時代の 「中国経済 」の課題 とはなにか わ た く し は,中 国 の 高 成 長 率 が 庶 民 の 実 質 所 得
増 を も た ら し,生 産 水 準 の 向 上 を維 持 して い る こ と は評 価 す べ き で あ ろ う と思 って い る。 に も拘 ら ず,内 外 を 含 め た 投 資 過 剰 は 物 価 上 昇 を も た ら し,市 民 の 可 処 分 所 得 を 減 少 し,ひ い て は生 活 不 安 を 導 か ざ る を え な い 。 した が っ て,政 府 は,庶 民 の 生 活 水 準 向 上 の 先 頭 に立 って,価 格 抑 制,過 剰 投 資 の 抑 制,イ ン フ レ マ イ ン ドの 鎮 静 化 な ど, 多 面 的 な 対 策 を は か る べ き で あ ろ う。
③ 中 央 政 府 の 物 価 抑 制 策
中 国 政 府 は,前 に 述 べ た よ うな イ ン フ レを 抑 制 す る た め に積 極 的 な 引 締 あ 政 策 を 打 ち 出 した 。 そ の 主 要 な 政 策 が 金 融 政 策 で あ る。93年 に 預 金,貸 出 金 利 の 引 上 げ を 通 じて,国 有 企 業,民 営(合 併 な ど)企 業,中 小 商 店 な ど に 対 して 金 融 機 関 か らの 融 資 を抑 制 し た。 ま た3年 以 上 の 定 期 預 金 金 利 に 対 して は預 金 者 保 護 の立 場 か ら物 価 ス ラ イ ド制 を 導 入 し,国 債 の 利 率 も引 き上 げ る こ と に よ って 経 済 過 熱 化 を コ ン トロ ー ル した 。 地 方 政 府 に 対 して は,外 資 導 入 な ど に よ る 開 発 区 に お け る過 剰 投 資 を 抑 制 した 。
1993年7月 に は,経 済 活 動 の 総 量 規 制 と金 融 制 度 の 整 備 の 必 要 性 を 強 調 し た。 社 会 主 義 市 場 経 済 の 運 営 に あ た って も,企 業 活 動 の 潤 滑 油 に 当 る金 融 の あ り方 が 景 気 動 向 を 左 右 す る。
社 会 主 義 市 場 経 済 の 発 展 に と もな って,中 国 国 内 の通 貨 供 給 量 も増 大 し た。 い わ ゆ るM,(現 金 通 貨+銀 行 預 金)の 規 模 は,1981年 に 名 目GNP 41.1%だ っ た が,92年 に はGNP規 模 の2倍 以 上
に 拡 大 した 。 企 業 の 広 範 囲 な 潜 在 的 資 金 へ の 需 要 圧 力 が 高 くな り,経 済 の 過 熱 化 を もた らす 要 因 と な っ て い る以 上,政 府 は,資 金 の 流 れ を 管 理 す る 必 要 に 迫 られ,金 融 制 度 の 改 革 に の りだ した点 に あ る 。93年6月,金 融 制 度 改 革 の16項 目 を 提 案 し た 。 そ の 代 表 的 な改 革 は,第1に 非 金 融 機 関 に よ る非 合 法 的 な 債 券 発 行 を禁 止 し,過 剰 金 融 化, バ ブ ル 化 を 防 止 した 。 こ の 点 は,沿 海 部 の諸 都 市
に お い て ノ ンバ ン クが,抵 当権 な しで 貸 出 しを 自 由 に行 って い た こ と を 禁 止 し た。 第2に 金 融 機 関 が 非 金 融 機 関(ノ ンバ ンク)に 対 して 貸 し付 け る資
金 を 整 理 す る こ と に あ っ た 。 こ の点,中 国 の金 融 制 度 の 未 整 備 の た め,企 業 が,自 由 に高 利 で 債 券 を 発 行 す る こ と も抑 制 した 。 従 来 ノ ンバ ン ク の 設 立 も 自 由 で あ っ た た め,野 放 図 に 資 金 が 流 動 し, 経 済 の 過 熱 化 の 原 因 に な って い た 。 この 点 を,抑 制 す る政 策 に で た の は賢 明 な 対 応 で あ った 。 人 民 銀 行=国 立 中 央 銀 行 が,す べ て の金 融 の流 れ,債 券,株 式 の 流 れ を掌 握 し,管 理 す る シ ス テ ム を 作
る こ と に あ る。 そ う で な い か ぎ り,イ ン フ レ,デ フ レ に 合 理 的 に 対 応 す る こ と が で き な い。 こ の 点,金 融 制 度 の 体 質 を 改 革 し,イ ン フ レ抑 止 策 に
乗 り 出 した 点 を 評 価 した い 。
イ ン フ レ抑 制 策 と して 投 資 政 策 に乗 り出 し た点 も評 価 して よ い で あ ろ う。中 国 で は,生 産 財 部 門, 消 費 財 部 門 の 充 実 の た め に イ ン フ ラ投 資 に重 点 を お い て き た 。 だ が,民 間 の 高 利 潤 率 を も た らす 加 工 産 業 や サ ー ビス 関 連 業 へ 投 資 資 金 が 流 出 す る。
こ の 点 を 改 め て 管 理 し,公 共 部 門 へ 資 金 が 流 れ る 対 策 を 打 ち 出 した 。
「世 界 経 済 白書 』(1993年)に よ る と 中 国 で は投 資 の項 目 は生 産 性 投 資 と非 生 産 性 投 資 と に大 別 さ
れ て い る。 非 生 産 性 投 資 と は 住 宅 建 設,文 教 関 連 施 設,公 共 事 業 な ど を 含 む 投 資 の 概 念 だ が,91, 92年 と こ の 非 生 産 性 投 資 の 寄 与 度 が 拡 大 して い
る と い う。 こ の部 門 に は,公 民 館,ホ テ ル,ゴ ル フ場,別 荘 な ど も含 ま れ て い る。 ホ テ ル,ゴ ル フ 場 な ど の 高 利 益 率 の 部 門 へ 投 資 が 傾 斜 し,生 産 部 門 へ の 投 資 が お くれ る傾 向 が あ り,こ う した 投 資 の あ り方 を是 正 して い くべ きで あ ろ う。
わ た く し が 強 調 し た い の は,非 生 産 性 投 資 部 門,と くに 教 育,福 祉,環 境 な ど に 重 点 的 に投 資 し,生 産 部 門 の 投 資 と連 動 す べ き で あ ろ う。 と り わ け,中 国 の 高 成 長 政 策 は,公 害 対 策,環 境 保 全 対 策 を 軽 視 し た こ と に よ って 可 能 で あ った 。 だ か ら,非 生 産 部 門 の 中 に 環 境 対 策 の 項 目 を 導 入 し, 環 境 保 全 を 前 提 と した 生 産 投 資 を 展 開 す べ き な の
で あ る。
と も あ れ,中 国 政 策 の 引 締 め 政 策 に よ って93 年7月 頃 か ら鉱 工 業 生 産 額 が 鈍 化 した り,国 定 資 産 投 資 総 額 も鈍 化 し,鋼 材,化 学 原 料,自 動 車 に つ い て も価 格 上 昇 率 が 低 下 しつ つ あ る。 ま た 物 価