土地利用・土地被覆の違いが河川水質成分および沿 岸の磯焼けに与える影響評価 : 道南 上ノ国町を例 に
著者 夏目 奏, 澤柿 教伸, 白岩 孝行
雑誌名 經濟學論叢
巻 65
号 3
ページ 533‑555
発行年 2014‑03‑20
権利 同志社大學經濟學會
URL http://doi.org/10.14988/00027416
土地利用・土地被覆の違いが河川水質成分 および沿岸の磯焼けに与える影響評価
―道南 上ノ国町を例に―
夏 目 奏 澤 柿 教 伸 白 岩 孝 行
は じ め に
日本の沿岸では,半世紀前からコンブやワカメ,アラメなどの海藻が全く 生育しなくなる「磯焼け」と呼ばれる現象が広がりはじめた(松永,2010). 海藻が生えなくなった岩や岩盤をエゾイシゴロモ(紅藻綱,サンゴモ目)と呼 ばれる海藻が覆うと,それ以降は半永久的に海藻が育たなくなると言われ ている(松永,2010).磯焼けは,今では日本全国で見られるようになった が,特に北海道積丹半島以南の日本海沿岸で顕著である(桑原ら,1998;松永,
2010).この現象によって沿岸に海藻が成育しなくなると,魚類の産卵場所や
生息域が無くなる上に,魚がその沿岸に寄り付かなくなり,水産資源量や漁 獲量が減少すると考えられている.漁獲量の減少は地元漁師を疲弊させ,地 域の過疎化にも繋がる可能性があるため,早急な対策が必要とされている.
* 本論をまとめるにあたり,北海道大学低温科学研究所の西岡純准教授ならびに村山愛子氏に は,溶存鉄濃度・栄養塩濃度分析についてご指導いただいた.上ノ国町の2河川流域のフィー ルドワークにおいては,北海道大学北方圏フィールド科学センター森林圏ステーション檜山研 究林の品田真弓氏にお世話になった.天ノ川・石崎川河口域における磯焼け調査に際しては,
上ノ国町役場水産商工課の品田明彦氏・平井茂樹氏にご協力いただいた.同志社大学の室田武 教授には,日頃から陸と海の物質循環について多くの斬新なアイデアをいただいている.以上 の方々に心よりお礼申し上げる.
一般的に,磯焼けの原因はエゾイシゴロモなどの無節サンゴモが岩や岩盤を 覆ってしまうことによって起きる着生阻害や,水温上昇,水温上昇にともなう 貧栄養化,土砂の海藻への付着,森林の減少,キタムラサキウニの食害である と言われている(松永,2010).上述したこれらの原因の中でも,これまでは特 にキタムラサキウニの食害説が有力であった(谷口,1998)ため,その対策が 多く取り組まれてきた(名畑,1992;桑原ら,1998)が,未だ磯焼け問題の解決 には至っていない.一方で,ウニは以前からコンブなどの海藻と共存してきた ため,必ずしもウニの食害が原因と断定することも困難である(松永, 2010). 近年,陸域と海域の物質的・生態学的連環が,「森は海の恋人」(畠山重篤,
1994),「魚つき林」(柳沼武彦,1999),「森里海連環学」(山下洋,2007),「里海」(柳 哲雄,2006)といった言葉と共に見直され始め,さらには物質循環的な視点か ら陸と海の関係が語られるようになった(室田,2001;Murota, 2012).これらの 考え方に基づくと,Matsunaga et al.(1984)が提起した流域の土地利用・土地 被覆状態が地表水・および地下水を通じて河川水の水質に影響を与え,最終 的には河川が流入する沿岸域の海水,ならびにその海水中の生態系に影響を 与える可能性を再度検討する価値がある.
本稿は,北海道南西部の沿岸域で進行する磯焼けの原因につき,流入する 河川とその流域環境の関係について着目し,土地利用・土地被覆条件の異な る2つの河川とその沿岸域の磯焼け進行度を比較研究することで,磯焼けの 原因について考察する.
1 研究の目的
本研究は,土地利用の進展が河川水質を変化させ,この河川水が沿岸に流 入することで磯焼けを引き起こしたという1984年に北海道大学の松永勝彦氏 が提唱した仮説(Matsunaga et al., 1984)に注目する.陸地と沿岸を結ぶ媒体で ある河川に着目してこの仮説の検証を行うことで,陸域の土地利用・土地被 覆と磯焼けの関係を解明することが研究の最終目標である.本研究の調査地
は,半世紀ほど前から沿岸で磯焼けが起き,漁業に深刻な問題を抱えている 北海道南西部の上ノ国町に設定した.磯焼けが生じる前の水質や海底の状況 を示すデータは存在しないため,磯焼け前後の環境変化を時系列に沿って比 較することは困難である.代わりに, 土地利用・土地被覆状況の異なる隣接 した天ノ川と石崎川といった2つの流域の河川水質と沿岸の磯焼け状況を比 較することによって,流域の土地利用・土地被覆の違いが河川水質をどう変 化させ,沿岸の磯場にいかなる影響を与えるかに注目した.
2 調査地概要
上ノ国町は,北は江差町,南は松前町,東は木古内町に接し,西は日本海 に面する.東西31km,南北に74km,海岸線は36kmにおよぶ(第 1 図).行 政区域は,総土地面積54,758ha,うち50,510haが林野面積であり,町のおよ
そ92%を山林が占めている.
第 1 図 天ノ川・石崎川流域の位置図
町内の北部を二級河川の天ノ川が,南部を二級河川の石崎川が流れており,
両河川とも直接日本海に注いでいる.本研究は,この2つの河川を比較対象 とする.天ノ川の流域面積は259.80km2で,12の支流を合しており,流域に は天ノ川本流に沿って水田や農地,宅地,温泉地が広がり人間活動が盛んで ある.河口左岸側には大間漁港があり,1979年から1986年にかけて建設さ れた北防波堤が突き出ている.
一方,石崎川の流域面積は174.20km2と天ノ川流域に比べてやや小さい.
流域内の宅地や農地は石崎川河口周辺の一部に形成されているのみであり,
天ノ川流域ほど土地に手が加えられない状態で残されている.ちなみに,石 崎川は北海道内水面漁業調整規則によって保護河川として保護されている.
上ノ国町の沿岸はかつて鬱蒼とした森林に覆われ,サケ,ニシン,檜材,
砂金などの豊富な資源に恵まれ,漁業林業ともに栄えていた.しかし明治末 期(1900年頃)以降,ニシン漁が最盛期を迎え,道南では薪材やニシン漬けの 樽材として森林が次から次へと伐採されるようになった(田島,2011).以降,
森林の衰退に比例するかのように漁獲量も年々減少したと言われている.
3 研究方法
3. 1 土地利用分類両流域の土地利用の違いを調べるため,天ノ川流域と石崎川流域の土地利 用・土地被覆分類図を作成した.国土地理院発行の5万分の1の地形図上ノ 国(平成20年修正・発行)とGoogle Earthを用いて土地利用・土地被覆状況 を地図上にプロットし,現地での観察によってこれを修正した.また,森林 の区分は,土地利用図(北海道檜山郡上ノ国町北海道農業土木技術指導協同組合,
2002)を参考にした.
3. 2 水質調査
海藻は栄養塩を光合成に利用し,溶存鉄を光合成の際の電子伝達などに利
用することが知られている(Matsunaga et al., 1984).これより,本研究では河川 水中の栄養塩濃度と溶存鉄濃度に着目した.
両河川の水質調査は,平成24年1月から平成24年11月まで合計11回実 施した.水質調査のサンプリング地点は,両河川において土地利用の違いが 水質に与える影響を評価できるよう,複数地点設定した.天ノ川で12地点,
石崎川では3地点である(第1図).なお,天ノ川の地点1,2,4,7,10,11 は本流の,地点3,5,6,8,9,12は支流のサンプリング地点である.地点 7は湯ノ岱温泉の下流に位置し,その上流100m程の地点で河川に温泉水が流 入している.石崎川のサンプリング地点1と2は本流の,地点3は支流のサ ンプリング地点である.地点3の上流には閉山した中外鉱山から汚水処理済 みの工場排水が流入している.
溶存鉄濃度,および栄養塩濃度分析のための試料採取にあたっては,サン プリング地点の河川中央部にて,橋の上からビニル製バケツを用いて河川表 面水を採取した.採取した河川水は,溶存鉄濃度分析のため,0.7μmのGF/F フィルターでろ過し,100mLポリビンに採り,冷蔵保存した.なお,このポ リビンは,鉄の汚染を防ぐため,硝酸に3日ほど漬けて酸洗浄し,超純水で5 回濯いだ後,クリーンルームで乾燥させている.現場では,河川水でポリビン を共洗いして使用した.また,栄養塩濃度分析用試料は,0.2μmのシリコン 製フィルターでろ過し,これをスピッツに採り,分析の直前まで冷凍保存した.
3. 3 溶存鉄濃度分析
溶存鉄濃度の測定はフェロジン法を用いて行った.フェロジン法とは,ま ず三価の鉄を二価に還元し,試薬であるフェロジンを添加する.フェロジン を加えることで水中の溶解性二価鉄と反応させて安定性のある錯体を形成さ せる.そこに発色試液(還元剤)を加えて錯体を発色させ,その吸光度を測 定することによって溶存鉄の濃度を測る方法である(Stookey, 1970).Stookey
(1970)によれば,フェロジン法の標準的な測定精度は96.8%である.
3. 4 栄養塩濃度分析
栄養塩濃度は,各計測項目の標準溶液と試薬を作製したのち,栄養塩計
BL-TEC AUTO ANALYZERを使用して計測した.計測項目は,亜硝酸態窒素
(NO2-N),硝酸態窒素(NO3-N),アンモニア態窒素(NH4-N),リン酸態リン(PO4-P), ケイ酸態ケイ素(SiO2-Si)である.
3. 5 磯焼け分布調査
河川水が流出する河口域沿岸海底において,磯焼けの進行度を目視調査し た.調査地の底質は,2万5千分の1の漁場基本図 上ノ国町海域(株式会社パ
第 2 図 磯焼け度の4区分.左:模式図,右:模式地写真.
スコ調製,平成3年2月印刷,建設省国土地理院発行の地形図を複製したもの)を参 考にした.
調査は,上ノ国町水産商工課ならびに地元漁師の協力により,平成24年8 月31日と10月10日の2日間,漁船を用いて海上から行った.磯焼け分布 調査のポイントは,各河川の河口を中心として右岸・左岸にそれぞれおよそ
1.5 km(直線距離およそ3km)の区間を設け,ほぼ等間隔に10地点設定した.
各観測ポイントにてGPS(GARMIN GPSMAP 62SCJ)と,防水カメラ(PENTAX
OptioWG-2)を用いて位置の確認と水中撮影を行った.また,観測ポイントの
水深を,おもりを付けたメジャーを用いて測定した.
磯焼けの度合いは,目視観測に基づいて0から3の4段階で評価した(第 2 図).0は海藻が密生している(全く磯焼けしていない),1は海藻が散在している,
2は海藻が点在している, 3は全く海藻が生育していない(磯焼けが進行してい る)である.
4 結 果
4. 1 土地利用分類土地利用分類の結果を,第 3 図に示した.天ノ川流域には,天ノ川に沿う ように水田や畑,市街地が広がっている.一方,石崎川流域では,河口付近 が市街地や畑として利用されているだけで,それより上流域ではほとんど土 地利用が進んでいない.森林については天ノ川流域では針葉樹と広葉樹が同 じ程度の割合で分布している一方,石崎川流域は広葉樹によって広く覆われ ていることがわかった.
4. 2 水質分析 4. 2. 1 溶存鉄濃度
分析結果を第 1 表に示す.天ノ川で採取した全サンプルの溶存鉄濃度の平均 値は40.0μg L-1であった.湯ノ岱温泉(地点7)より下流の平均値は31.7μg L-1,
上流の平均値は47.9μg L-1となり,上流の方が下流よりも溶存鉄濃度がやや 高い.季節的に見ると,8月は他の月に比べ溶存鉄濃度が高くなっていた.
石崎川で採取したサンプルの溶存鉄濃度の平均値は14.0μg L-1であり,天 ノ川と比較すると,石崎川の溶存鉄濃度の方が低いことがわかった.また,
石崎川の本流では4月と8月に溶存鉄濃度が高くなっていた.
第 3 図 天ノ川・石崎川流域の土地利用・土地被覆分類図
No. 1月7日 2月22日 4月14日 6月27日 7月25日 8月28日 9月19日10月14日11月27日 平均値
天ノ川
1 40.0 45.0 55.0 67.5 77.5 77.5 77.5 45.0 50.0 59.4 2 n.a. 12.5 37.5 37.5 37.5 27.5 52.5 30.0 40.0 34.4 3 n.a. n.a. 12.5 5.0 27.5 47.5 17.5 22.5 17.5 21.4 4 n.a. 2.5 30.0 25.0 30.0 65.0 42.5 30.0 25.0 31.3 5 n.a. 40.0 12.5 n.a. 17.5 12.5 12.5 35.0 45.0 25.0 6 n.a. n.a. 22.5 n.a. 15.0 n.a. 12.5 22.5 22.5 19.0 7 30.0 17.5 22.5 n.a. 65.0 92.5 52.5 67.5 50.0 49.7 8 n.a. n.a. n.a. 10.0 15.0 92.5 7.5 15.0 15.0 25.8 9 n.a. n.a. 22.5 50.0 65.0 67.5 42.5 47.5 32.5 46.8 10 52.5 27.5 30.0 45.0 60.0 77.5 60.0 65.0 50.0 51.9 11 n.a. n.a. 35.0 45.0 57.5 72.5 57.5 70.0 57.5 56.4 12 n.a. n.a. 25.0 55.0 67.5 82.5 47.5 75.0 57.5 58.6
石崎川
1 2.5 0.0 35.0 0.0 15.0 17.5 7.5 7.5 20.0 11.7 2 2.5 2.5 30.0 7.5 20.0 77.5 10.0 10.0 17.5 19.7 3 n.a. 0.0 15.0 15.0 22.5 5.0 2.5 2.5 22.5 10.6
第 1 表 天ノ川と石崎川における溶存鉄濃度(μg L-1)
4. 2. 2 栄養塩濃度
栄養塩濃度の分析結果を第 2 表,第 3 表,第 4 表,第 5 表,第 6 表に示す.
・亜硝酸態窒素
天ノ川はすべての地点(1〜12)において平均値が0.002mg L-1前後の値を 示し,上流から下流まで低濃度で空間的な差もないことがわかった(第2表). 石崎川でも地点1と2に関しては天ノ川の栄養塩濃度と差はなかった.しかし,
地点3は他の地点の3〜5倍の濃度を示した.
・硝酸態窒素
天ノ川では,全地点において4月に濃度が高くなっており,6,7,8,9月
にも地点1,2,6,9で濃度が高くなっていた(第3表).一方,石崎川では4
月に天ノ川の濃度を上回る高濃度が記録された.
No. 1月7日 2月22日 4月14日 6月27日 7月25日 8月28日 9月19日10月14日 平均値
天ノ川
1 0.1568 0.1581 0.2583 0.0861 0.1195 0.2018 0.1590 0.0993 0.1549 2 n.a. 0.0906 0.2775 0.0865 0.1238 0.1073 0.1273 0.0978 0.1301 3 n.a. n.a. 0.3024 0.0395 0.0736 0.0983 0.1171 0.1908 0.1370 4 n.a. 0.0831 0.2562 0.0658 0.0921 0.0382 0.0965 0.0845 0.1023 5 n.a. n.a. 0.3176 0.0601 0.0677 0.0526 0.0660 0.1073 0.1119 6 n.a. n.a. 0.2247 0.0913 0.1104 n.a. 0.1347 0.1743 0.1471 7 0.0880 0.0930 0.1921 0.0432 0.0752 0.0381 0.0657 0.1193 0.0893 8 n.a. n.a. 0.2208 0.0575 0.0649 0.0624 0.0715 0.0549 0.0887 9 n.a. n.a. 0.2289 0.0502 0.1046 0.1603 0.0982 0.2054 0.1413 10 0.0963 0.0841 0.1757 0.0406 0.0621 0.0504 0.0588 0.0942 0.0828 11 n.a. n.a. 0.1690 0.0403 0.0692 0.0483 0.0603 0.2592 0.1077 12 n.a. n.a. 0.1935 0.0460 0.0825 0.0489 0.0523 0.1578 0.0968
石崎川
1 0.1860 0.1719 0.4393 0.0917 0.1195 0.0388 0.1863 0.1642 0.1747 2 0.1910 0.1510 0.4046 0.2711 0.1238 0.1710 0.2043 0.1719 0.2111 3 n.a. 0.2470 0.4270 0.1072 0.0736 0.4844 0.4373 0.3950 0.3102
第 3 表 天ノ川と石崎川における硝酸態窒素濃度(mg L-1)
No. 1月7日 2月22日 4月14日 6月27日 7月25日 8月28日 9月19日10月14日 平均値
天ノ川
1 0.0004 0.0011 0.0026 0.0023 0.0024 0.0029 0.0025 0.0022 0.0021 2 n.a. 0.0005 0.0024 0.0029 0.0028 0.0037 0.0026 0.0023 0.0025 3 n.a. n.a. 0.0022 0.0020 0.0036 0.0025 0.0021 0.0023 0.0025 4 n.a. 0.0011 0.0025 0.0030 0.0050 0.0016 0.0022 0.0021 0.0025 5 n.a. n.a. 0.0027 0.0029 0.0030 0.0025 0.0033 0.0025 0.0028 6 n.a. n.a. 0.0025 0.0034 0.0038 0.0016 0.0024 0.0023 0.0027 7 0.0006 0.0011 0.0005 0.0027 0.0025 0.0016 0.0027 0.0023 0.0018 8 n.a. n.a. 0.0024 0.0023 0.0032 0.0026 0.0023 0.0021 0.0025 9 n.a. n.a. 0.0002 0.0029 0.0024 0.0031 0.0020 0.0021 0.0021 10 0.0009 0.0029 0.0005 0.0035 0.0025 0.0024 0.0021 0.0020 0.0021 11 n.a. n.a. 0.0000 0.0025 0.0031 0.0020 0.0020 0.0021 0.0020 12 n.a. n.a. 0.0012 0.0027 0.0020 0.0028 0.0024 0.0021 0.0022
石崎川
1 0.0006 0.0034 0.0005 0.0030 0.0028 0.0016 0.0024 0.0024 0.0021 2 0.0008 0.0028 0.0009 0.0116 0.0028 0.0036 0.0025 0.0027 0.0035 3 n.a. 0.0068 0.0007 0.0030 0.0119 0.0237 0.0081 0.0156 0.0100
第 2 表 天ノ川と石崎川における亜硝酸態窒素濃度(mg L-1)
No. 1月7日 2月22日 4月14日 6月27日 7月25日 8月28日 9月19日10月14日 平均値
天ノ川
1 0.0134 0.0123 0.0130 0.0101 0.0152 0.0150 0.0123 0.0079 0.0124 2 n.a. 0.0000 0.0128 0.0088 0.0150 0.0138 0.0082 0.0097 0.0098 3 n.a. n.a. 0.0078 0.0047 0.0120 0.0128 0.0054 0.0062 0.0082 4 n.a. 0.0000 0.0090 0.0076 0.0162 0.0028 0.0048 0.0054 0.0065 5 n.a. n.a. 0.0104 0.0070 0.0150 0.0109 0.0070 0.0045 0.0091 6 n.a. n.a. 0.0053 0.0067 0.0142 n.a. 0.0057 0.0043 0.0072 7 0.0000 0.0000 0.0013 0.0082 0.0120 0.0031 0.0060 0.0050 0.0045 8 n.a. n.a. 0.0082 0.0095 0.0201 0.0144 0.0049 0.0045 0.0103 9 n.a. n.a. 0.0000 0.0068 0.0098 0.0104 0.0052 0.0047 0.0062 10 0.0091 0.0000 0.0007 0.0058 0.0067 0.0068 0.0054 0.0041 0.0048 11 n.a. n.a. 0.0010 0.0053 0.0098 0.0060 0.0037 0.0089 0.0058 12 n.a. n.a. 0.0034 0.0058 0.0088 0.0080 0.0057 0.0053 0.0062
石崎川
1 0.0012 0.0000 0.0021 0.0051 0.0102 0.0023 0.0070 0.0057 0.0042 2 0.0071 0.0000 0.0039 0.0855 0.0104 0.0138 0.0071 0.0073 0.0169 3 n.a. 0.0928 0.0069 0.0063 0.0606 0.0274 0.0471 0.0560 0.0424
第 4 表 天ノ川と石崎川におけるアンモニア態窒素濃度(mg L-1)
第 5 表 天ノ川と石崎川におけるリン酸態リン濃度(mg L-1)
No. 1月7日 2月22日 4月14日 6月27日 7月25日 8月28日 9月19日10月14日 平均値
天ノ川
1 0.0005 0.0031 0.0125 0.0106 0.0107 0.0106 0.0108 0.0096 0.0086 2 n.a. 0.0008 0.0119 0.0101 0.0109 0.0097 0.0104 0.0093 0.0090 3 n.a. n.a. 0.0135 0.0112 0.0122 0.0140 0.0126 0.0126 0.0127 4 n.a. 0.0004 0.0112 0.0098 0.0103 0.0079 0.0098 0.0087 0.0083 5 n.a. n.a. 0.0118 0.0120 0.0105 0.0110 0.0116 0.0118 0.0115 6 n.a. n.a. 0.0111 0.0100 0.0103 0.0079 0.0103 0.0100 0.0099 7 0.0006 0.0001 0.0111 0.0093 0.0091 0.0080 0.0100 0.0088 0.0071 8 n.a. n.a. 0.0101 0.0099 0.0101 0.0103 0.0098 0.0091 0.0099 9 n.a. n.a. 0.0101 0.0094 0.0100 0.0101 0.0097 0.0093 0.0098 10 0.0014 0.0003 0.0008 0.0092 0.0086 0.0093 0.0086 0.0086 0.0059 11 n.a. n.a. 0.0010 0.0090 0.0092 0.0089 0.0085 0.0088 0.0076 12 n.a. n.a. 0.0018 0.0091 0.0094 0.0093 0.0086 0.0086 0.0078
石崎川
1 0.0003 0.0002 0.0013 0.0088 0.0095 0.0080 0.0098 0.0091 0.0059 2 0.0010 0.0000 0.0016 0.0088 0.0092 0.0089 0.0100 0.0095 0.0061 3 n.a. 0.0035 0.0027 0.0092 0.0087 0.0089 0.0116 0.0105 0.0079
No. 1月7日 2月22日 4月14日 6月27日 7月25日 8月28日 9月19日10月14日 平均値
天ノ川
1 10.6518 10.1974 4.9042 9.5298 8.3440 5.8915 9.3334 10.1556 8.6260 2 n.a. 9.8299 6.7085 8.9657 8.5750 12.4061 9.6179 10.5396 9.5204 3 n.a. n.a. 3.3409 8.0325 8.6021 8.4733 8.4956 7.4149 7.3932 4 n.a. 9.4255 3.6554 9.3880 11.5497 1.2304 10.8694 9.8500 7.9955 5 n.a. n.a. 6.4296 11.7607 12.2171 11.5108 11.5263 12.6943 11.0231 6 n.a. n.a. 2.8730 6.9302 7.5032 1.2244 8.9018 8.2924 5.9542 7 5.5380 8.6615 2.7341 7.3885 6.8519 1.2233 8.6942 8.1654 6.1571 8 n.a. n.a. 2.6312 10.5756 12.8377 12.8481 12.4351 10.9388 10.3778 9 n.a. n.a. 3.0451 5.8815 6.3052 5.6876 8.0562 8.3600 6.2226 10 6.1880 8.5519 3.9511 7.0479 6.1451 7.7736 8.5895 7.9905 7.0297 11 n.a. n.a. 3.8673 7.8579 7.3740 8.0744 9.0701 9.7560 7.6666 12 n.a. n.a. 3.8393 8.3348 11.2211 10.0126 10.4260 11.0469 9.1468
石崎川
1 8.5378 9.9727 7.3104 8.8239 9.5584 1.2289 9.5711 10.0509 8.1318 2 8.5537 8.1168 6.9056 8.8506 9.1068 9.5358 10.7149 9.4853 8.9087 3 n.a. 6.6475 5.5549 9.1481 9.2053 10.2362 10.6302 9.5488 8.7101
第 6 表 天ノ川と石崎川におけるケイ酸態ケイ素濃度(mg L-1)
・アンモニア態窒素
アンモニア態窒素濃度は,どちらの河川においても通年にわたり低い濃度 であったが,4月に高濃度を記録した(第4表).また,石崎川では,上流の 地点3において,他の地点に比べ高濃度が記録された.
・リン酸態リン
天ノ川においては,下流の地点1から7までは4月に濃度が高くなってい るが,上流の地点10から12においては4月に濃度が低くなっている.空間 的に見ると,上流よりも下流で濃度が高くなる傾向が見られた.
石崎川では,4月よりも6月以降に濃度が高くなっていた.地点平均を見
ると, 石崎川よりも天ノ川で濃度が高くなっている.
・ケイ酸態ケイ素
両河川において,4月に濃度が低かった(第6表).天ノ川では6月以降は 地点5と8で10 mg L-1以上と高い値を示した一方で,地点6,7,9で濃度が 低くなった.また,石崎川各地点の平均値は8.0〜9.0 mg L-1と地点間に差が ほとんど見られなかった.
4. 3 河川流量の算出
天ノ川と石崎川の河川流量は,函館土木現業所が定常的に観測している流 量観測データを用いた.天ノ川の最下流(地点1)から1000mほど上流に函館 土木現業所の流量観測ポイントがある.ただし,地点1の500mほど上流では,
上ノ国町土地改良区により上流の頭首工で取水された水の一部が天ノ川に戻 されている.そこで,5月から9月の取水量を上ノ国町土地改良区から入手し,
函館土木現業所の流量データと,上ノ国町土地改良区の取水量データの2つ のデータを合計したものを天ノ川の総流量とした.また,石崎川の総流量は 函館土木現業所が地点1で観測しているデータを用いた.両河川の月流量を 比較すると,融雪が生じる4月に特に流量が多くなっている.以降徐々に減 少し,8月に最低値を示した.また,石崎川の月流量は天ノ川の月流量に比 べて多く,その差が一番小さい4月におよそ3倍,最大の8月におよそ13倍 の値を示した.
4. 4 物質フローの算出
溶存鉄濃度・栄養塩濃度の結果と各河川の流量データに基づき,式(1),式(2)
を用い,毎月のフロー(単位: kg /月)を計算した.ここで言うフローとは,
それぞれの河川が沿岸に運搬する溶存鉄,栄養塩の総重量である.流量デー タは両河川ともに地点1付近においてのみ観測されているため,実際の物質 フローは両河川の地点1における値である.しかし,これらの地点は河口域 に近いため,ここで算出されたフローが直接海域に輸送されると考えた.
毎月の溶存鉄フロー = 月流量 × 溶存鉄濃度 (1)
毎月の栄養塩フロー = 月流量 × 栄養塩濃度 (2)
・溶存鉄フロー
溶存鉄フローの計算結果を第7表に示す.天ノ川は石崎川に比べ,溶存鉄 濃度が高かったが,調査月の合計フローは,天ノ川で22,810kg,石崎川で
30,314kgと石崎川で溶存鉄フローが大きくなった.これは石崎川の大きな河
川流量に起因する.
・各種栄養塩フロー
各種栄養塩フローの計算結果を第7表に示す.どの項目も,フローに換算 すると石崎川でフローが大きくなった.亜硝酸態窒素フローを見ると,天ノ
月 溶存鉄 N-NO2 N-NO3 N-NH4 P-PO4 Si-SiO2
天ノ川
1 2,115 2 829 71 3 56,316
2 1,697 4 596 46 12 38,465
4 11,074 52 5,201 261 252 98,741
6 1,671 6 213 25 26 23,597
7 1,215 4 187 24 17 13,079
8 1,036 4 270 20 14 7,881
9 2,659 9 546 42 37 32,026
10 1,343 7 296 24 29 30,314
石崎川
1 729 17 5,421 34 9 248,887
2 0 71 3,572 0 3 207,242
4 20,267 31 25,440 121 75 423,311
6 0 60 1,839 103 176 176,927
7 2,994 57 2,387 204 190 190,825
8 3,090 28 685 41 141 21,702
9 1,901 61 4,721 178 249 242,540
10 1,793 58 3,926 137 218 240,347
第 7 表 2河川における溶存鉄と各種栄養塩の月フロー(kg/月)
川では4月にフローが大きくなっているのに対し,石崎川では2月にフロー が大きくなった.
硝酸態窒素フローは両河川において4月に他の月の10倍ほどの値を示した.
アンモニア態窒素フローは,天ノ川では4月に他の月の10倍ほどの値となっ たが,石崎川では7月に大きくなった.
リン酸態リンフローは,天ノ川では4月に大きくなったが,石崎川でその 傾向は見られなかった.ケイ酸態ケイ素フローは,両河川において4月に最 大値となり,8月に最小値を示した.
4. 5 磯焼け分布調査 結果
天ノ川河口域沿岸で行った磯焼け分布調査の結果を第 4 図に,石崎川河口 域沿岸での調査結果を第 5 図にそれぞれ示した.磯焼け度は,磯焼け度0を◎,
1を◯,2を△,3を×として各観測ポイントに表示した.
第 4 図 天ノ川河口域の磯焼け度分布.
磯焼け度0:◎,1:◯,2:△,3:×
・天ノ川河口域沿岸
地点a-1からa-5では,海藻が全く生育していなかった.天ノ川左岸側にお いては,a-7の観測ポイント周辺で海藻が生育していたが,a-6,a-8地点では 磯焼け度は2,a-9,a-10地点では磯焼け度が3と,河口から離れるにつれ,
磯焼けが進行していた.なお,地点a-1からa-5周辺の底質は細砂であるが,
地点a-6からa-10の底質は岩石である.
・石崎川河口域沿岸
石崎川河口域沿岸においては,10地点中3地点で磯焼けが進行中であった.
河口の右岸に位置するIs-1〜Is-5の調査地点は,いずれも磯焼け度が0であり,
海藻の生育状態は良好であった.一方,左岸側においては右岸側に比べ,磯 焼け度が高くなっていた.なお,調査地点Is-1からIs-5までの河口から右岸
第 5 図 石崎川河口域の磯焼け度分布.
磯焼け度0:◎,1:◯,2:△,3:×
側にかけての底質は岩石と粗砂で覆われており,左岸側の底質は岩石である.
5 考 察
5. 1 土地利用が河川水質に及ぼす影響4. 2より,本流に限れば,溶存鉄,リン酸態リンの2項目は天ノ川で採取 した試料のほうが石崎川で採取した試料より濃度が高かった.一方,硝酸態 窒素は石崎川でより濃度が高い.そして,亜硝酸態窒素,アンモニア態窒素,
ケイ酸態ケイ素の3項目は,両河川でほぼ同様な濃度が得られた.以下では,
天ノ川と石崎川の溶存鉄濃度と各種栄養塩濃度に及ぼす土地利用の影響を考 える.
5. 1. 1 溶存鉄・リン酸態リン濃度に及ぼす土地利用の影響
石崎川の溶存鉄濃度は特に4月に高くなり,天ノ川の溶存鉄濃度は8月に 特に高くなっていた(第1表).石崎川で4月に河川水中の溶存鉄濃度が高く なったのは,4月に融雪水が河川に流入し,その水位を上昇させ,それによっ て地表付近に存在する鉄イオンを取り込むためと考えられる.一方,天ノ川 で4月よりも8月に特に濃度が高くなる傾向が見られたのは,流量や水位が 関係しているとは考えにくい.なぜならば,天ノ川の流量は4月以降だと8 月に最小値となり,9月に再び増加しているためである.
上ノ国の農作業は5月から始まり,8月に特に集中して行われる.天ノ川 流域は石崎川流域に比べより広く農地として利用されていることから(第3 図),天ノ川で4月の融雪期よりも8月に特に溶存鉄濃度が高くなった要因と しては,流域内に広がる水田や農地が原因となっている可能性がある.例え ば水田耕作に伴う湛水は,人工的な還元環境をもたらし,これによって土中 に存在する鉄が地表水中に溶出するであろう.つまり,水田などの還元的な 環境を作り出す土地利用が溶存鉄の供給地となったことが,結果として河川 水中の溶存鉄濃度を上昇させたことが示唆される.このような事例は,既に
藤島(2013)によって北海道の網走川流域において報告されている.網走川で は,農地起源の懸濁物質が降雨時に大量に河川に流下し,これが河川水中の 溶存鉄濃度を上昇させる現象が生じている.
リン酸態リンが天ノ川でより濃度が高い理由も土地利用の違いによって説 明できる.流域に占める宅地や農地が相対的に大きな天ノ川流域には,家庭 排水や農業肥料に起因するリンが河川に流入しやすい環境にある.これに対 し,石崎川流域はリンの供給源となる人為的な土地利用がほとんどないため,
河川水中のリン酸態リン濃度が低くなっているのであろう.
5. 1. 2 三態窒素濃度に及ぼす土地利用の影響
亜硝酸態窒素濃度およびアンモニア態窒素濃度は,2つの河川において,
季節・地点を問わずにほぼ一定の値をとったが,石崎川の地点3においての み高い値を示した(第2表,第4表).地点3の上流には,閉山となった中外鉱 山があり,この高い濃度の原因は,汚水処理済みの工場排水が流入していた 可能性がある.
硝酸態窒素は石崎川で観測された濃度がより大きかった.その理由ははっ きりしていないが,流域が広く広葉樹に覆われるという石崎川の特徴にある のかもしれない.なぜならば,植物由来の有機物が分解して生成された無機 窒素が土壌中に浸透した水や地表流によって河川へ運ばれるからである.
5. 1. 3 ケイ酸態ケイ素濃度に及ぼす土地利用の影響
ケイ酸態ケイ素は,他の項目とは異なり,2河川間,上流−下流,季節的 にいずれも変化が少なく,観測を通じて高濃度かつ一定の値を示した.それ ゆえ,ケイ酸態ケイ素は,土地利用などの影響を受けずに,流域の土壌・基 盤岩から普遍的に供給されていると考えられる.
5. 2 河口域沿岸への物質供給と磯焼けとの関係
溶存鉄濃度は,天ノ川で採取した試料の方が石崎川で採取したものよりも 高く,栄養塩濃度は溶存鉄濃度に対しやや複雑な挙動を示した.しかし,4. 4 で示したように,各種成分の月毎のフローを計算したところ,天ノ川よりも 流量が多い石崎川の方で溶存鉄フロー,栄養塩フロー共に大きくなった(第7 表).これより,天ノ川よりも石崎川からより多くの栄養塩・溶存鉄が河口域 沿岸へと流出していることがわかる.
ところで,天ノ川の流域面積は259.80km2,石崎川の流域面積は174.20km2 である.流域面積の小さな石崎川の流量が,より大きな流域を持つ天ノ川の 流量を上回っているのは,隣接した両地域に気候条件の違いがないと仮定す ると,森林の種類が異なるためだろう.土地利用・土地被覆分類図(第3図)
からもわかる通り,流域のほぼ全体が広葉樹林である石崎川流域に比べ,天 ノ川流域には針葉樹林が多く自生している.針葉樹は広葉樹に比べ蒸発散量 が多く(小松ら,2005),結果として河川流出量が減少する.このことから,天 ノ川・石崎川の2河川においては,流域の林相が河川の流量を変化させ,最 終的に沿岸へと流出する物質の量を決めていると言えよう.
一方,磯焼け分布調査の結果(第5図)は,石崎川の右岸で磯焼けの進行が 遅く,左岸で進行していることを示している.この理由は,比重の軽い河川 水が地衡流によって河口右岸に輸送され,その結果,河川水中の溶存鉄と栄 養塩が河口右岸の海藻類の光合成に選択的に寄与しているからと考えた.
本来であれば,溶存鉄濃度や栄養塩濃度の高い天ノ川河口域沿岸において も右岸側にこれらの物質が運搬され,これによって海藻が生育しているので あろう.しかし,4. 5で述べたように,天ノ川河口域では,右岸側で磯焼け がより進行していた.この理由は,天ノ川の左岸に1979年から1986年にか けて,大間漁港の北防波堤が建設されたためであろう.北防波堤の建設以降,
河川から流出する土砂が河口域沿岸に堆積するようになったと言われており,
それが原因となって元々は岩場であった天ノ川河口域右岸の底質が細砂へと
変化したからである.海藻は岩や岩盤に着床し生育するが,砂場には着床す ることができない.
6 結 論
本研究では,陸域の土地利用・土地被覆状態と磯焼けとの関係を解明する ことを試みた.宅地・農地としての利用が進んでいる天ノ川流域と,河口付 近より上流はほとんど土地利用が進んでいない石崎川を比較対象とし,河川 水質,各河川から河口域沿岸へ年間に流出する溶存鉄と栄養塩のフロー,沿 岸の磯焼け状況の比較を行った.以下は,各調査から得られた結論である.
(1) 河川水中の溶存鉄濃度・リン酸態リンは,土地利用の進んだ天ノ川で高く,
石崎川で低かった;
(2) 河川水中の硝酸態窒素濃度は,広葉樹林に広く覆われる石崎川流域で高 かった;
(3) 石崎川の支流において,閉山した鉱山の処理済み廃水が,亜硝酸態窒素 濃度およびアンモニア態窒素濃度を高めている可能性がある;
(4) 河川流量は流域面積の小さい石崎川で大きく,天ノ川で小さかった.そ の理由は,天ノ川流域が蒸発散量の多い針葉樹で覆われ,石崎川流域が 相対的に蒸発散量の少ない広葉樹で覆われているためである;
(5) 濃度と流量の積で決まる溶存鉄と栄養塩フローは,流量の効果が効いた ため,石崎川でより多かった;
(6) 沿岸域の海藻の繁茂状況は,石崎川右岸地域で最も良好であった.その 他の地域は,多かれ少なかれ磯焼けが進行していた;
(7) 石崎川河口の右岸域で磯焼けが進行していない理由は,石崎川を通じて 輸送される豊富な栄養塩と溶存鉄が,沿岸の地衡流によって選択的に右 岸に供給されているためであろう;
(8) 天ノ川河口周辺で磯焼けが進行しているもう1つの理由は,防波堤建設
に伴う堆砂によって,海藻が着床する岩場が埋没したためと思われる.
以上,本研究によって,河川流域の土地利用が沿岸の磯焼けに与える影響 をある程度明らかにすることができた.今後の課題としては,水田,畑地,
針葉樹,広葉樹,市街地といった土地利用・土地被覆毎の河川への物質供給量・
供給プロセスの相違を明らかにすること,および,河川から河口域に輸送さ れた物質の動態,海藻の栄養塩・溶存鉄取り込み過程の解明などがある.
【参考文献】
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(なつめ かな・北海道大学大学院環境科学院修士課程)
(さわがき たかのぶ・北海道大学大学院地球環境科学研究院助教)
(しらいわ たかゆき・北海道大学低温科学研究所准教授)
The Doshisha University Economic Review, Vol. 65 No. 3 Abstract
Kana NATSUME, Takanobu SAWAGAKI and Takayuki SHIRAIWA, Impact Assessment of Land Use and Land Cover on River Water Quality and Sea Desertification in Estuary Areas: An Example from Kaminokunicho, Southern Hokkaido
Evaluations of water quality and land use, the mapping of land cover, and investigations into sea desertification were made at two river basins̶namely, the Amanogawa and Ishizakigawa watersheds, in southwestern Hokkaido̶in order to assess the impacts of land use and land cover changes on river water quality and estuary ecosystems. It was found that heavier land use in the Amanogawa watershed had increased the volumes of soluble components in the river water.
However, the total discharge of various soluble components was comparatively larger in the Ishizakigawa watershed, due mainly to its larger water discharge; this has resulted in a relatively lower degree of sea desertification in the estuary area of the Ishizakigawa watershed.