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カナダにおける株主の損害賠償請求権等の会社倒産時の劣後化

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(1)

   同志社法学 六七巻二号五〇九八六三

           

 

   

   

     

   

  

     

   

(2)

   同志社法学 六七巻二号五一〇八六四

 

  ﹁

   

はじめに

  会社の不実開示によって高騰した価格で株式を取得した場合など、株主が会社に対して株式に係る債権を有することになるときがある。会社が倒産した場合、このような株式に係る債権は如何なる処遇を受けるべきであろうか 1

  この問題に関して、二〇〇七年改正カナダ倒産法は、会社の持分(

sh ar e

)などを指す﹁エクイティ証券﹂(

eq uit y in te re st

)、そして、エクイティ証券に関連するあらゆる債権を指す﹁エクイティ債権﹂(

eq uit y cla im

)という概念を規定し、エクイティ債権は劣後的処遇を受けるものとしている。すなわち、非エクイティ債権者が満足を得る前にエクイティ債権者に対して分配を行うことは禁止されており、また、エクイティ債権者に帰属する価値が存在しない場合、エクイティ債権者は再建計画の承認に関して議決権を有しないものとされている。したがって、エクイティ債権が存在せずとも債務超過である場合、前述の不実開示に係る損害賠償請求権は分配および議決権が否定されることになる。

  本稿は、かかる二〇〇七年改正カナダ倒産法の意義を検討することを目的とする。具体的には、如何なる根拠から劣後的処遇が定められたのか、また、かかる根拠の反射として如何なる債権が劣後的処遇を受けることになっているのか、そして、如何にして倒産手続きにおいて劣後的処遇が実現されているのかという点を中心に、同法の意義を明らかにすることを試みる。

(3)

   同志社法学 六七巻二号五一一八六五   以上に関して、本稿では次のように叙述を進める。まず、二〇〇七年改正カナダ倒産法の意義を検討するための前提作業として、同倒産法上の会社倒産手続きを概観するとともに、デットとエクイティの性質決定に関する連邦最高裁の判例、および、株式に係る債権の性質決定に関する先例を紹介する(第一章)。次に、倒産法改正時の議論を見た上で、未施行に終わった二〇〇五年改正法、および、二〇〇九年に施行された二〇〇七年改正法の内容および趣旨を紹介する。さらに、二〇〇五年改正法および先例との相違を検討し、また、二〇〇七年改正法施行後の判例および同改正法の影響に関する指摘を紹介することで、二〇〇七年改正カナダ倒産法の意義を明らかにする(第二章・第三章)。最後に、本稿の内容を纏めて結びに代える。

第一章  序    論

第一節  カナダ倒産法上の会社倒産手続きの概要

  連邦国家であるカナダでは、﹁

B an kr up tc y an d In so lv en cy

﹂に関する立法権限は連邦議会が有しており 2

、会社の倒産手続きは主として、破産・支払不能法(

B an kr up tc y a nd In so lv en cy A ct ; B IA

)、および、会社債権者調整法(

C om pa nie s’

C re dit or s A rr an ge m en t A ct ; C C A A

)という連邦法によって規律されている 3

1 、 破 産 ・ 支 払 不 能 法

  破産・支払不能法は、清算型手続きとして﹁破産﹂(

B an kr up tc y

)を、また、再建型手続きとして﹁提案﹂(

P ro po sa l

)を定めている。このうち﹁提案﹂には、債務の一部免除(

C om po sit io n

)、支払猶予、および、スキーム・オブ・アレ

(4)

   同志社法学 六七巻二号五一二八六六

ンジメントの提案が含まれる

)4

  提案の開始要件は、会社が﹁

In so lv en t

﹂であることである。同概念は具体的には、弁済期が一般的に到来する債務について理由の如何を問わず弁済できない場合、弁済期が一般的に到来する債務であって通常の事業上の当座の債務であるものについて支払いを停止した場合、または、弁済期が到来した債務と未到来の債務の合計額が全資産の公正価値を上回る場合(債務超過の場合)を言う(BIA五〇条(1)項・二条

“In so lv en t P er so n”

)。  提案においては、担保債権者をその対象に加えることもできるが、次述する会社債権者調整法上の手続きと異なり、無担保債権者全員を対象としなければならない

)5

(BIA五〇条(

1

2

)項)。

  提案の内容は債務者によって立案され、債権者集会において議決権を行使した無担保債権者の頭数過半数が賛成し、かつ、賛成した無担保債権者の債権総額が議決権を行使した無担保債権者の債権総額の三分の二以上である場合、債権者によって承認されたものと見做される(BIA五四条(2)項(d)号)。担保債権者についても同様であり(BIA六二条(2)項)、また、債権者についてクラス分けがなされる場合は各クラスにおいて同要件を満たさなければならない。そして、裁判所は、内容の合理性および債権者の総体的利益との適合性の観点から債権者が承認した提案を審査する(BIA五九条(2)項)。裁判所が認可した提案は、無担保債権者全員を拘束する 6

(BIA六二条(2)項(a)号)。

2 、 会 社 債 権 者 調 整 法

  会社債権者調整法は、五〇〇万ドル以上の負債を有する会社のみが用い得る再建型手続きとして、﹁和解﹂(

C om pr om ise

)、および、﹁アレンジメント﹂(

A rr an ge m en t

)を定めている。和解は、合意による債務の一部免除を指す。一方、アレンジメントは、和解や和解類似の手続きだけでなく、債務者の再建のためのスキーム一切を包含するもので

(5)

   同志社法学 六七巻二号五一三八六七 あるところ、実務的には両者を区別する意義は乏しいとされている 7

。そこで、以下では、会社債権者調整法上の倒産手続きについてアレンジメントにのみ言及する。

  アレンジメントの開始要件は、端的には、債務者が﹁

B an kr up t o r I ns olv en t

﹂であることである(CCAA二条

“D eb to r C om pa ny ”

)。もっとも、破産・支払不能法と異なり、その意義は定義されていない。   アレンジメントにおいては、無担保債権者、担保債権者または両者をその対象とすることができるため(CCAA四条・五条)、立案者は対象債権者を選択することになる。

  アレンジメントの内容は債務者または債権者によって立案され、その対象となる無担保債権者の集会において議決権を行使した無担保債権者の頭数過半数が賛成し、かつ、賛成した無担保債権者の債権総額が議決権を行使した無担保債権者の債権総額の三分の二以上である場合、債権者によって承認されたものと見做される(CCAA六条)。担保債権者についても同様であり、また、債権者についてクラス分けがなされる場合は各クラスにおいて同要件を満たさなければならない。クラス分けの妥当性は、利益の共通性という観点から審査される(CCAA二二条(2)項)。そして、裁判所は、アレンジメントの認可に関して裁量を有しており、その実行可能性や利害関係者の利益のバランスを審査している 8

(CCAA六条(1)項)。裁判所が認可したアレンジメントは、その対象債権者を拘束する(CCAA六条(1)項(a)号)。

  なお、アレンジメントにおいては、アメリカ連邦倒産法の第一一章手続きにおけるクラムダウン制度に相当する制度が存在しないため、否決したのが下位のクラスのみである場合でもアレンジメントの内容は不承認となる(この点は、破産・支払不能法上の提案手続きに関しても同様である)。したがって、クラス分けは重要な鍵を握ることになる。もっとも、一九九四年の文献ではあるが、

L oP uc ki

教授と

T ria nt is

教授は、﹁上位の権利者が完全な満足を得るのでなけ

(6)

   同志社法学 六七巻二号五一四八六八

れば下位の権利者は分配を受けることができない﹂という絶対優先原則に則った内容のアレンジメントが債権者らに否決されることは滅多にないと指摘しており、また、絶対優先原則の下では分配されるべき利益を有しない権利者に関しては、デットロックによる清算手続きへの移行に伴う分配ゼロという帰結を背景として、小額の分配をアレンジメントの内容とすることで、賛成するように説得することが多いという証言を紹介している 9

。さらに、彼らは、債権者間の協調を促す経済的・文化的な力がカナダには存在するという証言を紹介した上で、そのような制約が失われた場合には反対するクラスを拘束する法的なメカニズムが導入されるであろうと指摘している ₁(

。また、

Sa rr a

教授は、クラスの分け方次第でクラムダウンと実質的に同等の効果を得うることを指摘している ₁₁

。すなわち、アレンジメントへの反対が予想される債権者を一般債権者のクラスに分類してクラス内の少数派とすることにより、多数派たる一般債権者の判断の拘束を受けさせることができることになる。

  提案とアレンジメントは、後者の方が手続きの柔軟性が高いなどの相違点がある ₁(

。会社は基本的にいずれの手続きも選択可能であるが、規模の大きい会社は通常は後者によって再建を図っており、また、本稿で検討する判例も後者に関するものが殆どであるため、以下では主としてアレンジメントに言及する。

3 、 会 社 倒 産 手 続 き に お け る 株 主 の 地 位

  株主は大きなリターンを得る可能性と引き換えに、会社倒産時は債権者の満足後にのみ分配を受ける ₁₃

。かかる優先順位の帰結として、会社が債務超過の場合、株主に対する分配を内容としないアレンジメントは、公正・衡平と評価される ₁₄

  アレンジメントの承認に係る議決権に関しては、株主は裁判所が特に命じた場合に議決権を有すると規定されている

(7)

   同志社法学 六七巻二号五一五八六九 (CCAA四条)。債務超過の場合、すなわち、株主に帰属する利益が存在しない場合、議決権を付与すれば相応の経済的利益を有しない株主が拒否権を有し得ることになって不当な利益の引き出しを行い得ることになるため ₁(

、議決権は否定される ₁(

第二節  デット・エクイティの性質決定

  前述のようにアレンジメントにおける分配や議決権に関しては、その者が債権者か株主か、すなわち、その者の有する権利の性質がデットかエクイティかが重要な鍵を握る。したがって、権利の内容が中間的である場合にはデットとエクイティを如何に区別するか、また、権利の内容が混成的(

hy br id

)である場合には分解評価するか一体評価するかが問題となる。この点に関する判例として、一九九二年の連邦最高裁CDIC判決がある ₁₇

【 事 案 の 概 要 】

  カナダ商業銀行に対する金融支援のために包括的合意がなされ、銀行団は、簿価五億ドルの不良債権を対象資産とするローン・パーティシペーションに係る権利および全て行使した場合には同商業銀行株式の七五%を所有することになる新株予約権を取得し、対価として二・五億ドルを拠出した。同合意において銀行団は、対象資産およびカナダ商業銀行の収益から同拠出額を上限とする支払いを受ける権利を有していた。また同合意では、同支払いが同拠出額に満たない場合、銀行団は同商業銀行に対する補償請求権を取得し、同商業銀行が倒産した場合、同請求権は一般債権と同順位と扱われるものとされた。その後、同商業銀行が倒産したため拠出された二・五億ドルの性質が問題となり、原々審裁判所は出資、原審裁判所は貸付と判断した。

(8)

   同志社法学 六七巻二号五一六八七〇

【 判 旨 の 概 要 】

  (1) 性質の決定方法   契約解釈と同様、本件の性質決定は、当事者の意図の判断を通じてなされるべきである。その作業は主として、その意図を反映するために当事者が用いた文言の意味に基づいてなされる。文言だけでは合意の真の性質の決定に不十分である場合や、特殊な性質決定のために外部の補助が必要である場合は、許容性のある周辺事情を考慮することが適切となる(

pa ra . 52

)。

  二・五億ドルの拠出に係る包括的合意については、デットとエクイティへの分解整理も試み得るが、混成的な性質を有しつつも実質的には債権者と債務者の関係をもたらす合意とも把握し得る。金融・資本市場は、市場参加者のニーズや利益に合致するように創出される様々な投資商品や証券に関して極めて創造的である。裁判所が、エクイティ的性質が存在しないかのように無視すべきなのは、あるいは、取引を全体として出資と性質決定すべきなのは、ある金融取引において合意の実質を変更することなくデットとエクイティが併存するということが容認され、しばしば要求され、適切でもあるからである。さらに、性質決定を行う場合、合意の各要素に全く同じ比重が与えられることにはならないからである。エクイティ的性質が存在するとしても、副次的に過ぎず、取引の本質に関して決定的ではないということがあり得るのである。裁判所は、特定の取引の実質を判断する場合、実際には付随的または副次的に過ぎない要素に囚われてはならないのである(

pa ra . 55

)。

  (2) 本件包括的合意の性質   原々審裁判所は、二・五億ドルの拠出の全体的性質の決定において新株予約権の存在を極めて重視した。しかし、そ

(9)

   同志社法学 六七巻二号五一七八七一 の行使には銀行法の改正および授権資本枠の増加に係る株主と財務省の同意が必要であったところ、行使可能性は極めて不確実であって、その実質は付随的な甘味料に過ぎない。行使可能性が極めて不確実な本件新株予約権は、本件におけるデットの強い兆候を覆すには明らかに不十分である(

pa ra . 57

)。

  原々審裁判所はまた、カナダ商業銀行の収益が銀行団への支払原資の一つであったところ、銀行団は収益に参加することになると指摘した。しかし、銀行団への支払額の上限は銀行団の拠出額であるため、返済を受けるだけである。したがって、支払原資は本件拠出を資本出資と判断する根拠とはならない(

pa ra . 58

)。

  資金が出資として拠出されたことを支持する合意中の明示の文言が存在しないこと、ならびに、拠出額の返済を規定する本件合意の各条項、および、補償請求権の順位条項は、二・五億ドルの拠出の性質が貸付であることを支持する(

pa ra . 64

)。

【 検 討 】

  連邦最高裁は、性質決定は当事者の意図の判断を通じてなされるとし、本件包括的合意の各条項を検討することによってそれが貸付にあったことを指摘した。本判決は実質的には、次のような二段階の判断を行っている。すなわち、第一に、ローン・パーティシペーションに係る権利の性質を貸付と評価した上で、第二に、貸付と新株予約権が併存する包括的合意についてその実質を債権者・債務者の関係をもたらすものと評価している。

  第一の点は、中間的な権利の性質決定の問題であるが、連邦最高裁は、銀行団に対する支払額の上限が拠出額であったこと、すなわち、﹁収益への参加権﹂を銀行団が有していなかったことを重視している。このことは、二・五億ドルが貸付であるとしても分配は劣後するという予備的主張に対する判断においても確認できる。すなわち、﹁事業の遂行

(10)

   同志社法学 六七巻二号五一八八七二

による収益の分配﹂を受領する貸付について倒産時の分配は一般債権に劣後すると規定しているオンタリオ州パートナーシップ法四条の適用が争われたが ₁(

、連邦最高裁は、かかる貸付は、事業の収益から支払われる額に上限が設定されていない貸付、または、元本額とは無関係の上限が設定されている貸付を言うとして退けている(

pa ra . 77 , 82 - 83

)。このように本判決は、デットとエクイティの区別について、利益への参加権の有無、具体的には、事業の収益から支払われる額に関する上限の有無ないしその内容が重要な基準となることを示している。

  第二の点は、混成的な権利の性質決定の問題であるが、連邦最高裁は、デットとエクイティが併存するが合意の実質は維持されるということは容認され適切でもあるとした上で、性質決定においては合意の各要素について適切な比重が与えられるべきであるから、エクイティ的性質が合意の実質との関係で付随的なものに留まるのであれば取引全体をデットと評価すべきとした。本件新株予約権は、行使した場合に発行済株式の七五%を所有することになる点で特殊な存在感を有していたが、行使可能性が極めて乏しかったため、付随的要素とされた。したがって、行使可能性が現実に存在しており、さらに、当事者の意図として貸付と出資を独立的に行う意図が認定された場合には、二・五億ドルについて分解整理がなされたものと考えられる。

第三節  株式に係る債権の性質決定に関する先例

  権利の性質がエクイティと決定されたとしても、同権利に係る債権の性質は別途問題となり得る。すなわち、エクイティから一般債権が発生する可能性が問題となる。そこで本節では、⑴不実開示に係る損害賠償請求権、⑵引受人等の会社に対する補償請求権、⑶自己株式の取得に係る対価請求権、⑷配当請求権・判決債権の性質に関する先例を紹介する。このうち⑴に関する先例については、本稿の関心との関係上、詳細に取り上げる。

(11)

   同志社法学 六七巻二号五一九八七三   なお、予め述べれば、先例では⑵と⑷の債権の性質は一般債権とされていたが、二〇〇七年改正法によってエクイティ債権へと変更されている。

1 、 不 実 開 示 に 係 る 損 害 賠 償 請 求 権

  かかる債権の性質決定に関する主導的先例は、二〇〇〇年の

B lu e R an ge

判決 ₁₉

である。

【 事 案 の 概 要 】

  B社は、R社の株式を証券取引所の市場で一部取得し、さらに自己株式を対価とする公開買付けを行い、その後同社の単独株主となった。B社の主張によればその後、R社が不実開示を行っていたこと、および、同社の株式が実質的に無価値であることが明らかとなった。B社は、アレンジメントにおいて、不実開示に係る損害賠償請求権として、①公開買付けの対価として交付した自己株式に係る一億五〇〇〇万ドル ((

、②証券取引所の市場で取得した株式に係る七二万ドル、③株式の取得に関する専門家の雇用等の取引費用に係る三七〇万ドルの債権を一般債権として届出た。

【 判 旨 の 概 要 】

  本件債権については、一般債権に劣後すべき幾つもの政策的理由が存在する(

pa ra . 28

)。第一に、倒産時、株主は一般債権者に劣後することが原則である。本件債権の実質は株主の出資の返還(

re tu rn o f c ap ita l

)であるところ、一般債権として処遇すれば一般債権者に不利益を生じさせることになる(

pa ra . 29 - 30

)。

  第二に、一般債権者は、株主よりも高い優先順位を与えられているという期待の下に取引を行っているものと考えら

(12)

   同志社法学 六七巻二号五二〇八七四

れる(

pa ra . 33

)。B社が一般債権者と同順位となることを許容すれば、会社・一般債権者間の取引の前提に基礎的変更が生じ、一般債権者は担保の必要性の再検討を迫られることになる(

pa ra . 35

)。株主と一般債権者が引受けているリスクの相違は、一般的な意味で関係するだけでなく、本件のB社の行動によっても例証される。すなわち、B社は、会計帳簿の閲覧を拒絶されたため、入手することが賢明であった情報を取得せずに敵対的公開買付けを行った。債権者は、R社が支払能力の欠如に関して不実開示を行っていたとすれば既に損失を被っているわけであり、B社のリスク・テイクに関してその帰結の分担を要求されるべきではない(

pa ra . 34

)。

  本件債権を一般債権と同順位とする場合、多くの倒産事件において、不満を有する株主が不実開示や詐欺を主張するようになることが予想される。特に、﹁倒産状態に陥った会社に意図的に投資する者はいないのであり、会社の衰運について適切に開示すべきであった﹂と主張する機会は幾らでも存在する。アレンジメントにおける債権の査定手続きが極めて複雑となることは、単独では劣後化を根拠づけないが、考慮要素の一つとなる(

pa ra . 45

)。

【 検 討 】

  本判決は、損害賠償が実質的には一般債権者の利益を害する出資の返還となることを主たる根拠として本件の債権の劣後化を命じており(

pa ra . 14

)、③の取引費用についても同様の評価を行っている。また、本判決は、帰結主義的な根拠として、株主の損害賠償請求権を一般債権とした場合、会社・一般債権者間の取引の前提に基礎的変更が生じ得ること、および、多くの株主が同債権の存在を主張することにより倒産手続きに対して過大な負担が生じ得ることを指摘している。

  なお、二〇〇一年の

M er it E ne rg y

判決 (₁

では、会社が費用計上の放棄を懈怠した場合の課税上の損失に関する補償条

(13)

   同志社法学 六七巻二号五二一八七五 項を付してフロー・スルー株式(探鉱費用について会社がその計上を放棄して株主が自己の費用として計上できる株式)を取得した者について、目論見書の不実記載に係る損害賠償請求権および補償の不履行に係る損害賠償請求権の処遇が問題となったが、裁判所は、

B lu e R an ge

判決および連邦最高裁CDIC判決を先例とした上で(

pa ra . 22 , 27

)、前者については実質的には出資の返還に他ならず(

pa ra . 49 - 50

)、また後者についてはデット的性質を有するが補償条項はプレミアムとして取得価格に反映されており株主としての関係に付随するものに過ぎないとして(

pa ra . 53 - 54 , 81

)、劣後化を命じている。

2 、 引 受 人 等 の 会 社 に 対 す る 補 償 請 求 権

  不実開示に関して引受人や監査人、取締役などが株主に対して損害賠償責任を負う場合、それらの者が契約等に基づいて会社に補償を請求することがある。

M er it E ne rg y

判決では、係属中の訴訟に係る未確定の損害賠償責任や訴訟費用などの損失に係る補償請求権の処遇に関して、未確定債権も立証資格がある債権(

pr ov ab le c la im

)であるという理解の下、

B lu e R an ge

判決に照らして次のように判断された。

  すなわち、①引受人等は会社に出資しておらず、債権は補償契約上の存在であって出資の返還を実現するものではなく(

pa ra . 64 - 66

)、また、株主の損害賠償請求権の発生と引受人等の補償請求権の発生は独立であるから、補償を通じて間接的に株主が損害を回復するという結果が生じ得ることを重視すべきではなく(

pa ra . 67 , 70 - 71

)、さらに、②補償契約はリスク管理に関する必要かつ適切な商取引上の一般的存在であるところ、かかる債権の劣後化は引受人等と会社の取引の前提に基礎的変更を生じさせ得るものであり、また、本件では同契約が存在しなければ引受人が公募に参加しなかったことが示唆され、そして、③かかる債権は契約上のものであるため、劣後化を否定しても、水門が開かれて多

(14)

   同志社法学 六七巻二号五二二八七六

数の株主が損害賠償請求権を主張し得ることにはならない(

pa ra . 67

)として、劣後化が否定された。   このように同事件では補償請求権が出資の返還を間接的に実現する可能性が問題となったが、裁判所は、損害賠償請求権の存在が常に補償請求権を導く訳ではないとして、その可能性を積極的には考慮しなかった。もっとも、補償契約が存在する場合、出資の返還が間接的に生じることは一種必然であるところ、二〇〇七年改正法では同補償請求権はエクイティ債権と性質決定されている。

3 、 自 己 株 式 の 取 得 に 係 る 対 価 請 求 権

  自己株式の取得に係る対価請求権に関する先例としては、一九九六年の

C en tr al C ap ita l C or p.

判決がある。同判決は、支払不能時や債務超過時は自己株式の取得が会社法上禁止されることを指摘し、取得請求権付優先株式について倒産時の権利行使を否定し、債権の存在自体を否定した ((

  会社法上適法に自己株式が取得されていた場合に関する先例は見当たらないが (₃

、債権は会社法の定める優先順位に照らして有効に発生しているため、

B lu e R an ge

判決の主たる根拠である﹁一般債権者の利益を害する出資の返還﹂と評価できるかは明らかではないように思われる。もっとも、二〇〇七年改正法は特に制限を加えずに自己株式の取得に係る対価請求権をエクイティ債権と性質決定している。

4 、 配 当 請 求 権 ・ 判 決 債 権

  適法に宣言された配当に係る債権は、先例では、一般債権と性質決定されていた。例えば、二〇〇八年の

I. W ax m an

& S on s

判決は、同事件における抑圧行為に係る損害賠償請求権について、その実質は会社が倒産状態に陥る何年も前

(15)

   同志社法学 六七巻二号五二三八七七 に宣言された配当であるとした上で、配当は出資の返還(

re tu rn o f c ap ita l

)ではなく資本収益(

re tu rn o n ca pit al

)であると指摘して、一般債権と性質決定していた (₄

  また、同判決は、同事件の債権が一般債権として扱われる理由として判決の存在も指摘している。すなわち、判決によって債権の性質は一般債権となると指摘しており、そしてこの点で、損害賠償請求訴訟が係属中であった

B lu e R an ge

判決および

M er it E ne rg y

判決を区別していた ((

5 、 小 括

  株式に係る債権の処遇に関する主導的先例は二〇〇〇年の

B lu e R an ge

判決であり、同判決は問題の債権が一般債権者を害する出資の返還を実質的に実現するものであるかを主たる判断基準とした。また、

M er it E ne rg y

判決は、補償請求権について同基準を適用した上で、間接的な出資の返還の可能性を消極的に評価した。さらに、

I. W ax m an & S on s

判決は、有効な配当請求権について、出資の返還ではなく資本収益であるとして一般債権と評価した。このように、実質的な出資の返還が実現されるか否かを主たる基準とする点では先例は整合的に把握できるものであった。

  株式に係る債権の劣後化の根拠については、

B lu e R an ge

判決が、実質的な出資の返還による一般債権者の不利益に加えて、二つの帰結主義的な根拠を指摘するに留まっていた。すなわち、株式に係る債権の処遇について当時カナダでは殆ど議論がなされておらず ((

、例えば二〇〇三年の

A T & T C an ad a In c.

判決は、﹁エクイティ債権の劣後化法理、特に明確な判断基準を備えた当該法理の存否は、広範な社会的影響を伴う難解かつ複雑な政策問題である。﹂と指摘していた (₇

(16)

   同志社法学 六七巻二号五二四八七八

第二章  株式に係る債権の劣後化規定の創設

第一節  株式に係る債権の処遇に関する議論

  株式に係る債権の処遇に関する規定の創設は倒産実務家が主導し、証券委員会や機関投資家は関与しなかった ((

。すなわち、カナダ破産研究所とカナダ破産・再建専門家協議会が設置した事業倒産法改正合同委員会は、二〇〇二年の報告書において次のように指摘した (₉

事と実が反映されるべきいうう原則は、さらに ₃(   ﹁しテに配分のへ者有所ィイいクエるけおにき続手産関とて位はデットよりも優先順倒た低い権利の取引を行っの

、エクイティ証券を基礎としてまたはそれに関連して生じたあらゆる債権をエクイティ債権として処遇する改正提案六二 ₃₁

を基礎付ける。当該債権の実例は、株主の損害賠償請求権である。多くのカナダの会社は、カナダ法が同債権の劣後化を明確には規定していないため、カナダ法ではなくアメリカ法に基づく再建を選択している。株主の損害賠償請求権が無担保一般債権者の債権と同順位となるという明らかに不公正な帰結への懸念が結果的に存在している。﹂

  そして、二〇〇五年倒産法改正法の基礎となった ₃(

上院銀行・通商・貿易常任委員会の二〇〇三年の報告書は、次のように指摘した ₃₃

  ﹁ 

:

邦いる︹筆者注連倒ア産法五一〇条(b)項てし定クメリカ倒産法は、﹁エイ規ティ債権の劣後化﹂を ₃₄

︺。⋮⋮

(17)

   同志社法学 六七巻二号五二五八七九 カナダの倒産制定法は、株式ないしエクイティに係る損害賠償請求権の劣後化を規定していない。これが、カナダの会社がカナダではなくアメリカで再建を図る理由と解される。﹂

。﹂満手建再はでまる得をがき者権債の他のそ、び続足やを分るあできべす規は法定配こいなきで加参にと で後すべき正あり、公に劣担権債保担無びよお権債保お性クよ債びよお、性後劣の有保権者ィ鑑明テ性に確み、エイ ではこのことを規定すべきはある。すなわち、当該債権、法りしさて倒産手続きあら排除かれことを受忍すべきでる 者領したるはその有す受をィテイクエくなはでト権債よにもと権債い低が位順先優りつデ権債る係にトッデていッ   ﹁。企エ、み鑑に事祥不業のイ米北の時近、は会員委クテるてえ考ときべるれさ決解っィよに法立は題問の権債当   このように両報告書の内容は、株式に係る債権の劣後化の理由として株主の劣後性を指摘しているが、劣後性が貫徹されるべき根拠については公正性を指摘するだけとなっており、

B lu e R an ge

判決が指摘したような帰結主義的な根拠は示されていない。もっとも、両報告書はアメリカ法との相違に伴う法廷地漁りを指摘しており、とりわけ上院委員会報告書はそれを冒頭で指摘しており、かかる懸念が劣後化規定創設の実質的な理由と解される。この点に関しては

Sa rr a

教授も、カナダの殆どの上場会社はアメリカでも活動しているところ、同一の債権について両国において倒産法上の処遇が異なる場合は会社あるいは会社グループの再建が困難となり得るため、政策的検討が必要であると指摘していた ₃(

  なお、株主の劣後性が貫徹されるべき根拠に関して、第三章・第二節で紹介する

Sin o- F or es t

判決の原審裁判所は、株主が債権者と異なり事業成功による利益を無制限に把握できることを指摘しており、同指摘はその後の判決においても踏襲されている ₃(

(18)

   同志社法学 六七巻二号五二六八八〇

第二節  二〇〇五年倒産法改正法

  株式に係る債権の劣後化規定の創設を含む、倒産法の包括的改正法案(

B ill C - 55

)は、二〇〇五年六月に議会に提出され、同年十一月に可決された ₃₇

。しかし、議会の解散が迫る中、急いで可決されたため、十分な審議が行われなかった ₃(

。そのため、二〇〇五年改正法は、上院銀行・通商・貿易常任委員会の要求によって未施行に終わったが ₃₉

、次の規定の創設を予定していた。

  第一に、破産・支払不能法に関しては、破産手続きについて、﹁債権者は、破産者の持分もしくはユニットの取得もしくは売却の取消しから生じた債権または破産者の持分もしくはユニットの取得もしくは売却から生じた損害賠償請求権について、その他の債権者の全債権が満足を得るまで配当を受けない。﹂と定められる予定であった(二〇〇五年改正予定BIA一四〇・一条) ₄(

。また、提案手続きについては、同債権を有する者は同債権に関しては議決権を行使できないことが定められる予定であった(二〇〇五年改正予定BIA五四条(2)項(a)号(ⅰ)) ₄₁

  第二に、会社債権者調整法に関しては、﹁債務者会社の持分もしくはユニットの取得もしくは売却の取消しから生じた債務者会社に対する債権または債務者会社の持分もしくはユニットの取得もしくは売却から生じた損害賠償請求権を有する債権者は、当該債権について同一クラスの債権者となり、債務者会社に係る和解またはアレンジメントに関して第四条に基づいて開催される集会において当該クラスの構成員としては議決権を行使できない。﹂と定められる予定であった(二〇〇五年改正予定CCAA二二条(3)項) ₄(

  これらの規定の趣旨について、カナダ産業省倒産監督局(

In du st ry C an ad a, O ffi ce o f t he S up er in te nd en t o f B an kr up tc y C an ad a

)は、事業に投資した者は事業の運営に伴う収益と損失のリスクを積極的に引き受けているのであるから、会社倒産時は、不実開示による損害を会社から回復すべきではなく ₄₃

、また、株式に係る巨額の損害賠償請求権

(19)

   同志社法学 六七巻二号五二七八八一 によってその者が決議を支配する可能性があるため、議決権の排除によって再建計画立案時の交渉力を消滅させる必要があると説明している ₄₄

第三節  二〇〇七年倒産法改正法

1 、「 エ ク イ テ ィ 債 権 」 概 念 の 導 入

  倒産法の包括的改正法案は、二〇〇七年九月に

B ill C - 12

として再提出された。そして、同法案は同年十二月に可決され、二〇〇九年九月十八日に施行された ₄(

  二〇〇七年改正法は、破産・支払不能法と会社債権者調整法の双方について、﹁エクイティ証券﹂(

eq uit y in te re st

)と﹁エクイティ債権﹂(

eq uit y c la im

)という概念を導入した上で、同債権の劣後的処遇を定めている。﹁エクイティ債権﹂概念は、二〇〇五年改正法が劣後化を規定していた﹁持分もしくはユニットの取得もしくは売却の取消しから生じた債権または持分もしくはユニットの取得もしくは売却から生じた損害賠償請求権﹂よりも広範な概念として ₄(

、次のように包括的・例示的に規定されている。

ティじた金銭的損失またはエクイっ証て売よし消取の却は券くしも得取の生 ₄₇     ィま戻し、⒞券償還債務た払は取得債務、⒟証エクいのテ有に却売はくしも得取、保本類似の支払い、⒝の資イ   ﹁  債エるす関に券証ィテイク、権はと﹂権債ィテイクエ債をに含﹁係はたま当配⒜。むを指権のもるげ掲に次、しる

によって生じた金銭的損失、⒠⒜から⒟に係る債権に関する求償または補償。﹂(BIA二条

“e qu ity c la im ”

CAA二条)

; C

(20)

   同志社法学 六七巻二号五二八八八二

  ﹁  ・。⒜インカムト﹁ラスト以外の会社す指を﹂エクイティ証券とのは、次に掲げるも ₄(

については、当該会社の持分または予約権、オプションその他の当該会社の持分受領権。ただし、転換負債に係る持分受領権は除かれる。⒝  インカム・トラストについては、当該インカム・トラストのユニットまたは予約権、オプションその他の当該インカム・トラストのユニット受領権。ただし、転換負債に係る持分受領権は除かれる。﹂(BIA二条

te in re st ”

“e qu ity

CAA二条

; C

  倒産監督局は、かかる定義は高度の明確性を提供するものであり、﹁エクイティ債権は、エクイティ証券に関連するあらゆる債権を含むものとして定義されている﹂と説明している ₄₉

。この説明や次述する破産・支払不能法五四条(2)項⒟号に関する﹁エクイティ証券は、持分として倒産の全リスクを負うべきである﹂という指摘 ((

に鑑みれば、二〇〇七年倒産法改正は、エクイティからは一般債権が発生しないことを明らかにした改正と把握される。

  なお、転換負債は、転換権行使の手続きが執られていない限りエクイティ証券には該当しないと説明されている。すなわち、転換権は、連邦最高裁CDIC判決が言うところの付随的要素と位置づけられたものと解される。

2 、 破 産 ・ 支 払 不 能 法 に お け る 規 律

  二〇〇七年改正法では、破産手続きに関しては、﹁債権者はエクイティ債権に関して、全ての非エクイティ債権が満足を得た後でなければ配当を受けることが出来ない。﹂と分配順序が規定されている(BIA一四〇・一条)。

  また、提案手続きに関しては、まず、不実表示に係る債権は当該債権者の承認が無ければ提案の対象とし得ないという規律が修正されており、すなわち、不実表示に係るエクイティ債権は承認無く提案の対象とし得ると規定されている

(21)

   同志社法学 六七巻二号五二九八八三 (BIA一七八条(1)項⒠号・六二条(2・1)号) (₁

。提案の内容に関しては、﹁エクイティ債権に対する分配を内容とする提案は、エクイティ債権に対する分配がなされる前に全ての非エクイティ債権が満足を得るべきことを内容とするものでない限り、裁判所は認可してはならない。﹂と規定されている(BIA六〇条(1・7)項)。この規定に関して、倒産監督局は、エクイティ債権と非エクイティ債権を同時に有する者が前者について有利な扱いを引き出すために後者をレバレッジとして用いる人質的議決権行使(

ho st ag e v ot in g

)を防ぐためのものと説明している ((

  提案に対する債権者の承認要件に関しては、まず、裁判所が別段の判断を行わない限りエクイティ債権者は単独のクラスに分類され、また、裁判所が別段の判断を行わない限り集会において当該クラスの構成員としては議決権を行使できないと規定されている(BIA五四・一条)。そして、裁判所が別段の判断を行わない限りエクイティ債権者以外の無担保債権者(クラス分けがなされている場合は各クラス)の法定要件を満たす賛成があれば、提案はその対象たる債権者によって承認されたものと見做されると規定されている(BIA五四条(2)項⒟号)。これらの規定に関して、倒産監督局は、エクイティ債権者が提案の承認に関与することが不適切な場合について同債権者の影響力を排除するためのものと説明している。また、裁判所の裁量に関しては、エクイティ債権者が議決権を行使することが適切な場合のためのものと説明しており、その例として株主に帰属する残余価値が存在する場合を挙げている (₃

3 、 会 社 債 権 者 調 整 法 に お け る 規 律

  二〇〇七年改正法では、アレンジメントに関しても、提案の場合と同様に、まず、不実表示に係る債権は当該債権者の承認が無ければアレンジメントの対象とし得ないという規律が修正されている (₄

(CCAA一九条(2)項⒟号)。また、アレンジメントの内容に関しても、﹁エクイティ債権に対する分配を内容とする和解またはアレンジメントは、エクイ

(22)

   同志社法学 六七巻二号五三〇八八四

ティ債権に対する分配がなされる前に全ての非エクイティ債権が満足を得るべきことを内容とするものでない限り、裁判所は認可してはならない。﹂と規定されている(CCAA六条(8)項)。さらに、アレンジメントに対する債権者の承認要件に関しても、裁判所が別段の判断を行わない限りエクイティ債権者は単独のクラスに分類され、また、裁判所が別段の判断を行わない限り集会において当該クラスの構成員としては議決権を行使できないと規定されている(CCAA二二・一条)。そして、裁判所が別段の判断を行わない限りエクイティ債権者以外の無担保債権者(クラス分けがなされている場合は各クラス)の法定要件を満たす賛成があれば、アレンジメントはその対象たる債権者によって承認されたものと見做されると規定されている(CCAA六条(1)項)。

  裁判所の裁量に関しては、再建手続きにおいてエクイティ債権者に議決権を与えることが適切な場合のためのものと説明されており、その例として唯一の債権者がエクイティ債権者である場合が挙げられている ((

第三章  二〇〇七年倒産法改正法の意義

第一節  二〇〇五年倒産法改正法および先例との比較

1 、 二 〇 〇 五 年 倒 産 法 改 正 法 と の 相 違

  二〇〇七年改正法においては、二〇〇五年改正法に対する批判 ((

を踏まえて、①劣後化される債権の範囲、および、②不実表示に係るエクイティ債権を対象とする場合の承認の要否に関して修正が行われており、また、③エクイティ債権に関するクラス分け、議決権の有無、および、再建計画の承認におけるエクイティ債権者の賛成の要否に係る裁判所の裁量に関する規定、ならびに、④提案・アレンジメントの内容規制に関する規定が追加されている。

(23)

   同志社法学 六七巻二号五三一八八五   これらのうち、②の点は細かな修正であるが、①の点は重要な修正となっている。すなわち、劣後化対象債権について、二〇〇五年改正法は、アメリカ連邦倒産法五一〇条(b)項 (₇

に倣って﹁持分の取得または売却から生じた債権﹂(

a cla im a ris in g fro m th e pu rc ha se o r s ell o f a s ha re

)と規定していたが、二〇〇七年改正法は、﹁エクイティ証券に関する債権﹂(

a c la im th at is in re sp ec t o f a n eq uit y i nt er es t

)と規定しており、倒産監督局が述べるように﹁エクイティ証券に関連するあらゆる債権﹂(

an y c la im th at is re la te d to a n eq uit y i nt er es t

)が劣後化されることを明確化している。なお、株主の会社に対する債権だけでなく、引受人等の会社に対する求償請求権・補償請求権も劣後化対象とされており、劣後化対象債権の範囲に関しては、アメリカ連邦倒産法五一〇条(b)項と実質的に同内容となっている。

  ③の点は、二〇〇五年改正法と異なり、裁判所に裁量を与えることで、エクイティ債権者に帰属する価値が存在する場合に同債権者を倒産手続きに適切に参加させることができるようにしている。

  そして、④の点は、エクイティ債権者が同時に非エクイティ債権を有する場合にそれに係る議決権をレバレッジとしてエクイティ債権への分配を内容に含む再建計画の承認を強いることなどを阻止できるようにしている。ただし、第三節で見るように、この仕組みについては実務的な問題点も指摘されている。

2 、 株 式 に 係 る 債 権 の 性 質 決 定 に 関 す る 先 例 の 変 更

  二〇〇七年改正法は、第二節で紹介する

Sin o- F or es t

判決が指摘するように、

M er it E ne rg y

判決が引受人等の会社に対する補償請求権の劣後化を否定した点を変更している。また、二〇〇八年の判断である

I. W ax m an & S on s

判決を既に否定している。すなわち、配当請求権をエクイティ債権と規定しており、出資の返還と資本収益の区別を採用していない。この点に関しては、﹁エクイティ証券に関連するあらゆる債権﹂の劣後化を二〇〇七年改正法は規定していると

(24)

   同志社法学 六七巻二号五三二八八六

説明されているところ、債権が会社法の定める優先順位に照らして有効に発生していたとしても劣後化を免れないことを明らかにしたものと解される。なお、二〇〇七年改正法は判決債権の性質について言及していないが、第二節で紹介する

B ul R iv er

判決は立法趣旨等に鑑みてその性質をエクイティ債権と判断している。

第二節

  「意判るす関に義のエ」権債ィテイク例

  二〇〇七年倒産法改正法施行後、次の三つの判決においてエクイティ債権の意義が検討されている。

1 、 裁 判 所 の 裁 量 の 意 義 ― ― Re Nelson Financial Group Ltd. ( Ont. S.C.J. [ Commercial List ] 2010 )

((

【 事 案 の 概 要 】

  N社は、表示資本の一〇%に相当する額を優先配当する取得請求権付・無議決権・累積的優先株式を発行していた。投資者の殆どは、高齢者や年金受給者であった。N社の倒産後、優先株主らは、宣言されたが未払いであった配当に係る債権、取得請求権の行使に係る債権、不実開示による株式取得に係る損害賠償請求権、株式取得の取消しに係る債権を主張した。また、Mは、取得したN社のノートに関して、契約書を偽造され無断で優先株式と交換されたと主張した。

【 判 旨 の 概 要 】

  本件優先株式は、デットとエクイティ双方の性質を有するが、配当受領権を有することや残余財産の分配順位が普通株式に優先することなどに鑑みればエクイティ証券である(

pa ra . 31

)。エクイティ債権の定義は明確であり、エクイティ証券に関する債権、特に配当や取得の取消しに係る債権を含むと定義されている。本件における債権は全て、エクイ

参照