波 浪 観 測網 が捉 え た2008年2月24日 の 日本海 沿 岸 高波 の特 性
5
0
0
全文
(2) 波 浪観 測網 が捉 え た2008年2月24日 の 日本 海沿岸 高波 の特 性. 147. 表‑1 気 象擾乱 中の最大観 測有義 波. 注)※ 印 は,波 高 ピー ク付近 に欠測 があ った ことを表 す. 深20m,2002年 図‑2. 気象 擾乱 中 の風 向風 速観 測結 果. 以 降),柴. の3地 点 で あ る.特. 山(水. 深41m,2000年. に 富 山 で は,有. 以 降). 義 波 高 が9.92m,有. 義 波 周 期 が16.2sに 達 し,こ れ ま で の 既 往 最 大 観 測 有 義 波(2004年. 台 風23号,有. 永 井 ら,2005)を. 義 波 高6.75m,有. 義 波 周 期8.3s;. 大 き く上 回 っ た.北 海道 西 岸 か ら富 山. 湾 まで の沿 岸 で は,南 下 す る ほ ど波 浪 が 発 達 し,波 高 や 周 期 が 大 き くな って い る.こ れ に対 して,能 登 半 島 以 西 の 沿 岸 で は,西. に行 く ほ ど最 大 有 義 波 高 が 相 対 的 に 低 く. な っ て い る.こ れ らは,冬 型 気 圧 配 置 に 伴 う北 風 が 日本 海 の東 部 で 強 か っ た た め で あ る と推 定 され る. 表‑1中 の代 表 的 な8観 測 点 に お け る全 周 期 帯 の 有 義 波 高(実. 線),有. 義 波 周 期(破. の 周 期 帯 に 限 っ た波 高(太. 線),波. 富 山 湾 内 を 除 く観 測 点 で は,23日 発 達 が見 られ た.23日. 向(矢. 印),10‑30s. 線)の 経 時 変 化 を 図‑4に 示 す. 夕 刻 頃 に急 激 な波 浪 の. 深夜 まで は,図‑4の. 何 れ の観 測 点. で も,有 義 波 高 が 時 間 と と も に増 加 した が,周 期10‑30s の うね り成 分 の波 高 は まだ 全 周 期 帯 の 有 義 波 高 よ りか な り小 さ か った.し. た が って,強 風 に よ る波 浪 の発 達 過 程. で あ った と推 定 さ れ る.そ の 後,高 継 続 した が,そ 図‑3. 日本 海沿 岸 のナ ウフ ァス波浪 観測 点. 波 浪 状 態 は24日 まで. の継 続 時 間 は南 西 側 の 観 測 点 ほ ど長 か っ. た.留 萌 で は24日 午 前 中 に 低 波 浪 状 態 に 戻 り,玄 界 灘 で は25日 にな って も高 波 浪 状 態 が 継 続 した.こ. 4. 日 本 海 沿 岸 の 観 測 波 浪 の 特 性. の こ と は,. 能 登 半 島 以 西 で は,近 傍 で 発 達 した 風 波 来 襲 の後 に,北 表‑1に,2月23日. 〜25日 の 各 波 浪 観 測 点 に お け る最 大. 観 測 有 義 波 を そ の 起 時 と と もに 示 す.本 気 象 擾 乱 は,日 本 海 沿 岸 で,観 井,2002b).既. 測 史 上 特 筆 す べ き高 波 を もた ら した(永 往 最 大 観 測 有 義 波 高 を 更 新 した 観 測 点 は,. 18地 点 の うち 輪 島(水. 深52m,1979年. 以 降),富. 山(水. か ら伝 わ って き た うね りが 続 け て来 襲 した た め で あ ろ う. 富 山 湾 内 の 観 測 点 で あ る富 山 と伏 木 富 山 で は,能 登 半 島 に よ る遮 蔽 に よ る た め と推 定 さ れ るが,23日 発 達 は あ ま り見 られ ず,24日. の風浪 の. に な って か ら発 達 した.高. 波 浪 期 間 中 を 通 じて,全 周 期 帯 と10‑30sの 周 期 帯 の 波 高.
(3) 148. 海. 岸. 工. 図‑4. 図‑5. 学. 論. 文. 集. 第55巻(2008). 主要 な沿 岸観 測点 の波 浪経 時変 化. 周 波 数 ス ペ ク トル の 時 間 変 化.
(4) 149. 波浪 観測 網が 捉 えた2008年2月24日 の 日本海沿 岸高 波 の特性. 表‑2. 図‑6. 波 浪推算 の計算条件. 実測 方 向 スペ ク トル(24日14:00,輪 島 ・富 山). が ほ ぼ 等 し く,10s以. 下 の 風 浪 成 分 は 小 さ か っ た.富. 山. 湾 内 の両 観 測点 の 観 測 最 大 有 義 波 高 に大 きな 相 違 が あ っ た 原 因 は,両 観 測 点 の能 登 半 島 に よ る 遮 蔽 条 件 の相 違 に 加 え て,局 所 的 な波 浪 の屈 折 も影 響 して い る可 能 性 が 高 い. 図‑5は,留. 萌,金 沢,伏. 0時,6時,12時,18時. 木 富 山,富 山 にお け る,24日. の 周 波 数 ス ペ ク トル を示 す.時 刻. の 経 過 と と も に線 を太 く して 重 ね描 き して い る.日 本 海 北 部 の留 萌 で は時 間 と と も に波 浪 は徐 々 に減 衰 した.富 山 湾 外 の 金 沢 で は,減 衰 は小 さ く,ピ ー ク は長 周 期 側 に 徐 々 に シ フ ト して お り,風 浪 か ら うね り性 の波 浪 に 変 化 した こ とが わ か る.富 山 湾 内 の伏 木 富 山(設 置 水 深46.4 m)と. 富 山(20.0m)で. は,風 速 が ピー クの0時 に波 浪 は. 極 め て 低 か った が,そ 14〜16s)に 発 達 した.富. の後,周. 波 数0.06〜0.07Hz(周. 期. ピ ー ク を有 す る 周 期 の 長 い 波 浪 成 分 が 急 に 山 で は これ よ り高 い周 波 数 に も小 さな ピー. ク が現 れ て い る.図‑2で. 示 した よ う に,24日12時. 図‑7. 波浪推 算(WAMモ. デル)によ る最 大有義 波 高分布. 以 降 は,. 富 山湾 の 内 外 で 風 速 が ピ ー ク時 に 比 べ 大 き く減 衰 して い る の で,富 山 湾 内 で は,周 期 の長 い う ね り性 の 波 浪,す な わ ち 顕 著 な寄 り回 り波 が 見 られ た こ とが 理 解 で き る. 図‑6は,富 に つ い て,富. 山湾 内 の 波 高 が 最 大 に な っ た 時 間 帯 の14時 山湾 外 の 輪 島 と湾 内 の 富 山 の方 向 ス ペ ク ト. ル を 示 す.両 観 測 点 と もに ピ ー ク周 波 数 は0.06Hz(周 16s程 度)で. あ り,富. 期. 山 湾 近 傍 海 域 に は発 達 した うね り. が来 襲 した こ とが わ か る. 5. 波 浪 推 算 に よ る 日本 海 沿 岸 の 波 浪 分 布 の 考 察 日本 海 全 域 を 対 象 にWAMに 表‑2に そ の計 算 条 件 を示 す.こ や 鈴 山 ら(2005)に. よ る 波 浪 推 算 を実 施 した. こで は,橋 本 ら(2004). 倣 い,波 浪 ス ペ ク トル の 周 波 数 お よ 図‑8. び 方 向 分 割 数 を そ れ ぞ れ35お よ び32分 割 と し,さ らに, WAMに. お け る エ ネ ル ギ ー ソ ー ス 関 数 の う ち風 か ら波 へ. の エ ネ ル ギ ー輸 送 に お け る海 面 抵 抗 係 数 に,Cycle‑3で 採 用 さ れ て い るWuの 式 を用 い た. 図‑7は 日本 海 沿 岸(表 −2の第 二 領 域 に 相 当)の 最 大 有. 遠 ざ か る ほ ど低 い,と. 実 測値 と推算 値 の比較 い う波 浪 観 測 結 果 を定 性 的 に正 し. く再 現 して い る. 図‑8は,富. 山 お よ び伏 木 富 山 の 両 波 浪 観 測 点 に お け る. 推 算 値 を観 測 値 と比 較 した もの で あ る.寄 り回 り波 の ピー. の 推 算 結 果 は,北 海 道 西 岸 か ら富 山. ク時 刻 や ピー ク時 の周 期 は,両 観 測 点 と も良 好 に再 現 し. 湾 に 向 か って 波 高 は大 き く な り,能 登 半 島 よ り西 側 で は. て い る.し か し,ピ ー ク 時 の 有 義 波 高 に つ いて は,伏 木. 義 波 分 布 を 示 す.こ.
(5) 150. 海. 岸. 工. 学. 論. 文. 集. 第55巻(2008). 局 所 的 な地 形 や 構 造 物 の影 響 に よ っ て波 の あ た り方 は 異 な る.す な わ ち,"あ. い が め"に. よ る 波 浪 の 屈 折 の効 果. が,計 算 結 果 に も現 わ れ て い る こ とが わ か る. 7. お わ り に 本 稿 で は,2008年2月24日. に 日本 海 沿 岸 に来 襲 した 高. 波 の 観 測 結 果 を 紹 介 す る と と も に,波 浪 推 算 お よ び浅 海 域 波 浪 変 形 計 算 を あわ せ て実 施 す る こ とに よ り,寄. り回. り波 の 特 性 把 握 を 試 み た.本 稿 が,今 後 の 寄 り回 り波 に 対 す る防 災 に 資 す る こ と を 強 く願 う もの で あ る.本 稿 で 紹 介 した よ うな 精 緻 な波 浪 観 測 結 果 が 得 られ た の は,国 土 交 通 本 省 港 湾 局 を は じめ と した全 国 の数 多 くの関 係 者 図‑9. 伏 木地 区防 波堤 周辺 の波 高分布 計算 結果(NE波 向). に よ る ナ ウ フ ァス の 開 発 ・改 良 の 努 力 の結 果 で あ る.ま た,本 研 究 の一 部 は,科 学 研 究 費(課 題 番 号19360225:. 富 山 観 測 点 は よ く再 現 して い るが,富 評 価 して い る.今 回 用 い たWAMの. 山観測点 では過小. 計 算 で は,水 深 変 化. Freak Waveの. 出 現 予 測 法 の 構 築 とそ の 出 現 特 性 の 解 明). の成 果 で もあ る こ と も付 記 し,こ こ に謝 意 を 表 す る.. に よ る屈 折 を 考 慮 して い るが,格 子 間 隔 が0.05°(約5km) と粗 く,水 深 変 化 に伴 う波 浪 の浅 水 変 形 も考 慮 して い な い.こ. の た め,東 西 に"あ. いが め"と 言 わ れ る急 深 の 谷. 状 の 地 形 が 東 西 に近 接 して い る富 山観 測 点 の 波 浪 状 況 は, 本 波 浪 推 算 で は十 分 に再 現 で き なか った. 6. 波 浪 変 形 計 算 に よ る 富 山 湾 内 波 浪 分 布 の 考 察 富 山 湾 の沿 岸 部 で は,"あ. いが め"の 存 在 に よ る局 所. 的 な 海 底 地 形 の 複 雑 な変 化 が,波 浪 の複 雑 な 屈 折 変 形 を もた ら し、 沿 岸 方 向 に波 浪 の 高 さが 大 き く変 化 す る こ と が知 られ て い る.本 稿 で は一 例 と して,防 波 堤 ケ ー ソ ン に 大 き な滑 動 被 災 が 生 じた 伏 木 地 区(射 水 市 万 葉 地 区) に お け る防 波 堤 前 面 の波 高 変 化 を 非 線 形 波 浪 変 形 モ デ ル (平 山,2002)で. 推 定 し た.本. モ デ ル は,既. に台 風 期 の. 被 災 メ カ ニ ズ ム の 推 定 に活 用 され て お り,ま た,現 地 観 測 デ ー タか ら もそ の 精 度 が 検 証 され て お り,適 用 性 は高 い(平 山 ら,2005). 図‑9で は,NEを. 上 方 向 と し伏 木 地 区 防 波 堤 周 辺 の 有. 義 波 高 分 布 の計 算 結 果 を示 す.計 算 条 件 の詳 細 は,全 国 的 な長 周 期 うね りの 特 性 を調 べ た 調 査(平 石 ら,2008)を 参 照 され た い.こ の 計 算 領 域 の左 上 端 に伏 木 富 山 波 浪 観 測 点 が 位 置 して い る.伏 木 富 山 観 測 点 で は,24日14:00 に有 義 波 高4.22m,有. 義 波 周 期14.2sの 極 大 波 を観 測 した. の で,こ の 計 算 で も境 界 で の入 力 条 件 に用 い た.入 射 波 向 はNEと. し,多 方 向 性 を示 すSmaxは75と. した.図. に示. す よ うに,防 波 堤 沿 い 両 端 の 区 間 の 沖 合 で は,反 射 波 の 影 響 も あ り,7mを. 越 え る波 高 が 現 れ て い る.こ. れに対. して 中 央 部 の 区 間 の 沖 合 で は4m程 度 で あ る.こ. のよ う. に,沖 波 が 同 一 で あ って も局 所 的 に 波 高 が 大 き く変 化 し,. 参. 考. 文. 献. 鈴 山 勝之 ・橋 本典 明 ・永井 紀 彦 ・吉 田秀樹 (2005): 様 々 な 地 形条 件下 にお け る波 浪推 算 の精 度 向上 の ため の幾 つか の検討, 海 岸工学 論文 集, 第52巻, pp.171‑175. 永 井紀 彦 (2002a): 風 力 エ ネル ギー活 用 の観点 か ら見 た沿 岸 域 洋 上風 力 の 特性,港 湾 空港 技 術 研 究所 資 料No.1034, 34p. 永 井 紀 彦 (2002b): 全 国 港 湾 海 洋 波 浪 観 測30か 年 統 計 (NOWPHAS 1970‑1999), 港 湾空 港技 術研 究所 資料No.10 35, 388p. 永 井紀 彦 ・額 田恭 史 ・岩 崎 峯 夫 ・久 高 将信 (2002): 切 れ 目 のな い連続 観 測 とス ペ ク トル周 期 帯表 示 に よる全 国沿 岸 の長周 期波 観測 情報 シス テ ム, 土木 学 会, 海 洋開 発論 文 集 第18巻, pp.149‑154. 永 井紀 彦 ・小川 英 明 ・額 田恭史 ・久 高 将信 (2004): 波浪 計 ネ ッ トワー クに よ る沖 合津 波観 測 シス テムの構築 と運 用, 土木 学会, 海 洋 開発論 文集 第20巻, pp.173‑178. 永 井紀 彦 ・里 見茂 (2005): 2004年 台 風 によ る高 波 の観 測 結 果(NOWPHAS 2004特 別 号), 港 湾 空 港 技 術研 究 所 資 料 N0.1100, 65p. 橋 本典 明 ・永井 紀彦 ・高 山知 司 ・高 橋智 晴 ・三 井正 雄 ・磯 部 憲 雄 ・鈴 木 敏夫 (1995): 水 中超 音 波 の ドップ ラー効 果 を 応用 した海 象 計 の開 発, 土 木 学 会, 海 岸 工学 論 文 集 第42巻, pp.1081‑1085. 橋 本典 明 ・川 口浩 二 ・池 上正 春 ・鈴 山勝 之 (2004): 東 京 湾 にお け るWAMの 波浪 推 算 特性 に関 す る検 討, 海 洋 開 発 論文 集,Vol.20, pp.845‑850. 平石哲也 ・平 山克也 ・加 島寛章 ・春尾和人 ・宮 里一郎 (2008): 遇発 波浪 荷 重 によ る被害 例 とその特 性, 海岸 工学 論 文集, 第55巻, 印刷 中. 平 山克 也 (2002): 非 線形 不 規 則波 浪 を用 い た数値 計 算 の港 湾設 計 への 活用 に関 す る研究, 港湾 空港 技術 研 究所 資料 No.1036, 162p. 平 山克也 ・南 靖 彦 ・奥野 光洋 ・峯村 浩治 ・河 合 弘泰 ・平 石哲 也 (2005): 2004年 に来 襲 した台風 に よ る波浪 災害 事例, 港 湾空 港技 術研 究所 資料No.1101, 42p. 吉 田清三 ・石 森 繁樹 ・加 藤雅 司 (1986): 寄 り回 り波 と海難, 航 海, 第87号, pp.55‑61..
(6)
関連したドキュメント