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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2022

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氏 名 池田 理佐

授与した学位 博 士

専攻分野の名称 学 術

学位授与番号 博乙第 4534 号

学位授与の日付 2021年 3月25日

学位授与の要件 博士の論文提出者

(学位規則第4条第2項該当)

学位論文の題目 Studies on mechanisms of rapid axopodial contraction in the centrohelid Raphidocystis contractilis

(原生生物タイヨウチュウRaphidocystis contractilisの急速な軸足収縮機構に関する研究)

論文審査委員 教授 西野 直樹 教授 安藤 元紀 准教授 畑生 俊光 教授 齋藤 昇

学位論文内容の要旨

原生生物タイヨウチュウRaphidocystis contractilisR. contractilis)は,六角形に配向した6本の微小管を 内包する軸足と呼ばれる仮足を細胞体から放射状に伸ばす。その軸足は機械刺激により急速な収縮,再伸長 を示し,それらの速度は一般的な微小管脱重合・重合速度よりも急速である。この急速な軸足収縮・伸長反 応は微小管系の細胞運動の中で極めて特異な現象であり,そのメカニズムは不明である。本研究では,R.

contractilis の急速な軸足収縮機構を解明するため,免疫細胞化学法による軸足収縮前後の微小管動態の解

析,および微小管動態に関与する候補遺伝子の同定を目的としたde novo transcriptome解析を試みた。

R. contractilisの軸足長を保持するための固定法を検討し,免疫細胞化学法による微小管動態の解析を行っ

た。R. contractilisは化学固定液投与時のピペッティング操作そのものが刺激となり,軸足収縮が誘発される

ため,固定時の物理的刺激を低減する方法を検討した。試験液を低速・一定流量で注入可能なマイクロシリ ンジポンプを用いた潅流システムにより,軸足収縮を引き起こすことなく固定液投与が可能となった。固定 液を検討した結果,低濃度のグルタルアルデヒドと微小管安定化緩衝液の混合液が軸足長の保持に最適であ ることが分かった。上記固定法を適用して,抗α-tubulin抗体を用いた免疫細胞化学法による解析を行った。

収縮誘発前の細胞では,軸足基部から先端まで線状の陽性シグナルが認められたが,軸足収縮誘発後の細胞 では,細胞体表層に陽性シグナルが集積していた。伸長した軸足微小管では,陽性シグナルが部分的に減弱 していたことから,軸足微小管を構成する tubulin が翻訳後修飾を受け,抗体の抗原認識部位がマスクされ ている可能性が示唆された。また,翻訳後修飾を受けた部位は,微小管切断タンパク質の標的部位となるこ とが報告されていることから,R. contractilisの軸足微小管が微小管切断部位を有することが推測された。

R. contractilis のmRNA-Seqにより網羅的な遺伝子配列情報を取得し,微小管動態に関与する候補遺伝子

を同定を行った。微小管切断タンパク質であるkatanin p60,fidgetin,spastinの遺伝子が同定され,これらの 遺伝子は,R. contractilisにおいて有糸分裂や急速な軸足収縮に関与することが示唆された。R. contractilisは 種特異的な遺伝子重複によって生じた独自の kinesinを有することも判明し,このことは急速な軸足収縮・

再伸長反応といった細胞運動の特異性に寄与する可能性がある。本実験で得られた R. contractilis の網羅的 な遺伝子配列情報は,本種の分子生物学的解析の研究基盤として有用である。

以上の結果から,R. contractilisにおいて,複数個所における微小管の切断および断片化を伴った急速な 軸足収縮モデルを提案し,その過程において微小管切断タンパク質の遺伝子が関与している可能性を示し た。

(2)

論文審査結果の要旨

原生生物タイヨウチュウRaphidocystis contractilis(R. contractilis)は,六角形に配向した6本の微小管を内包 する軸足と呼ばれる仮足を細胞体から放射状に伸ばす。その軸足は機械刺激により急速な収縮,再伸長を示し,

それらの速度は一般的な微小管脱重合・重合速度よりも急速である。この急速な軸足収縮・伸長反応は微小管 系の細胞運動の中で極めて特異な現象であるが,そのメカニズムは不明である。本研究では,R. contractilisの 急速な軸足収縮機構を解明することを目的とした。

免疫細胞化学法により R. contractilis の微小管動態を観察する上で,固定液投与時のピペッティング操作が 刺激となること,常法で使用されるパラホルムアルデヒド固定液では軸足長を維持できないことが課題であっ た。そのために,固定液を低速・一定流量で注入可能な潅流システムを作製し,低濃度のグルタルアルデヒド と微小管安定化緩衝液の混合液が軸足長の保持に最適であることを明らかにした。上記固定法を適用して,抗

α-tubulin抗体を用いた免疫細胞化学法による解析を行った。収縮誘発前の細胞では,軸足基部から先端まで線

状の陽性シグナルが認められたが,軸足収縮誘発後の細胞では,細胞体表層に陽性シグナルが集積していた。

伸長した軸足微小管では,陽性シグナルが部分的に減弱していたことから,軸足微小管を構成する tubulin が 翻訳後修飾を受け,抗体の抗原認識部位がマスクされている可能性が示唆された。また,翻訳後修飾を受けた 部位は,微小管切断タンパク質の標的部位となることが報告されていることから,R. contractilisの軸足微小管 に微小管切断部位が有ると推測された。

R. contractilisのmRNA-Seqにより網羅的な遺伝子配列情報を取得し,微小管収縮に関与する候補遺伝子を同

定した。微小管切断タンパク質であるkatanin p60,fidgetin,spastinの遺伝子が同定され,これらの遺伝子は,

R. contractilisにおいて有糸分裂や急速な軸足収縮に関与することが示唆された。R. contractilisは種特異的な遺

伝子重複によって生じた独自のkinesinを有することも判明し,このことは急速な軸足収縮・再伸長反応といっ た細胞運動の特異性に寄与する可能性があることが示唆された。本実験で得られた R. contractilis の網羅的な 遺伝子配列情報は,本種の分子生物学的解析の研究基盤として有用である。

本研究から,R. contractilisにおける複数個所における微小管の切断および断片化を伴った急速な軸足収縮 モデルを提案するとともに,網羅的な遺伝子配列情報の解析により微小管切断タンパク質の遺伝子の存在を明 らかにし,今後の分子生物学的解析ための研究基盤を作り上げた。以上のような業績から,本論文の研究内容 は,博士の学位審査の合格に相当すると報告する。

参照

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URL http://hdl.handle.net/2297/15642.. 学位授与番号 学位授与年月日 氏名 学位論文題目. 医博甲第1471号

教授 教授 岩中宮

論文審査の要旨 報告番号 甲 第 4427 号 氏 名 齋藤 俊太 論文審査担当者: 主査 慶應義塾大学准教授 博士(工学) 青木 義満 副査 慶應義塾大学教授

論文審査委員会 主査 久留米大学経済学部教授 浅見 良露 副査 久留米大学文学部特任教授 堂前 亮平 副査 久留米大学経済学部准教授

中尾眞二 馬渕宏 吉本谷博 教授. 教授

教授 教授 岩中宮

論文審査委員 教授 木村 邦生 教授 亀島 欣一 教授 木村 幸敬 准教授 山崎 慎一

論文審査委員 教授 阿部 宏史 准教授 橋本 成仁 准教授 氏原 岳人