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モラルの功罪「経済予測の有効性」

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モラルの功罪「経済予測の有効性」

著者 村田 治

雑誌名 Econo forum 21 = エコノフォーラム21 : 学生と教 職員のインターコミュニケーション誌

号 19

ページ 14‑15

発行年 2013‑03‑15

URL http://hdl.handle.net/10236/11774

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Econo Forum 21/March 2013 14

モラルの功罪─経済学の視点から

 毎年の年初めに、多くの調査機関やシンクタンクが一年間の経済予測を行い、シンポジウムや講演会が開催されています。その年の経済予測は、企業にとっては需要予測や設備投資を行う上で極めて重要であると考えられます。しかしながら、この経済予測ほど胡散臭いものはありません。と言いますのも、調査機関やシンクタンクが行ってきた過去の経済予測、例えば、GDP成長率などが的中したことがほとんどないからです。もちろん、予測にはハズレはつきものなのですが、これほど的中しないと、経済予測をするエコノミストたちが自己の経済予測の蓋然性をどこまで信用しているのか、いささか疑問を抱くところです。ひょっとしたら、﹁当たるも八卦、当たらぬも八卦﹂というのが内実なのかもしれません。そうであれば、いささか無責任であるような気もしますし、エコノミストとしてのモラルが問われるのかもしれません。以下では、この経済予測の有効性について考えてみましょう。 経済予測という場合、マクロ計量経済モデルによるGDP予測や先行指数を用いた景気予測などがよく知られています。前者のものとして は毎年元旦の日本経済新聞に発表される年間GDP成長率のNEEDSマクロ予測などがあり、後者としては内閣府が毎月発表している景気動向指数︵速報︶のCI先行指数が挙げられます。以下では、この二つの数値を用いて経済予測の有効性について考えてみましょう。 毎年お正月に発表されている日経NEEDSのGDP成長率の予測値とその年の実現値をプロットしたのが第1図です。 この第1図からわかるように、GDP成長率の予測値は実現値をうまく予想しているとは言えません。実際、両者の相関係数は0・512と高くありません。実は、興味深い事実が観察されます。それは、GDP成長率予測値と前年のGDP成長率実現値の相関係数が0・856と極めて高いという事実です。実際、両者をプロットすると第2図のように描けます。この第

2図からわかるように、GDP成長率予測値は前年のGDP成長率実現値と極めて似かよった動きをしています。このことは何を意味するのでしょうか。日経NEEDSマクロ予測の場合、原油価格、為替レートや金利などの外生変数や政策変数の予測値を与件として、次年度のGD P成長率を予測しています。実は、これらの外生変数や政策変数の予測値は前年の実現値に

「経済予測の有効性」

田  治 

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第1図 GDP成長率の予測値と実現値

GDP成長率予測値 GDP成長率実現値

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Econo Forum 21/No.19

特集

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引っ張られる傾向があるのです。したがって、その結果として、GDP成長率の予測値も前年度のGDP成長率実現値に連動する傾向が生じると解釈されます。 次に、内閣府のCI先行指数について見ていきましょう。1985年以降の内閣府のCI先行指数と景気基準日付の関係を図示したのが第 3図です。この第3図から、CI先行指数は確かに景気基準日付に先行していることがわかります。 ここで、第6循環︵いざなぎ景気︶以降の景気基準日付に対するCI先行指数の平均先行月数を求めますと、景気の谷に対しては4・2个月、山に対しては6・4个月CI先行指数が先行している事実が浮かび上がります。つまり、CI先行指数は景気の山や谷に対して平均で約半年先行していることになります。 このように見てきますと、NEEDSなどの計量経済モデルを用いた予測では、GDP成長率予測が、与件となる為替レートや金利などの外生変数や政策変数の前年度の予測値に依存するため、GDP成長率の予測値が前年度の実現値に引っ張られてしまい、予測パフォーマンスが良くありません。言ってみれば、今年度の経済的条件を前提に次年度を予測しているためパフォーマンスが悪くなっているのです。その意味では、経済予測としては望ましい結果が出ていないと言えます。おそらく、この点については、予測を行っている当事者も気づいていながらどうしようもできないのだと思います。 他方、CI先行指数を用いた景気の転換点︵谷や山︶に関する予測では、平均約半年の先行期間を伴いながら、転換点の予測にある程度成功していると言えましょう。これは、CI先行指数自体が過去何十年もの経験から改良を重ねて作られてきた指標であるからと考えられます。しかしながら、このCI先行指数による予測も、景気の転換点といった2~3年に一回発生する 出来事を予測するものです。つまり、一年ごとのGDP成長率の予測のような短期的な予測ではなく中期的な予測と言えましょう。その意味では、経済予測は中期的にはかなり有効ですが、半年後などの短期の予測に関しては、現在のところ、必ずしも正確である保証はないと言えるでしょう。

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