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- 106 - SQUID 非破壊検査システムの開発 第 7 章 冷凍機冷却による非接触型

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(1)第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 第7章 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発. - 106 -.

(2) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 7.1. 緒言. 本章では、現場で使用できる SQUID 非破壊検査システムを目指して、SQUID 冷却のために小型パ ルスチューブ冷凍機を導入し、第 6 章で開発した非接触型検査システムと組み合わせて、より簡便性・ 実用性の高い冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発を行った。この開発により 得られた成果について報告する。 現場において SQUID 非破壊検査を実現するには、検査システムの特徴として、環境磁気ノイズへの 高い耐性に加えて、現場に搬入できるくらい十分小型で、冷却剤が手に入れ難い場所でも使用可能で、 検査員が容易に扱えるなどの特徴が重要となる。センサに用いる HTS-SQUID の超伝導臨界温度 Tc は 高品質な場合でも 90K 程度であり、十分な特性をもった状態で使用するには 80K 以下に冷却する必要 がある[1-4]。そのためこれまでは液体窒素が用いられてきた。しかし現場では冷却剤の入手が困難な場 所も存在する。また液体窒素などの冷媒を扱うには窒息や凍傷などの危険を回避するための知識と扱い の習熟を要する。大型の構造物の検査に適用するには、プローブを移動して走査することが望ましく、 これにはプローブの小型化が必要となる。したがって SQUID 非破壊検査の実用化のためには、小型で 扱いの容易な冷却剤フリーの新しい SQUID 冷却手段が必要と考えた。 そこで扱いが容易な小型冷凍機を用いて SQUID 冷却を行う SQUID 非破壊検査システムの開発を行 った。これまでに小型の 77K 冷凍機を適用して HTS-SQUID の冷却を行う非破壊検査システムがいく つか開発されている[5-8]。これらはジュールトムソン冷凍機[5-8]や、パルスチューブ冷凍機[8]などを 用いた SQUID 非破壊検査システムであるが、SQUID 感度を損なわない低磁気ノイズのシステム実現 に向けてまだ解決されていない共通の問題点がいくつか残っている。 これらの問題は以下の四つにまとめることができる。①冷凍機本体内の磁性蓄冷材や磁性体モータか ら磁気ノイズが発生する、②冷凍機の振動が SQUID に伝達され、SQUID が環境磁界中を振動するこ とにより等価的に磁気ノイズが発生する、③ガスの配送・冷却に用いるコンプレッサー内の磁性体モー タが磁気ノイズを発生する、④冷凍機低温端(コールドヘッド)の温度は外界の温度変化の影響を受け やすく、SQUID をコールドヘッドに直接貼り付けて冷却すると十分な温度安定性が得られず、温度変 化により SQUID の感度が変化してしまう[9,10]。本研究では世界に先駆けてこれらの問題を解決し、 パルスチューブ冷凍機を用いた低ノイズの小型 SQUID 非破壊検査システムの開発を行った。 以上の①から④の問題に関して、冷凍機の種類によりその特性やシステムへの影響度が異なる。その ためこれらの問題に対する対策を行うには用いる冷凍機システムのノイズ特性や振動特性、温度安定性 をあらかじめ明らかにする必要がある。しかし系統的にこれらの特性を明らかした研究はほとんど報告 されていない。 本研究では冷却部から磁性体モータを分離した構造をもち、他の冷凍機と比較して低振動で小型なパ ルスチューブ冷凍機[11]を採用することにした。そこでまず二軸型パルスチューブ冷凍機における冷凍 機由来の磁気ノイズ、振動、コンプレッサーと冷却部から切り離されたモータから発生する磁気ノイズ、 低温端での温度安定性について実験的に調べ、これらの特性を明らかにした。これらの特性から新たに 設計する冷凍機冷却検査システムの指針を決定した。 この指針に従い小型同軸型パルスチューブ冷凍機を用いた SQUID 非破壊検査システムを新たに開発 した。本研究では環境磁界の低減に優れる HTS-SQUID グラジオメータを使用し、冷凍機本体の材料と して可能な限り非磁性材料を使用した小型で低磁気ノイズ・低振動の同軸型パルスチューブ冷凍機を新 - 107 -.

(3) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. たに開発した。さらに振動を減衰させるため、コールドヘッドと SQUID を配置するサンプルステージ を分離し、両者を束ねた軟らかい銅の細線で接続しサンプルステージへの熱伝導をえる機構を導入した。 この機構によりコールドヘッドからサンプルステージへ伝達される振動を減衰する。またこの構成では サンプルステージが熱バッファとなるため、この機構によりサンプルステージの温度安定性の向上を図 った。磁気ノイズを発生するコンプレッサーとモータは SQUID から約 2m以上離すことにより、SQUID に鎖交する磁気ノイズを低減させた。以上のような構成により、冷凍機によるノイズ増加のほとんど無 い低磁気ノイズを実現した。これにより小型化で簡便性・実用性の高い冷凍機冷却による SQUID 非破 壊検査システムの開発に成功した。このような構成のパルスチューブ冷凍機を用いた SQUID 非破壊検 査システムの開発は世界ではじめてである。 このシステムに、第 6 章で開発した非接触型検査システムを組み合わせて、低導電率複合材料の深さ 20mm の欠陥検出が非接触で可能な非接触型 SQUID 非破壊検査システムを完成させた。. 7.2. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの概要. ここでは本研究で開発した冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの概要について説 明する。冷却部からモータを分離したパルスチューブ冷凍機は、低磁気ノイズ・低振動の必要な冷却シ ステムに適している。そこで本研究ではパルスチューブ型冷凍機を採用した。 本研究で開発した SQUID 非破壊検査システムは、第 2 章で開発した SQUID 非破壊検査システムの デュワー部を冷凍機冷却システムに置き換えた構成となる。冷凍機冷却システムはパルスチューブ冷凍 機本体と冷却部(コールドヘッド)を真空に保つ取り外し可能なクライオスタット(低温真空容器)、 本体から切り離されたバルブ切り替えモータと、冷却用ガスである気体ヘリウムの運搬およびガス冷却 を行うコンプレッサーからなる。センサには HTS-SQUID グラジオメータを用いた。SQUID はコール ドヘッドに直付けされて冷却されるか、もしくは銅やサファイアのロッドを介して、コールドヘッドか らの熱伝導によりロッド上で冷却する場合が多い[5-8]。本研究ではコールドヘッドから SQUID に伝達 される振動を減衰させるために、コールドヘッドと切り離したサンプルステージ上に SQUID を配置し、 束ねた銅の細線により両者を接続し、コールドヘッドからの熱伝導により SQUID を冷却する。またサ ンプルステージを熱バッファとし、ステージ上の温度安定性を向上させる。 以上のような構成の冷凍機冷却システムにより SQUID の冷却を行う。残りの SQUID 非破壊検査シ ステムの構成は冷却材を用いた場合と基本的に同じであるが、サンプルに電流を誘起する手段として、 第 6 章で開発したフェライトコアを用いた渦電流誘導システムを組み合わせ、非接触型 SQUID 非破壊 検査システムとした。. 7.3 7.3.1. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システム. システム設計. 低磁気ノイズの冷凍機冷却 SQUID 非破壊検査システムを開発するには、冷凍機由来の磁気ノイズ、 冷凍機の振動、コンプレッサーやモータからの磁気ノイズを可能な限り低減した、高い温度安定性を持 った冷却システムを設計する必要がある。これらの特性や SQUID への影響度は用いる冷凍機の種類に - 108 -.

(4) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. より異なる。そこで二軸型パルスチューブ冷凍機 P004(岩谷瓦斯株式会社製)に関するこれらの特性 について実験的に調べ、新しく設計するパルスチューブ型冷凍機システムの設計指針を得ることにした。 (1)二軸型パルスチューブ冷凍機の磁気ノイズ、振動および温度特性実験 使用した二軸型パルスチューブ冷凍機はコールドヘッドをもつ冷凍機本体、冷却用ヘリウムガスによ り冷凍機本体内の加圧・減圧をコントロールするバルブ切り替えモータと、コンプレッサーから構成さ れる。このシステムの冷凍機本体の写真と構成を図7−1(a)と(b)にそれぞれ示す。本体・モー タ間は 4mmφの銅管で、モータ・コンプレッサー間はフレキシブルホースでヘリウムガスの配送を行 う。フレキシブルホースには、コンプレッサーからガスを送る SEND 用と、コールドヘッドの熱を吸 収し温まったガスをコンプレッサーに送る RETURN 用の二本を用いた。 このパルスチューブ冷凍機の冷凍機本体の材料および蓄冷材には磁性体を用いていない。バッファタ ンク[11]が冷凍機本体と一体化したタイプの冷凍機である。冷凍機のコールドヘッド到達温度は 55K、 コールドヘッドの冷却能力は 77K で 2W である。この冷凍機性能の詳細は参考文献[12]に示されている。 1)コールドヘッド部の磁界分布および振動特性 ここではコールドヘッド上部の磁界分布について調べた。図7−1(a)に示すようにコールドヘッ ドの冷却面を上方向に向けて大気中冷却を行い、そのときのコールドヘッドから垂直方向に約 10mm 離 れた水平面における磁界分布をフラックスゲート磁束計で測定した。この場合環境磁界と冷凍機由来の 磁界の和が磁束計に鎖交する。そこで、あらかじめ環境磁界分布を測定しておき、その後冷凍機を動か した状態で磁界分布を測定し、両者を引き算して冷凍機由来の磁界分布を求めた。環境磁界分布、冷凍 機を動かしたときの磁界分布、両者を引き算したものをそれぞれ図7−2(a)、(b)、(c)に示す。 コールドヘッドの冷却面とコールドヘッド部につながっている二軸のガス管の位置と大きさを図に一 緒に示した。同図(a)と(c)に示すように環境磁界とコールドヘッド上部の磁界分布に傾きがある ことが分かった。その傾きの最大値はそれぞれ約 20μT/m と約 100μT/m であった。図7−2(c) に示す磁界のピーク位置はおよそ二本のガス管の場所と一致していた。この発生源として、非磁性ステ ンレスのガス管が溶接されたときに磁性を持った個所による可能性が高い。 本冷凍機のコールドヘッド部における振動特性は、ガス管の軸方向を上下方向とすると、振動の方向 は上下方向、二本の管を最短で結んだ線に平行方向、およびこれに垂直な方向の3つの振動成分を持つ。 この中で二本の管を最短で結んだ線に平行な方向にもっとも振動が大きく、この方向の振動が 10μm で、他の方向は約 1〜2μm である。 2)モータおよびコンプレッサーから発生する磁気ノイズ特性 ここではバルブ切り替えモータおよびコンプレッサーから発生する磁気ノイズについて調べた。モー タおよびコンプレッサーの近傍での環境磁界を、グラジオメータ型 LTS-SQUID により測定した。モー タもしくはコンプレッサーから SQUID までの距離を 0.5m に設定し、それぞれの測定において、他方 の影響が無いように他方を SQUID から3m以上距離を離した。冷凍機システムを駆動したときのそれ - 109 -.

(5) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. ぞれの機器近傍で測定した SQUID ノイズのスペクトラムを図7−3(a)、(b)に示す。冷凍機シス テムを動かさない状態での SQUID ノイズをそれぞれの図に一緒に示した。図7−3に示すように両者 ともに約 1.75Hz のピークノイズとその高調波成分が測定された。この周波数はモータおよびコンプレ ッサーがヘリウムガスを配送する周期と一致していた。したがってそれぞれに含まれる磁性体モータが 動くことにより発生した磁気ノイズであると考えられる。 次に SQUID とモータもしくはコンプレッサーとの距離を 0.5m〜2m まで変化させたときの 1.75Hz のピークノイズ強度の距離依存性を調べた。それぞれの結果を図7−4(a)、(b)に示す。図に示す ように SQUID・モータ間を 1m、SQUID・コンプレッサーは 2m 離せば、ピークノイズ強度はほぼシ ステムホワイトレベルの 2、3 倍の大きさにまで減衰することがわかった。 3) 温度安定性 つぎにクライオスタットを用いて冷凍機の温度安定性を調べた。SQUID を冷凍機で冷却する場合、 SQUID 素子を低温部に低温グリースで貼り付けて固定し、素子基板と固定のための低温グリースを介 して低温部からの熱伝導により冷却される。このため SQUID 素子と低温端に熱勾配が発生し、素子の 温度は低温部と異なると考えられる。したがって SQUID 素子の冷却温度、および温度安定性を調べる には、SQUID 素子を冷却するのと同じ構成を持った温度計が必要であると考えた。そこで、STO 基板 上に四個の端子をもつブリッジ状の金薄膜を作製した(図7−5)。この金薄膜は四端子法による抵抗 測定から薄膜の温度を計算することができる温度計として働く。この温度計を低温部に SQUID と同じ 方法により固定し、低温部上の SQUID 素子を模擬した温度安定性試験を行った。本研究では低温グリ ースとしてアピエゾングリースを用いた。 本章7.1で述べたコールドヘッドとサンプルステージを分離し、銅線で接続した構成の冷却部を用 いて、コールドヘッドとサンプルステージ状の金薄膜抵抗の温度安定性を調べた。このとき約 0.1mm φの銀で被覆した銅線を約 1000 本束ねてコールドヘッド・サンプルステージ間の接続に用いた。クラ イオスタット内はターボポンプ TPC-01M(島図製作所)を用いて、内部圧力 2.4×10-4Pa の真空状態 にした。ターボポンプを動かした状態で冷凍機の冷却を開始し、コールドヘッド側部に貼り付けた熱電 対により測定した温度が 70.8K、サンプルステージ上に貼り付けた金薄膜抵抗により測定した温度が 78.35K の時点で真空引きをストップし、時間経過によるコールドヘッドおよびサンプルステージ上の 金薄膜抵抗の温度変化を調べた。このときのコールドヘッドおよびサンプルステージ上の温度変化を図 7−6と表7−1に示す。図と表に示すように、30 分間でコールドヘッドの温度は 0.3K 変動している が、サンプルステージ上の金薄膜の温度は 0.01K しか変化しなかった。これによりコールドヘッドとサ ンプルステージを分離し、両者を銅線で接続し、サンプルステージ上で素子を冷却する構成が SQUID の温度安定性向上に有効であることが分かった。. - 110 -.

(6) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. (コールドヘッド). コンプレッサー. Return. 冷凍機本体 (バッファタンク含む). ガス切り替え モータ Send. (a)大気冷却中のコールドヘッド 図7−1. 特性試験用のパルスチューブ冷凍機システム. 18mm. 18mm. 10.35μ T. (b)冷凍機のシステム構成。矢印はヘリウムガスの流れを示す。. 10.8 μ T. 9.4 μT. 10.5 μT. -1.15 μT. 1 μT. 33mm. (a)環境磁界分布 図7−2. (b)冷凍機を動かしたときの磁界分布. (c)冷凍機由来の磁界分布. 二軸型パルスチューブ冷凍機のコールドヘッド上部での磁界分布. 図中の細かい点線はコールドヘッドの、太い点線はガス管の形状とサイズを示す。. - 111 -.

(7) 第7章. 10‑5. ‑5. Motor Off Motor On. SQUID output (T/m/Hz1/2 ). SQUID output (T/m/Hz1/2 ). 10. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 10‑6. 10‑7. 10. ‑8. 10‑9 0.1. 1. 10. Compressor Off Compressor On 10. ‑6. 10‑7. 10‑8. 10‑9 0.1. 100. 1. (a)モータ近傍での環境磁気ノイズ. (b)コンプレッサー近傍での環境磁気ノイズ. Peak Amplitude of 1.75Hz noise (T/m). 特性試験用のパルスチューブ冷凍機システムの磁気ノイズ測定. 7 10‑9 6 10‑9 5 10‑9 4 10‑9. 2 10‑9 0. White Noise Level 0.5 1 1.5 2 Distance between SQUID and Motor (m). 6 1 0‑8 5 1 0‑8 4 1 0‑8 3 1 0‑8 2 1 0‑8 1 1 0‑8. 2.5. 図7−4. White noise level 0. 0. 0.5. 1. 1.5. 2. (b)コンプレッサーの場合. モータおよびコンプレッサーから発生する 1.75Hz のピークノイズ強度の距離依存性. 79 78 77 76. コールドヘッド温度. 75. 金薄膜抵抗の温度. 74 73 72 71 70 0. 図7−5. 10. 2.5. Distance between SQUID and Compressor (m). (a)モータの場合. Temperature [K]. Peak Amplitude of 1.75Hz noise (T/m). 8 10‑9. 3 10‑9. 100. Frequency (Hz). Frequency (Hz). 図7−3. 10. 20 Time [m]. 30. 40. コールドヘッドとサンプルステージを分離した構成における コールドヘッドと金薄膜抵抗の温度揺らぎ - 112 -.

(8) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. (2) 新たな冷凍機システムの設計 以上の実験結果から新たに設計する低磁気ノイズ・低振動で温度安定性の高い冷凍機システムの設計 を行った。磁気シールドを用いないシステムのため、センサには HTS-SQUID グラジオメータを用いた。 これにより冷凍機由来の磁気ノイズおよび振動によるノイズの低減を行った。 また冷凍機特性試験から明らかになった、冷凍機が環境磁界の勾配のおよそ4、5倍の勾配をもつ磁 界を発生していること、コールドヘッド部で最大約 10μm 振動していること、コールドヘッド部の温 度が 30 分間に 0.3K ほどの揺らぎをもっていることから、本研究では、コールドヘッドとサンプルステ ージを分離し銅線で接続した機構を低温部に導入し、磁気ノイズ発生源から SQUID を遠ざけ、冷凍機 の振動の SQUID への伝達を低減し、SQUID の温度安定性を得ることにした。 具体的な設計パラメータとして、まず SQUID と磁気ノイズ発生源であると考えられるガス管の間の 距離として、磁界は距離の 3 乗分の1に比例して減衰する性質から、SQUID を配置する位置をコール ドヘッドから約 50mm 離すことにより、SQUID 部での冷凍機由来の磁界の勾配は二桁以上低減すると 推測できる。これにより環境磁界勾配と比較して冷凍機由来の磁界勾配はほぼ無視できる大きさになる と考えられる。 つぎに SQUID 素子の振動をどの程度まで低減する必要があるかについて考察する。冷却剤冷却によ るシステムのノイズにおいて、最も大きなピーク信号は 50Hz のピークノイズで、第 2 章の図2−18 の赤線で示すように、およそ 0.1μT/m である。本非破壊検査システムでは、ピークノイズは測定周波 数帯域をずらすことにより測定の SN には影響しないが、大きなピークノイズはシステムダイナミック レンジを狭めるため、許容できるピークノイズの大きさは、およそ 50Hz のピークノイズ程度の大きさ であると考える。いま、冷凍機由来の磁界ノイズを無視できるとして、環境磁界勾配が図7−2に示す 20μT/m の勾配を持つと仮定すると、この勾配を約 200 分の 1 に減少させる必要がある。0.1μT/m の 勾配を持つ磁界中に第 2 章で示した HTS-SQUID グラジオメータをおいたと仮定すると、それぞれの ピックアップコイルの中心間の磁束密度の差分は、0.1μT/m×1.75mm(ベースライン長)=0.175nT となる。今 20μT/m の勾配をもつ磁界中をこの HTS-SQUID グラジオメータが振動したとき、振動が 10μm 以下ならば、それぞれのピックアップコイルの中心間の磁束密度の差分は約 0.175nT となり、 50Hz のピークノイズと同じピーク磁気ノイズとなる。したがって、SQUID の振動は 10μm 以下であ ることを目標値とした。このため二軸型パルスチューブ冷凍機よりもガス管の振動が小さい同軸型パル スチューブ冷凍機を用いることにした。 SQUID の温度安定性に関しては、上記の温度安定性試験と同じ機構をもち、同じ真空状態および温 度状態を再現できる冷凍機システムならば、SQUID 素子の温度変化を約 0.01K の揺らぎの範囲に抑え ることができる。液体窒素を用いる場合でも、液体の揮発などによる多少の温度ゆらぎが生じるため、 約 0.01K の揺らぎならば、SQUID の感度に与える影響は十分に小さいものと考える。 また図7−4に示すモータおよびコンプレッサーから発生する磁界ノイズの測定結果から、新しく作 製するシステムでは、SQUID・モータ、および SQUID・コンプレッサー間をそれぞれ 1m、および 2m 程度離す構成をとる事にする。 新しく作製する冷凍機システムでは、原則として冷凍機本体の材料および蓄冷材には非磁性体を用い る。以上のシステム設計を表7−2にまとめた。. - 113 -.

(9) 第7章. 表7−1. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 特性試験冷凍機のコールドヘッド部、およびサンプルステージ上の温度変化 経過時間. コールドヘッド 温度 (熱電対) [K] 70.8 71.0 71.1. [Min.] 0 15 30. 表7−2. 新しい低磁気ノイズ・低振動冷凍機システムの設計. システム要求. システム設計 同軸型パルスチューブ冷凍機 冷凍機本体(蓄冷材含む)の材料はすべて非磁性体 で作製 コールドヘッドとサンプルステージの分離・両者を 軟らかい細線で熱接続 同上 HTS-SQUID グラジオメータを使用 それぞれを SQUID から 1〜2m 離す. 低振動冷凍機 低磁気ノイズ SQUID へ伝わる振動の減衰 SQUID の温度安定性 残った振動と環境磁界の影響の低減 モータ、コンプレッサーの磁気ノイズの低減. 7.3.2. サンプルステージ上の温度 (金薄膜温度計) [K] 78.35 78.35 78.34. システム製作. 本章7.3.1のシステム設計に従い、新たに低磁気ノイズ・低振動・小型パルスチューブ冷凍機冷 却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムを新たに開発・製作した。システムの構成と、構成要素 の詳細について以下で述べる。 (1) システム構成 ここでは、冷凍機冷却により SQUID を冷却する部分を「冷凍機システム」、フェライトコアを用い た電磁石と電磁石調整器具を「渦電流誘導システム」、これらに走査台などの装置を加えたシステム全 体を「非破壊検査システム」と呼ぶことにする。 本論文第 2 章で開発した SQUID 非破壊検査システムのデュワーを用いた冷却剤冷却部を開発した冷 凍機システムで置き換え、渦電流誘導システムを加えて完成した非破壊検査システムを図7−6に示す。 SQUID を配置した冷却部は、架台への固定器具を取り外すと全体の大きさと高さがそれぞれ直径 8cm と 40cm で、冷却部先端の SQUID が配置されている部分は直径 5cm で長さ 20cm の円筒形である。冷 凍機本体の重量は約 4kg である。このように小型で軽量なプローブの開発に成功した。非破壊検査シス テムの構成および働きは第 6 章における図6−6によるダイアグラムで示されるものと原理的には同じ である。 1) 冷凍機システム. - 114 -.

(10) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 新しい冷凍機システムでは低振動のシステムを実現するため二軸型よりもさらに振動の少ない同軸 型パルスチューブ冷凍機を用いた。冷凍機システムは、パルスチューブ冷凍機本体を含む冷却部、モー タ、バッファタンク、コンプレッサーから構成される。本研究では冷却部をより小型にするためバッフ ァタンクは冷凍機本体と切り離して用いる構成にした。モータとコンプレッサーは、本章7.3.1で の冷凍機特性試験で用いたものと同じ性能のものを使用した。モータは冷却部から約 1m、コンプレッ サーは冷却部から約 2m 距離を離して配置した。本体・モータ間は長さ 1m の 4mmφの銅管で、モー タ・コンプレッサー間は長さ 3m のフレキシブルホース二本を用いてガスの配送を行った。冷凍機シス テムの写真と構成を図7−7(a)、(b)にそれぞれ示す。通常抵抗などをコールドヘッド部に配置し、 電流を抵抗に流し抵抗の発熱によりコールドヘッド部の温度の調整が行われるが[12]、電流により望ま しくない磁界が発生し SQUID に鎖交することを防ぐため抵抗は用いず、図7−7(b)に示すように、 フレキシブルホースのコンプレッサーに近い部分に冷却ガスであるヘリウムガスの流量を調整できる バルブを設けた。このバルブによりガスの流量を調整し冷却部の温度を調整する。このバルブによりお よそ 45K〜80K の温度調整が可能である。 次に本研究で開発した同軸型パルスチューブ冷凍機システムに関する説明を行う。この冷凍機により コールドヘッド部で 1μm 程度の低振動を実現した。冷却部は同軸型パルスチューブ冷凍機本体、銅の 細線による熱伝達機構、サンプルステージ、サーマルアンカー、端子台、クライオスタットから構成さ れる。図7−8に冷却部の概略図を示す。冷凍機由来の磁気ノイズ、および冷凍機の振動を減衰させる ため、コールドヘッド とサンプルステージを分離し、コールドヘッド 底面からサンプルステージの SQUID を設置する面を約 50mm 離した構造になっている。コールドヘッド・サンプルステージ間は約 0.1mmφの銅線を 500 本程度束ねたものを用いて両者の熱伝導をとっている。クラオスタットの材料に はアルミニウムを、サンプルステージ周辺は測定磁界に影響を与えないアクリル製の取り外し可能なコ ップ上の蓋を用いた。アクリルの蓋の底面の厚さは 2mm で、本システムの最小リフトオフは約 4mm となる。コールドヘッドとサンプルステージの温度を調べることができるようにそれぞれの側面に熱電 対を貼り付けた。クライオスタット内は、真空ポンプにより 0.53×10-4Pa まで減圧できる。また外部か らの熱の輻射による真空部の温度上昇をによる SQUID の温度揺らぎを減少させるため、アクリルの蓋 の内側に一重のスーパーインシュレーションシート[13]を貼り付けた。 次に HTS-SQUID をサンプルステージに設置する方法について説明する。良導体金属が SQUID のす ぐ近傍にある場合、金属内部で発生するジョンソンノイズにより SQUID のホワイトノイズが増加する ことがこれまでに報告されている[13]。そこで、ジョンソンノイズの影響を減らすため、SQUID 素子 の STO 基板の下にワニスを用いて厚さ 0.5mm の STO 薄膜を接着した。これによりステージ表面と素 子間の距離を素子の STO 基板を含めて約 1mm とした。下部 STO 基板上に SQUID のバイアス電流、 出力電圧、帰還変調電流用の端子台を設け、この端子と SQUID 素子部の端子をワイヤボンディングで 接続した。STO 基板上の端子からサンプルステージの端子台に導線を用いて導通をとる。この SQUID 素子部の構成を図7−9に示す。. - 115 -.

(11) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 8cm. 40cm. (a)プローブ部. Cryostat. (b)システム構成図 図7−6. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システム. - 116 -.

(12) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. (a)左からプローブ部、モータとバッファタンク、コンプレッサー. (b)冷凍機の構成図 図7−7. 同軸型パルスチューブ冷凍機を用いた冷凍機システム. - 117 -.

(13) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 50mm. 4mm. 50mm 図7−8. 本冷凍機のコールドヘッド部、およびサンプルステージ部の模式図. ワイヤボンディング STO基板上のHTS-SQUID 端子台 サンプルステー ジ横の端子へ. ワニス STO基板. アピエゾングリース サンプルステージ. 図7−9. HTS-SQUID のサンプルステージへの設置方法. - 118 -.

(14) 第7章. 7.3.2. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. システム性能. (1) 冷却時間と温度安定性 ここでは以下のような実験を行い、システムの冷却に必要な時間および温度安定性を調べた。 ①. まず前述のターボポンプによりクライオスタット内を減圧しながら、ガス流量を最大の状 態で最低温度になるまで冷却を行い、コールドヘッド(以下 CH と省略する)、サンプル ステージ(SS)、サンプルステージ上の SQUID 素子配置部(素子部)の温度を、CH と SS はそれぞれの側面に設置した熱電対で、素子部は HTS-SQUID を模擬した前述の金薄 膜温度計を用いて測定した。このとき室温は 24℃にした。. ②. 最低温度で安定した後、真空部の圧力 0.53×10-4Pa の状態でターボポンプを切り、その状 態でそれぞれの温度安定性を調べた。. ③. 流量調整バルブを 2 回オープンし、温度変化および変化にかかる時間を測定した。同様に 4 回、5 回オープンして、温度変化を観察した。. ④. 室温の冷凍機への影響を調べるため、室温を 24℃から 21℃に下げ、温度安定性を調べた。. この実験により得られた結果を図7−10に示す。上記の①から④のイベントの終了時間を図に点線で 示した。バルブの流量調整により温度を 7〜11K 上昇・安定させるのに約 1〜2 時間必要であった。流 量を最大にして冷却すると、素子部は約 45 分で 77K 程度に冷却されるため、最大能力で素子温度が 77K 付近まで冷却した後、流量調整により数度の調整を行えば、およそ 1.5〜2 時間程度で素子を 77K まで 冷却し、温度を安定させることができると推測される。 温度安定性に関しては、図7−10に黒色の両矢印で示す素子部の温度が 76.58K から 76.68K の間 の温度上昇は約 0.15K/h であった。一方、室温を 24℃から 21℃に下げた場合、素子部の温度は約 2K 低下した。同図に青色の両矢印で示すこの時間帯における温度上昇は約 0.01K/h であった。 以上の結果から、本システムでは素子部の最低到達温度が 43.7K であること、室温から 77K 付近ま で素子の温度を冷却し安定させるのに約 1.5〜2 時間冷却時間が必要であること、室温を 21℃としてお けば素子部において 0.01K/hour の温度安定度が得られることが分かった。また、CH・SS 間、SS・素 子部間の温度差は、素子部が約 77K の場合それぞれ 6K、および 2.3K であることが分かった。 ① ②. 100. ③. ④. Temperature [K]. 90 80 70. CH [K]. 60. SS [K] 50. Device possession [K] 40 0. 図7−10. 5. 10. 15 Time [h]. 20. 25. 30. ガス流量調整による冷却時間と温度安定性の測定試験結果 - 119 -.

(15) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. (2) 振動特性 クライオスタット外壁における振動を調べた結果、冷凍機本体の同軸管方向を鉛直方向とすると、鉛 直方向とこれに対して垂直な二方向についてもいずれも約 1μm か、それ以下の振動振幅であった。 (3) システムノイズ 完成した冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムのノイズ特性を調べた。本論文第 2 章で示した HTS-SQUID グラジオメータが使用不可能な状態にあったため、別の HTS-SQUID グラジ オメータをセンサに用いた。この素子の特性を表7−4に、顕微鏡写真を図7−11に示す。この素子 も最初の HTS-SQUID グラジオメータと同様に、ダイレクトカップルタイプの平面型一次微分ピックア ップコイルを持つ。 測定に際し、クライオスタット内圧力が 0.53×10-4Pa までターボポンプで減圧し、この真空状態でサ ンプルステージを 74.3K まで冷却し、冷却後ターボポンプはストップした。先に示したように金薄膜温 度計で測定した素子部はサンプルステージと約 2.3K の温度差があったため、HTS-SQUID グラジオメ ータの温度は約 76.6K であると推測される。このときに測定したシステムノイズを、環境磁気ノイズを 約二桁減衰させる磁気シールドケース内に同じ HTS-SQUID グラジオメータを設置し液体窒素冷却で 得られた素子ノイズとともに図7−12に示す。図に示すように、モータの回転周期である 1.75Hz の ピークノイズは現れなかったが 3.2Hz においてピークが現れている。1/f ノイズに見えるホワイトノイ ズレベルが液体窒素冷却の場合と異なって見えるのは、冷凍機冷却では、SQUID の温度が窒素温度 77.4K より 0.8K 低いため、SQUID の感度が変化したためと思われる。温度システムのノイズレベル、 最小リフトオフ、冷却時間、温度安定性に関するシステム性能を表7−5にまとめた。 以上により、システムノイズを増加させること無く、磁気シールドと冷却剤が不要な、低磁気ノイズ の冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発に成功した。. 6mm. 図7−11. 冷凍機冷却システムのシステムノイズ測定に用いた. HTS-SQUID グラジオメータの顕微鏡写真. - 120 -.

(16) 第7章. HTS-SQUID グラジオメータの構成要素と素子特性(液体窒素冷却). HTS-SQUID グラジオメータ 基板 薄膜. 方位角 30°のバイクリスタル SrTiO 3 一層の YBa2Cu 3O7-δ グレインバウンダリー接合 7μA 20Ω 3μV 平面型一次微分型 6×3mm2 3mm 800nT/m/ Hz1/2@100Hz. 6000. 600 1Hz. 10 Hz. 100 Hz. Frequency (Hz). 80000 8000 (nT/m/Hz 1/2). 60000. (nT/m/Hz1/2). Gradient of magnetic flux density. ジョセフソン素子 臨界電流 Ic ノーマル抵抗 Rn 変調深さΔV ピックアップコイル コイルサイズ ベースライン 磁界勾配ホワイトノイズ. Gradient of magnetic flux density. 表7−4. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 800. (a)冷凍機冷却システム 図7−12. 表7−5. 1Hz. 10 Hz. Frequency (Hz) (b)液体窒素冷却. 完成した非破壊検査システムのシステムノイズ. 図7−11に示す SQUID を用いたときの非破壊検査システムのシステム特性. システム特性 システムノイズレベル 最小リフトオフ 冷却時間 温度安定性. 特性値 Hz1/2@100Hz. 600nT/m/ 4mm 1.5~2hours (室温から素子 77K まで) 0.007K/h(室温 21℃、素子温度約 77K). - 121 -. 100 Hz.

(17) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 7.4 CFRP の深部欠陥への適用 製作した冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの性能を調べるため、厚さ 20mm の 板状 CFRP の深部亀裂モデルサンプルに本システムを適用し、深部欠陥検出能力を明らかにした。 7.4.1. サンプル. ここでは第 3 章および第 6 章で用いた、3 個の厚さ 20mm の CFRP 深部亀裂モデルをサンプルとし た。サンプル形状と、欠陥のサンプル番号と欠陥の深さの関係は第 3 章の図3−7と表3−1に示され ている。 7.4.2. 測定. 7.3.3において冷凍機冷却システムのシステムノイズを測定した HTS-SQUID グラジオメータは ダイナミックレンジが小さく、フェライトコアを用いた強磁界を発生する渦電流誘導システムと組み合 わせるのに適していなかった。そこで、ここでは HTS-SQUID マグネトメータを用いた。この素子は STO 基板上に一層の YBCO 薄膜により作製した素子で、素子を xy 平面に置いたとき、磁界の z 方向成 分 Bz を測定する。この素子の顕微鏡写真と素子特性を図7−13と表7−6に示す。またこの素子を 冷凍機冷却システムで素子温度約 72.3K で駆動したときのシステムノイズを図7−14(a)に、(b) にこの素子を液体窒素冷却により駆動した場合の素子ノイズを示した。図に示すように冷凍機冷却の場 合、液体窒素温度よりも約 5K 低いため素子特性が向上して、液体窒素冷却よりもホワイトノイズレベ ルは小さい値になっている。 CFRP サンプルを走査台テーブルに固定し、HTS-SQUID はサンプル表面と平行になるよう設置した。 本測定では電磁石から発生する磁界分布および発生する渦電流分布の対称性を良くするため、二個の電 磁石を SQUID の両側に設置した。両フェライトコアの端面がサンプル表面および SQUID と平行に設 定し、コアの端面とサンプル表面間が 1mm、SQUID とサンプル表面間が 7mmとなるよう走査台ステ ージの高さを調整した。この測定における電磁石の磁極と SQUID、サンプルの構成を図7−15に示 す。発生する渦電流分布の一部を同図に赤色の矢印で模式的に示した。SQUID 近傍では二つの電磁石 が誘導する渦電流の x 方向成分は打ち消しあうため、SQUID 真下付近では y 成分のみの電流が発生す る。 測定の前に SQUID に対して鎖交する磁束が最小になるように SQUID と二つの電磁石の位置の微調 整を行った。センサに HTS-SQUID マグネトメータを用いたため、グラジオメータ型 LTS-SQUID を 用いた場合ほど誘起磁界のキャンセルが容易でなく、システムのダイナミックレンジを考慮して、両電 磁石コイルにそれぞれ 5.5mA、80Hz の電流を印加した。亀裂の真上を亀裂と平行方向に測定間隔 2mm でライン走査を行った。 7.4.3. 測定結果. 図7−16に測定結果の一例として深さ 10mm と 12.5mm の亀裂を持ったサンプル No.3 を走査した - 122 -.

(18) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. ときに測定した磁束密度 Bz の振幅を示す。この測定結果は測定データに含まれる端効果を除くため、 サンプル No.3 と同形状の CFRP の傷無しサンプルを同じ条件で測定し、No.3 の結果から傷無しサンプ ルの結果を差し引いたものである。振幅波形において亀裂中心の両側に上向きと下向きの対になるピー クをもつ欠陥信号が現れた。本システムにより、5mm から 17.5mm の深さの欠陥を全て検出すること ができた。この結果から、本システムが CFRP の深部欠陥の非接触検出に適用可能であることが分かっ た。 この欠陥の深さと発生信号振幅の関係を図7−17に示す。欠陥信号の振幅値は深さの増加ともにお よそ指数関数的に減衰していることが分かった。同図に示したシステムノイズを考慮すると、本システ ムにより CFRP 厚板の 20mm を超える深部の欠陥検出が可能であると推測される。 7.4.4. 考察. 本測定では HTS-SQUID マグネトメータを用いておよそ 20mm の深部欠陥の検出が可能であったが、 実験室内の通常環境と比較して小さな環境磁界の変動に対しても大変脆弱であった。深部欠陥になるほ ど磁気欠陥信号による磁束密度勾配は、磁束密度そのものより急激に減少するため、深部欠陥検出に関 しては、HTS-SQUID マグネトメータのほうが HTS-SQUID グラジオメータよりも原理的には有利で ある。しかしながら、現場で行う非破壊検査では、通常環境磁界中でシステムを安定動作させる必要が あるため HTS-SQUID グラジオメータの使用が必須である。. 図7−13. CFRP 深部亀裂検出に用いた HTS-SQUID マグネトメータ. - 123 -.

(19) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. HTS-SQUID マグネトメータの構成要素と素子特性. 表7−6. (磁束密度ノイズは液体窒素冷却により磁気シールドケース内で測定) HTS-SQUID グラジオメータ 基板 薄膜. 方位角 30°のバイクリスタル SrTiO 3 一層の YBa2Cu 3O7-δ グレインバウンダリー接合 15μA 2.3Ω 8μV 450μm×450μm 50μm×50μm 200pT/ Hz1/2@100Hz. 1.2 x 10- 9. Magnetic flux density [T/ Hz]. Magnetic flux density [T/ Hz]. ジョセフソン素子 臨界電流 Ic ノーマル抵抗 Rn 変調深さΔV SQUID リングサイズ(外径) SQUID リングサイズ(内径) 磁束密度ノイズ. 1.2 x 10 -10. 1.2 x 10 -11. 1.2 x 10 -12. 3.2 x 10-9. 3.2 x 10- 10. 3.2 x 10- 11. 3.2 x 10- 12. 10Hz. 100Hz Frequency [Hz]. 1000Hz. (a)冷凍機冷却システムの場合 図7−14. 10Hz. 100Hz Frequency [Hz]. 1000Hz. (b)液体窒素冷却システムの場合. 図7−13に示す HTS-SQUID マグネトメータを用いた場合のシステムノイズ. 電磁石 渦電流 U字型フェライトコア S N SQUIDマグネトメータ 50mm 渦電流. 欠陥. S. 走査ライン 50mm. 欠陥. N y. サンプル. 図7−15. x 電磁石. 測定における SQUID と電磁石とその磁極、および欠陥と走査ラインの位置関係 - 124 -.

(20) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 2.5. Magnetic flux density Bz [nT]. 2 1.5 1 0.5 0 -0.5 -1 -1.5. 12.5mm-depth slot. 10mm-depth slot. -2 -2.5 -50. 図7−16. 0. 50. 100 150 x [mm]. 200. 250. 300. 深さ 10mm、12.5mm の深部亀裂を持つサンプル No.3 のライン走査結果 走査ラインにおけるサンプル断面をともに示した。. Signal peak amplitude [T]. 1.E-07. 1.E-08. 1.E-09. System noise level. 1.E-10 0. 0.005. 図7−17. 0.01 Slot depth [m]. 0.015. 0.02. 欠陥信号振幅の深さ依存性。. システムノイズレベルは HTS-SQUID マグネトメータを用いた場合を示した。. - 125 -.

(21) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 7.5. 考察. 開発した非破壊検査システムでは、炭素繊維系複合材料のような高抵抗率材料の 20mm を越える深部 欠陥の非接触検出の可能性をもっている。先進複合材料の欠陥、特に深部欠陥の検出能力に関しては、 本システムは従来技術以上の性能を示している。HTS-SQUID グラジオメータのベースラインを長くす ることによりさらに深部の欠陥の検出も可能となる。したがって今後使用頻度がますます増加すると予 想される先進導電性複合材料に対して、本システムは将来の有力な非破壊検査システムと成りうるポテ ンシャルを持っていると考えられる。 また本システムは、商用電源のある場所ならばどこでも容易に非破壊検査を行える可能性を示した。 これにより検査の場所と検査する人を選ばない非破壊検査が可能となり、従来技術と同様の操作の容易 さ、扱いやすさを実現した。これにより SQUID 非破壊検査技術の実用化へ向けて大きく前進したと考 える。 さらに非破壊検査を材料や部品だけでなく大型構造物にも適用するには、プローブ移動型の自動走査 システムが必要となる。参考文献[14]に示すように、超音波を用いた非破壊検査ではセンサをコンピュ ータ制御により移動させる自動二次元走査システムが開発されている。このようなプローブ移動型の検 査システムのためには、プローブの小型化が必須であり、本研究で開発した冷凍機を用いた小型で軽量 なプローブならば、同様のプローブ移動型の検査システムは十分に実現可能であると考える。このよう に本研究により従来技術とおよそ同等のシステムの簡便性を実現できる可能性を示した。 現在、構造物の非破壊検査分野では検査だけでなく余寿命評価を行う方向にある。余寿命評価には、 発生した欠陥状態と機械的強度劣化、強度劣化と余寿命の関係を明らかにすることが必要である。可視 化技術を含む本システムは、欠陥発生状態の把握が可能であり、機械的強度劣化の電磁気的指標を与え ることが可能である。このことからも、今後本研究で開発した技術は非破壊検査分野で重要な役割を果 たすものと考える。. 7.6. 結論. 本章では同軸型パルスチューブ冷凍機を用いた低磁気ノイズ・低振動、高温度安定性をもつ SQUID 非破壊検査のための冷凍機システムを開発し、本論文第 6 章で開発した渦電流誘導システムと組み合わ せて、冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムを開発した。このシステムを厚さ 20mm の板状 CFRP の深部亀裂モデルに適用して、システムの有効性を調べた。この研究により得られた成果 をまとめると以下のようになる。 プローブの小型化による現場での非破壊検査実現を目指して、パルスチューブ冷凍機冷却による小型 SQUID 非破壊検査システムの開発を行った。センサに HTS-SQUID グラジオメータを用い、小型かつ 低振動の同軸型パルスチューブ冷凍機を採用し、その材料にすべて非磁性体を用いることにより、低磁 気ノイズシステムを実現した。さらに第 6 章で開発した渦電流誘導システムと組み合わせて、高抵抗材 料の 20mm の深部欠陥を非接触で検出に可能な、簡便性・実用性を持った小型非破壊検査システムの開 発に成功した。本システムは冷却剤が不要で取り扱いが容易なため、冷却剤の入手困難な現場でも検査 員の習熟なしに使用することができる。またシステムのプローブ部は直径 8cm、高さ 40cm と小型で、 - 126 -.

(22) 第7章. 冷凍機冷却による非接触型 SQUID 非破壊検査システムの開発.doc. 重量も約 4kg と軽量であるため、大型構造物の実機の検査に必要と考えられる、プローブの移動も容易 に実現できると考える。. 参考文献 [1]M. N. Keene, S. W. Goodyear, N. G. Chew, R. G. Humphreys, J. S. Stachell, J. A. Edwards, and K. Lander, “Low-noise YBa2Cu 3O7-PrBa2Cu 3O7 multiturn flux transformers”, (Appl. Phys. Lett., Vol.64, pp.366-368, 1994-2) [2]F. Kahlmann, W. E. Booji, M. G. Blamire, P. F. McBrien, N. H. Peng, C. Jeynes, E. J. Romans, C. M. Pegrum and E. J. Tarte, “Performance of High-Tc dc SQUID Magnetometer with Resistively Shunted Inductances Compared to “Unshunted” Devices”, (IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.11, pp.916-919, 2001-3) [3]R. Cantor, L. P. Lee, M. Teepe, V. Vinetskiy, and J. Longo, “Low-Noise, Single-Layer YBa2Cu 3O7-x DC SQUID Magnetometers at 77K”, (IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.5, pp.2927-2930, 1995-6) [4]葛西直子ら:「第 1 回超伝導スクール 伝導分科会. SQUID の基礎と応用のための周辺技術」(応用物理学会. 超. 1998). [5]R. Hohmann, M. Mause D. Lomparski, M. Grueneklee, Y. Zhang, H. –J. Krause, H. Bousack and A. I. Braginski, “Aircraft Wheel Testing with Machine-Cooled HTS SQUID Gradiometer System”, (IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.9, 1999) [6]E. F. Fleet, S. Chatraphorn, and F. C. Wellstood, “HTS Scanning SQUID Microscope Cooled by a Closed-Cycle Refrigerator”, (IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.9, pp.3704-3707, 1999-6) [7]R. Hohmann, H. –J. Krause, H. Soltner, Y. Zhang, C. A. Copetti, H. Bousack, and A. I. Braginski, “HTS SQUID System with Joule-Thomson Cryocooler for Eddy Current Nondestructive Evaluation of Aircraft Structures”, (IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.7, pp.2860-2865, 1997-6) [8]R. Hohmann, C. Lienerth, Y. Zhang, H. Bousack, G. Thummes, and C. Heiden, “Comparison of Low Noise Cooling Performance of a Joule-Thomson Cooler and a Pulse-Tube Cooler Using a HT SQUID”, (IEEE Trans. on Appl. Supercond., Vol.9, pp.3688-3691, 1999-6) [9]Antonio Barone, “PRINCIPLES AND APPLICATIONS OF SUPERCONDUCTING QUANTUM INTERFERENCE DEVICES”, (World Scientific, 1992) [10] C. –H. Chen, I. Jin, S. P. Pai, Z. W. Dong, C. J. Lobb, T. Venkatesan, K. Edinger, J. Orloff and J. Melngailis, “Fabrication of high temperature Superconducting Josephson junctions on substrate patterned by focused ion beam”, (Applied. Phys. Lett. Vol. 73, No. 12, pp.1730-1732, 1998) [11] 低温工学協会:「工学超伝導・低温工学ハンドブック」(オーム社. 1993). [12] http://www.iwatanigas.co.jp/ [13] N. Kasai, K. Sasaki, S. Kiryu, and Y. Suzuki, “Thermal magnetic n o ise of Dewars for biomagnetic measurements”, (Cryogenics, Vol.33, No.2, pp.175, 1993) [14] 金原勲:「高分子系複合材料の非破壊試験・評価ハンドブック」日本規格協会(1995-3) - 127 -.

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参照

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